IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイナックスの特許一覧

<>
  • 特開-打抜き加工用パンチ 図1
  • 特開-打抜き加工用パンチ 図2
  • 特開-打抜き加工用パンチ 図3
  • 特開-打抜き加工用パンチ 図4
  • 特開-打抜き加工用パンチ 図5
  • 特開-打抜き加工用パンチ 図6
  • 特開-打抜き加工用パンチ 図7
  • 特開-打抜き加工用パンチ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046475
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】打抜き加工用パンチ
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/16 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B21D28/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151895
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204882
【氏名又は名称】株式会社ダイナックス
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】苫米地 和崇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拓也
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048GA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シェービングカスが飛散し難く、被加工物のクラックの発生を防止し、ワンストロークでせん断加工とシェービング加工を行うことができる打抜き加工用パンチを提供すること。
【解決手段】打抜き加工用パンチによれば、抜き刃24によって一次のせん断を行うとともに、シェービング刃22によって二次のせん断を行うことができるため、被加工物30のせん断面を滑らかにすることができ、凸部の外周面と抜き刃24の間が面取りされて形成されている傾斜部を具えているので、せん断時、被加工物30のクラックの発生を防止でき、且つ、抜き刃24によってせん断されたスクラップ32と、シェービング刃22によってせん断されたシェービングカス36が傾斜部に位置していたスクラップ32を介して繋がったままの状態となるため、シェービングカス36が飛散し難い。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の基部と、
前記基部の外周面に交互に連続して設けられた凹部及び凸部と、
前記基部の一端に、前記凹部及び凸部の角で形成されたシェービング刃と、
前記シェービング刃より先端側であって、前記凹部及び凸部よりも内径側に該凹部及び凸部に沿うように形成された抜き刃と、
前記凸部の外周面と前記抜き刃の間が面取りされ、傾斜部を形成していることを特徴とする、
打抜き加工用パンチ。
【請求項2】
前記シェービング刃と抜き刃の間に、前記シェービング刃より小径で、前記抜き刃より大径の中間シェービング刃をさらに具える、請求項1の打抜き加工用パンチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体などの被加工物に打抜き加工を施すために用いるパンチ(以下、単に、「打抜き加工用パンチ」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
打抜き加工は、穴が形成されたダイス上に置かれた被加工物の面に向かって、パンチを打ち込み貫通させるとともに、パンチとダイスで被加工物をせん断することで行われるのが一般的である。せん断加工完了後は、せん断面を滑らかな状態にするため、せん断面にシェービング加工を施す。
【0003】
この打抜き加工の過程で、破材(シェービングカス)やスクラップ等が生じる。破材やスクラップが被加工物上に残ると、被加工物を傷つける可能性があるため、破材やスクラップが飛散し難い打抜き加工用パンチが望まれている。このような打抜き加工用パンチの例として、以下のものが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-018004号公報
【特許文献2】特開2020-171979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、第一・第二シェービング用ポンチ、及び先端に下穴用ポンチを具えるピアス加工用ポンチ(打抜き加工用パンチ)が開示されている。このピアス加工用ポンチは、下穴用ポンチと第一シェービング用ポンチの間と、第一シェービング用ポンチと第二シェービング用ポンチの間に、それぞれ第一・第二逃げ部が具えられており、第一シェービング用ポンチで発生した破材は第一逃げ部で、第二シェービングポンチで発生した破材は第二逃げ部で排出されるため、板状体上に破材が飛散することを防止し易いとされている。
【0006】
特許文献2では、先端に主刃と、主刃の側面から根元に向かって、外形が拡大するように螺旋状に形成されたシェービング刃を具える箔の穴抜き加工用パンチ(打抜き加工用パンチ)が開示されている。この穴抜き加工用パンチによれば、穴抜き加工完了後、パンチを元の位置に向かって引き上げる際、パンチと一緒にスクラップを上昇させ難いため、被加工物の傷の発生を防ぐことができるとされている。
【0007】
ところで、打抜き加工では、被加工物にクラックが生じ、破断面を形成する。特許文献1のピアス加工用パンチは下穴用ポンチが被加工物を貫通するときに、特許文献2の箔の穴抜き加工用のパンチ等は主刃が被加工物を貫通するときに、それぞれクラックが発生する可能性があるため、この点で課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、シェービングカスが飛散し難く、被加工物のクラックの発生を防止し、ワンストロークでせん断加工とシェービング加工を行うことができる打抜き加工用パンチを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、円柱状の基部と、
前記基部の外周面に交互に連続して設けられた凹部及び凸部と、
前記基部の一端に、前記凹部及び凸部の角で形成されたシェービング刃と、
前記シェービング刃より先端側であって、前記凹部及び凸部よりも内径側に該凹部及び凸部に沿うように形成された抜き刃と、
前記凸部の外周面と前記抜き刃の間が面取りされ、傾斜部を形成していることを特徴とする打抜き加工用パンチによって、前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抜き刃によって一次のせん断を行うとともに、シェービング刃によって二次のせん断を行うことができるため、被加工物のせん断面を滑らかにすることができる。また、凸部の外周面と抜き刃の間が面取りされ、傾斜部が形成されているので、せん断時、被加工物のクラックの発生を防止でき、且つ、抜き刃によってせん断されたスクラップと、シェービング刃によってせん断されたシェービングカスが傾斜部に位置していたスクラップを介して繋がったままの状態となるため、シェービングカスが飛散し難い。
【0011】
また、シェービング刃と抜き刃の間に、シェービング刃より小径で、抜き刃より大径の中間シェービング刃をさらに具えた構成とすれば、せん断面をより滑らかにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態の打抜き加工用パンチの斜視図。
図2図1の拡大図。
図3】打抜き加工初期の抜き刃とシェービング刃部分の拡大図。
図4】打抜き加工初期の傾斜部部分の拡大図。
図5】打抜き加工中期の傾斜部部分の拡大図。
図6】打抜き加工終期の抜き刃とシェービング刃部分の拡大図。
図7】打抜き加工終期の傾斜部部分の拡大図。
図8】本発明の第二実施形態の打抜き加工用パンチの拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1~8を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、本発明の第一実施形態の打抜き加工用パンチ100は、円柱状の基部10を具える。基部10の外周面には、凹部14と凸部12が交互に連続して設けられている。
【0015】
図2は、基部10の一端の拡大図である。基部10の一端には、シェービング刃22と抜き刃24が設けられている。シェービング刃22は、凹部14と凸部12の角で形成されている。抜き刃24は、シェービング刃22よりも先端側であって、凹部14及び凸部12よりも内径側に、凹部14及び凸部12に沿うように形成されている。抜き刃24の内径側は面一で、先端面を形成している。また、凸部12の外周面と抜き刃24の間が面取りされ、傾斜部26が形成されている。
【0016】
図3は、打抜き加工用パンチ100を用いた打抜き加工の初期の抜き刃24とシェービング刃22部分の拡大図である。ダイス40の上に載置された被加工物30が、押さえ部材42によって押さえられている状態で、加工用パンチ100が被加工物30を貫通する。なお、図示はしないが、加工用パンチ100とダイス40でせん断が行えるように、ダイス40には、加工用パンチ100の凹部14及び凸部12に対応して、凸部と凹部が設けられている。
【0017】
図3で示すように、打抜き加工用パンチ100を被加工物30方向に移動させると、抜き刃24が被加工物30と接し、被加工物30をせん断する。次いで、シェービング刃22が被加工物30と接し、抜き刃24よりも大径の範囲で、被加工物30をさらにせん断するとともに、せん断面を滑らかにする。せん断された被加工物30の一部は、スクラップ32として抜き落とされることになる。
【0018】
このとき、図4に示すように、傾斜部26部分では、せん断はされない。傾斜部26が設けられていることにより、打抜き加工の初期において、被加工物30の上面(加工用パンチ100に対向する面)のクラック発生を遅れさせ、クラック発生を防止することができる。このように傾斜部26が設けられていることにより、軟鋼素材の被加工物だけでなく、高張力鋼素材の被加工物にも対応することができる。
【0019】
図5は、加工用パンチ100を被加工物30方向にさらに移動させた打抜き加工中期の傾斜部26部分を示している。このとき、被加工物30の下面には、クラック34が発生する場合があるが、上面のクラックは発生し難い。なお、図示は省略するが、この時点において、抜き刃24とシェービング刃22部分では、シェービング刃22が被加工物30と接し、抜き刃24よりも大径の範囲で、被加工物30をさらにせん断している。このように、抜き刃24によって一次のせん断を行うとともに、シェービング刃22によって二次のせん断をワンストロークで行うことができるため、被加工物30のせん断面を滑らかにすることができる。
【0020】
加工用パンチ100を被加工物30方向にさらに移動させ、加工用パンチ100が下死点にあるとき(打抜き加工終期)の抜き刃24とシェービング刃22部分を示しているのが図6である。図示しているように、抜き刃24によってせん断されたスクラップ32と、シェービング刃22によってせん断されたシェービングカス36が連続していない場合がある。一方で、図7に示すように、同時期の傾斜部26部分では、傾斜部26が接しているスクラップ32がシェービング刃22方向に残っており、この部分がシェービングカス36と連続することになる。すなわち、抜き刃24によってせん断されたスクラップ32と、シェービング刃22によってせん断されたシェービングカス36が傾斜部26に位置していたスクラップ32を介して繋がったままの状態となるため、シェービングカス36が飛散し難い。
【0021】
図8は、本発明の第二実施形態の打抜き加工用パンチ100aの要部の拡大図である。加工用パンチ100aと上記に説明した加工用パンチ100は、基本的に同じ構成を有している。加工用パンチ100aでは、シェービング刃22aと抜き刃24aの間に、シェービング刃22aより小径で、抜き刃24aより大径の中間シェービング刃28aをさらに具える。本構成とすれば、抜き刃24aによってせん断した被加工物を中間シェービング刃28aとシェービング刃22aの2度にわたってせん断することができるため、被加工物のせん断面をより滑らかにすることができる。
【0022】
以上に説明したように、本発明によれば、シェービングカスが飛散し難く、被加工物のクラックの発生を防止し、ワンストロークでせん断加工とシェービング加工を行うことができる打抜き加工用パンチを提供することができる。
【符号の説明】
【0023】
10,10a 基部
12,12a 凸部
14,14a 凹部
22,22a シェービング刃
24,24a 抜き刃
26,26a 傾斜部
28a 中間シェービング刃
100,100a 打抜き加工用パンチ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8