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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046477
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】装置および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/44 20060101AFI20240327BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20240327BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L23/44
F28D15/02 M
F28D15/02 102A
H05K7/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151897
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 紀志
(72)【発明者】
【氏名】長野 方星
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA09
5E322AB08
5E322DB01
5E322DB06
5E322FA01
5E322FA04
5F136BA03
5F136CB01
5F136DA41
(57)【要約】
【課題】発熱体が浸る流体を効率良く循環させる。
【解決手段】装置は、発熱する発熱体を浸す液相の流体を貯留する貯留部と、貯留部内において上下方向に沿って設けられ、上側および下側にそれぞれ開口部を有して発熱体を囲う筒部と、を備える。そして、筒部は、発熱体の熱によって蒸発する気相の流体を貯留部内における上側に向けて案内する。また、装置では、貯留部内における上側にて気相の流体が冷却され、凝縮した液相の流体が貯留部内の下側に向かうようになっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱する発熱体を浸す液相の流体を貯留する貯留部と、
前記貯留部内において上下方向に沿って設けられ、上側および下側にそれぞれ開口部を有して前記発熱体を囲う筒部と、
を備え、
前記筒部は、前記発熱体の熱によって蒸発する気相の前記流体を前記貯留部内における前記上側に向けて案内し、
前記貯留部内における前記上側にて気相の前記流体が冷却され、凝縮した液相の前記流体が前記貯留部内の前記下側に向かう、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記筒部の前記上側の前記開口部は、前記貯留部内に貯留される液相の前記流体の液面よりも上に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記発熱体は、複数設けられ、
前記筒部は、各々の内部に前記発熱体が設けられた複数の筒状部材を有し、
前記複数の筒状部材は、互いに離間して設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記筒部は、一の前記筒状部材と他の前記筒状部材との間に、液相の前記流体が前記上側から前記下側に向けて流れる流路部を形成する、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記筒部は、前記貯留部内における前記上側に設けられ、液相の前記流体が前記筒部内に流入することを抑制する抑制部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記抑制部は、上下方向に対して傾斜する面である傾斜部を有する、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記筒部は、前記上側の開口部の開口面積が前記下側の開口部の開口面積よりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記筒部は、前記貯留部との間に、液相の前記流体が前記上側から前記下側に向けて流れる流路部を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記貯留部は、海中に設置するための被設置部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記貯留部は、内部の熱を外部に放熱する放熱体を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記発熱体は、複数の電子部品が設けられた回路基板を有し、
前記回路基板は、上下方向に対して傾斜して設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記回路基板は、前記電子部品が実装される面が前記上側を向いて設けられる、ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
発熱する発熱体の熱により蒸発する流体に前記発熱体を浸漬させる浸漬部と、
前記浸漬部の内部に設けられ、上端部が液相の前記流体の液面よりも上側に設けられ、下側にて前記発熱体の少なくとも一部を囲う囲い部と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項14】
電子部品を有する電子機器と、
上下方向における下側に前記電子機器が浸る液相の流体を貯留するとともに上側に空間部を形成する貯留部と、
前記上側と前記下側とにそれぞれ開口部を有し上下方向に沿った筒状に形成され、前記上側の開口部が前記空間部に設けられ、下端部が前記電子機器よりも下側に設けられる筒部と、
前記貯留部の前記上側に設けられ前記空間部の熱を外部に放出する放熱部と、
前記空間部にて凝縮した液相の前記流体が前記筒部内に流入することを抑制する抑制部と、
前記空間部にて凝縮した液相の前記流体が前記筒部の下側に向かう流路を形成する流路部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置および情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、データセンターを効率的に冷却するためのシステムであって、冷却流体に浸漬されるデータセンターまたは一部分のデータセンターと、冷却流体およびデータセンターまたは一部分のデータセンターを囲んで密閉する容器と、冷却流体およびデータセンターまたは一部分のデータセンターを冷却するように構成される熱伝達サブシステムとを備えるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-522650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発熱する発熱体を冷却する場合に、例えば液相の流体に発熱体を浸らせて発熱体を冷却する構成が考えられる。このような構成を採用した場合に、流体を効率良く循環させることができれば、発熱体の冷却効率が向上する。
本発明は、発熱体が浸る流体を効率良く循環させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、発熱する発熱体を浸す液相の流体を貯留する貯留部と、前記貯留部内において上下方向に沿って設けられ、上側および下側にそれぞれ開口部を有して前記発熱体を囲う筒部と、を備え、前記筒部は、前記発熱体の熱によって蒸発する気相の前記流体を前記貯留部内における前記上側に向けて案内し、前記貯留部内における前記上側にて気相の前記流体が冷却され、凝縮した液相の前記流体が前記貯留部内の前記下側に向かう、ことを特徴とする装置である。
【0006】
ここで、前記筒部の前記上側の前記開口部は、前記貯留部内に貯留される液相の前記流体の液面よりも上に位置するとよい。
また、前記発熱体は、複数設けられ、前記筒部は、各々の内部に前記発熱体が設けられた複数の筒状部材を有し、前記複数の筒状部材は、互いに離間して設けられるとよい。
また、前記筒部は、一の前記筒状部材と他の前記筒状部材との間に、液相の前記流体が前記上側から前記下側に向けて流れる流路部を形成するとよい。
また、前記筒部は、前記貯留部内における前記上側に設けられ、液相の前記流体が前記筒部内に流入することを抑制する抑制部を有するとよい。
また、前記抑制部は、上下方向に対して傾斜する面である傾斜部を有するとよい。
また、前記筒部は、前記上側の開口部の開口面積が前記下側の開口部の開口面積よりも小さいとよい。
また、前記筒部は、前記貯留部との間に、液相の前記流体が前記上側から前記下側に向けて流れる流路部を形成するとよい。
また、前記貯留部は、海中に設置するための被設置部を有するとよい。
また、前記貯留部は、内部の熱を外部に放熱する放熱体を備えるとよい。
また、前記発熱体は、複数の電子部品が設けられた回路基板を有し、前記回路基板は、上下方向に対して傾斜して設けられるとよい。
また、前記回路基板は、前記電子部品が実装される面が前記上側を向いて設けられるとよい。
【0007】
かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、発熱する発熱体の熱により蒸発する流体に前記発熱体を浸漬させる浸漬部と、前記浸漬部の内部に設けられ、上端部が液相の前記流体の液面よりも上側に設けられ、下側にて前記発熱体の少なくとも一部を囲う囲い部と、を備えることを特徴とする装置である。
【0008】
電子部品を有する電子機器と、上下方向における下側に前記電子機器が浸る液相の流体を貯留するとともに上側に空間部を形成する貯留部と、前記上側と前記下側とにそれぞれ開口部を有し上下方向に沿った筒状に形成され、前記上側の開口部が前記空間部に設けられ、下端部が前記電子機器よりも下側に設けられる筒部と、前記貯留部の前記上側に設けられ前記空間部の熱を外部に放出する放熱部と、前記空間部にて凝縮した液相の前記流体が前記筒部内に流入することを抑制する抑制部と、前記空間部にて凝縮した液相の前記流体が前記筒部の下側に向かう流路を形成する流路部と、を備えることを特徴とする情報処理システムである。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示される技術によれば、発熱体が浸る流体を効率良く循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の情報処理システムを示す概略図である。
図2】(A)および(B)は、第1実施形態のモジュール装置の説明図である。
図3】第1実施形態のチムニーの全体斜視図である。
図4】(A)および(B)は、第1実施形態のモジュール装置の動作の説明図である。
図5】変形例のモジュール装置についての説明図である。
図6】(A)および(B)は、第2実施形態のモジュール装置の概略図である。
図7】第3実施形態のモジュール装置の概略図である。
図8】第4実施形態のモジュール装置の概略図である。
図9】(A)、(B)および(C)は、変形例のチムニーの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
【0012】
図1は、第1実施形態の情報処理システム1を示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、情報処理システム1は、複数のモジュール装置10を有している。各モジュール装置10には、サーバ装置やネットワーク機器などの電子機器30(後述の図2参照)が設けられている。そして、情報処理システム1は、各モジュール装置10単独、または、複数のモジュール装置10を連携させて、情報の記憶や情報の送受信などの情報処理を可能にする。
【0014】
また、情報処理システム1において、複数のモジュール装置10は海水Wの中に設けられる。本実施形態の情報処理システム1は、海底に設置される。具体的には、各モジュール装置10には、海底に固定するための被固定部10Fが設けられる。そして、本実施形態の各モジュール装置10は、被固定部10Fを介して海底に設置される。
モジュール装置10は、必ずしも海底に設置される必要はない。例えば、モジュール装置10は、全体が海中に沈められた状態で設置されればよく、水面よりも下側であって海底よりも上側に設置されればよい。また、モジュール装置10は、海水のみならず、湖沼やプールなど水中に設置してもよい。
【0015】
なお、本実施形態の説明において、重力方向を「上下方向」と呼び、重力方向と直交する方向を「水平方向」と呼ぶ。
【0016】
図2は、第1実施形態のモジュール装置10の説明図である。
なお、図2(A)は、モジュール装置10の上下方向における断面図である。また、図2(B)は、モジュール装置10の水平方向における断面図である。
図3は、第1実施形態のチムニー55の全体斜視図である。
【0017】
図2(A)および図2(B)に示すように、モジュール装置10は、電子機器30と、電子機器30から発生する熱を外部に放熱する冷却装置50とを有する。本実施形態のモジュール装置10は、複数(例えば5基)の電子機器30を有している。モジュール装置10において、電子機器30および冷却装置50は固定されている。
【0018】
本実施形態のモジュール装置10は、複数の電子機器30が水平方向において一列に並べて配置されている。複数の電子機器30は、互いに間隔を有して配置される。さらに、各電子機器30は、上下方向においても貯留部51(後述)との間に間隔を有して設けられる。
さらに、図2(B)に示すように、複数の電子機器30は、モジュール装置10の水平方向においても貯留部51(後述)との間に間隔を有して設けられる。
【0019】
まず、電子機器30について具体的に説明する。
電子機器30は、例えばサーバ装置を例示することができる。電子機器30は、電子回路を構成する回路基板31と、回路基板31を保持するラック33とを有する。回路基板31は、配線パターンが形成されるとともに、複数の電子部品35(後述の図5参照)が実装される。ラック33は、複数の回路基板31が互いに略平行に並べられた状態で、複数の回路基板31を保持する。なお、本実施形態の電子機器30では、回路基板31は、主面が上下方向に沿って設けられる。また、複数の回路基板31は、水平方向に並べられている。つまり、複数の回路基板31は、それぞれ立った状態で設置される。そして、電子機器30は、クライアント装置からの要求に対して情報や処理結果を提供する。
【0020】
続いて、冷却装置50について詳細に説明する。
冷却装置50は、複数の電子機器30が収容される貯留部51と、貯留部51に設けられて放熱する伝熱フィン53と、電子機器30を囲うように設けられるチムニー55と、を有する。そして、冷却装置50は、複数の電子機器30に対して液浸沸騰冷却を行う。
【0021】
貯留部51は、矩形の箱状に形成されている。貯留部51には、海水に対する腐食耐性のある材料を用いることができる。また、貯留部51は、熱伝導率が比較的高い金属や合金を用いることができる。例えば貯留部51には、ステンレス鋼、アルミ合金、ニッケル合金、チタン合金などを用いることを例示できる。
【0022】
貯留部51は、電子機器30に接続する通信ケーブル(不図示)や伝熱フィン53が貫通する箇所を除き開口部を有していない。そして、貯留部51は、内部に冷媒Rを貯留する。すなわち、貯留部51は、電子機器30ととともに冷媒Rを内部に密封する。本実施形態において、液相の状態の冷媒Rは、貯留部51の容積の全てを満たすのではなく、貯留部51の上側における一部に空間ができる量に調整されている。なお、貯留部51において液相の冷媒Rに満たされていない空間、すなわち液相の冷媒Rの液面Lより上側の空間のことを上部空間Aと呼ぶ。
【0023】
ここで、冷媒Rについて詳細に説明する。冷媒Rは、フルオロカーボン類を基にした流体である。冷媒Rは、絶縁体であり、電子機器30を浸しても電気的な影響がない。本実施形態の冷媒Rには、ペルフルオロヘキサンを用いることができる。また、本実施形態の冷媒Rは、沸点が約56℃になっている。本実施形態の冷媒Rは、使用する圧力での沸点が、冷却対象の発熱体(例えば電子機器30)の許容温度よりも低く、かつ、モジュール装置10の周囲の海水温度よりも高いものである。また、冷媒Rは、電気的な絶縁性を有し、一定の耐腐食性を備えるものが好ましい。
【0024】
本実施形態において、冷媒Rは、電子機器30の全体を浸漬させる。これによって、冷媒Rは、ラック33に保持される回路基板31および電子部品35にも直接接触する。そして、冷媒Rは、温度が上昇した回路基板31や電子部品35に触れると、沸騰して液相から気相に変化して蒸気泡となる。また、回路基板31や電子部品35は、冷媒Rに熱を奪われることで冷却される。
【0025】
そして、貯留部51は、外周面の全体が海水Wに接する。これにより、貯留部51は、電子機器30にて発生した熱を、顕熱変化または潜熱変化を伴って外部に放出する。
【0026】
伝熱フィン53は、比較的薄い複数の板によって構成されている。伝熱フィン53は、熱伝導率の高い材料によって構成されている。また、本実施形態の伝熱フィン53は、海水に対する耐腐食性の高い材料を用いることができる。例えば貯留部51には、ステンレス鋼、アルミ合金、ニッケル合金、チタン合金などを用いることを例示できる。
【0027】
伝熱フィン53は、貯留部51における上側にて貯留部51に固定されている。伝熱フィン53は、一端側が貯留部51における上側であった貯留部51の内部に設けられ、他端側が貯留部51における上側であって貯留部51の外部に設けられる。すなわち、伝熱フィン53は、一端側が上部空間Aに晒され、他端側が海水Wに接している。
伝熱フィン53は、例えば貯留部51の上部に設けられていない場合と比較して、貯留部51の上部における放熱面積を大きくする。そして、伝熱フィン53は、貯留部51内の熱を外部に放熱する。
【0028】
チムニー55は、上下方向に沿って長く延びて形成される。チムニー55は、内側に電子機器30を収容する。そして、チムニー55は、電子機器30の水平方向において電子機器30を囲う。
また、チムニー55の材料には、熱伝導率が高い金属を用いることができる。例えば、チムニー55の材料には、銅やアルミニウム、これらの合金を用いることができる。
【0029】
図3に示すように、チムニー55は、本体部551と、本体部551の上側に設けられるテーパ部552とを有している。
本実施形態の本体部551は、電子機器30の形状に対応して、水平方向における断面が矩形状をしている。すなわち、本体部551の概形は、角筒形状をしている。また、本体部551は、水平方向の幅に対して上下方向の幅が長くなっている。
テーパ部552は、下側から上側に向かうに従って、水平方向の長さが徐々に短くなっている。そして、テーパ部552は、外側の面が上下方向に対して傾斜している。また、テーパ部552は、後述の上側開口部55H1側が高く、本体部551側が低くなるように傾斜している。
【0030】
また、チムニー55は、上側に上側開口部55H1と、下側に下側開口部55H2とを有している。上側開口部55H1は、下側開口部55H2と比較して開口面積が小さくなっている。
【0031】
そして、チムニー55は、その内側に電子機器30が収容される。すなわち、電子機器30は、水平方向において本体部551に囲われる。本実施形態では、チムニー55は、電子機器30を上下方向において覆う。本実施形態では、下側開口部55H2は、電子機器30の下端部よりもさらに下側に位置している。
また、上側開口部55H1は、冷媒Rの液面Lよりも上側に設けられる(図2(A)参照)。なお、本実施形態のチムニー55では、テーパ部552も、冷媒Rの液面Lよりも上側に設けられる。本実施形態の冷却装置50では、動作状態においても、このような位置関係になるように冷媒Rの液量が設定されている。
【0032】
そして、図2(A)および図2(B)に示すように、本実施形態の冷却装置50において、隣接する一のチムニー55と他のチムニー55同士によって、冷媒Rが流れる第1流路部61が形成される。
具体的には、第1流路部61は、本体部551を構成する一枚の板と、その一枚の板に対向する他の本体部551の一枚の板とによって形成される。本実施形態では、複数(例えば5つ)の本体部551が並べて配置されている。したがって、第1流路部61は、複数(例えば4箇所)形成される。
【0033】
また、本実施形態の冷却装置50において、一のチムニー55と貯留部51とによって、冷媒Rが流れる第2流路部62が形成される。具体的には、第2流路部62は、本体部551を構成する一枚の板と、その一枚の板に対向する貯留部51の内壁とに形成される。本実施形態では、複数(例えば5つ)の本体部551を一塊と捉えた場合に、その外周に形成される。このように、本実施形態の貯留部51は、後述するように冷媒Rが下側に向けて流れる流路を形成する。
【0034】
図4は、第1実施形態のモジュール装置10の動作の説明図である。
なお、図4(A)は、電子機器30を中心とした拡大図であり、図4(B)は、サーモサイフォン原理の説明図である。
【0035】
図4(A)に示すように、電子機器30にて発生する熱によって液相の冷媒Rが気化し、気相の冷媒Rになる。気相の冷媒Rは、気泡としてチムニー55内を上昇する。ここで、本実施形態の説明において、蒸発することで気泡となった冷媒Rのことを蒸気泡と呼ぶ。そして、蒸気泡は、チムニー55の上側開口部55H1から流出し、貯留部51の上部空間Aに達する。
上部空間Aは、伝熱フィン53や貯留部51が海水によって冷却される。そのため、上部空間Aに達した蒸気泡は凝縮し、液相の冷媒Rになる。このとき、貯留部51では、潜熱変化を伴って電子機器30の放熱が行われる。
【0036】
ここで、サーモサイフォン原理について説明する。説明のために、U字状に形成され、液体を貯留するU字管99を図4(B)に示す。U字管99は、右側の部分である右管部99Rと、左側の部分である左管部99Lとを有している。
そして、例えばU字管99の左管部99Lにおける一部を加熱する。そうすると、その加熱箇所の内側の液体が沸騰し、蒸気泡が生成される。その結果、右管部99Rの液面よりも左管部99Lの液面が相対的に低くなる。そうすると、左管部99Lの液面と、右管部99Rの液面とは同じ高さとなるように作用する。このとき、重力によって右管部99Rから左管部99Lへと向かう流れが生じる。
【0037】
そして、本実施形態のチムニー55においても、サーモサイフォン原理に基づく同様な流れが生じる。上述のとおり、電子機器30から発生した熱によってチムニー55内の冷媒Rが蒸気泡となって上昇する。そして、冷媒Rの液の体積(水頭)は、チムニー55内の方がチムニー55外よりも小さくなる。本実施形態の冷却装置50では、この液の体積(水頭)の違いによって、チムニー55の外側の冷媒Rがチムニー55の内側に流入しようとする。
また、チムニー55内では、電子機器30により冷媒Rが加熱されることで冷媒Rが上側に向けて流れる対流も発生している。
【0038】
さらに、冷却装置50では、上部空間Aにて冷却された気相の冷媒R(蒸気泡)が凝縮し、液相の冷媒Rになる。この液相の冷媒Rは、貯留部51の液面Lに到達する。そして、冷却装置50では、第1流路部61および第2流路部62(図2参照)において液相の冷媒Rが下側に向けて流れて、下側開口部55H2からチムニー55の内側に流入する。このように、冷却装置50では、チムニー55内では冷媒Rが上側に向けて流れ、チムニー55外では冷媒Rが下側に向けて流れるという循環が生じる。
【0039】
そして、例えば第2流路部62を流れる冷媒Rは、外側が海水Wに接している貯留部51の内側を流れる際にさらに冷却される(図2(A)参照)。このように、本実施形態の冷却装置50は、第2流路部62を冷媒Rが流れる際に顕熱として放熱される。つまり、本実施形態の冷却装置50では、冷媒Rが第2流路部62にて上側から下側に向けて流れるダウンカマーを介して各チムニー55に還流する際、冷媒Rが海水の冷熱源により、貯留部51を介して顕熱冷却される。そのため、冷媒Rは、一定のサブクール度をもってチムニー55に還流される。
【0040】
また、冷却装置50では、上部空間Aにて凝縮することで液相になった冷媒Rは、テーパ部552の上面に達する。テーパ部552は、上下方向に対して傾斜した面である。したがって、テーパ部552上の冷媒Rが液面Lに向けて案内される。そして、冷媒Rは、テーパ部552に沿って第1流路部61や第2流路部62へと流れ込む。このように、本実施形態のテーパ部552は、冷媒Rが流れる流路の一部を形成している。
【0041】
また、本実施形態のチムニー55は、上側開口部55H1が液面Lよりも高い位置に設けられる。これによって、チムニー55外の冷媒Rが上側開口部55H1からチムニー55内に流入しないようになっている。そして、冷却装置50では、チムニー55内では冷媒Rが上側に向けて流れ、チムニー55外では冷媒Rが下側に向けて流れるという循環が生じるようにしている。
【0042】
さらに、テーパ部552の上側の端部に設けられる上側開口部55H1は、例えば本体部551のよりも開口面積が小さく形成されている。これによって、上部空間Aにて凝縮した冷媒Rが、上側開口部55H1からチムニー55内に流入することが抑制される。
【0043】
以上のように構成されるモジュール装置10は、発熱する電子機器30を浸す冷媒Rを貯留する貯留部51と、上下方向に沿って設けられ、上側および下側にそれぞれ上側開口部55H1および下側開口部55H2を有して電子機器30を囲うチムニー55とを有する。そして、チムニー55は、電子機器30の熱によって蒸発する気相の冷媒Rを貯留部51の上部空間Aに向けて案内する。さらに、貯留部51は、上部空間Aの気相の冷媒Rを冷却し、凝縮した液相の冷媒Rを貯留部51内の下側に向かわせる。
【0044】
本実施形態の冷却装置50は、電子機器30を冷媒Rに浸らせるとともに電子機器30により冷媒Rを沸騰させて電子機器30を冷却させる液浸沸騰を行っている。冷却装置50では、電子機器30を直接冷却することで、例えば冷却のための構造体を電子機器30に設けることが必須とはならない。
【0045】
さらに、第1実施形態の冷却装置50は、チムニー55を用いることで冷媒Rの循環力がより増加される。ここで、本実施形態のチムニー55を用いない場合には、強制対流を生み出すことができず、強制対流が生じない所謂プール沸騰となる。これに対して、本実施形態の冷却装置50は、チムニー55を有することで、例えばプール沸騰よりも冷却性能の高い強制対流沸騰を実現している。
そして、本実施形態の冷却装置50では、例えば駆動部を用いて冷媒Rを循環させる構成が必須とならず、冷媒Rが効率良く循環する。
【0046】
また、本実施形態の冷却装置50では、複数の電子機器30が設けられている。そして、冷却装置50では、複数の電子機器30ごとにチムニー55がそれぞれ設けられる。さらに、複数のチムニー55は、互いに離間して設けられる。
ここで、複数の電子機器30をそれぞれ仕切らずにまとめて一つの収容部に設置する場合は、発生した蒸気泡が例えば中心部に集まることで冷媒Rが電子機器30に供給され難くなる。そして、この場合には、伝熱効率が悪化する所謂ドライアウトが発生する可能性が高くなる。
【0047】
これに対して、本実施形態の冷却装置50では、複数の電子機器30ごとにチムニー55を個別に設けている。その結果、本実施形態の冷却装置50は、蒸気泡が中心部に集中するなどの偏りが低減されドライアウトの発生が抑制される。
さらに、冷却装置50では、冷媒Rの循環による攪拌効果によって、電子機器30に付着する蒸気泡が電子機器30から離れやすくなっている。このように、本実施形態の冷却装置50は、効率的な冷媒Rの循環が行われるようになっている。
【0048】
<変形例>
図5は、変形例のモジュール装置10についての説明図である。
【0049】
続いて、変形例のモジュール装置10について説明する。
変形例のモジュール装置10は、電子機器30における回路基板31の設置角度が第1実施形態とは異なる。
図5に示すように、変形例のモジュール装置10では、電子機器30の回路基板31の主面が水平方向に対して傾斜して設けられる。また、回路基板31は、電子部品35が実装される面が上下方向における上側になるように設置される。なお、回路基板31の両面に電子部品35が実装されている場合には、回路基板31の表裏面のうち電子部品35が実装される数が少ない方の面が上側になるように設置すればよい。
【0050】
電子機器30は、例えば回路基板31にて発生した熱により冷媒Rが沸騰し、蒸気泡が発生する。この気泡は、電子部品35が実装される側の面においては停滞する恐れがある。これに対して、電子機器30では、電子部品35が実装される面が上側を向くことで、蒸気泡が上側に抜けやすくなっている。一方で、回路基板31において電子部品35が実装されていない面においては、蒸気泡が発生したとしても、例えば電子部品35など突出した部分が比較的少ないことから上側への上昇が阻害されないようになっている。
【0051】
また、回路基板31は、回路基板31の厚さ方向に貫通する貫通孔(不図示)を備えていてもよい。貫通孔は、回路基板31において複数個所に設けられていてもよい。この場合には、発生した蒸気泡が貫通孔から上方に抜けやすくなり、蒸気泡が回路基板31に留まり難くすることができる。
【0052】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のモジュール装置210の概略図である。
【0053】
続いて、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同様な構成については同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
【0054】
図6(A)に示すように、第2実施形態のモジュール装置210は、発熱体230と、発熱体230が発する熱をモジュール装置10の外部に放出する冷却装置70とを有する。
【0055】
図6(B)に示すように、第2実施形態のモジュール装置210は、複数(例えば5体)の発熱体230を有している。第2実施形態のモジュール装置210は、発熱体230が水平方向において複数並べて配置されている。複数の発熱体230は、互いに間隔を有して配置される。さらに、各発熱体230は、上下方向においても貯留部71(後述)との間に間隔を有して設けられる。
さらに、複数の発熱体230は、モジュール装置10の水平方向においても貯留部71(後述)との間に間隔を有して設けられる。
【0056】
発熱体230は、一方向に長く延びた棒形状をしている。また、発熱体230は、動作に応じて発熱する構造体である。発熱体230は、例えば第1実施形態と同様に電子部品35が実装された回路基板31などを例示することができる。本実施形態の発熱体230は、一方向に長く延びた冷却対象の構造体であれば特に限定されない。
【0057】
続いて、冷却装置70について詳細に説明する。
図6(A)および図6(B)に示すように、冷却装置70は、複数の発熱体230が収容される貯留部71と、各発熱体230を囲うように設けられるチムニー75と、を有する。そして、冷却装置70は、複数の発熱体230に対して液浸沸騰冷却を行う。
【0058】
貯留部71は、上下方向に長く延びて形成される。第2実施形態の貯留部71は、水平方向の幅よりも、上下方向の幅が長く形成される。そして、貯留部71は、円筒形状に形成されるとともに、上下方向における端部がそれぞれ半球状になっている。
なお、貯留部71の材料は、第1実施形態の貯留部51と同様にすることができる。
【0059】
そして、貯留部71は、内部に冷媒Rを貯留する。すなわち、貯留部71は、発熱体230ととともに冷媒Rを内部に密封する。本実施形態において、液相の状態の冷媒Rは、貯留部71の容積の全てを満たすのではなく、貯留部71の上側における一部に空間ができる量に調整されている。そして、貯留部71は、液相の冷媒Rの液面Lより上側に上部空間Aを有する。
【0060】
そして、第2実施形態の貯留部71は、外周面の略全体が海水に接する。これにより、貯留部71は、発熱体230にて発生した熱を、顕熱変化または潜熱変化を伴って外部に放出する。
【0061】
チムニー75は、上下方向に沿って長く延びて形成され、内側に発熱体230を収容する。チムニー75は、発熱体230よりも上下方向の長さが長く形成される。
第2実施形態のチムニー75は、発熱体230の2倍以上の長さになっている。そして、チムニー75は、発熱体230の水平方向において発熱体230を囲う。チムニー75の材料には、銅やアルミニウム、これらの合金など熱伝導率の高い材料を用いることができる。
【0062】
チムニー75は、本体部751と、本体部751の上側に設けられるテーパ部752とを有している。
本体部751は、図6(B)に示すように、水平方向における断面が矩形状をしている。すなわち、本体部751は、角筒形状をしている。また、本体部751は、水平方向の長さに対して上下方向の長さが長くなっている。
テーパ部752は、下側から上側に向かうに従って、水平方向の長さが徐々に短くなっている。そして、テーパ部752は、外側の面が傾斜している。また、テーパ部752は、中央部が高く、端部が低くなっている。
そして、チムニー75は、上側に上側開口部75H1と、下側に下側開口部75H2とを有している。上側開口部75H1は、下側開口部75H2と比較して開口面積が小さくなっている。
【0063】
上側開口部75H1は、冷媒Rの液面Lよりも上側に設けられる。さらに、本実施形態では、テーパ部752についても、冷媒Rの液面Lよりも上側に設けられる。本実施形態の冷却装置70は、このような位置関係になるように冷媒Rの液量が設定されている。
【0064】
また、本実施形態の冷却装置70には、隣接する一のチムニー75と他のチムニー75とによって、冷媒Rが流れる第1流路部65を形成する。具体的には、第1流路部65は、本体部751を構成する一枚の板と、その一枚の板に対向する他の本体部751の一枚の板とによって形成される。本実施形態では、複数(例えば5本)の本体部751が並べて配置されている。したがって、第1流路部65は、複数(例えば4箇所)形成される。
【0065】
また、本実施形態の冷却装置70において、一のチムニー75と貯留部71とによって、冷媒Rが流れる第2流路部66が形成される。具体的には、第2流路部66は、本体部751を構成する一枚の板と、その一枚の板に対向する貯留部71の内壁とに形成される。本実施形態では、第2流路部66は、複数(例えば5本)の本体部751を一塊と捉えた場合に、その外周に形成される。
【0066】
以上のように構成される第2実施形態のモジュール装置210においても、発熱体230が発した熱によって冷媒Rが沸騰する。これによって、チムニー75内の冷媒Rの液面は、チムニー75外の冷媒Rと比較して低くなる。そして、サーモサイフォン効果により、チムニー75の下側に設けられる下側開口部55H2からチムニー75の内部へと冷媒Rが流入する。このように、第2実施形態の冷却装置70では、貯留部71およびチムニー75によって、発熱体230を通る冷媒Rの流れの循環が形成される。
【0067】
特に、第2実施形態の貯留部71では、上部空間Aが半球状に形成されることで、チムニー75内に冷媒Rが流入することが抑制される。すなわち、上部空間Aにて冷却された気相の冷媒Rは、凝縮して液相の冷媒Rになる。このとき、貯留部71の上側の内面が半球状に形成されていることで、液相の冷媒Rは、貯留部71の内面に沿って移動し液面Lへと案内される。このとき、液相の冷媒Rは、チムニー75の上側開口部75H1とは異なる位置に移動することで、チムニー75の上側開口部75H1からチムニー75内部に流入することが抑制される。
【0068】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態のモジュール装置310の概略図である。
【0069】
続いて、第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態において他の実施形態と同様な構成については同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
【0070】
図7に示す第3実施形態のモジュール装置310の基本構成は、第1実施形態のモジュール装置10と同様である。ただし、第3実施形態のモジュール装置310は、伝熱フィン53に代えて熱交換器93を有する点で第1実施形態のモジュール装置10とは異なる。
【0071】
熱交換器93は、貯留部51における上側に設けられる。そして、熱交換器93は、貯留部51の上側であって貯留部51に接触して設けられる。熱交換器93は、図示しない放熱部に接続する冷媒の流路が接続している。熱交換器93は、冷媒が循環するようになっている。そして、熱交換器93は、貯留部51から受け取った熱を不図示の放熱部にて放出し、放熱部により冷やされた冷媒を貯留部51に送る。
【0072】
このように、第3実施形態のモジュール装置310では、貯留部51の上部空間Aに対向する領域を熱交換器93によってより冷却しやすくしている。モジュール装置310では、上部空間Aが熱交換器93により冷却されることで、上部空間Aにおける気相の冷媒Rの凝縮がより促進される。これによって、本実施形態のモジュール装置310では、冷媒Rの循環する流量がより大きくなって電子機器30がより冷却される。
【0073】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態のモジュール装置410の概略図である。
【0074】
続いて、第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態において他の実施形態と同様な構成については同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
【0075】
図8に示すように、第4実施形態のモジュール装置410は、冷媒Rに流れを生じさせるスクリュー97を有している。
スクリュー97は、一のチムニー55と他のチムニー55との間に設けられる。さらに、スクリュー97は、チムニー55と貯留部51との間に設けられる。すなわち、本実施形態において、スクリュー97は、第1流路部61と第2流路部62とにそれぞれ配置される。
【0076】
スクリュー97は、例えば第1流路部61および第2流路部62において、上側から下側に向けて冷媒Rを流す。これにより、サーモサイフォン効果による重力を利用した循環に加え、冷媒Rの循環速度をさらに高めることができる。そして、モジュール装置310では、電子機器30に対するより強い冷却を実現することができる。
【0077】
<変形例>
図9は、変形例のチムニー55の説明図である。
【0078】
変形例のチムニー55は、テーパ部552に対応する構造部が第1実施形態のチムニー55と異なっている。
図9(A)に示す変形例のチムニー55は、上側の端部が上下方向に沿って直線状になっている。すなわち、変形例のチムニー55は、テーパ部552に相当する構造を備えていない。このように、チムニー55は、必ずしも上側の端部が上下方向に対して傾斜したテーパ形状であることに限定されない。
【0079】
図9(B)に示す変形例のチムニー55は、上側の端部が上下方向に沿って直線状になっている。さらに、変形例のチムニー55は、本体部551の上側に傘部55Aを有している。傘部55Aは、中央部が高く両端部が低くなるように傾斜している。すなわち、傘部55Aは、上下方向に対して傾斜した面を有している。そして、傘部55Aは、上側開口部55H1との間に隙間を有するとともに、上側開口部55H1に対向する位置に設けられる。そして、傘部55Aは、チムニー55内から上部空間Aに蒸気泡が流出することを可能にするとともに、上部空間Aからチムニー55内に凝縮した液相の冷媒Rが流入することを抑制する。また、傘部55Aは、上下方向に対して傾斜することで、液相の冷媒Rが留まらずに、液面Lに向けて流れやすくしている。
【0080】
図9(C)に示す変形例のチムニー55は、上側の端部が上下方向に沿って直線状になっている。そして、この例では、貯留部51は、上部空間Aに対向する側の面が傾斜した傾斜部51Uを有している。このように、貯留部51の傾斜部51Uが傾斜していることで、貯留部51にて凝縮した液相の冷媒Rは、傾斜部51Uに付着しながら傾斜部51Uに沿って移動する。さらに、冷媒Rは、チムニー55の上側開口部55H1から外れた位置まで移動する。このように、変形例のチムニー55では、上部空間Aからチムニー55内に凝縮した液相の冷媒Rが流入することが抑制される。
【0081】
なお、冷却装置50は、装置の一例である。情報処理システム1は、情報処理システムの一例である。電子機器30および発熱体230は、発熱体の一例である。貯留部51は、貯留部、浸漬部の一例である。冷媒Rは、流体の一例である。伝熱フィン53は、放熱体、放熱部の一例である。チムニー55は、筒部、囲い部の一例である。本体部551は、筒状部材の一例である。テーパ部552は、傾斜部の一例である。第1流路部および第2流路部は、流路部の一例である。上側開口部55H1は、開口部、抑制部の一例である。被固定部10Fは、被設置部の一例である。回路基板31は、回路基板の一例である。電子部品35は、電子部品の一例である。
【0082】
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…情報処理システム、10…モジュール装置、30…電子機器、31…回路基板、35…電子部品、50…冷却装置、51…貯留部、53…伝熱フィン、55…チムニー、55H1…上側開口部、55H2…下側開口部、61…第1流路部、62…第2流路部、551…本体部、552…テーパ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9