(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046479
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ドレッシング完了判定方法およびドレッシング完了判定装置
(51)【国際特許分類】
B24B 53/00 20060101AFI20240327BHJP
B24B 49/18 20060101ALI20240327BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B24B53/00 A
B24B49/18
B24B53/00 B
B24B53/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151900
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】五十君 智
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝喜
(72)【発明者】
【氏名】田中 由依
【テーマコード(参考)】
3C034
3C047
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034BB01
3C034BB91
3C034CA16
3C034CA30
3C034CB01
3C034CB12
3C034DD05
3C047AA02
3C047AA04
3C047AA05
3C047AA08
3C047AA12
3C047AA16
3C047AA31
3C047EE04
3C047EE18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】煩雑な準備作業を必要とすることなく、高精度で研削砥石のドレッシング完了判定を行なうことができるドレッシング完了判定装置を提供する。
【解決手段】積算電力量算出部により、ドレッサ走査中に超音波振動器に供給する電力値Xのピーク中の積算した積算電力量Xsが前記ドレッシング走査毎に算出され、ドレッシング完了判定部により、前記ドレッシング走査毎に算出された積算電力量Xsが飽和したことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了が判定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレッサ先端に所定の振幅の超音波振動を付与する超音波ドレッシング装置により研削砥石のドレッシング面にドレッサを摺接させつつ前記ドレッシング面を幅方向に横切るように前記ドレッサを一定の送り速度で移動させるドレッシング走査を一定の切り込み量を与える毎に繰り返し行なう、前記ドレッシング面のドレシング処理の完了を、前記研削砥石と前記ドレッサとの接触に起因して発生する電力値の変動に基づいて自動判定するドレッシング完了判定方法であって、
超音波ドレッシング中に発生する負荷に応じて超音波発振器が供給する電力値をピーク間で積算したドレッシングエネルギを、前記ドレッシング走査毎に算出するドレッシングエネルギ算出工程と、
前記ドレッシングエネルギ算出工程によりドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギの増加が飽和したことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了を判定するドレッシング完了判定工程とを、
含むことを特徴とするドレッシング完了判定方法。
【請求項2】
ドレッサ先端に一定の振幅の超音波振動を付与する超音波ドレッシング装置により研削砥石のドレッシング面にドレッサを摺接させつつ前記ドレッシング面を幅方向に横切るように前記ドレッサを一定の送り速度で移動させるドレッシング走査を一定の切り込み量を与える毎に繰り返し行なう、前記ドレッシング面のドレシング処理の完了を、前記研削砥石と前記ドレッサとの接触に起因して発生する電力値の変動に基づいて自動判定するドレッシング完了判定装置であって、
超音波ドレッシング中に発生する負荷に応じて超音波発振器が供給する電力値をピーク間で積算したドレッシングエネルギを、前記ドレッシング走査毎に算出するドレッシングエネルギ算出部と、
前記ドレッシングエネルギ算出工程によりドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギの増加が飽和したことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了を判定するドレッシング完了判定部とを、
含むことを特徴とするドレッシング完了判定装置。
【請求項3】
前記ドレッシング走査中における電力値ピークの発生に基づいて、前記ドレッサが前記研削砥石のドレッシング面に接している時間であるスパークタイムを算出するスパークタイム算出部と、
ドレッサ送り機構による前記ドレッサの送り速度と前記研削砥石のドレッシング面の幅寸法とに基づいて算出される理論スパークタイムよりも短いスパークタイム判定閾値を設定するスパークタイム判定閾値設定部と、
前記スパークタイム算出部によりドレッシング走査毎に算出されたスパークタイムが、前記スパークタイム判定閾値を超えたことに基づいて形状修正の完了を判定する形状修正合格判定部とを、含み、
前記ドレッシング完了判定部は、前記積算強度値算出部によりドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギの増加が飽和したこと、および前記形状修正合格判定部により前記形状修正の完了が判定されたことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了を判定すること
を特徴とする請求項2のドレッシング完了判定装置。
【請求項4】
前記ドレッシング完了判定部は、前記ドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギがそれまで繰り返されたドレッシング走査により得られたドレッシングエネルギの最大値以下となったことに基づいてドレッシングエネルギの増加が飽和したと判定すること
を特徴とする請求項2または3のドレッシング完了判定装置
【請求項5】
前記ドレッシング完了判定部は、前記ドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギの直近所定回数の変動係数が閾値以下となったことに基づいてドレッシングエネルギの増加が飽和したと判定すること
を特徴とする請求項2または3のドレッシング完了判定装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削砥石がドレッサにより目立てされ或いは形状修正されるドレッシング加工の完了を判定することができるドレッシング完了判定方法およびドレッシング完了判定装置に関し、特にドレッサや研削砥石の種類、ドレッシング条件を変更したときの予備試験を不要とし、ドレッシングの完了についての誤判定を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削砥石に対するドレッシング作業(目立て、形状修正)の完了を自動的に判定する装置として、AE信号(acoustic emission signal:周波数がたとえば100kHz以上の超音波領域の振動波)を検出し、そのAE信号と、予め求めて記憶させたマスター波形との差分が予め設定された閾値以内であるか否かに基づいてドレッシングの完了判定を行なう装置が提案されている。たとえば、特許文献1の砥石成形状態判定装置及び砥石成形状態判定方法がそれである。
【0003】
上記特許文献1に記載の砥石成形状態判定装置及び砥石成形状態判定方法によれば、砥石の断面直径によってAE信号が変化するときでも、砥石の形状修正状態の判定を容易に行なうことができ、ドレッシングの完了判定とドレッサの摩耗検出とを同時に行なうことができると、されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5219600号公報
【特許文献2】特開平7-237123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のドレッシング完了判定装置では、ドレッサや砥石の種類を変更する度に、マスター波形や閾値を予め求めるための予備試験を、繰り返し行なう必要があり、準備作業が煩雑となっていた。また、AE信号とマスター波形との差分をとる場合には、時間軸上で実際のドレッシング作業にともなって発生する信号であるAE信号波形とマスター波形とを用いた高精度な重ね合わせが必要となり、誤判定が生じやすいという問題があった。
【0006】
一方、研削砥石のドレッシング方法として、ドレッサに超音波振動を与える方法が提案されている。たとえば特許文献2がそれである。かかる方法においても、実際のドレッシング作業にともなって発生する何らかの信号とマスター波形との差分をとって、ドレッシングの完了を判定することも考えられるが、その場合であっても、マスター波形の取得のための予備試験や実際の波形とマスター波形との重ね合わせ作業が必要となる。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、煩雑な準備作業を必要とすることなく、高精度で研削砥石のドレッシング完了判定を行なうことができるドレッシング完了判定方法およびドレッシング完了判定装置を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明等者は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、ドレッシング処理においてドレッサを研削砥石のドレッシング面を横切るように移動させる走査を、一定の切込量を与える毎に繰り返し行なうとき、ドレッサが走査されるドレッシング走査中に発生するAE信号の積算強度値に着目すると、AE信号の積算強度値がドレスストローク毎に増加する点、および、ドレッシング面の目立てが完了する状態では、そのAE信号のドレッシング走査中の積算強度値の増加が飽和する点を見出した。本発明は、かかる知見に基づいて為されたものである。
【0009】
すなわち、第1発明の要旨とするところは、(a)ドレッサ先端に所定の振幅の超音波振動を付与する超音波ドレッシング装置により研削砥石のドレッシング面にドレッサを摺接させつつ前記ドレッシング面を幅方向に横切るように前記ドレッサを一定の送り速度で移動させるドレッシング走査を一定の切り込み量を与える毎に繰り返し行なう、前記ドレッシング面のドレシング処理の完了を、前記研削砥石と前記ドレッサとの接触に起因して発生する電力値の変動に基づいて自動判定するドレッシング完了判定方法であって、(b)超音波ドレッシング中に発生する負荷に応じて超音波発振器が供給する電力値をピーク間で積算したドレッシングエネルギを、前記ドレッシング走査毎に算出するドレッシングエネルギ算出工程と、(c)前記ドレッシングエネルギ算出工程によりドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギの増加が飽和したことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了を判定するドレッシング完了判定工程とを、含むことにある。
【0010】
また、第2発明の要旨とするところは、(a)ドレッサ先端に一定の振幅の超音波振動を付与する超音波ドレッシング装置により研削砥石のドレッシング面にドレッサを摺接させつつ前記ドレッシング面を幅方向に横切るように前記ドレッサを一定の送り速度で移動させるドレッシング走査を一定の切り込み量を与える毎に繰り返し行なう、前記ドレッシング面のドレシング処理の完了を、前記研削砥石と前記ドレッサとの接触に起因して発生する電力値の変動に基づいて自動判定するドレッシング完了判定装置であって、(b)超音波ドレッシング中に発生する負荷に応じて超音波発振器が供給する電力値をピーク間で積算したドレッシングエネルギを、前記ドレッシング走査毎に算出するドレッシングエネルギ算出部と、(c)前記ドレッシングエネルギ算出工程によりドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギの増加が飽和したことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了を判定するドレッシング完了判定部とを、含むことにある。
を特徴とするドレッシング完了判定装置。
【発明の効果】
【0011】
第1発明のドレッシング完了判定方法、および、第2発明のドレッシング完了判定装置によれば、研削砥石のドレッシング面にドレッサを摺接させつつ前記ドレッシング面を幅方向に横切るように前記ドレッサを一定の送り速度で移動させるドレッシング走査を一定の切込量を与える毎に繰り返し行なう、前記ドレッシング面のドレッシング処理の完了を、前記研削砥石とドレッサとの接触に起因して発生する電力値の変動に基づいて自動判定するに際して、ドレッシングエネルギ算出工程により、ドレッサ走査中に発生する超音波発振器に供給する電力値のピーク中の積算したドレッシングエネルギが前記ドレッシング走査毎に算出され、ドレッシング完了判定工程により、前記ドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギが飽和したことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了が判定される。これにより、煩雑な準備作業を必要とすることなく、高精度で研削砥石のドレッシング完了判定を行なうことができる。
【0012】
また、第3発明にかかるドレッシング完了判定装置は、第2発明のドレッシング完了判定装置において、(d)前記ドレッシング走査中における電力値ピークの発生に基づいて、前記ドレッサが前記研削砥石のドレッシング面に接している時間であるスパークタイムを算出するスパークタイム算出部と、(e)ドレッサ送り機構による前記ドレッサの送り速度と前記研削砥石のドレッシング面の幅寸法とに基づいて算出される理論スパークタイムよりも短いスパークタイム判定閾値を設定するスパークタイム判定閾値設定部と、(f)前記スパークタイム算出部によりドレッシング走査毎に算出されたスパークタイムが、前記スパークタイム判定閾値を超えたことに基づいて形状修正の完了を判定する形状修正合格判定部とを、含み、(g)前記ドレッシング完了判定部は、前記積算強度値算出部によりドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギの増加が飽和したこと、および前記形状修正合格判定部により前記形状修正の完了が判定されたことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了を判定することを特徴とする。このようにすれば、前記スパークタイム算出部により算出されたスパークタイムが、スパークタイム判定閾値設定部により設定されたスパークタイム判定閾値を超えたことに基づいて形状修正の完了が判定されると、前記ドレッシング完了判定部により、前記ドレッシングエネルギ算出部によりドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギの増加が飽和したこと、および前記形状修正合格判定部により前記形状修正の完了が判定されたことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了が判定される。これにより、ドレッシング処理の完了判定の精度が、一層高められる。
【0013】
また、第4発明にかかるドレッシング完了判定装置は、第2発明または第3発明のドレッシング完了判定装置において、(h)前記ドレッシング完了判定部は、前記ドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギがそれまで繰り返されたドレッシング走査により得られたドレッシングエネルギの最大値以下となったことに基づいてドレッシングエネルギの増加が飽和したと判定すること、を特徴とする。このようにすれば、前記ドレッシング完了判定部は、前記ドレッシング走査毎に積算されたドレッシングエネルギがそれまでに繰り返されたドレッシング走査により得られたドレッシングエネルギ以下となったことに基づいて、前記ドレッシング走査毎に積算されたドレッシングエネルギの増加が飽和したと判定するので、前記ドレッシング処理の完了が明確に判定される。
【0014】
また、第5発明にかかるドレッシング完了判定装置は、第2発明または第3発明のドレッシング完了判定装置において、(i)前記ドレッシング完了判定部は、前記ドレッシング走査毎に算出されたドレッシングエネルギの直近の複数回における変動係数が閾値以下となったことに基づいてドレッシングエネルギの増加が飽和したと判定すること、を特徴とする。このようにすれば、直近における複数回のドレッシングエネルギに基づいて、その値が飽和したか否かの判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例のドレッシング完了判定装置を備えるドレッシング装置の構成を説明する図である。
【
図2】
図1のドレッシング装置に用いられるドレッサの構成を、一部を切り欠いて説明する図である。
【
図3】本発明の一実施例のドレッシング装置における電子制御装置が有する機能を説明する図である。
【
図4】
図1の電子制御装置の制御作動を説明するフローチャートである。
【
図5】ドレッシング走査の繰り返し時における超音波発信回路の消費電力の時間変化と、走査ごと、すなわち、ピーク中ごとのスパークタイム率と累積電力量とをそれぞれ示した図である。
【
図6】ドレッシング走査の繰り返し時における各走査ごと、すなわち各ピークごとに、スパークタイム率、形状修正の合否判定、累積電力量、および、ドレッシング処理の完了を意味する総合判定の合否を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は発明に関連する要部を説明するものであり、寸法及び形状等は必ずしも正確に描かれていない
【実施例0017】
図1において、ドレッシング装置10は、ドレッサ12の先端を摺接させることによって円筒状の研削ホイール14の外周面であるドレッシング面16の目立ておよび形状修正を行なうドレッシング処理を行なうものであって、研削盤の機構が流用されている。ドレッシング面16は、研削ホイール14の外周研削面であって、ドレッサ12によるドレッシング(形状修正および目立て)の対象となる部分であり、研削に寄与する部分を少なくとも含む。研削ホイール14は、砥粒を無機結合剤により結合した円筒状のビトリファイド砥石である。
【0018】
ドレッシング装置10は、回転可能に設けられて研削ホイール14を支持する支持軸18をドレッシング処理中において回転駆動することで研削ホイール14を回転中心線CLまわりに回転駆動する砥石駆動モータ20と、ドレッサ12を先端部に備え、ドレッサ12を研削ホイール14のドレッシング面16に対して接近離隔する方向の超音波振動を与える超音波振動付与装置22と、ドレッサ12の先端が露出する状態で超音波振動付与装置22を収容する保持器24と、保持器24が固定され、ドレッサ12の先端が研削ホイール14に対して接近離隔する方向に案内される切込テーブル26と、切込テーブル26の位置を移動させる切込モータ28と、切込テーブル26が取り付けられ、回転中心線CL方向に平行な方向に案内される走査テーブル30と、走査テーブル30を往復駆動する走査モータ32とを備えている。また、ドレッシング装置10は、前記砥石駆動モータ20、切込モータ28、および、操作モータ32を指令に従って駆動制御するドレッシング駆動制御装置33を備えている。また、後述する超音波発信回路44において消費される電力を測定する電力測定装置45を備えている。
【0019】
電力測定装置45は、いわゆる電力計を含んで構成されており、超音波発信回路44の消費電力をアナログ出力、もしくは所定のサンプリング速度でAD変換したデジタル出力をするように構成されている。
【0020】
上記走査テーブル30および走査モータ32は、研削ホイール14の円筒状のドレッシング面16を幅方向にすなわち回転中心線CL方向に横切るようにドレッサ12を走査する、ドレッサ走査装置として機能している。
【0021】
図2に示すように、超音波振動付与装置22は、基部から先端部に向かうほど小径となる長手形状を成す本体23と、一対の電極34に挟まれた圧電素子等から成る超音波振動器(超音波振動子)36を本体23の基部に備えるとともに、螺合などにより装着穴に嵌め着けられたドレッサ12を本体23の先端部に備えている。超音波発振器40の超音波発振回路44から出力される駆動信号が一対の電極34に供給されると、超音波振動器36がたとえば35kHz~55kHzの範囲内の周波数およびたとえば1μm~10μmの範囲内の振幅で超音波振動付与装置22の長手方向に振動し、研削ホイール14に対して接近離隔する方向の超音波振動をドレッサ12に付与する。超音波発振回路44は、ドレッサ12に付与する超音波振動の周波数および振幅を設定可能に構成されている。
【0022】
ドレッサ12は、位置固定で用いられる軸物ドレッサであって、長手状のシャンク部42と、シャンク部42の先端において一端部が露出した状態で他端部がメタルボンド内に埋設された1個の柱状の単結晶或いは多結晶の合成ダイヤモンドから成るダイヤモンド研削片44とを備えている。ダイヤモンド研削片44は、粒状の天然ダイヤモンドであってもよいし、ダイヤモンド粒子がメタルボンドにより結合された円柱状或いは矩形状を成すものであってもよい。
【0023】
以上のように構成されたドレッシング装置10では、切込モータ28によりドレッサ12の先端が研削ホイール14に対して所定の切込量となるまで切込テーブル26が移動させられた状態で、ドレッサ走査装置として機能する走査モータ32によって走査テーブル30が回転中心線CL方向に平行な方向に往復駆動させられると、ダイヤモンド研削片44が研削ホイール14のドレッシング面16に接触した状態でドレッサ12が走査される(ドレッサ走査工程)。このドレッサ12の走査過程において、超音波発振回路44から出力される駆動信号が一対の電極34に供給されると、超音波振動器36がたとえば35kHz~55kHzの周波数で超音波振動付与装置22がその長手方向に振動するので、ドレッサ12の先端部に備えられたダイヤモンド研削片44が研削ホイール14のドレッシング面16に対して接近離隔する方向に振動するようにドレッサ12に超音波振動が付与される(超音波振動工程)。
【0024】
ここで、超音波発信回路44は、超音波振動付与装置22における超音波振動器36が安定して可動できるのに、言い換えれば一定の振幅を保ちつつ作動するのに適切な値の電力を適宜調整しつつ供給する。すなわち、ドレッシング中においては、ドレッサ12が研削ホイール14に接するため、超音波振動器36はその振動方向(
図1、
図2における垂直方向)に力(負荷)を受けることとなるが、かかる場合においても受ける力に対抗して所定の振幅を維持するために、超音波発信回路44からは、無負荷状態に比べてより大きな電力が供給される。そのため、ドレッシングにおける走査を行うごとに、ドレッサ12が研削ホイール14に接する状態となるのに対応して、超音波発振回路44の消費電力が上昇した状態となる。
【0025】
図3に示すように、ドレッシング装置10は、電子制御装置25を備えている。電子制御装置25は、CPU、ROM、RAM、インターフェースなどを含む所謂マイクロコンピュータであって、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って、研削ホイール14のドレッシング面16にドレッサ12を摺接させつつドレッシング面16を幅方向に横切るようにドレッサ12を一定の送り速度で移動させるドレッシング走査を、一定の切込み量を与える毎に繰り返し行なうように、ドレッシング駆動制御装置33を作動させる。このとき、電子制御装置25は、超音波振動付与装置22に所定の周波数、かつ所定の振幅の超音波を発生させる。また、電子制御装置25は、超音波振動付与装置22の消費電力値Xを所定の間隔で測定し、かかる消費電力値Xに基づいて、ドレッシング面16の目立ておよび形状修正についてのドレッシング処理のドレッシング完了判定を行なうとともにドレッシング完了指令信号をドレッシング駆動制御装置33へ出力するとともに、ドレッシング面状態を表す数値、グラフ、或いは図形などを算出し、面状態表示装置48から表示させる。
【0026】
電子制御装置25は、ドレッシング完了判定装置としても機能するものであり、ドレッシング条件設定部56、スパークタイム判定閾値設定部58、スパークタイム算出部60、形状修正合格判定部62、電力判定閾値算出部66、電力量算出部68、積算電力量算出部70、ドレッシング合格判定部72および、ドレッシング完了判定部74を、機能的に備えている。
【0027】
ドレッシング条件設定部56は、ドレッシング条件設定工程に対応しており、研削ホイール14のドレッシングのための条件、すなわちドレッサ12の駆動の条件を設定する。具体的には、研削ホイール14の形状に基づいて、ドレッサ12によるドレッシング幅Wd、および、ドレッシング駆動制御装置33の走査モータ32によるドレッサ12の一定のドレッシング送り速度(走査速度)Vdが操作者によって設定される。ドレッシング幅Wdは、たとえば、研削砥石14のドレッシング面16の幅寸法に相当する。
【0028】
スパークタイム判定閾値設定部58は、スパークタイム判定閾値設定工程に対応しており、前記ドレッシング条件設定部56において設定された、走査速度Vdとドレッシング幅Wdとから、理論上のスパークタイム(火花時間)STを、ST=Wd/Vdのように算出する。そして理論上のスパークタイムSTに形状修正完了を判定する予め定められた割合(係数)たとえば「0.95」を乗算することで、スパークタイム判定閾値STt(sec)を設定する。
【0029】
スパークタイム算出部60は、スパークタイム算出工程に対応しており、ドレッシング処理中においてドレッサ12が研削砥石14のドレッシング面16に繰り返し接触させられるドレッシング走査において、ドレッサ12の走査毎に、電力測定装置45によって測定される超音波発信回路44の消費電力Xに基づいて実際のスパークタイムSTsを算出する。具体的には、電力測定装置45によって測定される超音波発信回路44の消費電力Xが、後述する電力判定閾値Ptを上回った時点から下回った時点までを計時して、実際のスパークタイムSTsとして検出する。あるいは、消費電力Xが、後述する電力判定閾値Ptを上回った時点から下回った時点まで計数した測定回数に測定間隔を乗じて得られる累積時間を実際のスパークタイムSTsとして検出する。
【0030】
形状修正合格判定部62は、形状修正合格判定工程に対応しており、ドレッサ12の走査毎に、スパークタイム算出部60により算出された実際のスパークタイムSTsが、スパークタイム判定閾値設定部58により設定されたスパークタイム判定閾値STt以上となったか否かを判定し、上回った場合には、形状修正が合格(完了)であると判定する。
【0031】
電力判定閾値算出部66は、電力判定閾値算出工程に対応しており、ドレッサ12を研削砥石14のドレッシング面16に接触させないで、ドレッシング駆動制御装置33が走査モータ32および走査テーブル30によりドレッサ12をドレッシング走査させた非ドレッシング区間において、電力測定装置45によって測定される超音波発信回路44の消費電力X、すなわち、無負荷時電力Xnに基づいて電力判定閾値Ptを算出する。この電力判定閾値Ptは、ドレッサ12を研削砥石14のドレッシング面16に接触させたドレッシング状態か、接触していない無負荷状態であるかを判断するための閾値として用いられる。たとえば、電力判定閾値算出部66は、無負荷時電力Xnとして少なくとも100個のデータを採取し、それら無負荷時電力値Xnの変動係数CVを求め、その変動係数CVが安定時たとえば「0.1」以下である区間のデータの最大値Xmax又は平均値Xavを算出し、その最大値Xmax又は平均値Xavに1.1を乗じた値を電力判定閾値Ptとして設定する。
【0032】
上記無負荷時電力Xnの変動係数CVは、無負荷ドレッシング中の消費電力Xnの各データの標準偏差σを無負荷ドレッシング中の消費電力Xnの平均値Xavで除した値である。
【0033】
積算電力量算出部70は、ドレッシングエネルギ算出工程に対応しており、ドレッシング処理においてドレッサ12が研削砥石14のドレッシング面16に繰り返し接触させられるドレッシング走査期間内において、電力測定装置45によって繰り返し測定される超音波発信回路44の消費電力Xjが電力判定閾値Pt以上となった場合に消費電力Xjの積算を開始し、消費電力Xjが電力判定閾値Pt下回った場合に積算を行わずに終了する。このようにして得られた積算値Xsを1回のドレッシング走査における累積電力量Xsとする。この累積電力量Xsの算出をドレッシング走査毎に算出する。この累積電力量Xsがドレッシングエネルギに対応する。
【0034】
ドレッシング合格判定部72は、ドレッシング合格判定工程に対応しており、積算電力量算出部70によってドレッシング走査毎に算出された累積電力量Xsのドレッシング処理の開始時点からの増加が、飽和したか否かを判定し、累積電力量Xsが飽和した場合には、目立てに関してドレッシング合格(目立て合格)と判定する。たとえば、ドレッシング合格判定部72は、累積電力量Xsがそれまでの最大累積電力量Xsmax以下(Xs≦Xsmax)となると、累積電力量Xsの増加が飽和したと判定する。この積算強度値Xsの増加の飽和は、目立て効果の飽和を示す。STs≧STt且つXs>Xsmaxであれば、そのときのドレッシング走査時の累積電力量Xsが最大累積電力量Xsmaxとして更新(設定)される。これにより、研削盤がNCと連動しないレトロフィット的な使い方をする場合に、消費電力Xjのピーク波形が断続的に発生したときに、誤判定を防止することができる。
【0035】
ドレッシング完了判定部74は、形状修正合格判定部62により実際のスパークタイムSTsがスパークタイム判定閾値STtを上回ったこと、および、積算電力量算出部70によりドレッシング走査毎に算出された消費電力Xjの累積電力量Xsの増加が飽和したことに基づいて、ドレッシング処理の完了を判定する。すなわち、ドレッシング完了判定部74は、形状修正合格判定部62によって形状修正が合格であると判定され、且つ、ドレッシング合格判定部72によって目立てに関するドレッシングが合格(目立て合格)と判定されると、ドレッシング完了判定を行い、ドレッシング駆動制御装置33によるドレッシング動作を停止させるとともに、ドレッシングの完了に関する表示メッセージを面状態表示装置48に表示させる。
【0036】
図4は、電子制御装置25の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
図4において、ドレッシング条件設定部56に対応するステップS1( 以下、ステップを省略する)では、ドレッシング条件として、ドレッシング駆動制御装置33によるドレッサ12の一定の走査速度Vdと、研削砥石14のドレッシング面16の幅寸法Wdが図示しない入力装置などを用いて操作者によって入力される。なお、走査速度Vdおよび研削砥石14のドレッシング面16の幅寸法Wdとして、予め設定された値が用いられる場合には本ステップは省略されてもよい。S2においては、S1において入力された、ドレッシング駆動制御装置33によるドレッサ12の一定の走査速度Vdと、研削砥石14のドレッシング面16の幅寸法Wdとから、理論上のスパークタイム(火花時間)ST(=Wd/Vd)が算出される。S3では、理論上のスパークタイムSTに形状修正完了を判定する予め定められた割合(係数)たとえば「0.95」が乗算されることで、スパークタイム判定閾値STt(sec)が設定される。本実施例では、S2およびS3が、スパークタイム判定閾値設定部58に対応している。
【0037】
S4では、非ドレッシング状態において、超音波振動器36が作動させられ、超音波振動器36によって発生させられた超音波振動が超音波振動付与装置22を介してドレッサ12に加えられる。ドレッサ12が研削砥石14のドレッシング面16に接触しないときに電力測定装置45からの信号に基づいて得られる超音波振動器36の消費電力である、無負荷時電力Xnが測定される。S5では、非ドレッシング状態において測定された無負荷時電力Xnのデータ数が100を超えたか否かが判断される。このS5の判断が否定される場合は、S6においてデータ数を示すカウンタが増加させられた後、S4以下が繰り返し実行されるが、肯定される場合は、S7において、無負荷時電力Xnの変動係数CV(=σ/Xav)が、算出される。次いで、S8では、無負荷時電力Xnの変動係数CVが「0.1」以下であるか否かが判断される。このS8の判断が否定される場合は、S9においてデータ数を示すカウンタnが0にリセットさせられた後、S4以下が繰り返し実行される。S8の判断が肯定される場合は、S10において、変動係数CVが安定時たとえば「0.1」以下である区間のデータの最大値Xmax又は平均値Xavに1.1を乗じた値が電力判定閾値Ptとして設定される。本実施例では、S4~S10が、電力判定閾値算出部66に対応している。
【0038】
次に、S11では、ドレッシング処理が開始され、研削ホイール14のドレッシング面16にドレッサ12が摺接させられた状態でドレッシング面16を幅方向に横切るようにドレッサ12が一定の送り速度で往復走査させられるとともに、ドレッサ12がドレッサ12をドレッシング面16側へ一定の切込み量で走査毎に切り込まれる。また、超音波振動器36によって発生させられた超音波振動が超音波振動付与装置22を介してドレッサ12に加えられる。これにより、ドレッサ12が摺接させられたドレッシング面16が平坦に形状修正されるとともに、ドレッシング面16の目立てが行なわれる。
【0039】
S12では、上記ドレッシング処理中の超音波振動器36の消費電力Xjが測定される。S13では、消費電力Xjの大きさが電力判定閾値Pt未満となったか否かが判断される。S13の判断が否定された場合は、研削ホイール14とドレッサ12との接触すなわち研削ホイール14の砥粒の破砕が開始された状態であるので、S14において累積電力量Xs(=Xs+Xj)が算出されるとともに、S15において、研削ホイール14とドレッサ12との接触すなわち研削ホイール14の砥粒の破砕が開始されてからの累積時間である実際のスパークタイムSTs(=STs+Δt)が、積算周期Δtを逐次加算することで積算される。また、S16においては、ドレッサ12の1回の走査における、電力Xjの測定回数を示す変数jが1ずつ増加させられる。
【0040】
ドレッシング処理中の消費電力Xjの大きさが電力判定閾値Ptを下回り、S13の判断が肯定された場合は、S17において、1回前の走査における消費電力Xj-1の値が電力判定閾値Pt以上であるか否かが判断される。このS17の判断が否定される場合は、S12以下が繰り返し実行されるが、肯定される場合は、S18においてスパークタイムSTsが確定されるとともに、S19において累積電力量Xsが確定される。本実施例では、S12、S13、S15、S17、S18がスパークタイム算出部60に対応し、S12、S13、S14、S17、S19が積算電力量算出部70に対応している。
【0041】
S20では、S18で確定されたスパークタイムSTsがS3において設定されたスパークタイム判定閾値STt以上であるか否かが判断される。このS20の判断が否定される場合は、S21においてスパークタイムSTsの内容、および、累積電力量Xsの内容が初期化された後S12以下が実行される。しかし、S20の判断が肯定される場合は、S22において、スパークタイムSTsの合格フラグが立てられ、ドレッシング面16の形状修正が完了と判定される。本実施例では、S20、S22が、形状修正合格判定部62に対応している。
【0042】
S23では、確定されたドレッシング処理中の消費電力Xjの積算値である累積電力量Xjが、飽和したか否か、すなわちそれまでの各走査における累積電力量Xjの最大値である、最大累積電力量Xjmax以下(Xj≦Xjmax)であるか否かが、判断される。このS23の判断が否定される場合は、S24において最大積算電力量Xjmaxが直前の走査における累積電力量Xjに更新された後、S21においてスパークタイムSTsの内容、および、累積電力量Xsの内容が初期化された後S12以下が実行される。しかし、S23の判断が肯定される場合は、S25において、目立てに関してドレッシングの合格(目立て合格)フラグが立てられ、ドレッシング完了と判定される。本実施例では、S23、S24、S25が、ドレッシング合格判定部72に対応している。
【0043】
そして、ドレッシング完了判定部74に対応するS26では、スパークタイムSTsの合格フラグが立てられ、且つ、目立てに関してドレッシングの合格フラグが立てられたことに基づいて、ドレッシングの完了判定が行なわれる。
【0044】
以下において、本発明者等が行なった、以下に示すドレッシング条件のドレッシングの実験により得られた結果を、
図5、
図6を用いて説明する。
(ドレッシング条件)
砥石仕様:CX 120 K V104
砥石径:216x25x76.2
砥石周速度:1800m/min
ドレッサ:単石ドレッサ
ドレッシング装置:超音波ドレッシング装置(振動周波数40kHz、最大振幅p-p 10μm)
ドレッシング切込量:R10μm/Pass
ドレッシングリード:0.1mm/rev.
ドレッシング送り速度268mm/min
研削油:ノリタケクールSEC-700(流量 12.3L/min)
【0045】
上記ドレッシング条件にてドレッシングを実施し、電力測定装置45によって得られる超音波発振器40の消費電力Xn、Xjを得た。このとき、電力測定装置45が出力する電力値は、所定のサンプリング間隔、たとえば10sps(samples per second)でAD変換されて電子制御装置25に供給される。
【0046】
図5において、横軸は時間軸であり、上記ドレッシングにより得られた消費電力Xn、Xjの時間変化を折れ線グラフで示している。
図4において、消費電力Xn、Xjのうち、実際のドレッシング、すなわち、ドレッサ12が研削ホイール14に接している区間における消費電力Xjについては、山形のピーク波形が発生している。ここで、前述の
図4のフローチャートに従い、1回の走査ごとにスパークタイムSTsおよび累積電力量Xsが算出される。このうち、スパークタイムSTsは、その理論上のスパークタイムSTに対する比であるST評価値(%)が
図5における黒四角印で示されている。また、累積電力量Xsは
図5における黒丸印で示されている。
【0047】
図5において横方向に伸びる実線は、電力判定閾値Ptを示している。従って、電力値が電力判定閾値Pt未満からそれを超えたところから、再び電力判定閾値Pt未満となるまでが一つのピーク(ピーク間もしくはピーク中ともいう)に対応する。また、破線はスパークタイム閾値STtを前記ST評価値に換算した値を示している。
【0048】
図5において、概ね20秒を過ぎたあたりで電力の値がピークに向けて上昇し始めることがわかる。これは、それ以前についてはドレッサ12が研削ホイール14に接しておらず、無負荷状態であるので、その区間において計測された電力は前述の無負荷電力Xnに相当する。一方、それ以降についてはドレッサ12が研削ホイール14に接して実際にドレッシングを実行している場合の超音波発信回路44の消費電力Xjに相当する。
【0049】
従って、
図5において、電力Xjを表す折れ線が実線を下に向かって横切る場合に、S13およびS17の判断がいずれも肯定され、ドレッシングにおける1回の走査が終了したものと判断される。また、黒四角印で表されるST評価値(%)が、破線よりも上にある場合に
図4におけるS20の判断が肯定され、スパークタイムに関して合格となる。
【0050】
図6では、ドレッシング作業において電力Xjのピーク波形毎に得られるST評価値(%)と、ST評価値、すなわち、実際のスパークタイムSTsの理論上のスパークタイムSTに対する割合が95%を連続して超えたか否かすなわち飽和したか否かを示す形状修正の合否判定と、ピーク波形毎に得られる電力Xjの積算値である累積電力量Xsと、累積電力量Xsが飽和したか否かのドレッシング(目立て)の合否判定とが、各ピークごとに示された表である。すなわち、
図6の表における各列は、
図5において示された黒丸印および黒四角印の時間軸に沿って記載したものである。これによれば、ピーク波形No.8において形状修正の合格が判定される一方で、目立てについてのドレッシングについては不合格と判定される。ピーク波形No.9において、形状修正の合格が判定されるとともに、目立てについてのドレッシングの合格も判定された。
【0051】
上述のように、本実施例の電子制御装置25であるドレッシング完了判定装置、あるいは電子制御装置25によって実行されるドレッシング完了判定方法によれば、研削ホイール14のドレッシング面16にドレッサ12を摺接させつつ前記ドレッシング面16を幅方向に横切るように前記ドレッサ12を一定の送り速度で移動させるドレッシング走査を一定の切込量を与える毎に繰り返し行なう、前記ドレッシング面16のドレッシング処理の完了を、前記研削ホイール4とドレッサ12との接触に起因して発生する電力値Xの変動に基づいて自動判定するに際して、積算電力量算出部70により、ドレッサ走査中に発生する超音波振動器36に供給する電力値Xのピーク中の積算した積算電力量Xsが前記ドレッシング走査毎に算出され、ドレッシング完了判定部74により、前記ドレッシング走査毎に算出された積算電力量Xsが飽和したことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了が判定される。これにより、煩雑な準備作業を必要とすることなく、高精度で研削ホイール14のドレッシング完了判定を行なうことができる。
【0052】
また、本実施例のドレッシング完了判定装置およびドレッシング完了判定方法によれば、前記スパークタイム算出部60により算出されたスパークタイムSTが、スパークタイム判定閾値設定部58により設定されたスパークタイム判定閾値STtを超えたことに基づいて形状修正の完了が判定されると、前記ドレッシング完了判定部74により、前記積算電力量算出部70によりドレッシング走査毎に算出された積算電力量Xsの増加が飽和したこと、および前記形状修正合格判定部62により前記形状修正の完了が判定されたことに基づいて、前記ドレッシング処理の完了が判定される。これにより、ドレッシング処理の完了判定の精度が、一層高められる。
【0053】
また、本実施例のドレッシング完了判定装置およびドレッシング完了判定方法によれば、前記ドレッシング完了判定部74は、前記ドレッシング走査毎に積算された積算電力量Xsがそれまでに行われたドレッシング走査により得られた積算電力量Xs以下となったことに基づいて、前記ドレッシング走査毎の積算電力量Xsの増加が飽和したと判定するので、前記ドレッシング処理の完了が明確に判定される。
【0054】
以上、本発明の一実施例を図面を用いて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0055】
たとえば、前述の実施例において、ドレッシング完了判定部74(S23~S25)は、前記ドレッシング走査毎に積算された積算電力量Xsがそれまでに行われたドレッシング走査により得られた積算電力量Xs以下となったことに基づいて、前記ドレッシング走査毎の積算電力量Xsの増加が飽和したと判定したが、このような態様に限られない。たとえば、ドレッシング完了判定部74は、直近に行われた所定回数(たとえば、3回)のドレッシング走査のそれぞれにおいて得られた積算電力量Xsについての変動係数を算出し、その変動係数が予め定められた閾値以下となった場合に、積算電力量Xsの増加が飽和したと判定してもよい。このようにすれば、直近における複数の所定回数からなるドレッシング走査時の積算電力量Xsに基づいて、その値が飽和したか否かの判定が可能となる。なお、前記閾値は、実際にドレッシング走査を繰り返すごとに得られる積算電力量Xsが飽和したことが判断しうる値として、たとえば実験的に定められる。
【0056】
また、前述の実施例では、ドレッシング面16が円筒面である研削ホイール14がドレッシングに用いられたが、研削面が環状平面である研削ホイール14が用いられていてもよい。この場合のドレッサ12は、環状平面の研削面を回転中心からみて径方向に研削面を横切るように走査される。
【0057】
また、前述の実施例の研削ホイール14や、上記研削面が円筒面である研削砥石は、レジノイド砥石、ビトリファイド砥石等の種々のボンドで砥粒が結合されたものでもよい。
【0058】
また、前述の実施例のドレッサ12は、1個の柱状ダイヤモンドが埋設された単石ドレッサであったが、これに限られず、その他のドレッシング工具が用いられてもよい。
【0059】
また、前述の実施例においては、ドレッサ12を保持する保持器24が切込テーブル26に固定され、切込テーブル26が走査テーブル30に取り付けられる構成とされたが、このような態様に限定されない。すなわち、前述の実施例においては、切込のための機構によりドレッサ12が移動させられることによりドレッシングが行われたが、たとえば、研削ホイール14を保持し回転させる砥石駆動モータ20が切込テーブルに固定され、切込テーブルが走査テーブルに取り付けられるとともに、切込テーブルが切込モータにより、また、走査テーブルが走査モータによりそれぞれ駆動させられる構成とすることも可能である。かかる構成によっても、ドレッサ12と研削ホイール14との相対位置が変化させられることによってドレッシングが行われる。
【0060】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が加えられ得るものである。