(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046480
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】赤外線情報処理システム、赤外線情報処理方法、赤外線情報処理装置、プログラムおよび赤外線診断システム
(51)【国際特許分類】
G01V 8/10 20060101AFI20240327BHJP
G01M 3/38 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G01V8/10 S
G01M3/38 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151901
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】522150687
【氏名又は名称】株式会社フラクタル
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】西澤 宏通
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 恭平
【テーマコード(参考)】
2G067
2G105
【Fターム(参考)】
2G067AA19
2G067BB15
2G067DD08
2G105AA01
2G105BB16
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE06
(57)【要約】
【課題】赤外線情報を用いて構造物の内部における空隙などの位置関係をユーザが把握できるようにする。
【解決手段】赤外線情報処理システムは、構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得する取得手段と、赤外線データを用いて、構造物の内部に存在する空気または水分である特定対象の構造物の内部における位置を特定する特定手段と、構造物を表す構造物画像に特定対象を表す対象画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。これにより、構造物の内部における空隙などの位置関係をユーザが把握できるようになる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得する取得手段と、
前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する空気または水分である特定対象の前記構造物の内部における位置を特定する特定手段と、
前記構造物を表す構造物画像に前記特定対象を表す対象画像を表示する表示手段と、
を備える、ことを特徴とする赤外線情報処理システム。
【請求項2】
前記表示手段は、前記構造物の厚さ方向における前記特定対象の位置を前記構造物画像に表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の赤外線情報処理システム。
【請求項3】
前記特定手段は、前記赤外線データから得られる前記構造物の表面温度に関する情報を用いて前記特定対象の前記位置を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の赤外線情報処理システム。
【請求項4】
前記特定手段は、前記特定対象を特定する対象領域のうち、前記特定対象の特定を除外する領域の指定を前記構造物画像上でユーザから受け付ける、ことを特徴とする請求項1に記載の赤外線情報処理システム。
【請求項5】
前記表示手段は、前記対象画像を表示する際、前記除外された領域に前記構造物画像を表示する、ことを特徴とする請求項4に記載の赤外線情報処理システム。
【請求項6】
前記特定手段は、前記構造物画像に対して前記特定を除外する領域を示す除外画像を表示し、前記除外画像の移動操作をユーザから受け付ける、ことを特徴とする請求項4に記載の赤外線情報処理システム。
【請求項7】
前記特定手段は、前記構造物を構成する複数の素材および前記素材ごとの厚さの情報を用いて前記特定対象の前記位置を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の赤外線情報処理システム。
【請求項8】
複数の前記素材に関する情報を記憶する記憶手段を備え、
前記特定手段は、複数の前記素材の選択肢を画面に表示し、前記素材の選択をユーザから受け付ける、ことを特徴とする請求項7に記載の赤外線情報処理システム。
【請求項9】
前記表示手段は、前記赤外線データを可視化した前記構造物画像に前記対象画像を重畳して表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の赤外線情報処理システム。
【請求項10】
構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得するステップと、
前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する空気または水分である特定対象の前記構造物の内部における位置を特定するステップと、
前記構造物を表す構造物画像に前記特定対象を表す対象画像を表示するステップと、
を備えることを特徴とする赤外線情報処理方法。
【請求項11】
構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得する取得手段と、
前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する空気または水分である特定対象の前記構造物の内部における位置を特定する特定手段と、
を備えることを特徴とする赤外線情報処理装置。
【請求項12】
コンピュータに、
構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得する機能と、
前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する空気または水分である特定対象の前記構造物の内部における位置を特定する機能と、
前記構造物を表す構造物画像に前記特定対象を表す対象画像を表示する機能と、
を実現するためのプログラム。
【請求項13】
構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得する取得手段と、
前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する異常箇所の前記構造物の内部における位置を特定する特定手段と、
前記特定手段が特定した前記異常箇所の前記位置に基づいて前記構造物を診断する診断手段と、
を備えることを特徴とする赤外線診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線情報処理システム、赤外線情報処理方法、赤外線情報処理装置、プログラムおよび赤外線診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、赤外線サーモグラフィカメラで外壁劣化や雨漏り等の可能性がある箇所を撮影する画像撮影工程と、前記画像撮影工程で撮影した赤外線画像データとして保存された温度データを抜き出して、温度データをグラフ化する温度データグラフ化工程とを備える赤外線サーモグラフィカメラで取得した温度データを3Dグラフで解析し建物の不具合箇所を判別する手法であって、前記温度データグラフ化工程においては、温度データを縦軸と横軸の組み合わせグラフにすることで3Dグラフ化にする装置を用いて3Dグラフ化し3次元で動かすことが出来、作成したグラフの勾配や凹凸角度を基準化し不具合箇所であると判断する事を特徴とする、赤外線サーモグラフィカメラで取得した温度データを3Dグラフで解析し建物の不具合箇所を判別する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば赤外線カメラを用いて建物などの構造物を撮影して得られる赤外線情報に基づいて構造物の診断などを行う技術が知られている。この種の技術では、例えば構造物の表面に現れる温度情報に基づいて構造物の内部の状態を推定していた。しかしながら、従来技術では、構造物の内部における空隙などの位置関係をユーザが把握できなかった。
本発明は、赤外線情報を用いて構造物の内部における空隙などの位置関係をユーザが把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得する取得手段と、前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する空気または水分である特定対象の前記構造物の内部における位置を特定する特定手段と、前記構造物を表す構造物画像に前記特定対象を表す対象画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする赤外線情報処理システムである。
【0006】
ここで、前記表示手段は、前記構造物の厚さ方向における前記特定対象の位置を前記構造物画像に表示するとよい。
また、前記特定手段は、前記赤外線データから得られる前記構造物の表面温度に関する情報を用いて前記特定対象の前記位置を特定するとよい。
また、前記特定手段は、前記特定対象を特定する対象領域のうち、前記特定対象の特定を除外する領域の指定を前記構造物画像上でユーザから受け付けるとよい。
また、前記表示手段は、前記対象画像を表示する際、前記除外された領域に前記構造物画像を表示するとよい。
また、前記特定手段は、前記構造物画像に対して前記特定を除外する領域を示す除外画像を表示し、前記除外画像の移動操作をユーザから受け付けるとよい。
また、前記特定手段は、前記構造物を構成する複数の素材および前記素材ごとの厚さの情報を用いて前記特定対象の前記位置を特定するとよい。
また、複数の前記素材に関する情報を記憶する記憶手段を備え、前記特定手段は、複数の前記素材の選択肢を画面に表示し、前記素材の選択をユーザから受け付けるとよい。
また、前記表示手段は、前記赤外線データを可視化した前記構造物画像に前記対象画像を重畳して表示するとよい。
【0007】
また、かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得するステップと、前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する空気または水分である特定対象の前記構造物の内部における位置を特定するステップと、前記構造物を表す構造物画像に前記特定対象を表す対象画像を表示するステップと、を備えることを特徴とする赤外線情報処理方法である。
また、かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得する取得手段と、前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する空気または水分である特定対象の前記構造物の内部における位置を特定する特定手段と、を備えることを特徴とする赤外線情報処理装置である。
また、かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、コンピュータに、構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得する機能と、前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する空気または水分である特定対象の前記構造物の内部における位置を特定する機能と、前記構造物を表す構造物画像に前記特定対象を表す対象画像を表示する機能と、を実現するためのプログラムである。
【0008】
また、かかる目的のもと、本明細書に開示される技術は、構造物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得する取得手段と、前記赤外線データを用いて、前記構造物の内部に存在する異常箇所の前記構造物の内部における位置を特定する特定手段と、前記特定手段が特定した前記異常箇所の前記位置に基づいて前記構造物を診断する診断手段と、を備えることを特徴とする赤外線診断システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、赤外線情報を用いて構造物の内部における空隙などの位置関係をユーザが把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の赤外線情報処理システムの概略図である。
【
図2】本実施形態のサーバ装置の機能ブロック図である。
【
図3】本実施形態の2次元画像表示部の機能ブロック図である。
【
図4】(A)、(B)および(C)は、内部に空隙を有する構造体のモデル図である。
【
図5】本実施形態の管理画面の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態のメイン画面の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態の検出画面の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態の空隙画像の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態の露点画像の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態の除外設定画面の一例を示す図である。
【
図11】本実施形態の3次元表示画面の一例を示す図である。
【
図12】本実施形態のサーバ装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の赤外線情報処理システム1の概略図である。
【0013】
〔赤外線情報処理システム1〕
図1に示すように、本実施形態の赤外線情報処理システム1は、ユーザが利用する端末装置10と、赤外線情報を含む情報を処理するサーバ装置30とを含む。端末装置10とサーバ装置30とは、ネットワークを介して相互に情報通信が可能になっている。そして、ユーザは、端末装置10を介してサーバ装置30に接続し、赤外線画像200(例えば後述の
図5参照)を用いたマンションなどの建築物やトンネル、橋梁などの土木構造物(以下、対象物と呼ぶ)の画像解析を行う。
なお、端末装置10およびサーバ装置30の各々の台数は、本実施形態の例に限定されない。
【0014】
また、ネットワークは、各装置の間のデータ通信に用いられる通信ネットワークであれば特に限定されず、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等として良い。データ通信に用いられる通信回線は、例えば有線や無線を用いることができる。また、各装置は、ゲートウェイ装置やルータ等の中継装置を用い、複数のネットワークや通信回線を介して接続されても良い。
【0015】
そして、本実施形態の赤外線情報処理システム1は、対象物から放射される赤外線から得られた赤外線データを取得し、赤外線データを用いて、対象物の内部に存在する空気または水分である特定対象の対象物の内部における位置を特定し、対象物を表す画像に特定対象を表す対象画像を表示する。これによって、対象物の内部における空隙などの位置関係をユーザが把握できる。以下、この内容について詳細に説明する。
【0016】
〔端末装置10〕
端末装置10は、対象物の診断を行うユーザが利用する端末装置である。端末装置10には、例えば固定端末機器を例示できる。なお、端末装置10は、例えばタブレット型端末などの携帯端末機器であってもよい。
そして、本実施形態では、ユーザが端末装置10を介してサーバ装置30にアクセスすることで、端末装置10に赤外線画像が表示される。端末装置10は、赤外線画像の管理や赤外線画像の画像処理をサーバ装置30に対して送信する。そして、サーバ装置30は、端末装置10からの要求に応じて管理している赤外線画像や画像処理を行った赤外線画像の情報を端末装置10に送る。そして、端末装置10は、サーバ装置30から受け取った赤外線画像を画面(表示デバイス)に表示する。
【0017】
〔サーバ装置30〕
図2は、本実施形態のサーバ装置30の機能ブロック図である。
図3は、本実施形態の2次元画像表示部35の機能ブロック図である。
【0018】
図2に示すように、サーバ装置30は、解析対象となる画像を管理する画像管理部31と、カラーパレットを設定するカラーパレット設定部33と、2次元の赤外線画像の表示に関する制御を行う2次元画像表示部35と、3次元の赤外線画像の表示に関する制御を行う3次元画像表示部37と、対象物における空隙や露点を検出する空隙・露点検出部39と、を備える。
【0019】
画像管理部31は、例えば赤外線カメラで対象物を撮影することで得られる赤外線画像を含む赤外線データを管理する。赤外線データは、対象物から放射される赤外線を測定して得られたデータである。赤外線は、約800nm~約1000nmの光の波長を例示できる。そして、赤外線画像は、赤外線データを後述するカラーパレット情報に基づいて可視化した画像である。すなわち、赤外線画像は、対象物の温度を色(例えばカラーやグレースケール)で表した画像である。
【0020】
赤外線データおよび赤外線画像の形式は、CSV、拡張されたJPEG、拡張されたTIF、JPEG、TIFなどを例示できる。CSVは、位置情報が関連付けられた温度情報である温度分布情報を含む。例えば、CSVは、例えば512行×640行の温度が記述された温度情報の集合である。拡張されたJEPGや拡張されたTIFは、温度情報をカラーやグレースケールで表現した赤外線画像と、メタ情報(例えばExif)とを含む。このメタ情報は、CSVと同様に、対応する赤外線画像について、位置情報が関連付けられた温度情報である温度分布情報を含む。TIFやJPEGは、温度を色で表現した赤外線画像そのものである。
【0021】
また、画像管理部31は、赤外線画像を描画するための描画データそのもののみならず、赤外線画像に関する各種情報も管理する。各種情報は、複数の赤外線画像をグループで管理するためのグループ情報、赤外線画像(対象物)の撮影場所に関する位置情報、撮影日時などを例示できる。
また、画像管理部31は、2次元画像表示部35によって表示が行われ、ユーザによってキャプチャされた画像も管理する。
【0022】
カラーパレット設定部33は、赤外線画像をカラーで表示する際に温度と表示色との対応関係を定めるカラーパレット情報を管理する。本実施形態のカラーパレット設定部33は、複数のカラーパレット情報を管理する。カラーパレット設定部33は、2次元画像表示部35および3次元画像表示部37に対してカラーパレット情報を送る。カラーパレット情報には、温度と色との関係を定義するカラー定義情報と、表示する複数の色の一覧を示す画像であるカラーパレット画像150とが含まれる。
【0023】
本実施形態のカラーパレットは、相対パレットと固定パレットとの2種類が含まれる。相対パレットは、赤外線画像における最高温度と最低温度との温度範囲に対して予め定められた複数の表示色を相対的に割り当てる。一方、固定パレットは、予め定められた温度に対して予め定められた表示色を割り当てる。すなわち、固定パレットは、温度と表示色との関係が固定されている。
【0024】
カラーパレット設定部33は、ユーザからカラーパレット情報の作成を受け付ける。カラーパレット設定部33は、カラーパレット作成画面を端末装置10の画面に表示する。そして、カラーパレット設定部33は、ユーザにより作成されるカラー定義情報と、カラー定義情報に対応するカラーパレット画像150を管理する。
【0025】
2次元画像表示部35は、画像管理部31が管理する赤外線画像を端末装置10の画面に表示する。2次元画像表示部35は、画像管理部31にて管理される各種形式の赤外線データを赤外線画像に変換し、端末装置10の画面に一元で表示可能になっている。また、2次元画像表示部35は、各種形式の赤外線データを表示する際、カラーパレット情報の指定に基づく色で赤外線画像を描画する。
【0026】
2次元画像表示部35は、CVSデータなど位置情報(座標)が関連付けられた温度情報がまとめられたデータについては、カラーパレット情報に基づいて、位置情報に対応する位置に温度に対応する色を表示した赤外線画像を表示する。同様に、2次元画像表示部35は、拡張されたJPEGデータや拡張されたTIFデータについては、メタ情報に含まれる位置情報(座標)が関連付けられた温度情報と、カラーパレット情報とに基づいて、位置情報に対応する位置に温度に対応する色を表示した赤外線画像を表示する。
また、2次元画像表示部35は、例えばTIFなど単に色の画像情報のみを有する赤外線画像をそのまま表示する。
【0027】
さらに、2次元画像表示部35は、例えばTIFなど単に色の画像情報のみを有する赤外線画像と、所定の参照情報とを用いて、元の赤外線画像とは表示色が異なる赤外線画像を表示することも可能である。2次元画像表示部35は、赤外線画像における色と、色に対応する温度情報との対応関係が定義された参照情報を取得する。2次元画像表示部35は、この参照情報とカラーパレット情報とを用いて、ユーザが指定する色表現による赤外線画像の表示を可能にしている。
【0028】
続いて、本実施形態の2次元画像表示部35が有する機能について詳細に説明する。
図3に示すように、2次元画像表示部35は、カラーパレット情報を赤外線画像に適用するカラーパレット適用部351と、表示する温度を調整する表示温度調整部352と、赤外線画像における温度を抽出する温度抽出部353と、を備える。さらに、2次元画像表示部35は、赤外線画像と対象物の画像とを重ねて表示する重畳画像表示部354と、画像の補正を行う画像補正部355と、輪郭線を表示する輪郭線表示部356と、を備える。
【0029】
カラーパレット適用部351は、例えば対象物や診断目的に応じたカラーパレットを赤外線データに適用する。カラーパレット適用部351は、カラーパレット設定部33によって設定される温度定義情報に基づく色表現により赤外線画像を表示する。
カラーパレット適用部351は、管理画面400(後述)やメイン画面500(後述)等にカラーパレットの選択肢を表示する。さらに、カラーパレット適用部351は、複数のカラーパレットなかからユーザが指定するカラーパレットを受け付ける。そして、カラーパレット適用部351は、ユーザにより指定されたカラーパレットを赤外線画像に適用する。
【0030】
表示温度調整部352は、カラーパレットが指定する温度範囲のうち特定の温度範囲を設定する。本実施形態のカラーパレットは、赤外線画像において表示する温度に関して上限温度と下限温度とを有している。そして、表示温度調整部352は、赤外線画像に対して一のカラーパレットが適用された場合、そのカラーパレットの上限温度と下限温度との範囲内において更に表示する温度を調整する。
表示温度調整部352は、ユーザから温度領域の指定を受け付ける。そして、表示温度調整部352は、ユーザから受け付けた温度領域の指定に基づいて赤外線画像において表示する温度を定める。
【0031】
本実施形態の表示温度調整部352は、ユーザの所定の操作に応じて赤外線画像の表示温度を調整する。また、本実施形態の表示温度調整部352は、ユーザによって直接的に赤外線画像の表示温度が操作されて表示温度を調整する場合と、後述する温度抽出部353による温度抽出に基づいて表示温度を調整する場合とがある。
【0032】
さらに、表示温度調整部352は、指定された温度に対応する温度を赤外線画像において表示する場合と、指定された温度以外の温度を赤外線画像において表示する場合とがある。この場合、表示温度調整部352は、いずれの態様で表示を行うかについてユーザから指定を受け付ける。
【0033】
温度抽出部353は、赤外線画像においてユーザが指定した領域の温度を抽出する。本実施形態の温度抽出部353は、赤外線画像における任意の点の指定、または任意の領域の指定をユーザから受け付ける。そして、温度抽出部353は、任意の点の指定を受け付けた場合、その点に対応する温度を抽出する。また、温度抽出部353は、任意の領域の指定を受け付けた場合、その領域における複数の温度の中央値の温度を特定する。
【0034】
そして、温度抽出部353は、抽出した温度情報を表示温度調整部352に送る。表示温度調整部352では、上述のとおり温度抽出部353から取得した温度情報に基づいて赤外線画像の表示が行われる。
【0035】
重畳画像表示部354は、対象物を撮影することで得られた赤外線画像200に対して、対象物の可視画像100(例えば後述する
図5参照)を重畳して端末装置10の画面に表示する。ここで、可視画像とは、例えば約400nm~約700nmの波長を撮影した画像を例示できる。重畳画像表示部354は、対象物を可視カメラで撮影した可視画像100と、対象物を赤外線カメラで撮影した赤外線画像200とを、対象物における対応位置が合うように重畳表示する。
【0036】
また、本実施形態の重畳画像表示部354は、例えば対象物を可視カメラで撮影した可視画像が無い場合、可視画像を模した疑似可視画像を赤外線画像に重畳させる。疑似可視画像は、対象物を赤外線カメラで撮影して得られた赤外線データや、その赤外線データに対応する赤外線画像を用いて作成した画像である。例えば、疑似可視画像は、赤外線画像を白黒のカラーパレット(グレースケール)で表示した画像を例示できる。また、疑似可視画像は、赤外線画像を二値化した画像を例示できる。
【0037】
重畳画像表示部354は、対象物の赤外線画像と対象物の可視画像との重畳の程度を変化させることができる。具体的には、重畳画像表示部354は、例えば可視画像の透過度を変更可能になっている。そして、重畳画像表示部354は、赤外線画像と可視画像との重なりの程度をユーザが調整できるようにする。
【0038】
画像補正部355は、対象物を撮影した赤外線画像を画面に表示する際に、赤外線画像を予め定められた形状にするように変形する。例えば、建物などの対象物を見上げる形で撮影した際に、対象物の撮影画像が例えば台形になる場合がある。そこで、画像補正部355は、例えば台形で撮影された対象物の赤外線画像を長方形に補正する。なお、画像補正部355は、対象物を可視カメラで撮影した可視画像についても同様に補正を行う。
【0039】
また、画像補正部355は、対象物の赤外線画像と、同じ対象物の可視画像との位置合わせを行う。画像補正部355は、例えば赤外線画像における複数の位置と、可視画像における複数の位置との指定をそれぞれユーザから受け付ける。各画像における複数の位置は、実際の対象物において対応している。画像補正部355は、赤外線画像および可視画像の一方または両方を変形させることで、ユーザによって指定された赤外線画像と可視画像との位置を合致させる。これによって、画像補正部355は、赤外線画像と可視画像との位置合わせを行う。
【0040】
輪郭線表示部356は、赤外線画像内の温度勾配による輪郭線を描画する。輪郭線表示部356は、赤外線画像を表示するための温度範囲を複数の範囲に分割する。そして、輪郭線表示部356は、複数の範囲の分割した際の温度の区切りを特定する。輪郭線表示部356は、例えば21℃~22℃の温度範囲を5つの範囲に分割した場合、0.2℃ずつ温度範囲が分割される。この場合、輪郭線表示部356は、0.2℃を区切りとして赤外線画像に直線や曲線で表現される輪郭線を表示する。赤外線画像における温度分布は断続的ではないことが一般的である。そのため、輪郭線表示部356によって表示される輪郭線は、等温線として表示される。
【0041】
また、輪郭線表示部356は、カラーパレットが適用された赤外線画像に重畳させて表示することが可能である。この場合、輪郭線表示部356が輪郭線を表示するための区切りの温度範囲と、カラーパレットにより表示される温度範囲の区切りとを対応付ける。これによって、カラーパレットにより表示される赤外線画像と、輪郭線表示部356により表示される輪郭線とが対応することで、赤外線画像がより見やすくなる。
【0042】
図2に示すように、3次元画像表示部37は、画像管理部31が管理する赤外線データを3次元的に端末装置10の画面に表示する。3次元画像表示部37は、赤外線画像の温度を3次元のメッシュで表現する。すなわち、3次元画像表示部37は、赤外線画像における温度を高さ方向に対応させて表現する。例えば、3次元画像表示部37は、赤外線画像において比較的温度が高い箇所については予め定められた基準面からの高さが高くなるように表示する。一方で、3次元画像表示部37は、線外線画像において比較的温度が低い箇所については予め定められた基準からの高さが低くなるように表示する。
【0043】
また、3次元画像表示部37は、3次元のメッシュにおいて、2次元の画像と同様に、カラーパレット設定部33により設定されるカラーパレットを適用する。これによって、3次元メッシュは、温度を高低差で表すとともに、温度に応じたカラーによっても温度を表現可能になっている。この場合に、カラーパレット情報は、ユーザが予め設定したものをユーザが任意に3次元画像に対して適用することができる。
【0044】
空隙・露点検出部39は、赤外線データから対象物の内部に存在する空隙部または露点部を特定し、対象物を表す画像に空隙部または露点部の位置を表示する。
ここで、空隙部は、例えばタイルと壁面との間に生じた隙間、鉄筋コンクリートなどの構造体の内部に存在する意図しない空間や亀裂を例示できる。そして、空隙部は、空気で満たされていることを例示できる。また、露点部は、例えば鉄筋コンクリートの空隙に存在する水分を例示できる。
【0045】
空隙・露点検出部39は、画像管理部31が管理する赤外線データのうちユーザによって選択された赤外線データを解析の対象とする。そして、空隙・露点検出部39は、赤外線データから得られる対象物の表面温度と、対象物が設置される屋外などの空間の温度(以下、高気温と呼ぶ)と、対象物の屋内などの内側の空間の温度(以下、低気温と呼ぶ)と、を用いて解析を行う。さらに、空隙・露点検出部39は、対象物の構造に関する構造情報(後述の素材情報や厚さ情報)と後述する計算モデルとを用いて、空隙部および露点部の存在、および対象物の内部における空隙部および露点部の位置を特定する。
【0046】
空隙・露点検出部39は、対象物の構造に関する構造情報を記憶する。構造情報は、建物などの対象物を構成する各種の素材の熱伝導率[W/(m・K)]を含む。各種の素材としては、鉄筋コンクリート、モルタル、タイル、目地などを例示できる。さらに、構造情報は、素材ごとの厚さの情報を含む。
【0047】
熱伝導率の情報は、各種の素材ごとに一意に特定される情報である。本実施形態の空隙・露点検出部39は、素材ごとの熱伝導率の情報が予め記憶されている。そして、例えばユーザから対象物を構成する素材の指定を受け付けることで、その素材に対応する熱伝導率を計算に反映させる。また、一般的なマンションなどの建築部の場合、構造物を構成する複数の素材の組合せが定まる。本実施形態の空隙・露点検出部39は、複数の素材の組合せのパターンを予め記憶している。
【0048】
また、厚さの情報は、ユーザから数値の入力を受け付けたり、素材ごとに定まる代表的な数値を用いたりすることができる。例えばユーザから厚さの情報を受け付ける際は、画面に表示される入力部にて対象物を構成する素材ごとに具体的な数値の入力を受け付ける。また、一般的なマンションなどの建築部の場合、階数や規模に応じて、各素材についての代表的な厚みが定まる。本実施形態の空隙・露点検出部39は、素材ごとに定まる代表的な数値を予め記憶している。
【0049】
このように、空隙・露点検出部39は、対象物の構造に関する構造情報に関して、ユーザから受け付けた数値を記憶したり、本システムの管理者によって予め指定された代表的な数値を記憶していたりする。そして、空隙・露点検出部39は、熱伝導率や厚さの情報を含む構造情報を用いて空隙部および露点部の存在およびその位置を特定する。
【0050】
また、空隙・露点検出部39は、赤外線データにおいて空隙部または露点部の検出を除外することが可能になっている。本実施形態において、空隙・露点検出部39は、検出の対象となる領域の中から空隙部または露点部の検出を除外する領域の指定をユーザから受け付けるようになっている。例えば後述するタイルの目地部分などは、他の領域と解析の条件が異なる。これに伴って、空隙部や露点部の検出精度が低下する可能性がある。そこで、空隙・露点検出部39は、特定の領域を空隙部や露点部の検出対象から外し、空隙部や露点部の検出精度の低下を抑制している。
【0051】
空隙・露点検出部39は、特定した空隙を可視化した空隙画像390と、特定した露点を可視化した露点画像395とをそれぞれ対象物を示す画像に重畳して表示する。空隙・露点検出部39は、2次元画像表示部35を介して、2次元の赤外線画像200、可視画像100または疑似可視画像に対して空隙画像390や露点画像395を重ねて表示可能である。また、空隙・露点検出部39は、3次元画像表示部37を介して、対象物を3次元のメッシュで表した3次元対象物画像350に空隙画像390や露点画像395を表示可能である。
【0052】
続いて、空隙・露点検出部39にて対象物の内部に存在する空隙部または露点部の特定について説明する。
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)は、内部に空隙部を有する構造体のモデル図である。
【0053】
本実施形態の空隙・露点検出部39では、対象物における熱の伝わり方をモデル化し、対象物の内部の構造を推定する。そして、空隙・露点検出部39は、対象物における空隙部や露点部を特定する。
【0054】
図4に示すモデル図は、例えば建築物の壁などの構造体を模したものである。モデル図では、構造体を構成する素材ごとに、構造体を厚さ方向において複数の層に分割して表現する。
図4の例において、図中左側が外側(例えば、建築物の外部)に対応し、図中右側が内側(例えば、建築物の内部)に対応する。また、構造体における左側が高気温側であり、構造体における右側が低気温側である。各層には、高気温側から低気温側までn番の番号が振られる(nは1以上の自然数)。
さらに、モデル図には、空隙部(
図4中に斜線で示す領域)に相当する厚さx[m]の空気層を含めている。
図4に示す例では、空気層の位置を、2番目の層における後ろ側(低気温側)に設定している。
【0055】
そして、各層ごとに、層の厚さL[m]と、層の熱伝導抵抗R[m2・(K/W)]とが定義される。層の厚さLは、構造情報から得ることができる。同様に、熱伝導抵抗Rは、構造物の素材情報から特定可能である。空気の熱伝導抵抗RAは、既知の値を用いることができる。なお、熱伝導抵抗は、熱伝導率r[W/(m・K)]の逆数に厚さL[m]を乗じることで得られる。空気の熱伝導率は、rAとする。
【0056】
また、高気温側の気温tiおよび低気温側の気温toは、例えば対象物を赤外線カメラで撮影する際に、温度計などを用いて実測することで得ることができる。なお、高気温側の気温tiは、赤外線データから取得してもよい。低気温側の気温toは、赤外線カメラで撮影した例えば建築物のガラス越しに特定できる室内の温度を用いてもよい。また、低気温側の気温toは、外気温と比較して温度変化が小さいため、予め定めた気温(例えば20度など)としてもよい。
構造体における高気温側(外側)の表面の温度T0は、赤外線データを用いて特定可能である。また、構造体における低気温側(内側)の表面の温度Tは、低気温側の気温toとみなしてもよい。
【0057】
そして、本実施形態の空隙・露点検出部39は、上述した各種情報と多層壁の温度勾配に関するモデル式を用いて、空隙部の位置および厚さを特定する。すなわち、空隙・露点検出部39は、モデルにおける空気層の位置や厚さxの条件を変化させて計算を行うことで、構造体における高気温側(外側)の表面の温度T0および構造体における低気温側(内側)の表面の温度Tを満たす条件を算出する。そして、空隙・露点検出部39は、条件を満たす空気層の位置および厚さxを、構造体における空隙部の位置および厚さとみなす。このように、空隙・露点検出部39は、対象となる構造体における空隙部の厚さや、厚み方向における空隙部の位置を推定する。
【0058】
また、本実施形態の赤外線情報処理システム1は、赤外線データにおける対象物の平面を所定間隔の複数のグリッドに分割し、グリッドごとに上記のモデルを用いて計算を行う。そして、赤外線を用いて撮影した対象物の平面において、平面における空気層の厚さをグリッドの単位ごとに全て特定する。このように、赤外線情報処理システム1では、平面における空隙部の分布を特定する。
さらに、赤外線情報処理システム1では、平面と垂直な方向である厚さ方向における空気層(空隙部)の長さをグリッドの単位ごとに特定する。
このように、本実施形態の赤外線情報処理システム1は、赤外線データから取得できる気温および表面温度と、対象物の物性値とから空隙部の位置を特定している。より具体的には、赤外線情報処理システム1は、空隙部の平面における位置と、空隙部の厚さ方向における位置をそれぞれ特定可能である。
【0059】
続いて、
図4を参照しながらモデル式を用いた温度計算の具体的な説明を行う。
多層壁の温度勾配計算は、以下の式(1)を用いることができる。
【数1】
また、求めるn層間温度までの全熱伝導抵抗Rxは以下の式(2)で表される。
【数2】
【0060】
ここで、上記の式における各代数は以下のとおりである。
t:温度
ti:高温側の気温[K]
to:低温側の気温[K]
ri:高温側の壁体表面の熱伝導抵抗[m2・K/W]
Rs:壁体の全熱伝導抵抗[m2・K/W]
r(n):各層の熱伝導抵抗[m2・K/W]
【0061】
n=0の場合には、Rx=0であり、ri=R
1である。したがって、式(1)より以下の式(3)が得られる。
【数3】
【0062】
ここで、
Rs=R1+R2’+R3+R4+RA (RA:空気層の熱伝導抵抗)
R2’=(L2-x)/r2
RA=x/rA (rA:空気層の熱伝導率)
L2/r2=R2
である。
【0063】
また、
A=Σ[n=1→4]Rn
とする。
以上の関係から、以下の式(4)が得られる。
【0064】
【0065】
この式(4)を式(3)に代入することで、式(5)が得られる。
【数5】
【0066】
ここで、空隙がn=1の後ろに存在している場合は以下の通りである。
R1=R1’+RA
Rs=ΣRn
R1’=(L1-x)/r1
RA=x/rA
とすると、以下の式(6)が得られる。
【0067】
【0068】
そして、式(6)を式(3)に代入することで、式(7)が得られる。
【数7】
【0069】
続いて、
図4(B)を参照しながら、各層の接触面の温度の特定について説明する。
まず、
図4(B)に示す構造における全熱伝導抵抗は、以下の式(8)で表される。
【数8】
【0070】
図4(C)に示すモデル図において、対象となる層の温度Tnは、以下の式(9)で表現される。
【数9】
【0071】
そして、n=1のとき、ri=R
1であるため、以下の式(10)が得られる。
【数10】
【0072】
この式(10)に式(8)を代入することで、式(11)が得られる。
【数11】
【0073】
次に、n=2のとき、式(9)に基づいて式(12)が得られる。
ここで、R
A=x/r
A (R
A:空気の熱伝導率)
【数12】
【0074】
式(11)および式(12)は、T1とT2との相違があるものの計算式としては同様である。そして、T1とT2とを求めることができれば、他の値は既知であるため空隙部の厚さ(幅)に相当するxを求めることができる。
【0075】
そして、各層の接触面の温度は、以下の式(13)で表現できる。
【数13】
【0076】
Rnは、高気温側の層から接触温度を知りたい層までの熱伝導抵抗の和である。Rnは、以下の式(14)で表せる。
【数14】
【0077】
図4(C)に示すモデル図において、r
3は、空気の熱伝導率である。L
3は未知である一方で、r
1、r
2、r
4、r
5、L
1、L
2、L
4、L
5、tiおよびtoは、既知である。したがって、式(13)からT
1、T
2を求めることができる。そして、求めたT
1およびT
2を、(式11)や(式12)に代入することで、空隙部の厚さに相当するxを求められる。このxは、
図4(C)におけるL
3であり、その他のT
3やT
4の温度を求めることができる。
【0078】
なお、上述した内容は、空気層である空隙部のみならず、水分の層である露点部に対しても同様に適用することができる。この場合、空気の熱伝導抵抗RAに相当する値を水の熱伝導抵抗RWに置き換える。これによって、空隙・露点検出部39は、水分の層の厚さや位置を同様に特定し、露点部の厚さや位置とみなす。このように、空隙・露点検出部39は、赤外線データから取得できる表面温度と対象物の物性値とを用いて、露点部の位置を特定できる。すなわち、空隙・露点検出部39は、露点部の平面における位置、露点部の厚さ、露点部の厚さ方向における位置をそれぞれ特定可能になっている。
【0079】
続いて、図面を参照しながら本実施形態の赤外線情報処理システム1において表示される画面について具体的に説明する。
【0080】
図5は、本実施形態の管理画面400の一例を示す図である。
【0081】
図5に示す管理画面400は、本システムによって管理される複数の赤外線画像200を確認したり、後述するメイン画面500などを用いて解析対象にする赤外線画像を選択したりする際に用いる画面である。
【0082】
図5に示すように、管理画面400は、ファイルツリー表示部410と、グループ情報表示部420と、画像一覧表示部430と、可視/赤外表示部440と、プロパティ表示部450と、キャプチャ画像表示部460と、を有する。
本実施形態の赤外線情報処理システム1では、管理画面400を用いて各種の赤外線データを受け付けて管理することができる。
【0083】
本実施形態では、複数の赤外線画像200をグループ単位で管理する。
そして、ファイルツリー表示部410は、グループを構成する赤外線画像のファイルの構造をツリー形式で表示する。
【0084】
グループ情報表示部420は、選択しているグループの詳細を表示する。グループ情報表示部420は、例えばグループ名、対象物の物件などが特定されている場合には物件名、物件の所在地に関する情報を示す。これらの情報は、ユーザが入力可能になっている。
【0085】
さらに、グループ情報表示部420は、グループを構成する赤外線画像に適用するカラーパレットを設定することが可能になっている。具体的には、グループ情報表示部420には、後述するパレット選択部580が設けられている。そして、例えば画像一覧表示部430では、グループを構成する複数の赤外線画像に対して同じカラーパレットを適用し、複数の赤外線画像を一覧で比較することが可能になっている。
なお、グループ情報表示部420におけるカラーパレットの設定を変えることで、画像一覧表示部430に表示される複数の赤外線画像の表示色がカラーパレットに応じて一括で変更される。
【0086】
画像一覧表示部430は、グループを構成する複数の赤外線画像200が表示される。赤外線画像200は、各種形式の赤外線データに基づく画像が含まれる。画像一覧表示部430は、赤外線データがJPEG形式およびTIF形式は、そのまま赤外線画像として表示したり、カラーパレットを適用して表示したりする。画像一覧表示部430は、CSVや、拡張JPEGおよび拡張TIFのメタ情報にカラーパレットを適用して赤外線画像化して表示する。
【0087】
また、画像一覧表示部430において、各々の赤外線画像200には、画像の名称とともに、元となった赤外線データのデータ形式(拡張子)の情報も併せて表示される。
【0088】
このように、本実施形態の赤外線情報処理システム1では、複数の異なるファイル形式の赤外線データを取得し、カラーパレット情報を用いて可視化した複数の赤外線画像200を画面に表示可能になっている。
【0089】
可視/赤外表示部440は、画像一覧表示部430に表示される複数の赤外線画像200のうちユーザによって選択操作がされた赤外線画像200と、その赤外線画像200の撮影対象となった対象物の可視画像100とを並べて表示する。これによって、ユーザは、解析の対象となる赤外線画像200と可視画像100とを併せて確認することができる。
【0090】
プロパティ表示部450は、赤外線画像に含まれる温度に関する詳細情報、赤外線画像200を撮影した際の位置に関する位置情報、赤外線画像200を撮影した撮影機材に関する情報を表示する。
キャプチャ画像表示部460は、後述するメイン画面500等においてユーザが保存したキャプチャ画像を表示する。キャプチャ画像表示部460は、画像一覧表示部430に表示される複数の赤外線画像200のうちユーザが選択した一の赤外線画像200に関連付けられた単数または複数のキャプチャ画像を表示する。
【0091】
図6は、本実施形態のメイン画面500の一例を示す図である。
【0092】
図6に示すメイン画面500は、ユーザが赤外線画像200を表示する際にメインとなる画面である。
図6に示すように、メイン画面500は、サムネイル表示部510と、重畳調整部520と、解像度調整部530と、画像サイズ調整部540と、プロパティ情報表示部550とを有する。また、メイン画面500は、赤外線画像200を表示する赤外線画像表示部560と、X軸温度表示部570と、Y軸温度表示部575と、パレット選択部580と、キャプチャ画像表示部590とを有する。
【0093】
サムネイル表示部510は、グループを構成する複数の赤外線画像200を表示する。なお、サムネイル表示部510は、赤外線画像に対応する可視画像100がある場合には、赤外線画像200と可視画像100とが隣り合って並べて表示される。
【0094】
重畳調整部520は、赤外線画像200および可視画像100の透過率を変更する操作を受け付ける。重畳調整部520は、赤外線画像の赤外サムネイル画像521と、可視画像の可視サムネイル画像522と、スライダボタン523とを有する。スライダボタン523をスライド操作することで、赤外線画像表示部560に表示される赤外線画像200の透過度が変化する。例えば赤外線画像200の透過度が高くなる(薄くなる)と、赤外線画像200の後ろのレイヤに表示される可視画像100(後述)がより見やすくなる。一方、例えば赤外線画像200の透過度が低くなる(濃くなる)と、赤外線画像200の後ろのレイヤに表示される可視画像100が見えにくくなる。
【0095】
解像度調整部530は、赤外線画像200の解像度を変更する操作を受け付ける。解像度調整部530は、赤外線画像200の解像度や補間解像度を調整する。スライダボタン531をスライド操作することで、赤外線画像200の解像度や補間解像度が変化する。
画像サイズ調整部540は、赤外線画像表示部560に表示される赤外線画像200の表示サイズを変更する操作を受け付ける。スライダボタン541をスライド操作することで、赤外線画像200の表示サイズが変化する。
【0096】
プロパティ情報表示部550は、赤外線画像表示部560に表示される赤外線画像200の詳細情報を表示する。詳細情報は、赤外線画像200の温度に関する情報を例示できる。
【0097】
赤外線画像表示部560は、サムネイル表示部510に表示される複数の赤外線画像のうちユーザにより選択操作された赤外線画像200を表示する。そして、ユーザが行う操作や各種情報は、赤外線画像表示部560に表示される赤外線画像200を対象として行われる。ユーザは、赤外線画像表示部560に表示される赤外線画像200に対して操作を行うなどすることで、赤外線画像200の解析を行うことができる。
【0098】
X軸温度表示部570は、赤外線画像200の横方向(図面における左右方向)に対応して表示される。そして、X軸温度表示部570は、ユーザがマウスなどを用いてマウスポインタを赤外線画像200における任意の位置に置いた際、その指定位置を通る横方向の直線に沿った温度分布を表示する。
Y軸温度表示部575は、赤外線画像200の縦方向(図面における上下方向)に対応して表示される。そして、Y軸温度表示部575は、ユーザがマウスなどを用いてマウスポインタを赤外線画像200における任意の位置に置いた際、その指定位置を通る縦方向の直線に沿った温度分布を表示する。
【0099】
パレット選択部580は、ユーザからカラーパレットの選択を受け付ける。パレット選択部580は、カラーパレット設定部33にて管理される複数のカラーパレット画像150を選択肢として表示する。そして、パレット選択部580は、ユーザによって選択されたカラーパレット画像150に対応するカラーパレットを赤外線画像200に適用する。そして、赤外線画像200は、ユーザにより選択されたカラーパレットに応じて表示色が変更される。
【0100】
そして、一のカラーパレットを選択した状態で、異なる赤外線画像200を赤外線画像表示部560に表示させる。そうすると、各赤外線画像200は、一のカラーパレットにより定義される色と温度との条件に従って表示される。
すなわち、赤外線に関する赤外線データを複数取得すると、ユーザにより作成されたカラーパレット情報を用いて、複数の赤外線データを赤外線画像200にそれぞれ変換し、画面に表示する。このとき、カラーパレット情報は、ユーザが作成したものである。
【0101】
本実施形態では、一のカラーパレット情報を用いて、複数の異なる赤外線データをそれぞれ赤外線画像200に変換して確認できる。カラーパレット情報はユーザが作成したものであり、また赤外線データが異なっていても表示される赤外線画像200における温度と色との関係は同じになる。ユーザは、ユーザが見やすい温度と色との関係を自身で設定できたり、ユーザが見慣れた温度と色との関係を用いながら赤外線画像200の解析ができたりする。このように、本実施形態の赤外線情報処理システム1は、ユーザが赤外線情報を扱いやすいシステムとなっている。
【0102】
キャプチャ画像表示部590は、赤外線画像表示部560に表示される赤外線画像200をキャプチャした画像が表示される。本実施形態では、予め定められたボタン画像(例えば「保存ボタン」)を押下することで、押下したタイミングで赤外線画像表示部560に表示されている赤外線画像200がキャプチャされる。なお、キャプチャされた画像は、元となる赤外線画像200に関連付けられて画像管理部31により管理される。
【0103】
図7は、本実施形態の検出画面650の一例を示す図である。
【0104】
図7に示す検出画面650は、ユーザが空隙部や露点部を検出する際に用いる画面である。
検出画面650は、メイン画面500と同様に、サムネイル表示部510、赤外線画像表示部560、X軸温度表示部570、Y軸温度表示部575、パレット選択部580およびキャプチャ画像表示部590を有する。さらに、検出画面650は、条件設定部651、基準温度抽出部652および空隙・露点検出部653を有する。
【0105】
図7に示すように、赤外線画像表示部560には、解析の対象となる対象物の赤外線データを可視化した2次元の赤外線画像200と、対象物の可視画像100とが表示される。2次元の赤外線画像200は、パレット選択部580において選択されたカラーパレットに基づいて表示色が特定されている。
【0106】
なお、赤外線画像表示部560に表示する画像は、対象物を示す画像であれば
図7に示す例に限定されない。赤外線画像表示部560には、2次元の赤外線画像200ではなく可視画像100のみを表示したり、例えば対象物の赤外線データに基づいて作成した疑似可視画像を表示したりしてもよい。
【0107】
条件設定部651は、解析対象である赤外線データの基となる対象物について設定された構造情報を示す。構造情報は、対象物を構成する素材情報と、素材ごとの厚さ情報とを含む。ユーザは、条件設定部651に表示される構造情報により、対象物の構造が設定されているかを確認することができる。
【0108】
また、条件設定部651に設定される構造情報は、図示しない設定画面において設定可能になっている。設定画面は、対象物の構造情報を特定する際に用いる画面である。設定画面は、例えば複数の素材の候補が選択肢として準備されている。ユーザは、画面に表示される選択肢の中から対象物に対応する素材を指定することが可能になっている。同様に、設定画面には、素材ごとに厚さをユーザが指定可能になっている。また、設定画面には、複数の素材と素材ごとの厚さの組合せのパターンが選択肢として表示される。ユーザは、予め準備されているパターンを選ぶことで対象物の構造情報を設定することも可能である。そして、これら設定画面にて設定された構造情報は、条件設定部651に反映される。
【0109】
基準温度抽出部652は、ユーザが空隙部または露点部を検出するために指定した範囲を決定する。例えば
図7に示すように、ユーザは、例えば赤外線画像表示部560に表示される対象物を示す画像において、マウスのカーソルなどを利用して検出領域655を指定する。検出領域655が指定された後、基準温度取得ボタン652Bが押下されると、解析対象となる領域が設定される。
基準温度抽出部652は、設定された検出領域655における対象物の表面温度の情報を取得する。また、本実施形態の基準温度抽出部652は、検出領域655における基準温度、下限温度および上限温度の特定結果(数値)を画面に表示する。
【0110】
空隙・露点検出部653には、空隙指定ボタン653Aと、露点指定ボタン653Wと、検出実行ボタン653Eとが設けられている。空隙指定ボタン653Aは、検出領域655において空隙部を検出することの指定を受け付けるボタンである。露点指定ボタン653Wは、検出領域655において露点部を検出することの指定を受け付けるボタンである。そして、検出実行ボタン653Eは、空隙指定ボタン653Aおよび露点指定ボタン653Wのいずれか一つが指定された状態で押下されると、空隙部および露点部のうち指定された一方の検知結果を赤外線画像表示部560に示す。
【0111】
また、本実施形態の空隙・露点検出部653は、空隙指定ボタン653Aが選択されると、空隙に対応する空気の熱伝導率を画面に表示する。一方、空隙・露点検出部653は、露点指定ボタン653Wが選択されると、露点に対応する水の熱伝導率を画面に表示する。さらに、本実施形態の空隙・露点検出部653は、対象物を撮影した赤外線データから特定される高気温および低気温についてもそれぞれ数値を示すようになっている。
【0112】
続いて、赤外線画像表示部560に表示される空隙画像390および露点画像395について説明する。
図8は、本実施形態の空隙画像390の一例を示す図である。
図9は、本実施形態の露点画像395の一例を示す図である。
【0113】
空隙指定ボタン653Aが指定され検出実行ボタン653Eが押下されると、
図8に示すように、赤外線画像表示部560に、空隙部が存在する箇所を示す空隙画像390が表示される。空隙画像390は、対象物の可視画像100に重畳して表示される。空隙画像390は、例えば赤色で表示される。
【0114】
一方、露点指定ボタン653Wが指定され検出実行ボタン653Eが押下されると、
図9に示すように、赤外線画像表示部560に、露点部が存在する箇所を示す露点画像395が表示される。露点画像395は、対象物の可視画像100に重畳して表示される。露点画像395は、例えば青色など空隙画像390とは異なる色で表示される。
【0115】
なお、空隙画像390および露点画像395を重畳して表示する対象物を表す画像は、可視画像100であることに限定されない。対象物を表す画像は、対象物を赤外線に基づいて撮影して得られる赤外線データから作成したものでもよい。例えば、対象物を表す画像は、赤外線画像を白黒のカラーパレット(グレースケール)で表示した画像、赤外線画像を二値化した画像を用いることができる。
【0116】
次に、空隙・露点検出における検出領域の除外について説明する。
図10は、本実施形態の除外設定画面900の一例を示す図である。
【0117】
図10に示す除外設定画面900は、ユーザが空隙部や露点部を検出する場合において検出を除外する領域を指定するための画面である。
除外設定画面900の基本構成は、検出画面650と同様である。そして、
図10に示すように、除外設定画面900は、線描画部910と、目地設定部920と、回転操作部930と、検出実行ボタン940とを有する。
【0118】
図7を参照しながら説明したように、本実施形態において空隙部および露点部の検出を行う際に、検出領域655の設定が行われる。そして、除外設定画面900では、この検出領域655のうち空隙部および露点部の検出を除外する領域の指定をユーザから受け付ける。空隙部および露点部の検出を除外する領域の指定は、対象物を表す画像上でユーザから受け付ける。
【0119】
線描画部910は、検出を除外する領域を直線で指定するものである。ユーザは、例えばマウスのカーソルを操作することで検出領域655に対して直線を引く。そして、直線状の除外画像990が対象物の可視画像100に重畳して表示される。また、この直線は、例えば2点の座標(始点、終点)を通る直線として線描画部910に登録される。
【0120】
目地設定部920は、検出を除外する領域を格子状に指定するものである。目地設定部920は、X方向(図中左右方向)における開始X座標と、Y方向(図中上下方向)における開始Y座標の指定をユーザから受け付ける。また、目地設定部920は、X方向における格子の横間隔と、Y方向における格子の縦間隔との指定をユーザから受け付ける。さらに、目地設定部920は、格子の線の太さの指定をユーザから受け付ける。
【0121】
そして、目地設定部920は、目地描画ボタン921が押下されることで、検出領域655に対して格子状の除外画像990を描画する。除外画像990は、例えば対象物を示す画像である可視画像100に重畳して表示される。除外画像990が表示されている状態で、目地設定部920における各種の項目の数値等をユーザが変更することで、画面に表示される除外画像990が変形するなどして除外画像990の位置が移動する。この操作によって、例えば格子状の除外画像990をタイルの目地に一致させるなど、任意の位置にユーザが除外画像990を移動させることができる。
【0122】
回転操作部930は、表示される除外画像990を回転操作する際に用いられる。回転操作部930は、操作対象の除外画像990に対して任意の回転角度に基づく回転操作を行う。この回転操作によっても、任意の位置にユーザが除外画像990を移動させることができる。
【0123】
検出実行ボタン940は、線描画部910や目地設定部920によって設定された除外画像990と重なる領域を検出の対象から除外した上で、検出領域655に対する空隙部または露点部の検出の実行を受け付ける。
【0124】
以上のように除外設定画面900において除外画像990が設定されることで、赤外線データで表現される対象物の除外画像990に対応する箇所については、空隙部および露点部の検出が行われない。また、
図8および
図9を参照しながら説明したように空隙画像390や露点画像395を画面に表示する際、除外画像990に対応する箇所は、対象物を表す画像(例えば、可視画像、赤外線画像など)が表示される。
【0125】
なお、上述した例では、除外画像990に対応する箇所については隙間部や露点部の検出を除外することにしているが、この態様に限定されない。例えば、除外画像990に対応する領域については、対象物の素材情報および厚さ情報が別に設定された条件を適用して、隙間部や露点部の検出を行ってもよい。すなわち、除外画像990は、除外画像990に対応しない領域の素材情報および厚さ情報とは異なる条件を用いて、除外画像990に対応する領域の隙間部および露点部を検出するために用いてもよい。
【0126】
図11は、本実施形態の3次元表示画面800の一例を示す図である。
【0127】
図11に示すように、3次元表示画面800は、3次元画像を表示する3次元画像表示部810と、色彩設定部820と、メッシュ設定部830と、温度情報表示部840と、描画設定部850と、画像保存部860と、構造表示選択部870と、を有する。
【0128】
3次元画像表示部810は、ユーザにより選択操作された3次元の赤外線画像を表示する。また、3次元画像表示部810は、対象物を3次元で表す3次元対象物画像350を表示する。さらに、3次元画像表示部810は、3次元の空隙画像390または3次元の露点画像395を表示する。そして、ユーザが行う操作や各種情報は、3次元画像表示部810に表示される画像を対象として行われる。ユーザは、3次元画像表示部810に表示される画像に対して操作等を行うことで、対象物の画像を解析できる。
【0129】
色彩設定部820は、背景色やカラーパレットの選択を受け付ける。色彩設定部820は、カラーパレット設定部33にて管理される複数のカラーパレットのカラーパレット画像150を選択肢として表示する。そして、色彩設定部820は、ユーザによって選択されたカラーパレットを3次元で表示される赤外線画像に適用する。3次元の赤外線画像では、カラーパレットの定義に応じてメッシュにおける表示色の色が決定される。
同様に、色彩設定部820は、複数の背景色の選択肢を表示する。そして、色彩設定部820は、ユーザによって選択された背景色を3次元画像表示部810の背景として設定する。
【0130】
メッシュ設定部830は、メッシュ画像として3次元画像表示部810に表示される画像のメッシュの間隔の設定を受け付ける。メッシュ設定部830は、メッシュの細かさに関するレベルの選択肢を提示する。メッシュが小さいほど、対象物の温度分布がより詳細に表現される。一方、メッシュが大きいほど、対象物の温度分布がより粗く表現される。
【0131】
温度情報表示部840は、3次元画像表示部810に表示される3次元の赤外線画像の温度に関する詳細な情報が表示される。詳細な情報は、赤外線画像における最高温度、最低温度および平均温度などを例示できる。
【0132】
描画設定部850は、3次元画像表示部810に表示される画像の表示サイズや温度幅の設定を受け付ける。描画設定部850は、ユーザの指定に応じて、3次元画像表示部810に表示される画像の拡大、縮小および回転を行う。
【0133】
画像保存部860は、3次元画像表示部810に表示される画像をキャプチャしたキャプチャ画像が表示される。本実施形態では、予め定められたボタン画像(例えば「画像保存ボタン」)を押下することで、押下したタイミングで3次元画像表示部810に表示されている画像がキャプチャされる。なお、キャプチャ画像は、元となる画像に関連付けられて画像管理部31により管理される。
【0134】
構造表示選択部870は、3次元の空隙画像390および3次元の露点画像395を表示する際に用いられる。本実施形態において、3次元の空隙画像390および3次元の露点画像395が表示される際、対象物を3次元で表現する3次元対象物画像350が表示される。3次元対象物画像350は、対象物を構成する素材ごとに区別して表示される。
そして、構造表示選択部870は、対象物の素材ごとに表示または非表示を行うための設定を受け付ける。
【0135】
図11に示すように、3次元画像表示部810には、3次元対象物画像350が表示される。3次元対象物画像350は、複数の素材により構成される対象物に対応して、複数の層によって表現される。また、各々の層は、条件設定部651(例えば
図8参照)にて設定された素材情報および厚さ情報に基づいて表示される。
図11に示す3次元対象物画像350は、厚み方向において最外層に位置する第1層350Aと、第1層350Aの内側に位置する第2層350Bと、第2層350Bの内側に位置する第3層350Cとを備えている。例えば、第1層350Aは、タイル素材に対応する。第2層350Bは、モルタル素材に対応する。そして、第3層350Cは、コンクリート素材に対応する。また、各層の厚さは、素材ごとに設定された厚さに応じて表示される。
【0136】
そして、3次元画像表示部810では、3次元対象物画像350において空隙部を示す空隙画像390が表示される。空隙画像390は、対象物の厚み方向において幅(厚さ)を有して表現される。すなわち、空隙画像390は、厚さ方向における空隙部の幅(厚さ)を3次元で表現する。このように、本実施形態の赤外線情報処理システム1では、対象物の厚さ方向における空隙部の位置を3次元対象物画像350に表示する。
【0137】
なお、
図11を参照しながら説明した空隙部を示す空隙画像390の表示態様は、露点部を示す露点画像395についても同様である。
【0138】
そして、本実施形態の赤外線情報処理システム1では、検出画面650や3次元表示画面800等に表示される空隙画像390や露点画像395を用いて対象物の診断を行うことができる。
例えば空隙部の厚さ方向における長さについて基準の閾値を設定しておく。そして、赤外線情報処理システム1では、検出した空隙部の長さが基準を超える場合に、ユーザに対して異常を知らせる。この場合に、例えば空隙画像390において基準を超えた空隙部の箇所については他の空隙部の箇所とは異なる色で表示してもよい。これは、露点部についても同様に適用することができる。
【0139】
また、赤外線情報処理システム1は、検出画面650や3次元表示画面800においてユーザに異常な箇所を示す場合、例えばユーザが選択しているカラーパレットにおいて定義されていない色を用いてもよい。これによって、赤外線情報処理システム1では、システム側にて診断した対象物の異常箇所をユーザが気づきやすく表示することができる。
【0140】
なお、本実施形態の説明において、空隙部や露点部を検出する例を用いて説明しているがこの例に限定されない。例えば構造物の経時劣化や想定外の条件下に構造物が晒されるなどの理由で構造物の一部が変質するような場合が想定される。本実施形態の赤外線情報処理システム1は、このような変質部についても予め熱伝導率の情報を記憶しておくことがきる。そして、赤外線情報処理システム1は、変質部の熱伝導率の情報を用いて、構造物の内部における変質部の位置を特定することが可能である。
【0141】
図12は、本実施形態のサーバ装置30のハードウェア構成例を示す図である。
図12に示すように、サーバ装置30は、CPU301と、主記憶装置302と、補助記憶装置303と、通信インターフェース(図では「通信I/F」と表記)304と、表示デバイス305と、入力デバイス306とを備える。
【0142】
CPU301は、例えば補助記憶装置303に記憶された各種プログラムを主記憶装置302にロードして実行することにより、サーバ装置30の機能を実現する。
主記憶装置302は、CPU301の作業用メモリ等として用いられるメモリである。
補助記憶装置303は、CPU301が実行する各種プログラム、サーバ装置30で作成または取得したデータ等を記憶するメモリである。補助記憶装置303には、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)などを用いることができる。
【0143】
通信I/F304は、ネットワークを介して他の装置との間で各種情報の送受信を行う。
表示デバイス305は、サーバ装置30内部から出力された各種情報を表示するデバイスである。ここで、表示デバイスとしては、例えば液晶ディスプレイを用いることができる。
入力デバイス306は、ユーザが入力した情報を受け取り、これをサーバ装置30内部へ入力するデバイスである。
【0144】
なお、上記のハードウェア構成およびハードウェア構成により実現される機能は、端末装置10についても同様である。
また、本実施形態のサーバ装置30および端末装置10を実現するプログラムは、各種の記録媒体に格納して提供することができる。また、サーバ装置30および端末装置10を実現するプログラムは、通信回線を介して提供することもできる。
【0145】
そして、本実施形態の赤外線情報処理システム1において、サーバ装置30が実現する機能は、端末装置10によって実現しても良い。また、本実施形態の赤外線情報処理システム1によって実現される機能は、複数のサーバ装置30や複数の端末装置10によって実現しても良い。
【0146】
ここで、画像管理部31は、取得手段の一例である。空隙部または露点部は、特定対象の一例である。空隙・露点検出部39は、特定手段の一例である。2次元画像表示部35、3次元画像表示部37は、表示手段の一例である。白黒の赤外線画像、疑似可視画像、可視画像または3次元対象物画像350は、構造物画像の一例である。空隙画像390または露点画像395は、対象画像の一例である。検出領域655は、対象領域の一例である。除外画像990は、除外画像の一例である。
【0147】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。上述した実施形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0148】
1…赤外線情報処理システム、10…端末装置、30…サーバ装置、31…画像管理部、33…カラーパレット設定部、35…2次元画像表示部、37…3次元画像表示部、39…空隙・露点検出部