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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046482
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20240327BHJP
   H02K 9/22 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H02K5/16
H02K9/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151904
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水上 順也
(72)【発明者】
【氏名】倉本 慎也
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605DD11
5H605EB10
5H609PP11
5H609QQ23
5H609RR58
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軸受の温度上昇を抑制し、長期間にわたって安定して駆動可能なモータを提供する。
【解決手段】モータは、筒状の保持部と、保持部の内部に配置されて中心軸を中心に回転するシャフトを有するロータと、シャフトを回転可能に支持する軸受部と、保持部の径方向外方に配置されたステータと、を有する。軸受部は、第1軸受と、第2軸受とを有する。保持部は、第1保持部と、第1保持部の上端部より上方に延びる第2保持部と、を有する。第1保持部の外周面にはステータが固定され、内周面の下端部には第1軸受の外輪が固定される。第2保持部の内周面には、第2軸受の外輪の少なくとも一部が固定される。第2保持部は、ステータコアと径方向に隙間を介して配置され、第2保持部の径方向の厚みは、第2保持部の外周面と前記ステータコアの内周面との距離よりも小さい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸を中心に回転するシャフト及びロータマグネットを有するロータと、
ステータコアを有して前記ロータマグネットの径方向内方と径方向に対向するステータと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受部と、
前記中心軸を中心とする筒状であって、前記軸受部を保持する保持部と、を有し、
前記軸受部は、第1軸受と、前記第1軸受の上方に配置される第2軸受とを有し、
前記保持部は、
前記中心軸に沿って延びる筒状の第1保持部と、
前記第1保持部の上端部より前記中心軸に沿って上方に延びる筒状の第2保持部と、を有し、
前記第1保持部の外周面には前記ステータコアが固定され、内周面の下端部には第1軸受の外輪が固定され、
前記第2保持部の内周面には、前記第2軸受の外輪の少なくとも一部が固定され、
前記第2保持部は、前記ステータコアと径方向に隙間を介して配置され、前記第2保持部の径方向の厚みは、前記第2保持部の外周面と前記ステータコアの内周面との径方向の距離よりも小さいモータ。
【請求項2】
前記保持部は、前記第1保持部の上端部よりも下方で内周面から径方向内方に拡がる内保持面を有し、
前記第2軸受の外輪の下端部は前記内保持面に直接的又は間接的に接触する請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1保持部の上端部が前記ステータコアの軸方向の中央よりも上方に位置し、
前記第2保持部の上端部が前記ステータコアの上端部よりも下方に位置する請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1保持部は、前記第1保持部の上端部よりも下方で径方向外方に拡がり前記ステータコアの下端部が接触する外保持面を有し、
前記外保持面から前記第1保持部の上端部までの軸方向の長さが、前記第2保持部の軸方向の長さよりも大きい請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
第1保持部は、外周面の上部に、下部の前記ステータコアと接触する部分よりも小径の小径部を有する請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
前記ロータは、前記シャフトに固定されるロータハブを有し、
前記ロータハブは、
軸方向から見て中心に配置されて前記シャフトが配置される貫通孔と、
前記貫通孔の辺縁部から軸方向下方に延びる筒状であり、前記シャフトが固定されるロータボスと、を有し、
前記ロータボスの下端部が前記ステータコアの上端部よりも下方で前記第2軸受の内輪と接触する請求項1に記載のモータ。
【請求項7】
前記第1保持部は、前記第1軸受と径方向に重なる外周面上に、径方向内方に凹む凹溝を有し、
前記凹溝は、周方向に連続している請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータは、ベースプレートに圧入された軸受ハウジングに固定された軸受を介してシャフトが回転可能に支持されている。そして、軸受ハウジングの外周面にステータコアが固定されている。(例えば、特開2022-95017号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-95017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のモータでは、軸受ハウジングの軸受を支持している部分とステータコアとが接触しているため、ステータコアの熱が軸受に伝わりやすい。そのため、ステータコアからの熱によって軸受の温度が上昇し、軸受の寿命が低下してしまうことで、軸受の動作が長期間にわたって安定して回転が困難になる虞がある。
【0005】
そこで本発明は、軸受の温度上昇を抑制し、長期間にわたって安定して駆動可能なモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、上下に延びる中心軸を中心に回転するシャフト及びロータマグネットを有するロータと、ステータコアを有して前記ロータマグネットの径方向内方と径方向に対向するステータと、前記シャフトを回転可能に支持する軸受部と、前記中心軸を中心とする筒状であって、前記軸受部を保持する保持部と、を有する。前記軸受部は、第1軸受と、前記第1軸受の上方に配置される第2軸受とを有する。前記保持部は、前記中心軸に沿って延びる筒状の第1保持部と、前記第1保持部の上端部より前記中心軸に沿って上方に延びる筒状の第2保持部と、を有する。前記第1保持部の外周面には前記ステータコアが固定され、内周面の下端部には第1軸受の外輪が固定され、前記第2保持部の内周面には、前記第2軸受の外輪の少なくとも一部が固定され、前記第2保持部は、前記ステータコアと径方向に隙間を介して配置され、前記第2保持部の径方向の厚みは、前記第2保持部の外周面と前記ステータコアの内周面との径方向の距離よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明のモータによれば、軸受の温度上昇を抑制し、長期間にわたって安定して駆動可能なモータを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、モータの斜視図である。
図2図2は、モータの分解斜視図である。
図3図3は、モータの縦断面図である。
図4図4は、モータの保持部及び軸受部を拡大した断面図である。
図5図5は、変形例のモータの保持部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本明細書では、モータ100の中心軸Cxと平行な方向を「軸方向」、中心軸Cxと直交する方向を「径方向」、中心軸Cxを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とそれぞれ称する。
【0010】
また、本明細書では、モータ100において、軸方向を上下方向とするが、上下方向は単に説明のために用いられる名称であって、モータ100の実際の使用状態における位置関係及び方向を限定しない。さらに、本明細書において、「平行」とは、正確に平行だけでなく、実用上の範囲内で交差せずに並んで配置される場合も含む。
【0011】
<モータ100>
図1は、モータ100の斜視図である。図2は、モータ100の分解斜視図である。図3は、モータ100の縦断面図である。図4は、モータ100の保持部30及び軸受部50を拡大した断面図である。図1に示すように、モータ100は、ロータ10と、ステータ20と、保持部30と、軸受部50を有する。モータ100は、いわゆる、アウターロータ型のブラシレスDCモータであり、ロータ10の後述するロータマグネット13がステータ20の径方向外方に配置される。そして、ロータ10のロータマグネット13が、ステータ20の径方向外面と径方向に対向する。
【0012】
<ロータ10>
ロータ10は中心軸Cxを中心に回転する。図1及び図2に示すとおり、ロータ10は、シャフト11と、ロータケース12と、ロータマグネット13と、を有する。
【0013】
シャフト11は、中心軸Cxを中心とする円柱状である。シャフト11の一部は、保持部30の内部に配置される。シャフト11は、中心軸Cxを中心に回転する。また、シャフト11の上部は、保持部30の上端よりも上方に配置される。保持部30の詳細については、後述する。
【0014】
ロータケース12は、磁性材料で形成された有蓋筒状であり、ロータハブ121と、筒部122と、を有する。ロータハブ121は、シャフト11に固定される。すなわち、ロータ10は、シャフト11に固定されるロータハブ121を有する。ロータハブ121は、中央に軸方向に貫通する貫通孔123を有する円環状である。すなわち、ロータハブ121は、軸方向から見て中心に配置されてシャフト11が配置される貫通孔123を有する。
【0015】
ロータハブ121は、貫通孔123の辺縁部から軸方向下方に延びる筒状のロータボス124を有する。ロータボス124には、シャフト11が固定される。換言すると、シャフト11とロータケース12とは、ロータボス124によって固定される。ロータボス124とシャフト11とは、ここでは、圧入によって固定されるが、これに限定されない。固定方法は、例えば、接着、溶着、ねじ止め等、ロータボス124をシャフト11に強固に固定できる方法を広く採用することができる。
【0016】
筒部122は、円筒状でありロータハブ121の径方向外縁から軸方向に延びる。筒部122の内周面には、ロータマグネット13が固定される。
【0017】
ロータマグネット13は、円筒状である。ロータマグネット13の少なくとも内周面は、N極とS極とが周方向に交互に並んで配置される。本実施形態において、ロータマグネット13は、円筒状であるが、これに限定されない。例えば、筒状のロータコアに複数の平板状のマグネットを周方向に並べて固定してもよい。
【0018】
すなわち、ロータ10は、上下に延びる中心軸Cxを中心に回転するシャフト11及びロータマグネット13を有する。
【0019】
<ステータ20>
ステータ20は、ロータマグネット13の径方向内側に配置されてロータマグネット13と径方向に対向する。ステータ20は、ステータコア21と、インシュレータ(不図示)と、コイル22と、を有する。すなわち、ステータ20は、ステータコア21を有してロータマグネット13の径方向内方と径方向に対向する。ステータコア21は、電磁鋼板を軸方向に積層した積層体である。なお、ステータコア21は、電磁鋼板を積層した積層体に限定されず、例えば、紛体の焼成、鋳造等、単一の部材であってもよい。
【0020】
ステータコア21は、環状のコアバック211と複数のティース212とを有する。環状のコアバック211の内周面213は、ベースプレート40の保持部30に固定される。これにより、ステータコア21の中心が、モータ100の中心軸Cxに重なる。なお、コアバック211と保持部30との間に、固定用の部材が介在してもよい。
【0021】
複数のティース212はコアバック211の外周面から径方向外側に延びる。複数のティース212は、周方向に等間隔で配置される。インシュレータ(不図示)は、例えば、樹脂等の絶縁性を有する材料で形成されており、少なくともティース212を覆う。
【0022】
インシュレータ(不図示)は、ステータコア21と、コイル22とを電気的に絶縁する。なお、インシュレータ(不図示)は、樹脂に限定されず、ステータコア21とコイル22とを絶縁できる材料を広く採用できる。なお、導線とティース212とが絶縁される場合、インシュレータ(不図示)を省略してもよい。
【0023】
コイル22は、ティース212を覆うインシュレータ(不図示)を介してティース212に導線を巻き付けて形成される。コイル22を構成する導線は、不図示の回路基板に接続される。そして、コイル22には、回路基板から位相が異なる3系統の電流が供給される。コイル22に電流が供給されることでコイル22が励磁され、コイル22とロータマグネット13との間に、引力又は斥力が発生する。コイル22に供給される電流の供給タイミングを調整することで、引力又は斥力によって、ロータ10が回転する。
【0024】
<保持部30>
保持部30は、ロータ10及びステータ20の軸方向下方に配置されたベースプレート40の上面から中心軸Cxに沿って上方に突出する。そして、保持部30とベースプレート40とは、一体的に形成される。なお、保持部30をベースプレート40と別体で形成し、保持部30がベースプレート40に固定される構成であってもよい。
【0025】
図2図3に示すように、保持部30は、第1保持部31と、第2保持部32とを有し、軸受部50を保持する。すなわち、保持部30は、中心軸Cxを中心とする筒状であり、軸受部50を保持する。保持部30は、中心軸Cxに沿って上下に貫通する貫通孔300を有する。貫通孔300の内部には軸受部50が配置されており、軸受部50はシャフト11を回転可能に支持する。すなわち、軸受部50は、シャフト11を回転可能に支持する。第1保持部31は、中心軸Cxを中心とする筒状である。すなわち、保持部30は、中心軸Cxに沿って延びる筒状である。第1保持部31は、下端部でベースプレート40と連結される。
【0026】
第1保持部31の外周面311には、コア固定部312と、小径部313と、外保持面314とが設けられる。ステータコア21は、内周面をコア固定部312に接触した状態で第1保持部31に固定される。第1保持部31のコア固定部312への固定方法は、ここでは、圧入である。しかしながら、ステータコア21の第1保持部31への固定方法は、圧入に限定されず、接着、溶接、溶着、ねじ止め等、ステータコア21を第1保持部31に強固に固定できる固定方法を広く採用することができる。図3に示すように、第1保持部31に固定されたステータコア21の上端部210は、第2保持部32の上端部320よりも上方に位置する。
【0027】
小径部313は、コア固定部312の軸方向上方に連結される。小径部313のコア固定部312から上方に向かうにつれて小径になるテーパ状の部分を有する。小径部313の外径は、コア固定部312の外径よりも小さい。すなわち、第1保持部31は、外周面311の上部に、下部のステータコア21と接触する部分よりも小径の小径部313を有する。
【0028】
ステータコア21を保持部30に取り付けるとき、保持部30の上部、つまり、第2保持部32がステータコア21の内部に挿入される。その後、第1保持部31の小径部313がステータコア21に挿入される。ステータコア21の内周面213は、コア固定部312に接触して固定される構成である。そのため、ステータコア21の内周面213の内径とコア固定部312の外径とは、略等しい。小径部313の外径及び第2保持部32の外径はコア固定部312の外径よりも小さい。そのため、第2保持部32及び小径部313は、ステータコア21の内周面213と接触せずに、ステータコア21の内部に挿入できる。そのため、保持部30をステータコア21に挿入するときに挿入しやすく、モータを製造するときの作業性を高めることができる。
【0029】
外保持面314は、第1保持部31の径方向外側で中心軸Cxと直交する方向に拡がる環状である。ステータコア21を保持部30の上部から保持部30に取り付けるとき、コアバック211の下端部が外保持面314と接触する。これにより、ステータコア21が、保持部30に対して軸方向に位置決めされる。
【0030】
第2保持部32は、中心軸Cxを中心とする円筒状である。保持部30において、第2保持部32は、第1保持部31の上端部310から上方に突出する。すなわち、第2保持部32は、第1保持部31の上端部310より中心軸Cxに沿って上方に延びる筒状である。
【0031】
第2保持部32は、第1保持部31と一体的に形成されている。しかしながら、第1保持部31と第2保持部32とが一体的に形成される場合に限定されず、第2保持部32を第1保持部31と別体で形成した後、第2保持部32を第1保持部31に接着、溶接、圧入等の固定方法で固定してもよい。なお、第2保持部32の第1保持部31への固定方法は、上述に限定されるものではなく、第2保持部32を第1保持部31に強固に固定できる固定方法を広く採用することができる。
【0032】
第1保持部31の上端部310は、中心軸Cxと直交する方向に拡がる環状の平面である。これにより、第1保持部31と第2保持部32との境界には中心軸Cxと直交する段差部が形成され、小径部313は段差部の下方に配置される。第2保持部32の径方向の厚みW1は、第1保持部31の径方向の厚みよりも薄い。第2保持部32の外径は、第1保持部31の上端部310、つまり、小径部313の上端の外径よりも小さい。そのため、保持部30の上端部からステータコア21を配置するとき、第2保持部32が邪魔になりにくい。
【0033】
保持部30の貫通孔300は、異なる内径の孔が軸方向に連結されている。軸方向中間部は中間孔部303であり、中間孔部303よりも下部が下部孔部304であり、上部が上部孔部305である。貫通孔300は、中間孔部303と下部孔部304との接合部分に、径方向内方に拡がる第1内保持面301を有する。また、貫通孔300は、中間孔部303と上部孔部305との接合部分に、径方向内方に拡がる第2内保持面302を有する。保持部30において、第2内保持面302は、第1保持部31の上端よりも下方に配置される。すなわち、保持部30は、第1保持部31の上端部310よりも軸方向下方で内周面から径方向内方に拡がる内保持面302を有する。
【0034】
<軸受部50>
軸受部50は、第1軸受51と、第2軸受52とを有する。第1軸受51及び第2軸受52は、保持部30の貫通孔300の内周面に固定されて、シャフト11を保持部30に対して回転可能に支持する。第1軸受51は、シャフト11の軸方向下部を支持し、第2軸受52は、シャフト11の第1軸受51よりも上部を支持する。すなわち、軸受部50は、第1軸受51と、第1軸受51の上方に配置される第2軸受52とを有する。シャフト11の軸方向に離れた位置を第1軸受51及び第2軸受52が回転可能に支持するため、シャフト11の回転時のブレが抑制される。
【0035】
ここで、第1軸受51及び第2軸受52の詳細な構成について、説明する。軸受部50において、第1軸受51及び第2軸受52は、同じ構成を有する。ここでは、第1軸受51及び第2軸受52を代表して第1軸受51について説明し、第2軸受52の構成については、第1軸受51の構成との対応について説明する。
【0036】
第1軸受51は、内輪511、外輪512及びボール513を有する。内輪511及び外輪512は、筒状である。第1軸受51では、中心軸Cxを中心として、内輪511及び外輪512が径方向に対向して配置される。そして、内輪511と外輪512との間に複数のボール513周方向に並んで配置される。つまり、第1軸受51は、ボールベアリングである。
【0037】
第1軸受51の内輪511は、シャフト11の外周面に固定される。第1軸受51の外輪512は、保持部30の貫通孔300の下部孔部304の内周面に固定される。すなわち、第1保持部31の内周面の下端部には第1軸受51の外輪512が固定される。
【0038】
これにより、外輪512は、軸方向に位置決めされる。第1軸受51は、第1保持部31と径方向に重なる位置に保持される。
【0039】
第1軸受51の内輪511及び外輪512は、例えば、圧入によって下部孔部304及びシャフト11に固定される。しかしながら、第1軸受51の内輪511及び外輪512の下部孔部304及びシャフト11への固定は、圧入に限定されるものではなく、溶着、接着、溶接等を挙げることができる。また、これら以外にも、内輪511及び外輪512の周方向の移動が制限される固定方法を広く採用することができる。
【0040】
第2軸受52は、第1軸受51の内輪511と対応する内輪521と、外輪512と対応する外輪522と、ボール513と対応するボール523と、を有する。そして、第2軸受52も保持部30に取り付けられるとともに、シャフト11を回転可能に支持する。
【0041】
第2軸受52の内輪521は、シャフト11の外周面に固定される。第2軸受52の外輪522は、保持部30の貫通孔300の上部孔部305の内周面に固定される。すなわち、第2保持部32の内周面には、第2軸受52の外輪522の少なくとも一部が固定される。
【0042】
このとき、第2軸受52の外輪522の下端部が、第2内保持面302と接触する。これにより、外輪522は、軸方向に位置決めされる。なお、本実施形態のモータ100において、第2軸受52の外輪522は、第2内保持面302に直接接触しているが、これに限定されず、例えば、ワッシャ等の部材を介して、つまり、間接的に接触してもよい。すなわち、第2軸受52の外輪522の下端部は内保持面302に直接的又は間接的に接触する。このように、部材を介在させることで、第2軸受52の軸方向の位置を調整することが可能である。
【0043】
第2軸受52の内輪521及び外輪522は、例えば、圧入によって上部孔部305及びシャフト11に固定される。しかしながら、第2軸受52の内輪521及び外輪522のシャフト11及び上部孔部305への固定は、圧入に限定されるものではなく、溶着、接着、溶接等を挙げることができる。また、これら以外にも、内輪521及び外輪522の周方向の移動が制限される固定方法を広く採用することができる。
【0044】
貫通孔300において、第2内保持面302が第1保持部31の上端よりも下方に配置される。そのため、第2軸受52の下端部は、第1保持部31に保持され、その他の部分は、第2保持部32に保持される。
【0045】
第1保持部31は、第2保持部32に比べて径方向の厚みが厚い。そのため、第1保持部31は、第2保持部32に比べて剛性が高い。そして、第2軸受52の下端部が第1保持部31に保持されるため、第2軸受52の取り付けの剛性を高めることができる。その結果、第2軸受52のがたつき、緩み等が抑制され、長期間にわたり第2軸受52の安定した動作が可能である。
【0046】
図3図4に示すように、第1軸受51は、シャフト11の下部を保持する。また、第2軸受52は、シャフト11上の第1軸受51よりも上方に配置される。さらに説明すると、第2軸受52は、シャフト11の第1軸受51が保持する部分よりも上方を保持する。シャフト11は、第1軸受51及び第2軸受52に保持されることで、中心が中心軸Cxと重なり、シャフト11は中心軸Cxを中心として回転可能である。
【0047】
また、図3図4に示すように、ロータボス124の下端部125がステータコア21の上端部210よりも下方で第2軸受52の内輪521と接触する。ロータボス124の一部が、ステータコア21の上端部210よりも下方に位置されることで、モータ100の軸方向の高さを小さくすることができる。また、ロータボス124の下端部125が第2軸受52の内輪521を押すことで、第2軸受52の軸方向の移動が抑制される。
【0048】
本実施形態にかかるモータ100は、上述した構成を有する。
【0049】
次に、モータ100の各部の相対的な位置について説明する。図4に示すように、モータ100において、保持部30の第1保持部31のコア固定部312にステータコア21が固定される。すなわち、第1保持部31の外周面311にはステータコア21が固定される。
【0050】
図4に示すように、第1保持部31の上端部310がステータコア21の軸方向の中央線21Cよりも上方に位置する。そして、第2保持部32の上端部320がステータコア21の上端部210よりも下方に位置する。
【0051】
このように構成することで、ロータケース12のロータボス124等の部材の少なくとも一部が、ステータコア21の上端部210よりも下方に位置させることができる。これにより、モータ100の軸方向の高さを小さくすることができる。
【0052】
また、図4に示すように、外保持面314から第1保持部31の上端部310までの軸方向の長さL1が、第2保持部32の軸方向の長さL2よりも大きい。
【0053】
このように構成することで、第1保持部31でステータコア21を強固に保持することができる。また、第2保持部32を短く形成することでモータ100を軽量化することができる。
【0054】
また、第2保持部32の径方向の厚みW1は、第1保持部31の径方向の厚みよりも薄い。そのため、第1保持部31のコア固定部312のステータコア21を固定したとき、第2保持部32とステータコア21のコアバック211の内周面213との間に隙間Thが形成される。すなわち、第2保持部32は、ステータコア21と径方向に隙間Thを介して配置される。
【0055】
第2保持部32の径方向の厚みW1は、隙間Thの径方向の距離W2よりも小さい。すなわち、第2保持部32は、ステータコア21と径方向に隙間Thを介して配置され、第2保持部32の径方向の厚みW1は、第2保持部32の外周面321とステータコア21の内周面213との径方向の距離W2よりも小さい。
【0056】
<モータ100の駆動>
上述したとおり、モータ100は、コイル22に電流を供給することで、ロータ10が中心軸Cxを中心に回転する。コイル22に電流を供給する。コイル22に電流が供給されることで、コイル22が発熱する。コイル22で発生した熱は、ステータ20及びステータ20が接触している保持部30を介して、モータ100の全体に伝導する。
【0057】
モータ100において、ステータコア21は磁性体で形成されており、例えば、鉄等の金属で形成される。そのため、コイル22で発生した熱は、ステータコア21に伝導される。第2保持部32とステータコア21との間には隙間Thが形成されている。
【0058】
第2保持部32とステータコア21とが直接接触せず、第2保持部32とステータコア21との径方向の距離W2が第2保持部32の径方向の厚みW1よりも大きいため、ステータコア21から第2保持部32に直接熱が伝わりにくい。また、第2保持部32の外周部とステータコア21との間に隙間Thがあるため、第1保持部31から第2保持部32に熱が伝わっても、伝わった熱は第2保持部32の外周部より外部に放出される。そのため、第2軸受52への熱の伝導が抑制され、温度上昇による第2軸受52の劣化(特に潤滑剤の劣化)を抑制できるため、長期間にわたり第2軸受52の安定した動作が可能である。なお、第1軸受51は、下部が貫通孔300の下部の開口に面しているため、昇温されにくい。そのため、第1軸受51も温度上昇による劣化が抑制され、長期間にわたり安定して動作する。
【0059】
<変形例>
図5は、変形例のモータ100Aの保持部30Aの拡大断面図である。図5に示すように、モータ100Aの保持部30Aが、凹溝33を有する点で、モータ100の保持部30と異なる。モータ100Aのこれ以外の点については、モータ100と同じ構成を有する。そのため、モータ100Aのモータ100と実質上同じ部分については、同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0060】
図5に示すように、保持部30Aにおいて、第1内保持面301は外保持面314よりも軸方向下方に配置される。これにより、第1軸受51は、軸方向においてステータコア21と軸方向にずれて配置される。そのため、ステータコア21の熱が第1軸受51に直接伝達されにくい。
【0061】
図5に示すように、モータ100Aにおいて、保持部30Aの第1保持部31Aには、外周面311から径方向内方に凹む凹溝33が形成されている。凹溝33は、第1軸受51の径方向に重なる位置に設けられている。そして、凹溝33は、周方向に繋がっている。すなわち、第1保持部31Aは、第1軸受51と径方向に重なる外周面311上に、径方向内方に凹む凹溝33を有する。凹溝33は、周方向に連続している。
【0062】
凹溝33を形成することで、第1保持部31の第1軸受51を保持する部分の径方向外方に隙間Tmが形成される。これにより、第1保持部31の熱が隙間Tmから外部に放出されるため、熱が第1軸受51に伝達されにくく、第1軸受51が昇温されにくい。このため、昇温による第1軸受51の劣化(特に潤滑剤の劣化)が抑制され、長期間にわたり第1軸受51の安定した動作が可能である。
【0063】
なお、凹溝33は、中心軸Cxを中心とする一定の中心角度の複数の溝を、周方向に離れて配置してもよい。このような構成であっても、第1軸受51への熱の伝導を抑制し、第1軸受51の昇温による劣化を抑制できる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変形が可能である。
【0065】
<まとめ>
本発明は、以下の構成を有する。
【0066】
(1)上下に延びる中心軸を中心に回転するシャフト及びロータマグネットを有するロータと、ステータコアを有して前記ロータマグネットの径方向内方に対向するステータと、前記シャフトを回転可能に支持する軸受部と、前記中心軸を中心とする筒状に形成され、前記軸受部を保持する保持部と、を有する。前記軸受部は、第1軸受と、前記第1軸受の上方に配置される第2軸受と、を有する。前記保持部は、前記中心軸に沿って延びる筒状の第1保持部と、前記第1保持部の上端部より前記中心軸に沿って上方に延びる筒状の第2保持部と、を有する。前記第1保持部の外周面には前記ステータコアが固定され、内周面の下端部には第1軸受の外輪が固定される。前記第2保持部の内周面には、前記第2軸受の外輪の少なくとも一部が固定される。前記第2保持部は、前記ステータコアと径方向に隙間を介して配置され、前記第2保持部の径方向の厚みは、前記第2保持部の外周面と前記ステータコアの内周面との径方向の距離よりも小さいモータ。
【0067】
(2)前記保持部は、前記第1保持部の上端部よりも下方で内周面から径方向内方に拡がる内保持面を有する。前記第2軸受の外輪の下端部は前記内保持面に直接又は間接的に接触する(1)に記載のモータ。
【0068】
(3)前記第1保持部の上端部が前記ステータコアの軸方向の中央よりも上方に位置し、前記第2保持部の上端部が前記ステータコアの上端部よりも下方に位置する(1)又は(2)に記載のモータ。
【0069】
(4)前記第1保持部は、前記第1保持部の上端部よりも下方で径方向外方に拡がり前記ステータコアの下端部が接触する外保持面を有する。前記外保持面から前記第1保持部の上端部までの軸方向の長さが、前記第2保持部の軸方向の長さよりも大きい(1)から(3)のいずれかに記載のモータ。
【0070】
(5)第1保持部は、外周面の上部に、下部の前記ステータコアと接触する部分よりも小径の小径部を有する(4)に記載のモータ。
【0071】
(6)前記ロータは、前記シャフトに固定されるロータハブを有する。前記ロータハブは、軸方向から見て中心に配置されて前記シャフトが配置される貫通孔と、前記貫通孔の辺縁部から軸方向下方に延びる筒状であり前記シャフトが固定されるロータボスと、を有する。前記ロータボスの下端部が前記ステータコアの上端部よりも下方で前記第2軸受の内輪と接触する(1)から(5)のいずれかに記載のモータ。
【0072】
(7)前記第1保持部は、外周面の前記第1軸受と径方向に重なる部分に、径方向内方に凹む凹溝を有する。前記凹溝は、周方向に連続している(1)から(6)のいずれかに記載のモータ。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のモータは、例えば、インペラを回転させる駆動装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
100、100A モータ
10 ロータ
11 シャフト
12 ロータケース
121 ロータハブ
122 筒部
123 貫通孔
124 ロータボス
125 下端部
13 ロータマグネット
20 ステータ
21 ステータコア
210 上端部
211 コアバック
212 ティース
213 内周面
21C 中央線
22 コイル
30、30A 保持部
300 貫通孔
301 第1内保持面
302 内保持面
302 第2内保持面
303 中間孔部
304 下部孔部
305 上部孔部
31、31A 第1保持部
310 上端部
311 外周面
312 コア固定部
313 小径部
314 外保持面
32 第2保持部
320 上端部
33 凹溝
40 ベースプレート
50 軸受部
51 第1軸受
511 内輪
512 外輪
513 ボール
52 第1軸受
521 内輪
522 外輪
523 ボール
図1
図2
図3
図4
図5