(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046500
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】波長変換器および光伝送システム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/35 20060101AFI20240327BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20240327BHJP
H04B 10/2543 20130101ALI20240327BHJP
【FI】
G02F1/35
H04J14/02
H04B10/2543
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151925
(22)【出願日】2022-09-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(委託)/全光信号処理による光伝送ネットワーク大容量化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智行
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA15
2K102BA13
2K102BA18
2K102BB03
2K102BC01
2K102BD02
2K102CA16
2K102DA04
2K102DA06
2K102DC07
2K102DD03
2K102DD05
2K102EA21
2K102EB06
2K102EB12
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB22
5K102AA01
5K102AA03
5K102AD01
5K102AK02
5K102KA06
5K102KA42
5K102PC12
5K102PH14
5K102PH22
5K102PH26
5K102PH47
5K102PH48
5K102RB04
(57)【要約】
【課題】非線形雑音の発生を抑えながら出力パワーを高くし、伝送容量を拡大できること。
【解決手段】波長変換器100は、入力される信号光に波長変換励起光を合波する第一の合波器104と、信号光にラマン励起光を合波する第二の合波器106と、非線形光学効果に基づき、信号光の波長変換光を生成する第一の非線形光学媒質107と、第一の非線形光学媒質107が出力する信号光の波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質108と、を含む。ラマン励起光の波長は、増幅帯域が波長変換光をラマン増幅する波長である。また、第二の非線形光学媒質108は、零分散波長が第一の非線形光学媒質107よりも信号光および波長変換光の波長帯での波長分散の絶対値が大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される信号光に波長変換励起光を合波する第一の合波器と、
前記信号光にラマン励起光を合波する第二の合波器と、
非線形光学効果に基づき、前記信号光の波長変換光を生成する第一の非線形光学媒質と、
前記第一の非線形光学媒質が出力する信号光の前記波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質と、を含み、
前記ラマン励起光の波長は、増幅帯域が前記波長変換光をラマン増幅する波長であることを特徴とする波長変換器。
【請求項2】
前記第二の非線形光学媒質は、零分散波長が前記第一の非線形光学媒質よりも信号光および波長変換光の波長帯での波長分散の絶対値が大きいことを特徴とする請求項1に記載の波長変換器。
【請求項3】
前記第二の非線形光学媒質の前段に設けられ、前記波長変換励起光の波長の通過を阻止する光フィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の波長変換器。
【請求項4】
前記第二の非線形光学媒質の後段に設けられ、前記波長変換光の波長を抽出する光フィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の波長変換器。
【請求項5】
入力段に設けられ、前記信号光を偏波分離する第一の偏波ビームスプリッタと、
前記第一の非線形光学媒質よりも後段に配置され、前記信号光を偏波合成する第二の偏波ビームスプリッタと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の波長変換器。
【請求項6】
前記第二の合波器を前記第一の非線形光学媒質の前段に配置し前記ラマン励起光による前方励起、または、前記第二の合波器を前記第二の非線形光学媒質の後段に配置し前記ラマン励起光による後方励起、あるいはその組み合わせとしたことを特徴とする請求項1に記載の波長変換器。
【請求項7】
入力される信号光を偏波分離および偏波結合する偏波ビームスプリッタと、
前記偏波ビームスプリッタを変化制御する偏波制御器と、
前記偏波ビームスプリッタに接続され、前記第一の非線形光学媒質を含む偏波ダイバーシティループ回路と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の波長変換器。
【請求項8】
送信装置が送信する信号光を、伝送路を介して受信装置で受信する光伝送システムにおいて、
前記送信装置は、
入力される電気信号を第一の波長帯の信号光に変換する複数の送信器と、
前記複数の送信器のうち一部の複数の送信器が出力する信号光を第二の波長帯の信号光に変換する波長変換器と、
前記複数の送信器および前記波長変換器が出力する信号光を合波する合波器と、を含み、
前記受信装置は、
前記伝送路から受信した信号光を、前記第一の波長帯の信号光と、前記第二の波長帯の信号光とに分波する分波器と、
分波された前記第二の波長帯の信号光を前記第一の波長帯の信号に変換する波長変換器と、
前記分波器および前記波長変換器が出力する複数の第一の波長帯の信号光を電気信号に変換する複数の受信器と、を含み、
前記波長変換器は、
入力される信号光に波長変換励起光を合波する第一の合波器と、
前記信号光にラマン励起光を合波する第二の合波器と、
非線形光学効果に基づき、前記信号光の波長変換光を生成する第一の非線形光学媒質と、
前記第一の非線形光学媒質が出力する信号光の前記波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質と、を含み、
前記ラマン励起光の波長は、増幅帯域が前記波長変換光をラマン増幅する波長であることを特徴とする光伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換器および光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
増大し続ける光ネットワークのトラフィックに対し、波長多重チャネル数を増やして伝送容量の拡大等のために、波長変換技術の研究が進められている。伝送容量の拡大は、波長多重チャネル数を増やすことで実現することができる。また、伝送容量の拡大は、個別の帯域の光部品を使わず、波長変換器により信号光を波長変換して伝送することで共通の光送受信器および光増幅器等を利用することができる。
【0003】
先行技術としては、例えば、ポンプ光波長を波長変換用光ファイバの異常分散領域に設定し、ポンプ光強度を所定のしきい値以上にして縮退四光波混合により変換効率が下がる課題を光パラメトリック増幅の効果と相殺させて広帯域の波長変換を行う技術がある。また、4光波混合の励起光と信号光を非線形性を高めた分散シフト光ファイバに入力し、非線形性を高めた分散シフト光ファイバにラマン励起光を供給することで光出力が大きい波長変換を行う技術がある。また、広帯域光源に関し、半導体ファブリペローレーザの連続光を単一モードファイバでパルス光にし、希土類高非線形ファイバに入力させて光周波数を拡大させる技術がある(例えば、下記特許文献1~3参照。)。
【0004】
また、ラマン増幅とパラメトリック増幅とを組み合わせることで、信号光を広帯域に増幅する技術がある(例えば、下記非特許文献1~3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-075136号公報
【特許文献2】特開2004-163558号公報
【特許文献3】特開2006-128408号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Min-Chen Ho,外4名,”200-nm-Bandwidth Fiber Optical Amplifier Combining Parametric and Raman Gain”,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,VOL.19,NO.7,JULY 2001,pp.977-981
【非特許文献2】M.A.Ummy,外4名,”Extending the Gain Bandwidth of Combined Raman-Parametric Fiber Amplifiers Using Highly Nonlinear Fiber”,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,VOL.27,NO.5,MARCH 1,2009,pp.583-589
【非特許文献3】Frederik Klejs,外5名,”SNR-Improvement of Four-Wave-Mixing Wavelength Converters using Raman Amplification”,2021 European Conference on Optical Communication (ECOC),13-16 Sept.2021,IEEE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では、単純に波長多重チャネル数を増加させようとしても、光送受信器および光増幅器等による帯域が制限され、増加分の帯域については、新たに光送受信器および光増幅器を開発する必要が生じる。また、波長変換による変換効率は、非線形光学媒質の特性で制限され、高効率化と非線形雑音の抑圧とを両立することは困難である。
【0008】
一つの側面では、本発明は、非線形雑音の発生を抑えながら出力パワーを高くし、伝送容量を拡大できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、入力される信号光に波長変換励起光を合波する第一の合波器と、前記信号光にラマン励起光を合波する第二の合波器と、非線形光学効果に基づき、前記信号光の波長変換光を生成する第一の非線形光学媒質と、前記第一の非線形光学媒質が出力する信号光の前記波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質と、を含み、前記ラマン励起光の波長は、増幅帯域が前記波長変換光をラマン増幅する波長であることを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、非線形雑音の発生を抑えながら出力パワーを高くし、伝送容量を拡大できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、波長変換器の実施例1の説明図である。
【
図2】
図2は、比較例の技術による波長変換の不具合の説明図である。
【
図3】
図3は、波長変換器の実施例2の説明図である。
【
図4】
図4は、実施例2の波長変換シミュレーションの図表である。
【
図5】
図5は、光伝送システムの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、波長変換器の実施例3の構成図である。
【
図7】
図7は、波長変換器の実施例4の構成図である。
【
図8】
図8は、波長変換器の実施例5の構成図である。
【
図9】
図9は、波長変換器の実施例6の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、開示の波長変換器および光伝送システムの実施の形態を詳細に説明する。例えば、波長変換器は、光伝送システムの光送信装置に設けられ、信号光を波長変換した信号光を伝送路に出力し、光受信装置に送信する。また、例えば、波長変換器は、光伝送システムの光受信装置に設けられ、伝送路を介して伝送された信号光から波長変換された信号光を抽出する。
【0013】
(実施例1)
図1は、波長変換器の実施例1の説明図である。
図1(a)は、光送信装置に設ける波長変換器100の構成例であり、光フィルタ101、偏波制御器102、合波器104、合波器106、第一の非線形光学媒質107、第二の非線形光学媒質108、光フィルタ109、の順に縦列接続されている。また、波長変換器100は、合波器(第一の合波器)104に波長変換励起光源103が接続され、合波器(第二の合波器)106にラマン励起光源105が接続されている。
【0014】
光フィルタ101は、入力される信号光(波長λs)の波長のみを通過させるバンドパスフィルタ等である。偏波制御器102は、信号光と、波長変換励起光源103およびラマン励起光源105の偏波を揃える偏波制御を行う。
【0015】
波長変換励起光源103は、信号光を波長変換するための波長変換励起光の光源であり、波長λpcの波長変換励起光は、合波器104を介して信号光に合波される。
【0016】
ラマン励起光源105は、信号光を光増幅するためのラマン励起光の光源であり、ラマン励起光は、合波器106を介して信号光に合波される。ラマン励起光の波長λprは、増幅帯域が波長変換光をラマン増幅する波長である。
【0017】
第一の非線形光学媒質107は、非線形光学効果を有する光学媒質であり、非線形光学効果とラマン増幅によって信号光を波長変換した波長変換光(アイドラ光)を生成する。
【0018】
第二の非線形光学媒質108は、非線形光学効果を有する光学媒質であり、ラマン増幅によって波長変換光を光増幅する。第二の非線形光学媒質108は、信号光および波長変換光の波長帯での波長分散の絶対値が第一の非線形光学媒質107よりも大きい。また、第二の非線形光学媒質108は、零分散波長が第一の非線形光学媒質107より長波長、または信号波長帯を避けた短波長であればよい。なお、長波長の方が、非線形の高さと分散の大きさを両立しやすく実用的である。
【0019】
これら第一の非線形光学媒質107と第二の非線形光学媒質108とは、異なる種別の光学媒質を用いる。第一の非線形光学媒質107には波長変換光波長において低い波長分散のものを用い、第二の非線形光学媒質108には、波長変換光波長において高い波長分散のものを用いる。例えば、第一の非線形光学媒質107には物理長(相互作用長)が短いものを用いて低い波長分散とし、非線形雑音を低く抑える。また、第二の非線形光学媒質108には、物理長が長いものを用いて高い波長分散により、波長変換を起こさずに光増幅のみを行う。
【0020】
光フィルタ109は、波長変換光の波長のみを通過させるバンドパスフィルタ等であり、波長変換光を抽出した信号光を出力する。
【0021】
図1(b)には、第一の非線形光学媒質107の入力波形を示す。ラマン励起光の波長λprは、信号光Cの波長帯域よりも短波長である。例えば、ラマン励起光の波長λprは、ラマン増幅は光ファイバにおいては13THz離れた周波数において光増幅するため、1550nm付近では波長変換光CVの波長よりも100nm短波長に設定される。波長変換光CVの波長帯域は、ここでは信号光Cの波長帯域よりも長波長であるが、短波長でもよい。第一の非線形光学媒質107の入力には、信号光Cのラマン励起により、信号光Cの波長λsよりも長波長側に所定のラマンゲインが生じる。
【0022】
図1(c)には、第二の非線形光学媒質108の入力波形を示す。第一の非線形光学媒質107により、信号光Cと、信号光Cが波長変換およびラマン増幅された波長変換光CVが第二の非線形光学媒質108に入力される状態が示されている。
【0023】
図1(d)には、第二の非線形光学媒質108の出力波形を示す。第二の非線形光学媒質108によるラマン増幅で波長変換光CVが光増幅された状態が示されている。
【0024】
(比較例)
ここで、比較例の技術の不具合について説明しておく。伝送距離の延伸のためには、光送信器の出力パワーを伝送路入力まで高く保つ必要がある。光送信器と伝送路の間で波長変換する場合、波長変換後に光増幅により光パワーの減衰を補償する構成とした場合、光パワー減衰分だけ雑音が増大してしまうため伝送可能距離が短くなる。一方、波長変換前の光パワーを高くするか、変換効率を改善することで出力パワーを高くすることができるが、波長変換で発生する非線形雑音が増大する傾向が生じる。
【0025】
これに対し、波長変換用の励起光とラマン増幅用の励起光を非線形光学媒質に入力することで、波長変換とラマン増幅を同時に行い、雑音発生量を抑え出力パワーを高くする技術がある(例えば、上記特許文献2参照。)。
【0026】
図2は、比較例の技術による波長変換の不具合の説明図である。広い波長帯域での波長変換では短い相互作用長が有利であるため、比較例の技術では、十分なラマン利得を得ることができない。例えば、比較例の技術において、ラマン利得を高くするために相互作用長を長くすると、波長変換の位相整合条件が崩れ、波長変換光CVの変換帯域が狭くなる。例えば、
図2(a)に示す入力の信号光の波長変換の出力パワーを高くすると、
図2(b)に示すように非線形雑音Nが発生し、この非線形雑音Nが波長変換光CVの変換帯域に重なるため、波長変換光CVの変換帯域が狭帯域化する。
【0027】
この点に対応するため、例えば、このような波長変換とラマン増幅の同時処理と、この同時処理とは別の光増幅器を組み合わせた構成とした場合、必要となる励起光源が増えコストが増加してしまう。
【0028】
これに対し、実施例1では、第一の非線形光学媒質107の後段に第二の非線形光学媒質108を接続し、第一の非線形光学媒質107に波長変換励起光とラマン励起光を入力する。ここで、第一の非線形光学媒質107には低い波長分散のものを用いることで、第一の非線形光学媒質107の非線形光学効果とラマン増幅によって光線形雑音を低く抑えた波長変換光を生成し、第二の非線形光学媒質108に出力する。
【0029】
一方、第二の非線形光学媒質108には、高い波長分散のものを用いることで、波長変換を起こさずに波長変換光CVの変換帯域に対する光増幅を行うことができる。
【0030】
非線形光学媒質の分散特性例を示しておく。例えば、第一の非線形光学媒質107は、波長変換用の励起光、入力する信号光C、および波長変換光CVとの間で位相整合するために、波長領域の波長分散の絶対値が3ps/nm/km未満と小さく、零分散波長が入力の信号光Cと波長変換光CVの間の波長である。
【0031】
また、第二の非線形光学媒質108は、入力の信号光C内の非線形歪と波長変換用の励起光による波長変換光CVへの相互作用を抑圧する。このために、第二の非線形光学媒質108は、信号光Cおよび波長変換光CVの波長領域において、波長分散の絶対値が3ps/nm/km以上と大きく、零分散波長が第一の非線形光学媒質107よりも長波長である。
【0032】
(実施例2)
図3は、波長変換器の実施例2の説明図である。
図3(a)は、光送信装置に設ける波長変換器100の構成例であり、
図1(a)に示した実施例1と同一の構成部には同一の符号を付してある。
【0033】
実施例2の波長変換器100は、光フィルタ101、偏波制御器102、合波器104、合波器106、第一の非線形光学媒質107、第二の非線形光学媒質108、光フィルタ109、の順に縦列接続されている。また、波長変換器100は、合波器104に波長変換励起光源103が接続され、合波器106にラマン励起光源105が接続されている。そして、実施例2では、第一の非線形光学媒質107と、第二の非線形光学媒質108との間に光フィルタ310を設ける。
【0034】
光フィルタ310は、第二の非線形光学媒質108に対する波長変換励起光λpcの入力を阻止するフィルタであり、例えばバンドパスフィルタである。
【0035】
図3(b)には、第一の非線形光学媒質107の入力波形を示す。ラマン励起光の波長λprは、信号光Cの波長帯域よりも短波長である。例えば、ラマン励起光の波長λprは、ラマン増幅は光ファイバにおいては13THz離れた周波数において光増幅するため、1550nm付近では波長変換光CVの波長よりも100nm短波長に設定される。波長変換光CVの波長帯域は、ここでは信号光Cの波長帯域よりも長波長であるが、短波長でもよい。第一の非線形光学媒質107の入力には、信号光Cのラマン励起により、信号光Cの波長λsよりも長波長側に所定のラマンゲインが生じる。
【0036】
図3(c)には、第二の非線形光学媒質108の入力波形を示す。第一の非線形光学媒質107により、信号光Cと、信号光Cが波長変換およびラマン増幅された波長変換光CVが第二の非線形光学媒質108に入力される状態が示されている。ここで、光フィルタ310は、波長変換励起光λpcの帯域の通過を阻止(カット)する光フィルタ透過率の特性を有し、両側帯の信号光Cと波長変換光CVを通過させて第二の非線形光学媒質108に入力させる。
【0037】
図1(d)には、第二の非線形光学媒質108の出力波形を示す。第二の非線形光学媒質108によるラマン増幅で波長変換光CVが光増幅された状態が示されている。
【0038】
実施例2の構成では、光フィルタ310を設けることで、第一の非線形光学媒質107と、第二の非線形光学媒質108とに同一の分散特性を有するものを用いることができる。第一の非線形光学媒質107と、第二の非線形光学媒質108との間に光フィルタ310を設けることで、第二の非線形光学媒質108には、波長変換励起光λpcが入力されず、ラマン励起光λprによるラマン増幅を行うことができる。
【0039】
以上説明した実施例1および実施例2では、第一の非線形光学媒質107で増幅しながら波長変換し、さらに同じラマン励起光により第一の非線形光学媒質107の後段に接続した第二の非線形光学媒質108で光増幅する。これにより、雑音発生量を抑えながら高い出力光パワーを実現できる。
【0040】
また、波長変換励起光λpcとラマン励起光λprとを第一の第一の非線形光学媒質107および第二の非線形光学媒質108に入力させる構成とした。これにより、波長変換での同時増幅と、後段光増幅の励起光を共用した構成であるため、光源を個別に用意する場合に比べて低コスト化できる。
【0041】
ここで、実施例1のように、第一の非線形光学媒質107に低い波長分散のものを用い、第一の非線形光学媒質107に高い波長分散のものを用いる構成とする。また、実施例2のように、第二の非線形光学媒質108の前段に波長変換励起光λpcを阻止する光フィルタ310を設ける構成としてもよい。これら実施例1,2によれば、いずれも雑音発生量を抑えながら高い出力光パワーを実現できる。
【0042】
(非線形光学媒質の例)
非線形光学媒質としては、光ファイバや、平面光導波路等を用いることができる。光ファイバの場合、励起光と信号光を合波して入力することで、3次(または2次)の非線形分極により、四光波混合(または差周波発生)により信号光とは異なる波長に波長変換光を発生するものを用いる。例えば、コア断面積の小さい、または非線形屈折率の高い添加物を導入した非線形性の高い光ファイバを用いることができる。
【0043】
平面光導波路の場合、比屈折率差や非線形屈折率の高い誘電体、例えば、シリコン、または化合物半導体をコアに持つ平面光導波路を用いることができる。また、例えば、2次非線形分極の大きい周期分極反転ニオブ酸リチウムなどの光学結晶を用いた平面光導波路を用いることができる。
【0044】
(波長変換シミュレーション例)
図4は、実施例2の波長変換シミュレーションの図表である。
図4の例では、波長変換励起光λpcは波長1575nm,レベル20dBmである。信号光は波長1530~1560nm,レベルは0dBmである。ラマン励起光λprは波長1499nm,レベル37dBmである。非線形ファイバは波長λ
0=1575nm,Aeff(実効断面積)=20μm
2,長さ200mとした。
【0045】
図4(a)は第一の非線形光学媒質107(非線形ファイバ)出力を示す図、
図4(b)は、第二の非線形光学媒質108(ポストアンプ)の出力を示す図である。これらの図において横軸は波長、縦軸は光学パワーである。
【0046】
図4(a),(b)において、実線は第一の非線形光学媒質107(非線形ファイバ)にラマン励起光を入れない場合の波形、点線は第一の非線形光学媒質107(非線形ファイバ)にラマン励起光を入れた場合の波形である。
【0047】
図4(a)に点線で示すように、ラマン励起光により、矢印分だけ波長変換光CVの出力が増加(ラマン利得14dB)している。OSNR(信号対雑音比)は、ラマン励起光を入れない場合、Signal(信号光)が57dB,Idler(波長変換光)が54dB,ラマン励起光を入れた場合、Signalが55dB,Idlerが50dBであった。
【0048】
また、
図4(b)の第二の非線形光学媒質108(ポストアンプ、NF(雑音指数4dB)の出力では、実線で示すラマン励起光を入れない場合のOSNRが33dBである。これに対し、点線(実施例2)で示すラマン励起光を入れた場合のOSNRは47dBに改善できた。
【0049】
上記シミュレーション結果を考察する。
図4(a)に示す波長変換での波長変換光CVでの雑音増大(信号光Cと波長変換光CVの比較)は、3dBであった(無損失光増幅器の原理的な雑音増大、変換効率が低くポストアンプを入れた場合には見えない)。ラマン増幅を同時に行うと信号光Cが自然放出ラマン散乱により2dB劣化した(ラマン励起条件依存)。
【0050】
そして、ラマン増幅した場合、波長変換光CVの入力信号に比べてOSNRは7dB劣化した(自然放出ラマン:2dB×2+光増幅器の原理雑音増加:3dB)。
【0051】
ラマン増幅なしの後段損失補償光増幅(第二の非線形光学媒質108)での雑音増大は、-20dBの変換効率の場合、20dBの損失と光増幅器のNFの合算で24dBである。一方、ラマン増幅ありの後段損失補償光増幅(第二の非線形光学媒質108)での雑音増大は、2段増幅器(前段NF7dB利得G-6dBと、後段NF4dB利得G6dB)での増幅増大と一致して10dB以下に抑えることができた。
【0052】
(システム構成例)
図5は、光伝送システムの構成例を示す図である。
図5には、上述した実施例1(
図1)あるいは実施例2(
図3)の波長変換器100を複数帯域の光伝送システムに適用した例を示す。波長変換器100は、送信装置510、および受信装置520にそれぞれ配置され、伝送路530を介して信号光を伝送する。
【0053】
図5の例では、送信装置510、および受信装置520は、異なる3つの波長帯、例えば、WDM(Wavelength Division Multiplexing)のL帯(Lバンド)、C帯(Cバンド)、S帯(Sバンド)で信号光を送信する。送信装置510は、C帯の複数の送信器501、C帯の波長合波器502、C帯の光増幅器503、波長合波器504を含む。複数の送信器501は、入力される電気信号をC帯の波長(第一の波長帯)の信号光に変換して出力する。
【0054】
送信装置510は、C帯の信号光をL帯(第二の波長帯)に変換する波長変換器100-1と、C帯の信号光をS帯(第三の波長帯)に変換する波長変換器100-2を有する。
【0055】
受信装置520は、波長分波器505、C帯の光増幅器506、C帯の波長分波器507、C帯の複数の受信器508を含む。複数の受信器508は、入力されるC帯の波長の信号光を電気信号に変換して出力する。
【0056】
受信装置520は、L帯の信号光をC帯に変換する波長変換器100-3と、S帯の信号光をC帯に変換する波長変換器100-4を有する。
【0057】
送信装置510に設ける波長変換器100-1,100-2は、実施例1(
図1)あるいは実施例2(
図3)に示す構成をそのまま適用できる。受信装置520に設ける波長変換器100-3,100-4は、実施例1(
図1)あるいは実施例2(
図3)で説明した入出力順を逆に配置した構成により適用できる。
【0058】
この光伝送システムによれば、送信装置510および受信装置520は、複数の送信器501および受信器508を用いてWDMの波長多重チャネル数を増大し、伝送容量を拡大できる。そして、送信装置510および受信装置520に、それぞれ波長変換器100(100-1~100-4)を設けて信号光を波長変換する。
【0059】
これにより、送信装置510および受信装置520が有する送信器501、受信器508、光増幅器503,506、波長合波器502、波長分波器507、をいずれも共通する波長帯(C帯)の光部品を用いて安価に構成できる。
【0060】
(偏波多重対応の各実施例)
次に、偏波多重(偏波ダイバーシティ)に対応した波長変換器の各実施例を説明する。上述した実施例1の波長変換器100は、単一偏波の信号光を波長変換したが、以下の各実施例の波長変換器では、偏波多重信号に対応する。
【0061】
(光フィルタを含まない偏波多重対応の構成例)
図6~
図13に示す各実施例3~10は、実施例1(
図1)で説明した、互いに異なる波長分散特性の第一の非線形光学媒質107と、第二の非線形光学媒質108を用いた波長変換器100(光フィルタ310なし)の基本構成を有し、偏波多重に対応する。
【0062】
(実施例3)
図6は、波長変換器の実施例3の構成図である。
図6において、実施例1(
図1)と同一の構成部には同一の符号を付してある。
図6に示す波長変換器600に入力される偏波多重の信号光は、偏波ビームスプリッタ(第一の偏波ビームスプリッタ)601aにより偏波分離される。波長変換器600は、偏波分離後のX偏波の系統と、Y偏波の系統にそれぞれ合波器106、第一の非線形光学媒質107、第二の非線形光学媒質108、偏波制御器102が配置される。
【0063】
X偏波の系統について説明する。波長変換励起光源103の波長変換光は、合波器104xで信号光に合波される。ラマン励起光源105のラマン励起光は、合波器106xで信号光に合波され前方ラマン励起する。合波器106x後段には、第一の非線形光学媒質107x、および第二の非線形光学媒質108x、偏波制御器102xが接続される。第一の非線形光学媒質107xは、信号光を波長変換およびラマン増幅する。第二の非線形光学媒質108xは、波長変換光を増幅する。
【0064】
Y偏波の系統についてもX偏波と同様であり、波長変換励起光源103の波長変換光は、合波器104yで信号光に合波される。ラマン励起光源105のラマン励起光は、合波器106yで信号光に合波され前方ラマン励起する。合波器106y後段には、第一の非線形光学媒質107y、および第二の非線形光学媒質108y、偏波制御器102yが接続される。第一の非線形光学媒質107yは、信号光を波長変換およびラマン増幅し、第二の非線形光学媒質108yは、波長変換光を増幅する。
【0065】
偏波制御器102x,102yの出力は、偏波ビームスプリッタ(第二の偏波ビームスプリッタ)601bに出力される。偏波ビームスプリッタ601bは、X偏波とY偏波を偏波合成し、光フィルタ109に出力する。光フィルタ109は、波長変換光を抽出し、信号光として出力する。
【0066】
(実施例4)
図7は、波長変換器の実施例4の構成図である。実施例4の波長変換器700は、実施例3(
図6)の波長変換器600に対し、第二の非線形光学媒質108を偏波ビームスプリッタ601bの後段に配置した点が異なる。
【0067】
実施例4の波長変換器700によれば、実施例3の作用効果を有し、また、実施例3に対し光増幅媒体(第二の非線形光学媒質108)の数を減らすことができる。
図6に示した実施例3の波長変換器600では、光増幅媒体である第二の非線形光学媒質108を2個配置したが、この実施例4の波長変換器700では、第二の非線形光学媒質108が1個で済み個数を減らすことができる。
【0068】
(実施例5)
図8は、波長変換器の実施例5の構成図である。
図8に示す波長変換器800は、実施例3(
図6)の波長変換器600に対し、ラマン励起光源105を第二の非線形光学媒質108の後段に配置し、後方ラマン励起する点が異なる。
【0069】
この実施例5の波長変換器800によれば、実施例3(
図6)の波長変換器600と比べて、ラマン増幅の利得を上げることができる。
【0070】
(実施例6)
図9は、波長変換器の実施例6の構成図である。
図9に示す波長変換器900は、実施例5(
図8)の波長変換器800に対し、第二の非線形光学媒質108を偏波ビームスプリッタ601bの後段に配置する点が異なる。また、ラマン励起光源105は、非偏光に変換するデポラライザ901および合波器106を介して第二の非線形光学媒質108を後方ラマン励起する。
【0071】
この実施例6の波長変換器900によれば、実施例5の作用効果を有し、また、実施例5(
図8)の波長変換器800と比べて、光増幅媒体である第二の非線形光学媒質108が1個で済み個数を減らすことができる。
【0072】
(実施例7)
図10は、波長変換器の実施例7の構成図である。
図10に示す波長変換器1000は、実施例3(
図6)の前方ラマン励起の波長変換器600に対し、ラマン励起光源105を第二の非線形光学媒質108の後段にも配置して、前方ラマン励起および後方ラマン励起する点が異なる。
【0073】
ラマン励起光源105aは、第一の非線形光学媒質107x,107yの前段に配置され、ラマン励起光は、合波器106x,106yでX偏波およびY偏波の信号光にそれぞれ合波され前方ラマン励起する。また、ラマン励起光源105bは、第二の非線形光学媒質108x,108yの後段に配置され、ラマン励起光は、合波器106x,106yでX偏波およびY偏波の信号光にそれぞれ合波され後方ラマン励起する。
【0074】
この実施例7の波長変換器1000によれば、前方ラマン励起および後方ラマン励起し、実施例3~6に比べて、後段増幅器(第二の非線形光学媒質108)での利得と、第一の非線形光学媒質107での波長変換でのラマン利得と、を両立し増大できる。
【0075】
(実施例8)
図11は、波長変換器の実施例8の構成図である。
図11に示す波長変換器1100は、実施例7(
図10)波長変換器1000に対し、第二の非線形光学媒質108を偏波ビームスプリッタ601bの後段に配置する点が異なる。また、ラマン励起光源105bは、デポラライザ901および合波器106を介して第二の非線形光学媒質108を後方ラマン励起する。
【0076】
この実施例8の波長変換器1100によれば、実施例7同様に前方ラマン励起および後方ラマン励起による作用効果を有する。また、実施例7(
図10)の波長変換器1000と比べて、光増幅媒体である第二の非線形光学媒質108が1個で済み個数を減らすことができる。
【0077】
(実施例9)
図12は、波長変換器の実施例9の構成図である。
図12に示す波長変換器1200は、前段で波長変換励起光およびラマン励起光を供給し、後段に偏波ダイバーシティループ回路による光増幅媒体を配置した構成である。
【0078】
図12に示す波長変換器1200は、波長変換励起光源103の波長変換励起光を偏波制御器102aで偏波制御し、合波器104を介して信号光に合波させる。合波器104の後段には合波器106が配置される。ラマン励起光源105のラマン励起光は、デポラライザ901、合波器106を介して信号光に合波させる。
【0079】
合波器106の後段には、偏波ビームスプリッタ601が設けられる。偏波ビームスプリッタ601は、偏波制御器102bにより偏波の分離および合成が制御される。偏波ビームスプリッタ601には、信号光を波長変換およびラマン増幅する第一の非線形光学媒質107を含む偏波ダイバーシティループ回路が接続されている。また、偏波ビームスプリッタ601には、波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質108が接続され、光フィルタ109により波長変換光を抽出し、信号光として出力される。
【0080】
この実施例9の波長変換器1200によれば、偏波ダイバーシティループ回路により、実施例3~8に比べてダイバーシティ経路誤差を抑制できるようになる。
【0081】
(実施例10)
図13は、波長変換器の実施例10の構成図である。
図13に示す波長変換器1300は、実施例9(
図12)の変形例である。波長変換器1300は、前段に波長合分波器1201を配置し、入力された信号光を波長分波して後段に出力し、また、後段で抽出された波長変換光を波長合波した信号光として外部出力する。
【0082】
また、この波長変換器1300の偏波ダイバーシティループ回路は、2つの第一の非線形光学媒質107a,107bを有し、これら2つの第一の非線形光学媒質107aおよび第一の非線形光学媒質107bの間に第二の非線形光学媒質108を配置してなる。
【0083】
この実施例10の波長変換器1300によれば、実施例9の作用効果を有し、また、実施例9に比べて非線形光学媒質(第一の非線形光学媒質107)と光増幅媒質(第二の非線形光学媒質108)との間の接続損失を低減できるようになる。
【0084】
(光フィルタを含む偏波多重対応の構成例)
次に、
図14~
図21に示す各実施例11~18は、実施例2(
図3)で説明した光フィルタ310を含む波長変換器100の基本構成を有し、偏波多重に対応する。
【0085】
(実施例11)
図14は、波長変換器の実施例11の構成図である。
図14において、実施例2(
図3)と同一の構成部には同一の符号を付してある。
図14に示す波長変換器1400に入力される偏波多重の信号光は、偏波ビームスプリッタ601aにより偏波分離される。波長変換器600は、偏波分離後のX偏波の系統と、Y偏波の系統にそれぞれ合波器106、第一の非線形光学媒質107、光フィルタ310、第二の非線形光学媒質108、偏波制御器102が配置される。
【0086】
X偏波の系統について説明する。波長変換励起光源103の波長変換光は、合波器104xで信号光に合波される。ラマン励起光源105のラマン励起光は、合波器106xで信号光に合波され前方ラマン励起する。合波器106x後段には、第一の非線形光学媒質107x、光フィルタ310x、第二の非線形光学媒質108x、偏波制御器102xが接続される。第一の非線形光学媒質107xは、信号光を波長変換およびラマン増幅する。光フィルタ310xは、波長変換励起光を阻止して第二の非線形光学媒質108xに出力する。第二の非線形光学媒質108xは、波長変換光を増幅する。
【0087】
Y偏波の系統についてもX偏波と同様であり、波長変換励起光源103の波長変換光は、合波器104yで信号光に合波される。ラマン励起光源105のラマン励起光は、合波器106yで信号光に合波され前方ラマン励起する。合波器106y後段には、第一の非線形光学媒質107y、光フィルタ310y、第二の非線形光学媒質108y、偏波制御器102yが接続される。第一の非線形光学媒質107yは、信号光を波長変換およびラマン増幅する。光フィルタ310yは、波長変換励起光を阻止して第二の非線形光学媒質108yに出力する。第二の非線形光学媒質108yは、波長変換光を増幅する。
【0088】
偏波制御器102x,102yの出力は、偏波ビームスプリッタ601bに出力される。偏波ビームスプリッタ601bは、X偏波とY偏波を偏波合成し、光フィルタ109に出力する。光フィルタ109は、波長変換光を抽出し、信号光として出力する。
【0089】
(実施例12)
図15は、波長変換器の実施例12の構成図である。実施例12の波長変換器1500は、実施例11(
図14)の波長変換器1400に対し、第二の非線形光学媒質108を偏波ビームスプリッタ601bの後段に配置した点が異なる。
【0090】
実施例12の波長変換器1500によれば、実施例11の作用効果を有し、また、実施例11に対し光増幅媒体(第二の非線形光学媒質108)の数を減らすことができる。
図14に示した実施例11の波長変換器1400では、光増幅媒体である第二の非線形光学媒質108を2個配置したが、この実施例12の波長変換器1500では、第二の非線形光学媒質108が1個で済み個数を減らすことができる。
【0091】
(実施例13)
図16は、波長変換器の実施例13の構成図である。
図16に示す波長変換器1600は、実施例11(
図14)の波長変換器1400に対し、ラマン励起光源105を第二の非線形光学媒質108の後段に配置し、後方ラマン励起する点が異なる。
【0092】
この実施例13の波長変換器1600によれば、実施例11(
図14)の波長変換器1400と比べて、ラマン増幅の利得を上げることができる。
【0093】
(実施例14)
図17は、波長変換器の実施例14の構成図である。
図17に示す波長変換器1700は、実施例13(
図16)の波長変換器1600に対し、光フィルタ310と第二の非線形光学媒質108を偏波ビームスプリッタ601bの後段に配置する点が異なる。また、ラマン励起光源105は、デポラライザ901および合波器106を介して第二の非線形光学媒質108を後方ラマン励起する。
【0094】
この実施例14の波長変換器1700によれば、実施例13の作用効果を有し、また、実施例13(
図16)の波長変換器1600と比べて、光増幅媒体である第二の非線形光学媒質108が1個で済み個数を減らすことができる。
【0095】
(実施例15)
図18は、波長変換器の実施例15の構成図である。
図15に示す波長変換器1800は、実施例11(
図14)の前方ラマン励起の波長変換器1400に対し、ラマン励起光源105を第二の非線形光学媒質108の後段にも配置して、前方ラマン励起および後方ラマン励起する点が異なる。
【0096】
ラマン励起光源105aは、第一の非線形光学媒質107x,107yの前段に配置され、ラマン励起光は、合波器106x,106yでX偏波およびY偏波の信号光にそれぞれ合波され前方ラマン励起する。光フィルタ310x,310yは、それぞれ波長変換励起光を阻止して第二の非線形光学媒質108x,108yに出力する。ラマン励起光源105bは、第二の非線形光学媒質108x,108yの後段に配置され、ラマン励起光は、合波器106x,106yでX偏波およびY偏波の信号光にそれぞれ合波され後方ラマン励起する。
【0097】
この実施例15の波長変換器1800によれば、前方ラマン励起および後方ラマン励起し、実施例11~14に比べて、後段増幅器(第二の非線形光学媒質108)での利得と、第一の非線形光学媒質107での波長変換でのラマン利得と、を両立し増大できる。
【0098】
(実施例16)
図19は、波長変換器の実施例16の構成図である。
図19示す波長変換器1900は、実施例15(
図18)波長変換器1800に対し、光フィルタ310と第二の非線形光学媒質108を偏波ビームスプリッタ601bの後段に配置する点が異なる。また、ラマン励起光源105bは、デポラライザ901および合波器106を介して第二の非線形光学媒質108を後方ラマン励起する。
【0099】
この実施例16の波長変換器1900によれば、実施例15同様に前方ラマン励起および後方ラマン励起による作用効果を有する。また、実施例15(
図18)の波長変換器1800と比べて、光フィルタ310と光増幅媒体である第二の非線形光学媒質108が1個で済み個数を減らすことができる。
【0100】
(実施例17)
図20は、波長変換器の実施例17の構成図である。
図20に示す波長変換器2000は、前段で波長変換励起光およびラマン励起光を供給し、後段に偏波ダイバーシティループ回路による光増幅媒体を配置した構成である。
【0101】
図20に示す波長変換器2000は、波長変換励起光源103の波長変換励起光を偏波制御器102aで偏波制御し、合波器104を介して信号光に合波させる。合波器104の後段には合波器106が配置される。ラマン励起光源105のラマン励起光は、デポラライザ901、合波器106を介して信号光に合波させる。
【0102】
合波器106の後段には、偏波ビームスプリッタ601が設けられる。偏波ビームスプリッタ601は、偏波制御器102bにより偏波の分離および合成が制御される。偏波ビームスプリッタ601には、信号光を波長変換およびラマン増幅する第一の非線形光学媒質107を含む偏波ダイバーシティループ回路が接続されている。また、偏波ビームスプリッタ601には、波長変換励起光を阻止する光フィルタ310と、波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質108が接続され、光フィルタ109により波長変換光を抽出し、信号光として出力される。
【0103】
この実施例17の波長変換器2000によれば、偏波ダイバーシティループ回路により、実施例11~16に比べてダイバーシティ経路誤差を抑制できるようになる。
【0104】
(実施例18)
図21は、波長変換器の実施例18の構成図である。
図21に示す波長変換器2100は、実施例17(
図20)の変形例である。波長変換器2100は、前段に波長合分波器1201を配置し、入力された信号光を波長分波して後段に出力し、また、後段で抽出された波長変換光を波長合波した信号光として外部出力する。
【0105】
また、この波長変換器2100の偏波ダイバーシティループ回路は、2つの第一の非線形光学媒質107a,107bと、波長変換励起光を阻止する2つの光フィルタ310a,310bとを含む。偏波ダイバーシティループ回路は、第一の非線形光学媒質107a~光フィルタ310a~第二の非線形光学媒質108~光フィルタ310b~第一の非線形光学媒質107bをループ接続してなる。
【0106】
この実施例18の波長変換器2100によれば、実施例17の作用効果を有し、また、実施例17に比べて非線形光学媒質(第一の非線形光学媒質107)と光増幅媒質(第二の非線形光学媒質108)との間の接続損失を低減できるようになる。
【0107】
以上説明した実施の形態の波長変換器は、入力される信号光に波長変換励起光を合波する第一の合波器と、信号光にラマン励起光を合波する第二の合波器と、非線形光学効果に基づき、第二の合波器が出力する信号光の波長変換光を生成する第一の非線形光学媒質と、信号光の波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質と、を含む。ラマン励起光の波長は、増幅帯域が波長変換光をラマン増幅する波長である。これにより、第一の非線形光学媒質で増幅しながら波長変換し、第二の非線形光学媒質で波長変換光を光増幅することができ、非線形雑音の発生を抑えながら出力パワーを高くできる。これにより、光伝送における伝送容量を拡大できる。
【0108】
また、波長変換器は、第二の非線形光学媒質は、零分散波長が第一の非線形光学媒質よりも信号光および波長変換光の波長帯での波長分散の絶対値が大きいこととすることができる。例えば、第一の非線形光学媒質は、波長分散の絶対値が3ps/nm/km未満で零分散波長が入力される信号光と波長変換光との間の波長であり、第二の非線形光学媒質は、波長分散の絶対値が3ps/nm/km以上で、零分散波長が第一の非線形光学媒質より長波長である。これにより、第一の非線形光学媒質と第二の非線形光学媒質とを用いて非線形雑音の発生を抑えながら出力パワーを高くできる。
【0109】
また、波長変換器は、第二の非線形光学媒質の前段に設けられ、波長変換励起光の波長を阻止する光フィルタを含む。また、第一の非線形光学媒質および第二の非線形光学媒質は、同じ分散特性とすることができる。これにより、第一の非線形光学媒質と第二の非線形光学媒質とを用いて非線形雑音の発生を抑えながら出力パワーを高くできる。
【0110】
また、波長変換器は、第二の非線形光学媒質の後段に設けられ、波長変換光の波長を抽出する光フィルタを含むこととしてもよい。これにより、波長変換器は、信号光を波長変換した波長変換光を出力できる。
【0111】
また、波長変換器は、入力段に設けられ、信号光を偏波分離する第一の偏波ビームスプリッタと、第一の非線形光学媒質よりも後段に配置され、信号光を偏波合成する第二の偏波ビームスプリッタと、を含むこととしてもよい。これにより、偏波ダイバーシティの信号光を波長変換できるようになる。
【0112】
また、波長変換器は、第二の合波器を第一の非線形光学媒質の前段に配置しラマン励起光による前方励起、または、第二の合波器を第二の非線形光学媒質の後段に配置しラマン励起光による後方励起、あるいはその組み合わせとすることとしてもよい。これにより、波長変換光の光増幅特性を向上できるようになる。
【0113】
また、波長変換器は、入力される信号光を偏波分離および偏波結合する偏波ビームスプリッタと、偏波ビームスプリッタを変化制御する偏波制御器と、偏波ビームスプリッタに接続され第一の非線形光学媒質を含む偏波ダイバーシティループ回路と、を含むこととしてもよい。これにより、偏波ダイバーシティの信号光を波長変換しつつ、第一の非線形光学媒質と第二の非線形光学媒質との間の接続損失を低減できるようになる。
【0114】
また、波長変換器は、第一の非線形光学媒質および第二の非線形光学媒質は、光ファイバあるいは平面光導波路を用いた構成としてもよい。
【0115】
また、実施の形態の光伝送システムは、送信装置が送信する信号光を、伝送路を介して受信装置で受信する光伝送システムにおいて、送信装置は、入力される電気信号を第一の波長帯の信号光に変換する複数の送信器と、複数の送信器のうち一部の複数の送信器が出力する信号光を第二の波長帯の信号光に変換する波長変換器と、複数の送信器および波長変換器が出力する信号光を合波する合波器と、を含む。受信装置は、伝送路から受信した信号光を、第一の波長帯の信号光と、第二の波長帯の信号光とに分波する分波器と、分波された第二の波長帯の信号光を第一の波長帯の信号に変換する波長変換器と、分波器および波長変換器が出力する複数の第一の波長帯の信号光を電気信号に変換する複数の受信器と、を含む。波長変換器は、入力される信号光に波長変換励起光を合波する第一の合波器と、信号光にラマン励起光を合波する第二の合波器と、非線形光学効果に基づき、第二の合波器が出力する信号光の波長変換光を生成する第一の非線形光学媒質と、第一の非線形光学媒質が出力する信号光の波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質と、を含み、ラマン励起光の波長は、増幅帯域が波長変換光をラマン増幅する波長である。これにより、第一の非線形光学媒質で増幅しながら波長変換し、第二の非線形光学媒質で波長変換光を光増幅することができ、非線形雑音の発生を抑えながら出力パワーを高くできる。そして、送信器および受信器に共通の帯域の光部品を用いて構成でき、送信装置および受信装置を低コスト化しつつ、光伝送における伝送容量を拡大できるようになる。
【0116】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0117】
(付記1)入力される信号光に波長変換励起光を合波する第一の合波器と、
前記信号光にラマン励起光を合波する第二の合波器と、
非線形光学効果に基づき、前記信号光の波長変換光を生成する第一の非線形光学媒質と、
前記第一の非線形光学媒質が出力する信号光の前記波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質と、を含み、
前記ラマン励起光の波長は、増幅帯域が前記波長変換光をラマン増幅する波長であることを特徴とする波長変換器。
【0118】
(付記2)前記第二の非線形光学媒質は、零分散波長が前記第一の非線形光学媒質よりも信号光および波長変換光の波長帯での波長分散の絶対値が大きいことを特徴とする付記1に記載の波長変換器。
【0119】
(付記3)前記第一の非線形光学媒質は、波長分散の絶対値が3ps/nm/km未満で零分散波長が入力される前記信号光と前記波長変換光との間の波長であり、
前記第二の非線形光学媒質は、波長分散の絶対値が3ps/nm/km以上で、零分散波長が前記第一の非線形光学媒質より長波長であることを特徴とする付記2に記載の波長変換器。
【0120】
(付記4)前記第二の非線形光学媒質の前段に設けられ、前記波長変換励起光の波長の通過を阻止する光フィルタを含むことを特徴とする付記1に記載の波長変換器。
【0121】
(付記5)前記第二の非線形光学媒質の後段に設けられ、前記波長変換光の波長を抽出する光フィルタを含むことを特徴とする付記1に記載の波長変換器。
【0122】
(付記6)入力段に設けられ、前記信号光を偏波分離する第一の偏波ビームスプリッタと、
前記第一の非線形光学媒質よりも後段に配置され、前記信号光を偏波合成する第二の偏波ビームスプリッタと、を含むことを特徴とする付記1に記載の波長変換器。
【0123】
(付記7)前記第二の合波器を前記第一の非線形光学媒質の前段に配置し前記ラマン励起光による前方励起、または、前記第二の合波器を前記第二の非線形光学媒質の後段に配置し前記ラマン励起光による後方励起、あるいはその組み合わせとしたことを特徴とする付記1に記載の波長変換器。
【0124】
(付記8)入力される信号光を偏波分離および偏波結合する偏波ビームスプリッタと、
前記偏波ビームスプリッタを変化制御する偏波制御器と、
前記偏波ビームスプリッタに接続され、前記第一の非線形光学媒質を含む偏波ダイバーシティループ回路と、
を含むことを特徴とする付記1に記載の波長変換器。
【0125】
(付記9)前記第一の非線形光学媒質および前記第二の非線形光学媒質は、光ファイバあるいは平面光導波路であることを特徴とする付記1に記載の波長変換器。
【0126】
(付記10)送信装置が送信する信号光を、伝送路を介して受信装置で受信する光伝送システムにおいて、
前記送信装置は、
入力される電気信号を第一の波長帯の信号光に変換する複数の送信器と、
前記複数の送信器のうち一部の複数の送信器が出力する信号光を第二の波長帯の信号光に変換する波長変換器と、
前記複数の送信器および前記波長変換器が出力する信号光を合波する合波器と、を含み、
前記受信装置は、
前記伝送路から受信した信号光を、前記第一の波長帯の信号光と、前記第二の波長帯の信号光とに分波する分波器と、
分波された前記第二の波長帯の信号光を前記第一の波長帯の信号に変換する波長変換器と、
前記分波器および前記波長変換器が出力する複数の第一の波長帯の信号光を電気信号に変換する複数の受信器と、を含み、
前記波長変換器は、
入力される信号光に波長変換励起光を合波する第一の合波器と、
前記信号光にラマン励起光を合波する第二の合波器と、
非線形光学効果に基づき、前記信号光の波長変換光を生成する第一の非線形光学媒質と、
前記第一の非線形光学媒質が出力する信号光の前記波長変換光を増幅する第二の非線形光学媒質と、を含み、
前記ラマン励起光の波長は、増幅帯域が前記波長変換光をラマン増幅する波長であることを特徴とする光伝送システム。
【符号の説明】
【0127】
100 波長変換器
101,109,310 光フィルタ
102 偏波制御器
103 波長変換励起光源
104,106 合波器
105 ラマン励起光源
107 第一の非線形光学媒質
108 第二の非線形光学媒質
501 送信器
502,504 波長合波器
503,506 光増幅器
505,507 波長分波器
508 受信器
510 送信装置
520 受信装置
530 伝送路
601 偏波ビームスプリッタ
901 デポラライザ
1201 波長合分波器