(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046510
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】半導体装置の検査方法および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20240327BHJP
【FI】
G01R31/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151944
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 修
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AC03
2G003AD01
2G003AG01
2G003AH05
(57)【要約】
【課題】半導体装置の電気的試験の信頼性を向上させる。
【解決手段】試験装置TSのソケットSKが備える複数のソケット端子STを介して半導体装置PKGの複数のリードLDを試験基板TBの複数の電極TEとそれぞれ電気的に接続して、半導体装置PKGの電気的試験が行われる。ソケットSKの少なくとも一部は試験装置TSのチャンバ内に配置され、試験基板TBはチャンバ外に配置され、半導体装置PKGは、チャンバ内を循環する冷気によって冷却される。ソケットSKは、チャンバ内を循環する冷気が通過可能な空洞部CVを有し、複数のソケット端子STのそれぞれの一部は、ソケットSKの空洞部CVで露出される。複数のソケット端子STは、ソケットSKの空洞部CVを通過する冷気によって冷却される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の外部端子を有する半導体装置を準備する工程、
(b)チャンバと、複数の検査用端子を有するソケットと、複数の電極を有する試験基板と、を備える試験装置を準備する工程、
(c)前記複数の検査用端子を介して前記半導体装置の前記複数の外部端子を前記試験基板の前記複数の電極とそれぞれ電気的に接続して、前記半導体装置の電気的試験を行う工程、
を備える、半導体装置の検査方法であって、
前記ソケットの少なくとも一部は前記チャンバ内に配置され、
前記試験基板は前記チャンバ外に配置され、
前記(c)工程では、前記半導体装置は、前記チャンバ内を循環する冷気によって冷却され、
前記ソケットは、前記チャンバ内を循環する前記冷気が通過可能な空洞部を有し、
前記複数の検査用端子のそれぞれの一部は、前記ソケットの前記空洞部で露出され、
前記複数の検査用端子は、前記ソケットの前記空洞部を通過する前記冷気によって冷却される、半導体装置の検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の検査方法において、
前記ソケットは、前記チャンバに接続されたソケットアダプタ部と、前記ソケットアダプタ部上に配置されたソケット本体部と、を含み、
前記ソケット本体部は前記チャンバ内に配置され、
前記空洞部は前記ソケットアダプタ部に形成されている、半導体装置の検査方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の検査方法において、
前記ソケット本体部は、前記複数の検査用端子が挿入された複数の第1貫通孔を有し、
前記ソケットアダプタ部は、前記複数の検査用端子が挿入された複数の第2貫通孔を有する、半導体装置の検査方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の検査方法において、
前記複数の検査用端子のそれぞれは、少なくとも一部が前記ソケット本体部の前記第1貫通孔に挿入された端子本体部と、少なくとも一部が前記ソケットアダプタ部の前記第2貫通孔に挿入された端子アダプタ部とを有し、
前記複数の検査用端子のそれぞれにおいて、前記端子本体部と前記端子アダプタ部とは電気的に接続され、かつ、前記端子アダプタ部の一部が前記ソケットアダプタ部の前記空洞部で露出される、半導体装置の検査方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の検査方法において、
前記ソケットアダプタ部において、前記複数の第2貫通孔のそれぞれは、前記空洞部によって分断されている、半導体装置の検査方法。
【請求項6】
請求項4記載の半導体装置の検査方法において、
前記(c)工程では、前記端子本体部が前記半導体装置の前記外部端子と電気的に接触され、
前記端子アダプタ部は、前記試験基板の前記電極と導電性の接合材を介して電気的に接続されている、半導体装置の検査方法。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置の検査方法において、
前記接合材は半田である、半導体装置の検査方法。
【請求項8】
請求項6記載の半導体装置の検査方法において、
前記複数の検査用端子のそれぞれにおいて、前記端子本体部の一方の端部は、前記端子アダプタ部の一方の端部に設けられた孔部に挿入されている、半導体装置の検査方法。
【請求項9】
請求項2記載の半導体装置の検査方法において、
前記ソケットアダプタ部は、第1側面および第2側面を有し、
前記ソケットアダプタ部の前記空洞部は、前記ソケットアダプタ部の前記第1側面から前記第2側面に至るように形成されている、半導体装置の検査方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の検査方法において、
前記ソケットアダプタ部における前記第1側面と前記第2側面とは、互いに反対側に位置している、半導体装置の検査方法。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置の検査方法において、
前記(c)工程では、前記半導体装置は、前記チャンバ内を循環する前記冷気によって-20℃以下の温度に冷却される、半導体装置の検査方法。
【請求項12】
(a)複数の外部端子を有する半導体装置を準備する工程、
(b)チャンバと、複数の検査用端子を有するソケットと、複数の電極を有する試験基板と、を備える試験装置を準備する工程、
(c)前記複数の検査用端子を介して前記半導体装置の前記複数の外部端子を前記試験基板の前記複数の電極とそれぞれ電気的に接続して、前記半導体装置の電気的試験を行う工程、
を備える、半導体装置の製造方法であって、
前記ソケットの少なくとも一部は前記チャンバ内に配置され、
前記試験基板は前記チャンバ外に配置され、
前記(c)工程では、前記半導体装置は、前記チャンバ内を循環する冷気によって冷却され、
前記ソケットは、前記チャンバ内を循環する前記冷気が通過可能な空洞部を有し、
前記複数の検査用端子のそれぞれの一部は、前記ソケットの前記空洞部で露出され、
前記複数の検査用端子は、前記ソケットの前記空洞部を通過する前記冷気によって冷却される、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記ソケットは、前記チャンバに接続されたソケットアダプタ部と、前記ソケットアダプタ部上に配置されたソケット本体部と、を含み、
前記ソケット本体部は、前記複数の検査用端子が挿入された複数の第1貫通孔を有し、
前記ソケットアダプタ部は、前記複数の検査用端子が挿入された複数の第2貫通孔を有し、
前記ソケットアダプタ部は前記チャンバ内に配置され、
前記空洞部は前記ソケットアダプタ部に形成されている、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
前記複数の検査用端子のそれぞれは、少なくとも一部が前記ソケット本体部の前記第1貫通孔に挿入された端子本体部と、少なくとも一部が前記ソケットアダプタ部の前記第2貫通孔に挿入された端子アダプタ部とを有し、
前記複数の検査用端子のそれぞれにおいて、前記端子本体部と前記端子アダプタ部とは電気的に接続され、かつ、前記端子アダプタ部の一部が前記ソケットアダプタ部の前記空洞部で露出される、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法において、
前記ソケットアダプタ部において、前記複数の第2貫通孔のそれぞれは、前記空洞部によって分断されている、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項14記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程では、前記端子本体部が前記半導体装置の前記外部端子と電気的に接触され、
前記端子アダプタ部は、前記試験基板の前記電極と導電性の接合材を介して電気的に接続されている、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の半導体装置の製造方法において、
前記複数の検査用端子のそれぞれにおいて、前記端子本体部の一方の端部は、前記端子アダプタ部の一方の端部に設けられた孔部に挿入されている、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の検査方法および半導体装置の製造方法に関し、例えば、半導体装置の外部端子に検査用端子を接触させて半導体装置の検査を行う技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-112398号公報(特許文献1)には、半導体装置の外部端子に検査用の端子を接触させて半導体装置の電気的試験を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の製造工程では、不良品を除外するために、半導体装置の外部端子に検査用の端子を接触させて、半導体装置の電気的試験を行っている。また、半導体装置の電気的試験を低温で行う場合がある。
【0005】
低温で行う半導体装置の電気的試験においては、試験対象の半導体装置を所定の試験温度に冷却することが求められる。半導体装置を所定の試験温度に的確に冷却できないと、半導体装置の電気的試験の信頼性が低下する虞がある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、チャンバとソケットと試験基板とを備える試験装置を用い、前記ソケットの複数の検査用端子を介して半導体装置の複数の外部端子を前記試験基板の複数の電極とそれぞれ電気的に接続して、前記半導体装置の電気的試験を行う。前記ソケットの少なくとも一部は前記チャンバ内に配置され、前記試験基板は前記チャンバ外に配置され、前記半導体装置は、前記チャンバ内を循環する冷気によって冷却される。前記ソケットは、前記チャンバ内を循環する前記冷気が通過可能な空洞部を有し、前記複数の検査用端子のそれぞれの一部は、前記ソケットの前記空洞部で露出される。前記複数の検査用端子は、前記ソケットの前記空洞部を通過する前記冷気によって冷却される。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、半導体装置の電気的試験の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】一実施の形態の試験装置の一部を示す説明図である。
【
図3】
図2に示される試験基板、本体部、およびアダプタ部を示す説明図である。
【
図4】
図2の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【
図5】半導体装置のテスト工程を示す説明図である。
【
図6】半導体装置のテスト工程を示す説明図である。
【
図7】半導体装置のテスト工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0011】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0012】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0013】
<半導体装置>
まず、本実施の形態の半導体装置の一例について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置の断面図(側面断面図)である。
【0014】
図1に示されるように、本実施の形態の半導体装置PKGは、半導体チップCPと、半導体チップCPを搭載するダイパッド(チップ搭載部)DPと、導電体によって形成された複数のリード(リード部)LDと、これらを封止する封止部MRとを有している。
【0015】
封止部(封止樹脂部)MRは、例えば熱硬化性樹脂材料などの樹脂材料などからなり、フィラーなどを含むこともできる。例えば、フィラーを含むエポキシ樹脂などを用いて封止部MRを形成することができる。
【0016】
複数のリードLDは、導電体で構成されており、好ましくは銅(Cu)または銅合金などの金属材料からなる。複数のリードLDのそれぞれは、一部が封止部MR内に封止され、他の一部が封止部MRの側面から封止部MRの外部に突出している。以下では、リードLDのうちの封止部MR内に位置する部分をインナリード部と呼び、リードLDのうちの封止部MR外に位置する部分をアウタリード部と呼ぶものとする。
【0017】
なお、本実施の形態の半導体装置PKGは、各リードLDの一部(アウタリード部)が封止部MRの側面から突出した構造であり、以下ではこの構造に基づいて説明するが、この構造に限定されるものではなく、例えば、封止部MRの側面から各リードLDがほとんど突出せず、かつ封止部MRの下面で各リードLDの一部が露出した構成(QFN型の構成)などを採用することもできる。
【0018】
複数のリードLDの各アウタリード部は、封止部MRの側面から封止部MR外に突出している。各リードLDのアウタリード部は、アウタリード部の端部近傍の下面が封止部MRの下面とほぼ同一平面上に位置するように折り曲げ加工されている。リードLDのアウタリード部は、半導体装置PKGの外部接続用端子部(外部端子)として機能する。
【0019】
ダイパッドDPは導電体で構成されており、好ましくは銅(Cu)または銅合金などの金属材料からなる。ダイパッドDPの上面上には、半導体チップCPが、その表面を上に向け、かつ、その裏面をダイパッドDPに向けた状態で搭載されている。半導体チップCP(の裏面)は、接着層(接合材)DBを介してダイパッドDPに接着されて固定されている。半導体チップCPは、封止部MR内に封止されており、封止部MRから露出されない。
【0020】
半導体チップCPは、例えば、単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)の主面に種々の半導体素子または半導体集積回路を形成した後、ダイシングなどにより半導体基板を各半導体チップに分離して製造したものである。
【0021】
半導体チップCPの表面には、複数のパッド電極PDが形成されている。半導体チップCPの複数のパッド電極PDは、複数のリードLD(のインナリード部)とボンディングワイヤBWを介して電気的に接続されている。すなわち、各ボンディングワイヤBWの両端のうち、一方の端部は半導体チップCPのパッド電極PDに接続され、他方の端部は、リードLDのインナリード部に接続されている。ボンディングワイヤBWは、導電性を有しており、好ましくは金(Au)線または銅(Cu)線またはアルミニウム(Al)線などの金属細線からなる。ボンディングワイヤBWは、封止部MR内に封止されており、封止部MRから露出されない。
【0022】
<半導体装置の製造工程>
本実施の形態の半導体装置の製造工程は、上記
図1に示される半導体装置(被検査体)PKGを準備する工程と、上記
図1に示される半導体装置(被検査体)PKGに電気的試験を実施する工程(検査工程)と、を有する。
【0023】
半導体装置PKGを準備する工程は、リードフレームのダイパッドDP上に半導体チップCPを搭載する工程(ダイボンディング工程)と、ダイボンディング工程の後に、半導体チップCPの複数のパッド電極PDとリードフレームの複数のリードLD(のインナリード部)とを複数のボンディングワイヤBWを介して電気的に接続する工程(ワイヤボンディング工程)と、を含む。半導体装置PKGを準備する工程は、ワイヤボンディング工程の後に、半導体チップCP、ダイパッドDP、複数のボンディングワイヤBWおよび複数のリードLD(のインナリード部)を封止部MRで封止する工程(モールド工程)と、モールド工程の後に、リードフレームから複数のリードLDを切断する工程(リード切断工程)と、リード切断工程の後に、複数のリードLDを折り曲げ加工する工程と、を更に含む。
【0024】
半導体装置PKGに電気的試験を実施する工程(検査工程)では、以下に説明するように、試験装置TSを用いて、半導体装置PKGに対して電気的試験を行う。この工程を、電気的試験工程、検査工程またはテスト工程と呼ぶ。
【0025】
<試験装置について>
図2は、半導体装置PKGに対して電気的試験を行うための試験装置TSの一部を示す説明図(断面図)である。
図3は、チャンバから取り外した試験基板TB、複数のソケット端子ST、本体部BS、外枠部FR、およびアダプタ部ADを示す説明図(断面図)である。なお、以降では、複数のソケット端子ST、本体部BS、外枠部FR、およびアダプタ部ADからなる集合体を「ソケットSK」として説明する。
図4は、
図2の一部を拡大して示す部分拡大断面であり、ソケット端子STとその近傍領域が示されている。
図5~
図7は、半導体装置PKGのテスト工程を示す説明図であり、
図2に相当する断面図が示されている。
図5は、
図2に示される試験装置TSのソケットSKに検査対象の半導体装置PKGを配置する途中の状態に対応し、
図6は、
図2に示される試験装置TSのソケットSKへの検査対象の半導体装置PKGの配置を完了した状態に対応する。また、
図7は、
図5のように試験装置TSのソケットSKに配置された半導体装置PKGに対して電気的試験を実施した後に、半導体装置PKGをソケットSKから引き上げている状態に対応している。また、
図5~
図7では、半導体装置PKGにおける封止部MR内の半導体チップCP、ダイパッドDPおよびボンディングワイヤBWについては、簡略化のために図示を省略しているが、封止部MR内の構造については、
図1を参照すればよい。
【0026】
まず、
図2~
図4を参照して、テスト工程を行うための試験装置(電気的試験装置、検査装置)TSの構成について説明する。
【0027】
試験装置TSは、その内部で冷気を循環させて検査対象の半導体装置PKGを冷却させるためのチャンバ(容器、処理容器、処理槽、ハンドラ)と、検査対象の半導体装置PKGを収容するためのソケット(収容部)SKと、ソケットSKを介して半導体装置PKGと電気的に接続される試験基板(配線基板、パフォーマンスボード)TBと、を備えている。
図2には、ソケットSKと、試験基板TBと、チャンバの一部(底部)を構成するベース部CBと、ソケットSKとベース部CBとを連結する連結部BPと、が示されている。
【0028】
試験装置TSは、更に、試験基板TBと電気的に接続されるLSIテスタ部(図示せず)を備えている。そのLSIテスタ部は、制御部を含み、テスト工程を制御する制御回路や、半導体装置PKGとの間で信号や試験電圧の入出力を行うテスト回路などが形成されている。LSIテスタ部(制御部)に形成されたテスト回路は、試験基板TBおよびソケットSKを介して半導体装置PKGと電気的に接続される。
【0029】
試験基板TBは、ソケットSKが搭載される上面TBa、および上面TBaの反対側に位置する下面(裏面)TBbを有する配線基板である。試験基板TBの下面TBbには、複数の電極(端子)TEを含む導体パターン(導体層)が形成されている。試験基板TBの下面TBbに形成された複数の電極TEは、試験基板TBの下面TBbに形成された配線(図示せず)などを介して、上記LSIテスタ部(制御部)に形成されたテスト回路と電気的に接続されている。
【0030】
ソケットSKは、試験基板TBの上面TBa上に配置されている。ソケットSKは、複数のソケット端子(ソケットピン、検査用端子、検査用プローブ)STと、本体部(ソケット本体部)BSと、外枠部(ソケット外枠部)FRと、アダプタ部(ソケットアダプタ部)ADと、を備えている。
【0031】
本体部BSは、上面BSaと、上面BSaとは反対側の下面BSbと、上面BSaから下面BSbに達する複数の貫通孔TH1とを有している。アダプタ部ADは、上面ADaと、上面ADaとは反対側の下面ADbと、上面BSaから下面BSbに達する複数の貫通孔TH2と、冷気の通過を可能とする空洞部CVと、を有している。
【0032】
外枠部FRは、本体部BSの上面BSa上に配置されている。本体部BSは、本体部BSの下面BSbがアダプタ部ADの上面ADaと対向するように、アダプタ部ADに取り付けられている。本体部BSは、例えば、板状の部材である。本体部BSの下面BSbは、アダプタ部ADの上面ADaと接していてもよい。
【0033】
本体部BSの貫通孔TH1の位置とアダプタ部ADの貫通孔TH2の位置とが互いに整合するように、本体部BSはアダプタ部ADに取り付けられている。このため、平面視において、本体部BSの貫通孔TH1とアダプタ部ADの貫通孔TH2とは、互いに重なっている。別の見方をすると、本体部BSの貫通孔TH1とアダプタ部ADの貫通孔TH2とは、連通している。なお、平面視とは、試験基板TBの上面TBaに略平行な平面で見た場合に対応している。
【0034】
ソケット端子STは、半導体装置の電気的試験に用いる端子であり、検査用端子とみなすことができる。ソケットSKが有するソケット端子STの数は、検査対象の半導体装置PKGに応じて適切な数に設定することができる。例えば、ソケットSKが有するソケット端子STの数は、検査対象の半導体装置PKGの外部端子(ここではリードLD)の数に相当する数とすることができる。ソケット端子STは、半導体装置PKGのリードLDと試験基板TBの電極TEとをソケット端子STを介して電気的に接続するために、設けられている。
【0035】
各ソケット端子STは、半導体装置PKGのリードLDに接触させるための本体部(端子本体部)ST1と、本体部ST1を試験基板TBの電極TEと電気的に接続させるためのアダプタ部(端子アダプタ部)ST2と、を有している。
【0036】
本体部ST1は、全体が一体的に形成されている部材であり、板バネ構造を有している。具体的には、
図4からもわかるように、本体部ST1は、本体部BSの上面BSa上に延在する(配置される)部位P1と、湾曲部P2を介して部位P1と一体的に接続された板状部位(ビーム部、梁部)P3と、本体部BSの貫通孔TH1に挿入される部位P4と、を一体的に有している。湾曲部P2の両端のうち、一方に板状部位P3が一体的に接続され、他方に部位P1が一体的に接続されている。このため、板状部位P3は、湾曲部P2を介して、部位P1に支持される。部位P1は、本体部BSの上面BSaに沿うように、本体部BSの上面BSa上に延在している。部位P4の一方の端部は、部位P1と一体的に接続されている。
【0037】
板状部位P3は、検査対象の半導体装置PKGの配置側である上側に突き出た先端部P3aを含んでおり、先端部P3aが検査対象の半導体装置PKGのリードLDと接触するように構成されている。本体部ST1は、湾曲部P2を有しているため、板バネとして本体部ST1が撓むことを可能としている。湾曲部P2は、例えば半円弧状に湾曲している。検査対象の半導体装置PKGのリードLDをソケット端子STの先端部P3aに押し付けた際に板状部位P3が撓むことにより、半導体装置PKGのリードLDとソケット端子STの先端部P3aとの接触を確保することができる。
【0038】
また、ここでは、本体部ST1が板バネ構造を有している場合について説明したが、他の形態として、板バネ構造以外の構造、例えばポゴピン構造を有していてもよい。
【0039】
アダプタ部ST2は、棒状の部材であるが、一方の端部(上側の端部)に孔部PHが設けられており、この孔部PHに、本体部ST1の部位P4の一部(部位P1に接続される側とは反対側の端部)が挿入されている。すなわち、アダプタ部ST2の一部(端部)が、本体部ST1の一部(部位P4の一部)を包んでいる。これにより、本体部ST1の部位P4とアダプタ部ST2とは孔部PH内において互いに接触した状態となるため、本体部ST1とアダプタ部ST2とは、電気的に接続される。
【0040】
また、アダプタ部ST2の孔部PH内に板バネなどのバネ部材(図示せず)を配置することもできる。その場合、そのバネ部材が本体部ST1の部位P4をアダプタ部ST2の孔部PHの内壁に押し付けることで、孔部PH内において本体部ST1の部位P4とアダプタ部ST2とを確実に接触させることができる。また、そのバネ部材が導電性を有していれば、そのバネ部材がアダプタ部ST2の孔部PHの内壁と本体部ST1の部位P4の外周との両方に接触することによって、本体部ST1とアダプタ部ST2との電気的接続を確保することもできる。
【0041】
本体部ST1は、アダプタ部ST2に対して着脱可能である。例えば、テスト工程で多数の半導体装置PKGのリードLDに本体部ST1の先端部P3aを接触させることで、本体部ST1が摩耗した場合には、摩耗した本体部ST1をアダプタ部ST2から取り外して新たな本体部ST1と交換し、その新たな本体部ST1をアダプタ部ST2に取り付けることができる。
【0042】
各ソケット端子STの一部は、本体部BSの貫通孔TH1とアダプタ部ADの貫通孔TH2とに挿入されている。具体的には、本体部BSの上面BSa側から本体部BSの各貫通孔TH1にそれぞれソケット端子STの本体部ST1の部位P4が挿入されている。また、アダプタ部ADの各貫通孔TH2にそれぞれソケット端子STのアダプタ部ST2が挿入されている。各ソケット端子STの本体部ST1の部位P4は、本体部BSの貫通孔TH1に挿入されているが、各本体部ST1の部位P4の一部(部位P1に接続される側とは反対側の端部)は、本体部BSの下面BSbから突出し、かつ、アダプタ部ADの貫通孔TH2内に配置されたアダプタ部ST2の孔部PH内に挿入されている。また、各ソケット端子STのアダプタ部ST2は、本体部BSの貫通孔TH1に挿入されているが、各アダプタ部ST2の一部(孔部PHが形成されている側とは反対側の端部)は、アダプタ部ADの下面ADbから突出し、かつ、試験基板TBの貫通孔TH3に挿入されている。試験基板TBの貫通孔TH3に挿入された各アダプタ部ST2の端部は、半田などの導電性の接合材BDを介して、試験基板TBに固定され、かつ、試験基板TBの下面TBbに設けられた電極TEと電気的に接続されている。このため、試験基板TBの電極TEは、導電性の接合材BDを介してソケット端子STのアダプタ部ST2と電気的に接続され、そのアダプタ部ST2を介してソケット端子STの本体部ST1と電気的に接続されている。
【0043】
アダプタ部ADにおいて、複数の貫通孔TH2を横切るように、空洞部CVが設けられている。空洞部CVは、テスト工程においてチャンバ内を循環する冷気が通過可能な空間である。
図2~
図4の場合は、アダプタ部ADの空洞部CVは、アダプタ部ADの側面SD1からアダプタ部ADの側面SD2(側面SD1とは反対側の側面SD2)に至るように、アダプタ部ADを貫通している。このため、アダプタ部ADにおいて、各貫通孔TH2は、空洞部CVによって分断されており、アダプタ部ADのうちの空洞部CVよりも上に位置する部分に設けられた貫通孔部TH2aと、アダプタ部ADのうちの空洞部CVよりも下に位置する部分に設けられた貫通孔部TH2bとで構成される。貫通孔部TH2aと貫通孔部TH2bとの間には、空洞部CVが存在している。空洞部CVの厚さは、例えば4mm~6mm程度とすることができる。ここで、空洞部CVの厚さとは、アダプタ部ADの厚さ方向における空洞部CVの厚さ(寸法)に対応している。また、アダプタ部ADの厚さ方向は、本体部BSの上面BSa、本体部BSの下面BSb、アダプタ部ADの上面ADaまたは本体部BSの下面ADbに略垂直な方向に対応している。
【0044】
なお、
図2および
図3の断面図では、アダプタ部ADの上部と下部とが空洞部CVで完全に分断されているように見えるが、実際には、
図2および
図3に示されない断面において、アダプタ部ADの上部と下部とはつながっている(空洞CVが形成されていない領域でつながっている)。
【0045】
各ソケット端子STのアダプタ部ST2は、アダプタ部ADの貫通孔TH2内に挿入されているが、空洞部CVで各アダプタ部ST2の一部(側面の一部)が露出されている。すなわち、各ソケット端子STのアダプタ部ST2は、貫通孔部TH2a内に位置する部分と、貫通孔部TH2b内に位置する部分と、空洞部CVで露出される部分と、アダプタ部Aの下面ADbから突出する部分と、を一体的に有している。
【0046】
外枠部FRは、半導体装置PKGを収容可能なパッケージ収容部(開口部)を有しており、テスト工程では、
図6に示されるように、外枠部FRのパッケージ収容部に半導体装置PKGを配置することができる。外枠部FRのパッケージ収容部は、平面視において、周囲を外枠部FRに囲まれている。外枠部FRのパッケージ収容部の下方に、本体部BSが配置されている。
【0047】
本体部BSと外枠部FRとは、別部材とすることもできるし、あるいは、一体的な部材とすることもできる。本体部BSと外枠部FRとを別部材とした場合には、例えば、平面視において本体部BSの周囲を外枠部FRで囲む構造とすることができる。外枠部FR、本体部BSおよびアダプタ部ADは、主として、例えば樹脂などの絶縁材料からなる。
【0048】
本体部BSの上面BSa上には、検査対象の半導体装置PKGを配置するためのステージ(台座)DZが配置されている。本体部BSとステージDZとの間には、バネ部材SRが介在している。テスト工程において、
図6のようにソケットSKのパッケージ収容部に検査対象の半導体装置PKGを配置する際には、半導体装置PKGは、ステージDZ上に配置される。
【0049】
ソケットSKは、ソケットSKの少なくとも一部がチャンバ内に位置するように、チャンバに取り付けられている。具体的には、チャンバの一部を構成し、かつ、チャンバのベース部CBとスポンジSP2を介して連結される連結部(ベースプレート)BPに、ソケットSKのアダプタ部ADがネジなどの固定部材(図示せず)を用いて接続されて固定されている。ベース部CBと連結部BPは、チャンバの一部(底部)を構成し、冷気が循環可能な空間を規定する。
【0050】
ソケットSKの本体部BSと外枠部FRは、チャンバの内部に位置し、外枠部FRのパッケージ収容部もチャンバの内部に位置している。このため、テスト工程では、ソケットSKに収容された検査対象の半導体装置PKGも、チャンバ内に位置することになる。このため、テスト工程では、チャンバ内に冷気が循環するため、ソケットSKの本体部BSと外枠部FRは、チャンバ内を循環する冷気によって冷却され、また、ソケットSKに収容された検査対象の半導体装置PKGも、チャンバ内を循環する冷気によって冷却される。
【0051】
ソケットSKのアダプタ部ADは、チャンバの一部を構成する連結部BPにソケットSKを取り付けるのに用いられている。連結部BPとソケットSKの本体部BSとの間にスポンジSP1などを介在させることもできる。スポンジSP1によって、チャンバの外部に冷気が漏れるのを抑制または防止することができる。
【0052】
連結部BPは、チャンバの一部(底部)として機能しているが、チャンバのベース部CBに対して着脱可能である。連結部BPは、チャンバのベース部CBにネジなどの固定部材(図示せず)を用いて接続されて固定されている。チャンバのベース部CBと連結部BPとの間にスポンジSP2などを介在させることもできる。スポンジSP2によって、チャンバの外部に冷気が漏れるのを抑制または防止することができる。
【0053】
テスト工程では、
図2に示されるように、ソケットSKはチャンバに取り付けられているが、ソケットSKのメンテナンスなどの際には、
図3に示されるように、ソケットSKをチャンバから取り外すこともできる。例えば、ソケットSKが取り付けられている連結部BPをチャンバのベース部CBから取り外し、その後に、ソケットSKを連結部BPから取り外すことができる。ソケットSKのメンテナンスが終了したら、ソケットSKを連結部BPに取り付けてから、ソケットSKが取り付けられた連結部BPを、チャンバのベース部CBに取り付けることができる。
【0054】
チャンバにソケットSKを取り付けた状態(
図2の状態)では、アダプタ部ADの空洞部CVは、チャンバの内部に位置している。このため、テスト工程において、チャンバ内を循環する冷気は、アダプタ部ADの空洞部CVを通過することができる。従って、テスト工程では、アダプタ部ST2におけるアダプタ部ADの空洞部CVで露出する部分は、チャンバ内を循環する冷気に触れることで、冷却される。
【0055】
また、チャンバにソケットSKを取り付けた状態(
図2の状態)でも、試験基板TBはチャンバの外部に位置している。このため、テスト工程では、チャンバ内に冷気が循環するが、試験基板TBは、チャンバ内を循環する冷気には触れないため、試験基板TBは、チャンバ内を循環する冷気によって冷却されない。
【0056】
<テスト工程について>
試験装置TSを用いて半導体装置PKGに対して電気的試験を行うテスト工程について、説明する。
【0057】
まず、試験装置TSを準備する。試験装置TSの準備は、検査対象の半導体装置PKGの準備の前でも後でもよく、また、検査対象の半導体装置PKGの準備と同時でもよい。試験装置TSの構成については、上述したので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0058】
ここで説明しているテスト工程は、半導体装置PKGの電気的試験を低温の試験温度で行う低温のテスト工程である。このため、試験対象の半導体装置PKGを所定の試験温度に冷却する必要があり、チャンバ内を循環する冷気によって半導体装置PKGの冷却が行われる。このため、テスト工程では、試験装置TSのチャンバ内は、冷気が循環している。冷気は、冷却された気体(低温の気体)である。冷気として好適な例を挙げると、冷却された空気である。例えば、液体窒素などの冷却材を用いて空気を冷却させることにより、冷気を生成することができる。冷気は、チャンバ内で生成することができるが、チャンバ外で生成した冷気をチャンバ内に導入することもできる。チャンバ内においては、例えば送風機などを用いて冷気を循環させることができる。チャンバ内を循環する冷気は、チャンバ内において、検査対象の半導体装置PKGを冷却する機能を有している。テスト工程では、検査対象の半導体装置PKGは、チャンバ内を循環する冷気によって、例えば-20℃以下の温度に冷却される。
【0059】
テスト工程では、
図6に示されるように、チャンバ内において検査対象の半導体装置PKGを、試験装置TSのソケットSKのパッケージ収容部に配置する。例えば、
図5に示されるように、吸着用の治具JG1によって半導体装置PKGを吸着し、治具JG1で吸着した半導体装置PKGを、
図6に示されるように、チャンバ内のソケットSKのパッケージ収容部に配置する。この際、ソケット端子STの本体部ST1の先端部P3a(
図4参照)と半導体装置PKGのリードLDとが互いに対向するように、ソケット端子STのパッケージ収容部に半導体装置PKGが配置される。本体部BS上にステージDZがある場合は、半導体装置PKGはステージDZ上に配置される。それから、押圧用の治具JG2などにより半導体装置PKGを押圧して、半導体装置PKGを下方に(本体部BSに向かって)押し込む。これにより、ソケット端子STの本体部ST1が撓むため、ソケット端子STの本体部ST1の先端部P3a(
図4参照)が半導体装置PKGのリードLDと確実に接触して電気的に接続される。なお、本体部BSとステージDZとの間にはバネ部材SRが介在しているため、治具JG2などにより半導体装置PKGを押圧すると、ステージDZは、ステージDZ上の半導体装置PKGと一緒に沈み込むことができる。
【0060】
その結果、各ソケット端子STの本体部ST1の先端部P3a(
図4参照)は、半導体装置PKGのリードLDに電気的に接触し、かつ、各ソケット端子STのアダプタ部ST2は、試験基板TBの電極TEと電気的に接続された状態となる。これにより、半導体装置PKGのリードLDと試験基板TBの電極TEとがソケット端子STを通じて電気的に接続された状態になり、半導体装置PKGの複数のリードLDは、複数のソケット端子STおよび試験基板TBの導体部(電極TEを含む)を介して、試験装置TSのLSIテスタ部(制御部)に形成されたテスト回路と電気的に接続される。また、半導体装置PKGは、チャンバ内を循環する冷気によって所定の試験温度に冷却されている。
【0061】
この状態で、テスト回路から、試験基板TB、ソケット端子STおよび半導体装置PKGのリードLDを介して半導体装置PKGが有する半導体チップCPに電流または電圧を供給することにより、半導体装置PKGの電気的試験を行うことができる。例えば、半導体装置PKGの電気的特性が測定されることにより、半導体装置PKGの電気的特性の良否が検査される。ソケット端子STは、試験基板TBの電極TEから入力された電流または電圧を半導体装置PKGのリードLDに伝送する伝送経路として利用される。
【0062】
実際には、半導体装置PKGは、リードLDを複数有し、ソケットSKは、ソケット端子STを複数有しているため、半導体装置PKGの複数のリードLDとソケットSKの複数のソケット端子STとをそれぞれ電気的に接触させて、半導体装置PKGの電気的試験を行う。
【0063】
その後、押圧用の治具JG2などによる半導体装置PKGへの押圧力の付与を解除し、電気的試験が終了した半導体装置PKGを、
図7に示されるように治具JG1,JG2と一緒に引き上げて、ソケットSKから取り出す。そして、次の検査対象の半導体装置PKGを
図5および
図6のようにソケットSKのパッケージ収容部に配置し、半導体装置PKGの電気的試験を行う。これを繰り返すことにより、複数の半導体装置PKGに対して、順次電気的試験を施すことができる。
【0064】
テスト工程において、チャンバ内を循環する冷気は、アダプタ部ADの空洞部CVを通過する。
図5~
図7では、アダプタ部ADの空洞部CVを通過する冷気の流れを、符号YGを付した矢印で模式的に示してある。このため、テスト工程において、ソケット端子ST(より特定的にはアダプタ部ST2)におけるアダプタ部ADの空洞部CVで露出する部分は、チャンバ内を循環する冷気に触れることで、冷却される。
【0065】
<検討例について>
図8は、本発明者が検討した検討例の試験装置TS101の一部を示す説明図(断面図)あり、上記
図6に相当するものである。
【0066】
図8に示される検討例の試験装置TS101の場合は、上記ソケットSKに相当するソケットSK101は、上記アダプタ部ADに相当するアダプタ部AD101を有しているが、検討例におけるアダプタ部AD101は、上記空洞部CVに相当するものは有していない。このため、
図8に示される検討例の場合は、ソケットSK101の貫通孔TH102は、アダプタ部AD101の上面からアダプタ部AD101の下面まで連続的に形成されている。検討例の試験装置TS101の他の構成は、上記試験装置TSとほぼ同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0067】
本発明者の検討によれば、
図8に示される試験装置TS101を用いて半導体装置の電気的試験を行う場合には、以下のような課題が発生することが分かった。
【0068】
本発明者は、低温のテスト工程について検討している。
図8に示される検討例の試験装置TS101を用いて低温のテスト工程を行う場合、チャンバ内を循環する冷気によって検査対象の半導体装置PKGを所定の試験温度に冷却する。チャンバ内を循環する冷気によってチャンバの内部を冷却することはできるが、チャンバ内を循環する冷気によってチャンバの外部を冷却することはできない。このため、チャンバの外部に位置する試験基板TBの温度は、検査対象の半導体装置PKGの温度よりもかなり高い温度となっている。また、テスト工程では、試験基板TBの電極TEと半導体装置PKGのリードLDとをソケット端子STを介して電気的に接続することで、検査対象の電気的試験が行われる。このため、試験基板TBからソケット端子STを通じて半導体装置PKGのリードLDに熱が伝導し、電気的試験を行う際に、検査対象の半導体装置PKGの温度が、所定の試験温度よりも高くなる虞がある。また、試験装置TS101のソケットSK101のパッケージ収容部に検査対象の半導体装置PKGを配置すると、半導体装置PKGはソケットSK101の外枠部FRや治具JG1,JG2によって囲まれるため、半導体装置PKGは冷気に触れにくくなる。このため、試験基板TBからソケット端子STを通じて半導体装置PKGのリードLDに熱が伝導してしまうと、半導体装置PKGの温度が上昇しやすい。
【0069】
検査対象の半導体装置の温度が所定の試験温度よりも高くなると、低温のテスト工程の信頼性が低下し、半導体装置の信頼性の低下につながる懸念がある。半導体装置の電気的試験の信頼性を高め、ひいては半導体装置の信頼性を高めるためには、検査対象の半導体装置が所定の試験温度を維持した状態で半導体装置の電気的試験を行うことができるようにすることが望まれる。
【0070】
<主要な特徴と効果について>
本実施の形態では、テスト工程で用いられる試験装置TSは、チャンバと、複数のソケット端子STを有するソケットSKと、複数の電極TEを有する試験基板TBと、を備えている。ソケットSKの少なくとも一部はチャンバ内に配置され、試験基板TBはチャンバ外に配置され、検査対象の半導体装置PKGは、チャンバ内を循環する冷気によって冷却される。テスト工程では、複数のソケット端子STを介して半導体装置PKGの複数のリードLDを試験基板TBの複数の電極TEとそれぞれ電気的に接続して、半導体装置PKGの電気的試験が行われる。
【0071】
本実施の形態の主要な特徴のうちの一つは、試験装置TSのソケットSKは、チャンバ内を循環する冷気が通過可能な空洞部CVを有し、ソケットSKが備える複数のソケット端子STのそれぞれの一部は、ソケットSKの空洞部CVで露出されていることである。ソケットSKが備える複数のソケット端子STは、ソケットの空洞部CVを通過する冷気によって冷却される。
【0072】
上記「検討例について」の欄でも説明したように、試験装置TSにおいて、試験基板TBはチャンバの外部に位置しているため、チャンバ内を循環する冷気によってチャンバの外部の試験基板TBを冷却することはできず、チャンバの外部に位置する試験基板TBの温度は、検査対象の半導体装置PKGの温度よりもかなり高い温度となっている。また、テスト工程では、試験基板TBの電極TEと半導体装置PKGのリードLDとをソケット端子STを介して電気的に接続することで、検査対象の電気的試験が行われる。このため、試験基板TBからソケット端子STを通じて半導体装置PKGのリードLDに熱が伝導し、電気的試験を行う際に、検査対象の半導体装置PKGの温度が、所定の試験温度よりも高くなることが懸念される。
【0073】
それに対して、本実施の形態では、試験装置TSのソケットSKは、チャンバ内を循環する冷気が通過可能な空洞部CVを有しており、ソケットSKが備える複数のソケット端子STのそれぞれの一部は、ソケットSKの空洞部CVで露出されている。このため、ソケットSKが備える複数のソケット端子STは、ソケットの空洞部CVを通過する冷気によって冷却される。すなわち、ソケット端子ST(より特定的にはアダプタ部ST2)における空洞部CVで露出する部分は、チャンバ内を循環する冷気に触れることで、冷却される。これにより、試験基板TBからソケット端子STを通じて半導体装置PKGのリードLDに熱が伝導するのを抑制することができ、電気的試験を行う際に、検査対象の半導体装置PKGの温度を、所定の試験温度に的確に維持することができるようになる。
【0074】
すなわち、試験基板TBから、導電性の接合材BDを介してソケット端子STに伝導した熱が、更にソケット端子STを通って半導体装置PKGのリードLDに伝導することは、半導体装置PKGの温度上昇の要因となり得る。しかしながら、本実施の形態では、ソケット端子STにおける空洞部CVでの露出部が冷気で冷却されるため、ソケット端子STにおける空洞部CVでの露出部を越えて試験基板TBから半導体装置PKG側へソケット端子STを通って熱が伝導するのを、抑制または防止することができる。その結果、電気的試験を行う際に、検査対象の半導体装置PKGの温度を、所定の試験温度に的確に維持することができるようになる。これにより、半導体装置の電気的試験の信頼性を向上させることができ、ひいては半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0075】
ソケットSKは、チャンバ内を循環する冷気が通過可能な空洞部CVを有しており、ソケットSKの少なくとも一部はチャンバ内に配置されている。具体的には、ソケットSKは、チャンバに接続されるアダプタ部ADと、アダプタ部AD上に配置された本体部BSとを含み、本体部BSはチャンバ内に位置している。本体部BSは、複数のソケット端子STが挿入された複数の貫通孔TH1を有し、アダプタ部ADは、複数のソケット端子STが挿入された複数の貫通孔TH2を有している。アダプタ部ADにおいて、複数の貫通孔TH2のそれぞれは、空洞部CVによって分断されている。これにより、アダプタ部ADの空洞部CVで、各ソケット端子STの一部が露出し、その露出部を空洞部CVを通過する冷気で冷却することができる。
【0076】
ソケットSKの空洞部CVは、本体部BSではなくアダプタ部ADに設けることが好ましい。すなわち、ソケットSKの空洞部CVで露出するのは、ソケット端子STの本体部ST1ではなく、ソケット端子STのアダプタ部ST2であることが好ましい。本体部BSに空洞部CVを設けた場合に比べて、アダプタ部ADに空洞部CVを設けた場合の方が、試験基板TBにより近い位置でソケット端子STを冷気(空洞部CVを通過する冷気)で冷却することができるため、試験基板TBからソケット端子STを通って半導体装置PKGへ熱が伝導するのを、より効果的に抑制または防止することができる。その結果、電気的試験を行う際に、検査対象の半導体装置PKGの温度を、所定の試験温度により的確に維持することができるようになる。これにより、半導体装置の電気的試験の信頼性をより向上させることができ、ひいては半導体装置の信頼性をより向上させることができる。
【0077】
アダプタ部ADは、側面SD1および側面SD2を有し、アダプタ部ADの空洞部CVは、アダプタ部ADの側面SD1から側面SD2に至るように形成されている。これにより、アダプタ部ADの側面SD1,SD2のうちの一方から他方側に向かうように、空洞部CV内を冷気が通過することができるため、各ソケット端子STにおける空洞部CVでの露出部を、冷気によって効率的に冷却することができる。
【0078】
また、アダプタ部ADの側面SD1と側面SD2とは、互いに反対側に位置していることが、より好ましい。これにより、空洞部CV内を冷気が通過しやすくなるため、各ソケット端子STにおける空洞部CVでの露出部を、冷気によってより効率的に冷却することができるようになる。
【0079】
ソケットSKが備える複数のソケット端子STのそれぞれは、少なくとも一部が本体部(ソケット本体部)BSの貫通孔TH1に挿入された本体部ST1と、少なくとも一部がアダプタ部(ソケットアダプタ部)ADの貫通孔TH2に挿入されたアダプタ部ST2とを有している。ソケットSKが備える複数のソケット端子STのそれぞれにおいて、本体部ST1とアダプタ部ST2とは電気的に接続され、かつ、アダプタ部ST2の一部がソケットSKのアダプタ部ADの空洞部CVで露出される。テスト工程では、本体部ST1が半導体装置PKGのリードLDと電気的に接触される。アダプタ部ST2は、試験基板TBの電極TEと導電性の接合材BDを介して電気的に接続されている。各ソケット端子STを本体部ST1とアダプタ部ST2とで構成したことにより、ソケットSKやソケット端子STの取り扱いが容易となる。
【0080】
すなわち、ソケット端子STのアダプタ部ST2は試験基板TBの電極TEに半田などの導電性の接合材BDを介して電気的に接続されている(従って試験基板TBに固定されている)ため、ソケット端子STのアダプタ部ST2を試験基板TBから取り外すことは容易ではない。しかしながら、テスト工程で半導体装置PKGのリードLDへの接触を繰り返すのは、ソケット端子STのアダプタ部ST2ではなく、ソケット端子STの本体部ST1である。このため、リードLDとの接触により摩耗が発生し、メンテナンスや交換が必要となるのは、ソケット端子STのアダプタ部ST2ではなく、ソケット端子STの本体部ST1である。ソケット端子STの本体部ST1は試験基板TBに半田などで固定されてはおらず、ソケット端子STの本体部ST1をソケット端子STのアダプタ部ST2から取り外すことは容易であり、また、ソケットSKの本体部BSをソケットSKのアダプタ部ST2から取り外すことも容易である。ソケット端子STを、試験基板TBの電極TEに導電性の接合材BDを介して電気的に接続されたアダプタ部ST2と、半導体装置PKGのリードLDに接触させる本体部ST1とで構成したことで、ソケットSKの本体部BSやソケット端子STの本体部ST1を必要に応じて容易に取り外すことができ、ソケット端子STの本体部ST1のメンテナンスや交換などを容易に行うことができる。
【0081】
各ソケット端子STにおいて、本体部ST1の一方の端部は、アダプタ部ST2の一方の端部に設けられた孔部PHに挿入されている。これにより、本体部ST1とアダプタ部ST2との電気的接続を確保することができるとともに、ソケット端子STの本体部ST1を、ソケット端子STのアダプタ部ST2から取り外しやすくなる。
【0082】
また、本実施の形態では、ソケット端子STを接触させる半導体装置の外部端子として、リードを適用した場合を例に挙げて説明した。他の形態として、ソケット端子STを接触させる半導体装置の外部端子として、リード以外、例えば半田ボール(半田バンプ)などのボール電極(バンプ電極)を適用することもできる。このため、検査対象の半導体装置は、BGA(Ball Grid Array)型の半導体パッケージなどであってもよい。
【0083】
また、本実施の形態では、チャンバの一部を構成する連結部BPに1つのソケットSKを取り付けた場合について説明したが、チャンバの一部を構成する連結部BPに複数のソケットSKを取り付ける場合もあり得る。その場合は、複数のソケットSKのそれぞれで、半導体装置PKGの電気的試験が行われる。
【0084】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
AD,AD101 アダプタ部
ADa 上面
ADb 下面
BD 接合材
BP 連結部
BS 本体部
BSa 上面
BSb 下面
BW ボンディングワイヤ
CB ベース部(チャンバのベース部)
CP 半導体チップ
CV 空洞部
DP ダイパッド
DZ ステージ
SR バネ部材
FR 外枠部
JG1,JG2 治具
LD リード
MR 封止部
P1,P4 部位
P2 湾曲部
P3 板状部位
P3a 先端部
PD パッド電極
PH 孔部
PKG 半導体装置
SD1,SD2 側面
SK ソケット
ST ソケット端子
ST1 本体部
ST2 アダプタ部
SP1,SP2 スポンジ
TB 試験基板
TBa 上面
TBb 下面
TE 電極
TH1,TH2,TH3,TH102 貫通孔
TH2a,TH2b 貫通孔部
TS,TS101 試験装置
YG 冷気の流れ