(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046516
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法および素子転写用基板
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240327BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20240327BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240327BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G09F9/00 338
G09F9/00 346Z
H01L33/62
H05K3/34 507E
G09F9/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151950
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武政 健一
(72)【発明者】
【氏名】山田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】磯野 大樹
【テーマコード(参考)】
5C094
5E319
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA43
5C094BA25
5C094CA19
5C094DB01
5C094EA04
5C094FA02
5C094FB12
5C094GB01
5E319AA03
5E319AB05
5E319AC02
5E319AC04
5E319BB20
5E319CC46
5E319GG03
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CB03
5F142CB07
5F142CB14
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD16
5F142CD17
5F142CD25
5F142CD44
5F142CD49
5F142DB24
5F142DB54
5F142FA32
5F142FA34
5F142GA02
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435EE41
5G435EE44
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】電子装置の性能を向上させる。
【解決手段】転写用基板70は、71f面を備え、可視光透過性の材料から成る基板71と、基板71の面71f上に固定され、可視光透過性で、かつ、弾性変形が可能な材料から成る弾性変形部72と、を有している。弾性変形部72は、複数の素子保持部73と、複数の素子保持部73とは重ならない位置に配置され、基板71の面71fを基準面として複数の素子保持部73よりも高く突出する複数の突出部74と、を備えている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1面を備えた第1基板と、前記第1基板の第1面上に固定され、弾性変形が可能な材料から成る弾性変形部と、を有する素子転写用基板を準備する工程、
(b)前記素子転写用基板の前記弾性変形部が備えた複数の素子保持部と、複数の素子とをそれぞれ貼り付けて前記素子転写用基板により前記複数の素子を保持する工程、
(c)複数のバンプ電極が配列された第2面を備えた第2基板を準備して、前記複数のバンプ電極と、前記素子転写用基板に保持された前記複数の素子の電極とをそれぞれ接触させる工程、
(d)前記複数のバンプ電極と、前記複数の素子の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分にレーザを照射し、前記レーザが照射された素子の電極とバンプ電極とを接合する工程、
を有し、
前記弾性変形部は、
前記複数の素子保持部と、
平面視において前記複数の素子保持部とは重ならない位置に配置され、前記第1基板の前記第1面を基準面として前記複数の素子保持部よりも高く突出する複数の突出部と、
を備え、
前記(c)工程では、前記弾性変形部の前記複数の突出部のそれぞれが、前記第2基板の前記第2面と接触するまで前記第1基板と前記第2基板との距離を近づける、電子装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1基板および前記弾性変形部は可視光透過性の材料から成り、
前記(c)工程では、前記複数の突出部のそれぞれの先端部が弾性変形し、前記先端部の弾性変形の程度に基づいて前記第1基板と前記第2基板との離間距離を調整する、電子装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記複数の突出部のそれぞれは、円錐または角錐形状を成す、電子装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、
平面視において、前記複数の素子保持部のそれぞれの周囲には、2個以上の突出部が配置されている、電子装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記複数の素子保持部のそれぞれは、
前記第1基板の前記第1面を基準面として、前記複数の突出部のそれぞれよりも低く突出した素子支持部と、
前記素子支持部の先端に配置され、素子を保持することが可能な素子保持面と、
を備えている、電子装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記複数の素子保持部および前記複数の突出部のそれぞれは、互いに離間した状態で前記第1基板に接着されている、電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5において、
前記複数の素子保持部のそれぞれは、互いに離間した状態で前記第1基板に接着され、
前記複数の素子保持部と1個以上の突出部とが一体に形成されている、電子装置の製造方法。
【請求項8】
第1面を備え、可視光透過性の材料から成る第1基板と、
前記第1基板の第1面上に固定され、可視光透過性で、かつ、弾性変形が可能な材料から成る弾性変形部と、
を有し、
前記弾性変形部は、
複数の素子保持部と、
平面視において前記複数の素子保持部とは重ならない位置に配置され、前記第1基板の前記第1面を基準面として前記複数の素子保持部よりも高く突出する複数の突出部と、
を備えている、素子転写用基板。
【請求項9】
請求項8において、
前記複数の突出部のそれぞれは、円錐または角錐形状を成す、素子転写用基板。
【請求項10】
請求項8において、
平面視において、前記複数の素子保持部のそれぞれの周囲には、2個以上の突出部が配置されている、素子転写用基板。
【請求項11】
請求項8において、
前記複数の素子保持部のそれぞれは、
前記第1基板の前記第1面を基準面として、前記複数の突出部のそれぞれよりも低く突出した素子支持部と、
前記素子支持部の先端に配置され、素子を保持することが可能な素子保持面と、
を備えている、素子転写用基板。
【請求項12】
請求項11において、
前記複数の素子保持部および前記複数の突出部のそれぞれは、互いに離間した状態で前記第1基板に接着されている、素子転写用基板。
【請求項13】
請求項11において、
前記複数の素子保持部のそれぞれは、互いに離間した状態で前記第1基板に接着され、
前記複数の素子保持部と1個以上の突出部とが一体に形成されている、素子転写用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法および素子転写用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に配列された複数の電極に電子部品(素子)を転写する電子装置の製造方法がある。例えば、特開2021-5632号公報(特許文献1)には、基板上にマイクロLED素子を転写するための転写用基板として、弾性体の第1面から突出した複数の突起部を備えた転写用基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上に素子を転写する工程では、複数の素子保持部の先端に素子を保持した状態でレーザを照射することにより、基板上のバンプ電極と素子の電極との接触部分を加熱して基板上に素子が実装される。素子をバンプ電極と接合させる工程においては、複数の素子の電極と、複数のバンプ電極とが、それぞれ適切な接触状態で接触していることにより、電気的な接続信頼性を獲得できる。したがって、複数の素子の電極と、複数のバンプ電極との接触状態を高精度で制御可能な技術が必要である。
【0005】
本発明の目的は、電子装置の性能を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る電子装置の製造方法は、(a)第1面を備えた第1基板と、前記第1基板の第1面上に固定され、弾性変形が可能な材料から成る弾性変形部と、を有する素子転写用基板を準備する工程と、(b)前記素子転写用基板の前記弾性変形部が備えた複数の素子保持部と、複数の素子とをそれぞれ貼り付けて前記素子転写用基板により前記複数の素子を保持する工程と、(c)複数のバンプ電極が配列された第2面を備えた第2基板を準備して、前記複数のバンプ電極と、前記素子転写用基板に保持された前記複数の素子の電極と、をそれぞれ接触させる工程と、(d)前記複数のバンプ電極と、前記複数の素子の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分にレーザを照射し、前記レーザが照射された素子の電極とバンプ電極とを接合する工程と、を有している。前記弾性変形部は、前記複数の素子保持部と、平面視において前記複数の素子保持部とは重ならない位置に配置され、前記第1基板の前記第1面を基準面として前記複数の素子保持部よりも高く突出する複数の突出部と、を備えている。前記(c)工程では、前記弾性変形部の前記複数の突出部のそれぞれが、前記第2基板の前記第2面と接触するまで前記第1基板と前記第2基板との距離を近づける。
【0007】
他の実施の形態に係る素子転写用基板は、第1面を備え、可視光透過性の材料から成る第1基板と、前記第1基板の第1面上に固定され、可視光透過性で、かつ、弾性変形が可能な材料から成る弾性変形部と、を有している。前記弾性変形部は、複数の素子保持部と、平面視において前記複数の素子保持部とは重ならない位置に配置され、前記第1基板の前記第1面を基準面として前記複数の素子保持部よりも高く突出する複数の突出部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電子装置の一実施形態であるマイクロLED表示装置の構成例を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す画素周辺の回路の構成例を示す回路図である。
【
図3】
図1に示す表示装置の複数の画素のそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造の一例を示す透過拡大平面図である。
【
図5】
図3に示すLED素子を取り除いた状態の基板構造体を示す拡大平面図である。
【
図6】電子装置の一実施態様である表示装置の製造方法の工程フローの一例を示す説明図である。
【
図8】
図6に示す転写用基板準備工程で準備する転写用基板の平面図である。
【
図10】
図9に示す転写用基板の素子保持部材のそれぞれが、素子を保持した状態を示す拡大断面図である。
【
図11】
図10に示す転写用基板を
図7に示す基板構造体に押し付けた状態を示す拡大断面図である。
【
図12】
図11に示す突出部と基板構造体とが接触し、突出部の先端部分が弾性変形した状態を示す拡大断面図である。
【
図13】
図12に示す突出部の先端部分が変形した状態を転写用基板の裏面側から視認した状態を示す拡大平面図である。
【
図14】
図11に示す複数の接触部分の一部にレーザを照射した状態を模式的に示す拡大断面図である。
【
図15】
図14に示す複数の素子と素子保持部材とを剥離させた状態を示す拡大断面図である。
【
図16】
図9に対する変形例を示す拡大断面図である。
【
図17】
図9に対する他の変形例を示す拡大断面図である。
【
図18】
図11に示す基板構造体のバンプ配列面側に表示される模様の一例を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一または関連する符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
以下の実施の形態では、複数の電子部品を搭載するためのバンプ電極アレイが配列された電子装置の例として、複数のマイクロLED素子が搭載されたマイクロLED表示装置、およびマイクロLED素子が搭載される前のバンプ電極アレイ装置を取り上げて説明する。
【0011】
<電子装置>
まず、本実施の形態の電子装置であるマイクロLED表示装置の構成例について説明する。
図1は、電子装置の一実施形態であるマイクロLED表示装置の構成例を示す平面図である。
図1では、表示領域DAと周辺領域PFAとの境界、制御回路5、駆動回路6、および複数の画素PIXのそれぞれを二点鎖線で示している。
図2は、
図1に示す画素周辺の回路の構成例を示す回路図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の表示装置DSP1は、表示領域DAと、表示領域DAの周囲を枠状に囲む周辺領域PFAと、表示領域DA内に行列上に配列された複数の画素PIXと、を有している。また、表示装置DSP1は、基板10と、基板10上に形成された制御回路5と、基板10上に形成された駆動回路6と、を有している。基板10はガラスまたは樹脂から成る。基板10は、面10tおよび面10tの反対側の面10bを備えている。
【0013】
制御回路5は、表示装置DSP1の表示機能の駆動を制御する制御回路である。例えば、制御回路5は、基板10上に実装されたドライバIC(Integrated Circuit)である。
図1に示す例では、制御回路5は、基板10が備える4辺のうち、一つの短辺に沿って配置されている。また、本実施の形態の例では、制御回路5は、複数の画素PIXに接続される配線(映像信号配線)VL(
図2参照)を駆動する信号線駆動回路を含んでいる。ただし、制御回路5の位置および構成例は、
図1に示す例には限定されず、種々の変形例がある。例えば、
図1において、制御回路5として示す位置に、フレキシブル基板などの回路基板が接続され、上記したドライバICは、回路基板上に搭載されている場合がある。また例えば、配線VLを駆動する信号線駆動回路は、制御回路5とは別に形成されている場合がある。
【0014】
駆動回路6は、複数の画素PIXのうち、走査信号線GL(後述する
図2参照)を駆動する回路を含む。また、駆動回路6は、複数の画素PIXのそれぞれに搭載されたLED素子に基準電位を供給する回路を含む。駆動回路6は、制御回路5からの制御信号に基づいて、複数の走査信号線GLを駆動する。
図1に示す例では、駆動回路6は、基板10が備える4辺のうち、二つの長辺のそれぞれに沿って配置されている。ただし、駆動回路6の位置および構成例は、
図1に示す例には限定されず、種々の変形例がある。例えば、
図1において、制御回路5として示す位置に、フレキシブル基板などの回路基板が接続され、上記した駆動回路6が回路基板上に搭載されている場合がある。
【0015】
次に、
図2を用いて画素PIXの回路構成例について説明する。なお、
図2では、4個の画素PIXを代表的に取り上げて図示しているが、
図1に示す複数の画素PIXのそれぞれが、
図2に示す画素PIXと同様の回路を備えている。以下では、画素PIXが備えるスイッチ、およびLED素子20を含む回路について、画素回路と呼称する場合がある。画素回路は、制御回路5(
図1参照)から供給される映像信号Vsgに応じてLED素子20の発光状態を制御する電圧信号方式の回路である。
【0016】
図2に示すように、画素PIXは、LED素子20を備えている。LED素子20は、上記したマイクロ発光ダイオードである。LED素子20はアノード電極20EAおよびカソード電極20EKを有している。LED素子20のカソード電極20EKは、基準電位(固定電位)PVSが供給される配線VSLに接続されている。LED素子20のアノード電極20EAは、配線31を介してスイッチング素子SWのドレイン電極EDと電気的に接続されている。
【0017】
画素PIXは、スイッチング素子SWを備えている。スイッチング素子SWは、制御信号Gsに応答して画素回路と配線VLとの接続状態(オンまたはオフの状態)を制御するトランジスタである。スイッチング素子SWは、例えば薄膜トランジスタである。スイッチング素子SWがオン状態の時、画素回路には、配線VLから映像信号Vsgが入力される。
【0018】
駆動回路6は、図示しないシフトレジスタ回路、出力バッファ回路等を含んでいる。駆動回路6は、制御回路5(
図1参照)から伝送される水平走査スタートパルスに基づいてパルスを出力し、制御信号Gsを出力する。
【0019】
複数の走査信号線GLのそれぞれは、X方向に延びている。走査信号線GLは、スイッチング素子SWのゲート電極に接続されている。走査信号線GLに制御信号Gsが供給されると、スイッチング素子SWがオン状態となり、LED素子20に映像信号Vsgが供給される。
【0020】
<LED素子の周辺構造>
次に、
図1に示す複数の画素PIXのそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造について説明する。
図3は、
図1に示す表示装置の複数の画素のそれぞれに配置されるLED素子の周辺構造の一例を示す透過拡大平面図である。
図3では、
図4に示す無機絶縁層14の図示を省略している。
図3では、半導体層、電極、および走査信号線の輪郭を点線で示している。
図4は、
図3のA-A線に沿った拡大断面図である。
図5は、
図3に示すLED素子を取り除いた状態の基板構造体を示す拡大平面図である。
【0021】
図3に示すように、表示装置DSP1は、画素PIX1を含む複数の画素PIX(
図4に示す例では画素PIX1,PIX2,およびPIX3)を有している。複数の画素PIXのそれぞれは、スイッチング素子SWと、LED素子(発光素子)20と、配線31と、配線32と、を有している。なお、画素PIX1,PIX2,およびPIX3のそれぞれには、例えば赤、緑、および青のうち、いずれか一色の可視光を出射するLED素子20が搭載され、LED素子20を駆動するスイッチング素子SWが形成されている。画素PIX1,PIX2,およびPIX3のLED素子から出射される可視光の出力およびタイミングを制御することにより、カラー表示が可能となる。このように互いに異なる色の可視光を出射する複数の画素PIXを組み合わせる場合、各色用の画素PIXを副画素と呼び、複数の画素PIXのセットを画素と呼ぶ場合がある。本実施の形態では、上記副画素に相当する部分が画素PIXと呼ばれる。
【0022】
配線31は、スイッチング素子SWのドレイン電極EDおよびLED素子20のアノード電極20EAのそれぞれに電気的に接続されている。配線32は、スイッチング素子SWのソース電極ESに接続されている。
図3に示す例では、配線32は屈曲した構造を備え、一方の端部がスイッチング素子SWのソース電極ESに接続され、他方の端部は、配線VLに接続されている。走査信号線GLは、スイッチング素子SWのゲート電極EGとして利用される。
【0023】
表示装置DSP1は、Y方向に沿って複数の画素PIX(
図2参照)に亘って延び、かつ、配線32と電気的に接続される配線VLと、Y方向に交差(
図3では直交)するX方向に沿って複数の画素PIXに亘って延び、かつ、LED素子20のカソード電極20EKに電気的に接続された配線VSLと、を更に有している。配線VLと配線VSLとは、
図3に示す配線交差部LXPにおいて、絶縁層41を介して交差している。配線VLと配線VSLとの間に絶縁層41が介在しているので、配線VLと配線VSLとは電気的に離間されている。なお、
図3に示すレイアウトは、一例であって、種々の変形例がある。例えば、
図3に対する変形例の一つとして、スイッチング素子SWが図示しないゲート電極を有し、ゲート電極が走査信号線GLと接続された構造であってもよい。この変形例では、走査信号線GLが、半導体層50と重ならない位置に配置される場合がある。
【0024】
図4に示すように、表示装置DSP1は、ガラスまたは樹脂から成る基板10と、基板10上に積層された複数の絶縁層とを含む電子装置である。表示装置DSP1が有する複数の絶縁層は、基板10上に積層される無機絶縁層11、無機絶縁層12、無機絶縁層13、および無機絶縁層14を含む。基板10は面10fおよび面10fの反対側の面10bを有している。無機絶縁層11,12,13、および14のそれぞれは、基板10の面10f上に積層されている。
【0025】
スイッチング素子SWは、基板10上に形成された無機絶縁層12と、無機絶縁層12上に形成された半導体層50と、半導体層50のドレイン領域に接続されたドレイン電極EDと、半導体層50のソース領域に接続されたソース電極ESと、半導体層50を覆う無機絶縁層13と、を含んでいる。配線31および配線32のそれぞれは、例えば、チタンまたはチタン合金から成る導体層と、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成る導体層と、の積層膜である。チタン層の間にアルミニウム層が挟まれた積層膜は、TAT積層膜と呼ばれる。
【0026】
図4に示す例は、ゲート電極EGが半導体層50と基板10との間にある、ボトムゲート方式の例である。ボトムゲート方式の場合、無機絶縁層12のうち、ゲート電極EGと半導体層50との間にある部分がゲート絶縁層として機能する。また、無機絶縁層12は、半導体層50を形成するための下地層としても機能する。なお、ゲート電極EGの位置は
図4に示す例には限定されず、例えば変形例として後述するトップゲート方式であってもよい。
【0027】
無機絶縁層11,12,13,および14のそれぞれを構成する材料は特に限定されない。例えば、酸化ケイ素(SiO2)や窒化ケイ素(SiN)などを例示することができる。また、半導体層50は、例えばケイ素から成るシリコン膜にP型またはN型の導電型の不純物がドープされた半導体膜である。
【0028】
ソース電極ESおよびドレイン電極EDのそれぞれは、半導体層50のソース領域およびドレイン領域のいずれか一方との電気的なコンタクトをとるためのコンタクトプラグである。コンタクトプラグの材料は、例えばタングステンなどを例示できる。なお、
図4に対する変形例として、無機絶縁層13に半導体層50のソース領域およびドレイン領域を露出させるコンタクトホールが形成され、コンタクトホール内に配線31の一部分および配線32の一部分がそれぞれ埋め込まれている場合がある。この場合、配線31および配線32のうち、コンタクトホール内に埋め込まれた部分が半導体層50に接触し、配線31および配線32と半導体層50との接触界面をドレイン電極EDおよびソース電極ESと見做すことができる。
【0029】
また、
図5に示すように、表示装置DSP1(
図3参照)は、平面視において規則的に配列された複数のバンプ電極33を備えている。バンプ電極33は、基板10(
図4参照)上に電子部品を実装するための端子である。本実施の形態の場合、バンプ電極33は、
図4に示すLED素子20を搭載するための端子である。このため、2個のバンプ電極の一方は、LED素子20のアノード電極20EAに接続され、他方はLED素子20のカソード電極20EKに接続されている。このため、本実施の形態の場合、複数のバンプ電極33は、LED素子20(
図3参照)の実装予定領域に2個隣り合って配列されている。
【0030】
図4に示すように、バンプ電極33は、無機絶縁層14に形成された開口部14Hと重なる位置で配線31に接続され、かつ、無機絶縁層14から突出している。また、バンプ電極33は、例えば、錫を含む半田から成る。あるいは、バンプ電極33は、銅など、半田よりも電気伝導度が高い金属材料からなる金属層と、半田層との積層体である場合がある。
【0031】
<電子装置の製造方法>
次に、
図3に示す表示装置DSP1の製造方法を代表例として、本実施の形態の電子装置の製造方法について説明する。なお、以下では、
図4に示す開口部14Hにバンプ電極33を形成する工程を中心に説明する。
図6は、電子装置の一実施態様である表示装置の製造方法の工程フローの一例を示す説明図である。
【0032】
図6に示すように、本実施の形態の電子装置の製造方法は、基板構造体準備工程と、転写用基板準備工程と、素子保持工程と、素子押付工程と、レーザ照射工程と、素子剥離工程と、を有している。
【0033】
図6に示す基板構造体準備工程では、
図5に示す基板構造体SUB1を準備する。
図7は、
図5のB-B線に沿った拡大断面図である。
図7に示すように、基板構造体準備工程では、ガラスまたは樹脂から成る基板10と、基板10上に形成された配線31と、配線31を覆う無機絶縁層14と、を備えた基板構造体SUB1を準備する。
図7に示す例では、基板10上には、無機絶縁層11、無機絶縁層12、無機絶縁層13、および無機絶縁層14が積層され、配線31は、無機絶縁層13と無機絶縁層14との間に配置されている。基板構造体SUB1の大部分は無機絶縁層14に覆われている。無機絶縁層14には、配線31と重なる位置および配線VSLと重なる位置に開口部14Hが形成されている。開口部14Hの底部において、配線31および配線VSLのそれぞれは、無機絶縁層14から露出している。
【0034】
複数のバンプ電極33は、基板構造体SUB1が備えた面SUBfに配列されている。複数のバンプ電極33のそれぞれは、開口部14H内に埋め込まれ、開口部14Hの底部において、配線31または配線VSLに接続されている。
図5に示すように、平面視において、複数のバンプ電極33のそれぞれは、電子部品(
図3に示すLED素子20)を搭載する予定領域に、規則的に配置されている。
【0035】
バンプ電極33は、
図7に示すように、無機絶縁層14の上方に突出するように形成されている。上記したように、配線31の一部分および配線VSLの一部分が開口部14Hにおいて無機絶縁層14から部分的に露出しているので、バンプ電極33は例えば、電気メッキ法により選択的に形成することができる。なお、バンプ電極33の突出高さを高くするために、レジスト膜を用いてバンプ電極33を形成する場合もある。
【0036】
次に、
図6に示す転写用基板準備工程では、
図8に示す転写用基板を準備する。
図8は、
図6に示す転写用基板準備工程で準備する転写用基板の平面図である。
図9は、
図8のC-C線に沿った拡大断面図である。
【0037】
図8および
図9に示す転写用基板(素子転写用基板)70は、面71fおよび面71fの反対側の面71b(
図9参照)を備えた基板71と、基板71の面71f上に固定された弾性変形部72と、を有している。弾性変形部72は、基板71の面71fに貼り付けられている。
【0038】
基板71は、転写用基板70の剛性を確保するための支持基板である。基板71は、例えば、石英、ガラスなど、酸化ケイ素を主成分とする合成基板である。また、弾性変形部72は、弾性変形可能な弾性体から成る。弾性変形部72を構成する材料の例としては、例えば、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム(SI)、ポリウレタン樹脂(PUR)、フッ素ゴム(FPM)などを例示することができる。またこれらのゴムを単独で用いる場合の他、混合して用いる場合もある。
【0039】
図9に示すように、弾性変形部72は、複数の素子保持部73と、複数の素子保持部73とは重ならない位置に配置され、基板71の面71fを基準面として複数の素子保持部73よりも高く突出する複数の突出部74と、を備えている。
図9に示す例では、弾性変形部72は、基板71の面71fの全体を覆うように形成されたベース部75を有し、ベース部75の一部分が素子保持部73として機能する。また、突出部74はベース部75から突出するように形成されている。弾性変形部72を構成するベース部75(複数の素子保持部73を含む)および複数の突出部74のそれぞれは、同じ弾性材料から成り、一体に形成されている。
【0040】
基板71と弾性変形部72の基板接着面72bとは接着剤を介して接着されている。接着剤には、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はウレタン系樹脂などを用いることができる。同様に、弾性変形部72の素子保持部73の素子保持面72fには、素子を保持するための粘着層が配置されている。粘着層は、例えば上記した接着剤と同様のものを用いることができる。ただし、弾性変形部72の素子保持部73に保持された素子を基板10上に実装した後、素子と弾性変形部72の素子保持部73とを剥離させる必要があるので、素子に粘着させる粘着層の接着強度は、弾性変形部72の素子保持部73と基板71とを接着させる接着剤よりも接着強度が低いことが好ましい。なお、本実施の形態に対する変形例として、弾性変形部72自体を上記したような粘着性の樹脂で構成する場合がある。
【0041】
次に、
図6に示す素子保持工程では、
図10に示すように弾性変形部72の複数の素子保持部73のそれぞれにLED素子20を保持させる。
図10は、
図9に示す転写用基板の素子保持部のそれぞれが、素子を保持した状態を示す拡大断面図である。本工程では、転写用基板70の複数の素子保持部73と、複数のLED素子20とをそれぞれ貼り付けて転写用基板70により複数のLED素子20を保持する。詳しくは、LED素子20のうち、アノード電極20EAおよびカソード電極20EKが形成された面の反対側の面が素子保持部73の素子保持面72fに粘着保持される。これにより、次に説明する
図11に示すように、複数のアノード電極20EAおよび複数のカソード電極20EKのそれぞれを、基板構造体SUB1と対向させることができる。
【0042】
図10に示す複数のLED素子20のそれぞれは、例えばサファイア基板上に形成される。完成した複数のLED素子20のそれぞれは、サファイア基板上から図示しない第1転写基板に転写され、その第1転写基板から
図10に示す転写用基板70に転写される。このように、複数のLED素子20のそれぞれを形成するためのサファイア基板から図示しない第1転写基板を介して転写用基板70に転写することで、
図10に示すようにLED素子20のアノード電極20EAおよびカソード電極20EKが素子保持部73の先端に位置した状態で保持される。
【0043】
次に、
図6に示す素子押付工程では、
図11に示すように、複数のバンプ電極33が配列された面SUBfを備えた基板構造体SUB1を準備して、転写用基板70を基板構造体SUB1に向かって押し付ける。
図11は、
図10に示す転写用基板を
図7に示す基板構造体に押し付けた状態を示す拡大断面図である。
図12は、
図11に示す突出部と基板構造体とが接触し、突出部の先端部分が弾性変形した状態を示す拡大断面図である。
図13は、
図12に示す突出部の先端部分が変形した状態を転写用基板の裏面側から視認した状態を示す拡大平面図である。
【0044】
本工程では、複数のバンプ電極33と、転写用基板70に保持された複数のLED素子20の電極(アノード電極20EAおよびカソード電極20EK)とが対向した状態で転写用基板70を基板構造体SUB1に向かって押し付ける。これにより、複数のバンプ電極33と、転写用基板70に保持された複数のLED素子20の電極(アノード電極20EAおよびカソード電極20EK)とをそれぞれ接触させる。
【0045】
本工程において、LED素子20が基板構造体SUB1に対して過剰な力で押し付けられると、LED素子20が損傷する原因になる。一方、LED素子20とバンプ電極33との接触が不十分である場合、LED素子20とバンプ電極33との電気的な接続信頼性が低下する原因となる。このため、本工程では、基板構造体SUB1と転写用基板70との距離(詳しくは基板10と基板71との離間距離)が適切な値となるように制御する必要がある。本実施の形態の場合、弾性変形部72が備えている複数の突出部74のそれぞれを用いて基板構造体SUB1と転写用基板70との距離(詳しくは基板10と基板71との離間距離)を制御する。本工程では、弾性変形部72の複数の突出部74のそれぞれが、基板構造体SUB1のうち、複数のバンプ電極33と重ならない位置に接触するまで転写用基板70と基板構造体SUB1との距離を近づける。
【0046】
本実施の形態の場合、素子押付工程では、複数の突出部74のそれぞれの先端部が弾性変形し、先端部の弾性変形の程度に基づいて転写用基板70と基板構造体SUB1との離間距離を調整する。例えば、本実施の形態の場合、複数の突出部74のそれぞれは、円錐または角錐形状を成す。
図13では一例として円錐形を成す場合を例示している。以下、円錐または角錐形状のことを「錐形状」と記載する。「錐形状」は、三角錐、四角錐、あるいは五角錐異様の多角錐を含んでいる。本実施の形態のように錐形状を成す突出部の先端部分を弾性変形させた場合、
図12に示すように突出部74の先端部分が接触面に沿って広がるように変形する。先端部分の変形方向は、平面視において当方的に広がる。このため、
図13に例示するように、突出部74の先端部74Tの輪郭は、円形を成す。
【0047】
図12に示す基板71および弾性変形部72のそれぞれは、可視光透過性の材料から成る。このため、
図12に例示するように基板71の面(裏面)71bに配置された撮像装置CAMにより突出部74を撮影すると、
図13に例示するような像が得られる。なお、
図12では撮像装置CAMを用いた例を示しているが、目視にて確認することも可能である。
図13に示す先端部74Tの輪郭の大きさは、素子押付工程において、
図12に示す基板71と基板10との距離が近づく程大きくなる。このため、先端部74Tの輪郭の大きさについて、下限値、および上限値を予め設定しておけば、この設定された値に基づいて押付の程度を制御することができる。すなわち、先端部74T(
図13参照)の弾性変形の程度に基づいて転写用基板70と基板構造体SUB1との離間距離を調整することができる。
【0048】
例えば、
図11に示す複数の突出部74のそれぞれの先端部74T(
図13参照)の輪郭のサイズが設定された上限値よりも大きい場合、転写用基板70を押し付ける力を全体に弱めることで、転写用基板70と基板構造体SUB1との離間距離を調整する。反対に、先端部74Tの輪郭のサイズが設定された下限値よりも小さい場合、転写用基板70を押し付ける力を全体に強くすることで、転写用基板70と基板構造体SUB1との距離を調整する。また例えば、複数の突出部74のうち、一部の突出部74の先端部74Tの輪郭のサイズが設定された上限値より大きく、他の一部の突出部74の先端部74Tの輪郭のサイズが設定された下限値よりも小さい場合、転写用基板70と基板構造体SUB1とが平行に配置されていないことを意味する。このため、
図13に例示する先端部74Tの輪郭のサイズを視ながら転写用基板70を押し付ける力を調整し、転写用基板70と基板構造体SUB1とが平行になるようにする。
【0049】
このように、本実施の形態によれば、弾性変形部72に複数の突出部74が設けられているので、転写用基板70と基板構造体SUB1との距離、言い換えれば、LED素子20の電極(アノード電極20EAおよびカソード電極20EK)とバンプ電極33との接触状態を容易に調整することが可能である。
【0050】
また、本実施の形態によれば、複数の突出部74のそれぞれの先端部74T(
図13参照)が弾性変形する。このため、先端部74Tの弾性変形の程度に基づいて転写用基板70と基板構造体SUB1との離間距離言い換えれば、LED素子20の電極(アノード電極20EAおよびカソード電極20EK)とバンプ電極33との接触状態を高精度に調整することが可能である。
【0051】
突出部74の形状には、種々の変形例が適用可能である。例えば錐形状の先端の一部が除去された円錐台形または角錐台形の形状とすることができる。あるいは、錐形状ではなく、単純な円柱形状、あるいは角柱形状とすることができる。ただし、
図13に示すように先端部74Tの輪郭のサイズを容易に視認する観点からは、複数の突出部74のそれぞれは、円錐または角錐形状を成すことが特に好ましい。
【0052】
また、
図8に示す例では、平面視において、複数の素子保持部73のそれぞれの周囲には、4個の突出部74が配置されている。素子保持部73の周囲に配置される突出部74の数には種々の変形例がある。弾性変形部72が少なくとも2個以上の突出部74を備えていれば、素子押付工程において複数の突出部74と基板構造体SUB1とを接触させることが可能である。ただし、LED素子20の電極(アノード電極20EAおよびカソード電極20EK)とバンプ電極33との接触状態を高精度で調整可能にする観点からは、平面視において、複数の素子保持部73のそれぞれの周囲には、2個以上の突出部74が配置されていることが好ましい。この場合、突出部74の数は、素子保持部73の数よりも多い。
【0053】
また、複数の素子保持部73のそれぞれの周囲には、4個よりも多い数の突出部74が配置されている場合もある。ただし、
図8に示すように、素子保持部73の周囲に4個の突出部74が配置されていれば十分に高精度で調整可能である。また、複数の突出部74のそれぞれの弾性変形の程度を評価する場合、評価対象である突出部74の数が多くなると、評価に要する時間が長くなる。したがって、複数の素子保持部73のそれぞれの周囲に配置される突出部74の数は、2個以上4個以下程度が特に好ましい。
【0054】
図10に示す突出部74の高さH74は、以下の範囲内であることが好ましい。
図7に示すバンプ電極33の頂点から基板構造体SUB1の面SUBfまでの高さをバンプ電極33の高さH33と定義する。なお、面SUBfは、基板構造体SUB1の前面、あるいはバンプ配列面と読み替えることができる。また、
図12に示すように、電極を含むLED素子20の厚さを厚さT20と定義する。この時、
図10に示す突出部74の高さH74は、
図12に示すLED素子20の厚さT20とバンプ電極33の高さH33の合計値以上であることが好ましい。これにより、
図6に示す素子押付工程において突出部74の先端を基板構造体SUB1の面SUBfに接触させることができる。また、突出部74の高さH74は、LED素子20の厚さT20とバンプ電極33の高さH33の合計値+5μm以下であることが特に好ましい。突出部74の高さH74がLED素子20の厚さT20とバンプ電極33の高さH33の合計値+5μm以下の範囲内であれば、突出部74によりLED素子20の電極とバンプ電極33との接触が阻害されることを防止できる。
【0055】
厚さT20は、数μm~10μm程度である。また、高さH33は、数μm~10μmm程度である。ベース部75の厚さは、例えば数十μm(例えば20μm)程度である。例えば、厚さT20が10μm、バンプ電極33の高さH33が3μmである場合、突出部74の高さH74は、13μm以上で、かつ、18μm以下であることが特に好ましい。
【0056】
次に、
図6に示すレーザ照射工程では、
図14に示すように、複数のバンプ電極33と、複数のLED素子20の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分のうちの一部に選択的にレーザLZを照射し、レーザLZが照射されたLED素子20の電極とバンプ電極33とを接合する。
図14は、
図11に示す複数の接触部分の一部にレーザを照射した状態を模式的に示す拡大断面図である。
【0057】
本工程では、アノード電極20EAまたはカソード電極20EKと、バンプ電極33との接触部分にレーザLZを照射することで、接触部分を加熱する。これにより、バンプ電極33に含まれる半田がアノード電極20EAまたはカソード電極20EKに接合される。
【0058】
なお、本工程の前に、LED素子20のアノード電極20EAおよびカソード電極20EKのそれぞれに、予め半田膜が形成されている場合もある。この場合、半田を含むバンプ電極33と電極に形成された半田膜とを容易に一体化させることができるので、バンプ電極33とカソード電極20EK(またはアノード電極20EA)とを確実に接続することができる。
【0059】
図14に示すように、複数のバンプ電極33と、複数のLED素子20の電極とがそれぞれ接触した複数の接触部分のうちの一部に選択的にレーザLZを照射する場合、レーザLZの照射範囲を小さくすることができる。例えば、
図14に示すように、隣り合うバンプ電極33の間に回路部品35(例えば
図3に示す配線VLやスイッチング素子SW等が回路部品35に相当する)が配置されている場合、レーザLZの照射範囲を小さくすることで、回路部品35がレーザLZにより受ける熱影響を低減させることができる。
【0060】
なお、
図14では、小型のレーザ光源LZSから照射範囲の狭いレーザLZが照射されている例を示しているが、レーザLZの照射範囲を小さくする方法には種々の変形例がある。例えば、図示しない遮光膜の一部にレーザLZの透過可能な開口部を設けることにより、レーザLZの照射範囲を狭くすることができる。
【0061】
本工程は、LED素子20の電極(アノード電極20EAおよびカソード電極20EK)とバンプ電極33とが接触した状態で実施される。LED素子20の電極とバンプ電極33との接触状態は、上記したように複数の突出部74により高精度に制御されている。このため、本実施の形態によれば、LED素子20の電極とバンプ電極33との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0062】
なお、
図14に示す例の場合、複数のLED素子20の1個ずつに順次レーザLZを照射する例を示している。ただし、変形例として、例えば2個ずつ、あるいは3個ずつなど、3個以下程度の少数のLED素子20に対して一括してレーザLZを照射する場合がある。
【0063】
次に、
図6に示す素子剥離工程では、
図15に示すように、複数のLED素子20と、複数の弾性変形部72の素子保持部73の素子保持面72fとを剥離させる。
図15は、
図14に示す複数の素子と素子保持部材とを剥離させた状態を示す拡大断面図である。
【0064】
本工程では、転写用基板70と基板構造体SUB1との距離を遠ざける。この時、複数のLED素子20の電極は、バンプ電極33に接合されている。言い換えれば、複数のLED素子20は、基板構造体SUB1に実装されており、LED素子20とバンプ電極33の固定強度は、LED素子20と弾性変形部72の素子保持部73との接着強度よりも高い。このため、転写用基板70を引き上げれば、弾性変形部72の素子保持部73の素子保持面72fとLED素子20との界面が剥離する。
【0065】
複数の突出部74のそれぞれは、上記したように弾性変形可能な材料から成る。したがって、
図15に示すように、複数の突出部74のそれぞれが基板構造体SUB1から離れると、突出部74の形状は、元の形状(例えば円錐形状や角錐形状)に復元する。
【0066】
以上の各工程により、複数のバンプ電極33のそれぞれにLED素子20の電極が接合された基板構造体SUB1が得られる(電子装置取得工程)。
【0067】
<変形例>
次に、
図9に示す弾性変形部に対する変形例およびこれを用いた電子装置の製造方法の変形例について説明する。
図16は、
図9に対する変形例を示す拡大断面図である。
図17は、
図9に対する他の変形例を示す拡大断面図である。なお、以下では、
図8~
図14を用いて説明した転写用基板70およびこれを用いた電子装置の製造方法との相違点を中心に説明し、共通する部分に関しては重複する説明を原則として省略する。
【0068】
図16に示す転写用基板70Aおよび
図17に示す転写用基板70Bのそれぞれは、
図9に示すベース部75を有していない点で
図9に示す転写用基板70と相違する。転写用基板70Aおよび転写用基板70Bのそれぞれの場合、複数の素子保持部73のそれぞれが、互いに離間した状態で基板71に接着されている。
図14を用いて説明したように、レーザ照射工程において、複数のLED素子20の一部に選択的にレーザLZを照射する方式の場合、レーザ照射時の熱影響により、弾性変形部72が収縮する場合がある。この時、
図9に示すように、複数の素子保持部73のそれぞれがベース部75を介して連結されている場合、レーザLZ(
図14参照)が照射されたLED素子20の近傍に配置されるLED素子20とバンプ電極33との位置関係が、ベース部75の熱収縮によりずれてしまう場合が考えられる。
【0069】
一方、
図16に示す転写用基板70Aおよび
図17に示す転写用基板70Bのそれぞれの場合、複数の素子保持部73のそれぞれが、互いに離間した状態で基板71に接着されている。このため、仮にレーザ照射工程において、複数のLED素子20の一部に選択的にレーザを照射した場合であっても、熱収縮により他のLED素子20とバンプ電極33との位置関係がずれることを防止できる。
【0070】
図17に示す転写用基板70Bは、素子保持部73と1個以上の突出部74とが一体に形成されている点で
図16に示す転写用基板70Aと相違する。
図17に示す例の場合でも、複数の素子保持部73のそれぞれは互いに離間している。このため、仮にレーザ照射工程において、複数のLED素子20の一部に選択的にレーザを照射した場合であっても、熱収縮により他のLED素子20とバンプ電極33との位置関係がずれることを防止できる。
【0071】
また、
図17に示す転写用基板70Bの場合、素子保持部73と1個以上の突出部74とが一体化されているので、
図16に示す転写用基板70Aと比較して素子保持部73と基板71との接着面積を大きくすることができる。
図9に示す転写用基板70、
図16に示す転写用基板70Aおよび
図17に示す転写用基板70Bのそれぞれは、
図11に示す基板構造体SUB1に複数のLED素子20を転写するためのツールである。このため、
図15を用いて説明したように、LED素子20の電極とバンプ電極33とを接合した後は、素子剥離工程において素子保持部73とLED素子20とを剥離させる。
【0072】
この時、基板71と素子保持部73との接着強度が弱い場合、基板71と素子保持部73との接着部分が剥離してしまい、素子保持部73がLED素子20に接着された状態で残ってしまう懸念がある。
図17に示す転写用基板70Bの場合、素子保持部73と突出部74とを一体化することにより基板71と素子保持部73との接着強度を向上させることができる。このため、基板71と素子保持部73との接着部分が剥離してしまう現象の発生を抑制することができる。
【0073】
図16に示す例の場合、突出部74の高さH74は、基板71の面71fから突出部74の頂部までの高さとして規定される。この場合、
図16に示す突出部74の高さH74は、以下の範囲内であることが好ましい。すなわち、突出部74の高さH74は、
図12に示すLED素子20の厚さT20とバンプ電極33の高さH33と、
図16に示す素子保持部73の厚さの合計値以上であることが好ましい。また、突出部74の高さH74は、LED素子20の厚さT20とバンプ電極33の高さH33と素子保持部73の厚さの合計値+5μm以下であることが特に好ましい。なお、
図7に示すバンプ電極33の高さH33の高さの定義、
図12に示すLED素子20の厚さT20の定義は上記した通りである。また、素子保持部73の厚さは、基板71の面71fから素子保持部73の素子保持面72fまでの距離として定義される。
【0074】
図16および
図17に示す変形例の場合、複数の素子保持部73は以下のように表現することができる。複数の素子保持部73のそれぞれは、基板71の面71fを基準面として、複数の突出部74のそれぞれよりも低く突出した素子支持部(素子保持部73の本体部分)と、素子支持部の先端に配置され、素子を保持することが可能な素子保持面72fと、を備えている。
【0075】
図18は、
図11に示す基板構造体のバンプ配列面側に表示される模様の一例を示す拡大平面図である。
図19は
図18に対する変形例を示す拡大平面図である。また、別の変形例として、
図18に示すように基板構造体SUB1の面SUBfに、突出部74の先端部74Tの輪郭のサイズを簡単に計測可能にするための計測用マークが形成されている場合がある。例えば
図18に示す例では、基板構造体SUB1の面SUBfには、突出部74の先端部74Tが接触する部分を中心として同心円状に2個の円形のマークが付されている。相対的に大きい円は、先端部74Tの輪郭の上限値を示す上限マークM1であり、相対的に小さい円は、先端部74Tの輪郭の下限値を示す下限マークM2である。
図18に示す例の場合、突出部74の先端部74Tの輪郭が、上限マークM1と下限マークM2との間に位置するように転写用基板70(
図11参照)の押付力を調整する。
【0076】
例えば
図19に示す例では、基板構造体SUB1の面SUBfには、突出部74の先端部74Tが接触する部分の中心で交差する2本の直線が形成されている。2本の直線の一方はX方向に沿って延び、他方はX方向に直交するY方向に延びている。また、X方向に延びる直線には、2個の上限マークM3と、2個の下限マークM4とが形成されている。同様に、Y方向に延びる直線には、2個の上限マークM3と、2個の下限マークM4とが形成されている。4個の上限マークM3から2本の直線の交点までの距離は、互いに等しい。また、4個の下限マークM4から2本の直線の交点までの距離は、互いに等しい。
図19に示す例の場合、突出部74の先端部74Tの輪郭が、上限マークM3と下限マークM4との間に位置するように転写用基板70(
図11参照)の押付力を調整する。
【0077】
図18や
図19に示す例によれば、突出部74の先端部74Tの輪郭の上限値と下限値とが容易に識別可能である。このため、
図11に示す転写用基板70と基板構造体SUB1との距離、言い換えれば、LED素子20の電極(アノード電極20EAおよびカソード電極20EK)とバンプ電極33との接触状態を簡単かつ高精度で調整することが可能である。
【0078】
以上、実施の形態および代表的な変形例について説明したが、上記した技術は、例示した変形例以外の種々の変形例に適用可能である。例えば、上記した変形例同士を組み合わせてもよい。
【0079】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、表示装置や表示装置が組み込まれた電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
5 制御回路
6 駆動回路
10 基板
10b,10f 面
11,12,13,14 無機絶縁層
14H 開口部
20 LED素子(発光素子,素子)
20EA アノード電極
20EK カソード電極
30Bt1,30Bt2 面
31,32,34,VL,VSL 配線
33 バンプ電極
35 回路部品
41 絶縁層
50 半導体層
70,70A,70B 転写用基板(素子転写用基板)
71 基板
71b,71f 面
72 弾性変形部
72b 基板接着面
72f 素子保持面
73 素子保持部
74 突出部
74T 先端部
75 ベース部
DA 表示領域
DSP1 表示装置(電子装置)
ED ドレイン電極
EG ゲート電極
ES ソース電極
GL 走査信号線
Gs 制御信号
H33,H74 高さ
LXP 配線交差部
LZ レーザ(レーザ光)
LZS レーザ光源
PFA 周辺領域
PIX,PIX1,PIX2 画素
PVS 基準電位(固定電位)
SUB1 基板構造体
SW スイッチング素子
T20 厚さ
Vsg 映像信号