(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046517
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240327BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240327BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240327BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240327BHJP
B60L 55/00 20190101ALI20240327BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20240327BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240327BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240327BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240327BHJP
G16Y 40/35 20200101ALI20240327BHJP
G16Y 20/30 20200101ALI20240327BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240327BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J50/10
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
H02J3/32
H02J13/00 311R
B60L55/00
B60L53/12
B60L58/12
B60M7/00 X
B60L5/00 B
G16Y40/35
G16Y20/30
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151951
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 和輝
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064DA03
5G064DA11
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA02
5G503FA06
5G503GB08
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125AC25
5H125BC24
5H125BE01
5H125CA18
5H125EE27
5H125EE41
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】非接触送電を許可する電動車両を適切に選択する。
【解決手段】互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、電動車両群から送電車両を選択する制御装置を有する。前記電動車両群を構成する各電動車両に搭載される蓄電デバイスは、最大蓄電量と最小蓄電量との間で蓄電量を増減させている。前記最大蓄電量を第1蓄電量とし、前記蓄電デバイスに蓄えられている現在蓄電量を第2蓄電量とし、前記最大蓄電量と前記最小蓄電量との間に設定される基準蓄電量を第3蓄電量とし、前記第2蓄電量から前記第3蓄電量を減算した余剰蓄電量を第4蓄電量とし、前記第1蓄電量に占める前記第4蓄電量の割合を蓄電余剰率とする。この場合に、前記制御装置は、前記電動車両群を構成する各電動車両について前記蓄電余剰率の高い順に順位付けを行い、前記蓄電余剰率の順位付けに基づいて前記電動車両群から前記送電車両を選択する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電区間を走行する電動車両から非接触送電を受ける受電設備に用いられ、前記送電区間の少なくとも一部が含まれる判定区間を走行する電動車両群から、非接触送電を許可する電動車両としての送電車両を選択する管理システムであって、
互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記電動車両群から前記送電車両を選択する制御装置、を有し、
前記電動車両群を構成する各電動車両に搭載される蓄電デバイスは、最大蓄電量と最小蓄電量との間で蓄電量を増減させており、
前記最大蓄電量を第1蓄電量とし、
前記蓄電デバイスに蓄えられている現在蓄電量を第2蓄電量とし、
前記最大蓄電量と前記最小蓄電量との間に設定される基準蓄電量を第3蓄電量とし、
前記第2蓄電量から前記第3蓄電量を減算した余剰蓄電量を第4蓄電量とし、
前記第1蓄電量に占める前記第4蓄電量の割合を蓄電余剰率とする場合に、
前記制御装置は、
前記電動車両群を構成する各電動車両について前記蓄電余剰率の高い順に順位付けを行い、前記蓄電余剰率の順位付けに基づいて前記電動車両群から前記送電車両を選択する、
管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の管理システムにおいて、
前記基準蓄電量は、目的地までの距離を走行可能な蓄電量である、
管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の管理システムにおいて、
前記基準蓄電量は、運転者によって設定される蓄電量である、
管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の管理システムにおいて、
前記電動車両に燃料タンクが搭載されている場合に、
前記燃料タンク内の燃料量から換算される換算蓄電量を第5蓄電量とし、
前記第2蓄電量と前記第5蓄電量との合計値から前記第3蓄電量を減算した余剰蓄電量を前記第4蓄電量とする、
管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触送電を許可する電動車両を選択する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭等の小規模需要家においても、太陽光発電、燃料電池および電気自動車等の分散型電源が導入されている(特許文献1参照)。また、IoT(Internet of Things)を活用することによって様々な分散型電源を統合制御することにより、複数の分散型電源を1つの仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)として機能させることが提案されている(特許文献2および3参照)。つまり、分散型電源である電気自動車等の電動車両から、他の需要家に向けて送電することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-186630号公報
【特許文献2】特開2021-16288号公報
【特許文献3】特開2021-191196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動車両から他の需要家に向けて送電する方法として、高速道路等の自動車専用道路に対して受電設備を設置するとともに、走行中の電動車両から受電設備に対して非接触送電を行うことが考えられる。しかしながら、非接触送電によって受電設備が受入可能な電力には限りがあることから、非接触送電を求める電動車両の全てに対して送電を許可することは困難であった。このため、非接触送電を求める複数の電動車両から、送電を許可する電動車両を適切に選択することが求められている。
【0005】
本発明の目的は、非接触送電を許可する電動車両を適切に選択することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の管理システムは、送電区間を走行する電動車両から非接触送電を受ける受電設備に用いられ、前記送電区間の少なくとも一部が含まれる判定区間を走行する電動車両群から、非接触送電を許可する電動車両としての送電車両を選択する管理システムであって、互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記電動車両群から前記送電車両を選択する制御装置、を有し、前記電動車両群を構成する各電動車両に搭載される蓄電デバイスは、最大蓄電量と最小蓄電量との間で蓄電量を増減させており、前記最大蓄電量を第1蓄電量とし、前記蓄電デバイスに蓄えられている現在蓄電量を第2蓄電量とし、前記最大蓄電量と前記最小蓄電量との間に設定される基準蓄電量を第3蓄電量とし、前記第2蓄電量から前記第3蓄電量を減算した余剰蓄電量を第4蓄電量とし、前記第1蓄電量に占める前記第4蓄電量の割合を蓄電余剰率とする場合に、前記制御装置は、前記電動車両群を構成する各電動車両について前記蓄電余剰率の高い順に順位付けを行い、前記蓄電余剰率の順位付けに基づいて前記電動車両群から前記送電車両を選択する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、制御装置は、電動車両群を構成する各電動車両について蓄電余剰率の高い順に順位付けを行い、蓄電余剰率の順位付けに基づいて電動車両群から送電車両を選択する。これにより、非接触送電を許可する電動車両を適切に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】電動車両から電力を受ける受電設備の一例を示す図である。
【
図3】受電コイル群、電源盤および電動車両の一例を示す図である。
【
図4】中央サーバの基本構造の一例を示す図である。
【
図5】各制御ユニットの基本構造の一例を示す図である。
【
図6】給電レーンおよび判定エリアの一例を示す図である。
【
図7】給電レーンおよび判定エリアの一例を示す図である。
【
図8】制御システムによる送電車両制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】制御システムによる送電車両制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】バッテリに設定される各種蓄電量の一例を示す図である。
【
図11】中央サーバによる上限台数設定制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】中央サーバによる送電車両選択制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】判定エリアにおける電動車両群の一例を示す図である。
【
図14】判定エリアにおける電動車両群およびその順位付けを示す図である。
【
図16】バッテリに設定される各種蓄電量の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
[仮想発電所]
図1は仮想発電所VPPの一例を示す図である。
図1に示すように、一般家庭や工場等の小規模需要家においても、太陽光発電10,11、燃料電池12および電動車両13等の分散型電源14~16が導入されている。これらの分散型電源14~16はIoT(Internet of Things)の活用によって統合制御されており、複数の分散型電源14~16が1つの仮想発電所VPP(Virtual Power Plant)として機能している。つまり、分散型電源14~16から電力系統18に対する電力供給は、電気事業者であるアグリゲータの中央サーバ(制御装置)17によって制御されている。すなわち、アグリゲータの中央サーバ17は、電力系統18における需給バランスの最適化を図るため、電力系統18に接続される発電事業者19の発電状況や需要家20の電力使用状況に基づき、分散型電源14~16から電力系統18への供給電力を制御している。なお、分散型電源14~16から電力系統18への電力供給に協力した需要家には、電力量に応じたインセンティブが与えられる。
【0011】
[受電設備]
図2は電動車両13から電力を受ける受電設備21の一例を示す図である。
図2に示すように、受電設備21は、給電レーンL1に埋設された複数の受電コイル22からなる受電コイル群23を有している。また、受電設備21は、受電コイル群23から電力系統18への電力供給を制御する電源盤24を有している。この受電設備21は中央サーバ17からなる管理システム26によって制御されており、中央サーバ17は通信ネットワーク25を介して電源盤24に接続されている。後述するように、電動車両13が給電レーンL1を走行する際には、電動車両13に搭載された送電コイル50の電磁界が制御され、送電コイル50から受電コイル22に非接触で電力が供給される。以下の説明では、送電コイル50から受電コイル22に対する電力供給、つまり電動車両13から受電設備21に対する電力供給を、非接触送電と記載する。なお、電動車両13から受電設備21に対する非接触送電は、ワイヤレス送電、非接触給電あるいはワイヤレス給電とも呼ばれている。
【0012】
図3は、受電コイル群23、電源盤24および電動車両13の一例を示す図である。
図3に示すように、給電レーンL1に埋設される受電コイル群23は、所定間隔を空けて配置される複数の受電コイル22と、それぞれの受電コイル22に接続される整流回路30と、を有している。また、電源盤24は、不揮発性メモリ等からなる記憶部31と、通信ネットワーク25に接続される通信部32と、整流回路30から出力された電力を電力系統18に供給する電力回路部33と、電力系統18に対する供給電力を監視する監視部34と、を有している。さらに、電源盤24は、通信部32や電力回路部33等を制御するため、プロセッサ35およびメインメモリ36等を備えた制御ユニット37を有している。メインメモリ36には所定のプログラムが格納されており、プロセッサ35によってプログラムが実行される。プロセッサ35とメインメモリ36とは、互いに通信可能に接続されている。なお、不揮発性メモリ等からなる記憶部31には、プログラムおよび各種データ等が記憶される。また、制御ユニット37に複数のプロセッサ35を組み込んでも良く、制御ユニット37に複数のメインメモリ36を組み込んでも良い。
【0013】
図4は中央サーバ17の基本構造の一例を示す図である。
図4に示すように、中央サーバ17は、プロセッサ40およびメインメモリ(メモリ)41等を備えた制御ユニット42を有している。メインメモリ41には所定のプログラムが格納されており、プロセッサ40によってプログラムが実行される。プロセッサ40とメインメモリ41とは、互いに通信可能に接続されている。また、中央サーバ17は、不揮発性メモリ等からなる記憶部43と、通信ネットワーク25に接続される通信部44と、を有している。なお、不揮発性メモリ等からなる記憶部43には、プログラムおよび各種データ等が記憶される。また、制御ユニット42に複数のプロセッサ40を組み込んでも良く、制御ユニット42に複数のメインメモリ41を組み込んでも良い。
【0014】
[電動車両]
図3に示すように、電気自動車等の電動車両13は、車体下部に取り付けられる送電コイル50と、送電コイル50に接続される送電回路51と、送電回路51に接続されるバッテリ(蓄電デバイス)52と、を有している。また、電動車両13は、車輪に連結される走行用モータ53と、走行用モータ53の通電状態を制御するインバータ54と、操舵機構のラックバー等を駆動するステアリングモータ55と、を有している。電動車両13に搭載される送電回路51等の各デバイスには、各デバイスを制御するための電子制御ユニットが接続されている。つまり、送電回路51には送電制御ユニット56が接続されており、バッテリ52にはバッテリ制御ユニット57が接続されている。また、インバータ54にはモータ制御ユニット58が接続されており、ステアリングモータ55には操舵制御ユニット59が接続されている。
【0015】
電動車両13から受電設備21に対する非接触送電を実行する際には、電動車両13が給電レーンL1の受電コイル22上を通過するタイミングに合わせて、電動車両13の送電回路51から送電コイル50に高周波電力が供給される。送電コイル50に高周波電力が供給されると、送電コイル50およびその近傍の電磁界が変動するとともに、この電磁界の変動が共鳴現象によって受電コイル22に伝達される。これにより、電動車両13の送電コイル50から給電レーンL1の受電コイル22に電力を供給することができ、電動車両13から受電設備21に非接触送電を行うことができる。
【0016】
電動車両13には、送電回路51や走行用モータ53等を制御するため、複数の電子制御ユニットからなる制御システム60が設けられている。制御システム60を構成する電子制御ユニットとして、前述した送電制御ユニット56、バッテリ制御ユニット57、モータ制御ユニット58および操舵制御ユニット59がある。また、制御システム60を構成する電子制御ユニットとして、各制御ユニット56~59に制御信号を出力する車両制御ユニット61がある。これらの制御ユニット56~59,61は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワーク62を介して互いに通信可能に接続されている。
【0017】
図5は各制御ユニット56~59,61の基本構造の一例を示す図である。
図5に示すように、各制御ユニット56~59,61は、プロセッサ70およびメインメモリ71等が組み込まれたマイクロコントローラ72を有している。メインメモリ71には所定のプログラムが格納されており、プロセッサ70によってプログラムが実行される。プロセッサ70とメインメモリ71とは、互いに通信可能に接続されている。なお、マイクロコントローラ72に複数のプロセッサ70を組み込んでも良く、マイクロコントローラ72に複数のメインメモリ71を組み込んでも良い。
【0018】
また、各制御ユニット56~59,61には、入力変換回路73、駆動回路74、通信回路75および外部メモリ76等が設けられている。入力変換回路73は、各種センサから入力される信号を、マイクロコントローラ72に入力可能な信号に変換する。駆動回路74は、マイクロコントローラ72から出力される信号に基づき、前述した送電回路51等の各種デバイスに対する駆動信号を生成する。通信回路75は、マイクロコントローラ72から出力される信号を、他の制御ユニットに向けた通信信号に変換する。また、通信回路75は、他の制御ユニットから受信した通信信号を、マイクロコントローラ72に入力可能な信号に変換する。さらに、不揮発性メモリ等からなる外部メモリ76には、プログラムおよび各種データ等が記憶される。
【0019】
車両制御ユニット61は、各種制御ユニット56~59や後述する各種センサからの入力情報に基づき、送電回路51や走行用モータ53等の作動目標を設定する。そして、送電回路51や走行用モータ53等の作動目標に応じた制御信号を生成し、これらの制御信号を各種制御ユニットに対して出力する。車両制御ユニット61に接続されるセンサとして、電動車両13の走行速度である車速を検出する車速センサ80があり、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ81があり、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ82がある。また、車両制御ユニット61に接続されるセンサとして、車両周囲の障害物等を検出するレーダユニット83があり、車両周囲を撮像するカメラユニット84がある。さらに、車両制御ユニット61には、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信するGPS受信機85が接続されており、通信ネットワーク25に接続される通信部86が接続されている。さらに、車両制御ユニット61には、後述する非接触送電の諸条件を設定する際に運転者に操作される設定デバイス87が接続されており、制御システム60の起動時に運転者に操作されるスタートスイッチ88が接続されている。
【0020】
[給電レーンおよび判定エリア]
図6および
図7は、給電レーンL1および判定エリアX1の一例を示す図である。
図6に示すように、高速道路等の自動車専用道路には、3つの走行レーンLa,Lb,Lcが設けられている。
図6にハッチングで示すように、走行レーンLaには所定距離に亘って受電コイル群23が埋設された給電レーン(送電区間)L1が設置されている。また、
図6にハッチングで示すように、非接触送電を許可する電動車両13を判定するため、給電レーンL1には判定エリア(判定区間)X1が設定されている。
図6および
図7に示すように、判定エリアX1の開始地点Saは、給電レーンL1の開始地点Sbよりも所定距離αで先行しており、判定エリアX1の終了地点Faは、給電レーンL1の終了地点Fbよりも所定距離αで先行している。
【0021】
なお、図示する例では、判定エリアX1の開始地点Saが給電レーンL1の開始地点Sbよりも先行しているが、これに限られることはなく、判定エリアX1の開始地点Saが給電レーンL1の開始地点Sbに対して一致しても良い。また、判定エリアX1の終了地点Faが給電レーンL1の終了地点Fbよりも先行しているが、これに限られることはなく、判定エリアX1の終了地点Faが給電レーンL1の終了地点Fbに対して一致しても良い。つまり、判定エリアX1を設定する際には、判定エリアX1に給電レーンL1の少なくとも一部が含まれていれば良い。
【0022】
[送電車両制御]
続いて、制御システム60によって実行される送電車両制御について説明する。
図8および
図9は制御システム60による送電車両制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図8および
図9に示したフローチャートにおいては、符号Aの箇所で互いに接続されるとともに、符号Bの箇所で互いに接続されている。
図8および
図9のフローチャートに示される各ステップには、制御システム60を構成するプロセッサ70によって実行される処理が示されている。また、
図8および
図9に示される送電車両制御は、判定エリアX1に進入する各電動車両13の制御システム60によって所定周期毎に実行される制御である。
【0023】
図3に示すように、車両制御ユニット61には、非接触送電の条件を設定するため、運転者に操作される設定デバイス87が接続されている。この設定デバイス87を用いて設定される非接触送電の各種条件として、送電要求の有無つまり非接触送電を実行するか否かの設定があり、バッテリ52の基準蓄電量(第3蓄電量)S3の設定がある。後述するように、バッテリ52の基準蓄電量S3とは、非接触送電の実行後においても確保される蓄電量の下限値である。
【0024】
図8に示すように、ステップS10では、非接触送電に関する要求の有無が判定される。ステップS10において、送電要求が有ると判定された場合、つまり運転者が非接触送電の実行を選択していた場合には、ステップS11に進み、電動車両13が判定エリアX1内を走行中であるか否かが判定される。ステップS11において、電動車両13が判定エリアX1内を走行していると判定された場合には、ステップS12に進み、電動車両13の制御システム60から中央サーバ17に対して各種判定情報が送信される。中央サーバ17に送信される判定情報として、電動車両13の識別情報である車両IDがあり、電動車両13の走行位置がある。なお、車両制御ユニット61は、GPS衛星から送信される信号に基づき走行位置を算出する。
【0025】
また、中央サーバ17に送信される判定情報として、電動車両13に搭載されるバッテリ52の最大蓄電量S1、現在蓄電量S2および基準蓄電量S3がある。ここで、
図10はバッテリ52に設定される各種蓄電量の一例を示す図である。
図10に示すように、バッテリ52には最大蓄電量(第1蓄電量)S1aと最小蓄電量S1bとが設定されており、バッテリ52の蓄電量は最大蓄電量S1aと最小蓄電量S1bとの間で増減されている。つまり、バッテリ52を充電する際には、最大蓄電量S1aまで蓄電量の増加が許容される一方、バッテリ52を放電させる際には、最小蓄電量S1bまで蓄電量の減少が許容される。
【0026】
また、バッテリ52の現在蓄電量(第2蓄電量)S2は、バッテリ52に蓄えられている現在の蓄電量である。この現在蓄電量S2は、バッテリ52の充放電電流や開放電圧等に基づきバッテリ制御ユニット57によって算出可能である。さらに、最大蓄電量S1aと最小蓄電量S1bとの間には、基準蓄電量(第3蓄電量)S3が設定されている。前述したように、基準蓄電量S3とは、非接触送電の実行後においても確保される蓄電量の下限値である。この基準蓄電量S3は、運転者が設定デバイス87を操作することで設定される任意の蓄電量であっても良く、所定の目的地までの距離を走行可能な蓄電量であっても良い。また、基準蓄電量S3として、目的地までの距離を走行可能な蓄電量が設定される場合には、車両制御ユニット61によって、目的地までの距離および直近電費から基準蓄電量S3が算出される。なお、基準蓄電量S3を設定する際の目的地とは、例えば運転者によってナビゲーション装置に入力される目的地である。
【0027】
ステップS12において、電動車両13から中央サーバ17に対して各種判定情報が送信されると、ステップS13に進み、非接触送電に関する許可信号の有無が判定される。ステップS13において、中央サーバ17からの許可信号を電動車両13が受信していない場合、つまり中央サーバ17からの不許可信号を電動車両13が受信している場合には、電動車両13を給電レーンL1から退避させる必要があるため、ステップS14に進み、電動車両13が給電レーンL1を走行中であるか否かが判定される。ステップS14において、電動車両13が給電レーンL1を走行していると判定された場合には、ステップS15に進み、運転者に対して走行レーンLbへの車線変更が指示される。そして、ステップS14において、電動車両13が給電レーンL1を走行していないと判定された場合には、ステップS11に戻り、制御システム60によって再び各ステップが実行される。
【0028】
一方、ステップS13において、中央サーバ17からの許可信号を電動車両13が受信している場合には、電動車両13を給電レーンL1内で走行させる必要があるため、ステップS16に進み、電動車両13が給電レーンL1を走行中であるか否かが判定される。ステップS16において、電動車両13が給電レーンL1を走行していないと判定された場合には、ステップS17に進み、運転者に対して給電レーンL1への車線変更が指示される。そして、ステップS16において、電動車両13が給電レーンL1を走行していると判定された場合には、
図9のステップS18に進む。なお、電動車両13を給電レーンL1や走行レーンLbに車線変更させる場合には、自動運転制御によって電動車両13を車線変更させても良い。車両制御ユニット61は、レーダユニット83やカメラユニット84を用いて電動車両13の周囲を監視しながら、インバータ54やステアリングモータ55等を制御して車線変更を行うことも可能である。
【0029】
図9に示すように、ステップS18においては、中央サーバ17から送信される非接触送電時の目標車速に基づき、インバータ54等を制御することで電動車両13の車速が目標車速に向けて調整される。続くステップS19では、電動車両13の送電回路51から送電コイル50に高周波電力を供給することにより、送電コイル50から受電コイル22に対する非接触送電が実行される。このように、非接触送電が実行されると、ステップS20に進み、給電レーンL1に対応する判定エリアX1内での走行が継続されているか否かが判定される。ステップS20において、電動車両13が判定エリアX1内を走行していないと判定された場合、つまり判定エリアX1の終了地点Faに到達したと判定された場合には、ステップS21に進み、電動車両13から受電設備21に対する非接触送電が停止され、ルーチンを抜ける。
【0030】
一方、ステップS20において、電動車両13が判定エリアX1内を走行していると判定された場合、つまり判定エリアX1の終了地点Faに到達していないと判定された場合には、ステップS22に進み、電動車両13の制御システム60から中央サーバ17に対して各種判定情報が送信され、ステップS23に進み、非接触送電に関する許可信号の有無が判定される。ステップS23において、中央サーバ17からの許可信号を電動車両13が受信していない場合、つまり中央サーバ17からの不許可信号を電動車両13が受信している場合には、ステップS24に進み、電動車両13から受電設備21に対する非接触送電が停止され、
図8のステップS14に進む。この場合には、電動車両13を給電レーンL1から退避させる必要があるため、ステップS14からステップS15に進み、運転者に対して走行レーンLbへの車線変更が指示される。一方、ステップS23において、中央サーバ17からの許可信号を電動車両13が受信している場合には、ステップS18に進み、電動車両13の車速が目標車速に向けて調整され、ステップS19に進み、電動車両13から受電設備21に対する非接触送電が継続される。
【0031】
[上限台数設定制御および送電車両選択制御]
続いて、中央サーバ17によって実行される上限台数設定制御および送電車両選択制御について説明する。
図11は中央サーバ17による上限台数設定制御の実行手順の一例を示すフローチャートであり、
図12は中央サーバ17による送電車両選択制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図11および
図12のフローチャートに示される各ステップには、中央サーバ17を構成するプロセッサ40によって実行される処理が示されている。なお、
図11および
図12に示される上限台数設定制御および送電車両選択制御は、中央サーバ17によって所定周期で実行される制御である。
【0032】
<上限台数設定制御>
図11に示すように、ステップS30では、中央サーバ17から各電動車両13に指示される目標車速と、給電レーンL1の全長距離とに基づいて、給電レーンL1内で送電可能な第1上限台数N1が算出される。つまり、目標車速に基づいて車間距離を設定し、全長距離を車間距離で除算することにより、給電レーンL1における第1上限台数N1が算出される。例えば、目標車速が低く設定される場合には、電動車両13間の車間距離を短く設定することが可能であるため、第1上限台数N1が多く算出される。一方、目標車速が高く設定される場合には、電動車両13間の車間距離を長く設定する必要があるため、第1上限台数N1が少なく算出される。すなわち、中央サーバ17によって算出される第1上限台数N1は、目標車速が低下するにつれて増加する一方、目標車速が上昇するにつれて減少する。なお、中央サーバ17から各電動車両13に指示される目標車速は、非接触送電における電力送電効率の観点から設定されている。また、路面状況によって安全な車間距離は変化することから、中央サーバ17から各電動車両13に指示される目標車速を、路面状況を変化させる要因である天候に基づき設定しても良い。
【0033】
ステップS31では、車両1台当たりの送電電力である車両送電電力と、受電設備21が受入可能な上限電力であるレーン受入電力とに基づいて、給電レーンL1内で送電可能な第2上限台数N2が算出される。つまり、レーン受入電力を車両送電電力で除算することにより、給電レーンL1における第2上限台数N2が算出される。例えば、受電設備21から電力系統18に供給可能な電力が増加し、給電レーンL1のレーン受入電力が増加する場合には、第2上限台数N2が多く算出される。一方、受電設備21から電力系統18に供給可能な電力が減少し、給電レーンL1のレーン受入電力が減少する場合には、第2上限台数N2が少なく算出される。そして、続くステップS32では、第1上限台数N1と第2上限台数N2とを比較判定し、少ない方の台数が上限台数Nmとして選択される。なお、レーン受入電力の大きさは、電力系統18における需給バランスに基づき中央サーバ17によって設定される。
【0034】
<送電車両選択制御>
図12に示すように、ステップS40では、上限台数設定制御によって設定された上限台数Nmが読み込まれる。ステップS41では、判定エリアX1内に進入した電動車両13から送信される走行位置に基づいて、判定エリアX1内を走行する複数の電動車両13からなる電動車両群90が特定される。つまり、判定エリアX1内を走行する各電動車両13の車両IDが特定される。続いて、ステップS42では、特定された電動車両群90の判定情報(最大蓄電量S1a,現在蓄電量S2,基準蓄電量S3)が読み込まれる。続くステップS43では、以下の式(1)に従い、最大蓄電量S1a、現在蓄電量S2および基準蓄電量S3に基づいて蓄電余剰率Rsが算出される。つまり、
図10に示すように、現在蓄電量S2から基準蓄電量S3を減算した蓄電量を余剰蓄電量(第4蓄電量)S4としたとき、最大蓄電量S1aに占める余剰蓄電量S4の割合が蓄電余剰率Rsとして算出される。
Rs=(S2-S3)/S1a ・・(1)
【0035】
次いで、ステップS44では、電動車両群90を構成する各電動車両13について、蓄電余剰率Rsの高い順に優先順位を設定する。続くステップS45では、上限台数Nmおよび優先順位に基づいて、非接触送電を許可する電動車両13である許可車両(送電車両)と、非接触送電を許可しない電動車両13である不許可車両とに、電動車両群90の各電動車両13が分けられる。つまり、上限台数Nmに到達するまで、優先順位に従って電動車両群90から許可車両が選択される。このように、判定エリアX1内の電動車両群90から許可車両が選択されると、ステップS46に進み、許可車両として選択された電動車両13に対し、中央サーバ17から許可信号および目標車速が送信される。また、ステップS47に進み、不許可車両として選択された電動車両13に対し、中央サーバ17から不許可信号が送信される。
【0036】
[送電車両選択制御による電動車両の順位付け]
図13は判定エリアX1における電動車両群90の一例を示す図であり、
図14は判定エリアX1における電動車両群90およびその順位付けを示す図である。なお、
図13および
図14に示す例においては、上限台数Nmが「8台」に設定されている。また、
図13および
図14に示す例においては、電動車両13に符号「ev01~15」を付して説明する。
【0037】
図13に示すように、判定エリアX1内では、動車両ev01~15からなる電動車両群90が走行している。この場合には、最大蓄電量S1a、現在蓄電量S2および基準蓄電量S3が、各電動車両ev01~ev15から中央サーバ17に送信される。その後、
図14に示すように、最大蓄電量S1a、現在蓄電量S2および基準蓄電量S3に基づき蓄電余剰率Rsが算出され、蓄電余剰率Rsの高い順に順位付けが行われる。図示する例では、判定エリアX1内における許可車両の上限台数Nmが「8台」に設定されることから、非接触送電が許可される許可車両として、8台の電動車両ev05,ev01,ev06,ev10,ev02,ev12,ev09,ev13が選択される。
【0038】
これまで説明したように、中央サーバ17は、最大蓄電量S1a、現在蓄電量S2および基準蓄電量S3に基づき蓄電余剰率Rsを算出し、この蓄電余剰率Rsの高い順に電動車両13の順位付けを行っている。これにより、バッテリ容量の大きな電動車両13、つまり最大蓄電量S1aの大きな電動車両13を優先することなく、非接触送電を許可する電動車両13を適切に選択することができる。つまり、非接触送電はインセンティブを伴うことから、非接触送電を希望する運転者が多いことも想定される。このように、多くの電動車両13から非接触送電を許可する送電車両を選択する場合であっても、バッテリ容量の大きな電動車両13が優先されることなく、送電車両を公平に選択することが可能である。しかも、非接触送電後にも確保すべき基準蓄電量S3を用い、蓄電余剰率Rsを算出するようにしたので、非接触送電が行われた場合であっても現在蓄電量S2の過度な低下を防止することができる。
【0039】
[燃料タンクを備えた電動車両の蓄電余剰率]
非接触送電が可能な電動車両13としては、
図3に示した構造の電動車両に限られることはない。例えば、非接触送電が可能な電動車両13として、エンジンおよび電動モータを備えたハイブリッド車両があり、燃料電池を備えた燃料電池車両がある。ハイブリッド車両においてはガソリン等の燃料を蓄える燃料タンクが搭載されており、燃料電池車両においては水素を蓄える水素タンク(燃料タンク)が搭載されている。このように、燃料タンクを備えたハイブリッド車両等においては、バッテリ52以外にもエネルギー源を有していることから、蓄電余剰率Rsを算出する際には、燃料タンクに蓄えられている燃料を蓄電量に換算することが可能である。
【0040】
ここで、
図15はハイブリッド車両100の一例を示す図であり、
図16はバッテリ52に設定される各種蓄電量の一例を示す図である。なお、
図15において、
図3に示す部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図15に示すように、ハイブリッド車両(電動車両)100には、エンジン101および電動モータ102を備えたパワーユニット103が搭載されている。また、ハイブリッド車両100には、電動モータ102に接続されるバッテリ52が搭載されるとともに、ガソリン等の燃料を貯留する燃料タンク104が搭載されている。また、燃料タンク104には液面高さを計測するレベルセンサ105が設けられており、制御システム60はレベルセンサ105の検出信号に基づいて燃料タンク104内の燃料量を算出する。また、制御システム60は、燃料タンク104内の燃料量に所定係数を乗じることにより、燃料量を蓄電量に換算した換算蓄電量(第5蓄電量)S5を算出する。
【0041】
このようなハイブリッド車両100においては、以下の式(2)に従い、最大蓄電量S1a、現在蓄電量S2、換算蓄電量S5および基準蓄電量S3に基づいて蓄電余剰率Rsが算出される。つまり、
図16に示すように、現在蓄電量S2と換算蓄電量S5との合計値から基準蓄電量S3を減算した蓄電量を余剰蓄電量(第4蓄電量)S4としたとき、最大蓄電量S1aに占める余剰蓄電量S4の割合が蓄電余剰率Rsとして算出される。このように、燃料タンク104内の燃料量から換算された換算蓄電量S5を用い、蓄電余剰率Rsを算出するようにしたので、電動車両群90にハイブリッド車両100等が含まれていた場合であっても非接触送電を許可する電動車両13を適切に選択することができる。
Rs=(S2+S5-S3)/S1a ・・(2)
【0042】
前述したように、燃料タンク104を備えた電動車両100においては、燃料タンク104内の燃料量を蓄電量に換算した上で、蓄電余剰率Rsを算出することが可能であるが、これに限られることはない。つまり、燃料タンク104を備えた電動車両100であっても、燃料量を蓄電量に換算することなく、前述した式(1)に基づいて、蓄電余剰率Rsを算出しても良いことはいうまでもない。
【0043】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、1台の中央サーバ17を用いて、上限台数設定制御および送電車両選択制御の各ステップを実行しているが、これに限られることはなく、複数台のサーバを用いて、上限台数設定制御および送電車両選択制御の各ステップを実行してもよい。また、前述の説明では、各電動車両13において蓄電余剰率Rsを算出しているが、これに限られることはなく、例えば、中央サーバ17において蓄電余剰率Rsを算出しても良い。
【0044】
前述の説明では、第1上限台数N1と第2上限台数N2とを比較判定し、少ない方の台数が上限台数Nmとして選択しているが、これに限られることはなく、第1上限台数N1だけを用いて上限台数Nmを設定しても良く、第2上限台数N2だけを用いて上限台数Nmを設定しても良い。図示する受電設備21は、磁界共鳴方式の受電設備21であるが、これに限られることはなく、非接触方式の受電設備であれば、如何なる方式の受電設備を採用しても良い。例えば、電磁誘導方式の受電設備を採用しても良く、マイクロ波方式の受電設備を採用しても良い。
【符号の説明】
【0045】
13 電動車両
17 中央サーバ(制御装置)
21 受電設備
26 管理システム
40 プロセッサ
41 メインメモリ(メモリ)
52 バッテリ(蓄電デバイス)
90 電動車両群
100 ハイブリッド車両(電動車両)
104 燃料タンク
L1 給電レーン(送電区間)
X1 判定エリア(判定区間)
S1a 最大蓄電量(第1蓄電量)
S1b 最小蓄電量
S2 現在蓄電量(第2蓄電量)
S3 基準蓄電量(第3蓄電量)
S4 余剰蓄電量(第4蓄電量)
S5 換算蓄電量(第5蓄電量)
Rs 蓄電余剰率