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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004653
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】物理量センサー及び慣性計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20240110BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
G01P15/08 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104368
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 悟
(57)【要約】
【課題】質量分布の不均衡に伴う不具合を回避できる物理量センサー、慣性計測装置の提供。
【解決手段】物理量センサー1は固定部40A、40Bと支持梁42A、42Bと可動体MBと第1固定電極群10A、10Bとを含む。可動体MBは支持梁42A、42Bの他端に接続され、第1固定電極群10A、10Bは基板2に設けられ、支持梁42A、42Bの第1方向DR1に配置される。可動体MBは、第1連結部30A、30Bと第1基部23と第1可動電極群20A、20Bを有する。第1可動電極群20A、20Bは、第1固定電極群10A、10Bと第2方向DR2において対向する。そして、可動体MBの第3方向DR3での重心位置の高さをhmとし、支持梁42A、42Bの回転中心の第3方向DR3での高さをhrとしたとき、hm=hrである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3つの方向を第1方向、第2方向及び第3方向としたとき、前記第3方向での物理量を検出する物理量センサーであって、
基板に固定された固定部と、
前記固定部に一端が接続され、前記第2方向に沿って設けられる支持梁と、
前記支持梁の他端に接続された可動体と、
前記基板に設けられ、前記支持梁の前記第1方向に配置される第1固定電極群と、
を含み、
前記可動体は、
前記支持梁の他端に接続され、前記支持梁から前記第1方向に延びる第1連結部と、
前記第1連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる第1基部と、
前記第1基部に設けられ、前記第1固定電極群と前記第2方向において対向する第1可動電極群と、
を有し、
前記可動体の前記第3方向での重心位置の高さをhmとし、前記支持梁の回転中心の前記第3方向での高さをhrとしたとき、hm=hrであることを特徴とする物理量センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の物理量センサーにおいて、
前記基板に設けられ、前記支持梁の前記第1方向に配置される第2固定電極群を含み、前記可動体は、
前記支持梁の他端に接続され、前記支持梁から前記第1方向に延びる第2連結部と、
前記第2連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる第2基部と、
前記第2基部に設けられ、前記第2固定電極群と前記第2方向において対向する第2可動電極群と、
を含むことを特徴とする物理量センサー。
【請求項3】
請求項2に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極群と前記第2可動電極群は、前記第1連結部と前記第2連結部の間に前記第2方向に沿って配置されることを特徴とする物理量センサー。
【請求項4】
請求項2に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極群の前記第3方向での重心位置の高さをhm1とし、前記第2可動電極群の前記第3方向での重心位置の高さをhm2としたとき、
hm2>hr>hm1であることを特徴とする物理量センサー。
【請求項5】
請求項4に記載の物理量センサーにおいて、
前記第2可動電極群の前記第3方向での厚さは、前記第1可動電極群の前記第3方向での厚さより大きいことを特徴とする物理量センサー。
【請求項6】
請求項5に記載の物理量センサーにおいて、
初期状態において前記第1可動電極群の前記第3方向での裏面位置と、前記第2可動電極群の前記第3方向での裏面位置とが一致していることを特徴とする物理量センサー。
【請求項7】
請求項4に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極群の前記第3方向での厚さと前記第2可動電極群の前記第3方向での厚さが等しいことを特徴とする物理量センサー。
【請求項8】
請求項7に記載の物理量センサーにおいて、
初期状態において前記第1可動電極群の前記第3方向での裏面位置と、前記第2可動電極群の前記第3方向での裏面位置とが一致していないことを特徴とする物理量センサー。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記支持梁は、前記第2方向を回転軸として捻れる捻れバネであることを特徴とする物理量センサー。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の物理量センサーと、
前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、
を含むことを特徴とする慣性計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサー及び慣性計測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、Z方向の加速度を検出する物理量センサーが開示されている。当該物理量センサーにおいて、複数の第1電極の1つの第1方向に沿う第1電極の長さは、第1導電部の第1方向に沿う第1導電部の長さよりも短いことが開示されている。また当該物理量センサーにおいて、複数の第2電極の1つの第1方向に沿う第2電極の長さは、第2導電部の第1方向に沿う第2導電部の長さよりも短いことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-032819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された物理量センサーでは、検出対象であるZ軸方向ではない櫛歯電極長方向へ加速度が印加されると、検出軸方向に加速度が印加されたときと同じシーソー動作が発生してしまい、他軸感度が増加するという不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、互いに直交する3つの方向を第1方向、第2方向及び第3方向としたとき、前記第3方向での物理量を検出する物理量センサーであって、基板に固定された固定部と、前記固定部に一端が接続され、前記第2方向に沿って設けられる支持梁と、前記支持梁の他端に接続された可動体と、前記基板に設けられ、前記支持梁の前記第1方向に配置される第1固定電極群と、を含み、前記可動体は、前記支持梁の他端に接続され、前記支持梁から前記第1方向に延びる第1連結部と、前記第1連結部に接続され、前記第2方向に沿って設けられる第1基部と、前記第1基部に設けられ、前記第1固定電極群と前記第2方向において対向する第1可動電極群と、を有し、前記可動体の前記第3方向での重心位置の高さをhmとし、前記支持梁の回転中心の前記第3方向での高さをhrとしたとき、hm=hrである物理量センサーに関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、上記に記載の物理量センサーと、前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、を含む慣性計測装置に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の物理量センサーの構成例。
図2】本実施形態の物理量センサーの斜視図。
図3】検出部の斜視図。
図4】検出部の動作説明図。
図5】本実施形態における各構成部の重心の位置関係を説明する図。
図6】本実施形態を適用しない場合における可動体の重心と慣性力の関係を示す断面概略図。
図7】本実施形態を適用した場合における可動体の重心と慣性力の関係を示す断面概略図。
図8】本実施形態の第1詳細例の平面図。
図9】本実施形態の第1詳細例の斜視図。
図10】本実施形態の第1詳細例における検出部の斜視図。
図11】本実施形態の第1詳細例における検出部の動作説明図。
図12】本実施形態の第2詳細例の平面図。
図13】本実施形態の第2詳細例の斜視図。
図14】本実施形態の第3詳細例における検出部の斜視図。
図15】本実施形態の第3詳細例における検出部の動作説明図。
図16】本実施形態の第3詳細例における各構成部の重心の位置関係を説明する図。
図17】第3詳細例における可動体の重心と慣性力の関係を示す断面概略図。
図18】第3詳細例における固定電極と可動電極のYZ断面における配置パターンの例。
図19】物理量センサー有する慣性計測装置の概略構成を示す分解斜視図。
図20】物理量センサーの回路基板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.物理量センサー
本実施形態の物理量センサー1について、鉛直方向の加速度を検出する加速度センサーを一例として挙げて説明する。図1は、本実施形態の物理量センサー1の基板2に直交する方向での平面視における平面図である。物理量センサー1は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスであり、例えば慣性センサーである。
【0010】
なお、図1や後述の図2図18では、説明の便宜のために各部材の寸法や部材間の間隔等は模式的に示されており、また、全ての構成要素を示してはいない。例えば電極配線、電極端子等については図示を省略している。また以下では、物理量センサー1が検出する物理量が加速度である場合を主に例にとって説明するが、物理量は加速度に限定されず、速度、圧力、変位、姿勢、角速度又は重力等の他の物理量であってもよく、物理量センサー1は圧力センサー又はMEMSスイッチ等として用いられるものであってもよい。また図1において互いに直交する方向を第1方向DR1、第2方向DR2、第3方向DR3としている。第1方向DR1、第2方向DR2、第3方向DR3は、各々、例えばX軸方向、Y軸方向、Z軸方向であるが、これに限定されない。例えばZ軸方向に対応する第3方向DR3は、例えば物理量センサー1の基板2に直交する方向であり、例えば鉛直方向である。そして、第3方向DR3と反対の方向を第5方向DR5とする。X軸方向に対応する第1方向DR1、Y軸方向に対応する第2方向DR2は、第3方向DR3に直交する方向であり、第1方向DR1及び第2方向DR2に沿った面であるXY平面は例えば水平面に沿っている。そして、第1方向DR1の反対の方向を第4方向DR4とし、第4方向は、例えば-X軸方向である。なお「直交」とは、90°で交わっているものの他、90°から若干傾いた角度で交わっている場合も含むものとする。
【0011】
基板2は、例えば半導体シリコンで構成されたシリコン基板又はホウケイ酸ガラスなどのガラス材料で構成されたガラス基板などである。但し基板2の構成材料としては、特に限定されず、石英基板又はSOI(Silicon On Insulator)基板等を用いてもよい。
【0012】
図1に示すように本実施形態の物理量センサー1は、固定部40A、40B、支持梁42A、42B、可動体MB及び第1固定電極群10A、10Bを含む。可動体MBは、第1連結部30A、30B、第1基部23及び第1可動電極群20A、20Bを含む。第1固定電極群10Aは複数の第1固定電極11Aを有し、第1固定電極群10Bは複数の第1固定電極11Bを有する。第1可動電極群20Aは複数の第1可動電極21Aを有し、第1可動電極群20Bは複数の第1可動電極21Bを有する。
【0013】
そして、図1において破線の枠で示すように、物理量センサー1は検出部Z1と検出部Z2を有し、各検出部でZ軸方向である第3方向DR3に沿う方向での加速度等の物理量を検出する。検出部Z1とZ2は、平面視において、それぞれ第1基部23の第1方向DR1側と第4方向DR4側に設けられている。第1基部23の第4方向DR4側に設けられる検出部Z1は、第1固定電極群10A、第1可動電極群20Aを含む。また第1基部23の第1方向DR1側に設けられる検出部Z2は、第1固定電極群10Bと第1可動電極群20Bを含む。
【0014】
図2は本実施形態の物理量センサー1の斜視図である。固定部40A、40Bは、図2に示すように基板2に設けられている。固定部40Aは、支持梁42Aの一端を基板2に固定し、可動体MBの第1連結部30Aと連結されている。また固定部40Bは、支持梁42Bの一端に接続され、可動体MBの第1連結部30Bと連結されている。このようにして固定部40A、40Bは、支持梁42A、42Bを介して可動体MBを基板2に連結される。そして、固定部40A、40Bは後述の図4で説明する可動体MBのシーソー運動におけるアンカーとしての役割を担う。
【0015】
支持梁42A、42Bは、可動体MBのシーソー運動における復元力を与える。図2に示すように、支持梁42A、42Bは、それぞれの一端が固定部40A、40Bの一部に接続されている。そして、支持梁42A、42Bの各々の他端は、それぞれ第1連結部30A、30Bに接続されている。このように支持梁42A、42Bは、固定部40A、40Bと可動体MBとを連結させている。支持梁42A、42Bは、例えば捻れバネである。図1に示すように、支持梁42A、42Bは平面視において、例えば第2方向DR2を長手方向になるように設けられる。また支持梁42A、42Bは第1方向DR1での厚みが薄くなっており、可動体MBの動きに対して撓むようになっている。そして、第2方向DR2である例えばY軸上で捻れることで、可動体MBのシーソー運動における復元力をもたらす。このように本実施形態では、支持梁42A、42Bは、第2方向DR2を回転軸として捻れる捻れバネである。このようにすれば、可動体MBは第2方向DR2を回転軸として揺動運動をすることができる。
【0016】
可動体MBは、例えば第2方向DR2に沿った回転軸の回りに揺動する。即ち、可動体MBは、上述した支持梁42A、42Bの捻れを第2方向DR2の回りの回転運動における復元力としてシーソー運動を行う。そして、可動体MBの第1可動電極群20A、20Bをプローブ電極として物理量の検出が行われる。
【0017】
第1連結部30Aは、支持梁42Aの固定部40Aと接続されていない他端と第1基部23を連結している。第1連結部30Bは、支持梁42Bの固定部40Bと接続されていない他端と第1基部23を連結している。このように第1連結部30A、30Bは、可動体MBの第1可動電極群20A、20Bをシーソー運動の回転軸から一定の距離に位置するように連結する。
【0018】
第1基部23は、第1連結部30Aと第1連結部30Bとを接続し、また可動体MBに設けられる第1可動電極群20A、20Bを支持する基部になっている。具体的には、第1基部23は、固定部40A、40Bにそれぞれ連結され、第1連結部30A、30Bを接続して可動体が一体としてシーソー運動ができるようにしている。そして、第1可動電極群20Aは、第1基部23から第4方向DR4側に延出する複数の第1可動電極21Aを含むようにして構成され、第1可動電極群20Bは、第1基部23から第1方向DR1側に延出する複数の第1可動電極21Bを含むようにして構成される。
【0019】
第1可動電極群20A、20B、及び第1固定電極群10A、10Bは、物理量を検出するプローブである。上述した通り、第1可動電極群20A、20Bは、各々、第1基部23の第4方向DR4側と第1方向DR1側に設けられている。第1固定電極群10A、10Bは、固定部により基板2に固定されている。そして、第1固定電極群10A、10Bにおいて、複数の第1固定電極11A、11Bは例えば第1方向DR1に沿って延在するように設けられている。第1固定電極11A、11Bは、それぞれ櫛歯状に並んで設けられる電極群を成している。なお、第1固定電極11A、11Bの数は図1に示す4本に限られず、任意に設けることができる。第1可動電極21A、21Bも同様に電極の数は任意に設けることができる。
【0020】
図1に示すように、第1可動電極群20Aの第1可動電極21Aは、第1固定電極群10Aの第1固定電極11Aと第2方向DR2において対向するように設けられている。また第1可動電極群20Bの第1可動電極21Bも、同様に第1固定電極群10Bの第1固定電極11Bと第2方向DR2で対向するように設けられている。このように第1可動電極21Aと第1固定電極11Aが対向して設けられる部分が検出部Z1になる。また第1可動電極21Bと第1固定電極11Bが対向して設けられる部分が検出部Z2になる。
【0021】
図3は、本実施形態の検出部Z1、Z2の電極の構造を斜視図で示した図である。図3に示すように、検出部Z1において、第1固定電極11Aと第1可動電極21Aは、第3方向DR3での厚みが異なっている。また検出部Z2においても第1固定電極11Bと第1可動電極21Bは、第3方向DR3での厚みが異なっている。具体的には、検出部Z1では第1可動電極21Aの第3方向DR3での厚さが第1固定電極11Aの第3方向DR3での厚さよりも厚くなっている。一方、検出部Z2では、第1可動電極21Bの第3方向DR3での厚さが、第1固定電極11Bの第3方向DR3での厚さよりも薄くなっている。そして、検出部Z1の第1固定電極11Aと検出部Z2の第1可動電極21Bの第3方向DR3での厚さは等しく、検出部Z1の第1可動電極21Aと検出部Z2の第1固定電極11Bの第3方向DR3での厚さは、第1基部23の第3方向DR3での厚さと同じ厚さになっている。ここで、厚さとは、例えば素子の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)等により測定した物理的な厚みに限らず、薄膜の屈折率等の光学的特性から見積もられる膜厚も含む。
【0022】
図4は、本実施形態の物理量センサー1の検出部Z1、Z2の動作を説明する図である。具体的には、初期状態から加速度が生じた場合に、加速度の向きに対するプローブ電極の動きを第1方向DR1からの断面の概略図で示している。ここで、初期状態とは、静止した状態、即ち、重力加速度を除いて加速度の生じていない状態をいう。なお、検出部Z1はプローブのP側に対応し、検出部Z2はプローブのN側に対応している。
【0023】
まず、図4の左側に示す初期状態においては、検出部Z1の第1固定電極11Aと第1可動電極21Aは、第3方向DR3に沿って、その一部が重なるように対向して設けられている。具体的には、第1固定電極11Aと第1可動電極21Aは、第5方向DR5での端部の位置は一致しているが、第3方向DR3での端部の位置は第1可動電極21Aの端部の方が、第1固定電極11Aの端部よりも第3方向DR3側に位置している。初期状態では、このように第3方向DR3に沿って第1固定電極11Aと第1可動電極21Aの一部が重なった状態で静止している。また、検出部Z2の第1固定電極11Bと第1可動電極21Bも、第3方向DR3に沿って、一部が重なるように対向して設けられている。検出部Z2では、第3方向DR3において第1可動電極21Bの端部よりも第1固定電極11Bの端部の方が、第3方向DR3側に位置している。
【0024】
この初期状態において、検出部Z1での第1固定電極11Aと第1可動電極21Aの対向面積に対応する物理量と、検出部Z2での第1固定電極11Bと第1可動電極21Bの対向面積に対応する物理量とを合計した物理量が、初期状態における物理量になる。物理量としては、例えば静電容量等がある。
【0025】
次に、図4の中央に示すように第3方向DR3の加速度が生じた状態について説明する。第3方向DR3の加速度が生じた状態では、検出部Z1、Z2において第1可動電極21A、21Bは加速度の向きと逆向きの慣性力を受ける。このため検出部Z1の第1可動電極21Aは第5方向DR5側に変位し、検出部Z2の第1可動電極21Bも第5方向DR5側に変位する。これにより検出部Z1では、図4に示すように第1固定電極11Aと第1可動電極21Aの対向面積は維持され、検出部Z2では、第1固定電極11Bと第1可動電極21Bの対向面積は減少する。従って、検出部Z2での対向面積の減少による物理量の変化を検出することで、第3方向DR3の物理量を検出できる。
【0026】
一方、図4の右側に示すように、初期状態から第5方向DR5の加速度が生じた状態では、検出部Z1、Z2で第1可動電極21A、21Bは+Z方向の慣性力を受ける。このため検出部Z1では第1可動電極21Aは第3方向DR3側、即ち+Z方向に変位し、検出部Z2の第1可動電極21Bも+Z方向に変位する。これにより検出部Z1では、第1固定電極11Aと第1可動電極21Aの対向面積は減少し、検出部Z2では、第1固定電極11Bと第1可動電極21Bの対向面積が維持される。従って、検出部Z1での対向面積の減少による物理量の変化を検出することで、第5方向DR5の物理量を検出できる。なお、物理量として静電容量の変化の検出する場合、例えば不図示の差動増幅回路に、第1固定電極11A、11B、第1可動電極21A、21Bをそれぞれ配線及びパッドを介して接続することで静電容量を検出できる。
【0027】
図5は、本実施形態の第1可動電極群20A、20B、第1基部23、第1連結部30A、30B及び支持梁42A、42Bを第2方向DR2から見た断面の概略図である。なお、図5は各構成部の第3方向DR3での厚みの違いに着目しているため、各構成部は正確な寸法で記載されていない。
【0028】
本実施形態では、検出部Z1の第1可動電極群20Aと第1基部23と第1連結部30A、30Bは、第3方向DR3での厚みが最も厚くなっている。そして、支持梁42A、42B、第1可動電極群20Bの順に第3方向DR3での厚みが薄くなっている。
【0029】
図5において、各構成部に記された黒い丸は、各構成部の重心位置を示す。ここで、第1可動電極群20Aの重心位置をGZ1、第1可動電極群20Bの重心位置をGZ2、可動体MBの重心位置をGm、支持梁42A、42Bの重心位置をGrとして表記している。例えば、図5の左側に表示される第1可動電極群20Aでは、第1可動電極群20Aに含まれる複数の第1可動電極21Aについて、第1可動電極群20A全体として見たときに第3方向DR3における中心の位置に、その重心位置GZ1があることを示している。第1可動電極群20Bの第1可動電極21Bは、図3で説明したように第3方向DR3での厚みが第1可動電極21Aよりも薄いため、その中心位置にある重心位置GZ2も第1可動電極群20Aの重心位置GZ1よりも第5方向DR側、即ち-Z方向側に位置している。
【0030】
ここで重心とは、対象とする構成部分における質量分布の中心位置をいう。このため、対象とする構成部分における質量分布に均一性がない場合には、重心位置は必ずしも、上述したように各構成部の第3方向DR3における中央位置にならない場合もある。
【0031】
図5において、左から3つ目の可動体MBには重心位置Gmが表記されている。可動体MBの重心位置Gmは、可動体MBを第1可動電極群20A、20Bと第1基部23と第1連結部30A、30Bという複数の構成部が一体となった部材として見た場合の重心位置を示している。上述したように、第1可動電極群20Aの重心位置GZ1と第1可動電極群20Bの重心位置GZ2は第3方向DR3においてずれているため、これらを含む可動体MBの重心位置Gmは、重心位置GZ1と重心位置GZ2の間に位置することになる。なお、可動体MBについては複数の構成部の集合体であるため、図5において重心位置のみを表記している。そして、可動体MBの重心位置Gmの第3方向DR3における位置は、支持梁42A、42Bの重心位置Grの第3方向DR3での位置と一致している。即ち、本実施形態では第1可動電極群20Aの重心位置GZ1、第1可動電極群20Bの重心位置GZ2、可動体MBの重心位置Gm、支持梁42A、42Bの重心位置Grの第3方向DR3での位置関係は、GZ1>Gm=Gr>GZ2という関係になっている。このように本実施形態では、各構成部の重心位置の第3方向DR3での位置関係がGZ1>Gm=Gr>GZ2になるように、第1可動電極群20Bや支持梁42A、42Bの第3方向DR3の厚みを設計する。
【0032】
上述したように重心とは、対象とする構成部分における質量分布の中心位置をいうため、各構成部において質量分布が均一でない場合には、重心位置は必ずしも各構成部の中央にならない。従って、各構成部の第3方向DR3での厚み、或いは形状等に関わらず、可動体MBの重心位置Gmと支持梁42A、42Bの重心位置Grの第3方向DR3での位置が一致する場合はある。そして、本実施形態では、各構成部の厚みや形状が図5に示すような大小関係になっていなくても、可動体MBの重心位置Gmと支持梁42A、42Bの重心位置Grの第3方向DR3での位置が一致していればよい。
【0033】
また、上述した第3方向DR3での位置が一致する、とは略一致していることを意味する。例えば、半導体製造プロセスでエッチング加工処理を行う場合、同一の装置、条件のもとで処理を行っても、装置そのものに起因して仕上がり寸法にばらつきが現れる。このため、ターゲットとする加工寸法に対して一定のマージンを設けてプロセス管理を行うことが一般的である。このような理由から、可動体MBの重心位置Gmと支持梁42A、42Bの重心位置Grの第3方向DR3での位置が完全には一致しないことが通常である。従って、上述した第3方向DR3での位置が一致する、とは略一致している場合を含む。
【0034】
図6図7は、物理量センサー1を-Y方向側から見た断面の概略図であり、物理量センサー1が第1方向DR1の慣性力FIを受けた場合について説明する図である。なお、図6では第1連結部30A、30B、固定部40A、40B、基板2については表示を省略している。
【0035】
図6は、本実施形態を適用していない場合の物理量センサー1を示す。即ち、各構成部の重心の第3方向DR3での位置関係は、図5において説明したような、GZ1>Gm=Gr>GZ2という関係にはなっていない。図6に示す物理量センサーでは、支持梁42A、42Bの第3方向DR3での厚みが第1可動電極群20Aや不図示の第1連結部30A、30B或いは第1基部23と同じ厚みになっている。このため、各構成部の重心の第3方向DR3での位置関係は、GZ1=Gr>Gm>GZ2という関係になっている。
【0036】
ここで、可動体MBの重心位置Gm、検出部Z1の重心位置GZ1、検出部Z2の重心位置GZ2の各々の第3方向DR3での高さをhm、hm1、hm2とする。また支持梁42A、42Bの重心位置Grの第3方向DR3での高さをhrとする。なお、ここでいう高さとは、静止状態、即ち物理量センサー1の第1連結部30A、30BがXY平面に対し水平になっている状態において、支持梁42A、42Bの第3方向DR3での下端を基準にした第3方向DR3における高さをいうものとする。そして、図5で説明した、各構成部の重心の第3方向DR3での位置関係がGZ1=Gr>Gm>GZ2という関係がある場合、各構成部の重心位置の高さhm、hm1、hm2、hrには、hm1=hr>hm>hm2という関係が成立する。
【0037】
以下では、物理量センサー1の各構成部が図6に示すような形状である場合について検討する。図6において、物理量センサー1に第4方向DR4、即ち-X方向の加速度が生じた場合、可動体MBにはその反対方向である+X方向の慣性力FIが作用する。ここで可動体MBは、支持梁42A、42Bを回転軸として揺動する回転物理系と考えられるため、その回転軸である支持梁42A、42Bの重心位置Grを原点Oとする。すると可動体MBの重心位置Gmは、その高さhmが原点Oの高さhrよりも低いため、+X軸方向から角度θだけ傾いた位置ベクトルr=(rmx、0、rmz)で用いて表される。なお、Z座標のrmzは負の値である。また可動体MBに作用する慣性力Fは、原点Oから+X方向を向いた慣性力ベクトルFI=(FI、0、0)を用いて表される。一般的に、トルクTは位置ベクトル(x、y、z)と力ベクトル(F、F、F)の外積により式(1)のように表される。
【数1】
【0038】
従って、式(1)に位置ベクトルr=(rmx、0、rmz)と慣性力ベクトルFI=(FI、0、0)を代入すると、可動体MBを含む回転物理系に発生するトルクTは式(2)にように求められる。
【数2】
【0039】
上述した通りrmz<0であるから、式(2)より、位置ベクトルrが慣性力ベクトルFIと角度θだけずれている場合、トルクTは-Y方向を回転軸とし、rmzFIの大きさを持つベクトルになる。即ち、可動体MBの第1可動電極群20A、20Bは、Y軸を回転軸とする円軌道上でZ方向側に動こうとする。また式(2)のrmzFIは角度θを用いると、式(3)のように求められる。
【数3】
【0040】
即ち、X軸方向に沿う慣性力ベクトルFIに対して、位置ベクトルrがX軸方向から傾いていると式(1)において外積はゼロにならず、必ずトルクTが発生することになる。このように、可動体MBの重心位置Gmの高さhmと支持梁42A、42Bの重心位置Grの高さhrが異なっていると、回転物理系における外積はゼロにならず、可動体MBは支持梁42A、42Bを中心とする円軌道上で揺動することになる。従って、物理量センサー1が、本来検出対象とする第3方向DR3以外の方向の加速度を第3方向DR3の加速度として検出することになる。
【0041】
このように物理量センサーが検出対象とする方向以外の物理量を、当該検出対象である方向における物理量として検出する感度を他軸感度という。物理量センサーにおいて、このような他軸感度が大きくなると、検出対象である物理量以外の物理量を検出対象の物理量として検出してしまうため、物理量センサーの検出精度を劣化させる要因になる。従って、できる限り他軸感度を抑制することが望ましい。なお、上記では物理量センサー1の各構成部の質量分布が均一な場合について検討したが、質量分布が不均一な場合であっても、図6に示すような重心の位置関係になっている場合には同様の結果が導かれる。
【0042】
前述の特許文献1に開示される物理量センサー1は、本実施形態の物理量センサー1と同様に固定電極と可動電極の面積変化型の物理量センサーであり、Z軸方向の物理量を検出する。しかし、可動電極を構成する可動体の一部の厚みは出力信号のSN比向上の観点から薄く設計されている。このため、支持梁42A、42Bに相当する捻れバネの重心のZ軸方向の高さは、可動電極を含む可動体全体の重心のZ軸方向での高さと異なっている。従って、図6で説明した場合と同様に、回転軸に相当する捻れバネの重心から可動体の重心までの位置ベクトルは水平方向からずれてしまい、トルクTを発生させ、他軸感度を増加させる結果になる。このように特許文献1では、可動電極のZ軸方向での厚みを薄くすることで出力信号のSN比を向上できる一方で、他軸感度の増加というデメリットが生じてしまう。
【0043】
図7は、本実施形態を適用した場合の物理量センサー1の各構成部の断面の概略図である。即ち、図5で説明したような重心位置の位置関係GZ1>Gm=Gr>GZ2が成立している場合である。この場合、原点Oから可動体MBの重心位置Gmまでの位置ベクトルrは、第1方向DR1であるX軸方向と平行になっている。この場合、位置ベクトルr=(rmx、0、0)と慣性力ベクトルFI=(FI、0、0)を式(1)に代入すると、位置ベクトルrはx座標成分以外がゼロであるため、トルクTはゼロになる。即ち、X軸方向の慣性力FIが作用しても、可動体MBを含む回転物理系にトルクTは発生しない。
【0044】
また本実施形態では、第1可動電極群20Aと第1可動電極群20Bのいずれか一方の第3方向DR3での厚みを薄くすることで、特許文献1に開示される出力信号のSN比向上というメリットも得られる。従って、物理量センサー1において出力信号のSN比向上と他軸感度の抑制を両立して実現できる。
【0045】
即ち、本実施形態の物理量センサー1は、固定部40A、40Bと支持梁42A、42Bと可動体MBと第1固定電極群10A、10Bとを含む。固定部40A、40Bは基板2に固定され、支持梁42A、42Bは固定部40A、40Bに一端が接続され、第2方向DR2に沿って設けられている。可動体MBは、支持梁42A、42Bの他端に接続され、第1固定電極群10A、10Bは、基板2に設けられ、支持梁42A、42Bの第1方向DR1に配置される。可動体MBは、第1連結部30A、30Bと第1基部23と第1可動電極群20A、20Bを有する。第1連結部30A、30Bは、支持梁42A、42Bの他端に接続され、支持梁42A、42Bから第1方向DR1に延び、第1基部23は、第1連結部30A、30Bに接続され、第2方向DR2に沿って設けられ、第1基部23に設けられる第1可動電極群20A、20Bは、第1固定電極群10A、10Bの第1固定電極11A、11Bと第2方向DR2において対向する。そして、可動体MBの第3方向DR3での重心位置の高さをhmとし、支持梁42A、42Bの回転中心の第3方向DR3での高さをhrとしたとき、hm=hrである。
【0046】
本実施形態によれば物理量センサー1の他軸感度を抑制し、高精度な物理量の検出が可能になる。また第1可動電極群20Aと第1可動電極群20Bのいずれか一方のZ軸方向の厚みを薄くすることで、特許文献1に開示される出力信号のSN比向上というメリットも維持できる。
【0047】
また本実施形態では、支持梁42A、42Bに捻れバネを用いている。これにより、支持梁42A、42Bの第3方向DR3の厚みによって剛性を調整できるため、面積を大きくすることなく容易に高感度化でき、小型化が可能となる。また、捻れバネ長方向の第2方向DR2と櫛歯長方向の第1方向DR1が直交関係にあるため、第1可動電極21A、21Bの櫛歯長が長くならならず、耐衝撃性や電極同士の貼り付き等の不具合も改善できる。
【0048】
さらに本実施形態では、可動体MBの長手方向、即ち第1基部23の長手方向を、回転軸である第2方向DR2と同じ向きになるように設けている。このようにすれば、基板2の面内回転方向の首振り運動が発生しても、首振り運動の振動周波数と本物理量センサー1の検出モードの周波数を遠ざけることができ、共振現象を抑制できる。従って、首振りモードによる振動が物理量センサー1の検出に干渉を与えることを防ぐことができ、また他軸感度の増加を抑えることも可能になる。
【0049】
2.詳細な構成例
図8は、本実施形態の物理量センサー1の第1詳細例の平面図である。第1詳細例は、図1に示す物理量センサー1と同様に櫛歯電極を用いた面外回転による面積変化型構造の第3方向DR3の物理量センサーであるが、図1に示す構成例とは検出部Z1、検出部Z2の配置が異なっている。具体的には、図8に破線で示す検出部Z1、検出部Z2が図1に示す場合と異なり、第2方向DR2に沿って並んで配置されている。また、これに伴って第1詳細例に示す物理量センサー1は、第2連結部70、第2基部63、第2固定電極群50及び第2可動電極群60を有する。第2連結部70、第2固定電極群50及び第2可動電極群60は、それぞれ図1の構成における第1連結部30B、第1固定電極群10B、第1可動電極群20Bに相当する。なお、検出部Z1がN側に、検出部Z2がP側に対応している。
【0050】
検出部Z1では、第1固定電極群において第1基部23を隔てて第4方向DR4側に第1固定電極11が設けられ、第1基部23を隔てて第1方向DR1側に第1固定電極12が設けられている。同じように第1可動電極群20には、第1基部23を隔てて第4方向DR4側に第1可動電極21が設けられ、第1基部23を隔てて第1方向DR1側に第1可動電極22が設けられている。また検出部Z2では、第2固定電極群には第2基部63を隔てて第4方向DR4側に第2固定電極51が設けられ、第2基部63を隔てて第1方向DR1側に第2固定電極52が設けられている。第2可動電極群60には、第2基部63を隔てて第4方向DR4側に第2可動電極61が設けられ、第2基部63を隔てて第1方向DR1側に第2可動電極62が設けられている。なお、以下においては、適宜、第1固定電極11、12を第1固定電極14と、第2固定電極51、52を第2固定電極54と、第1可動電極21、22を第1可動電極24と、第2可動電極61、62を第2可動電極64と総称して表記する。そして、第1詳細例では、第1連結部30と第2連結部70は、第1基部23と第2基部63を介して接続されている。
【0051】
図9は第1詳細例の斜視図である。図9に示すように、第2方向DR2に沿って配置される検出部Z1と検出部Z2では電極櫛歯の第3方向DR3における厚みが異なっている。検出部Z1では、第1固定電極群10の厚みは第1可動電極群20よりも厚くなっており、検出部Z2では、第2固定電極群50の厚みは第2可動電極群60よりも薄くなっている。このため、図9の斜視図において、第3方向DR3での厚みの薄い第1可動電極群20と第2固定電極51、52は隠れて見えなくなっている。
【0052】
図10は第1詳細例の検出部Z1、Z2について、電極形状の詳細を示している。図10の上図は、検出部Z1の電極形状を示している。第1詳細例は、図1の構成例と異なり、第1可動電極21と第1可動電極22の第3方向DR3の厚みは等しくなっている。また第1固定電極11と第1固定電極12の厚みも等しくなっている。そして、+Z方向側で第1固定電極11、12と第1可動電極21、22の端部の位置がずれており、-Z方向側では第1固定電極11、12と第1可動電極21、22の端部の位置は等しくなっている。即ち、片側オフセット構造になっている。
【0053】
図10の下図は、第1詳細例の検出部Z2の電極形状を示している。検出部Z2も検出部Z1と同様に、第2可動電極61と第2可動電極62の第3方向DR3の厚みは等しくなっており、第2固定電極51と第2固定電極52の厚みも等しくなっている。そして、検出部Z1と同様に+Z方向側のみで第2固定電極51、52と第2可動電極61、62の端部の位置がずれた片側オフセット構造になっている。
【0054】
図11は、第1詳細例の動作を説明する図である。第1詳細例における動作原理は、図4で説明した手法と同様であり、+Z方向或いは-Z方向の加速度に対して検出部Z1、Z2のいずれかで櫛歯電極の対向面積が減少することで、物理量が検出されるようになっている。図11において第3方向DR3の加速度が生じた場合、検出部Z1では第1可動電極群20は第5方向DR5、即ち-Z方向の慣性力を受け、-Z方向に変位する。このため、第1固定電極14と第1可動電極24の対向面積は減少する。一方、検出部Z2では第2可動電極群60が当該慣性力を受けて-Z方向に変位しても、対向面積は変化しない。従って、検出部Z1での対向面積の減少により、第3方向DR3の加速度を検出できる。そして、第5方向DR5、即ち-Z方向の加速度が生じた場合、検出部Z1では第1可動電極群20は+Z方向の慣性力を受けて+Z方向に変位するが、第1固定電極14と第1可動電極24の対向面積は変化しない。一方、検出部Z2では第2可動電極群60が当該慣性力を受けて+Z方向に変位するため、第2固定電極54と第2可動電極64の対向面積が減少する。なお、第1詳細例では、検出部Z1がプローブのN側、検出部Z2がプローブのP側に対応している。
【0055】
即ち、図8に示すように本実施形態では、物理量センサー1は、基板2に設けられ、支持梁42A、42Bの第1方向DR1に配置される第2固定電極群50を含む。可動体MBは第2連結部70と第2基部63と第2可動電極群60と、を含む。第2連結部70は支持梁42A、42Bの他端に接続され、支持梁42A、42Bから第1方向DR1に延びる。第2基部63は第2連結部70に接続され、第2方向DR2に沿って設けられる。第2可動電極群60は第2基部63に設けられ、第2固定電極群50の第2固定電極51、52と第2方向DR2において対向する。
【0056】
このようにすれば、物理量センサー1に2つの検出部Z1、検出部Z2を設けることができ、検出部Z1と検出部Z2を可動体MBの揺動運動の回転軸になる第2方向DR2に沿って、並んで配置することが可能になる。
【0057】
また本実施形態では、第1可動電極群20と第2可動電極群60は、第1連結部30と第2連結部70の間に第2方向DR2に沿って配置される。
【0058】
このようにすれば、平面視において物理量センサー1の第1連結部30と第2連結部70の間に、第2方向DR2に沿って検出部Z1、Z2を設けることができる。
【0059】
また図7に示すように、本実施形態では、第1可動電極群20の第3方向DR3での重心位置の高さをhm1とし、第2可動電極群60の第3方向DR3での重心位置の高さをhm2としたとき、hm2>hr>hm1である。
【0060】
このようにすれば、可動体MBの重心位置Gmと支持梁42A、42Bの重心位置の第3方向DR3での高さを一致させつつ、第2可動電極群60の第3方向DR3での厚みを支持梁42A、42Bの回転中心の第3方向DR3での厚みよりも厚くすることができる。
【0061】
また本実施形態では、第2可動電極群60の第3方向DR3での厚さは、第1可動電極群20の第3方向DR3での厚さより大きい。
【0062】
このようにすれば、検出部Z1では第1可動電極群20の第3方向DR3での厚さを第1固定電極群10の第3方向DR3での厚さよりも薄くすることが容易になる。また検出部Z2においても第2可動電極群60の第3方向DR3での厚さを第2固定電極群50の第3方向DR3での厚さよりも厚くすることが容易になる。
【0063】
また本実施形態では、初期状態において第1可動電極群20の第3方向DR3での裏面位置と、第2可動電極群60の第3方向DR3での裏面位置とが一致している。
【0064】
このようにすれば、第1固定電極11、12と第1可動電極21、22からなる櫛歯電極のプローブを第3方向DR3でオフセットのついた片側オフセット形状にできる。また第2固定電極51、52と第2可動電極61、62からなる櫛歯電極のプローブを第3方向DR3でオフセットのついた片側オフセット形状にできる。
【0065】
図12は本実施形態の物理量センサー1の第2詳細例の平面図である。第1詳細例とは、検出部Z1、Z2の配置パターンが異なっている。具体的には、図12に示すように第3方向DR3での平面視において、第2方向DR2側から順に検出部Z2、検出部Z1、検出部Z2の順に検出部が配置されている。このように、検出部Z1、Z2を複数設けて、第2方向DR2に沿って交互に配置することもできる。
【0066】
図13は第2詳細例の斜視図である。検出部Z1、Z2の配置パターン以外は、図9と同様である。第2詳細例を第1詳細例と比較すると、図13の中に一点鎖線で示すX軸に対して質量分布が対称に配置されている。このため、第2詳細例によれば、第3方向DR3の加速度が生じた時に、可動体MBの第3方向DR3の変位のばらつきを抑制できる。従って、物理量センサー1の検出精度を向上できる。そして、このような検出部Z1、Z2の配置パターンとして多様なバリエーションが考えられるので、物理量センサー1の櫛歯電極を配置できるスペースに合わせて、最適な配置パターンを選択できる。
【0067】
片側オフセット構造をとる第1詳細例についての変形例として幾つかの構成が考えられる。例えば、図14で検出部Z1の第1固定電極14と検出部Z2の第2可動電極64の厚みが異なっていてもよいし、検出部Z1の第1可動電極24と検出部Z2の第2固定電極54の厚みが異なっていてもよい。可動体MBの厚みについても、検出部Z1の第1可動電極24の厚みより小さくてもよいし、大きくてもよい。ここで、ねじりバネである支持梁42A、42Bの厚みは、可動体MB、検出部Z1、Z2の可動電極の厚みの中で、最も薄い厚みより厚く、また最も厚い厚みよりも薄い範囲にある。また、上記では第1詳細例と第2詳細例について、櫛歯電極の裏面のみが面一になっている構成を例に説明したが、表面のみが面一になっていてもよい。以上に挙げた変形例は、いずれも図7で説明したように可動体MBの重心位置Gmの第3方向での位置と支持梁42A、42Bの重心位置Grの第3方向DR3での位置が一致していればよく、このような重心の位置関係であれば、本実施形態の構成は上記に限られない。
【0068】
また第1詳細例、第2詳細例では、検出部Z1、Z2の櫛歯電極は片側オフセットの形状になっていたが、両側オフセットの形状にすることもできる。図14は、第1詳細例、第2詳細例の櫛歯電極を両側オフセットの形状にした第3詳細例について、櫛歯電極部分の構成を示した概略図である。図14の上図は検出部Z1における櫛歯電極の形状を、下図は検出部Z2における櫛歯電極の形状を示している。
【0069】
検出部Z1では、第1可動電極21、22は第1固定電極11、12よりも第3方向DR3側にずれており、第2方向DR2から見ると、第1固定電極11は第1可動電極21とその一部が重なっており、第1固定電極12は第1可動電極22とその一部が重なっている。このようにして検出部Z1の櫛歯電極は両側オフセットの形状になっている。検出部Z2では、第2可動電極61、62は第2固定電極51、52よりも第5方向DR5側にずれており、第2方向DR2から見ると、第2固定電極51は第2可動電極61とその一部が重なっており、第2固定電極52は第2可動電極62とその一部が重なっている。このようにして検出部Z2の櫛歯電極も両側オフセットの形状になっている。
【0070】
第3詳細例における各構成部の第3方向DR3での位置関係について補足する。なお、ここでは、第3方向DR3側の面を表面とし、第5方向DR5側の面を裏面として説明する。検出部Z1では、第1可動電極24の表裏面は、第1固定電極14の表裏面よりそれぞれ+Z方向に位置し、検出部Z2では逆で、第2可動電極64の表裏面は、第2固定電極54の表裏面よりそれぞれ-Z方向に位置する。検出部Z1の第1可動電極24の表裏面と検出部Z2の第2固定電極54の表裏面はそれぞれ面一になっており、電極の厚みは同じである。検出部Z1の第1固定電極14と検出部Z2の第2可動電極64の表裏面もそれぞれ面一になっており、同じ厚みである。また検出部Z1の第1可動電極24の表面と第1固定電極14の表面の第3方向DR3でのオフセット量は、検出部Z2の第2可動電極64の裏面と第2固定電極54の裏面の第5方向DR5でのオフセット量と等しい。可動体MBの第1連結部30、第2連結部70の表面は、検出部Z1の第1可動電極24、検出部Z2の第2固定電極54の表面と面一である。可動体MBの第1連結部30、第2連結部70の裏面は、検出部Z1の第1固定電極14、検出部Z2の第2可動電極64の裏面と面一である。ねじりバネである支持梁42A、42Bの表裏面は可動体MBの表裏面と一致している。
【0071】
図15は第3詳細例を適用した物理量センサー1の動作を説明する図である。図4で説明した動作の説明図と同様に、初期状態と加速度が印加された状態のそれぞれにおける櫛歯電極の動きが示されている。両側オフセット形状を適用した第3詳細例は、可動体MBが支持梁42A、42Bを回転軸として面外回転し、検出部Z1、Z2のいずれか一方では櫛歯電極の対向面積が増加し、他方では減少する。即ち、これまで説明してきた図1の構成例や第1詳細例、第2詳細例と異なり、第1可動電極24、第2可動電極64が第3方向DR3及び第5方向DR5のいずれの方向に変位しても櫛歯電極の対向面積の変化するため、物理量の検出感度としては、図1の構成例等と比較して2倍に増加する。従って、片側オフセット形状を適用した構成例と比べて、物理量検出の高感度化の点で有利である。
【0072】
即ち、本実施形態では、第1可動電極群20の第3方向DR3での厚さと第2可動電極群60の第3方向DR3での厚さが等しい。また本実施形態では、初期状態において第1可動電極群20の第3方向DR3での裏面位置と、第2可動電極群60の第3方向DR3での裏面位置とが一致していない。
【0073】
このようにすれば、第1固定電極11、12と第1可動電極21、22からなる櫛歯電極のプローブを第3方向DR3と第5方向DR5の両方でオフセットのついた両側オフセット形状にできる。また第2固定電極51、52と第2可動電極61、62からなる櫛歯電極のプローブを第3方向DR3と第5方向DR5の両方でオフセットのついた両側オフセット形状にできる。
【0074】
図16は両側オフセット形状を適用した第3詳細例において、各構成部の重心の位置関係を示した断面の概略図である。図5で説明したように、本実施形態では、物理量センサー1の各構成部の重心位置をGZ1>Gm=Gr>GZ2という関係になるように設計することで、第3方向DR3以外の第1方向DR1の加速度等に対してトルクが発生しないようにして、他軸感度を低減させることができる。
【0075】
この点、第3詳細例は、図16の左側に示すように第2方向DR2から見て、第1可動電極24と第2可動電極64はその一部で重なっており、それぞれ同じ長さだけ第3方向DR3と第5方向DR5にずれている。このような櫛歯電極の位置関係から、可動部と支持梁42A、42Bの第3方向における重心を一致させることが容易になる。例えば、支持梁42A、42B、可動部、第1可動電極24の第3方向DR3での位置と等しくし、支持梁42A、42B、可動部、第2可動電極64の第5方向DR5の位置と等しくすることで、必然的にGZ1>Gm=Gr>GZ2という位置関係が実現できる。
【0076】
図17は第3詳細例を適用した物理量センサー1の各構成部の断面の概略図である。上述した通り、GZ1>Gm=Gr>GZ2という位置関係が実現されており、可動体MBの重心位置の第3方向DR3での高さhmと支持梁42A、42Bの重心位置の第3方向DR3での高さhrは等しくなっている。このため、位置ベクトルrは第1方向DR1と平行になる。従って、図7で説明したように、物理量センサー1に第1方向DR1の慣性力FIが作用しても、可動体MBの支持梁42A、42Bを回転軸とする揺動運動に影響を与えることはなくなり、物理量センサー1の他軸感度の向上が図られる。
【0077】
前述した通り、第3詳細例においても各構成部の重心位置について、GZ1>Gm=Gr>GZ2という位置関係が成立する。即ち、可動体MBの第3方向DR3での厚み方向の重心位置Gmと支持梁42A、42Bの第3方向DR3での厚み方向の重心位置Grの第3方向DR3における位置が一致している。第3詳細例には、このような重心の位置関係を有する幾つかの変形例が考えられる。図18は、図14図15に示す櫛歯電極の構成以外の第3詳細例のバリエーションを示している。図18に示すように、検出部Z1の第1固定電極14、第1可動電極24、検出部Z2の第2固定電極54、第2可動電極64の第3方向DR3における位置を示す等高線の数によって4つのバリエーションが考えられる。上段の左に示す櫛歯形状のパターンは、第1固定電極14、第2固定電極54、第1可動電極24、第2可動電極64のすべての表裏面の位置がずれているパターンであり、等高線の数が最も多い。そして、上段の中央、右、下段の順に等高線の数が減っている。そして、最も等高線の数が少ない形状パターンが、図14に示す構成である。
【0078】
また、これ以外に可動体MBや支持梁42A、42Bの位置関係でのバリエーションも考えられる。例えば、可動体MBの表面が検出部Z1の第1可動電極24、検出部Z2の第2固定電極54の表面と面一でないパターンや、可動体MBの裏面が検出部Z1の第1固定電極14、検出部Z2の第2固定電極54の裏面と面一でない場合が考えられる。また支持梁42A、42Bの表裏面が可動体MBの表裏面のいずれか片面のみ、または両面共と面一でない場合も考えられる。この場合、支持梁42A、42Bの第3方向での厚みは問わず、厚みが小さいと変位は大きくなり、物理量の検出感度を高感度化でき、有利である。
【0079】
3.慣性計測装置
次に、本実施形態の慣性計測装置2000の一例について図19図20を用いて説明する。図19に示す慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車やロボットなどの運動体の姿勢や挙動などの慣性運動量を検出する装置である。慣性計測装置2000は、3軸に沿った方向の加速度ax、ay、azを検出する加速度センサーと、3軸回りの角速度ωx,ωy,ωzを検出する角速度センサーと、を備えた、いわゆる6軸モーションセンサーである。
【0080】
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、マウント部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンやデジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
【0081】
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。センサーモジュール2300は、インナーケース2310と回路基板2320を有している。インナーケース2310には、回路基板2320との接触を防止するための凹部2311や、後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。そしてインナーケース2310の下面には、接着剤を介して回路基板2320が接合されている。
【0082】
図20に示すように、回路基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸及びZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサーユニット2350などが実装されている。また回路基板2320の側面には、X軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340x及びY軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。
【0083】
加速度センサーユニット2350は、前述したZ軸方向の加速度を測定するための物理量センサー1を少なくとも含み、必要に応じて、一軸方向の加速度を検出したり、二軸方向や三軸方向の加速度を検出したりすることができる。なお角速度センサー2340x、2340y、2340zとしては、特に限定されないが、例えばコリオリの力を利用した振動ジャイロセンサーを用いることができる。
【0084】
また回路基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部としての制御IC2360は、例えばMCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測装置2000の各部を制御する。なお、回路基板2320には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
【0085】
以上のように本実施形態の慣性計測装置2000は、物理量センサー1と物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部としての制御IC2360を含む。この慣性計測装置2000によれば、物理量センサー1を含む加速度センサーユニット2350を用いているため、物理量センサー1の効果を享受でき、高精度化等を実現できる慣性計測装置2000を提供できる。
【0086】
なお慣性計測装置2000は図19図20の構成には限定されない。例えば慣性計測装置2000に、角速度センサー2340x、2340y、2340zを設けずに、慣性センサーとして物理量センサー1だけを設ける構成としてもよい。この場合には、例えば物理量センサー1と、制御部を実現する制御IC2360を、収容容器であるパッケージに収容することで慣性計測装置2000を実現すればよい。
【0087】
以上に説明したように本実施形態の物理量センサーは、固定部と支持梁と可動体MBと第1固定電極群とを含む。固定部は基板に固定され、支持梁は固定部に一端が接続され、第2方向に沿って設けられている。可動体は、支持梁の他端に接続され、第1固定電極群は、基板に設けられ、支持梁の第1方向に配置される。可動体は、第1連結部と第1基部と第1可動電極群を有する。第1連結部は、支持梁の他端に接続され、支持梁から第1方向に延び、第1基部は、第1連結部に接続され、第2方向に沿って設けられ、第1基部に設けられる第1可動電極群は、第1固定電極群と第2方向において対向する。そして、可動体の第3方向での重心位置の高さをhmとし、支持梁の回転中心の第3方向での高さをhrとしたとき、hm=hrである。
【0088】
本実施形態によれば、第1方向の加速度が生じても、これに伴う慣性力と、支持梁から可動体の重心位置までの位置ベクトルは平行になるため、トルクが発生することはなくなる。従って、検出対象である第3方向以外の第1方向の物理量が、第3方向の物理量として検出されることを防ぐことができる。従って、本実施形態によれば物理量センサーの他軸感度を抑制し、高精度な物理量の検出が可能になる。
【0089】
また本実施形態では、基板に設けられ、支持梁の第1方向に配置される第2固定電極群を含み、可動体は、支持梁の他端に接続され、支持梁から第1方向に延びる第2連結部と、第2連結部に接続され、第2方向に沿って設けられる第2基部と、第2基部に設けられ、第2固定電極群と第2方向において対向する第2可動電極群と、を含む。
【0090】
このようにすれば、物理量センサー1に2つの検出部を設けることができ、2つの検出部を可動体の揺動運動の回転軸になる第2方向に沿って、並んで配置することができる。
【0091】
また本実施形態では、第1可動電極群と第2可動電極群は、第1連結部と第2連結部の間に第2方向に沿って配置される。
【0092】
このようにすれば、平面視において物理量センサーの第1連結部と第2連結部の間に、第2方向に沿って2つの検出部を設けることができる。
【0093】
また本実施形態では、第1可動電極群の第3方向での重心位置の高さをhm1とし、第2可動電極群の第3方向での重心位置の高さをhm2としたとき、hm2>hr>hm1である。
【0094】
このようにすれば、可動体の重心位置と支持梁の重心位置の第3方向での高さを一致させつつ、第2可動電極群の第3方向での厚みを支持梁42A、42Bの回転中心の第3方向DR3での厚みよりも厚くすることができる。
【0095】
また本実施形態では、第2可動電極群の第3方向での厚さは、第1可動電極群の第3方向での厚さより大きい。
【0096】
このようにすれば、第1可動電極群を含む検出部では、第1可動電極群の第3方向での厚さを第1固定電極群の第3方向での厚さよりも薄くすることが容易になる。また第2可動電極群を含む検出部では第2可動電極群の第3方向での厚さを第2固定電極群の第3方向での厚さよりも厚くすることが容易になる。
【0097】
また本実施形態では、初期状態において第1可動電極群の第3方向での裏面位置と、第2可動電極群の第3方向での裏面位置とが一致している。
【0098】
このようにすれば、第1固定電極と第1可動電極からなる櫛歯電極を第3方向でオフセットのついた片側オフセット形状にできる。また第2固定電極と第2可動電極からなる櫛歯電極を第3方向DR3でオフセットのついた片側オフセット形状にできる。
【0099】
また本実施形態では、第1可動電極群の第3方向での厚さと第2可動電極群の第3方向での厚さが等しい。
【0100】
また本実施形態では、初期状態において第1可動電極群の第3方向での裏面位置と、第2可動電極群の第3方向での裏面位置とが一致していない。
【0101】
このようにすれば、第1固定電極と第2可動電極からなる櫛歯電極を第3方向と第5方向の両方でオフセットのついた両側オフセット形状にできる。また第2固定電極と第2可動電極からなる櫛歯電極を第3方向と第5方向の両方でオフセットのついた両側オフセット形状にできる。
【0102】
このように本実施形態では、支持梁は、第2方向を回転軸として捻れる捻れバネである。このようにすれば、可動体は第2方向を回転軸とする揺動運動ができる。
【0103】
また本実施形態は、物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、を含む慣性計測装置に関係する。
【0104】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また物理量センサー、慣性計測装置の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…物理量センサー、2…基板、10…第1固定電極群、10A…第1固定電極群、10B…第1固定電極群、11…第1固定電極、11A…第1固定電極、11B…第1固定電極、12…第1固定電極、14…第1固定電極、20…第1可動電極群、20A…第1可動電極群、20B…第1可動電極群、21…第1可動電極、21A…第1可動電極、21B…第1可動電極、22…第1可動電極、23…第1基部、24…第1可動電極、30…第1連結部、30A…第1連結部、30B…第1連結部、40A…固定部、40B…固定部、42A…支持梁、42B…支持梁、50…第2固定電極群、51…第2固定電極、52…第2固定電極、54…第2固定電極、60…第2可動電極群、61…第2可動電極、62…第2可動電極、63…第2基部、64…第2可動電極、70…第2連結部、2000…慣性計測装置、2100…アウターケース、2110…ネジ穴、2200…接合部材、2300…センサーモジュール、2310…インナーケース、2311…凹部、2312…開口、2320…回路基板、2330…コネクター、2340x…角速度センサー、2340y…角速度センサー、2340z…角速度センサー、2350…加速度センサーユニット、DR…第5方向、DR1…第1方向、DR2…第2方向、DR3…第3方向、DR4…第4方向、DR5…第5方向、F…慣性力、FI…慣性力、FI…慣性力のx成分、FI…慣性力のy成分、FI…慣性力のz成分、GZ1…重心位置、GZ2…重心位置、Gm…重心位置、G…重心位置、IC2360…制御、MB…可動体、O…原点、T…トルク、Z1…検出部、Z2…検出部、ax…加速度、ay…加速度、az…加速度、hm…高さ、hr…高さ、r…位置ベクトル、rmx…位置ベクトルx成分、rmy…位置ベクトルy成分、rmz…位置ベクトルz成分、θ…角度、ω…角速度、ω…角速度、ω…角速度
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