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特開2024-46531静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046531
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G03G9/097 375
G03G9/097 374
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151968
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 洋介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 紗貴子
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 靖子
(72)【発明者】
【氏名】永井 涼
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500AA11
2H500CA32
2H500CA34
2H500CA37
2H500CB04
2H500CB08
2H500CB10
2H500CB12
2H500EA42D
2H500EA43D
2H500EA44D
2H500EA52D
2H500EA57D
(57)【要約】
【課題】画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】静電荷像現像用トナーは、トナー粒子と、トナー粒子に外添されたペロブスカイト型化合物粒子と、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を含み且つ蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035以上0.45以下であるシリカ粒子(S)と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と、
前記トナー粒子に外添された、ペロブスカイト型化合物粒子と、
前記トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を含み且つ蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035以上0.45以下であるシリカ粒子(S)と、を含む、
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記シリカ粒子(S)の前記比NMo/NSiが0.05以上0.30以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記ペロブスカイト型化合物粒子と前記シリカ粒子(S)の合計含有量が、前記トナー粒子100質量部に対して、0.5質量部以上5.0質量部以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型化合物粒子と前記シリカ粒子(S)との合計量に占める前記シリカ粒子(S)の質量割合が40質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径D1と前記シリカ粒子(S)の平均一次粒径D2との比D2/D1が0.50以上1.70以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記シリカ粒子(S)の平均一次粒径が30nm以上100nm以下である、請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記シリカ粒子(S)の平均円形度が0.85以上である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記ペロブスカイト型化合物粒子が、ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム粒子である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物が、モリブデン元素を含む第四級アンモニウム塩、及び、第四級アンモニウム塩とモリブデン元素を含む金属酸化物との混合物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
前記シリカ粒子(S)が、シランカップリング剤の反応生成物からなる被覆構造と前記被覆構造に付着した前記モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物とを有するシリカ粒子である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
前記シランカップリング剤がアルキルトリアルコキシシランを含む、請求項10に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
【請求項13】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項14】
請求項12に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項15】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項12に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項16】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項12に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、焼結工程を経由していないチタン酸ストロンチウム微粉体を有するトナーが開示されている。
特許文献2には、トナー粒子とシリカ粒子とランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム粒子とを含む静電荷像現像用トナーが開示されている。
特許文献3には、四級アンモニウム塩で表面処理されたシリカ粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-338750号公報
【特許文献2】特開2019-028235号公報
【特許文献3】特開2021-151944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段には、下記の態様が含まれる。
【0006】
<1>
トナー粒子と、
前記トナー粒子に外添された、ペロブスカイト型化合物粒子と、
前記トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を含み且つ蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035以上0.45以下であるシリカ粒子(S)と、を含む、
静電荷像現像用トナー。
<2>
前記シリカ粒子(S)の前記比NMo/NSiが0.05以上0.30以下である、<1>に記載の静電荷像現像用トナー。
<3>
前記ペロブスカイト型化合物粒子と前記シリカ粒子(S)の合計含有量が、前記トナー粒子100質量部に対して、0.5質量部以上5.0質量部以下である、<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー。
<4>
前記ペロブスカイト型化合物粒子と前記シリカ粒子(S)との合計量に占める前記シリカ粒子(S)の質量割合が40質量%以上60質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<5>
前記ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径D1と前記シリカ粒子(S)の平均一次粒径D2との比D2/D1が0.50以上1.70以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<6>
前記シリカ粒子(S)の平均一次粒径が30nm以上100nm以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<7>
前記シリカ粒子(S)の平均円形度が0.85以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<8>
前記ペロブスカイト型化合物粒子が、ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム粒子である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<9>
前記モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物が、モリブデン元素を含む第四級アンモニウム塩、及び、第四級アンモニウム塩とモリブデン元素を含む金属酸化物との混合物からなる群から選択される少なくとも1種である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<10>
前記シリカ粒子(S)が、シランカップリング剤の反応生成物からなる被覆構造と前記被覆構造に付着した前記モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物とを有するシリカ粒子である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<11>
前記シランカップリング剤がアルキルトリアルコキシシランを含む、<10>に記載の静電荷像現像用トナー。
【0007】
<12>
<1>~<11>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
<13>
<1>~<11>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
<14>
<12>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<15>
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
<12>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
<16>
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
<12>に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0008】
<1>、<8>、<9>、<10>又は<11>に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
<2>に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.05未満又は0.30超である場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
<3>に係る発明によれば、ペロブスカイト型化合物粒子とシリカ粒子(S)の合計含有量が、トナー粒子100質量部に対して、0.5質量部未満又は5.0質量部超である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
<4>に係る発明によれば、ペロブスカイト型化合物粒子とシリカ粒子(S)との合計量に占めるシリカ粒子(S)の質量割合が40質量%未満又は60質量%超である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
<5>に係る発明によれば、ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径D1とシリカ粒子(S)の平均一次粒径D2との比D2/D1が0.50未満又は1.70超である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
<6>に係る発明によれば、シリカ粒子(S)の平均一次粒径が30nm未満又は100nm超である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
<7>に係る発明によれば、シリカ粒子(S)の平均円形度が0.85nm未満である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
【0009】
<12>に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像剤が提供される。
<13>に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくいトナーカートリッジが提供される。
<14>に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である静電荷像現像剤を適用する場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくいプロセスカートリッジが提供される。
<15>に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である静電荷像現像剤を適用する場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい画像形成装置が提供される。
<16>に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である静電荷像現像剤を適用する場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0015】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0016】
本開示において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルのいずれをも含む表現であり、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートのいずれをも含む表現である。
【0017】
本開示において、「静電荷像現像用トナー」を「トナー」ともいい、「静電荷像現像剤」を「現像剤」ともいい、「静電荷像現像用キャリア」を「キャリア」ともいう。
【0018】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、トナー粒子に外添されたペロブスカイト型化合物粒子と、トナー粒子に外添されたシリカ粒子(S)とを含む。シリカ粒子(S)は、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を含み、且つ、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035以上0.45以下であるシリカ粒子である。
【0019】
本実施形態に係るトナーは、画像濃度の変動が起こりにくい。その機序として、下記が推定される。
【0020】
電子写真方式の画像形成においてトナーは、記録媒体に定着されるまでの間に像保持体上及び中間転写体上で電界にさらされ次第に電荷が減衰する。
ペロブスカイト型化合物粒子は、誘電率の高い割に電気抵抗が高いので、トナーの電荷の減衰を抑えることができる。トナーの外添剤として好適である。
ただし、ペロブスカイト型化合物を外添したトナーを用いてトナーに電荷が溜まりやすい画像形成を続けた場合(例えば、湿度が比較的低い環境で画像密度の低い画像を連続形成したとき)、トナーに過度に電荷が溜まり、電荷リークが起こって画像濃度が変動することがある。
シリカ粒子(S)は、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物によって表面改質されたシリカ粒子であり、帯電制御剤としてはたらく外添剤である。シリカ粒子(S)の比NMo/NSiが所定の範囲であることによって、ペロブスカイト型化合物を外添したトナーに過度に電荷が溜まることが抑制されるものと推測される。
【0021】
本実施形態においてシリカ粒子(S)の比NMo/NSiは0.035以上0.45以下である。
比NMo/NSiが0.035未満であると、窒素原子を起因とする電荷移動が顕著になり、電荷リークが起こることで画像濃度ムラになりやすい。この事象を避ける観点から、比NMo/NSiは、0.035以上であり、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.10以上が更に好ましい。
比NMo/NSiが0.45超であると、モリブデン原子が過剰になることで、窒素原子を起因とする帯電が十分に上がらないため、画像濃度がムラになりやすい。この事象を避ける観点から、比NMo/NSiは、0.45以下であり、0.40以下が好ましく、0.35以下がより好ましく、0.30以下が更に好ましい。
【0022】
ペロブスカイト型化合物粒子とシリカ粒子(S)の合計含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.5質量部以上5.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上4.5質量部以下がより好ましく、1.8質量部以上4.0質量部以下が更に好ましい。
【0023】
ペロブスカイト型化合物粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.2質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2.5質量部以下がより好ましく、0.8質量部以上2.0質量部以下が更に好ましい。
【0024】
シリカ粒子(S)の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.2質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2.5質量部以下がより好ましく、0.8質量部以上2.0質量部以下が更に好ましい。
【0025】
ペロブスカイト型化合物粒子とシリカ粒子(S)との合計量に占めるシリカ粒子(S)の質量割合は、40質量%以上60質量%以下が好ましく、45質量%以上55質量%以下がより好ましい。
【0026】
ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径D1とシリカ粒子(S)の平均一次粒径D2との比D2/D1は、両者がトナー粒子表面において混じり合って分散する観点から、0.45以上2.00以下が好ましく、0.50以上1.70以下が好ましく、0.75以上1.50以下が更に好ましい。
【0027】
以下、本実施形態に係るトナーの構成を詳細に説明する。
【0028】
[トナー粒子]
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0029】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0031】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0032】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸としては、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0035】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0036】
ポリエステル樹脂は、公知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と重縮合させるとよい。
【0037】
結着樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0038】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等の染料;チタン化合物、シリカ等の無機顔料;などが挙げられる。
【0039】
着色剤は、可視光領域に吸収を有する物質に限定されない。着色剤は、例えば、近赤外領域に吸収を有する物質でもよく、蛍光着色剤でもよい。
近赤外領域に吸収を有する着色剤として、アミニウム塩系化合物、ナフタロシアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物等が挙げられる。
蛍光着色剤として、特開2021-127431号公報の段落0027に記載された蛍光着色剤が挙げられる。
【0040】
着色剤は、光輝性を有する着色剤でもよい。光輝性を有する着色剤として、アルミニウム、黄銅、青銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛等の金属粉末;酸化チタン又は黄色酸化鉄を被覆した雲母;硫酸バリウム、層状ケイ酸塩、層状アルミニウムのケイ酸塩等の被覆薄片状無機結晶基質;単結晶板状酸化チタン、塩基性炭酸塩、オキシ塩化ビスマス、天然グアニン、薄片状ガラス粉、金属蒸着した薄片状ガラス粉;などが挙げられる。
【0041】
着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。
【0042】
本実施形態においてトナー粒子は、着色剤を含有してもよく、着色剤を含有しなくてもよい。本実施形態に係るトナーは、トナー粒子に着色剤を含有しないトナー、いわゆる透明トナーであってもよい。
本実施形態においてトナー粒子が着色剤を含有しない場合、実施形態に係るトナーで形成された画像は、画像の光沢度及び/又は明度の変動が起こりにくい効果を奏する。
【0043】
本実施形態においてトナー粒子が着色剤を含有する場合、着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0044】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0045】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0046】
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0047】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0048】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0049】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0050】
トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0051】
トナー粒子の平均円形度は、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0052】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理を行って外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0053】
[ペロブスカイト型化合物粒子]
ペロブスカイト型化合物粒子は、平均一次粒径が10nm以上100nm以下であることが好ましい。ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径が10nm以上であると、トナー粒子に埋没しにくい。ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径が100nm以下であると、トナー粒子表面において均一性高く分散しやすい。
【0054】
上記の観点から、ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、20nm以上90nm以下がより好ましく、30nm以上80nm以下が更に好ましく、30nm以上60nm以下が特に好ましい。
【0055】
本実施形態においてペロブスカイト型化合物粒子の一次粒径とは、一次粒子像と同じ面積をもつ円の直径(いわゆる円相当径)であり、ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径とは、一次粒径の個数基準の分布において小径側から累積50%となる粒径である。ペロブスカイト型化合物粒子の一次粒径は、ペロブスカイト型化合物粒子が外添されたトナーの電子顕微鏡画像を撮影し、トナー粒子上のペロブスカイト型化合物粒子を少なくとも300個画像解析して求める。
【0056】
ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径は、例えば、ペロブスカイト型化合物粒子を湿式製法により製造する際の各種条件によって制御できる。
【0057】
ペロブスカイト型化合物粒子として、例えば、チタン酸マグネシウム粒子、チタン酸カルシウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸バリウム粒子等のチタン酸アルカリ土類金属粒子;ジルコン酸マグネシウム粒子、ジルコン酸カルシウム粒子、ジルコン酸ストロンチウム粒子、ジルコン酸バリウム粒子等のジルコン酸アルカリ土類金属粒子;が挙げられる。ペロブスカイト型化合物粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ペロブスカイト型化合物粒子は、結晶構造がペロブスカイト構造であり、通常は、粒子形状が立方体又は直方体である。本実施形態においてペロブスカイト型化合物粒子の形状は、立方体又は直方体ではなく、丸みを帯びた形状であることが好ましい。ペロブスカイト型化合物粒子にドーパントをドープすることで、丸みを帯びた形状にすることができる。
【0059】
ペロブスカイト型化合物粒子としては、トナーが電界にさらされた際の電荷減衰を抑制する観点から、チタン酸アルカリ土類金属粒子が好ましく、チタン酸ストロンチウム粒子がより好ましく、チタン及びストロンチウム以外の金属元素(ドーパント)がドープされたチタン酸ストロンチウム粒子が更に好ましく、ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム粒子が特に好ましい。以下、本実施形態におけるチタン酸ストロンチウム粒子を詳細に説明する。
【0060】
[チタン酸ストロンチウム粒子]
チタン酸ストロンチウム粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.2質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2.5質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上2.0質量部以下が更に好ましい。
【0061】
チタン酸ストロンチウム粒子とシリカ粒子(S)との合計量に占めるシリカ粒子(S)の質量割合は、40質量%以上60質量%以下が好ましく、45質量%以上55質量%以下がより好ましい。
【0062】
チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径D1とシリカ粒子(S)の平均一次粒径D2との比D2/D1は、両者がトナー粒子表面において混じり合って分散する観点から、0.45以上2.00以下が好ましく、0.50以上1.70以下が好ましく、0.75以上1.50以下が更に好ましい。
【0063】
チタン酸ストロンチウム粒子は、平均一次粒径が10nm以上100nm以下であることが好ましい。チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が10nm以上であると、トナー粒子に埋没しにくい。チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径が100nm以下であると、トナー粒子表面において均一性高く分散しやすい。
【0064】
上記の観点から、チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、20nm以上90nm以下がより好ましく、30nm以上80nm以下が更に好ましく、30nm以上60nm以下が更に好ましい。
【0065】
本実施形態においてチタン酸ストロンチウム粒子の一次粒径とは、一次粒子像と同じ面積をもつ円の直径(いわゆる円相当径)であり、チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径とは、一次粒径の個数基準の分布において小径側から累積50%となる粒径である。チタン酸ストロンチウム粒子の一次粒径は、チタン酸ストロンチウム粒子が外添されたトナーの電子顕微鏡画像を撮影し、トナー粒子上のチタン酸ストロンチウム粒子を少なくとも300個画像解析して求める。後述の[実施例]に具体的な測定方法を記載する。
【0066】
チタン酸ストロンチウム粒子の平均一次粒径は、例えば、チタン酸ストロンチウム粒子を湿式製法により製造する際の各種条件によって制御できる。
【0067】
チタン酸ストロンチウム粒子は、結晶構造がペロブスカイト構造であり、通常は、粒子形状が立方体又は直方体である。本実施形態においてチタン酸ストロンチウム粒子の形状は、下記の理由1及び理由2から、立方体又は直方体ではなく、丸みを帯びた形状であることが好ましい。チタン酸ストロンチウム粒子にチタン及びストロンチウム以外の金属元素(ドーパント)をドープすることで、丸みを帯びた形状にすることができる。
【0068】
理由1:丸みを帯びた形状であると、チタン酸ストロンチウム粒子がトナー粒子表面において均一性高く分散しやすい。
【0069】
理由2:立方体又は直方体のチタン酸ストロンチウム粒子、つまり、角を有するチタン酸ストロンチウム粒子においては、角に電荷が集中し、チタン酸ストロンチウム粒子の角とシリカ粒子(S)との間で局所的に大きな静電反発力がはたらき、シリカ粒子(S)の偏在を生じさせやすいと考えられる。シリカ粒子(S)の偏在を生じさせないために、チタン酸ストロンチウム粒子の形状は、角の少ない形状、つまり、丸みを帯びた形状であることが好ましい。
【0070】
チタン酸ストロンチウム粒子は、X線回折法により得られる(110)面のピークの半値幅が0.2°以上2.0°以下であることが好ましく、0.2°以上1.0°以下であることがより好ましい。
チタン酸ストロンチウム粒子のX線回折法により得られる(110)面のピークは、回折角度2θ=32°付近に現れるピークである。このピークは、ペロブスカイト結晶の(110)面のピークに相当する。
粒子形状が立方体又は直方体であるチタン酸ストロンチウム粒子は、ペロブスカイト結晶の結晶性が高く、(110)面のピークの半値幅は通常0.2°未満である。例えば、チタン工業社製のSW-350(主たる粒子形状が立方体であるチタン酸ストロンチウム粒子)を解析したところ、(110)面のピークの半値幅は0.15°であった。
一方、丸みを帯びた形状のチタン酸ストロンチウム粒子は、ペロブスカイト結晶の結晶性が相対的に低く、(110)面のピークの半値幅が拡がる。
チタン酸ストロンチウム粒子は丸みを帯びた形状であることが好ましく、丸みを帯びた形状の指標の一つとして、(110)面のピークの半値幅は、0.2°以上2.0°以下が好ましく、0.2°以上1.0°以下がより好ましく、0.2°以上0.5°以下が更に好ましい。
【0071】
チタン酸ストロンチウム粒子のX線回折は、X線回折装置(例えば、リガク社製、商品名RINT Ultima-III)を用いて測定する。測定の設定は、線源CuKα、電圧:40kV、電流:40mA、試料回転速度:回転なし、発散スリット:1.00mm、発散縦制限スリット:10mm、散乱スリット:開放、受光スリット:開放、走査モード:FT、計数時間:2.0秒、ステップ幅:0.0050°、操作軸:10.0000°~70.0000°とする。本開示においてX線回折パターンにおけるピークの半値幅は、半値全幅(full width at half maximum)である。
【0072】
チタン酸ストロンチウム粒子は、チタン及びストロンチウム以外の金属元素(ドーパント)がドープされていることが好ましい。チタン酸ストロンチウム粒子は、ドーパントを含むことにより、ペロブスカイト構造の結晶性が下がり丸みを帯びた形状となる。
【0073】
チタン酸ストロンチウム粒子のドーパントは、チタン及びストロンチウム以外の金属元素であれば特に制限されない。ドーパントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
チタン酸ストロンチウム粒子のドーパントは、イオン化したときにチタン酸ストロンチウム粒子を構成する結晶構造に入り得るイオン半径となる金属元素が好ましい。この観点から、チタン酸ストロンチウム粒子のドーパントは、イオン化したときのイオン半径が、40pm以上200pm以下である金属元素が好ましく、60pm以上150pm以下である金属元素がより好ましい。
【0075】
チタン酸ストロンチウム粒子のドーパントとしては、具体的には、ランタノイド、シリカ、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、リン、硫黄、カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、イットリウム、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、ビスマスが挙げられる。ランタノイドとしては、ランタン、セリウムが好ましい。これらの中でも、ドープしやすくチタン酸ストロンチウム粒子の形状制御がしやすい観点から、ランタンが好ましい。
【0076】
チタン酸ストロンチウム粒子のドーパントとしては、チタン酸ストロンチウム粒子を過度に負帯電させない観点から、電気陰性度が2.0以下の金属元素が好ましく、電気陰性度が1.3以下の金属元素がより好ましい。本実施形態において電気陰性度は、オールレッド・ロコウの電気陰性度である。電気陰性度が2.0以下の金属元素としては、ランタン(電気陰性度1.08)、マグネシウム(1.23)、アルミニウム(1.47)、シリカ(1.74)、カルシウム(1.04)、バナジウム(1.45)、クロム(1.56)、マンガン(1.60)、鉄(1.64)、コバルト(1.70)、ニッケル(1.75)、銅(1.75)、亜鉛(1.66)、ガリウム(1.82)、イットリウム(1.11)、ジルコニウム(1.22)、ニオブ(1.23)、銀(1.42)、インジウム(1.49)、錫(1.72)、バリウム(0.97)、タンタル(1.33)、レニウム(1.46)、セリウム(1.06)等が挙げられる。
【0077】
チタン酸ストロンチウム粒子内のドーパントの量は、ペロブスカイト型の結晶構造を有しながら丸みを帯びた形状とする観点から、ストロンチウムに対しドーパントが0.1モル%以上20モル%以下となる範囲が好ましく、0.1モル%以上10モル%以下となる範囲がより好ましく、0.2モル%以上5モル%以下となる範囲が更に好ましい。
【0078】
チタン酸ストロンチウム粒子は、チタン酸ストロンチウム粒子の作用を良化する観点から、疎水化処理された表面を有するチタン酸ストロンチウム粒子であることが好ましく、ケイ素含有有機化合物により疎水化処理された表面を有するチタン酸ストロンチウム粒子であることがより好ましい。
【0079】
チタン酸ストロンチウム粒子は、その質量に対して、1質量%以上50質量%以下(好ましく、5質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上30質量%以下、更に好ましくは10質量%以上25質量%以下)のケイ素含有有機化合物を含む表面を有することが好ましい。
つまり、ケイ素含有有機化合物による疎水化処理量は、チタン酸ストロンチウム粒子の質量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下が更に好ましく、10質量%以上25質量%以下が更に好ましい。
【0080】
チタン酸ストロンチウム粒子の、ケイ素含有有機化合物により疎水化処理された表面は、チタン酸ストロンチウム粒子の作用を良化する観点から、蛍光X線分析の定性及び定量分析から算出されるケイ素(Si)とストロンチウム(Sr)との質量比Si/Srが0.025以上0.25以下であることが好ましく、0.05以上0.20以下であることがより好ましい。
【0081】
チタン酸ストロンチウム粒子の疎水化処理表面の蛍光X線分析は、以下の方法で行われる。
蛍光X線解析装置(島津製作所社製、XRF1500)を用いて、X線出力:40V/70mA、測定面積:直径10mm、測定時間:15分の条件で、定性及び定量分析を実施する。分析する元素は、酸素(O)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ストロンチウム(Sr)、その他金属元素(Me)とし、別途作成した検量線データを参照して、各元素の質量割合(%)を算出する。この測定にて得られたケイ素(Si)の質量割合(%)とストロンチウム(Sr)の質量割合(%)から質量比Si/Srを算出する。
【0082】
チタン酸ストロンチウム粒子の体積固有抵抗率R(Ω・cm)は、常用対数値logRにて、11以上14以下が好ましく、11以上13以下がより好ましく、12以上13以下が更に好ましい。
【0083】
チタン酸ストロンチウム粒子の体積固有抵抗率Rは、例えば、ドーパントの種類、ドーパント量、疎水化処理剤の種類、疎水化処理量、疎水化処理後の乾燥温度および乾燥時間等によって制御し得る。
【0084】
チタン酸ストロンチウム粒子の体積固有抵抗率Rは、次のように測定する。
エレクトロメーター(KEYTHLEY社製、KEITHLEY610C)と高圧電源(FLUKE社製、FLUKE415B)とに接続された一対の20cmの円形極板(鋼製)である測定治具の下部極板上に、チタン酸ストロンチウム粒子を、厚さ1mm以上2mm以下の範囲の平坦な層を形成するように入れる。次いで、温度22℃/相対湿度55%の環境下で24時間調湿する。次いで、温度22℃/相対湿度55%の環境下で、チタン酸ストロンチウム粒子層上に上部極板を配置し、チタン酸ストロンチウム粒子層内の空隙を除くために上部極板上に4kgの重しを乗せ、その状態でチタン酸ストロンチウム粒子層の厚さを測定する。次いで、両極板に1000Vの電圧を印加して電流値を測定し、下記式(1)から体積固有抵抗率Rを算出する。
式(1):体積固有抵抗率R(Ω・cm)=V×S÷(A1-A0)÷d
式(1)中、Vは印加電圧1000(V)、Sは極板面積20(cm)、A1は測定電流値(A)、A0は印加電圧0Vのときの初期電流値(A)、dはチタン酸ストロンチウム粒子層の厚さ(cm)である。
【0085】
チタン酸ストロンチウム粒子は、含水率が1.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。含水率が1.5質量%以上10質量%以下(より好ましくは2質量%以上5質量%以下)であると、チタン酸ストロンチウム粒子の電気抵抗が適度な範囲に制御され、チタン酸ストロンチウム粒子同士の静電的反発による偏在抑制に優れる。チタン酸ストロンチウム粒子の含水率は、例えば、チタン酸ストロンチウム粒子を湿式製法により製造し、乾燥処理の温度及び時間を調節することにより制御することができる。チタン酸ストロンチウム粒子を疎水化処理する場合は、疎水化処理した後における乾燥処理の温度及び時間を調節することにより、チタン酸ストロンチウム粒子の含水率を制御することができる。
【0086】
チタン酸ストロンチウム粒子の含水率は、次のように測定する。
測定試料20mgを温度22℃/相対湿度55%のチャンバーにて17時間静置し調湿した後、温度22℃/相対湿度55%の室内にて、熱天秤(島津製作所製TGA-50型)によりチッ素ガス雰囲気中にて30℃/分の温度上昇速度にて30℃から250℃まで加熱し、加熱減量(加熱によって失われた質量)を測定する。
そして、測定した加熱減量を元に以下の式にて含水率を算出する。
含水率(質量%)=(30℃から250℃における加熱減量)÷(調湿後加熱前の質量)×100
【0087】
[チタン酸ストロンチウム粒子の製造方法]
チタン酸ストロンチウム粒子は、チタン酸ストロンチウム粒子そのものであってもよく、チタン酸ストロンチウム粒子の表面を疎水化処理した粒子でもよい。チタン酸ストロンチウム粒子の製造方法は、特に制限されないが、粒径及び形状を制御する観点から、湿式製法であることが好ましい。
【0088】
チタン酸ストロンチウム粒子の湿式製法は、例えば、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にアルカリ水溶液を添加しながら反応させ、次いで酸処理を行う製造方法である。本製造方法においては、酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合、反応初期の酸化チタン源濃度、アルカリ水溶液を添加するときの温度及び添加速度などによって、チタン酸ストロンチウム粒子の粒径が制御される。
【0089】
酸化チタン源としてはチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品が好ましい。ストロンチウム源としては、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
【0090】
酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合は、SrO/TiOモル比で0.9以上1.4以下が好ましく、1.05以上1.20以下がより好ましい。反応初期の酸化チタン源濃度は、TiOとして0.05モル/L以上1.3モル/L以下が好ましく、0.5モル/L以上1.0モル/L以下がより好ましい。
【0091】
チタン酸ストロンチウム粒子の形状を、立方体又は直方体ではなく、丸みを帯びた形状にする観点から、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にドーパント源を添加することが好ましい。ドーパント源としては、チタン及びストロンチウム以外の金属の酸化物が挙げられる。ドーパント源としての金属酸化物は、例えば、硝酸、塩酸又は硫酸に溶解した溶液として添加する。ドーパント源の添加量は、ストロンチウム源に含まれるストロンチウム100モルに対して、ドーパント源に含まれる金属が0.1モル以上20モル以下となる量が好ましく、0.1モル以上10モル以下となる量がより好ましく、0.2モル以上5モル以下となる量が更に好ましい。
【0092】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリ水溶液を添加するときの反応液の温度は、高いほど結晶性の良好なチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。アルカリ水溶液を添加するときの反応液の温度は、ペロブスカイト型の結晶構造を有しながら丸みを帯びた形状とする観点から、60℃以上100℃以下の範囲が好ましい。アルカリ水溶液の添加速度は、添加速度が遅いほど大きな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られ、添加速度が速いほど小さな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込み原料に対し例えば0.001当量/h以上1.2当量/h以下であり、0.002当量/h以上1.1当量/h以下が適切である。
【0093】
アルカリ水溶液を添加した後、未反応のストロンチウム源を取り除く目的で酸処理を行う。酸処理は、例えば塩酸を用いて、反応液のpHを2.5乃至7.0、より好ましくは4.5乃至6.0に調整する。酸処理後、反応液を固液分離し、固形分を乾燥処理してチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。
【0094】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理は、例えば、疎水化処理剤であるケイ素含有有機化合物と溶媒とを混合してなる処理液を調製し、攪拌下、チタン酸ストロンチウム粒子と処理液とを混合し、さらに攪拌を続けることで行われる。表面処理後は、処理液の溶媒を除去する目的で乾燥処理を行う。
【0095】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるケイ素含有有機化合物としては、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0096】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン;が挙げられる。
【0097】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるシラザン化合物としては、例えば、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0098】
チタン酸ストロンチウム粒子の表面処理に用いるシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;等が挙げられる。
【0099】
前記処理液の調製に用いる溶媒としては、ケイ素含有有機化合物がアルコキシシラン化合物又はシラザン化合物である場合はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)が好ましく、ケイ素含有有機化合物がシリコーンオイルである場合は炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン)が好ましい。
【0100】
前記処理液において、ケイ素含有有機化合物の濃度は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下が更に好ましい。
【0101】
表面処理に用いるケイ素含有有機化合物の量は、チタン酸ストロンチウム粒子100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下が好ましく、5質量部以上40質量部以下がより好ましく、5質量部以上30質量部以下が更に好ましい。
【0102】
[シリカ粒子(S)]
シリカ粒子(S)は、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有し、且つ、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035以上0.45以下である。
以下、「モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物」を「モリブデン窒素含有化合物」という。
【0103】
シリカ粒子(S)のモリブデン元素のNet強度NMoは、帯電分布狭化及び帯電分布維持性の観点から、5kcps以上75kcps以下が好ましく、7kcps以上55kcps以下がより好ましく、8kcps以上50kcps以下が更に好ましく、10kcps以上40kcps以下が更に好ましい。
【0104】
シリカ粒子におけるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiの測定方法は、下記のとおりである。
シリカ粒子約0.5gを、圧縮成形機を用いて荷重6t且つ60秒の加圧で圧縮し、直径50mm且つ厚さ2mmのディスクを作製する。このディスクを試料にして、走査型蛍光X線分析装置(XRF-1500、(株)島津製作所製)を用いて、下記の条件で定性定量元素分析を行い、モリブデン元素、ケイ素元素それぞれのNet強度(単位:kilo counts per second,kcps)を求める。
・管電圧:40kV
・管電流:90mA
・測定面積(分析径):直径10mm
・測定時間:30分
・対陰極:ロジウム
【0105】
シリカ粒子(S)は、モリブデン窒素含有化合物を有する。以下、シリカ粒子(S)の好ましい構造を説明する。
【0106】
シリカ粒子(S)の実施態様として、シランカップリング剤の反応生成物によりシリカ母粒子表面の少なくとも一部が被覆され、且つ、前記反応生成物の被覆構造にモリブデン窒素含有化合物が付着したシリカ粒子が挙げられる。本実施形態において、前記反応生成物の被覆構造にさらに疎水化処理構造(シリカ粒子を疎水化処理剤で処理してなる構造)が付着していてもよい。シランカップリング剤は、1官能シランカップリング剤、2官能シランカップリング剤及び3官能シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、3官能シランカップリング剤がより好ましい。
【0107】
-シリカ母粒子-
シリカ母粒子は、乾式シリカでもよく、湿式シリカでもよい。
乾式シリカとしては、シラン化合物を燃焼させて得られる燃焼法シリカ(ヒュームドシリカ);金属ケイ素粉を爆発的に燃焼させて得られる爆燃法シリカ;が挙げられる。
湿式シリカとしては、珪酸ナトリウムと鉱酸との中和反応によって得られる湿式シリカ(アルカリ条件で合成・凝集した沈降法シリカ、酸性条件で合成・凝集したゲル法シリカ粒子);酸性珪酸をアルカリ性にして重合することで得られるコロイダルシリカ;有機シラン化合物(例えばアルコキシシラン)の加水分解によって得られるゾルゲルシリカ;が挙げられる。シリカ母粒子としては、帯電分布狭化の観点から、ゾルゲルシリカが好ましい。
【0108】
-シランカップリング剤の反応生成物-
シランカップリング剤の反応生成物(特に、3官能シランカップリング剤の反応生成物)からなる構造は、細孔構造を有し、且つ、モリブデン窒素含有化合物と親和性が高い。したがって、細孔の奥深くまでモリブデン窒素含有化合物が入り込み、シリカ粒子(S)に含まれるモリブデン窒素含有化合物の含有量が比較的多くなる。
シリカ母粒子の表面が負帯電性であるところ、正帯電性のモリブデン窒素含有化合物が付着することで、シリカ母粒子の過剰な負帯電を打ち消す効果が発生する。モリブデン窒素含有化合物はシリカ粒子(S)の最表面ではなくシランカップリング剤の反応生成物からなる被覆構造(つまり細孔構造)の内部に付着しているので、シリカ粒子(S)の帯電分布が正帯電側に広がることはなく、シリカ母粒子の過剰な負帯電を打ち消すことでシリカ粒子(S)の帯電分布の狭化が実現される。
【0109】
シランカップリング剤は、N(窒素元素)を含有しない化合物であることが好ましい。シランカップリング剤としては、下記の式(TA)で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
式(TA) R -Si(OR4-n
式(TA)中、Rは炭素数1以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基であり、Rはハロゲン原子又はアルキル基であり、nは1、2又は3である。nが2又は3のとき、複数個のRは同じ基でもよく異なる基でもよい。nが1又は2のとき、複数個のRは同じ基でもよく異なる基でもよい。
【0110】
シランカップリング剤の反応生成物とは、例えば、式(TA)において、ORのすべて又は一部がOH基に置換した反応生成物;ORがOH基に置換した基のすべて又は一部の基どうしが重縮合した反応生成物;ORがOH基に置換した基のすべて又は一部とシリカ母粒子のSiOH基とが重縮合した反応生成物;が挙げられる。
【0111】
式(TA)中のRで表される脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、直鎖状又は分岐状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、炭素数1以上20以下が好ましく、炭素数1以上18以下がより好ましく、炭素数1以上12以下が更に好ましく、炭素数1以上10以下が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。脂肪族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0112】
飽和脂肪族炭化水素基としては、直鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等)、分岐状アルキル基(イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーペンチル基、イソペンタデシル基等)、環状アルキル基(シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等)などが挙げられる。
【0113】
不飽和脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基(ビニル基(エテニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、1-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ドデセニル基、ペンテニル基等)、アルキニル基(エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、3-ヘキシニル基、2-ドデシニル基等)などが挙げられる。
【0114】
式(TA)中のRで表される芳香族炭化水素基は、炭素数6以上20以下が好ましく、炭素数6以上18以下がより好ましく、炭素数6以上12以下が更に好ましく、炭素数6以上10以下が更に好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基などが挙げられる。芳香族炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0115】
式(TA)中のRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。
【0116】
式(TA)中のRで表されるアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、1以上8以下のアルキル基がより好ましく、1以上4以下のアルキル基が更に好ましい。炭素数1以上10以下の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基が挙げられる。炭素数3以上10以下の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基等が挙げられる。炭素数3以上10以下の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、及びこれら単環のアルキル基が連結した多環(例えば、二環、三環、スピロ環)のアルキル基が挙げられる。アルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0117】
式(TA)中のnは、1、2又は3であり、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0118】
式(TA)で表されるシランカップリング剤は、Rが炭素数1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基であり、Rがハロゲン原子又は炭素数1以上10以下のアルキル基であり且つnが1である3官能シランカップリング剤が好ましい。
【0119】
3官能シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、デシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン(以上、式(TA)中のRが、無置換の脂肪族炭化水素基又は無置換の芳香族炭化水素基である化合物);3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(以上、式(TA)中のRが、置換された脂肪族炭化水素基又は置換された芳香族炭化水素基である化合物);などが挙げられる。3官能シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0120】
3官能シランカップリング剤としては、アルキルトリアルコキシシランが好ましく、式(TA)においてRが炭素数1以上20以下(好ましくは炭素数1以上15以下、より好ましくは炭素数1以上8以下、更に好ましくは炭素数1以上4以下、特に好ましくは炭素数1又は2)のアルキル基であり且つRが炭素数1以上2以下のアルキル基であるアルキルトリアルコキシシランがより好ましい。
【0121】
シリカ母粒子表面の被覆構造を構成するシランカップリング剤としては、より具体的には、アルキル基の炭素数が1以上20以下である、アルキルトリメトキシシラン及びアルキルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の3官能シランカップリング剤が好ましく;
アルキル基の炭素数が1以上15以下である、アルキルトリメトキシシラン及びアルキルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の3官能シランカップリング剤がより好ましく;
アルキル基の炭素数が1以上8以下である、アルキルトリメトキシシラン及びアルキルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の3官能シランカップリング剤が更に好ましく;
アルキル基の炭素数が1以上4以下である、アルキルトリメトキシシラン及びアルキルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の3官能シランカップリング剤が更に好ましく;
メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びエチルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の3官能シランカップリング剤が特に好ましい。
【0122】
シランカップリング剤の反応生成物で構成された被覆構造は、シリカ粒子(S)全体に対して、5.5質量%以上30質量%以下が好ましく、7質量%以上22質量%以下がより好ましい。
【0123】
-モリブデン窒素含有化合物-
モリブデン窒素含有化合物は、アンモニア及び温度25℃以下で気体状態の化合物を除く、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物である。
【0124】
モリブデン窒素含有化合物は、シランカップリング剤の反応生成物からなる被覆構造の内部(つまり細孔構造の細孔内部)に付着していることが好ましい。モリブデン窒素含有化合物は、1種でもよく2種以上でもよい。
【0125】
モリブデン窒素含有化合物は、帯電分布狭化及び帯電分布維持性の観点から、モリブデン元素を含む第四級アンモニウム塩(特に、モリブデン酸第四級アンモニウム塩)、及び、第四級アンモニウム塩とモリブデン元素を含む金属酸化物との混合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。モリブデン元素を含む第四級アンモニウム塩は、モリブデン元素を含むアニオンと第四級アンモニウムカチオンとの結合が強いので、帯電分布維持性が高い。
【0126】
モリブデン窒素含有化合物としては、下記の式(1)で表される化合物が好ましい。
【0127】
【化1】
【0128】
式(1)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、Xはモリブデン元素を含む陰イオンを表す。ただし、R、R、R及びRの少なくとも1つはアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。R、R、R及びRのうち2つ以上が連結して、脂肪族環、芳香環又はヘテロ環を形成してもよい。ここで、アルキル基、アラルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。
【0129】
~Rで表されるアルキル基としては、炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上20以下の分岐状のアルキル基が挙げられる。炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基等が挙げられる。炭素数3以上20以下の分岐状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基等が挙げられる。
~Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、テトラデシル基等の炭素数1以上15以下のアルキル基が好ましい。
【0130】
~Rで表されるアラルキル基としては、炭素数7以上30以下のアラルキル基が挙げられる。炭素数7以上30以下のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル 基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラチルメチル基、フェニル-シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
~Rで表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基等の炭素数7以上15以下のアラルキル基が好ましい。
【0131】
~Rで表されるアリール基としては、炭素数6以上20以下のアリール基が挙げられる。炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ピリジル基、ナフチル基等が挙げられる。
~Rで表されるアリール基としては、フェニル基等の炭素数6以上10以下のアリール基が好ましい。
【0132】
、R、R及びRの2つ以上が互いに連結して形成される環としては、炭素数2以上20以下の脂環、炭素数2以上20以下の複素環式アミン等が挙げられる。
【0133】
、R、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ニトリル基、カルボニル基、エーテル基、アミド基、シロキサン基、シリル基、シランアルコキシ基等が挙げられる。
【0134】
、R、R及びRは各々独立に、炭素数1以上16以下のアルキル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、又は炭素数6以上20以下のアリール基を表すことが好ましい。
【0135】
で表されるモリブデン元素を含む陰イオンは、モリブデン酸イオンが好ましく、モリブデンが4価又は6価であるモリブデン酸イオンが好ましく、モリブデンが6価であるモリブデン酸イオンがより好ましい。モリブデン酸イオンとしては、具体的には、MoO 2-、Mo 2-、Mo10 2-、Mo13 2-、Mo24 2-、Mo26 4-が好ましい。
【0136】
式(1)で表される化合物は、帯電分布狭化及び帯電分布維持性の観点から、総炭素数18以上35以下が好ましく、総炭素数20以上32以下がより好ましい。
【0137】
式(1)で表される化合物を以下に例示する。本実施形態はこれに限定されない。
【0138】
【化2】
【0139】
モリブデン元素を含む第四級アンモニウム塩として、[N(CH)(C1429Mo28 4-、[N(C(CMo 2-、[N(CH(CH)(CH17CHMoO 2-、[N(CH(CH)(CH15CHMoO 2-等のモリブデン酸第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0140】
モリブデン元素を含む金属酸化物として、モリブデン酸化物(三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、Mo26)、モリブデン酸アルカリ金属塩(モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム等)、モリブデンアルカリ土類金属塩(モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸カルシウム等)、その他複合酸化物(Bi・2MoO、γ-CeMo13等)が挙げられる。
【0141】
シリカ粒子(S)は、300℃以上600℃以下の範囲の温度帯で加熱した際に、モリブデン窒素含有化合物が検出される。モリブデン窒素含有化合物は、不活性ガス中での300℃以上600℃以下の加熱で検出することができ、例えば、Heをキャリアガスに用いた加熱炉式の落下型熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて検出する。具体的には、0.1mg以上10mg以下のシリカ粒子を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計に導入し、検出されるピークのMSスペクトルからモリブデン窒素含有化合物の含有有無を確認する。モリブデン窒素含有化合物を含有するシリカ粒子から熱分解で生成する成分としては、例えば、下記の式(2)で示される第一級、第二級若しくは第三級のアミン又は芳香族窒素化合物が挙げられる。式(2)のR、R及びRはそれぞれ式(1)のR、R及びRと同義である。モリブデン窒素含有化合物が第四級アンモニウム塩である場合、600℃の熱分解により側鎖の一部が脱離し、第三級アミンが検出される。
【0142】
【化3】
【0143】
-モリブデン元素を含まない窒素元素含有化合物-
シリカ粒子(S)において、シランカップリング剤の反応生成物の細孔には、モリブデン元素を含まない窒素元素含有化合物が付着していてもよい。モリブデン元素を含まない窒素元素含有化合物としては、例えば、第四級アンモニウム塩、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物、アミド化合物、イミン化合物、及びニトリル化合物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。モリブデン元素を含まない窒素元素含有化合物は、好ましくは第四級アンモニウム塩である。
【0144】
第一級アミン化合物の具体例としては、フェネチルアミン、トルイジン、カテコールアミン、2,4,6-トリメチルアニリンが挙げられる。
第二級アミン化合物の具体例としては、ジベンジルアミン、2-ニトロジフェニルアミン、4-(2-オクチルアミノ)ジフェニルアミンが挙げられる。
第三級アミン化合物の具体例としては、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、N,N-ジベンジル-2-アミノエタノール、N-ベンジル-N-メチルエタノールアミンが挙げられる。
アミド化合物の具体例としては、N-シクロヘキシル-p-トルエンスルホンアミド、4-アセトアミド-1-ベンジルピペリジン、N-ヒドロキシ-3-[1-(フェニルチオ)メチル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル]ベンズアミドが挙げられる。
イミン化合物の具体例としては、ジフェニルメタンイミン、2,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニルイミノ)ブタン、N,N’-(エタン-1,2-ジイリデン)ビス(2,4,6-トリメチルアニリン)が挙げられる。
ニトリル化合物の具体例としては、3-インドールアセトニトリル、4-[(4-クロロ-2-ピリミジニル)アミノ]ベンゾニトリル、4-ブロモ-2,2-ジフェニルブチロニトリルが挙げられる。
【0145】
第四級アンモニウム塩としては、下記の式(AM)で表される化合物が挙げられる。式(AM)で表される化合物は、1種でもよく2種以上でもよい。
【0146】
【化4】
【0147】
式(AM)中、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、Zは陰イオンを表す。ただし、R11、R12、R13及びR14の少なくとも1つはアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。R11、R12、R13及びR14のうち2つ以上が連結して、脂肪族環、芳香環又はヘテロ環を形成してもよい。ここで、アルキル基、アラルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよい。
【0148】
11~R14で表されるアルキル基としては、炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上20以下の分岐状のアルキル基が挙げられる。炭素数1以上20以下の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基等が挙げられる。炭素数3以上20以下の分岐状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基等が挙げられる。
11~R14で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、テトラデシル基等の炭素数1以上15以下のアルキル基が好ましい。
【0149】
11~R14で表されるアラルキル基としては、炭素数7以上30以下のアラルキル基が挙げられる。炭素数7以上30以下のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル 基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラチルメチル基、フェニル-シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
11~R14で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基等の炭素数7以上15以下のアラルキル基が好ましい。
【0150】
11~R14で表されるアリール基としては、炭素数6以上20以下のアリール基が挙げられる。炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ピリジル基、ナフチル基等が挙げられる。
11~R14で表されるアリール基としては、フェニル基等の炭素数6以上10以下のアリール基が好ましい。
【0151】
11、R12、R13及びR14の2つ以上が互いに連結して形成される環としては、炭素数2以上20以下の脂環、炭素数2以上20以下の複素環式アミン等が挙げられる。
【0152】
11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ニトリル基、カルボニル基、エーテル基、アミド基、シロキサン基、シリル基、シランアルコキシ基等が挙げられる。
【0153】
11、R12、R13及びR14は各々独立に、炭素数1以上16以下のアルキル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、又は炭素数6以上20以下のアリール基を表すことが好ましい。
【0154】
で表される陰イオンは、有機陰イオン及び無機陰イオンのいずれでもよい。
有機陰イオンとしては、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、ポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン(1-ナフトール-4-スルホン酸イオン等)などが挙げられる。
無機陰イオンとしては、OH、F、Fe(CN) 3-、Cl、Br、NO 、NO 、CO 2-、PO 3-、SO 2-等が挙げられる。
【0155】
式(AM)で表される化合物は、帯電分布狭化及び帯電分布維持性の観点から、総炭素数18以上35以下が好ましく、総炭素数20以上32以下がより好ましい。
【0156】
式(AM)で表される化合物を以下に例示する。本実施形態はこれに限定されない。
【0157】
【化5】
【0158】
シリカ粒子(S)に含まれるモリブデン窒素含有化合物及びモリブデン元素を含まない窒素元素含有化合物の合計含有量は、帯電分布狭化及び帯電分布維持性の観点から、ケイ素元素に対する窒素元素の質量比N/Siとして、0.005以上0.50以下が好ましく、0.008以上0.45以下がより好ましく、0.015以上0.20以下がより好ましく、0.018以上0.10以下が更に好ましい。
【0159】
シリカ粒子(S)における上記の質量比N/Siは、酸素・窒素分析装置(例えば堀場製作所社製EMGA-920)を用いて、積算時間45秒で測定し、Si原子に対するN原子の質量割合(N/Si)として求める。試料には前処理として100℃24時間以上の真空乾燥を施し、アンモニア等の不純物を除去する。
【0160】
アンモニア/メタノール混合溶液によってシリカ粒子(S)から抽出される、モリブデン窒素含有化合物及びモリブデン元素を含まない窒素元素含有化合物の合計抽出量Xは、シリカ粒子(S)の質量に対して0.1質量%以上であることが好ましい。且つ、アンモニア/メタノール混合溶液によってシリカ粒子(S)から抽出される、モリブデン窒素含有化合物及びモリブデン元素を含まない窒素元素含有化合物の合計抽出量Xと、水によってシリカ粒子(S)から抽出される、モリブデン窒素含有化合物及びモリブデン元素を含まない窒素元素含有化合物の合計抽出量Y(Xと同様に、シリカ粒子(S)の質量に対する質量割合)とは、Y/X<0.3を満たすことが好ましい。
上記の関係は、シリカ粒子(S)に含まれる窒素元素含有化合物が水に溶けにくい性質であること、すなわち空気中の水分を吸着しにくい性質であることを示す。したがって、上記の関係であると、シリカ粒子(S)は帯電分布狭化及び帯電分布維持性に優れる。
【0161】
抽出量Xは、シリカ粒子(S)の質量に対して0.25質量%以上6.5質量%以下が好ましい。抽出量Xと抽出量Yとの比Y/Xは、理想的には0である。
【0162】
抽出量Xと抽出量Yとは、下記の方法で測定する。
シリカ粒子を、熱重量・質量分析装置(例えばネッチ・ジャパン株式会社製のガスクロマトグラフ質量分析計)により400℃で分析し、炭素数1以上の炭化水素が窒素原子と共有結合した化合物のシリカ粒子に対する質量分率を測定し、積算しW1とする。
液温25℃のアンモニア/メタノール溶液(Sigma-Aldrich社製、アンモニア/メタノールの質量比=1/5.2)30質量部に、シリカ粒子1質量部を添加し、30分間超音波処理を行った後、シリカ粉体と抽出液を分離する。分離したシリカ粒子を真空乾燥機で100℃24時間乾燥し、熱重量・質量分析装置により400℃で、炭素数1以上の炭化水素が窒素原子と共有結合した化合物のシリカ粒子に対する質量分率を測定し、積算しW2とする。
液温25℃の水30質量部に、シリカ粒子1質量部を添加し、30分間超音波処理を行った後、シリカ粒子と抽出液を分離する。分離したシリカ粒子を真空乾燥機で100℃24時間乾燥し、熱重量・質量分析装置により400℃で、炭素数1以上の炭化水素が窒素原子と共有結合した化合物のシリカ粒子に対する質量分率を測定し、積算しW3とする。
W1とW2とから、抽出量X=W1-W2を算出する。
W1とW3とから、抽出量Y=W1-W3を算出する。
【0163】
-疎水化処理構造-
シリカ粒子(S)において、シランカップリング剤の反応生成物の被覆構造に、疎水化処理構造(シリカ粒子を疎水化処理剤で処理してなる構造)が付着していてもよい。
【0164】
疎水化処理剤としては、例えば、有機ケイ素化合物が適用される。有機ケイ素化合物としては、例えば、下記が挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン等の低級アルキル基を有するアルコキシシラン化合物又はハロシラン化合物。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン化合物。
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物。
p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基を有するアルコキシシラン化合物。
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートアルキル基を有するアルコキシシラン化合物。
ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン化合物。
【0165】
シリカ粒子(S)は、帯電分布狭化及び帯電分布維持性の観点から、下記の特性を有することが好ましい。
【0166】
-平均円形度、平均一次粒径、個数粒度分布指標-
シリカ粒子(S)の平均円形度は、0.80以上1.00以下が好ましく、0.85以上1.00以下がより好ましく、0.88以上1.00以下が更に好ましい。
【0167】
シリカ粒子(S)の平均一次粒径は、10nm以上120nm以下が好ましく、20nm以上110nm以下がより好ましく、30nm以上100nm以下が更に好ましく、40nm以上90nm以下が特に好ましい。
【0168】
シリカ粒子(S)の個数粒度分布指標は、1.1以上2.0以下が好ましく、1.15以上1.6以下がより好ましい。
【0169】
シリカ粒子(S)の平均円形度、平均一次粒径、個数粒度分布指標の測定方法は、下記のとおりである。
エネルギー分散型X線分析装置(EDX装置)(堀場製作所製、EMAX Evolution X-Max80mm)を取り付けた走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ製、S-4800)を用いて、倍率4万倍でトナーを撮影する。EDX分析によってMo元素、N元素及びSi元素の存在に基づきシリカ粒子(S)を一視野内から200個特定する。シリカ粒子(S)200個の画像を画像処理解析ソフトWinRoof(三谷商事株式会社)で解析する。一次粒子像それぞれの円相当径と面積と周囲長とを求め、さらに、円形度=4π×(粒子像の面積)÷(粒子像の周囲長)を求める。円形度の分布において小さい側から累積50%となる円形度を平均円形度とする。円相当径の分布において小径側から累積50%となる円相当径を平均一次粒径とする。円相当径の分布において小径側から累積16%となる粒径をD16とし、累積84%となる粒径をD84とし、個数粒度分布指標=(D84/D16)0.5を求める。
【0170】
-疎水化度-
シリカ粒子(S)の疎水化度は、10%以上60%以下が好ましく、20%以上55%以下がより好ましく、28%以上53%以下が更に好ましい。
【0171】
シリカ粒子の疎水化度の測定方法は、下記のとおりである。
イオン交換水50mlに、シリカ粒子を0.2質量%入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながらビュレットからメタノールを滴下し、試料全量が沈んだ終点におけるメタノール-水混合溶液中のメタノール質量分率を疎水化度として求める。
【0172】
-体積抵抗率-
シリカ粒子(S)の体積抵抗率Rは、1.0×10Ωcm以上1.0×1012.5Ωcm以下が好ましく、1.0×107.5Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下がより好ましく、1.0×10Ωcm以上1.0×1011.5Ωcm以下がより好ましく、1.0×10Ω・cm以上1.0×1011Ω・cm以下が更に好ましい。シリカ粒子(S)の体積抵抗率Rは、モリブデン窒素含有化合物の含有量により調整できる。
【0173】
シリカ粒子(S)は、350℃焼成前後における体積抵抗率を各々Ra及びRbとしたとき、比Ra/Rbが0.01以上0.8以下であることが好ましく、0.015以上0.6以下であることがより好ましい。
シリカ粒子(S)の350℃焼成前の体積抵抗率Ra(前記体積抵抗率Rと同義)は、1.0×10Ωcm以上1.0×1012.5Ωcm以下が好ましく、1.0×107.5Ωcm以上1.0×1012Ωcm以下がより好ましく、1.0×10Ωcm以上1.0×1011.5Ωcm以下がより好ましく、1.0×10Ω・cm以上1.0×1011Ω・cm以下が更に好ましい。
【0174】
350℃焼成は、窒素環境下、昇温速度10℃/分で350℃まで昇温し、350℃で3時間保持し、昇温速度10℃/分で室温(25℃)まで冷却する。
シリカ粒子(S)の体積抵抗率は、温度20℃且つ相対湿度50%の環境で下記のとおり測定する。
20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、シリカ粒子(S)を1mm以上3mm以下程度の厚さに載せ、シリカ粒子層を形成する。シリカ粒子層の上に20cmの電極板を載せシリカ粒子層を挟み込み、シリカ粒子間の空隙をなくすため電極板の上に0.4MPaの圧力をかける。シリカ粒子層の厚さL(cm)を測定する。シリカ粒子層上下の両電極に接続したインピーダンスアナライザ(Solartron Analytical社製)にて、周波数10-3Hz以上10Hz以下の範囲のナイキストプロットを得る。これを、バルク抵抗、粒子界面抵抗及び電極接触抵抗の3種類の抵抗成分が存在すると仮定して、等価回路にフィッティングし、バルク抵抗R(Ω)を求める。バルク抵抗R(Ω)とシリカ粒子層の厚さL(cm)とから、式ρ=R/Lによりシリカ粒子の体積抵抗率ρ(Ω・cm)を算出する。
【0175】
-OH基量-
シリカ粒子(S)のOH基量は、0.05個/nm以上6個/nm以下が好ましく、0.1個/nm以上5.5個/nm以下がより好ましく、0.15個/nm以上5個/nm以下が好ましく、0.2個/nm以上4個/nm以下がより好ましく、0.2個/nm以上3個/nm以下が更に好ましい。
【0176】
シリカ粒子のOH基量は、シアーズ法により下記のとおり測定する。
シリカ粒子1.5gを水50g/エタノール50g混合液に加えて、超音波ホモジナイザーで2分間攪拌し、分散液を作製する。25℃の環境下で攪拌しながら、0.1mol/Lの塩酸水溶液を1.0g滴下し、試験液を得る。試験液を自動滴定装置に入れ、0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液による電位差滴定を実施し、滴定曲線の微分曲線を作成する。滴定曲線の微分値が1.8以上となる変曲点のうち、0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液の滴定量が最も多くなる滴定量をEとする。
下記の式から、シリカ粒子の表面シラノール基密度ρ(個/nm)を算出し、これをシリカ粒子のOH基量とする。
式:ρ=((0.01×E-0.1)×NA/1000)/(M×SBET×1018
E:滴定曲線の微分値が1.8以上となる変曲点のうち、0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液の滴定量が最も多くなる滴定量、NA:アボガドロ数、M:シリカ粒子量(1.5g)、SBET:窒素吸着3点法により測定したシリカ粒子のBET比表面積(m/g)(平衡相対圧は0.3とする)。
【0177】
-細孔直径-
シリカ粒子(S)は、窒素ガス吸着法の細孔分布曲線において、細孔直径0.01nm以上2nm以下の範囲に第一ピークを有し、細孔直径1.5nm以上50nm以下の範囲に第二ピークを有することが好ましく、2nm以上50nm以下の範囲に第二ピークを有することがより好ましく、2nm以上40nm以下の範囲に第二ピークを有することが更に好ましく、2nm以上30nm以下の範囲に第二ピークを有することが更に好ましい。
第一ピーク及び第二ピークが上記範囲に有ることで、モリブデン窒素含有化合物が被覆構造の細孔奥深くまで入り込み、帯電分布が狭化する。
【0178】
窒素ガス吸着法の細孔分布曲線の求め方は、下記のとおりである。
シリカ粒子を、液体窒素温度(-196℃)に冷却して、窒素ガスを導入し、窒素ガスの吸着量を定容量法又は重量法で求める。導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより吸着等温線を作成する。吸着等温線から、BJH法の計算式により、縦軸が頻度、横軸が細孔直径で表される細孔径分布曲線を求める。得られた細孔径分布曲線から、縦軸が体積、横軸が細孔直径で表される積算細孔容積分布を求め、細孔直径のピークの位置を確認する。
【0179】
シリカ粒子(S)は、帯電分布狭化及び帯電分布維持性の観点から、下記の態様(A)及び下記態様(B)のいずれかを満たすことが好ましい。
【0180】
・態様(A):350℃焼成前後における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径1nm以上50nm以下の細孔体積を各々A及びBとしたとき、比B/Aが1.2以上5以下であり且つBが0.2cm/g以上3cm/g以下である態様。
以下、「350℃焼成前における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径1nm以上50nm以下の細孔体積A」を「350℃焼成前の細孔体積A」といい、「350℃焼成後における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径1nm以上50nm以下の細孔体積B」を「350℃焼成後の細孔体積B」という。
【0181】
350℃焼成は、窒素環境下、昇温速度10℃/分で350℃まで昇温し、350℃で3時間保持し、昇温速度10℃/分で室温(25℃)まで冷却する。
細孔体積の測定方法は、下記のとおりである。
シリカ粒子を、液体窒素温度(-196℃)に冷却して、窒素ガスを導入し、窒素ガスの吸着量を定容量法又は重量法で求める。導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより吸着等温線を作成する。吸着等温線から、BJH法の計算式により、縦軸が頻度、横軸が細孔直径で表される細孔径分布曲線を求める。得られた細孔径分布曲線から、縦軸が体積、横軸が細孔直径で表される積算細孔容積分布を求める。得られた積算細孔容積分布から、細孔直径1nm以上50nm以下の範囲の細孔容積を積算し、それを「細孔直径1nm以上50nm以下の細孔体積」とする。
【0182】
350℃焼成前の細孔体積Aと350℃焼成後の細孔体積Bとの比B/Aは、1.2以上5以下が好ましく、1.4以上3以下がより好ましく、1.4以上2.5以下が更に好ましい。
350℃焼成後の細孔体積Bは、0.2cm/g以上3cm/g以下が好ましく、0.3cm/g以上1.8cm/g以下がより好ましく、0.6cm/g以上1.5cm/g以下が更に好ましい。
【0183】
態様(A)は、シリカ粒子の少なくとも一部の細孔に十分量の窒素元素含有化合物が吸着している態様である。
【0184】
・態様(B):交差分極/マジック角回転(CP/MAS)法による29Si固体核磁気共鳴(NMR)スペクトル(以下「Si-CP/MAS NMRスペクトル」という。)における化学シフト-50ppm以上-75ppm以下の範囲に観測されるシグナルの積分値Cと、化学シフト-90ppm以上-120ppm以下の範囲に観測されるシグナルの積分値Dとの比C/Dが0.10以上0.75以下である態様。
【0185】
Si-CP/MAS NMRスペクトルは、核磁気共鳴分光分析を下記条件で実施することで得られる。
・分光器:AVENCE300(Brunker社製)
・共鳴周波数:59.6MHz
・測定核:29Si
・測定法:CPMAS法(Bruker社標準パルクシークエンスcp.av使用)
・待ち時間:4秒
・接触時間:8ミリ秒
・積算回数:2048回
・測定温度:室温(実測値25℃)
・観測中心周波数:-3975.72Hz
・MAS回転数:7.0mm-6kHz
・基準物質:ヘキシメチルシクロトリシロキサン
【0186】
比C/Dは、0.10以上0.75以下が好ましく、0.12以上0.45以下がより好ましく、0.15以上0.40以下が更に好ましい。
【0187】
Si-CP/MAS NMRスペクトルの全シグナルの積分値を100%としたとき、化学シフト-50ppm以上-75ppm以下の範囲に観測されるシグナルの積分値Cの割合(Signal ratio)は、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましい。シグナルの積分値Cの割合の上限は、例えば、60%以下である。
【0188】
態様(B)は、シリカ粒子表面の少なくとも一部に、十分量の窒素元素含有化合物が吸着しうる低密度な被覆構造を有する態様である。この低密度な被覆構造は、例えば、シランカップリング剤(特に3官能シランカップリング剤)の反応生成物からなる被覆構造であり、例えばSiO2/3CH層である。
【0189】
[シリカ粒子(S)の製造方法]
シリカ粒子(S)の製造方法の一例は、シリカ母粒子の表面の少なくとも一部に、シランカップリング剤の反応生成物からなる被覆構造を形成する第一工程と、前記被覆構造にモリブデン窒素含有化合物を付着させる第二工程と、を有する。本製造方法は、第二工程後又は第二工程中に、前記被覆構造を有するシリカ母粒子に疎水化処理を行う第三工程をさらに有してもよい。以下に、上記の工程を詳細に説明する。
【0190】
-シリカ母粒子-
シリカ母粒子は、例えば、下記の工程(i)又は工程(ii)によって準備する。
工程(i)アルコールを含む溶媒とシリカ母粒子とを混合してシリカ母粒子懸濁液を準備する工程。
工程(ii)シリカ母粒子をゾルゲル法により造粒してシリカ母粒子懸濁液を得る工程。
【0191】
工程(i)に用いるシリカ母粒子は、乾式シリカでもよく、湿式シリカでもよい。具体的には、ゾルゲルシリカ、水性コロイダルシリカ、アルコール性シリカ、フェームドシリカ、溶融シリカ等が挙げられる。
【0192】
工程(i)に用いるアルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、アルコールとその他の溶媒との混合溶媒であってもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。その他の溶媒としては、水;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;などが挙げられる。混合溶媒の場合、アルコールの割合は80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。
【0193】
工程(ii)は、アルコールを含む溶媒中にアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備するアルカリ触媒溶液準備工程と、アルカリ触媒溶液中にテトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給して、シリカ母粒子を生成させるシリカ母粒子生成工程と、を含むゾルゲル法であることが好ましい。
【0194】
アルカリ触媒溶液準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、この溶媒とアルカリ触媒とを混合して、アルカリ触媒溶液を得る工程であることが好ましい。
【0195】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、アルコールとその他の溶媒との混合溶媒であってもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。その他の溶媒としては、水;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;などが挙げられる。混合溶媒の場合、アルコールの割合は80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。
【0196】
アルカリ触媒は、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応と縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが好ましい。
【0197】
アルカリ触媒溶液におけるアルカリ触媒の濃度は、0.5mol/L以上1.5mol/L以下が好ましく、0.6mol/L以上1.2mol/L以下がより好ましく、0.65mol/L以上1.1mol/L以下が更に好ましい。
【0198】
シリカ母粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給し、アルカリ触媒溶液中でテトラアルコキシシランを反応(加水分解反応と縮合反応)させて、シリカ母粒子を生成する工程である。
【0199】
シリカ母粒子生成工程では、テトラアルコキシシランの供給初期にテトラアルコキシシランの反応により核粒子が生成した後(核粒子生成段階)、この核粒子の成長を経て(核粒子成長段階)、シリカ母粒子が生成する。
【0200】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。反応速度の制御性又は生成するシリカ母粒子の形状の均一性の観点から、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましい。
【0201】
アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒としては、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが好ましい。テトラアルコキシシランと共に供給されるアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることが好ましい。
【0202】
アルカリ触媒溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給する供給方式は、連続的に供給する方式であってもよいし、間欠的に供給する方式であってもよい。
【0203】
シリカ母粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液の温度(供給時の温度)は、5℃以上50℃以下が好ましく、15℃以上45℃以下がより好ましい。
【0204】
-第一工程-
第一工程は、例えば、シリカ母粒子懸濁液にシランカップリング剤を添加し、シリカ母粒子の表面においてシランカップリング剤を反応させ、シランカップリング剤の反応生成物からなる被覆構造を形成する工程である。
【0205】
シランカップリング剤の反応は、例えば、シランカップリング剤をシリカ母粒子懸濁液に添加後、懸濁液を攪拌しながら加熱することで実施する。具体的には、例えば、懸濁液を40℃以上70℃に加熱し、シランカップリング剤を添加した攪拌する。攪拌を持続する時間は、10分間以上24時間以下が好ましく、60分間以上420分間以下がより好ましく、80分間以上300分間以下が更に好ましい。
【0206】
-第二工程-
第二工程は、シランカップリング剤の反応生成物からなる被覆構造の細孔に、モリブデン窒素含有化合物を付着させる工程であることが好ましい。
【0207】
第二工程は、例えば、シランカップリング剤を反応させた後のシリカ母粒子懸濁液に、モリブデン窒素含有化合物を添加し、液温を20℃以上50℃以下の温度範囲に保ちながら攪拌する。ここでモリブデン窒素含有化合物は、モリブデン窒素含有化合物を含むアルコール液としてシリカ粒子懸濁液に添加してもよい。アルコールは、シリカ母粒子懸濁液に含まれるアルコールと同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、同じ種類であることがより好ましい。モリブデン窒素含有化合物を含むアルコール液において、モリブデン窒素含有化合物の濃度は0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上6質量%以下がより好ましい。
【0208】
-第三工程-
第三工程は、シランカップリング剤の反応生成物からなる被覆構造にさらに疎水化処理構造を付着させる工程である。第三工程は、第二工程後又は第二工程中に行う疎水化処理工程である。疎水化処理剤は、疎水化処理剤の官能基どうしが反応し、及び/又は、疎水化処理剤の官能基とシリカ母粒子のOH基とが反応し、疎水化処理層を形成する。
【0209】
第三工程は、例えば、シランカップリング剤を反応させた後のシリカ母粒子懸濁液に、モリブデン窒素含有化合物を添加し、次いで、疎水化処理剤を添加する。この際、懸濁液を攪拌及び加熱することが好ましい。例えば、懸濁液を40℃以上70℃に加熱し、疎水化処理剤を添加し攪拌する。攪拌を持続する時間は、10分間以上24時間以下が好ましく、20分間以上120分間以下がより好ましく、20分間以上90分間以下が更に好ましい。
【0210】
-乾燥工程-
第二工程又は第三工程を実施後、又は、第二工程又は第三工程の実施中に、懸濁液から溶媒を除去する乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥方法としては、例えば、熱乾燥、噴霧乾燥、超臨界乾燥が挙げられる。
【0211】
噴霧乾燥は、スプレイドライヤー(ディスク回転式、ノズル式等)を用いた公知の方法で行うことができる。例えば、熱風気流中に0.2リットル/時間以上1リットル/時間以下の速度でシリカ粒子懸濁液を噴霧する。熱風の温度は、スプレイドライヤーの入口温度70℃以上400℃以下、出口温度40℃以上120℃以下の範囲にあることが好ましい。より好ましい入口温度は100℃以上300℃以下の範囲である。シリカ粒子懸濁液のシリカ粒子濃度は、10質量%以上30質量%以下が好ましい。
【0212】
超臨界乾燥の超臨界流体として用いる物質としては、二酸化炭素、水、メタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。超臨界流体としては、処理効率の観点と、粗大粒子の発生を抑制する観点とから、超臨界二酸化炭素が好ましい。超臨界二酸化炭素を用いる工程は、具体的には、例えば以下の操作によって行う。
【0213】
密閉反応器に懸濁液を収容し、次いで液化二酸化炭素を導入した後、密閉反応器を加熱すると共に高圧ポンプにより密閉反応器内を昇圧させ、密閉反応器内の二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、密閉反応器に液化二酸化炭素を流入させ、密閉反応器から超臨界二酸化炭素を流出させることで、密閉反応器内において懸濁液に超臨界二酸化炭素を流通させる。懸濁液に超臨界二酸化炭素が流通する間に、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し、密閉反応器外へ流出する超臨界二酸化炭素に同伴して溶媒が除去される。密閉反応器内の温度及び圧力は、二酸化炭素を超臨界状態にする温度及び圧力とする。二酸化炭素の臨界点が31.1℃/7.38MPaであるところ、例えば、温度40℃以上200℃以下/圧力10MPa以上30MPa以下の温度及び圧力とする。密閉反応器への超臨界流体の流量は、80mL/秒以上240mL/秒以下であることが好ましい。
【0214】
得られたシリカ粒子に対しては、解砕又は篩分を行って、粗大粒子や凝集物の除去を行うことが好ましい。解砕は、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミル等の乾式粉砕装置により行う。篩分は、例えば、振動篩、風力篩分機等により行う。
【0215】
[シリカ粒子(E)]
本実施形態に係るトナーは、ペロブスカイト型化合物粒子及びシリカ粒子(S)以外の外添剤が外添されていてもよい。当該外添剤としては、シリカ粒子(S)以外のシリカ粒子が好ましい。本開示において、シリカ粒子(S)以外のシリカ粒子をシリカ粒子(E)という。
【0216】
シリカ粒子(E)は、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を含んでいてもよいが、その場合、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である。
シリカ粒子(E)は、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を含まないシリカ粒子であることが好ましい。
【0217】
シリカ粒子(E)としては、ゾルゲルシリカ、水性コロイダルシリカ、アルコール性シリカ、フェームドシリカ、溶融シリカ等のシリカ粒子表面を、疎水化処理剤(例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラザン化合物)で表面処理した疎水性シリカ粒子(E)が好ましい。
【0218】
シリカ粒子(E)(好ましくは疎水性シリカ粒子(E))の平均一次粒径は、80nm以上200nm以下が好ましく、90nm以上170nm以下がより好ましく、100nm以上140nm以下が更に好ましい。
【0219】
シリカ粒子(E)(好ましくは疎水性シリカ粒子(E))の平均円形度は、0.80以上1.00以下が好ましく、0.85以上0.98以下がより好ましく、0.90以上0.95以下が更に好ましい。
【0220】
シリカ粒子(E)の平均円形度、平均一次粒径の測定方法は、下記のとおりである。
エネルギー分散型X線分析装置(EDX装置)(堀場製作所製、EMAX Evolution X-Max80mm)を取り付けた走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ製、S-4800)を用いて、倍率4万倍でトナーを撮影する。EDX分析によってMo元素、N元素及びSi元素の存在に基づきシリカ粒子(S)を除外し、シリカ粒子(E)を一視野内から200個特定する。シリカ粒子(E)200個の画像を画像処理解析ソフトWinRoof(三谷商事株式会社)で解析する。一次粒子像それぞれの円相当径と面積と周囲長とを求め、さらに、円形度=4π×(粒子像の面積)÷(粒子像の周囲長)を求める。円形度の分布において小さい側から累積50%となる円形度を平均円形度とする。円相当径の分布において小径側から累積50%となる円相当径を平均一次粒径とする。
【0221】
本実施形態に係るトナーの実施形態例として、ペロブスカイト型化合物粒子と、平均一次粒径が30nm以上100nm以下であるシリカ粒子(S)と、平均一次粒径が100nm以上140nm以下であるシリカ粒子(E)とを含むトナーが挙げられる。
【0222】
本実施形態に係るトナーがシリカ粒子(E)を含む場合、シリカ粒子(E)(好ましくは疎水性シリカ粒子(E))の外添量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上2.0質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上1.5質量部以下が更に好ましい。
【0223】
[その他の外添剤]
本実施形態に係るトナーは、ペロブスカイト型化合物粒子及びシリカ粒子以外の外添剤が外添されていてもよい。外添剤としては、例えば、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等の無機粒子が挙げられる。
【0224】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量は、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部である。
【0225】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0226】
トナーがペロブスカイト型化合物粒子及びシリカ粒子以外の外添剤を含む場合、当該外添剤の合計量は、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0227】
[トナーの製造方法]
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0228】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0229】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0230】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0231】
-樹脂粒子分散液準備工程-
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0232】
樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0233】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0234】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0235】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、転相乳化法によって分散媒に樹脂粒子を分散させてもよい。転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて中和したのち、水系媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへ転相を行い、樹脂を水系媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0236】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下が更に好ましい。
樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0237】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0238】
樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0239】
-凝集粒子形成工程-
次に、樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0240】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0241】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0242】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酸酢(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0243】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0244】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0245】
融合・合一工程終了後、分散液中のトナー粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態のトナー粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0246】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0247】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよい。
【0248】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;などが挙げられる。
磁性粉分散型キャリア及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、この表面を樹脂で被覆したキャリアであってもよい。
【0249】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;などが挙げられる。
【0250】
被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレンアクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0251】
芯材の表面を樹脂で被覆するには、被覆用の樹脂、及び各種添加剤(必要に応じて使用する)を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する樹脂の種類や、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法;被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、その後に溶剤を除去するニーダーコーター法;等が挙げられる。
【0252】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0253】
<画像形成装置、画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0254】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0255】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0256】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0257】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0258】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0259】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0260】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0261】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0262】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0263】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0264】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0265】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0266】
第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0267】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0268】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0269】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0270】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0271】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0272】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像手段と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0273】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0274】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0275】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0276】
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kが着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例0277】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に限定されるものではない。
以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
合成、処理、製造などは、特に断りのない限り、室温(25℃±3℃)で行った。
【0278】
<キャリアの製造>
・シクロヘキシルメタクリレート樹脂(重量平均分子量5万): 54部
・カーボンブラック(キャボット社製、VXC72) : 6部
・トルエン :250部
・イソプロピルアルコール : 50部
上記の材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とをサンドミルに投入し、回転速度190rpmで30分間攪拌し、コート剤を得た。
【0279】
フェライト粒子(体積平均粒径35μm)1000部とコート剤150部とをニーダーに投入し、室温(25℃)で20分間混合した。次いで、70℃に加熱し且つ減圧して乾燥した。乾燥物を室温(25℃)まで冷却し、乾燥物をニーダーから取り出し、目開き75μmのメッシュで篩い粗粉を除去して、キャリアを得た。
【0280】
<トナー粒子の製造>
[樹脂粒子分散液(1)の調製]
・エチレングリコール :37部
・ネオペンチルグリコール:65部
・1,9-ノナンジオール:32部
・テレフタル酸 :96部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度200℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃で4時間攪拌を継続し、ポリエステル樹脂(酸価9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃)を得た。このポリエステル樹脂を溶融状態のまま、乳化分散機(キャビトロンCD1010、ユーロテック社)に毎分100gの速度で移送した。別途、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水をタンクに入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度でポリエステル樹脂と同時に乳化分散機に移送した。乳化分散機を回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転し、体積平均粒径160nm、固形分30%の樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0281】
[樹脂粒子分散液(2)の調製]
・デカン二酸 :81部
・ヘキサンジオール:47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、ポリエステル樹脂(C1)(融点64℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0282】
・ポリエステル樹脂(C1) :50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製):2部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が180nmになったところで回収し、固形分20%の樹脂粒子分散液(2)を得た。
【0283】
[着色剤粒子分散液(1)の調製]
・シアン顔料(PigmentBlue15:3、大日精化工業(株)製):50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製) :2部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を混合し、高圧衝撃式分散機(アルティマイザーHJP30006、スギノマシン社)により1時間分散し、体積平均粒径180nm、固形分20%の着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0284】
[離型剤粒子分散液(1)の調製]
・パラフィンワックス(HNP-9、日本精蝋(株)製) :50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製):2部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が200nmになったところで回収し、固形分20%の離型剤粒子分散液(1)を得た。
【0285】
[トナー粒子(1)の作製]
・樹脂粒子分散液(1) :150部
・樹脂粒子分散液(2) :50部
・着色剤粒子分散液(1):25部
・離型剤粒子分散液(1):35部
・ポリ塩化アルミニウム :0.4部
・イオン交換水 :100部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに投入し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)を用いて十分に混合分散した後、フラスコ内を攪拌しながら加熱用オイルバスで48℃まで加熱した。反応系内を48℃で60分間保持した後、樹脂粒子分散液(1)を緩やかに70部追加した。次いで、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.0に調整し、フラスコを密閉し攪拌軸のシールを磁力シールし、攪拌を継続しながら90℃まで加熱して30分間保持した。次いで、降温速度5℃/分で冷却し、固液分離し、イオン交換水で十分に洗浄した。次いで、固液分離し、30℃のイオン交換水に再分散し、回転速度300rpmで15分間攪拌し洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度が6.5μS/cmとなったところで固液分離した。固形分を24時間真空乾燥し、トナー粒子(1)を得た。トナー粒子(1)の体積平均粒径は5.7μmであった。
【0286】
<ペロブスカイト型化合物粒子の製造>
[チタン酸ストロンチウム粒子(1)の製造]
脱硫及び解膠したチタン源であるメタチタン酸をTiOとして0.7モル採取し、反応容器に入れた。次いで、反応容器に、塩化ストロンチウム水溶液を、SrO/TiOモル比が1.1になるように0.77モル添加した。次いで、反応容器に、酸化ランタンを硝酸に溶解した溶液を、ストロンチウム100モルに対してランタン(La)が0.5モルになる量添加した。3つの材料の混合液における初期TiO濃度が0.75モル/Lになるようにした。次いで、混合液を攪拌し、混合液を92℃に加温し、液温を92℃に維持し攪拌しながら、10N水酸化ナトリウム水溶液153mLを4.5時間かけて添加し、さらに、液温を92℃に維持しながら1時間攪拌を続けた。次いで、反応液を40℃まで冷却し、pH5.4になるまで塩酸を添加し1時間攪拌を行った。次いで、デカンテーションと水への再分散とを繰り返すことによって沈殿物を洗浄した。洗浄した沈殿物を含むスラリーに塩酸を加えpH6.5に調整し、濾過により固液分離を行い、固形分を乾燥させた。乾燥した固形分にi-ブチルトリメトキシシラン(i-BTMS)のエタノール溶液を、固形分100部に対してi-BTMSが20部になる量添加して1時間攪拌を行った。濾過により固液分離を行い、固形分を130℃の大気中で7時間乾燥し、チタン酸ストロンチウム粒子(1)を得た。
【0287】
[チタン酸ストロンチウム粒子(2)~(6)の製造]
チタン酸ストロンチウム粒子(1)の製造と同様にして、ただし、製造条件を表1に記載のとおり変更して、チタン酸ストロンチウム粒子(2)~(6)を製造した。
【0288】
トナー粒子とチタン酸ストロンチウム粒子とを、ヘンシェルミキサーを用いて攪拌周速30m/秒で15分間混合した。次いで、目開き45μmの振動篩いを用いて篩分し、チタン酸ストロンチウム粒子を付着させた外添トナーを得た。
上記の外添トナーについて、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ製、S-4700)を用いて、倍率4万倍で画像を撮影した。無作為に選んだ300個のチタン酸ストロンチウム粒子の画像情報を、インターフェイスを介して画像処理解析ソフトWinRoof(三谷商事株式会社)で解析し、一次粒子像それぞれの円相当径を求めた。円相当径の分布において小径側から累積50%となる円相当径を平均一次粒径とした。
【0289】
【表1】
【0290】
<シリカ粒子(S)の製造>
[アルカリ触媒溶液の準備]
金属製攪拌棒、滴下ノズル及び温度計を備えたガラス製反応容器に、表2に示す量及び濃度のメタノール及びアンモニア水を入れ、攪拌混合してアルカリ触媒溶液を得た。
【0291】
[ゾルゲル法によるシリカ母粒子の造粒]
アルカリ触媒溶液の温度を40℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。アルカリ触媒溶液の液温を40℃に保ち攪拌しながら、表2に示す量のテトラメトキシシラン(TMOS)と、触媒(NH)濃度7.9%のアンモニア水124部とを同時に滴下し、シリカ母粒子懸濁液を得た。
【0292】
[シランカップリング剤の添加]
シリカ母粒子懸濁液の液温を40℃に保ち攪拌しながら、表2に示す量のメチルトリメトキシシラン(MTMS)を添加した。添加終了後120分間攪拌を続け、MTMSを反応させ、MTMSの反応生成物によりシリカ母粒子表面の少なくとも一部を被覆した。
【0293】
[モリブデン窒素含有化合物の添加]
表2に示す量のモリブデン窒素含有化合物をブタノールで希釈したアルコール液を作製した。このアルコール液を、シランカップリング剤反応後のシリカ母粒子懸濁液に添加し、液温を30℃に保ちながら100分間攪拌した。アルコール液の添加量は、シリカ母粒子懸濁液の固形分100質量部に対してモリブデン窒素含有化合物の部数が表2に示す量となる量とした。
表2中の「TP-415」は、モリブデン酸第四級アンモニウム塩(保土谷化学工業社)である。
【0294】
[乾燥]
モリブデン窒素含有化合物の添加後の懸濁液を、乾燥用の反応槽に移した。懸濁液を攪拌しながら、反応槽に液化二酸化炭素を注入し、反応槽内を150℃及び15MPaまで昇温昇圧し、温度及び圧力を保って二酸化炭素の超臨界状態を維持した状態で懸濁液の攪拌を続けた。二酸化炭素を流量5L/minで流入及び流出させ、120分間かけて溶媒を除去し、シリカ粒子(S)を得た。アンモニア水、シランカップリング剤及びモリブデン窒素含有化合物の添加量を調整することでシリカ粒子(S1)~(S13)を作り分けた。
【0295】
[蛍光X線分析]
シリカ粒子(S)に既述の測定方法のとおり蛍光X線分析を行い、モリブデン元素のNet強度NMo及びケイ素元素のNet強度NSiを求め、Net強度比NMo/NSiを算出した。結果を表2に示す。
【0296】
【表2】
【0297】
<トナー及び二成分現像剤の製造>
[実施例1]
・トナー粒子(1) :100部
・チタン酸ストロンチウム粒子(1):1部
・シリカ粒子(S1) :1部
上記の材料をヘンシェルミキサーで混合し、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナーを得た。トナー8部とキャリア100部とをVブレンダーに入れ攪拌し、目開き212μmの篩で篩分して二成分現像剤を得た。
【0298】
[実施例2~28及び比較例1~2]
実施例1と同様にして、ただし、チタン酸ストロンチウム粒子の種類及び外添量と、シリカ粒子(S)の種類及び外添量とを、表3に記載のとおり変更して、各例のトナー及び二成分現像剤を得た。
【0299】
[実施例29]
実施例1と同様にして、ただし、チタン酸ストロンチウム粒子の代わりにチタン酸カルシウム粒子を使用して、トナー及び二成分現像剤を得た。
【0300】
[実施例30]
実施例1と同様にして、ただし、チタン酸ストロンチウム粒子の代わりにチタン酸バリウム粒子を使用して、トナー及び二成分現像剤を得た。
【0301】
<性能評価>
[画像濃度の変動]
シアン色の二成分現像剤を画像形成装置(富士ゼロックス社製、DocuCentreColora400)の現像器に充填した。温度25℃且つ相対湿度15%の環境で、下記(1)、(2)、(3)の順に画像形成を行った。
【0302】
(1)A4サイズの普通紙50枚に、5cm四方のベタ画像を形成した。50枚目のベタ画像を「画像A」という。
(2)A4サイズの普通紙5000枚に、明朝体10ポイントで、AからZまでの26文字を形成した。この際、1枚ごとに5分間の間隔をおいた。
(3)A4サイズの普通紙1枚に、5cm四方のベタ画像を形成した。このベタ画像を「画像B」という。
【0303】
反射分光濃度計X-Rite939(アパーチャー径4mm、エックスライト株式会社)を用いて、画像A及び画像Bそれぞれの10か所において画像濃度を測定し、それぞれの平均値を算出した。さらに、画像Aの濃度平均値と画像Bの濃度平均値との差分を算出した。差分を下記のとおり分類した。表3に結果を示す。
G1:差分が0.8未満。
G2:差分が0.8以上2.0未満。
G3:差分が2.0以上2.5未満。
G4:差分が2.5以上3.0未満。
G5:差分が3.0以上
【0304】
【表3】
【0305】
(((1)))
トナー粒子と、
前記トナー粒子に外添された、ペロブスカイト型化合物粒子と、
前記トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を含み且つ蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035以上0.45以下であるシリカ粒子(S)と、を含む、
静電荷像現像用トナー。
(((2)))
前記シリカ粒子(S)の前記比NMo/NSiが0.05以上0.30以下である、(((1)))に記載の静電荷像現像用トナー。
(((3)))
前記ペロブスカイト型化合物粒子と前記シリカ粒子(S)の合計含有量が、前記トナー粒子100質量部に対して、0.5質量部以上5.0質量部以下である、(((1)))又は(((2)))に記載の静電荷像現像用トナー。
(((4)))
前記ペロブスカイト型化合物粒子と前記シリカ粒子(S)との合計量に占める前記シリカ粒子(S)の質量割合が40質量%以上60質量%以下である、(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
(((5)))
前記ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径D1と前記シリカ粒子(S)の平均一次粒径D2との比D2/D1が0.50以上1.70以下である、(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
(((6)))
前記シリカ粒子(S)の平均一次粒径が30nm以上100nm以下である、(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
(((7)))
前記シリカ粒子(S)の平均円形度が0.85以上である、(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
(((8)))
前記ペロブスカイト型化合物粒子が、ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウム粒子である、(((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
(((9)))
前記モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物が、モリブデン元素を含む第四級アンモニウム塩、及び、第四級アンモニウム塩とモリブデン元素を含む金属酸化物との混合物からなる群から選択される少なくとも1種である、(((1)))~(((8)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
(((10)))
前記シリカ粒子(S)が、シランカップリング剤の反応生成物からなる被覆構造と前記被覆構造に付着した前記モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物とを有するシリカ粒子である、(((1)))~(((9)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
(((11)))
前記シランカップリング剤がアルキルトリアルコキシシランを含む、(((10)))に記載の静電荷像現像用トナー。
【0306】
(((12)))
(((1)))~(((11)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
(((13)))
(((1)))~(((11)))のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
(((14)))
(((12)))に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
(((15)))
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
(((12)))に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
(((16)))
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
(((12)))に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【0307】
(((1)))、(((8)))、(((9)))、(((10)))又は(((11)))に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
(((2)))に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.05未満又は0.30超である場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
(((3)))に係る発明によれば、ペロブスカイト型化合物粒子とシリカ粒子(S)の合計含有量が、トナー粒子100質量部に対して、0.5質量部未満又は5.0質量部超である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
(((4)))に係る発明によれば、ペロブスカイト型化合物粒子とシリカ粒子(S)との合計量に占めるシリカ粒子(S)の質量割合が40質量%未満又は60質量%超である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
(((5)))に係る発明によれば、ペロブスカイト型化合物粒子の平均一次粒径D1とシリカ粒子(S)の平均一次粒径D2との比D2/D1が0.50未満又は1.70超である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
(((6)))に係る発明によれば、シリカ粒子(S)の平均一次粒径が30nm未満又は100nm超である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
(((7)))に係る発明によれば、シリカ粒子(S)の平均円形度が0.85nm未満である静電荷像現像用トナーに比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像用トナーが提供される。
【0308】
(((12)))に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい静電荷像現像剤が提供される。
(((13)))に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくいトナーカートリッジが提供される。
(((14)))に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である静電荷像現像剤を適用する場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくいプロセスカートリッジが提供される。
(((15)))に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である静電荷像現像剤を適用する場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい画像形成装置が提供される。
(((16)))に係る発明によれば、トナー粒子に外添された、モリブデン元素を含有する窒素元素含有化合物を有するシリカ粒子において、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度NMoとケイ素元素のNet強度NSiとの比NMo/NSiが0.035未満又は0.45超である静電荷像現像剤を適用する場合に比べて、画像濃度の変動が起こりにくい画像形成方法が提供される。
【符号の説明】
【0309】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
P 記録紙(記録媒体の一例)
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)
図1
図2