(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046543
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】放射線画像処理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240327BHJP
【FI】
A61B6/00 333
A61B6/00 350S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151983
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知幸
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA21
4C093EA07
4C093FD09
4C093FF07
4C093FF34
(57)【要約】
【課題】放射線画像処理装置、方法およびプログラムにおいて、放射線画像に含まれる複数の成分を精度よく分離する。
【解決手段】プロセッサは、複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得し、第1または第2放射線画像の第1成分のみを含む第1成分領域において、第1および第2放射線画像に基づいて放射線の減弱に関する第1成分の特性を導出し、第1または第2放射線画像の第2成分を含む第2成分領域における前記第1成分の特性を、第2成分領域の周囲にある第1成分領域において導出した第1成分の特性に基づいて導出し、第1または第2放射線画像の少なくとも被写体の領域における第1成分の特性に基づいて、第1成分および第2成分がそれぞれ強調された第1成分画像および第2成分画像を導出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第1成分のみを含む第1成分領域において、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像に基づいて、前記放射線の減弱に関する前記第1成分の特性を導出し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第2成分を含む第2成分領域における前記第1成分の特性を、前記第2成分領域の周囲にある前記第1成分領域において導出した前記第1成分の特性に基づいて導出し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域における前記第1成分の特性に基づいて、前記第1成分が強調された第1成分画像および前記第2成分が強調された第2成分画像を導出する放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第1放射線画像または前記第2放射線画像における前記第2成分領域を、前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の画素値に基づいて特定し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像における前記第2成分領域以外の領域を前記第1成分領域に特定する請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域において前記放射線の減弱に関する減弱特性を導出し、
前記被写体の領域における前記減弱特性に基づいて、前記第1成分領域および前記第2成分領域を特定し、
前記第1成分領域について導出された前記減弱特性を、前記第1成分領域についての前記第1成分の特性として使用する請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像のそれぞれから前記被写体による前記放射線の減弱量を表す第1減弱画像および第2減弱画像を導出し、
前記第1減弱画像および前記第2減弱画像の対応する画素間での比率である減弱比を前記第1成分の特性として導出する請求項1から3のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像のそれぞれから前記被写体による前記放射線の減弱量を表す第1減弱画像および第2減弱画像を導出し、
前記第1減弱画像および前記第2減弱画像の対応する画素間での比率である減弱比を前記減弱特性として導出する請求項3に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第1減弱画像、前記第2減弱画像および前記第1成分の特性に基づいて、前記第2成分が強調された初期第2成分減弱画像を導出し、
前記初期第2成分減弱画像に含まれる前記第2成分のコントラストを前記第1減弱画像または前記第2減弱画像に含まれる前記第2成分のコントラストと一致させることにより第2成分減弱画像を導出し、
前記第1減弱画像または前記第2減弱画像および前記第2成分減弱画像に基づいて前記第1成分が強調された第1成分減弱画像を導出し、
前記第1成分減弱画像および前記第2成分減弱画像のそれぞれから前記第1成分画像および前記第2成分画像を導出する請求項4に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域において前記複数の組成の厚さに関する情報を導出し、
前記被写体の領域における前記複数の組成の厚さに関する情報に基づいて、前記第1成分領域および前記第2成分領域を特定する請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第1成分に含まれる前記複数の組成のそれぞれの前記放射線の減弱係数および前記複数の組成のそれぞれの厚さに関する情報に基づいて、前記第1成分の減弱係数を前記第1成分の特性として導出する請求項1、2または7に記載の放射線画像処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像のそれぞれから前記被写体による前記放射線の減弱量を表す第1減弱画像および第2減弱画像を導出し、
前記第1減弱画像、前記第2減弱画像、前記第1成分の特性および前記第2成分の特性に基づいて、前記第1成分の厚さおよび前記第2成分の厚さを導出し、
前記第1成分の厚さおよび前記第2成分の厚さに基づいて、前記第1成分画像および前記第2成分画像を導出する請求項7に記載の放射線画像処理装置。
【請求項10】
前記第1成分は前記被写体の軟部、前記第2成分は前記被写体の骨部であり、前記第1成分に含まれる前記複数の組成は脂肪および筋肉である請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項11】
複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第1成分のみを含む第1成分領域において、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像に基づいて、前記放射線の減弱に関する前記第1成分の特性を導出し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第2成分を含む第2成分領域における前記第1成分の特性を、前記第2成分領域の周囲にある前記第1成分領域において導出した前記第1成分の特性に基づいて導出し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域における前記第1成分の特性に基づいて、前記第1成分が強調された第1成分画像および前記第2成分が強調された第2成分画像を導出する放射線画像処理方法。
【請求項12】
複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得する手順と、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第1成分のみを含む第1成分領域において、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像に基づいて、前記放射線の減弱に関する前記第1成分の特性を導出する手順と、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第2成分を含む第2成分領域における前記第1成分の特性を、前記第2成分領域の周囲にある前記第1成分領域において導出した前記第1成分の特性に基づいて導出する手順と、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域における前記第1成分の特性に基づいて、前記第1成分が強調された第1成分画像および前記第2成分が強調された第2成分画像を導出する手順とをコンピュータに実行させる放射線画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線画像処理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被写体を構成する物質によって透過した放射線の減弱量が異なることを利用して、エネルギー分布が異なる2種類の放射線を被写体に照射して得られた2枚の放射線画像を用いたエネルギーサブトラクション処理が知られている(例えば特許文献1,2参照)。エネルギーサブトラクション処理とは、上記のようにして得られた2つの放射線画像の各画素を対応させて、画素間で組成に応じた減弱係数に基づく重み係数を乗算した上で減算(サブトラクト)を行って、放射線画像に含まれる骨部および軟部といった特定の組成を分離した画像を取得する方法である。また、さらにエネルギーサブトラクション処理により、被写体の軟部組織を脂肪および筋肉に分離する手法も提案されている(特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/054090号
【特許文献2】特開2022-097760号公報
【特許文献3】特開2021-058363号公報
【特許文献4】特開2022-056084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エネルギーサブトラクション処理により被写体の骨部および軟部を分離するためには、軟部の減弱係数が必要である。ここで、放射線画像における軟部のみが含まれる領域においては、軟部の減弱係数を放射線画像から直接求めることができる。しかしながら、放射線画像における骨部領域は軟部と骨部とが重なっているため、軟部の減弱係数を放射線画像から直接求めることができない。また、軟部は単一の組成からなるものではなく、脂肪および筋肉といった複数の組成が複雑に混ざり合っている。また、軟部の組成は個人差が大きい。このため、放射線画像における軟部と骨部とが重なった骨部領域において、軟部の減弱係数を精度よく求めることが困難となっている。このように、軟部の減弱係数を精度よく求めることができないと、エネルギーサブトラクション処理のように放射線の減弱に関する特性を用いて処理を行った場合、骨部および軟部といった複数の成分を精度よく分離することができない。
【0005】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、放射線画像に含まれる複数の成分を精度よく分離することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による放射線画像処理装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、
プロセッサは、複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得し、
第1放射線画像または第2放射線画像の第1成分のみを含む第1成分領域において、第1放射線画像および第2放射線画像に基づいて、放射線の減弱に関する第1成分の特性を導出し、
第1放射線画像または第2放射線画像の第2成分を含む第2成分領域における第1成分の特性を、第2成分領域の周囲にある第1成分領域において導出した第1成分の特性に基づいて導出し、
第1放射線画像または第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域における第1成分の特性に基づいて、第1成分が強調された第1成分画像および第2成分が強調された第2成分画像を導出する。
【0007】
なお、本開示による放射線画像処理装置においては、プロセッサは、第1放射線画像または第2放射線画像における第2成分領域を、第1放射線画像または第2放射線画像の画素値に基づいて特定し、
第1放射線画像または第2放射線画像における第2成分領域以外の領域を第1成分領域に特定するものであってもよい。
【0008】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、プロセッサは、第1放射線画像または第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域において放射線の減弱に関する減弱特性を導出し、
被写体の領域における減弱特性に基づいて、第1成分領域および第2成分領域を特定し、
第1成分領域について導出された減弱特性を、第1成分領域についての第1成分の特性として使用するものであってもよい。
【0009】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、プロセッサは、第1放射線画像および第2放射線画像のそれぞれから被写体による放射線の減弱量を表す第1減弱画像および第2減弱画像を導出し、
第1減弱画像および第2減弱画像の対応する画素間での比率である減弱比を第1成分の特性として導出するものであってもよい。
【0010】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、プロセッサは、第1放射線画像および第2放射線画像のそれぞれから被写体による放射線の減弱量を表す第1減弱画像および第2減弱画像を導出し、
第1減弱画像および第2減弱画像の対応する画素間での比率である減弱比を減弱特性として導出するものであってもよい。
【0011】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、プロセッサは、第1減弱画像、第2減弱画像および第1成分の特性に基づいて、第2成分が強調された初期第2成分減弱画像を導出し、
初期第2成分減弱画像に含まれる第2成分のコントラストを第1減弱画像または第2減弱画像に含まれる第2成分のコントラストと一致させることにより第2成分減弱画像を導出し、
第1減弱画像または第2減弱画像および第2成分減弱画像に基づいて第1成分が強調された第1成分減弱画像を導出し、
第1成分減弱画像および第2成分減弱画像のそれぞれから第1成分画像および第2成分画像を導出するものであってもよい。
【0012】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、プロセッサは、第1放射線画像または第2放射線画像の少なくとも被写体の領域において複数の組成の厚さに関する情報を導出し、
被写体の領域における複数の組成の厚さに関する情報に基づいて、第1成分領域および第2成分領域を特定するものであってもよい。
【0013】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、プロセッサは、第1成分に含まれる複数の組成のそれぞれの放射線の減弱係数および複数の組成のそれぞれの厚さに関する情報に基づいて、第1成分の減弱係数を第1成分の特性として導出するものであってもよい。
【0014】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、プロセッサは、第1放射線画像および第2放射線画像のそれぞれから被写体による放射線の減弱量を表す第1減弱画像および第2減弱画像を導出し、
第1減弱画像、第2減弱画像、第1成分の特性および第2成分の特性に基づいて、第1成分の厚さおよび第2成分の厚さを導出し、
第1成分の厚さおよび第2成分の厚さに基づいて、第1成分画像および第2成分画像を導出するものであってもよい。
【0015】
また、本開示による放射線画像処理装置においては、第1成分は被写体の軟部、第2成分は被写体の骨部であり、第1成分に含まれる複数の組成は脂肪および筋肉であってもよい。
【0016】
本開示による放射線画像処理方法は、複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得し、
第1放射線画像または第2放射線画像の第1成分のみを含む第1成分領域において、第1放射線画像および第2放射線画像に基づいて、放射線の減弱に関する第1成分の特性を導出し、
第1放射線画像または第2放射線画像の第2成分を含む第2成分領域における第1成分の特性を、第2成分領域の周囲にある第1成分領域において導出した第1成分の特性に基づいて導出し、
第1放射線画像または第2放射線画像の少なくとも被写体の領域における第1成分の特性に基づいて、第1成分が強調された第1成分画像および第2成分が強調された第2成分画像を導出する。
【0017】
本開示による放射線画像処理プログラムは、複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得する手順と、
第1放射線画像または第2放射線画像の第1成分のみを含む第1成分領域において、第1放射線画像および第2放射線画像に基づいて、放射線の減弱に関する第1成分の特性を導出する手順と、
第1放射線画像または第2放射線画像の第2成分を含む第2成分領域における第1成分の特性を、第2成分領域の周囲にある第1成分領域において導出した第1成分の特性に基づいて導出する手順と、
第1放射線画像または第2放射線画像の少なくとも被写体の領域における第1成分の特性に基づいて、第1成分が強調された第1成分画像および第2成分が強調された第2成分画像を導出する手順とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、放射線画像に含まれる複数の成分を精度よく分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の第1の実施形態による放射線画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図
【
図2】第1の実施形態による放射線画像処理装置の概略構成を示す図
【
図3】第1の実施形態による放射線画像処理装置の機能的な構成を示す図
【
図5】第1の実施形態による放射線画像処理装置において行われる処理を模式的に示す図
【
図7】第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【
図8】第2の実施形態による放射線画像処理装置において行われる処理を模式的に示す図
【
図9】第3の実施形態による放射線画像処理装置において行われる処理を模式的に示す図
【
図11】高エネルギー画像および低エネルギー画像における骨部の厚さおよび軟部の厚さに応じた減弱量を示す図
【
図12】第3の実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【
図13】第4の実施形態による放射線画像処理装置において行われる処理を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。
図1は本開示の第1の実施形態による放射線画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態による放射線画像撮影システムは、撮影装置1と、本実施形態による放射線画像処理装置10とを備える。
【0021】
撮影装置1は、第1の放射線検出器5および第2の放射線検出器6に、放射線源3から発せられ、被写体Hを透過したX線等の放射線を、それぞれエネルギーを変えて照射するいわゆる1ショット法によるエネルギーサブトラクション撮影を行うための撮影装置である。撮影時においては、
図1に示すように、放射線源3に近い側から順に、第1の放射線検出器5、銅板等からなる放射線エネルギー変換フィルタ7、および第2の放射線検出器6を配置して、放射線源3を駆動させる。なお、第1および第2の放射線検出器5,6と放射線エネルギー変換フィルタ7とは密着されている。
【0022】
これにより、第1の放射線検出器5においては、いわゆる軟線も含む低エネルギーの放射線による被写体Hの第1放射線画像G1が取得される。また、第2の放射線検出器6においては、軟線が除かれた高エネルギーの放射線による被写体Hの第2放射線画像G2が取得される。第1および第2放射線画像G1,G2は、放射線画像処理装置10に入力される。
【0023】
第1および第2の放射線検出器5,6は、放射線画像の記録および読み出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフさせることによって放射線画像信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のもの、または読取り光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0024】
次いで、第1の実施形態による放射線画像処理装置について説明する。まず、
図2を参照して、第1の実施形態による放射線画像処理装置のハードウェア構成を説明する。
図2に示すように、放射線画像処理装置10は、ワークステーション、サーバコンピュータおよびパーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)11、不揮発性のストレージ13、および一時記憶領域としてのメモリ16を備える。また、放射線画像処理装置10は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ14、キーボードおよびマウス等の入力デバイス15、並びに不図示のネットワークに接続されるネットワークI/F(InterFace)17を備える。CPU11、ストレージ13、ディスプレイ14、入力デバイス15、メモリ16およびネットワークI/F17は、バス18に接続される。なお、CPU11は、本開示におけるプロセッサの一例である。
【0025】
ストレージ13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、およびフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としてのストレージ13には、放射線画像処理装置10にインストールされた放射線画像処理プログラム12が記憶される。CPU11は、ストレージ13から放射線画像処理プログラム12を読み出してメモリ16に展開し、展開した放射線画像処理プログラム12を実行する。
【0026】
放射線画像処理プログラム12は、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて放射線画像処理装置10を構成するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。または、DVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体から放射線画像処理装置10を構成するコンピュータにインストールされる。
【0027】
次いで、第1の実施形態による放射線画像処理装置の機能的な構成を説明する。
図3は、第1の実施形態による放射線画像処理装置の機能的な構成を示す図である。
図3に示すように、放射線画像処理装置10は、画像取得部21、領域特定部22、特性導出部23、画像導出部24および表示制御部25を備える。そして、CPU11は、放射線画像処理プログラム12を実行することにより、画像取得部21、領域特定部22、特性導出部23、画像導出部24および表示制御部25として機能する。
【0028】
画像取得部21は、撮影装置1に被写体Hのエネルギーサブトラクション撮影を行わせることにより、第1および第2の放射線検出器5,6から、被写体Hの第1放射線画像G1および第2放射線画像G2を取得する。この際、撮影線量、エネルギー分布、管電圧およびSID等の撮影条件が設定される。撮影条件は、使用者による入力デバイス15からの入力により設定すればよい。設定された撮影条件は、ストレージ13に保存される。なお、第1の実施形態による放射線画像処理プログラムとは別個のプログラムにより第1および第2放射線画像G1,G2を取得するようにしてもよい。この場合、画像取得部21は、ストレージ13に保存された第1および第2放射線画像G1,G2を処理のためにストレージ13から読み出すものとなる。
【0029】
図4は第1および第2放射線画像を示す図である。
図4に示すように、第1および第2放射線画像G1,G2には、被写体Hの領域と、放射線が放射線検出器5,6に直接照射することにより得られる直接放射線領域とが含まれる。被写体Hの領域には、軟部領域および骨部領域が含まれる。人体の軟部成分は筋肉、脂肪、血液、および水分を含む。本実施形態においては、血液および水分も含めた非脂肪組織を筋肉として扱うものとする。被写体Hの軟部成分および骨部成分が、それぞれ本開示の第1成分および第2成分の一例である。筋肉および脂肪が本開示の複数の組成の一例である。
【0030】
第1および第2放射線画像G1,G2の軟部領域は、被写体Hの軟部成分のみを含む。第1および第2放射線画像G1,G2の骨部領域は、実際には骨部成分と軟部成分とが混ざり合った領域である。軟部領域が本開示による第1成分のみを含む第1成分領域の一例であり、骨部領域が本開示による第2成分を含む第2成分領域の一例である。
【0031】
以下、領域特定部22、特性導出部23および画像導出部24について、第1の実施形態による放射線画像処理装置において行われる処理と併せて説明する。
図5は第1の実施形態による放射線画像処理装置において行われる処理を模式的に示す図である。なお、
図5においては、説明を簡単なものとするために、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2は、直接放射線領域を含まず、軟部領域に矩形の骨部領域が含まれるものとしている。
【0032】
第1の実施形態において、領域特定部22は、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2における骨部領域および軟部領域を特定する。このために、領域特定部2は、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の少なくとも被写体Hの領域において放射線の減弱に関する減弱特性を導出し、被写体Hの領域における減弱特性に基づいて、軟部領域および骨部領域を特定する。第1の実施形態においては、領域特定部22は、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2のそれぞれから被写体Hによる放射線の減弱量を表す第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHを導出し、第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHの対応する画素間での比率である減弱比を減弱特性として導出する。
【0033】
ここで、第1減弱画像CLの画素値は、被写体Hによる低エネルギーの放射線の減弱量を表し、第2減弱画像CHの画素値は、被写体Hによる高エネルギーの放射線の減弱量を表す。第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHは、第1の放射線画像G1および第2の放射線画像G2から下記の式(1)、(2)により導出される。式(1)においてGd1は第1放射線画像G1における直接放射線領域の画素値、式(2)においてGd2は第2放射線画像G2における直接放射線領域の画素値である。
CL(x,y)=Gd1-G1(x,y) (1)
CH(x,y)=Gd2-G2(x,y) (2)
【0034】
次に領域特定部22は、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2との放射線の減弱比を表す減弱比マップを導出する。具体的には、第1減弱画像CLと第2減弱画像CHとの対応する画素間での比率を、下記の式(3)により導出することにより減弱比マップM1を導出する。減弱比が本開示の放射線の減弱に関する特性の一例である。
M1(x,y)=CL(x,y)/CH(x,y) (3)
【0035】
ここで、第1放射線画像G1および第2の放射線画像G2において、軟部成分のみを含む領域の減弱比は骨部成分を含む領域の減弱比よりも小さい。このため、領域特定部22は、減弱比マップM1の各画素の減弱比を比較し、減弱比が予め定められたしきい値よりも大きい画素からなる領域を骨部領域に特定し、骨部領域以外の領域を軟部領域に特定する。なお、領域特定部22は、減弱比マップM1の各画素とその周囲の画素との減弱比を比較し、周囲の画素と比較して減弱比が大きい画素を骨部領域の画素に特定するようにしてもよい。
【0036】
特性導出部23は、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の第1成分のみを含む第1成分領域、すなわち軟部領域において、第1放射線画像G2および第2放射線画像G2に基づいて、放射線の減弱に関する第1成分の特性を導出する。また、特性導出部23は、第2成分領域すなわち骨部領域における第1成分の特性を、骨部領域の周囲にある軟部領域において導出した第1成分の特性に基づいて導出する。本実施形態においては、特性導出部23は、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2との減弱比を第1の成分の特性として導出する。
【0037】
ここで、第1の実施形態においては、領域特定部22が、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の被写体Hの領域において放射線の減弱に関する特性である減弱比を導出している。このため、特性導出部23は、領域特定部22が導出した減弱比マップM1における軟部領域の減弱比を、軟部領域における第1成分の特性として使用する。すなわち、第1の実施形態においては、領域特定部22は特性導出部23としての機能も有することとなる。
【0038】
一方、骨部領域については、骨部領域の周囲にある軟部領域の減弱比を補間することにより、骨部領域についての第1成分の特性、すなわち減弱比を導出する。なお、補間に代えて、減弱比マップM1における軟部領域の減弱比の中央値、平均値あるいは減弱比が小さい側から予め定められた割合となる値を、骨部領域についての減弱比として導出するようにしてもよい。
【0039】
これにより、特性導出部23は、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の被写体Hの領域についての第1成分の特性を導出する。第1の実施形態においては、第1成分の特性は軟部領域の減弱比である。第1の実施形態においては、導出した第1成分の特性を、後述する画像導出部24が骨部画像を導出する際に、軟部を消去する軟部消去係数K1として用いる。
【0040】
画像導出部24は、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の被写体Hの領域における第1成分の特性に基づいて、第1成分が強調された第1成分画像および第2成分が強調された第2成分画像を導出する。具体的には、画像導出部24は、軟部成分が強調された軟部画像Gsおよび骨部成分が強調された骨部画像Gbを導出する。
【0041】
第1の実施形態においては、画像導出部24は、まず第1減弱画像CL、第2減弱画像CHおよび第1成分の特性である軟部消去係数K1に基づいて、第2成分が強調された初期第2成分減弱画像、すなわち骨部が強調された初期骨部減弱画像を導出する。具体的には、画像導出部24は、下記の式(4)により、初期骨部減弱画像Cb0を導出する。
Cb0(x,y)=CL(x,y)-CH(x,y)×K1(x,y) (4)
【0042】
ここで、上述したように導出された初期骨部減弱画像Cb0の骨部領域の画素値は、骨部の厚さに相当する軟部が存在すると仮定することによって骨部の減弱量を軟部の減弱量に置き換えたものと、実際の骨部の減弱量との差分を表すものとなっている。このため、本来導出したい骨部減弱画像に対してコントラストが低い画像となっている。このようにコントラストが低い骨部減弱画像を用いると、後述するように第1減弱画像CLまたは第2減弱画像CHから骨部減弱画像を減算して軟部減弱画像を導出した場合に、骨部成分を良好に除去することができない。
【0043】
このため、第1の実施形態においては、画像導出部24は、初期骨部減弱画像Cb0のコントラストを、第1減弱画像CLまたは第2減弱画像CHのコントラストと一致させることにより、骨部減弱画像Cb1を導出する。第1の実施形態においては、初期骨部減弱画像Cb0のコントラストを、第1減弱画像CLのコントラストと一致させるものとする。このため、画像導出部24は、初期骨部減弱画像Cb0にコントラスト変換係数を乗算して初期骨部減弱画像Cb0のコントラストを変換する。そして、コントラスト変換後の初期骨部減弱画像Cb0を第1減弱画像CLから減算することにより導出される差分画像ΔCLと、初期骨部減弱画像Cb0との相関を導出する。そして相関が最小となるように、コントラスト変換係数を決定し、決定したコントラスト変換係数を初期骨部減弱画像Cb0に乗算することにより、骨部減弱画像Cb1を導出する。
【0044】
なお、初期骨部減弱画像Cb0のコントラストと体厚とを関連付けたコントラスト変換係数を表すテーブルを予め作成しておくようにしてもよい。この場合、被写体Hの体厚を計測する等によって導出し、初期骨部減弱画像Cb0のコントラストと体厚とからテーブルを参照してコントラスト変換係数を導出し、導出したコントラスト変換係数により初期骨部減弱画像Cb0を変換することにより、骨部減弱画像Cb1を導出するようにしてもよい。
【0045】
そして、画像導出部24は、下記の式(5)により、第1減弱画像CLから骨部減弱画像Cb1を減算することにより軟部減弱画像Cs1を導出する。
Cs1(x,y)=CL(x,y)-Cb1(x,y) (5)
【0046】
さらに、画像導出部24は、下記の式(6)、(7)により骨部画像Gbおよび軟部画像Gsを導出する。
Gb(x,y)=Gd1(x,y)-Cb1(x,y) (6)
Gs(x,y)=Gd2(x,y)-Cs1(x,y) (7)
【0047】
表示制御部25は、骨部画像Gbおよび軟部画像Gsをディスプレイ14に表示する。
図6は骨部画像Gbおよび軟部画像Gsの表示画面を示す図である。
図6に示すように、表示画面30には骨部画像Gbおよび軟部画像Gsが表示されている。
【0048】
次いで、第1の実施形態において行われる処理について説明する。
図7は第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部21が撮影装置1に被写体Hのエネルギーサブトラクション撮影を行わせることにより、第1および第2放射線画像G1,G2を取得する(放射線画像取得:ステップST1)。次いで、領域特定部22が、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2から第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHを導出し(減弱画像導出:ステップST2)、第1減弱画像CLまたは第2減弱画像CHにおける軟部成分のみを含む軟部領域および骨部を含む骨部領域を特定する(ステップST3)。次に、特性導出部23が、軟部領域において放射線画像の減弱に関する軟部成分の特性(減弱比)を導出する(ステップST4)。続いて、特性導出部23が、骨部領域において軟部成分の特性を導出する(ステップST5)。
【0049】
次いで、画像導出部24が初期骨部減弱画像Cb0を導出し(ステップST6)、初期骨部減弱画像Cb0のコントラストを変換することにより骨部減弱画像Cb1を導出する(ステップST7)。さらに、画像導出部24は、第1減弱画像CLから骨部減弱画像Cb1を減算することにより軟部減弱画像Cs1を導出する(ステップST8)。続いて、画像導出部24は、上述した式(6)、(7)により骨部画像Gbおよび軟部画像Gsを導出し(ステップST9)、表示制御部25が骨部画像Gbおよび軟部画像Gsを表示し(ステップST10)、処理を終了する。
【0050】
このように、第1の実施形態においては、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の骨部成分を含む骨部領域における減弱比を、骨部領域の周囲にある軟部領域において導出した軟部成分の減弱比に基づいて導出するようにした。そして、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の少なくとも被写体Hの領域における減弱比に基づいて、軟部成分が強調された軟部画像Gsおよび骨部成分が強調された骨部画像Gbを導出するようにした。このため、骨部領域において軟部成分の減弱比を精度よく導出することができ、その結果、軟部成分および骨部成分が精度よく分離された軟部画像Gsおよび骨部画像Gbを導出することができる。
【0051】
また、第1の実施形態においては、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2から放射線の減弱量を表す第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHを導出し、第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHを用いて軟部画像Gsおよび骨部画像Gbを導出するようにしている。このため、導出した減弱量を軟部成分を消去するための軟部消去係数K1として用いた場合において、上記式(4)により軟部成分を良好に消去することができる。したがって、軟部成分および骨部成分が精度よく分離された軟部画像Gsおよび骨部画像Gbを導出することができる。
【0052】
次いで、本開示の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態による放射線画像処理装置の機能的な構成は、
図3に示す第1の実施形態による放射線画像処理装置の機能的な構成と同一であるため、機能的な構成についての詳細な説明は省略する。第2の実施形態においては、領域特定部22が行う処理が第1の実施形態と異なる。
【0053】
図8は第2の実施形態において行われる処理を模式的に示す図である。
図8に示すように、領域特定部22は、第1減弱画像CLまたは第2減弱画像CHから骨部領域を検出する。なお、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2から骨部領域を検出するようにしてもよい。このために、第2の実施形態においては、領域特定部22は、放射線画像または減弱画像から骨部領域を検出するようにニューラルネットワークを機械学習することにより構築された学習済みモデルを用いる。この場合、学習済みモデルは、放射線画像または減弱画像の画素値に基づいて骨部領域を学習することにより、骨部領域を検出するように構築される。
【0054】
一方、放射線画像または減弱画像においては、骨部領域の画素値と軟部成分のみを含む軟部領域の画素値とは大きく異なる。このため、放射線画像または減弱画像をしきい値処理することにより放射線画像または減弱画像から骨部領域を検出するようにしてもよい。また、放射線画像または減弱画像においては、骨部領域の画素値と軟部成分のみを含む軟部領域との画素値の相違により骨部領域の形状が特定されている。このため、放射線画像または減弱画像に含まれる被写体Hの部位に応じた骨部領域の形状を用いたテンプレートマッチングにより、放射線画像または減弱画像から骨部領域を検出するようにしてもよい。
【0055】
そして、第2の実施形態においては、特性導出部23が、領域特定部22が上述したように放射線画像または減弱画像の画素値に基づいて特定した骨部領域における軟部成分の減弱比を導出する。骨部領域における軟部成分の減弱比を導出した以降の処理は上記第1の実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0056】
ここで、第2の実施形態において、領域特定部22が第1放射線画像G1または第2放射線画像G2から骨部領域および軟部領域を特定する場合、特性導出部23が第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHを導出するようにしてもよい。また、この場合、特性導出部23が、軟部領域の減弱比、骨部領域についての軟部成分の減弱比、および減弱比マップM1を導出すればよい。
【0057】
なお、上記第1および第2の実施形態においては、第1減弱画像CL、第2減弱画像CHおよび軟部消去係数K1を用いて、初期骨部減弱画像Cb0、骨部減弱画像Cb1および軟部減弱画像Cs1を導出した上で、骨部画像Gbおよび軟部画像Gsを導出しているが、これに限定されるものではない。第1放射線画像G1、第2放射線画像G2および軟部消去係数K1を用いて下記の式(8)、(9)により骨部画像Gbおよび軟部画像Gsを導出するようにしてもよい。
Gb(x,y)=G1(x,y)-K1(x,y)×G2(x,y) (8)
Gs(x,y)=G1(x,y)-Gb(x,y) (9)
【0058】
次いで、本開示の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態による放射線画像処理装置の機能的な構成は、
図3に示す第1の実施形態による放射線画像処理装置の機能的な構成と同一であるため、機能的な構成についての詳細な説明は省略する。上記第1の実施形態においては、軟部成分の減弱比を第1成分の特性として導出しているが、第3の実施形態においては、低エネルギー放射線および高エネルギー放射線の軟部成分による減弱係数である軟部減弱係数を第1成分の特性として導出するようにした点が第1の実施形態と異なる。
【0059】
図9は第3の実施形態において行われる処理を模式的に示す図である。第3の実施形態においては、領域特定部22が第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHを導出するまでの処理は上記第1および第2の実施形態と同一であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0060】
第3の実施形態においては、領域特定部22は、高エネルギーの放射線および低エネルギーの放射線のそれぞれについての脂肪および筋肉の減弱係数を使用して、第1および第2放射線画像G1,G2の各画素位置における脂肪の割合を導出する。そして、領域特定部22は、導出した脂肪の割合に基づいて骨部領域および軟部領域を特定する。
【0061】
ここで、被写体Hによる放射線の減弱量は、軟部および骨部の厚さおよび線質(高エネルギーか低エネルギーか)に依存して決まる。このため、単位厚さあたりの減弱率を表す減弱係数をμとすると、低エネルギー画像および高エネルギー画像のそれぞれにおける各画素位置の放射線の減弱量CL0,CH0は、下記の式(10)、(11)により表すことができる。式(10)、(11)において、tsは軟部の厚さ、tbは骨部の厚さ、μLsは低エネルギー放射線の軟部減弱係数、μLbは低エネルギー放射線の骨部減弱係数、μHSは高エネルギー放射線の軟部減弱係数、μHBは高エネルギー放射線の骨部減弱係数である。
CL0=μLs(ts,tb)×ts+μLb(ts,tb)×tb (10)
CH0=μHs(ts,tb)×ts+μHb(ts,tb)×tb (11)
【0062】
式(10)、(11)における低エネルギー画像の減弱量CL0は第1減弱画像CLの画素値に相当し、高エネルギー画像の減弱量CH0は第2減弱画像CHの画素値に相当する。したがって、式(10)、(11)は下記の式(12)、(13)により表される。なお、式(10)~(13)はいずれの第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHの各画素における関係を表しているが、画素位置を表す(x,y)を省略している。
CL=μLs(ts,tb)×ts+μLb(ts,tb)×tb (12)
CH=μHs(ts,tb)×ts+μHb(ts,tb)×tb (13)
【0063】
軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbを変数として式(12)、(13)を解くことにより、軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbを導出することができる。式(12)、(13)を解くためには、低エネルギー放射線および高エネルギー放射線のそれぞれについての軟部減弱係数μLs,μHsおよび骨部減弱係数μLb,μHbが必要である。ここで、骨部は被写体Hに応じた組成の差がないため、軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbに応じた骨部減弱係数μLb,μHbは予め用意することができる。
【0064】
一方、軟部は筋肉および脂肪が複雑に混じり合っており、かつ被写体Hに応じて筋肉および脂肪の割合が異なるため、予め用意することができない。このため、第3の実施形態においては、領域特定部22は、第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHを用いて、低エネルギー放射線についての軟部減弱係数μLsおよび高エネルギー放射線についての軟部減弱係数μHsを導出する。以下、軟部減弱係数μLs,μHsの導出について説明する。
【0065】
第3実施形態においては、軟部を構成する組成のうち、最も高密度の組成を筋肉、低密度の組成を脂肪とし、脂肪と筋肉とが混じり合った混合組成は、両者の減弱係数の中間の値となるという前提で軟部減弱係数を導出する。まず、領域特定部22は、各画素位置における脂肪の割合をN%とし、Nを0から順次増加させつつ、脂肪の減弱係数と筋肉の減弱係数とをN:100-Nの割合で重み付け加算することにより、低エネルギー放射線および高エネルギー放射線のそれぞれについての仮の軟部減弱係数μ0Ls,μ0Hsを算出する。なお、脂肪と筋肉とが重なっている場合、放射線源3の側に存在する成分(通常は脂肪)の線質硬化の影響を受けて減弱係数が変化するが、本実施形態においては、線質硬化の影響は考慮しないものとする。このため、本実施形態において使用する脂肪の割合であるN%は被写体Hの実際の体脂肪率とは一致しない。実際の軟部減弱係数は、
図10に示す脂肪の減弱係数と筋肉の減弱係数との間の値となるとの仮定に基づく処理となる。
【0066】
次に領域特定部22は、第1減弱画像CLの画素値と低エネルギー画像についての仮の軟部減弱係数μ0Lsとから下記の式(14)により、脂肪の割合がN%の場合の体厚TNを算出する。この際、骨部を含む画素も軟部のみで構成されていると仮定して体厚TNを算出する。
TN(x,y)=CL(x,y)/μ0Ls(x,y) (14)
【0067】
次いで領域特定部22は、式(14)により算出した体厚TNと、高エネルギー放射線についての仮の軟部減弱係数μ0Hsとから、下記の式(15)により高エネルギー放射線の減弱量CHN1を算出する。そして、下記の式(16)により減弱量CHN1から第2減弱画像CHを減算して差分ΔCHを算出する。
CHN1(x,y)=TN(x,y)×μ0Hs(x,y) (15)
ΔCH(x,y)=CHN1(x,y)-CH(x,y) (16)
【0068】
差分ΔCHが負である場合は、仮の軟部減弱係数μ0Ls,μ0Hsが正解の軟部減弱係数より小さい、すなわち、より脂肪に近いことを表す。差分ΔCHが正である場合は、仮の軟部減弱係数μ0Ls,μ0Hsがより筋肉に近いことを表す。領域特定部22は、第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHの全画素について、上記差分ΔCHが0に近づくようにNを変更しつつ仮の軟部減弱係数μ0Ls,μ0Hsを算出する。そして、差分ΔCHが0あるいは予め定められたしきい値以下となったときのNを、その画素についての脂肪の割合に決定する。また、領域特定部22は、決定された脂肪の割合Nを算出した際の仮の軟部減弱係数μ0Ls,μ0Hsを軟部減弱係数μLs,μHsに決定する。なお、差分ΔCHが負の場合には脂肪の割合Nを大きくし、差分ΔCHが正の場合には脂肪の割合Nを小さくするように変更すればよい。
【0069】
ここで、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2における、骨部成分を含む領域の画素においては、脂肪の割合が0に近い値、または負の値となる。被写体Hが人間である場合、脂肪の割合が0となったり負となったりすることはあり得ない。このため、領域特定部22は、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2における脂肪の割合Nが0に近い値(例えば、予め定められたしきい値未満の値)、または負の値となる画素からなる領域を第1放射線画像G1および第2放射線画像G2における骨部領域に特定する。また、領域特定部22は、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2における骨部領域以外の領域を軟部領域に特定する。
【0070】
第3の実施形態において、特性導出部23は、軟部減弱係数μLs,μHsを第1の成分の特性として導出する。ここで、第3の実施形態においては、領域特定部22が、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の各画素についての軟部減弱係数μLs,μHsを導出している。このため、特性導出部23は、領域特定部22が導出した軟部減弱係数μLs,μHsを、軟部領域における第1成分の特性として使用する。すなわち、第3の実施形態においては、領域特定部22は特性導出部23としての機能も有することとなる。
【0071】
一方、特性導出部23は、骨部領域における軟部減弱係数μLs,μHsを、骨部領域の周囲にある軟部領域の軟部減弱係数を補間することにより導出する。なお、補間に代えて、軟部領域における軟部減弱係数μLs,μHsの中央値、平均値あるいは減弱係数が小さい側から予め定められた割合となる値を,骨部領域についての軟部減弱係数μLs,μHsとして導出するようにしてもよい。これにより、特性導出部23は、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の少なくとも被写体Hの領域についての第1成分の特性を導出する。
【0072】
第3の実施形態において、画像導出部24は、軟部成分が強調された軟部画像Gsおよび骨部成分が強調された骨部画像Gbを導出する。第3の実施形態においては、特性導出部23が導出した軟部減弱係数μLs,μHsと、予め導出された骨部減弱係数μLb,μHbとに基づいて、軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbを導出し、導出した軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbに基づいて、軟部画像Gsおよび骨部画像Gbを導出する。
【0073】
軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbの導出には、上記式(12)、(13)を用いる。画像導出部24は、上述したように、軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbを変数として式(12)、(13)を解くことにより、軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbを導出する。なお、導出される軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbは、第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHの各画素において導出されるが、以降の説明においては画素位置を表す(x,y)を省略している。
【0074】
画像導出部24は、まず式(13)により、骨部の厚さtb=0とした場合の軟部の厚さts0を算出する。tb=0、ts=ts0の場合、CH=μHs(ts,0)×ts0+μHb(ts0,0)×0=μHs(ts0,0)×ts0であるから、ts0は下記の式(17)により算出される。また、画像導出部24は、式(13)により、軟部の厚さts=0とした場合の骨部の厚さtb0を算出する。ts=0、tb=tb0の場合、CH=μHs(0,tb0)×0+μHb(0,tb0)×tb0であるから、tsbは下記の式(18)により算出される。なお、式(17)、(18)においては画素位置を表す(x,y)は省略している。
ts0=CH/μHS(ts0,0) (17)
tb0=CH/μHb(tb0,0) (18)
【0075】
図11は骨部の厚さおよび軟部の厚さに応じた減弱量の関係を示す図である。
図11において減弱量33は、実際に被写体を撮影することにより導出される低エネルギー画像の画素値である減弱量CLおよび高エネルギー画像の画素値である減弱量CHを示す。ここで、低エネルギー画像の減弱量および高エネルギー画像との減弱量は、組成が高密度であるほど大きくなる。このため、tb=0、ts=ts0とした場合の組成は、実際の骨部の厚さおよび軟部の厚さに基づく組成よりも密度が低くなる。したがって、tb=0、ts=ts0とした場合式(12)により導出される第1減弱画像(ここでは仮の第1減弱画像CL′とする)の画素値すなわち減弱量は、
図11の減弱量34に示すように、実際の骨部の厚さおよび軟部の厚さにより導出される第1減弱画像CLの画素値よりも小さくなる(すなわちCL>CL′)。
【0076】
一方、tb=tb0、ts=0とした場合の組成は、実際の骨部の厚さおよび軟部の厚さに基づく組成よりも密度が高くなる。このため、tb=tb0、ts=0とした場合式(12)により導出される仮の第1減弱画像CL′の画素値すなわち減弱量は、
図11の減弱量35に示すように、実際の骨部の厚さおよび軟部の厚さにより導出される第1減弱画像CLの画素値よりも小さくなる(すなわちCL<CL′)。
【0077】
なお、実際の骨部の厚さおよび軟部の厚さを用いて式(12)により導出される仮の第1減弱画像CL′の画素値すなわち減弱量は,
図11の減弱量36に示すように第1減弱画像CLの画素値と同一となる。このことを利用して、画像導出部24は、以下のようにして骨部の厚さtbおよび軟部の厚さtsを導出する。
【0078】
(ステップ1)
まず、式(13)において、第2減弱画像CHの画素値および各画素において導出された軟部減弱係数μHbを用いて、仮の軟部の厚さtskを算出する。なお、仮の骨部の厚さtbkの初期値としては0を用いる。
【0079】
(ステップ2)
次いで、算出した仮の軟部の厚さtsk、仮の骨部の厚さtbk、低エネルギー放射線についての軟部減弱係数μLsおよび骨部減弱係数μLbを用いて上記式(12)により、仮の第1減弱画像CL′を算出する。
【0080】
(ステップ3)
次いで、仮の第1減弱画像CL′と第1減弱画像CLとの差分値ΔCLを算出する。差分値ΔCLを、放射線が骨により減弱された分の画素値と仮定して、骨部の厚さtbkを更新する。
【0081】
(ステップ4)
次いで、更新された骨部の厚さtbkおよび軟部の厚さtbkを用いて上記式(13)により、仮の第2減弱画像CH′を算出する。
【0082】
(ステップ5)
次いで、仮の第2減弱画像CH′と第2減弱画像CHとの差分値ΔCHを算出する。差分値ΔCHを、放射線が軟部により減弱された分の画素値と仮定して、軟部の厚さtskを更新する。
【0083】
そして、差分値ΔCL,ΔCHの絶対値が予め定められたしきい値未満となるまでステップ1~5の処理を繰り返すことにより、軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtsを導出する。なお、ステップ1~5の処理を予め定められた回数繰り返すことにより、軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtsを導出するようにしてもよい。
【0084】
そして、画像導出部24は、導出された軟部の厚さtsに基づいて軟部画像Gsを導出し、導出された骨部の厚さtbに基づいて骨部画像Gbを導出する。ここで、軟部画像Gsは軟部の厚さtsに応じた大きさの画素値を有し、骨部画像Gbは骨部の厚さGbに応じた大きさの画素値を有するものとなる。
【0085】
次いで、第3の実施形態において行われる処理について説明する。
図12は第3の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部21が撮影装置1に被写体Hのエネルギーサブトラクション撮影を行わせることにより、第1および第2放射線画像G1,G2を取得する(放射線画像取得:ステップST21)。次いで、領域特定部22が、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2から第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHを導出し(減弱画像導出:ステップST22)、第1減弱画像CLまたは第2減弱画像CHにおける軟部成分のみを含む軟部領域および骨部を含む骨部領域を特定する(ステップST23)。次に、特性導出部23が、軟部領域において放射線画像の減弱に関する軟部成分の特性(軟部減弱係数)を導出する(ステップST24)。続いて、特性導出部23が、骨部領域において軟部成分の特性を導出する(ステップST25)。
【0086】
次いで、画像導出部24が、軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbを導出し(ステップST26)、軟部の厚さtsおよび骨部の厚さtbから骨部画像Gbおよび軟部画像Gsを導出する(ステップST27)。そして、表示制御部25が骨部画像および軟部画像Gsを表示し(ステップST28)、処理を終了する。
【0087】
このように、第3の実施形態においては、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の骨部成分を含む骨部領域において、骨部領域の周囲にある軟部領域において導出した軟部成分の特性、すなわち軟部減弱係数に基づいて軟部減弱係数を導出するようにした。そして、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2の少なくとも被写体Hの領域における軟部減弱係数に基づいて、軟部成分が強調された軟部画像Gsおよび骨部成分が強調された骨部画像Gbを導出するようにした。このため、骨部領域において軟部減弱係数を精度よく導出することができ、その結果、軟部成分および骨部成分が精度よく分離された軟部画像Gsおよび骨部画像Gbを導出することができる。
【0088】
次いで、本開示の第4の実施形態について説明する。なお、第4の実施形態による放射線画像処理装置の機能的な構成は、
図3に示す第1の実施形態による放射線画像処理装置の機能的な構成と同一であるため、機能的な構成についての詳細な説明は省略する。第4の実施形態においては、領域特定部22が行う処理が第3の実施形態と異なる。
図13は第4の実施形態において行われる処理を模式的に示す図である。
図13に示すように、領域特定部22は、第1減弱画像CLまたは第2減弱画像CHから骨部領域を検出する。なお、第1放射線画像G1または第2放射線画像G2から骨部領域を検出するようにしてもよい。このために、第4の実施形態においては、領域特定部22は、第2の実施形態と同様に、放射線画像または減弱画像から骨部領域を検出するようにニューラルネットワークを機械学習することにより構築された学習済みモデルを用いる。この場合、学習済みモデルは、放射線画像または減弱画像の画素値に基づいて骨部領域を学習することにより、骨部領域を検出するように構築される。
【0089】
一方、放射線画像または減弱画像においては、骨部領域の画素値と軟部成分のみを含む軟部領域との画素値は大きく異なる。このため、放射線画像または減弱画像をしきい値処理することにより放射線画像または減弱画像から骨部領域を検出するようにしてもよい。また、放射線画像または減弱画像においては、骨部領域の画素値と軟部成分のみを含む軟部領域の画素値との相違により骨部領域の形状が特定されている。このため、放射線画像または減弱画像に含まれる被写体Hの部位に応じた骨部領域の形状を用いたテンプレートマッチングにより、放射線画像または減弱画像から骨部領域を検出するようにしてもよい。
【0090】
そして、第4の実施形態においては、特性導出部23が、領域特定部22が上述したように放射線画像または減弱画像の画素値に基づいて特定した骨部領域における軟部減弱係数を導出する。骨部領域における軟部減弱係数を導出した以降の処理は上記第3の実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0091】
ここで、第4の実施形態において、領域特定部22が第1放射線画像G1または第2放射線画像G2から骨部領域および軟部領域を特定する場合、特性導出部23が第1減弱画像CLおよび第2減弱画像CHを導出するようにしてもよい。また、この場合、特性導出部23が、脂肪の割合および軟部減弱係数を導出するようにしてもよい。
【0092】
なお、上記第3および第4の実施形態においては、第1減弱画像CL、第2減弱画像CHを用いて軟部減弱係数を導出して骨部画像Gbおよび軟部画像Gsを導出しているが、これに限定されるものではない。第1放射線画像G1および第2放射線画像G2から軟部減弱係数を導出し、骨部の厚さおよび軟部の厚さを導出して骨部画像Gbおよび軟部画像Gsを導出するようにしてもよい。
【0093】
また、上記各実施形態においては、1ショット法により第1および第2放射線画像G1,G2を取得しているが、これに限定されるものではない。1つの放射線検出器のみ用いて撮影を2回行う、いわゆる2ショット法により第1および第2放射線画像G1,G2を取得してもよい。2ショット法の場合、被写体Hの体動により、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2に含まれる被写体Hの位置がずれる可能性がある。このため、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2において、被写体の位置合わせを行った上で、本実施形態の処理を行うことが好ましい。
【0094】
また、上記実施形態においては、第1および第2の放射線検出器5,6を用いて被写体Hを撮影するシステムにおいて取得した放射線画像を用いているが、放射線検出器に代えて、蓄積性蛍光体シートを用いて第1および第2放射線画像G1,G2を取得する場合にも、本開示の技術を適用できることはもちろんである。この場合、2枚の蓄積性蛍光体シートを重ねて被写体Hを透過した放射線を照射して、被写体Hの放射線画像情報を各蓄積性蛍光体シートに蓄積記録し、各蓄積性蛍光体シートから放射線画像情報を光電的に読み取ることにより第1および第2放射線画像G1,G2を取得すればよい。なお、蓄積性蛍光体シートを用いて第1および第2放射線画像G1,G2を取得する場合にも、2ショット法を用いるようにしてもよい。
【0095】
また、上記実施形態における放射線は、とくに限定されるものではなく、X線の他、α線またはγ線等を用いることができる。
【0096】
また、上記実施形態において、例えば、画像取得部21、領域特定部22、特性導出部23、画像導出部24および表示制御部25といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0097】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0098】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0099】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【0100】
以下、本開示の付記項を記載する。
(付記項1)
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第1成分のみを含む第1成分領域において、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像に基づいて、前記放射線の減弱に関する前記第1成分の特性を導出し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第2成分を含む第2成分領域における前記第1成分の特性を、前記第2成分領域の周囲にある前記第1成分領域において導出した前記第1成分の特性に基づいて導出し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域における前記第1成分の特性に基づいて、前記第1成分が強調された第1成分画像および前記第2成分が強調された第2成分画像を導出する放射線画像処理装置。
(付記項2)
前記プロセッサは、前記第1放射線画像または前記第2放射線画像における前記第2成分領域を、前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の画素値に基づいて特定し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像における前記第2成分領域以外の領域を前記第1成分領域に特定する付記項1に記載の放射線画像処理装置。
(付記項3)
前記プロセッサは、前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域において前記放射線の減弱に関する減弱特性を導出し、
前記被写体の領域における前記減弱特性に基づいて、前記第1成分領域および前記第2成分領域を特定し、
前記第1成分領域について導出された前記減弱特性を、前記第1成分領域についての前記第1成分の特性として使用する付記項1に記載の放射線画像処理装置。
(付記項4)
前記プロセッサは、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像のそれぞれから前記被写体による前記放射線の減弱量を表す第1減弱画像および第2減弱画像を導出し、
前記第1減弱画像および前記第2減弱画像の対応する画素間での比率である減弱比を前記第1成分の特性として導出する付記項1から3のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
(付記項5)
前記プロセッサは、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像のそれぞれから前記被写体による前記放射線の減弱量を表す第1減弱画像および第2減弱画像を導出し、
前記第1減弱画像および前記第2減弱画像の対応する画素間での比率である減弱比を前記減弱特性として導出する付記項3に記載の放射線画像処理装置。
(付記項6)
前記プロセッサは、前記第1減弱画像、前記第2減弱画像および前記第1成分の特性に基づいて、前記第2成分が強調された初期第2成分減弱画像を導出し、
前記初期第2成分減弱画像に含まれる前記第2成分のコントラストを前記第1減弱画像または前記第2減弱画像に含まれる前記第2成分のコントラストと一致させることにより第2成分減弱画像を導出し、
前記第1減弱画像または前記第2減弱画像および前記第2成分減弱画像に基づいて前記第1成分が強調された第1成分減弱画像を導出し、
前記第1成分減弱画像および前記第2成分減弱画像のそれぞれから前記第1成分画像および前記第2成分画像を導出する付記項4または5に記載の放射線画像処理装置。
(付記項7)
前記プロセッサは、前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域において前記複数の組成の厚さに関する情報を導出し、
前記被写体の領域における前記複数の組成の厚さに関する情報に基づいて、前記第1成分領域および前記第2成分領域を特定する付記項1に記載の放射線画像処理装置。
(付記項8)
前記プロセッサは、前記第1成分に含まれる前記複数の組成のそれぞれの前記放射線の減弱係数および前記複数の組成のそれぞれの厚さに関する情報に基づいて、前記第1成分の減弱係数を前記第1成分の特性として導出する付記項1、2または7に記載の放射線画像処理装置。
(付記項9)
前記プロセッサは、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像のそれぞれから前記被写体による前記放射線の減弱量を表す第1減弱画像および第2減弱画像を導出し、
前記第1減弱画像、前記第2減弱画像、前記第1成分の特性および前記第2成分の特性に基づいて、前記第1成分の厚さおよび前記第2成分の厚さを導出し、
前記第1成分の厚さおよび前記第2成分の厚さに基づいて、前記第1成分画像および前記第2成分画像を導出する付記項7または8に記載の放射線画像処理装置。
(付記項10)
前記第1成分は前記被写体の軟部、前記第2成分は前記被写体の骨部であり、前記第1成分に含まれる前記複数の組成は脂肪および筋肉である付記項1から9のいずれか1項に記載の放射線画像処理装置。
(付記項11)
複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第1成分のみを含む第1成分領域において、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像に基づいて、前記放射線の減弱に関する前記第1成分の特性を導出し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第2成分を含む第2成分領域における前記第1成分の特性を、前記第2成分領域の周囲にある前記第1成分領域において導出した前記第1成分の特性に基づいて導出し、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域における前記第1成分の特性に基づいて、前記第1成分が強調された第1成分画像および前記第2成分が強調された第2成分画像を導出する放射線画像処理方法。
(付記項12)
複数の組成からなる第1成分および単一の組成からなる第2成分を含む被写体を、エネルギー分布が異なる放射線によって撮影することにより取得された第1放射線画像および第2放射線画像を取得する手順と、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第1成分のみを含む第1成分領域において、前記第1放射線画像および前記第2放射線画像に基づいて、前記放射線の減弱に関する前記第1成分の特性を導出する手順と、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の前記第2成分を含む第2成分領域における前記第1成分の特性を、前記第2成分領域の周囲にある前記第1成分領域において導出した前記第1成分の特性に基づいて導出する手順と、
前記第1放射線画像または前記第2放射線画像の少なくとも前記被写体の領域における前記第1成分の特性に基づいて、前記第1成分が強調された第1成分画像および前記第2成分が強調された第2成分画像を導出する手順とをコンピュータに実行させる放射線画像処理プログラム。
【符号の説明】
【0101】
1 撮影装置
3 放射線源
5、6 放射線検出器
7 放射線エネルギー変換フィルタ
10 画像処理装置
11 CPU
12 画像処理プログラム
13 ストレージ
14 ディスプレイ
15 入力デバイス
16 メモリ
17 ネットワークI/F
18 バス
21 画像取得部
22 領域特定部
23 特性導出部
24 画像導出部
25 表示制御部
30 表示画面
33~36 減弱量
Gb 骨部画像
Gs 軟部画像
H 被写体