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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046546
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】吸収性物品用不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4374 20120101AFI20240327BHJP
   D04H 1/559 20120101ALI20240327BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240327BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20240327BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
D04H1/4374
D04H1/559
B32B5/26
A61F13/511 100
A61F13/511 400
A61F13/511 300
A61F13/512 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151986
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 海
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 飛生馬
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正洋
(72)【発明者】
【氏名】藤田 莊一
【テーマコード(参考)】
3B200
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA03
3B200BA08
3B200BB03
3B200CA02
3B200CA11
3B200DC02
3B200DC04
3B200DC07
3B200EA07
4F100BA02
4F100BA25
4F100DD01A
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100EC03
4F100GB72
4F100JK11
4F100YY00A
4F100YY00B
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB02
4L047AB09
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB06
4L047BB09
4L047CA02
4L047CA10
4L047CA12
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB07
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】クッション性及び液透過性を共に優れたものとし得る吸収性物品用不織布を提供する。
【解決手段】厚み方向に積層された第1繊維層と第2繊維層とを有し、繊維同士の交差部における繊維融着部を含む不織布であって、前記第1繊維層と前記第2繊維層とは互いの繊維同士の前記繊維融着部によって一体化されており、前記第1繊維層は、複数の凸部と、隣り合う凸部間に設けられた底部とを備えた凹凸構造を有し、前記複数の凸部それぞれは、頂部と、該頂部を支持する壁部とを備え、前記壁部は、前記不織布の平面方向に対して垂直に延在し、前記底部には、厚み方向に貫通する開孔部が配されており、前記第1繊維層の前記底部がある側に前記第2繊維層を有しており、前記第2繊維層の構成繊維は、前記第1繊維層の構成繊維よりも繊維径が小さく、前記開孔部において前記第1繊維層の側に露出した状態にされている、吸収性物品用不織布。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に積層された第1繊維層と第2繊維層とを有し、繊維同士の交差部における繊維融着部を含む不織布であって、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは互いの繊維同士の前記繊維融着部によって一体化されており、
前記第1繊維層は、複数の凸部と、隣り合う凸部間に設けられた底部とを備えた凹凸構造を有し、前記複数の凸部それぞれは、頂部と、該頂部を支持する壁部とを備え、前記壁部は、前記不織布の平面方向に対して垂直に延在し、前記底部には、厚み方向に貫通する開孔部が配されており、
前記第1繊維層の前記底部がある側に前記第2繊維層を有しており、
前記第2繊維層の構成繊維は、前記第1繊維層の構成繊維よりも繊維径が小さく、前記開孔部において前記第1繊維層の側に露出した状態にされている、吸収性物品用不織布。
【請求項2】
前記第2繊維層は、前記第1繊維層との対向面側に、前記第1繊維層の前記開孔部から前記壁部で区画された領域に進入する隆起部を有する、請求項1記載の吸収性物品用不織布。
【請求項3】
前記隆起部は、前記第1繊維層の側から視認可能である、請求項2記載の吸収性物品用不織布。
【請求項4】
前記隆起部の裾部が、前記第1繊維層における前記壁部と前記第2繊維層との当接領域に接続されている、請求項2又は3記載の吸収性物品用不織布。
【請求項5】
前記第1繊維層における前記壁部と前記第2繊維層との当接領域において、前記第2繊維層の繊維が平面方向に配向し、前記隆起部の裾部の表面の繊維が、前記壁部の繊維とは異なる繊維配向を有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項6】
前記第2繊維層の構成繊維の親水度が、前記第1繊維層の構成繊維の親水度よりも高い、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項7】
前記第2繊維層の構成繊維の繊維径と前記第1繊維層の構成繊維の繊維径との差が、2μm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項8】
前記第2繊維層の単位面積当たりの繊維本数が、前記第1繊維層における前記頂部の単位面積当たりの繊維本数よりも大きい、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項9】
前記第2繊維層の前記第1繊維層との対向面側は、平面方向に延在する連続繊維層となっている、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項10】
前記第1繊維層における前記壁部と前記第2繊維層との当接領域において、前記壁部の繊維と前記第2繊維層の繊維との交差部における繊維融着部を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項11】
目付が20g/m以上100g/m以下である、請求項1~10いずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項12】
4.9mN/cm荷重下における厚みが0.8mm以上10mm以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項13】
前記壁部の繊維が縦配向している、請求項1~12のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布を有する吸収性物品。
【請求項15】
複数の突起と該突起間の凹部とを備えた凹凸形状の支持体上に第1繊維ウエブを載置し、前記凹部に沿って、前記第1繊維ウエブを、押し込み部材の押し込み部によって押し込んで賦形すると共に、前記突起に対応する箇所を開孔し、前記支持体と反対側に開孔面を有する凹凸開孔繊維ウエブを形成する、押し込み工程と、
前記支持体から前記押込み部材を取り外した後、前記凹凸開孔繊維ウエブに第1の熱風を吹き付けて繊維同士を融着させて凹凸開孔不織布を得る工程と、
前記第1繊維ウエブよりも構成繊維の繊維径が小さい第2繊維ウエブを供給して、前記凹凸開孔不織布の開孔面側に積層させる工程と、
第2の熱風を吹き付けて前記凹凸不織布と前記第2繊維ウエブとの繊維同士を融着させ、かつ前記第2繊維ウエブ中の繊維同士を融着する熱融着工程と、を有する吸収性物品用不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、おむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の構成部材など様々な用途に用いられており、様々な構造を備えたものがある。
例えば、特許文献1には、吸収性物品の表面シートとして、複数の畝部と底部とを有し、前記底部に開孔部を配した凹凸構造の不織布が記載されている。特許文献2には、第1不織布層と第2不織布層とが積層された不織布が記載されている。前記第1不織布層は凹凸構造を有し、第2不織布層は略平坦な形状とされている。特許文献3には、吸収性物品の表面シートとして、上層及び下層の繊維層からなる不織布が記載されており、上層は肌当接面側に突出する凸部を複数有する。前記凸部は、その頂部に丸みを帯び、側壁部から凸部底部にかけてなだらかな側面を有するドーム形状である。前記凸部間の凹部はエンボス加工により形成されており、該凹部において上層の繊維層と下層の繊維層とが接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-467号公報
【特許文献2】特開2019-44293号公報
【特許文献3】特開2009-172354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2記載の不織布は、垂直な壁部にて凸部頂部が支持されることで、特許文献3記載の凸部の壁面角度がなだらかな不織布に比して、クッション性に優れる。また、特許文献1記載の不織布は、吸収性物品の表面シート等として用いた場合、前記壁部に沿って排泄液を降下させて底部の開孔部から下層へと迅速に透過させることができる。これにより、特許文献1記載の不織布は厚み方向の液透過性に優れ、吸収性物品の液吸収性を高めることができる。
しかし、特許文献1記載の不織布を表面シートとして下層部材と接合する際に一般的にはホットメルト型等の接着剤が用いられ、該接着剤が前記開孔部に露出しやすい。開孔部を介して表面に露出する接着剤の存在は液吸収性に影響を与えかねない。また前記接合の際、開孔部周辺にある垂直な壁部にて下層部材と接合するため該壁部の構造が崩れやすく、十分な接合強度が得られ難い。そのため、この不織布について、吸収性物品に組み込んだ場合においても前述のクッション性及び液透過性を十分に機能させる観点から、更なる改善の余地がある。
この点、特許文献3記載の不織布では、凸部は、壁面角度がなだらかであることで前述の接合の際に崩れ難い。しかし、前記凸部の壁面角度がなだらかであることで、開孔が無いことと相俟って液(例えば、吸収性物品における尿や流動性のある軟便)の表面流れが生じやすい。また、特許文献2及び3記載の不織布では、開孔部が無く2層からなることで、上下層間の接合面積を確保しやすく凸部の構造が保持されやすい。しかし、液透過速度や液残り防止性の点で十分とは言えず、更なる向上が望まれる。
このように従来の不織布において、クッション性と液透過性とを共に向上させることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、クッション性及び液透過性を共に優れたものとし得る吸収性物品用不織布に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、厚み方向に積層された第1繊維層と第2繊維層とを有し、繊維同士の交差部における繊維融着部を含む不織布であって、前記第1繊維層と前記第2繊維層とは互いの繊維同士の前記繊維融着部によって一体化されており、前記第1繊維層は、複数の凸部と、隣り合う凸部間に設けられた底部とを備えた凹凸構造を有し、前記複数の凸部それぞれは、頂部と、該頂部を支持する壁部とを備え、前記壁部は、前記不織布の平面方向に対して垂直に延在し、前記底部には、厚み方向に貫通する開孔部が配されており、前記第1繊維層の前記底部がある側に前記第2繊維層を有しており、前記第2繊維層の構成繊維は、前記第1繊維層の構成繊維よりも繊維径が小さく、前記開孔部において前記第1繊維層の側に露出した状態にされている、吸収性物品用不織布を提供する。
【0007】
また、本発明は、複数の突起と該突起間の凹部とを備えた凹凸形状の支持体上に第1繊維ウエブを載置し、前記凹部に沿って、前記第1繊維ウエブを、押し込み部材の押し込み部によって押し込んで賦形すると共に、前記突起に対応する箇所を開孔し、前記支持体と反対側に開孔面を有する凹凸開孔繊維ウエブを形成する、押し込み工程と、前記支持体から前記押込み部材を取り外した後、前記凹凸開孔繊維ウエブに第1の熱風を吹き付けて繊維同士を融着させて凹凸開孔不織布を得る工程と、前記第1繊維ウエブよりも構成繊維の繊維径が小さい第2繊維ウエブを供給して、前記凹凸開孔不織布の開孔面側に積層させる工程と、第2の熱風を吹き付けて前記凹凸不織布と前記第2繊維ウエブとの繊維同士を融着させ、かつ前記第2繊維ウエブ中の繊維同士を融着する熱融着工程と、を有する吸収性物品用不織布の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品用不織布は、クッション性及び液透過性を共に優れたものとすることができる。本発明の吸収性物品用不織布の製造方法によれば、上記の本発明の吸収性物品用不織布を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る吸収性物品用不織布の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】(A)は、図1に示す本実施形態の吸収性物品用不織布を吸収性物品の構成部材として着用者の体に沿わせるよう傾斜させた状態における第1繊維層の凹凸構造と液表面流れとの関係を模式的に示す説明図であり、(B)は、従来の凹凸構造の吸収性物品用不織布を吸収性物品の構成部材として着用者の体に沿わせるよう傾斜させた状態を模式的に示す断面図である。
図3】本実施形態の吸収性物品用不織布における開孔部から第1繊維層に進入する第2繊維層の隆起部の例を示す図面代用写真である。
図4】本実施形態の吸収性物品用不織布の具体例を一方の面側から模式的に示す平面図である。
図5図4に示す吸収性物品用不織布のR1-R1線断面図である。
図6図4に示す吸収性物品用不織布のR2-R2線断面図である。
図7図4に示す吸収性物品用不織布のR3-R3線断面図である。
図8】本発明に係る吸収性物品用不織布の製造方法の好ましい一実施形態を模式的に示す説明図であり、(A)は押し込み工程を示し、(B)は第1の熱風により凹凸開孔不織布を得る工程を示し、(C)は第2繊維ウエブを凹凸開孔不織布に積層する工程を示し、(D)は第2の熱風により凹凸開孔不織布と第2繊維ウエブとを一体化し、第2繊維ウエブを不織布化する工程を示している。
図9】支持体の平面図である。
図10】押し込み部材の平面図である。
図11】支持体と押し込み部材とを組み合わせた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る吸収性物品用不織布の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら、以下に説明する。なお、本明細書において、吸収性物品用不織布を単に不織布ということがある。
本実施形態の不織布10は、繊維同士の交差部に繊維融着部を有する、いわゆるサーマルボンド不織布である。例えば、エアスルー法によって前記繊維融着部を形成したエアスルー不織布が挙げられる。そのため、不織布10は構成繊維に熱可塑性繊維を含む。すなわち、不織布10を構成する後述の第1繊維層M1及び第2繊維層M2は構成繊維に熱可塑性繊維を含み、前記繊維融着部を形成した不織布である。第1繊維層M1と第2繊維層M2とは互いの繊維同士の交差部における繊維融着部によって一体化されている。
【0011】
このような本実施形態の不織布10は、図1に示すように、厚み方向Zに積層された第1繊維層M1と第2繊維層M2とを有する。不織布10は一方の面側10Tと他方の面側10Bとの表裏面を有し、一方の面側10Tに第1繊維層M1が配され、他方の面側10Bに第2繊維層M2が配される。不織布10において、例えば一方の面側10Tを使用面とすることができる。不織布10を、吸収性物品の吸収体よりも肌面側の部材、例えば表面シートとして用いる場合、一方の面側10Tを肌面側とすることができる。この場合、第1繊維層M1は上層、第2繊維層M2は下層ともいう。なお、上記の一方の面側10Tと他方の面側10Bとは、不織布10全体の表裏面を意味すると同時に、第1繊維層M1及び第2繊維層M2のそれぞれの表裏面も意味する。また、不織布10の厚み方向Zは、第1繊維層M1及び第2繊維層M2のそれぞれの厚み方向Zも意味する。
【0012】
第1繊維層M1は、一方の面側10Tに突出する複数の凸部1と、隣り合う凸部1、1間に設けられた底部2とを有する。これにより、第1繊維層M1は厚み方向Zに凹凸構造を有する。凸部1は、第1繊維層M1の厚み方向Zに立設された立体的な繊維層であり、底部2よりも一方の面側10Tの高い位置にある。複数の凸部1のそれぞれは、頂部1Aと、頂部1Aを支持する壁部1Bとを備える。
【0013】
頂部1Aの一方の面側10Tの外形は、平坦面であってもよく、曲面であってもよい。凹凸の起伏の深さを認識しやすくし、底部2における後述の開孔部3の周囲の陰影をより明確にする観点から、頂部1Aの一方の面側10Tは平坦面であることが好ましい。
【0014】
壁部1Bの他方の面側10Bの部分(付け根部1Dともいう)が第2繊維層M2に当接している。壁部1Bの付け根部1Dと第2繊維層M2との当接領域4において、壁部1Bの付け根部1Dは、第2繊維層M2に食い込んで一体化(固定)されている。この一体化は種々の接合形態によって行うことができる。接合強度を高める観点、第1繊維層M1の凹凸形状を保持する観点から、壁部1Bの付け根部1Dの構成繊維と第2繊維層M2の構成繊維との交差部における繊維融着部によって、壁部1Bの付け根部1Dと第2繊維層M2とが一体化されていることが好ましい。
【0015】
壁部1Bの繊維は、不織布10の平面方向に対して縦配向していることが好ましい。ここで言う不織布10の平面方向とは、不織布10(第2繊維層M2)の他方の面側10Bの表面に接する平面(例えば平坦な台座など)に沿う方向を意味する。
この繊維の縦配向は、壁部1Bの、頂部1A及び第2繊維層M2に対する厚み方向Zの支持力を高め、荷重を柔らかく吸収でき、荷重下でも凸部1の厚みを残しやすくする。また、荷重が無くなった際の凸部1の厚み回復性を高める。これにより、第1繊維層M1及び第2繊維層M2を含む不織布10は、繊維層の繊維構造による弾力性と相俟って、緩やかに圧縮変形しながら厚みが残りやすく、優れたクッション性を備える。すなわち、不織布10は肌当たりに優れた柔らかさを持つ。また、不織布10を吸収性物品における吸収体よりも肌面側の部材、例えば表面シートとした場合に、排泄液の液透過の作用が荷重下においてもより持続されやすくし、吸収体から肌面側への液戻り(ウエットバック)が抑制される。このような作用をする壁部1Bの立体形状は、前述の繊維融着部によって第2繊維層M2と高い強度で一体化されることで良好に保持することができる。また、この一体化が繊維同士の交差部における繊維融着部による接合状態を利用するものであるため、従来のホットメルト型等の接着剤で接合する場合のように壁部1Bの下部を崩して接着面を確保する必要がない。これにより、壁部1Bの高さを十分なものとして維持することができる。加えて、壁部1Bの縦配向に沿って、液を第2繊維層M2の側へと降下促進させることができる。
【0016】
壁部1Bの繊維の縦配向とは、第1繊維層M1の厚み方向Zに沿う繊維が多いことを意味し、後述の測定方法によって得られる縦配向率が60%以上であることを意味する。上記の作用をより高める観点から、61%以上が好ましく、62%以上がより好ましい。また、前記縦配向率は、その上限には特に制限は無いが、配向繊維同士の交差部を作って融着部を形成し、繊維同士で柱状になって、力に耐える構造を作る観点から、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下が更に好ましい。
【0017】
(壁部1Bにおける繊維の縦配向率の測定方法)
図1に示すように、壁部1Bに対し、下記の手順で測定を行う。
すなわち、第1繊維層M1の凸部1、底部2及び第2繊維層M2を含む、不織布10の厚み方向の断面において画定された壁部1Bの繊維層断面を走査電子顕微鏡(SEM)で35倍に拡大して観察する。観察画像に基準線として一辺が500μmの正方形の線を付す。正方形の各辺(基準線)は、不織布10の断面における厚み方向及び平面方向それぞれと直交する辺とする。正方形の各辺からなる基準線に繊維が通過する延べ本数をそれぞれ数える。不織布10の平面方向に直交する正方形の基準線を通る繊維を「横繊維本数」、不織布10の厚み方向に直交する正方形の基準線を通る繊維を「縦繊維本数」と定義する。縦配向率として、(縦繊維本数)/(横繊維本数+縦繊維本数)×100=縦配向率(%)として算出する。それらを各10点測定し、平均したものを縦配向率の値とする。
なお、上記の不織布10の断面における平面方向は、図1に示す、第2繊維層M2の他方の面側10Bの表面に接する直線Lに相当する。厚み方向は、直線Lに直交する方向Zに相当する。
【0018】
上記の、第1繊維層M1の凸部1及び底部2を含む、不織布10の厚み方向Zの断面において、壁部1Bの繊維層は、次の方法により区画することができる。
すなわち、第1繊維層M1の頂部1A、壁部1B及び第2繊維層M2を含む厚み方向Zの断面を有する不織布10を、第2繊維層M2(他方の面側10B)を下にして、マイクロスコープVHX6000(商品名、株式会社キーエンス製)の台座に載せる。次いで、不織布10に頂部1A側(一方の面側10T)に平板(例えばフラットアクリルプレート)を載せて4.9mN/cmの荷重をかける。この状態で前記厚み方向Zの断面を、前記マイクロスコープにより20倍で観察し、第1繊維層M1のうち平板に接している部分の繊維層を頂部1Aとする。頂部1Aの端部と第2繊維層M2の一方の面側10Tの面とを繋いだ部分を壁部1Bとする。
なお、頂部1Aと壁部1Bとの境界の特定にあたっては、壁部1Bの無い部分での頂部1Aの厚みを頂部1Aの端部の厚みとし、その厚みを除く部分を壁部1Bとする。また、壁部1Bは、他方の面側10Bに端部(付け根部1Dともいう)を有しており、底部2は、当該付け根部1Dを含む、隣り合う凸部1、1間に設けられた領域を指す。
【0019】
加えて、壁部1Bは不織布10の平面方向に対して垂直に延在する。この壁部1Bが前述のとおり第2繊維層M2と繊維融着部によって接合されて、第2繊維層M2と高い接合強度で一体化されている。これにより、壁部1Bの垂直延在構造は、接合時の崩れが抑えられ、第2繊維層M2を台座として安定的に保持されやすい。また、不織布10を吸収性物品における吸収体よりも肌面側の部材、例えば表面シートとして組み込む場合、第2繊維層M2側にて下層部材(例えば吸収体)と接合面積を確保して十分な接合強度で接合することができる。これにより、不織布10が吸収性物品に組み込まれた状態においても、第1繊維層M1の壁部1Bを含む凹凸構造が保持されやすい。
【0020】
上記の垂直な壁部1Bは頂部1Aと第2繊維層M2とを垂直に連結する。これにより、頂部1Aの柔らかい繊維層が、壁部1Bの弾力の繊維層で支持された状態で残りやすい。この頂部1Aを介して凸部1の繊維層の厚みが感じられ、クッション性が高められる。加えて、前述の第2繊維層M2が柔らかいクッション台座として機能して、これに連結する垂直な壁部1Bによるクッション性がより柔軟性高く優れたものとなり、より安定的に発現され得る。これにより、より柔らかい触感が得られやすい。より詳細には、この柔らかい触感は、触れる程度の軽い押圧下で優しい安心の厚みとして感じられ、更なる押圧下で凸部1が変形しながらもヘタり難く、弾力のある柔らかい厚みとして感じられる。このような優れたクッション性により、前述の凹凸構造による肌触りが更に良好となる。
加えて、壁部1Bの垂直延在によって、この壁部1Bに沿った液の降下促進作用が発現する。この液の降下促進作用は、特に不織布10を吸収性物品における吸収体よりも肌面側の部材、例えば表面シートとして用いる場合に、該吸収性物品の液吸収性の向上に効果的である。一般的に、前記吸収性物品は装着状態で着用者の股間部分に沿って傾斜した配置となり、排泄液(尿に限らず流動性のある軟便を含む)の液量や勢いによってはその傾斜に沿って排泄液が表面流れすることがある。しかし、本実施形態の不織布10において、第1繊維層M1の壁部1Bが、図2(A)に示すように着用者の体に沿わせて傾斜しながらも不織布10の平面方向に対して垂直に延在することで堤防のような壁を形成し、表面で流れようとする排泄液に対する高い堰き止め作用を奏する。更に、堰き止めした排泄液を壁部1Bの垂直形状に沿って凸部1、1間の凹部2へと落とし込み、該排泄液の表面流れを抑制する(矢印S1)。これに対し、図2(B)に示す従来の凹凸構造の不織布90のように凸部9の壁面角度がなだらかであると該壁面9Bが前記傾斜に対してなだらかな斜面となるため、該壁面9Bに沿って排泄液が表面流れしやすく(矢印S2)、不織布10の垂直な壁部1Bの堰き止め作用は生じ難い。このように本実施形態の不織布10では、垂直な壁部1Bによる液堰き止め作用が吸収性物品の装着状態において発揮されて前述の液の降下促進作用をより効果的に発現させ、その結果、液の表面流れを抑制して吸収性物品の液吸収性を向上させることができる。
垂直な壁部1Bによる上記のクッション作用及び液の降下促進作用は、壁部1Bの繊維が縦配向である場合により強化される。
また、壁部1Bの上記作用は、前述の通り、壁部1Bが繊維融着部によって第2繊維層M2と高い接合強度で一体化されてその構造が保持されることで、特に不織布10を吸収性物品に組み込んだ場合に効果的に機能し得る。
【0021】
壁部1Bの「垂直」は、図1に示す不織布10(第2繊維層M2)の他方の面側10Bの平面に対する角度θが厳密に90°である場合だけでなく、60°以上120°以下であることを意味する。この範囲にあることで、壁部1Bは、不織布10の厚み方向Zにおいて実質的に90°と認められる角度で延出する形状を有する。角度θは、不織布10の他方の面側10Bの表面に接する平面と壁部1Bの延長線との交差角度を意味する。具体的には、図1に示すように、凸部1を含む厚み方向Zの断面において、壁部1Bの繊維層の幅の中心線Mと、不織布10(第2繊維層M2)の他方の面側10Bの表面に接する直線Lとがなす角度のうちの内角の角度を意味する。この角度θは、前述のマイクロスコープによって得られる断面の顕微鏡写真を観察して求めることができる。
【0022】
図1に示す例では、壁部1Bは、頂部1Aと第2繊維層M2との間において直線状に延在しており、壁部1Bの全体が第2繊維層M2に対して垂直に立設されている。しかし、これに限定されるものではなく、壁部1Bが頂部1Aと第2繊維層M2との間において湾曲状や波状に延在する部分を含む構成としてもよい。この場合には、頂部1Aと壁部1Bとの境界点と、第2繊維層M2と壁部1Bとの境界点とを結ぶ線を上記中心線Mとして、上記角度θを特定するものとする。
また、複数ある壁部1Bの全てが、第2繊維層M2に対して垂直に延在することが好ましいが、壁部1Bの一部に、第2繊維層M2の他方の面側10Bの平面に対して垂直に延在しないものが含まれてもよい。後者の場合、垂直となる壁部1Bの数は、不織布10における前述の上記のクッション性及び液の降下促進作用を更に効果的にする観点から、複数の凸部1全体にある壁部1Bの内の60%以上であることが好ましい。
【0023】
第1繊維層M1の底部2は、隣り合う凸部1、1間に設けられており、より具体的には、凸部1、1の間で他方の面側10Bに窪んだ凹部(凸部間凹部2U)の底及び壁部1Bの他方の面側10Bの端部(付け根部1D)を含む領域を指す。この底部2に、厚み方向Zに貫通する開孔部3が配されている。なお、図1に示す例において、底部2は付け根部1D以外の全体が開孔部3となっているが、その場合、壁部1Bの付け根部1Dが底部2となる。ここで言う開孔部3における貫通は、第1繊維層M1に着目したときに、第1繊維層M1の構成繊維が配されない部分が厚み方向Zに第1繊維層M1の両面を貫いていることを意味する。この底部2に配された開孔部3において、前述の壁部1Bによる液堰き止め作用及び液降下促進作用にて底部2へと導いた排泄液を、圧力損失を抑えて第2繊維層M2へと迅速に透過させることができる。
【0024】
開孔部3は、繊維間に形成される微細な孔径とは異なり、第1繊維層M1を加工して形成した孔であり、繊維間に形成される微細な孔径よりも遥かに大きい孔面積を有している。図1においては底部2の付け根部1D以外の全体が開孔部3となっているものとして示しているが、開孔部3の大きさは底部2の幅等に応じて適宜選択することができる。例えば、第1繊維層M1において、底部2の付け根部1D以外の全体を開孔部3とはせずに、開孔部3の周辺に付け根部1Dから延びる繊維層が存在するようにしてもよい。少なくとも1.0mm以上の孔面積を有することが好ましい。開孔部3の大きさは、前述のマイクロスコープを用いて測定することができる。具体的には、マイクロスコープにて開孔部3の面積を10箇所測定し、それらの平均値を各開孔部の孔面積とする。
【0025】
開孔部3の孔面積は、液透過性の作用を高める観点から、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。また、開孔部3の孔面積は、液戻りを抑制する観点から、50mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましく、35mm以下が更に好ましい。
【0026】
開孔部3の平面形状は、液透過性を高める観点から種々のものとすることができ、例えば、円形、楕円形、矩形、ひし形などが挙げられる。
【0027】
開孔部3は、隣り合う凸部1の壁部1Bによって挟まれた領域にある。これにより、不織布10を吸収性物品における吸収体よりも肌面側の部材、例えば表面シートとした場合に、一方の面側10Tから受液した排泄液を、壁部1Bに沿って開孔部3へと直接的に降下させ、その下の吸収体へと迅速に透過させることが可能となる。すなわち、不織布10の厚み方向Zの液透過速度を向上させることができる。
開孔部3は、その外周縁が壁部1Bの下端によって形成されていてもよく、壁部1Bの下端と開孔部3の外周縁との間に第1繊維層M1の構成繊維(底部2の構成繊維)が配されていてもよい。
壁部1Bの下端(付け根部1D)と開孔部3の外周縁との間に第1繊維層M1の構成繊維がある場合(開孔部3が底部2の一部にあり、底部2に第1繊維層M1の構成繊維が存在する場合)、壁部1Bの付け根部1Dと開孔部3の外周縁との間の平面方向の離間距離は0.5mm以下であることが、上記の液透過性の観点から好ましい。なお、このように底部2に第1繊維層M1の構成繊維が存在する場合、当該第1繊維層M1の構成繊維は、壁部1Bとはみなさない。
【0028】
第2繊維層M2は、第1繊維層M1の底部がある側に配置されており、第2繊維層M2の構成繊維は、第1繊維層M1の構成繊維よりも繊維径が小さくされている。繊維径が小さいことにより、第2繊維層M2は第1繊維層M1よりも単位面積当たりの繊維本数が高められ、繊維間の毛細管力が高められて、第2繊維層M1と第1繊維層M1との毛細管力の差が大きくなる。このような第2繊維層M2が、前述の開孔部3において第1繊維層M1の側に露出した状態にされている。すなわち、毛細管力がより強い第2繊維層M2が、開孔部3において第1繊維層M1に覆われず、一方の面側10Tから視認可能にむき出し状態にされている。これにより、不織布10は、第2繊維層M2で高められた毛細管力が第1繊維層M1の側に開孔部3を介して波及する構造を備える。この構造により、開孔部3において、壁部1Bに沿って降下した排泄液に対する第2繊維層M2への引き込み力が増す。しかも、第2繊維層M2はその強い毛細管力で、引き込んだ排泄液を不織布10の他方の面側10Bにて拡散させることができる。これにより、第1繊維層M1から第2繊維層M2への液透過速度及び第1繊維層M1での液残り防止性が高められ、不織布10の厚み方向の液透過性が向上する。また、第2繊維層M2から第1繊維層M1への液戻りが抑制される。このような壁部1B、開孔部3及び第2繊維層M2の繊維径を組み合わせた液引き込み作用は、特に、1つの場所に留まりやすい経血等の高粘度の排泄液に対する液透過速度の向上に有効である。なお、上記の高粘度とは5cPより大きいことを意味する。
【0029】
また、第2繊維層M2と第1繊維層M1(壁部1B)との間が、従来のホットメルト型等の接着剤でなく、構成繊維自体の熱融着よりになる繊維融着部によって接合され一体化されているので、開孔部3において接着剤が露出することがない。そのため、開孔部3における前述の作用が、従来のように接着剤により阻害されることが回避され得る。
【0030】
このような不織布10は、前述の壁部1Bの特有の構造、壁部1Bの付け根部1Dに近接する底部2の開孔部3、及び第2繊維層M2の毛細管力を相互に協働作用させて、クッション性及び液透過性を共に優れたものとすることができる。この不織布10を吸収性物品における吸収体よりも肌面側の部材、例えば表面シートとした場合に、吸収性物品の液吸収性を高めることができる。
【0031】
前述の第1繊維層M1の開孔部3を介した第2繊維層M2への排泄液の引き込み力を更に高める観点から、第2繊維層M2の構成繊維の親水度が、第1繊維層M1の構成繊維の親水度よりも高いことが好ましい。第1繊維層M1の構成繊維の親水度よりも高い第2繊維層M2の構成繊維が、開孔部3において第1繊維層の側に露出しているので、壁部1Bを伝って降下してきた排泄液を、底部3で滞留させることなく、親水度が高い露出部に素早く引き込ませることができる。
【0032】
上記「親水度」は、下記の測定方法により得られる繊維の接触角の大きさによって示される。具体的には、親水度が低いことは接触角が大きいことと同義であり、親水度が高いことは接触角が小さいことと同義である。
第1繊維層M1及び第2繊維層M2の構成繊維の親水度、すなわち接触角は、熱可塑性繊維等の合成繊維を用いる場合、撥水剤及び親水剤を用いて表面処理することにより、設定することができる。前記親水剤及び撥水剤としては、この種の物品において通常用いられる各種の剤を用いることができる。
なお、上記の親水度は、第1繊維層M1及び第2繊維層M2それぞれにおける構成繊維の平均親水度を意味する。
【0033】
第1繊維層M1の構成繊維の接触角(G1)と第2繊維層M2の構成繊維の接触角(G2)との差(G1-G2)は、上記の排泄液の引き込み力を更に高める観点から、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。また、前記差(G1-G2)は、液の引き込み力を高めつつ、吸収体への液の移行を促進する観点から、50.0以下が好ましく、45.0以下がより好ましく、40.0以下が更に好ましい。
更に上記の差(G1-G2)を満たす範囲で、第2繊維層M2の構成繊維の接触角(G2)は、排泄液の引き込み力を高める観点から、85以下が好ましく、82以下がより好ましく、80以下が更に好ましい。第2繊維層M2の構成繊維の接触角(G2)は、液の引き込み力を高めつつ、吸収体への液の移行を促進する観点から、50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上が更に好ましい。
また、上記の差(G1-G2)を満たす範囲で、第1繊維層M1の構成繊維の接触角(G1)は、液残りを抑制する観点から、60以上が好ましく、65以上がより好ましく、70以上が更に好ましい。第1繊維層M1の構成繊維の接触角(G1)は、液流れを抑制する観点から、89以下が好ましく、88以下がより好ましく、85以下が更に好ましい。
【0034】
(接触角の測定方法)
第1繊維層M1の頂部1A及び壁部1Bそれぞれについて3箇所、第2繊維層M2の開孔部3に重なる部分の厚み方向の中心部分及び重ならない部分の厚み方向の中心部分それぞれについて3箇所から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA-J(商品名)を用いる。接触角の測定には蒸留水を用いる。
インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC-25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を、水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが好ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、不織布から取り出した繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出し、接触角とする。
不織布から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。該繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。異なる3本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計12箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を接触角と定義する。
【0035】
前述の毛細管力の差による前述の作用をより効果的にする観点から、第1繊維層M1の構成繊維の繊維径(E1)と第2繊維層M2の構成繊維の繊維径(E2)との差(E1-E2)は、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、4μm以上が更に好ましい。また、前記差(E1-E2)は、開孔部の明瞭性を高める観点から、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。第1繊維層M1の構成繊維よりも繊維径が細い第2繊維層M2の構成繊維が、開孔部3において第1繊維層の側に露出する。その開孔部3付近において、第1繊維層M1の構成繊維から構成される壁部1B及び/又は底部2と第2繊維層M2の構成繊維とが、その繊維径差によって、部分的により絡み合った構造が形成される。その構造により、開孔部の明瞭性を高めるだけでなく、単に2種の繊維層を積層させた露出部のない積層不織布と比べて、排泄液の引き込み力も高めることができる。
更に上記の差(E1-E2)を満たす範囲で、第2繊維層M2の構成繊維の繊維径(E2)は、毛細管力を高める観点から、25μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、18μm以下が更に好ましい。第2繊維層M2の構成繊維の繊維径(E2)は、液透過性をより高める観点から、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、8μm以上が更に好ましい。
また、上記の差(E1-E2)を満たす範囲で、第1繊維層M1の構成繊維の繊維径(E1)は、地合いを良好にする観点から、5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、8μm以上が更に好ましい。第1繊維層M1の構成繊維の繊維径(E1)は、肌触りをより優れたものとする観点から、25μm以下が好ましく、23μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。
なお、上記の繊維径は、第1繊維層M1及び第2繊維層M2それぞれにおける構成繊維の平均繊維径を意味する。
【0036】
(第1繊維層M1及び第2繊維層M2の構成繊維の平均繊維径の測定方法)
繊維径は、繊維層の断面を観察して、以下の手法により測定することができる。
測定対象の部位(例えば、第1繊維層M1)を、コールドスプレー又は液体窒素などを用いて、無荷重状態で凍結して構造を固定し、その状態でカッター刃を用いて厚み方向に切断することで、測定部位の横断面を露出させる。走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM-5100)を使用して横断面を拡大観察し、繊維断面が計測できる倍率(100~500倍)に調節する。その状態で撮影した観察写真を5枚撮影することで、断面観察写真を得る。
次いで、第1繊維層M1及び第2繊維層M2それぞれの厚み方向の中心部分を測定位置とし、1写真あたり30本の繊維の繊維径を測定して、その算術平均値を本発明の平均繊維径とする。繊維が非真円形である場合には、横断面における周縁上の2点を結び、且つ断面の最大差し渡し長さの線分を長軸と定め、その長軸に直交する最大長さを有する線分を短軸と定め、そして、長軸及び短軸の各長さを画像解析ソフトウェア等で解析して算出することで、各繊維の長軸及び短軸の各長さを測定し、繊維一本での長軸長さと短軸長さとの算術平均値を各繊維の繊維径とし、該繊維径の30本の算術平均値を、本発明における繊維の平均繊維径とする。
測定対象の不織布が吸収性物品等の衛生品に組み込まれている場合は、該衛生品にコールドスプレーを吹きかけ、ホットメルト接着剤を固化させてから、測定対象の不織布を丁寧に剥がす。この手段は本明細書の他の測定においても共通である。
【0037】
同様に、前述の毛細管力の差による前述の作用をより効果的にする観点から、第2繊維層M2の単位面積当たりの繊維本数が、第1繊維層M1における頂部1Aの単位面積当たりの繊維本数よりも大きいことが好ましい。
より具体的には、第2繊維層M2の単位面積当たりの繊維本数(F2)と第1繊維層M1における頂部1Aの単位面積当たりの繊維本数(F1)との差(F2-F1)は、5以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。また、前記差(F2-F1)は、液の引き込み力を高めつつ、吸収体への液の移行を促進する観点から、190以下が好ましく、185以下がより好ましく、180以下が更に好ましい。
更に上記の差(F2-F1)を満たす範囲で、第2繊維層M2の単位面積当たりの繊維本数(F2)は、毛細管力を高める観点から、80以上が好ましく、85以上がより好ましく、90以上が更に好ましい。第2繊維層M2の単位面積当たりの繊維本数(F2)は、液透過性をより高める観点から、200以下が好ましく、190以下がより好ましく、180以下が更に好ましい。
また、上記の差(F2-F1)を満たす範囲で、第1繊維層M1における頂部1Aの単位面積当たりの繊維本数(F1)は、液残りを抑制する観点から、90以下が好ましく、85以下がより好ましく、80以下が更に好ましい。第1繊維層M1における頂部1Aの単位面積当たりの繊維本数(F1)は、肌触りをより優れたものとする観点から、20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上が更に好ましい。
なお、上記の単位面積当たりの繊維本数は、第1繊維層M1及び第2繊維層M2それぞれにおける構成繊維の平均値を意味する。
【0038】
(第1繊維層M1及び第2繊維層M2の単位面積当たりの繊維本数の測定方法)
第1繊維層M1の単位面積当たりの繊維本数は、頂部1Aの厚み方向の中心部分にて測定し、第2繊維層M2の単位面積当たりの繊維本数は、開孔部3と重なる部分での厚み方向の中心部分にて測定する。
具体的には以下の手順で、不織布10の断面を観察して繊維断面の数を測定する。
まず、測定対象の部位について、不織布10の長手方向と該長手方向に直交する幅方向の2方向に沿う断面を作製する(例えば、後述の不織布20における図5に示す断面及び図6に示す断面)。なお、第1繊維層M1の頂部1A及び第2繊維層M2の開孔部3と重なる部分の両方を含む断面ができない場合、それぞれの部位について上記の2方向の断面を作製してもよい。
次いで、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JCM-6000Plus(商品名))を使用して、繊維断面が2本から40本程度計測できる倍率(100~500倍)にて前記断面を拡大観察する。その際、断面に対し金属蒸着を行う。
第1繊維層M1の頂部1Aについて、前記2方向の断面それぞれの5か所にて、一定面積(0.12mm)の切断面内の切断されている繊維断面の数を数え、該一定面積で除して単位面積(1mm)当たりの繊維本数(繊維断面数)に換算する。計10点(5か所+5か所)の平均を、第1繊維層M1の単位面積当たりの繊維本数(本/mm)とする。
同様に、第2繊維層M2の開孔部3と重なる部分について、前記2方向の断面それぞれの5か所にて上記と同様に測定、換算する。計10点の平均を、第2繊維層M2の単位面積当たりの繊維本数(本/mm)とする。
上記の単位面積当たりの繊維本数が多いことは、繊維密度が高いことを意味し、毛管力がより強く働くことを意味する。
【0039】
不織布10において、図1及び図3に示すように、第2繊維層M2が第1繊維層M1との対向面側に、第1繊維層M1の開孔部3から壁部1Bで区画された領域に進入する隆起部5を有することが好ましい。この場合、隆起部5は、上記の当接領域4にある壁部1Bの付け根部1Dよりも一方の面側10Tであって、第1繊維層M1の凸部1、1間の壁部1Bで挟まれた空間にある。一方、隆起部5に隣接する当接領域4にある第2繊維層M2は、壁部1Bの食い込みによって窪み部6となっている。当接領域4の窪み部6において、第1繊維層M1(すなわち壁部1Bの付け根部1D)と第2繊維層M2とは互いの繊維同士が融着した繊維融着部によって一体化されている。
【0040】
第2繊維層M2の構成繊維からなる隆起部5が開孔部3から第1繊維層M1の側に進入していることにより、前述の壁部1Bに沿って降下させた排泄液に対する第2繊維層M2の前述の毛細管力による引き込みがより迅速になされ(例えば図3の矢印S3)、第1繊維層M1での液残りを更に低減できる。これにより、不織布10の厚み方向Zの液透過速度が更に向上する。このようにして液透過性が更に高められる。
上記作用をより効果的にする観点から、隆起部5の表面には一方の面側10Tに更に進入する毛羽立ちがあることが好ましい。
また、隆起部5の存在が、壁部1Bが外圧で横に倒れようとすることを隆起部5が防いで、壁部1Bの前述の種々の作用を持続し得る。これにより、不織布10のクッション性及び液透過性の両者をより優れたものとすることができる。
【0041】
隆起部5は、第1繊維層M1を厚み方向Zに貫通する開孔部3の位置で第1繊維層M1に進入していることにより、第1繊維層M1の側から視認可能である。そのため、不織布10を第1繊維層M1の側(一方の面側10T)から見たとき、第1繊維層M1の凸部1と第2繊維層M2の隆起部5とが隣接しているようにして視認される。このとき、凸部1を構成する壁部1Bの付け根部1Dと該付け根部1Dへと延在する隆起部5の裾部7とによって形成される谷間の存在によって、第1繊維層M1の底部2にある開孔部3周辺の陰影が強調される。この陰影は、壁部1Bの繊維が縦配向している場合、隆起部5が壁部1Bと異なる繊維配向を有する繊維層からなって、両部間で繊維配向度が非連続的に変化する区画線が形成されることにより更に強調される。加えて、壁部1Bが垂直な壁面を有することで、壁部1Bの付け根部1Dでの隆起部5との間の谷間がより狭く陰影がより強くなる。そして、垂直な壁部1Bからその陰影が浮き上がるようにして認識され得る。このように隆起部5が第1繊維層M1の側から視認可能となることで、不織布10を表面シートとして備えた吸収性物品の消費者は、不織布に明瞭な開孔部が形成されていることが目視により理解できる。その結果、消費者は、液吸収性に優れている吸収性物品であることを想起でき安心して当該物品を使用ができる。
なお、図1に示す例においては底部2の付け根部1D以外の全体が開孔部3となっており、隆起部5の裾部7が壁部1Bの付け根部1Dに直接接続するものとして示している。ただし、この態様に限定されるものでなく、第1繊維層M1の凸部間凹部2Uにおいて開孔部3の周辺に繊維層が存在してもよい。この場合は、第2繊維層M2の隆起部5の裾部7は、凸部間凹部2Uにおける開孔部3周辺の繊維層を介して壁部1Bの付け根部1Dへと延在し、前記谷間が形成され、前記区画線が形成される。また同様に、凸部間凹部2Uに繊維層がある場合、壁部1Bは、底部2にある凸部間凹部2U及び付け根部1Dを介して第2繊維層M2に食い込むこととなる。
【0042】
不織布10においては、上記の陰影の強調により、第1繊維層M1の側(一方の面側10T)から見たときの開孔部3に対する視認性が高められる。
特に、不織布10を吸収性物品の表面シートとして吸収体の肌面側に載置した場合、吸収体の白地に対して不織布10の開孔部3周辺の陰影がより強調されて、開孔部3に対する視認性の顕著な向上で吸収物品の高吸収力が明白になる。
【0043】
この視認性により、不織布10を表面シートとして組み込んだ吸収性物品において、表面シートの開孔部3を通じた液透過性、すなわち吸収性物品の吸収性の良さが使用者に分かりやすくなる。
【0044】
壁部1Bの付け根部1Dと隆起部5との間の陰影を強調させる作用をより良好なものとする観点から、第2繊維層M2の第1繊維層M1との対向面側は、平面方向に延在する連続繊維層となっていることが好ましい。このように、第2繊維層M2の第1繊維層M1との対向面側が平面方向に延在する連続繊維層となることで、前述の陰影部分が前記連続繊維層の中における異質な部分としてより目立ちやすくなる。また、第1繊維層M1の壁部1Bの繊維が縦配向している場合に、第1繊維層M1と第2繊維層M2とで繊維配向が非連続的に変化する区画線が形成され、陰影が強調される。
【0045】
また同様の観点から、隆起部5の盛り上がり部分から下った裾部7が、第1繊維層M1における壁部1Bと第2繊維層M2との当接領域4に接続されていることが好ましい。このように裾部7が当接領域4に接続されることにより、壁部1Bの付け根部1Dと裾部7とによって谷間が形成され、第1繊維層M1の底部2にある開孔部3周辺の陰影が強調される。
【0046】
上記の陰影の強調をより明確にする観点から、第1繊維層M1における壁部1Bと第2繊維層M2との当接領域4において、第2繊維層M2の繊維が平面方向に配向し、隆起部5の裾部7の表面の繊維が、壁部1Bの繊維とは異なる繊維配向をしていることが好ましい。このように裾部7の表面の繊維が、壁部1Bの繊維とは異なる繊維配向を有することにより、裾部7の表面の繊維配向と壁部1Bの繊維配向とが非連続に変化する区画線が形成され陰影が強調される。
なお、隆起部5の裾部7の表面の繊維とは、当接領域4にある壁部1Bの付け根部1Dから立ち上がり始める部分の繊維を意味する。例えば、付け根部1Dから2mmの範囲にある隆起部5の表面繊維である。
具体的には、裾部7表面の繊維配向は、縦配向率45%未満である。縦配向率が45%未満であることは、繊維が平面方向に配向していることを意味しており、壁部1Bの繊維とは異なる縦配向率となることから、上記の陰影を明確にすることができる。ここで、裾部7表面の繊維が、壁部1Bの繊維とは異なる繊維配向を有するとは、両者の縦配向率の差が、15%以上であることを意味する。上記の作用をより高める観点から、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
【0047】
(裾部7表面の繊維の縦配向率の測定方法)
図1に示すように、裾部7に対し、下記の手順で測定を行う。
すなわち、第1繊維層M1の凸部1及び第2繊維層M2を含む、不織布10の厚み方向の断面において画定された裾部7を含む繊維層断面を走査電子顕微鏡(SEM)で35倍に拡大して観察する。観察画像に基準線として一辺が500μmの正方形の線を付す。このとき、裾部7の繊維が当該正方形内全域に含まれるように線を付す。正方形の各辺(基準線)は、不織布10の断面における厚み方向及び平面方向それぞれと直交する辺とする。正方形の各辺からなる基準線に繊維が通過する延べ本数をそれぞれ数える。不織布10の平面方向に直交する正方形の基準線を通る繊維を「横繊維本数」、不織布10の厚み方向に直交する正方形の基準線を通る繊維を「縦繊維本数」と定義する。縦配向率として、(縦繊維本数)/(横繊維本数+縦繊維本数)×100=縦配向率(%)として算出する。それらを各10点測定し、平均したものを縦配向率の値とする。
【0048】
第1繊維層M1の厚みH1に対する隆起部5の厚みH2の比(H2/H1)は、上記の陰影をより強調させる観点から、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.15以上が更に好ましい。
第1繊維層M1の厚みH1に対する隆起部5の厚みH2の比(H2/H1)は、開孔部3を通じた液透過性を保持する観点から、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が更に好ましい。
なお、第1繊維層M1の厚みH1は、頂部1Aの一方の面側10Tの表面から、当接領域4における、壁部1Bの付け根部1Dの第2繊維層M2との境界までの高さをいう。これは、4.9mN/cmの荷重をかけた状態で、前述の壁部1Bの繊維層の区画方法と同様にして行うことができる。また、隆起部5の表面に毛羽立ちがある場合、この部分を含めて隆起部5の厚みH2とする。
【0049】
不織布10の目付は、不織布の地合いを良好にし、開孔部の陰影を高める観点から、20g/m以上が好ましく、30g/m以上がより好ましく、40g/m以上が更に好ましい。また、不織布10の目付は、着用者の快適な使用感を妨げないようにする観点から、100g/m以下が好ましく、90g/m以下がより好ましく、85g/m以下が更に好ましい。
【0050】
不織布10の4.9mN/cm(0.05gf/cm)荷重下における厚みは、開孔部3の陰影をより強調する観点から、0.8mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.2mm以上が更に好ましい。この厚みは、4.9mN/cm荷重下においてレーザー変位計等を用いて測定することができる。上記の4.9mN/cm荷重とは、不織布表面の毛羽立ちを想定した荷重である。不織布10の4.9mN/cm荷重下における厚みが上記の範囲にあることにより、液戻り防止性能を高めて着用者の肌が濡れにくくなる。
また、不織布10の4.9mN/cm荷重下における厚みは、着用者の快適な使用感を妨げないようにする観点から、10mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましく、5mm以下が更に好ましい。
【0051】
次に、本実施形態の不織布10において、前述の凹凸構造のより好ましい態様について説明する。
【0052】
第1繊維層M1において、凸部1の内部には、第2繊維層M2との間に中空領域1Cがあることが好ましい。中空領域1Cとは、実質的に不織布10の繊維で満たされていない空間である。具体的には、後述する方法により求められる単位面積当たりの繊維本数が10本/mm未満であることを意味する。中空領域1Cにおける単位面積当たりの繊維本数は小さい程よい。
更に、第1繊維層M1の中空領域1Cにも第2繊維層M2の隆起部5Aが部分的に進入していることが、不織布10のクッション性及び液透過性の向上の観点から好ましい。
なお、中空領域1Cにおける単位面積当たりの繊維本数は、前述の(第1繊維層M1及び第2繊維層M2の単位面積当たりの繊維本数の測定方法)を準用して測定することができる。
【0053】
中空領域1Cが凸部1の他方の面側10Bにあることで、凸部1の柔らかい触感が更に向上し、前述のクッション性がより高められ、不織布10の肌触りが更に良好なものとなる。また、不織布10を吸収性物品の表面シート等の、吸収体よりも肌面側の部材とする場合に、中空領域1Cの介在により、吸収体からの液戻り経路が絶たれ、液戻り防止性が高まる。加えて、中空領域1Cは、排泄量が過大になった場合の一次貯留空間ともなり、不織布10の液透過性を更に高め、一方の面側10Tでの液残り量を更に低減することができる。
【0054】
次に、図1に示す不織布10の具体例(不織布20)について、図4図7を参照して説明する。不織布20は、不織布10について示した前述の構成を備える。
図4図7に示す不織布20は、一方の面側20Tからの平面視において、前述の第1繊維層M1の凸部1として、一方向Yに延出し、互いに、一方向Yと交差する方向Xに離間して配列されている複数の畝部11を有する。畝部11の他方の面側20Bには、第2繊維層M2との間に中空領域11Cが配されている。
一方向Y及び一方Y向と交差する方向Xは、不織布20の一方の面側20Tの面において、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、一方向Y及び一方向Yと交差する方向Xは互いに直交する方向であることが好ましい。不織布20を吸収性物品における表面シート等の、吸収体よりも肌面側の部材とする場合に、一方向Yを吸収性物品の長手方向とし、一方向Yと交差する方向Xは吸収性物品の幅方向とすることが好ましい。
【0055】
複数の畝部11は互いに、延出方向に沿って同等の高さを有している。高さが「同等」とは、マイクロスコープVHX900(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて測定した高さが、測定平均値に対して0.8倍以上1.2倍以下の範囲内であることを意味する。
【0056】
複数の畝部11のそれぞれは、頂部11Aと、頂部11Aを支持する壁部11Bとを備える。頂部11Aは、吸収性物品においては着用者の肌に当接する繊維層であり、壁部11Bは頂部11Aと第2繊維層M2とを厚み方向に繋ぐ繊維層である。すなわち、不織布20を吸収性物品に適用する場合、一方の面側20Tは肌当接面側となり、他方の面側20Bは非肌当接面側となる。壁部11Bの繊維は前述のとおり縦配向していることが好ましい。また、壁部の形状は第2繊維層M2に対して垂直に延在し、頂部11Aと、開孔部3の配された底部12とを垂直に連結している。
この壁部11Bの繊維の縦配向を示す縦配向率は、図5に示すように、畝部11の延出する方向と直交する断面(図4における、一方向Yと交差する方向Xに沿うR1-R1線の位置における厚み方向断面)において、前述の方法(壁部1Bにおける繊維の縦配向率の測定方法)に基づいて測定することができる。
また、壁部11Bの「垂直」を示す前述の角度θは、図5に示すように、畝部11の延出する方向と直交する断面(図4における、一方向Yと交差する方向Xに沿うR1-R1線の位置における厚み方向断面)において、壁部11Bの繊維層の幅の中心線Mと、不織布20(第2繊維層M2)の他方の面側20Bの表面に接する直線Lとがなす角度のうちの内角の角度を意味する。この角度θは、前述のマイクロスコープによって得られるR1-R1線断面の顕微鏡写真を観察して求めることができる。
【0057】
不織布20は、第1繊維層M1における前述の凸部1として、前述の畝部11と共に、隣り合う畝部11、11を繋ぐ鞍部15を有する。鞍部15は、畝部11と同様に、第2繊維層M2から不織布20の一方の面側20Tに突出しており、不織布20の厚み方向に立設された立体的な繊維層である。より具体的には、鞍部15は、一方の面側20Tの頂部15Aと頂部15Aを支持する壁部15Bとを備える。壁部15Bの繊維は前述のとおり縦配向していることが好ましい。また、壁部15Bは、第2繊維層M2に対して垂直に延在している。前記「垂直」は、前述の畝部11において定義した「垂直」と同義である。
鞍部15における壁部15Bの縦配向を示す縦配向率及び壁部15Bの「垂直」は、図6に示すように、鞍部15の延出する方向と直交する断面(図4における、一方向Yに沿うR2-R2線の位置における厚み方向断面)について、壁部11Bについての前述の測定方法と同様にして測定できる。
【0058】
上記構造により、鞍部15によって繋がれた畝部11同士が接近し難くされ、押圧等の外力で畝部11が一方向に倒れてしまうことが抑制される。すなわち、鞍部15が、畝部11を側面側から支持して、畝部11の形状保持性を高めている。これにより、荷重下での畝部11の厚みが更に残りやすい。例えば、不織布20を表面シートとして吸収性物品に組み込んだ場合に吸収性物品の着用時の着用者の体圧があっても、頂部11Aと他方の面側(非肌当接面側)20Bの吸収体側との距離が保持されやすく、一方の面側(肌当接面側)20Tへの液戻りが更に生じ難くされている。更に、鞍部15の存在によって、畝部11、11間において排泄液の堰き止め作用が働き、不織布20の一方の面側(肌当接面側)20Tにおいて液流れ防止性が高められる。
【0059】
鞍部15は、不織布20の一方の面側20Tからの平面視において、畝部11の延出する一方向Yと交差する方向Xに延出している。鞍部15の延出する方向Xは、隣り合う畝部11を繋ぐ方向である限り種々の方向とすることができ、畝部11の延出する一方向Yと直交する方向であることが好ましい。例えば、畝部11の延出する一方向Yを吸性物品の長手方向とし、鞍部15の延出する、前記一方向と交差する方向Xを吸収性物品の幅方向とすることが好ましい。以下、一方向Y及び該一方向Yと直交する方向Xは、畝部11の延出方向Y及び鞍部15の延出方向Xともいう。
また、各鞍部15の、一方の面側20Tから見た平面形状は、図4に示すような矩形に限らず、種々のものとすることができる。例えば、鞍部15の、一方の面側20Tから見た平面形状は、畝部11に向かうにつれて幅が広がるようにされてもよい。
【0060】
鞍部15は、不織布20の一方の面側20Tの平面視において、畝部11、11の間の、畝部11と平行に延在する複数の帯領域16に配されている。各帯領域16において、並走する畝部11の延出方向Yに沿って、複数の鞍部15が間隔をあけて配されている。鞍部15が間隔をあけた部分に前述の底部12の開孔部3がある。すなわち、各帯領域16において、鞍部15と開孔部3とが交互に配置されている。これにより、開孔部3は、畝部11の壁部11Bと鞍部15の壁部15Bによって囲まれている。より具体的には、厚み方向に立設された立体的な繊維層である複数の畝部11及び複数の鞍部15に囲まれた領域が箱型又は筒型の凹部とされ、その底部12に開孔部3が配されている。
【0061】
図4図7に示す例では、不織布20の一方の面側20Tからの平面視において、畝部11及び鞍部15が格子状に配置され、底部12の開孔部3が格子の中に点在して升目状に配置されている。畝部11及び鞍部15に囲まれた開孔部3から、壁部11B及び壁部15Bで区画された格子状の凹部空間に第2繊維層M2の隆起部5が進入している。このように第2繊維層M2の隆起部5が壁部11B及び壁部15Bによって格子状に包囲されていることで、壁部11B及び壁部15Bによるクッション性、前述の液堰き止め作用及び液降下促進作用をより高め、第2繊維層M2の側への液透過速度を更に向上させて、液残りを更に低減できる。すなわち、クッション性及び液透過性を共に更に優れたものとすることができる。加えて、開孔部3の周囲の陰影がより強調されることとなり好ましい。すなわち、隆起部5を囲む四方の壁部11B及び壁部15Bに第2繊維層M2との当接領域4があり、壁部11B及び壁部15Bの付け根部1Dと隆起部5の裾部7との間の谷間及びそれによる陰影が四方に形成されて、隆起部5及び開孔部3の輪郭がより明確に視認され得る。
【0062】
鞍部15は、畝部11と同様の立体的な繊維構造を有するものの、図6及び図7に示すように、畝部11よりも底部12からの高さが低い部分を有することが好ましい。これにより、不織布20の一方の面側20Tでの肌との接触面積を低減して、肌触りの良さを保持し、通気性を高めて肌との間で蒸れを更に抑えることができる。
畝部11の厚み方向の高さH3と鞍部15の厚み方向の高さH4の差(H3-H4)は、上記作用をより良好にする観点から、0.5mm以上7.0mm以下が好ましい。なお、畝部11の厚み方向の高さH3は、不織布20(第2繊維層M2)の他方の面側20Bの表面に接する平面から畝部11の頂部11Aの一方の面側20Tまでの厚み方向の距離である。鞍部15の厚み方向の高さH4は、不織布20(第2繊維層M2)の他方の面側20Bの表面に接する平面から鞍部15の頂部15Aの最も低い位置の一方の面側20Tまでの厚み方向の距離である。
【0063】
(畝部11の厚み方向の高さH3と鞍部15の厚み方向の高さH4の差の測定方法)
不織布20について、図6に示すように、鞍部15の最も高さの低い位置における、鞍部15が配列する帯領域16の延出方向に沿った厚み方向断面(図4における、一方向Yに沿うR2-R2線の位置における厚み方向断面)を作製し、水平な台に第2繊維層M2の他方の面側20Bの表面が当接するよう設置する。水平な台から畝部11の頂部11Aの一方の面側20Tまでの高さH3と、鞍部15の頂部15Aの一方の面側20Tまでの高さH4を測定する。これらの測定値から、高さの差(H3-H4)を算出する。水平な台からの高さの測定には、いずれも前述のマイクロスコープを用いることができる。
【0064】
また、鞍部15は、不織布20を吸収性物品の表面シート等とした場合における不織布20の液透過性及びそれによる一方の面側20Tのドライ性を高める観点、他方の面側20Bへの排液を更に促進させる観点から、図6示すように中空領域15Cを有することがより好ましい。この中空領域15Cの定義及び測定方法は、畝部11における中空領域11Cのものと同様である。鞍部15の中空領域15Cは、畝部11の中空領域11Cと連通していることが好ましい。これにより、不織布20の液透過性を高め、他方の面側20Bでの排泄液の拡散を促進して、一方の面側20Tでの液滞留を更に抑制する。その結果、不織布20での液残り量が更に低減されやすく、液の肌付着量の更なる低減を可能にする。
【0065】
更に、図7の、鞍部15の延出する方向の断面(図4における、一方向Yと交差する方向Xに沿うR3-R3線の位置における厚み方向断面)に示すように、鞍部15と畝部11との交差する部分において、鞍部15の中空部15Cが畝部11の中空部11Cと繋がって連通していることが好ましい。これにより、第1繊維層M2の他方の面側20Bにおいて、中空部15と中空部11Cとの間で液を縦横に流通させることができ、第2繊維層M2の液引き込み性を高めることができる。また、中空部15と中空部11Cとの間での通気性が高められ、蒸れを抑制することができる。
【0066】
次に、不織布20の製造方法の好ましい実施形態について、図8図11を参照しながら説明する。以下に示す製造方法は、不織布10の製造方法にも適用され得る。
本実施形態の製造方法は、図8に示す通り、次の4つの工程を有する(以下、それぞれの工程を、工程(I)、工程(II)、工程(III)、工程(IV)ということがある。)。
(I)複数の突起121と突起121、121間の凹部125とを備えた凹凸形状の支持体120上に第1繊維ウエブ100を載置し、凹部125に沿って、第1繊維ウエブ100を、押し込み部材130の押し込み部131によって押し込んで賦形すると共に、突起121に対応する箇所を開孔し、支持体120と反対側に開孔面を有する凹凸開孔繊維ウエブ101を形成する、押し込み工程。
(II)前記支持体から前記押込み部材を取り外した後、凹凸開孔繊維ウエブ101に第1の熱風W1を吹き付けて繊維同士を融着させて凹凸開孔不織布102を得る工程。
(III)第1繊維ウエブ100よりも構成繊維の繊維径が小さい第2繊維ウエブ103を供給して、凹凸開孔不織布102の開孔面側に積層させる工程。
(IV)第2の熱風W2を吹き付けて凹凸開孔不織布102と第2繊維ウエブ103との繊維同士を融着させ、かつ第2繊維ウエブ103中の繊維同士を融着する熱融着工程。
【0067】
上記の第1繊維ウエブ100は不織布20における第1繊維層M1の前駆体であり、熱可塑性繊維を含む。第2繊維ウエブは不織布20における第2繊維層M2の前駆体であり、熱可塑性繊維を含む。
上記の第1繊維ウエブ100及び第2繊維ウエブ103の「繊維ウエブ」とは、熱可塑性繊維を含む構成繊維が融着固定されずに緩やかに交絡し、それ自体ではシートとしての保形性を有さない繊維集合体のことである。すなわち、不織布化される前の繊維集合体である。そのため、繊維ウエブにおける繊維間の移動性は高く、前記押し込み工程における繊維ウエブの変形性が高い。このような第1繊維ウエブ100及び第2繊維ウエブ103はそれぞれ、所定の厚さとなるようカード機(図示せず)から供給される。
【0068】
工程(I)において、図8(A)に示す通り、支持体120上の第1繊維ウエブ100に対して押し込み部材130を用いて機械的な圧力で直接的に押し込む。これにより、不織布20における第1繊維層M1となる凹凸開孔繊維ウエブ101を形成する。このような賦形は、風などの、機械的でない圧力で押し込んだ場合に比べ、繊維が強配向し、不織布平面に対して垂直な配向を得ることができる。また、第1繊維ウエブ100に対して賦形する凹凸高低差を大きくするのに、さほど押し込む力を強くする必要がなく、第1繊維ウエブ100を柔らかく賦形することができる。また、繊維の乱れを抑えて賦形性を高めることができる。
【0069】
支持体120は、例えば図8に示すようなドラム状のものであり、ドラム周面にて、例えば図8(A)に示すような突起121を有する。支持体120のドラム周面では、例えば図9に示すように、複数の突起121が一方向(第一方向D1)とそれに直交する方向(第二方向D2)に間隔を空けて配置されている。複数の突起121が第一方向D1に配列されてなる突起列121Aが複数、第二方向D2に互いに離間して配列されている。突起121は、先端に尖塔部122を有する。この尖塔部122により、第1繊維層M1の底部12における開孔部3を形成する。
突起121の尖塔部122の側から見た平面形状は、図9に示すような矩形に限らず、種々取り得る。例えば、円形、楕円形、ひし形などであってもよい。
凹部125には、突起部列121A、121A間で第一方向D1に延在する第一凹部125A、突起部列121Aにおいて突起121、121間にある第二凹部125Cを有する。第二凹部125Cは、隣接する第一凹部125Aに接続し、第一凹部125Aを介して間欠的に第二方向D2に延在している。
【0070】
支持体120において、突起121は、不織布20における第1繊維層M1の底部12の開孔部3が形成される位置に対応して複数、配置されている。突起部列121Aにおける突起121、121間の第二凹部125Cは、不織布20における第1繊維層M1の鞍部15が賦形される位置にある。すなわち、突起部列121Aは、不織布20の第1繊維層M1における畝部11、11間の帯領域16となる位置にある。第一凹部125Aは、不織布20の第1繊維層M1における畝部11となる位置にある。
各凹部125の底部は熱風が吹き抜ける構造となっており、例えば複数の孔が配されている(図示せず)。
【0071】
押し込み部材130は、例えば図8に示すようなロール状のものであり、ロール周面にて、例えば図8(A)に示すような押し込み部131を有する。押し込み部材130のロール周面では、例えば図10に示すように、第一方向D1に連続する押し込み部131が複数、第二方向D2に間隔をあけて配置されている。押し込み部131、131間は、第一方向D1に連続する凹部132とされている。
押し込み部材130の押し込み部131は、支持体120の第一凹部125Aに対応する。押し込み部材130の凹部132は、支持体120の突起部列121Aに対応する。
押し込み部材130の凹部132の底部は熱風が吹き抜ける構造となっており、例えば複数の孔が配されている(図示せず)。
【0072】
押し込み部材130の押し込み部131の高さは、支持体120の突起121同士の間に十分に挿入されるようにするために、1mm以上の長さを有することが好ましい。
【0073】
支持体120及び押し込み部材130における前述の第一方向D1及び第二方向D2は、製造工程における機械流れ方向(Machine Direction、MD)及び機械流れ方向に直交する幅方向(Cross Drection、CD)であることが好ましい。製造工程における機械流れ方向及び幅方向は、不織布20における一方向Y及び一方向Yと交差する方向Xに対応することが好ましいく、不織布20を含む吸収性物品における長手方向及び幅方向に対応することが好ましい。ただし、第一方向D1及び第二方向D2は、これらに限定されない。
【0074】
工程(I)において、支持体120の突起121を押し込み部材130の凹部132に挿入する。支持体120の第一凹部125Aに押し込み部材130の押し込み部131を挿入する(図8(A)及び図11)。この支持体120(図9)と押し込み部材130(図10)との間の押し込み合いにより、第1繊維層M1が有する凹凸形状を好適に形成することができる。
支持体120の第一凹部125Aの位置で、押し込み部材130の押し込み部131にて第1繊維ウエブ100を押し込んで賦形する。この部分が、不織布20の第1繊維層M1における畝部11になる。このとき、支持体120の突起121と押し込み部材130の押し込み部131との間で、第1繊維ウエブ100の繊維が厚み方向に沿う垂直立設された形状に賦形される。賦形された繊維は、融着していない移動性の高いものであるため、厚み方向に配向する。この部分が、不織布20の第1繊維層M1における畝部11の壁部11Bとなる。
一方、支持体120の突起121の位置で第1繊維ウエブ100の繊維が押し込み部材130の凹部132の底部へと押し上げられて開孔される。この部分が、不織布20の第1繊維層M1における底部12の開孔部3となる。
支持体120の突起部列121Aにおける突起121、121間の第二凹部125Cには、押し込み部材130の凹部132が対応するため、押し込み部131が入り込まない。しかし、突起部列121Aの第二凹部125Cにある第1繊維ウエブ100の繊維に対して、その両脇において、押し込み部材130の押し込み部131、131の押し込み力が作用する。この作用により、第二凹部125Cにある第1繊維ウエブ100の繊維は、両脇の押し込み部131、131によって第二方向D2に伸ばされ、厚み方向に押し込まれて、厚み方向に賦形されると共に繊維の配向が変わる。この部分が、不織布20の第1繊維層M1における鞍部15になる。鞍部15は頂部15Aと壁部15Bを有するものとされ、壁部15Bは、畝部11の壁部11Bと同様のものとなる。
【0075】
なお、支持体120の突起121の高さ及び押し込み部材130の押し込み部131の高さは、製造する不織布の厚み等によって適宜決定される。例えば、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、5mm以上が更に好ましく、また、50mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましく、30mm以下が更に好ましい。具体的には、2mm以上50mm以下が好ましく、3mm以上40mm以下がより好ましく、5mm以上30mm以下が更に好ましい。
【0076】
次いで、工程(II)は、支持体120から押込み部材130を取り外した後、凹凸開孔繊維ウエブ101に第1の熱風W1を吹き付けて繊維同士を融着させて凹凸開孔不織布102を得る(図8(B))。この凹凸開孔不織布102が、不織布20の第1繊維層M1となる。例えば図8に示すように、支持体120に挿入された押し込み部材130を取り外した後、支持体120上に凹凸開孔繊維ウエブ101を保持したまま回転して、支持体120と押し込み部材130との噛み合い箇所を通過後、図8(B)において凹凸開孔繊維ウエブ101に対する第1の熱風W1の吹き付けが、熱風吹き付け部140の位置において上記の工程(II)が行われる。支持体120は、ドラム内部において、熱風吹き付け部140と対向する位置に熱風吸引部141を有することが好ましい。
【0077】
第1の熱風W1の温度は、凹凸開孔繊維ウエブ101を構成する熱可塑性繊維を溶融して、繊維同士の交差部に繊維融着部を形成できる温度に設定される。この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、凹凸開孔繊維ウエブ101を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃以上70℃以下高いことが好ましく、5℃以上50℃以下高いことがより好ましい。
第1の熱風W1の風速は、効果的に融着させる観点から、1m/s以上が好ましく、2m/s以上がより好ましい。また、第1の熱風W1の風速は、装置規模をコンパクトにできる観点から、100m/s以下が好ましく、80m/s以下がより好ましい。
【0078】
次いで、工程(III)は、第1繊維ウエブ100よりも構成繊維の繊維径が小さい第2繊維ウエブ103を供給して、凹凸開孔不織布102の開孔面側に積層させる(図8(C))。例えば、第1の熱風W1を吹き付けて形成した凹凸開孔不織布102を支持体120のドラム周面から離間させて、突起121によって開孔部3が形成された側を上にしてベルトコンベアーで下流へと搬送し、その開孔面側に第2繊維ウエブ103を合流させて積層する。
【0079】
次いで、工程(IV)は、融着炉170内にて、第2の熱風W2を吹き付けて凹凸開孔不織布102と第2繊維ウエブ103との繊維同士を融着させ、かつ第2繊維ウエブ103中の繊維同士を融着する(図8(D))。これにより、凹凸開孔不織布102と第2繊維ウエブ103とを一体化すると同時に、第2繊維ウエブ103を不織布化する。この第2繊維ウエブ103を不織布化したものが、不織布20の第2繊維層M2となる。
このとき、図8(D)に示すように、凹凸開孔不織布102側を下にしてネット180上に載置して、第2繊維ウエブ103の側から第2の熱風W2を吹き付けることで、第2繊維ウエブ103が押し込まれる。押し込まれた第2繊維ウエブ103が凹凸開孔不織布102の開孔部3から壁部11B及び壁部15Bで区画された領域に進入し、隆起部5が形成される。同時に、凹凸開孔不織布102における壁部11B及び壁部15Bの付け根部1Dは、第2繊維ウエブ103との当接領域において第2繊維ウエブ103と、繊維同士の交差部における繊維融着部を形成して一体化される。また、壁部11B及び壁部15Bが第2繊維ウエブ103に食い込む。この食い込みは、第2の熱風W2によるものであるため、壁部11B及び壁部15Bの形状を保持した状態でなされる。しかも、第2の熱風W2の吹き付け処理のため、壁部11B及び壁部15Bの形状(高さ)が保持されやすく、保持された状態で壁部11B及び壁部15Bの付け根部1Dと第2繊維ウエブ103とが密着一体化される。このようにして、凹凸開孔不織布102(第1繊維層M1)の全面(壁部11B、壁部15B及び開孔部3)に第2繊維層M2(第2繊維ウエブ103の不織布化したもの)が密着し、一体化して、前述の不織布20が得られる。
【0080】
第2の熱風W2の温度は、この種の製品に用いられる一般的な繊維材料を考慮すると、凹凸開孔不織布102及び第2繊維ウエブ103を構成する熱可塑性繊維の融点に対して0℃以上70℃以下高いことが好ましく、5℃以上50℃以下高いことがより好ましい。
第2の熱風W2の風速は、第2繊維ウエブ103中の繊維同士を融着させる観点、及び凹凸開孔不織布102と第2繊維ウエブ103とを十分な強度で固定させる観点から、0.3m/s以上が好ましく、0.4m/s以上がより好ましい。また、第2の熱風W2の風速は、不織布20の柔らかさをより高める観点から、50m/s以下が好ましく、30m/s以下がより好ましい。
【0081】
なお、上記の製造方法では、押し込み部材130は、図10に示すような、第一方向D1に連続する押し込み部131を備えるものに限定されない。例えば、押し込み部131を格子状にして、格子状の押し込み部131の間を枡状の凹部132としてもよい。この場合、賦形される鞍部15の高さがより高くなり、凹凸がより明確になる。
【0082】
本実施形態の不織布の製造方法において、第1の熱風W1を吹き付けた後に、冷却工程があることが好ましい。例えば図8に示すように、第1の熱風W1を吹き付けて得た凹凸開孔不織布102が支持体120のドラム外周に沿わされている位置において、冷却ノズルを有する冷却部160と、支持体120のドラム内部の冷却吸引部161とを対向配置させることが好ましい。これにより、支持体120を一定温度以下に抑えることができ、得られた不織布を、形状を保持したまま剥がすことができる。その結果、製造される不織布10(20)において、第1繊維層M1の壁部11B及び壁部15Bの形状を良好に保持して、良好なクッション性、液透過性及び開孔部3の視認性をより優れたものとすることができる。
【0083】
本発明の不織布を構成する熱可塑性繊維としては、不織布の素材として通常用いられるものを特に制限なく採用できる。例えば、単一の樹脂成分からなる繊維や、複数の樹脂成分からなる複合繊維などであってもよい。複合繊維としては、例えば芯鞘構造、サイドバイサイド構造などがある。
熱可塑性繊維として低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維(例えば鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘構造の複合繊維)を用いる場合、製造工程において繊維ウエブに吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。また弾力性の観点から、芯鞘構造の複合繊維の中でも、高融点成分である芯が多いほど弾力性が高い。そのため断面面積比で芯成分が大きいほうが好ましい。鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘構造の複合繊維の具体例としては、鞘がポリエチレン樹脂(以下、PEともいう)、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETともいう)である芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。
また、芯鞘構造の複合繊維において、芯の樹脂成分よりも鞘の樹脂成分の方が、ガラス転移点が低い場合(以下、低ガラス転移点樹脂成分という。例えば、芯の樹脂成分がPETで鞘の樹脂成分がPE)、低ガラス転移点樹脂成分の質量比を小さくすることで、不織布の厚みの回復性をより高められる。
【0084】
本発明の不織布は各種用途に用いることができる。例えば、各種の吸収性物品の構成部材として用いることができる。前記各種の吸収性物品には、成人用や乳幼児用のおむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の身体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0085】
本発明の不織布を有する吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。前記吸収性物品において、本発明の不織布は、着用者の肌に当接する表面シートとして好適に使用することができる。
【0086】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の不織布及び不織布の製造方法を開示する。
【0087】
<1>
厚み方向に積層された第1繊維層と第2繊維層とを有し、繊維同士の交差部における繊維融着部を含む不織布であって、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とは互いの繊維同士の前記繊維融着部によって一体化されており、
前記第1繊維層は、複数の凸部と、隣り合う凸部間に設けられた底部とを備えた凹凸構造を有し、前記複数の凸部それぞれは、頂部と、該頂部を支持する壁部とを備え、前記壁部は、前記不織布の平面方向に対して垂直に延在し、前記底部には、厚み方向に貫通する開孔部が配されており、
前記第1繊維層の前記底部がある側に前記第2繊維層を有しており、
前記第2繊維層の構成繊維は、前記第1繊維層の構成繊維よりも繊維径が小さく、前記開孔部において前記第1繊維層の側に露出した状態にされている、吸収性物品用不織布。
【0088】
<2>
前記開孔部の孔面積は、1.0mm以上50mm以下であり、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは2.0mm以上、また、好ましくは40mm以下、より好ましくは35mm以下である、前記<1>に記載の吸収性物品用不織布。
【0089】
<3>
前記第2繊維層は、前記第1繊維層との対向面側に、前記第1繊維層の前記開孔部から前記壁部で区画された領域に進入する隆起部を有する、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品用不織布。
<4>
前記隆起部は、前記第1繊維層の側から視認可能である、前記<3>に記載の吸収性物品用不織布。
<5>
前記隆起部の裾部が、前記第1繊維層における前記壁部と前記第2繊維層との当接領域に接続されている、前記<3>又は<4>に記載の吸収性物品用不織布。
<6>
前記凸部を構成する前記壁部の付け根部と該付け根部へと延在する前記隆起部の前記裾部とからなる谷間を有する、前記<5>に記載の吸収性物品用不織布。
<7>
前記第1繊維層における前記壁部と前記第2繊維層との当接領域において、前記第2繊維層の繊維が平面方向に配向し、前記隆起部の裾部の表面の繊維が、前記壁部の繊維とは異なる繊維配向を有する、前記<3>~<6>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<8>
前記壁部の付け根部と前記第2繊維層との当接領域において、前記付け根部が、前記第2繊維層に食い込んで一体化されている、前記<6>又は<7>に記載の吸収性物品用不織布。
【0090】
<9>
前記第2繊維層の構成繊維の親水度が、前記第1繊維層の構成繊維の親水度よりも高い、前記<1>~<8>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<10>
前記第1繊維層の構成繊維の接触角(G1)と前記第2繊維層の構成繊維の接触角(G2)との差(G1-G2)は、0.5以上50.0以下であり、好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、また、好ましくは45.0以下、より好ましくは40.0以下である、前記<9>に記載の吸収性物品用不織布。
【0091】
<11>
前記第2繊維層の構成繊維の繊維径と前記第1繊維層の構成繊維の繊維径との差が、2μm以上であり、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上である、前記<1>~<10>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<12>前記第2繊維層の構成繊維の繊維径と前記第1繊維層の構成繊維の繊維径との差が、50μm以下であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である、前記<11>に記載の吸収性物品用不織布。
【0092】
<13>
前記第2繊維層の単位面積当たりの繊維本数が、前記第1繊維層における前記頂部の単位面積当たりの繊維本数よりも大きい、前記<1>~<12>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<14>
前記第2繊維層の単位面積当たりの繊維本数と前記第1繊維層における前記頂部の単位面積当たりの繊維本数との差は、5以上190以下であり、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、また、好ましくは185以下、より好ましくは180以下である、前記<13>に記載の吸収性物品用不織布。
【0093】
<15>
前記第2繊維層の前記第1繊維層との対向面側は、平面方向に延在する連続繊維層となっている、前記<1>~<14>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
【0094】
<16>
前記第1繊維層における前記壁部と前記第2繊維層との当接領域において、前記壁部の繊維と前記第2繊維層の繊維との交差部における繊維融着部を有する、前記<1>~<15>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<17>
前記当接領域にある前記第2繊維層は、前記壁部の食い込みによって窪み部となっており、前記当接領域の窪み部において、前記第1繊維層と前記第2繊維層とは前記繊維融着部によって一体化されている、前記<16>に記載の吸収性物品用不織布。
【0095】
<18>
前記第1繊維層の厚みに対する前記隆起部の厚みの比は、0.05以上0.9以下であり、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、また、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下である、前記<1>~<17>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<19>
前記第1繊維層において、前記凸部の内部には、前記第2繊維層との間に中空領域がある、前記<1>~<18>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
【0096】
<20>
目付が20g/m以上100g/m以下である、前記<1>~<19>いずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<21>
4.9mN/cm荷重下における厚みが0.8mm以上10mm以下である、前記<1>~<20>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<22>
前記壁部の繊維が縦配向している、前記<1>~<21>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
【0097】
<23>
前記壁部の繊維は、縦配率が60%以上である、前記<22>に記載の吸収性物品用不織布。
<24>
前記裾部の表面の繊維配向は、縦配向率が45%未満である、前記<7>~<23>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<25>
一方の面側からの平面視において、前記第1繊維層の前記凸部として、一方向Yに延出し、互いに、該一方向Yと交差する方向Xに離間して配列されている複数の畝部と共に、隣り合う前記畝部を繋ぐ鞍部を有する、前記<1>~<24>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<26>
前記鞍部は、一方の面側の頂部と該頂部を支持する壁部とを備える、前記<25>に記載の吸収性物品用不織布。
<27>
前記<1>~<26>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布を有する吸収性物品。
【0098】
<28>
複数の突起と該突起間の凹部とを備えた凹凸形状の支持体上に第1繊維ウエブを載置し、前記凹部に沿って、前記第1繊維ウエブを、押し込み部材の押し込み部によって押し込んで賦形すると共に、前記突起に対応する箇所を開孔し、前記支持体と反対側に開孔面を有する凹凸開孔繊維ウエブを形成する、押し込み工程と、
前記支持体から前記押込み部材を取り外した後、前記凹凸開孔繊維ウエブに第1の熱風を吹き付けて繊維同士を融着させて凹凸開孔不織布を得る工程と、
前記第1繊維ウエブよりも構成繊維の繊維径が小さい第2繊維ウエブを供給して、前記凹凸開孔不織布の開孔面側に積層させる工程と、
第2の熱風を吹き付けて前記凹凸不織布と前記第2繊維ウエブとの繊維同士を融着させ、かつ前記第2繊維ウエブ中の繊維同士を融着する熱融着工程と、を有する吸収性物品用不織布の製造方法。
【実施例0099】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限りいずれも質量基準である。「←」は、左側の欄と同じ値を有することを意味する。
【0100】
(実施例1)
図8に示す製造方法に基づいて、図4図7に示す不織布を下記条件にて作製し、これを実施例1の不織布試料とした。
第1繊維ウエブ100は、繊維径14μmの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を用いた目付30g/mの繊維ウエブとした。第2繊維ウエブ103は、繊維径12μmの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を用いた目付40g/mの繊維ウエブとした。
支持体120において、尖塔部122を含む突起121の平面視におけるMDピッチを5mm、CDピッチを5mmとし、尖塔部122を含む突起高さを3.5mmとした。突起121の尖塔部122側からの平面形状は正方形とした。押込み部材130の押し込み部131のCDピッチを5mmとし、押し込み部高さを6mmとした。第1の熱風W1の温度を160℃、風速を3.0m/秒とした。これにより、表1に示す孔面積の開孔部3を有する凹凸開孔不織布102(第1繊維層M1)を作製した。
第2繊維ウエブ103を凹凸開孔不織布102の開孔面側に積層したものに対する第2の熱風の温度を160℃、風速を1.3m/秒とした。これにより、図4図7に示す形状を有する実施例1の不織布試料を作製した。
【0101】
作製した実施例1の不織布試料において、第1繊維層M1の壁部11B及び15Bは垂直に延在し、繊維が縦配向していた。第2繊維層M2の構成繊維は、表1に示す通り第1繊維層M1の構成繊維よりも繊維径が小さく、開孔部3において第1繊維層側に露出した状態にされていた。第1繊維層M1と第2繊維層M2との間の構成繊維の繊維径の差、単位面積当たりの繊維本数の差、及び構成繊維の親水度は、表1に示す通りであった。第2繊維層M2は、開孔部3から壁部11B及び15Bで区画された領域に進入する隆起部5を備えていた。また、実施例1の不織布試料の4.9mN/cm(0.05gf/cm)荷重下における厚みは、6.0mmであった。
【0102】
(実施例2)
第1繊維ウエブ100及び第2繊維ウエブ103の構成繊維の繊維径を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様にして実施例2の不織布試料を作製した。
【0103】
(実施例3)
第1繊維ウエブ100及び第2繊維ウエブ103の構成繊維の繊維径を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様にして実施例3の不織布試料を作製した。
【0104】
(比較例1)
特許文献2の実施例1に記載の2層構造の不織布を比較例3の不織布試料として作製した。その際、第1面側の外面繊維層である第1繊維層M1、第2面側の外面繊維層である第2繊維層M2それぞれの構成は表1に示す通りとした。比較例3の不織布試料は、第1繊維層M1に開孔部3を有さないものであった。
【0105】
(比較例2)
特許文献1の実施例1に記載の1層構造の不織布を作製し、該不織布の開孔側に、平坦な不織布をホットメルト型の接着剤をスパイラル状に塗工して接合した。接着剤の塗工目付は、12g/mとした。1層構造の不織布及び平坦な不織布それぞれの構成は、表1の第1繊維層M1及び第2繊維層M2の項目に示す通りとした。
【0106】
(比較例3)
メリーズSサイズ(花王株式会社、2021年製)の表面材に用いられている凹凸不織布を剥がし、該凹凸不織布の非肌面側に、平坦な不織布をホットメルト型の接着剤をスパイラル状に塗工して接合した。接着剤の塗工目付は、12g/mとした。凹凸不織布及び平坦な不織布それぞれの構成は、表1の第1繊維層M1及び第2繊維層M2の項目に示す通りとした。
【0107】
各実施例及び各比較例の不織布試料を用いて下記(1)~(3)の試験を行った。
【0108】
(1)圧縮変形量
株式会社カトーテック製KES-FB3(商品名)にて、端子のスピードを0.1mm/sに設定した以外、すべて通常モードで5.0kPaまでの圧縮特性評価を行った。その後、0.15kPa~2.5kPaまでに変形した量を各不織布試料の「圧縮変形量」とした。「圧縮変形量」に基づいて、弾力性、クッション性を判定した。この数値が大きいほど、小さい荷重で圧縮方向に潰れにくいことを示し、同様に適度に弾力性がある。また、数値が大きいほど2.5kPaの荷重までの間に潰れやすいことを示しており、数値が大きいと触った時に大きく変形するために、クッション性を感じやすいことを示す。
【0109】
(2)視認性
市販のベビー用おむつ(商品名「メリーズさらさらエアスルーSサイズ」、花王株式会社、2020年製)から表面シートを取り除いたものを吸収性コアとし、実施例及び比較例の各不織布試料から100×250mmに切出した不織布を積層した。前記不織布は、第2繊維層面側が前記吸収性コア側に向くようにして積層し、積層された不織布の周囲を固定して、評価用のおむつを作製した。開孔部の明瞭性の評価は、不織布の研究開発に従事している研究員3人(20代~30代)で、不織布(表面シート)に明瞭な開孔部が形成されているか5段階での官能評価をおこない、平均値をとりまとめた。評価用のおむつを静置し、不織布を上面から目視で観察することで官能評価を行った。ここで、平均値3.5点以上、好ましくは4.0点以上により、隆起部5が第1繊維層M1の側から視認可能であると判断する。
【0110】
(官能評価基準)
5:表面シート全体において、凹部に明瞭な開孔部が形成されている印象を受ける
4:表面シート全体において、凹部に明瞭な開孔部と不明瞭な開孔部とが混在している印象を受ける
3:表面シート全体において、不明瞭な開孔部が形成されている印象を受ける
2:表面シートの凹部の一部に不明瞭な開孔部が形成されているのみであり、多くに開孔部が形成されてない印象を受ける
1:表面シートの凹部に開孔部が全く形成されてない印象を受ける
【0111】
(3)液吸収性
(1-1)擬似軟便の調製
擬似軟便は、ベントナイト(関東化学株式会社製、製品番号:04066-01、規格:鹿1級)を15%、ポイズ530(花王株式会社製)を0.3%、エマルゲン130K(花王株式会社製)を1.7%、イオン交換水を83%の成分割合で、デジタル撹拌機を用いて攪拌し、粘度が40cPになるよう調製した(B型粘度計:東機産業株式会社製、TVB-10M)。

(1-2)擬似軟便を用いた軟便吸収速度の試験
実施例及び比較例の各不織布試料を、メリーズSサイズ(花王株式会社、2021年製)の表面材を剥がした吸収体に乗せておむつ試料とした。各おむつ試料を展開状態にして平面状態になるよう広げ、各おむつ試料の長手方向の中心から後方に30mmの位置に、擬似軟便10gを流速6g/sで注入した。擬似軟便を吸収しきる時間(おむつ表面から便が透過し、表面材が露出するまでの時間)を測定し、軟便吸収速度とした。測定は3回行い、平均値を軟便吸収速度とした。
(1-3)擬似軟便を用いた表面軟便流れ試験
斜面角度20度を有する斜面台の斜面上に各おむつ試料を展開状態にて広げ、各おむつ試料の長手方向Yの中心から後方に30mmの位置において、表面シートから上方に10mm離した場所から擬似軟便10g(粘度40mPa・s)を流速6g/sで注入した。
30秒後、表面シート上で擬似軟便が注入点から流れた距離を測定し、これを軟便流れ距離とした。測定は3回行い、平均値を軟便流れ距離とした。
(1-4)擬似軟便を用いた軟便拡散面積試験
(1―3)と同じ試験を行った後、表面シート上で擬似軟便が拡散した面積をOHPシートに転写し、スキャンしてImage―Proに取り込み、軟便拡散面積を求めた。測定は3回行い、平均値を軟便拡散面積とした。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示すように、各実施例の不織布試料は、各比較例の不織布試料に比して、圧縮変形量が大きく、クッション性に優れていた。同時に、各実施例の不織布試料は、各比較例の不織布試料に比して、軟便吸収時間が短く、軟便流れ距離が短く、軟便拡散面積も小さく抑えられており、液の広がりを抑えて素早い吸収が実現されて優れた液吸収性を示して。加えて、各実施例の不織布試料は、各比較例の不織布試料に比して、開孔部3に対する視認性が高く、該開孔部3を介した液吸収性の良さを使用者に認識させやすいものであった。
【符号の説明】
【0114】
M1 第1繊維層
M2 第2繊維層
1 凸部
1A 頂部
1B 壁部
1D 付け根部
2 底部
3 開孔部
5 隆起部
10、20 不織布
10T、20T 一方の面側
10B、20B 他方の面側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11