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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004655
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240110BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240110BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/175 301
B41J2/01 451
B41J2/01 207
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104371
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】木元 太一朗
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB06
2C056EB29
2C056EB40
2C056EB50
2C056EC11
2C056EC41
2C056EC54
2C056JC13
(57)【要約】
【課題】メンテナンス処理で消費される液体の量を削減できる手段を提供する。
【解決手段】プリンタ10において、ヘッド32に含まれる複数のノズル33は、第1から第4ノズル列K1~K4を形成している。制御部60は、インク残量センサ41がOFFであるという条件を満たすか否かを判断し(S14)、条件を満たすと判断した場合(S14:Yes)、第1から第4ノズル列K1~K4のうち一部のノズル列に対してパージを実行し(S39)、一部のノズル列内のノズルからシートに対してインクを吐出させて記録処理を実行する(S41、S26)。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する収容体と、
上記収容体から供給された液体を吐出する複数のノズルを含むヘッドと、
制御部と、を備え、
上記複数のノズルは、第1方向に並んで複数のノズル列を形成しており、
上記制御部は、
上記収容体に収容された液体の残量が所定量未満であるという条件を満たすか否かを判断する条件判断処理を実行し、
上記条件判断処理で条件を満たすと判断した場合、上記複数のノズル列のうち一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、上記一部のノズル列内のノズルからシートに対して液体を吐出させる液体吐出装置。
【請求項2】
液体を収容する収容体と、
上記収容体から供給された液体を吐出する複数のノズルを含むヘッドと、
上記ヘッドから排出された廃液を収容する廃液収容体と、
制御部と、を備え、
上記複数のノズルは、第1方向に並んで複数のノズル列を形成しており、
上記制御部は、
上記廃液収容体に収容された廃液の量が所定量以上であるという条件を満たすか否かを判断する条件判断処理を実行し、
上記条件判断処理で条件を満たすと判断した場合、上記複数のノズル列のうち一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、上記一部のノズル列内のノズルからシートに対して液体を吐出させる液体吐出装置。
【請求項3】
上記制御部は、
上記複数のノズル列が、正常ノズルのみを含む正常ノズル列か、1つ以上の異常ノズルを含む異常ノズル列かを判断する異常判断処理をさらに実行し、
上記条件判断処理で条件を満たすと判断し、かつ上記異常判断処理で上記ヘッドが上記正常ノズル列を含むと判断した場合、上記正常ノズル列に対するメンテナンス処理を実行することなく、上記正常ノズル列内のノズルからシートに対して液体を吐出させる請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記条件判断処理で条件を満たすと判断し、かつ上記異常判断処理で上記複数のノズル列のすべてが上記異常ノズル列であると判断した場合、上記異常ノズル列の中から異常ノズル数が少ない所定数のノズル列を選択し、上記選択したノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、上記選択したノズル列内のノズルからシートに対して液体を吐出させる請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
上記ヘッドを搭載し、第2方向に移動するキャリッジをさらに備え、
上記制御部は、上記複数のノズル列のすべてのノズルから液体を吐出させる場合には、上記キャリッジを上記第2方向に1回移動させて液体を吐出させ、上記一部のノズル列のノズルから液体を吐出させる場合には、上記キャリッジを上記第2方向に複数回移動させて液体を吐出させる請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
上記収容体の配送契約が締結されているか否かを示す契約情報を記憶する記憶部をさらに備え、
上記制御部は、上記契約情報が上記配送契約が締結されていることを示し、かつ上記収容体が配送されない場合に、上記メンテナンス処理を実行する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
上記廃液収容体の配送契約が締結されているか否かを示す契約情報を記憶する記憶部をさらに備え、
上記制御部は、上記契約情報が上記配送契約が締結されていることを示し、かつ上記廃液収容体が配送されない場合に、上記メンテナンス処理を実行する請求項2に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズル列を含むヘッドを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する複数のノズルを含むヘッドを備えたプリンタが知られている。このようなプリンタは、ノズルからのインク吐出不良を解消するために、ヘッドのメンテナンス処理を実行する。
【0003】
特許文献1には、シートの裏面にマークを記録する記録装置が開示されている。この記録装置は、マークが記録されていないことを検知してインク不吐出信号を出力する検知手段と、インク残量が所定量以上であるか否かを判定する判定手段とを備えている。この記録装置は、検知手段からインク不吐信号が出力され、判定手段でインク残量が所定量以上であると判定した場合には、インク不吐と判別してヘッドの回復動作を行い、インク残量が所定量未満であると判定した場合には、インク無と判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-297869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッドが複数のノズル列を含む場合、従来のプリンタは、ヘッドに含まれる複数のノズル列のすべてに対してメンテナンス処理を実行する。このため、従来のプリンタでは、メンテナンス処理で多くのインクが消費され、印刷に使用できるインクが少なくなる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンス処理で消費される液体の量を削減できる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の液体吐出装置は、液体を収容する収容体と、上記収容体から供給された液体を吐出する複数のノズルを含むヘッドと、制御部と、を備えている。上記複数のノズルは、第1方向に並んで複数のノズル列を形成している。上記制御部は、上記収容体に収容された液体の残量が所定量未満であるという条件を満たすか否かを判断する条件判断処理を実行し、上記条件判断処理で条件を満たすと判断した場合、上記複数のノズル列のうち一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、上記一部のノズル列内のノズルからシートに対して液体を吐出させる。
【0008】
上記の液体吐出装置によれば、液体の残量が所定量未満である場合には、一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、メンテナンス処理後の一部のノズル列内のノズルから液体を吐出させることにより、メンテナンス処理で消費される液体の量を削減し、液体の残量が少ないときでも、メンテナンス処理を実行した後にシートに対して液体を吐出できる。
【0009】
(2) 本発明の液体吐出装置は、液体を収容する収容体と、上記収容体から供給された液体を吐出する複数のノズルを含むヘッドと、上記ヘッドから排出された廃液を収容する廃液収容体と、制御部と、を備えている。上記複数のノズルは、第1方向に並んで複数のノズル列を形成している。上記制御部は、上記廃液収容体に収容された廃液の量が所定量以上であるという条件を満たすか否かを判断する条件判断処理を実行し、上記条件判断処理で条件を満たすと判断した場合、上記複数のノズル列のうち一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、上記一部のノズル列内のノズルからシートに対して液体を吐出させる。
【0010】
上記の液体吐出装置によれば、廃液の量が所定量以上である場合には、一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、メンテナンス処理後の一部のノズル列内のノズルから液体を吐出させることにより、メンテナンス処理で消費される液体の量を削減し、液体の残量が少ないときでも、メンテナンス処理を実行した後にシートに対して液体を吐出できる。
【0011】
(3) 好ましくは、上記制御部は、上記複数のノズル列が、正常ノズルのみを含む正常ノズル列か、1つ以上の異常ノズルを含む異常ノズル列かを判断する異常判断処理をさらに実行し、上記条件判断処理で条件を満たすと判断し、かつ上記異常判断処理で上記ヘッドが上記正常ノズル列を含むと判断した場合、上記正常ノズル列に対するメンテナンス処理を実行することなく、上記正常ノズル列内のノズルからシートに対して液体を吐出させてもよい。
【0012】
(4) 好ましくは、上記制御部は、上記条件判断処理で条件を満たすと判断し、かつ上記異常判断処理で上記複数のノズル列のすべてが上記異常ノズル列であると判断した場合、上記異常ノズル列の中から異常ノズル数が少ない所定数のノズル列を選択し、上記選択したノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、上記選択したノズル列内のノズルからシートに対して液体を吐出させてもよい。
【0013】
(5) 好ましくは、上記液体吐出装置は、上記ヘッドを搭載し、第2方向に移動するキャリッジをさらに備え、上記制御部は、上記複数のノズル列のすべてのノズルから液体を吐出させる場合には、上記キャリッジを上記第2方向に1回移動させて液体を吐出させ、上記一部のノズル列のノズルから液体を吐出させる場合には、上記キャリッジを上記第2方向に複数回移動させて液体を吐出させてもよい。
【0014】
(6) 好ましくは、上記液体吐出装置は、上記収容体の配送契約が締結されているか否かを示す契約情報を記憶する記憶部をさらに備え、上記制御部は、上記契約情報が上記配送契約が締結されていることを示し、かつ上記収容体が配送されない場合に、上記メンテナンス処理を実行してもよい。
【0015】
(7) 好ましくは、上記液体吐出装置は、上記廃液収容体の配送契約が締結されているか否かを示す契約情報を記憶する記憶部をさらに備え、上記制御部は、上記契約情報が上記配送契約が締結されていることを示し、かつ上記廃液収容体が配送されない場合に、上記メンテナンス処理を実行してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メンテナンス処理で消費される液体の量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ10の外観斜視図である。
図2図2は、プリンタ10の内部構造を示す縦断面図である。
図3図3は、キャリッジ31の移動範囲を示す図である。
図4図4は、プリンタ10のブロック図である。
図5図5(A)は、ヘッド32におけるノズル33の配置を示す図であり、図5(B)は、高画質モードで印刷された画像の拡大図であり、図5(C)は、高速モードで印刷された画像の拡大図である。
図6図6は、メンテナンス部51の構成を示す模式図である。
図7図7は、メイン処理のフローチャートである。
図8図8は、チェック処理のフローチャートである。
図9図9は、Nノズル列使用処理のフローチャートである。
図10図10(A)は、第1変形例に係るプリンタのメイン処理のフローチャートの一部であり、図10(B)は、第2変形例に係るプリンタのメイン処理のフローチャートの一部であり、図10(C)は、第3変形例に係るプリンタのメイン処理のフローチャートの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、プリンタ10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、プリンタ10の開口13が形成された面を前面として前後方向8が定義され、プリンタ10を前面から視て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、及び左右方向9は、互いに直交している。
【0019】
[プリンタ10の概要]
本実施形態に係るプリンタ10は、インクジェット印刷方式でシートに対してインク(液体の一例)を吐出する液体吐出装置の一例である。プリンタ10は、シートにブラックのインクを吐出するモノクロプリンタである。
【0020】
プリンタ10は、概ね直方体形状の筐体11を有する。図1および図2に示されるように、筐体11の内部には、給送トレイ14と、給送ローラ21と、搬送ローラ22と、キャリッジ31と、キャリッジ31に搭載され、複数のノズル33を有するヘッド32と、ヘッド32に対面するプラテン23と、排出ローラ24と、排出トレイ15と、サブタンク35と、カートリッジ37を装着可能な装着ケース36と、装着ケース36に装着されたカートリッジ37およびヘッド32を連通させるチューブ34とが位置している。複数のノズル33は、ヘッド32の下面において前後方向8に並んでいる。
【0021】
プリンタ10は、給送ローラ21および搬送ローラ22を駆動して、給送トレイ14に支持されたシートを搬送路(図2において一点鎖線で示される経路)に沿ってプラテン23の位置まで搬送する。次に、プリンタ10は、装着ケース36に装着されたカートリッジ37からサブタンク35およびチューブ34を経由して供給されるインクを、ヘッド32のノズル33から吐出させる。これにより、プラテン23に支持されたシートにインクが着弾して、形成すべき画像がシート上に印刷される。プリンタ10は、排出ローラ24を駆動して、画像が印刷されたシートを排出トレイ15に排出する。
【0022】
キャリッジ31は、左右方向9に延伸する2本のガイドレール48、49によって支持されており、左右方向9に往復移動する。プリンタ10は、キャリッジ31が左右方向9に移動する間に、ヘッド32のノズル33からインクを吐出させる。これにより、ヘッド32に対面するシートの一部の領域に画像が記録される。次に、プリンタ10は、次に画像が記録されるべき領域がヘッド32に対面するように、搬送ローラ22にシートを搬送させる。これらの処理を交互に繰り返し実行させることによって、シート上に画像が記録される。
【0023】
図1に示されるように、筐体11は、筐体11の前面12で、かつ左右方向9の右端部にカバー18を備える。カバー18の位置には、開口(図示せず)が形成されている。カバー18は、開口を閉塞させる位置(図1に示される位置)と、開口を開放する位置との間を回動可能である。開口の奥に広がる筐体11内部の収容空間には、1個の装着ケース36が位置している。装着ケース36には、ブラックのインクを貯留したカートリッジ37が装着される。
【0024】
カートリッジ37は、インクを収容可能な液室38(図2参照)を有する。カートリッジ37が装着ケース36に装着されると、液室38に収容されたインクは、液室38とサブタンク35とを連通するインク流路39を経由してサブタンク35に流入する。サブタンク35は、流入したインクを一時的に収容する。サブタンク35に収容されたインクは、チューブ34を経由してヘッド32に供給される。サブタンク35およびカートリッジ37は、収容体の一例である。
【0025】
[インク残量センサ41]
図2に示されるように、サブタンク35の後面には、インク残量センサ41が位置する。インク残量センサ41は、サブタンク35を挟んで対向する発光素子(図示せず)および受光素子(図示せず)を含んでいる。例えば、発光素子はサブタンク35の左側に位置し、受光素子はサブタンク35の右側に位置する。少なくともインク残量センサ41の位置では、サブタンク35は光を透過する材料で形成されている。
【0026】
サブタンク35に収容されたインクの液面がインク残量センサ41の位置未満のとき、発光素子から出射された光は受光素子に入射する。このとき、インク残量センサ41は、例えばローレベル信号を出力する。一方、サブタンク35に収容されたインクの液面がインク残量センサ41の位置以上のとき、発光素子から出射された光は、サブタンク35に収容されたインクによって散乱し、受光素子に入射する光の量は減少する。このとき、インク残量センサ41は、例えばハイレベル信号を出力する。以下の説明では、インク残量センサ41は、ハイレベル信号を出力しているときにはON、ローレベル信号を出力しているときにはOFFと呼ばれる。
【0027】
なお、以上の説明では、インク残量センサ41は光学式のセンサであることとしたが、インク残量センサ41の構成は任意でよい。例えば、インク残量センサ41は、フロート式のセンサや、電極式のセンサでもよい。
【0028】
[キャリッジ31の移動範囲]
図3に示されるように、プラテン23は、左右方向9に長い形状を有し、上下方向7においてキャリッジ31の下方に位置する(図2参照)。プラテン23の左端は、左右方向9において、ガイドレール48、49の左端付近に位置する。プラテン23の右端は、左右方向9において、ガイドレール48、49の中央より右に位置する。左右方向9においてプラテン23の右には、メンテナンス部51が位置する。
【0029】
メンテナンス部51は、4つのキャップ52を含んでいる。プリンタ10が印刷を実行している間、キャリッジ31は、プラテン23の範囲内で左右方向9に移動する。プリンタ10が印刷を実行していない間、キャリッジ31は、ヘッド32が4つのキャップ52に対向する位置(以下、待機位置と称される)に位置する。
【0030】
[制御部60]
筐体11の内部には、図4に示される制御部60が位置している。制御部60は、CPU61、ROM62、RAM63、EEPROM64、およびASIC65を備えている。ROM62は、CPU61が各種の処理を実行するためのプログラムなどを記憶している。RAM63は、CPU61がプログラムを実行する際に用いるデータや信号などを一時的に記録する記憶領域、あるいはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM64は、電源オフ後も保持すべき情報を記憶している。RAM63およびEEPROM64は、記憶部の一例である。
【0031】
EEPROM64は、契約情報を記憶している。プリンタ10のユーザとプリンタ10の製造会社や販売代理店との間で、カートリッジ37に収容されたインクの残量が少なくなったときに、ユーザにカートリッジ37が自動的に配送される配送契約が締結されることがある。EEPROM64に記憶された契約情報は、カートリッジ37の配送契約が締結されているか否かを示す。EEPROM64に記憶された契約情報は、プリンタ10の電源投入時にRAM63に複写される。
【0032】
制御部60は、給送ローラ21、搬送ローラ22、排出ローラ24、キャリッジ31、およびヘッド32を制御する。制御部60は、ASIC65を通じてモータ(図示せず)を駆動させることによって、給送ローラ21、搬送ローラ22、および排出ローラ24を回転させる。制御部60は、ASIC65を通じてモータ(図示せず)を駆動させることによって、キャリッジ31を左右方向9に移動する。制御部60は、ASIC65を通じてヘッド32の駆動素子(図示せず)に駆動信号を出力することによって、ヘッド32のノズル33からインクを吐出させる。ASIC65は、ノズル33から吐出すべきインクの量に応じた駆動信号を出力する。
【0033】
制御部60は、インク残量センサ41から出力された信号を、ASIC65を経由して受信する。制御部60は、インク残量センサ41から受信される信号に基づき、サブタンク35に収容されたインクの残量が所定量未満であるという条件を満たすか否かを判断する。
【0034】
制御部60は、メンテナンス部51の各部を制御する。制御部60は、ASIC65を通じてモータ(図示せず)を駆動させることによって、キャップ52を上下方向7に移動する。制御部60は、ASIC65を通じて制御信号を出力することによって、流路切替部54の状態を切り換える。制御部60は、ASIC65を通じて制御信号を出力することによって、ポンプ55を動作させる。なお、メンテナンス部51の構成は後述される。
【0035】
ASIC65には、表示部16と、操作パネル17とが接続されている。表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどである。表示部16は、例えば、プリンタ10の状態を画面に表示する。操作パネル17は、ユーザによる操作に応じた操作信号を制御部60に出力する。操作パネル17は、例えば、押ボタンを有していてもよく、表示部16に重畳されたタッチセンサを有していてもよい。
【0036】
[ノズル33の配置]
図5(A)には、ヘッド32におけるノズル33の配置が示されている。図5(A)において、横方向はキャリッジ31の移動方向であり、縦方向はシートの搬送方向である。以下の説明では、前者は主走査方向、後者は副走査方向と称される。本実施形態では、主走査方向と副走査方向とは直交する。図5(A)に示される白い円は、ヘッド32を上から視たときのノズル33の位置を示す。
【0037】
ヘッド32は、第1ノズル列K1、第2ノズル列K2、第3ノズル列K3、および第4ノズル列K4を含んでいる。第1ノズル列K1は、複数のノズル33がピッチPで副走査方向(第1方向の一例)に並んだものである。第2から第4ノズル列K2~K4は、いずれも、第1ノズル列K1と同数のノズル33が同じピッチPで副走査方向に並んだものである。本実施形態では、ピッチPは1/300インチである。第2ノズル列K2は、第1ノズル列K1の右に位置する。第3ノズル列K3は、第2ノズル列K2の右に位置する。第4ノズル列K4は、第3ノズル列K3の右に位置する。なお、2個のノズル列間の主走査方向の距離は任意である。
【0038】
第2ノズル列K2内のノズル33の副走査方向の位置は、第1ノズル列K1内のノズル33の副走査方向の位置からピッチPの1/4(すなわち、1/1200インチ)だけずれている。第3ノズル列K3内のノズル33の副走査方向の位置は、第1ノズル列K1内のノズル33の副走査方向の位置からピッチPの1/2だけずれている。第4ノズル列K4内のノズル33の副走査方向の位置は、第1ノズル列K1内のノズル33の副走査方向の位置からピッチPの3/4だけずれている。
【0039】
第1から第4ノズル列K1~K4内のノズル33は、副走査方向の配置順に4個ずつのグループに分けられ、各グループ内の4個のノズル33は互いに対応する。例えば、1行目から4行目に位置するノズル33は互いに対応し、5行目から8行目に位置するノズル33は互いに対応する。
【0040】
なお、図5(A)には各ノズル列について4個のノズル33が記載されているが、各ノズル列内のノズル33の個数は実際には4個より多い。また、ヘッド32は4個のノズル列を含むこととしたが、ヘッド32は2個、3個、あるいは5個以上のノズル列を含んでいてもよい。
【0041】
図5(A)に示される態様に複数のノズル33を配置する方法には、副走査方向の位置がノズル列ごとに異なるように複数のノズル33をヘッド32に形成する方法以外に、副走査方向の位置がノズル列間で同じになるように複数のノズル33をヘッド32に形成し、当該ヘッド32を小さい角度だけ傾けて(水平面内で小さい角度だけ回転させて)キャリッジ31に取り付ける方法がある。
【0042】
[プリンタ10の動作モード]
プリンタ10は、高画質モード、および高速モードのいずれかで動作する。図5(B)には、高画質モードで印刷された画像が拡大して示されている。図5(C)には、高速モードで印刷された画像が拡大して示されている。図5(B)および図5(C)に示される黒い円は、ノズル33から吐出されたインクによるドットを示す。
【0043】
高画質モード(図5(B))では、キャリッジ31は主走査方向に所定の速度で移動し、キャリッジ31が主走査方向に1/600インチ移動するごとに、第1から第4ノズル列K1~K4内のノズル33からインクが吐出される。この場合、1個のノズル33から吐出されたインクによるドット群によって、画像の1ラインが形成される。したがって、高画質モードでは、シート上には、主走査方向の解像度が600dpi、副走査方向の解像度が1200dpiの画像が形成される。
【0044】
高速モード(図5(C))では、キャリッジ31は主走査方向に高画質モードより速い速度で移動し、キャリッジ31が主走査方向に1/300インチ移動するごとに、第1から第4ノズル列K1~K4内のノズル33からインクが吐出される。ただし、第2ノズル列K2および第4ノズル列K4内のノズル33からのインク吐出タイミングは、これらのノズル33から吐出されたインクの着弾位置が、第1ノズル列K1および第3ノズル列K3内のノズル33から吐出されたインクの着弾位置に対して、キャリッジ31の主走査方向に1/600インチ分だけずれるように遅くなる。
【0045】
この場合、1個のノズル33から吐出されたインクによるドット群と、隣接するノズル33から吐出されたインクによるドット群とによって、画像の1ラインが形成される。具体的には、画像の奇数ライン目は、第1ノズル列K1内のノズル33から吐出されたインクによるドット群と、第2ノズル列K2内のノズル33から吐出されたインクによるドット群とによって形成される。画像の偶数ライン目は、第3ノズル列K3内のノズル33から吐出されたインクによるドット群と、第4ノズル列K4内のノズル33から吐出されたインクによるドット群とによって形成される。ドット間の主走査方向の間隔は、1/600インチである。したがって、高速モードでは、主走査方向の解像度が600dpi、副走査方向の解像度が600dpiの画像が印刷される。
【0046】
[メンテナンス部51]
図6には、ヘッド32のうち1個のノズル列に対応する部分と、メンテナンス部51の構成とが記載されている。ヘッド32の下面には、複数のノズル33が副走査方向に並ぶ第1から第4ノズル列K1~K4が位置する。図6には、このうち、1個のノズル列が記載されている。キャリッジ31が待機位置に位置するとき、キャップ52はノズル列に対向する。ヘッド32の内部には、インクの流入口71とノズル33とを接続するインク流路72が形成されている。
【0047】
キャップ52は、制御部60からの制御に従い、ヘッド32の下面に当接する位置(以下、被覆位置と称される)と、ヘッド32の下面から離間した位置(以下、離間位置と称される)との間で上昇および下降する。キャリッジ31が待機位置に位置するときに、キャップ52は被覆位置に位置する。このとき、キャップ52はノズル列の周囲に当接してノズル列を覆う。キャリッジ31が待機位置以外に位置するときに、キャップ52は離間位置に位置する。このとき、キャップ52はノズル列の周囲から下方に離間した位置に位置する。
【0048】
キャップ52の底面は、排出口53を有する。キャップ52の内部空間は、排出口53を介して流路切替部54の端子に接続されている。また、流路切替部54の別の端子には、他のノズル列に対応するキャップ52の内部空間が接続されている。流路切替部54の別の端子は、ポンプ55の一端に接続されている。流路切替部54は、4つのキャップ52の内部空間のうちいずれかをポンプ55の一端に接続する。ポンプ55の他端は、廃液タンク56に接続されている。廃液タンク56は、メンテナンス処理によってヘッド32から排出されたインクを廃液として収容する。廃液タンク56は、廃液収容体の一例である。
【0049】
キャップ52が被覆位置に位置する状態で、流路切替部54によってキャップ52の内部空間とポンプ55とを接続した上でポンプ55を駆動することにより、インク流路72にノズル33から吸引圧が付与される。これにより、インク流路72内のインクおよび気体は、ノズル33から排出される。ノズル33から排出されたインクは、廃液として廃液タンク56に収容される。このようにして、ノズル列内のノズル33についてパージが実行される。
【0050】
制御部60は、メンテナンス部51を制御することにより、ヘッド32のメンテナンス処理として、パージを実行する。制御部60は、流路切替部54を制御することにより、第1から第4ノズル列K1~K4のうちから選択した1以上のノズル列についてパージを実行する。パージは、メンテナンス処理の一例である。
【0051】
[異常ノズル列と吐出検知処理]
プリンタ10では、ノズル33の吐出不良が発生する。以下の説明では、吐出不良が発生したノズルは「異常ノズル」、吐出不良が発生していないノズルは「正常ノズル」、1個以上の異常ノズルを含むノズル列は「異常ノズル列」、正常ノズルのみを含むノズル列は「正常ノズル列」と称される。
【0052】
プリンタ10は、ノズル33の吐出不良を検知する吐出検知機能を有する場合と、吐出検知機能を有しない場合とがある。吐出検知機能を有するプリンタ10では、制御部60は必要に応じて吐出検知処理を実行する。
【0053】
[メイン処理]
制御部60は、CPU61がRAM63に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の処理を実行する。制御部60は、高速モードでは、図7に示されるメイン処理を実行する。制御部60は、メイン処理の実行中に条件が満たされれば、チェック処理(図8)、およびNノズル列使用処理(図9)を実行する。メイン処理およびチェック処理では、1ノズル列使用フラグ(図面ではフラグと記載)が使用される。1ノズル列使用フラグは、1個のノズル列を用いて画像記録を行う場合にはONに設定され、4個のノズル列を用いて画像記録を行う場合にはOFFに設定される。
【0054】
図7が参照されて、制御部60が実行するメイン処理が説明される。図7に示されるように、制御部60は、メイン処理の先頭において、手動パージを実行するか否かを判断する(S11)。制御部60は、S11において、例えばユーザからパージ指示を受けた場合に、手動パージを実行すると判断する。制御部60は、手動パージを実行すると判断したことに応じて(S11:Yes)、S12へ進む。この場合、制御部60は、フラグをOFFに設定し(S12)、S11へ進む。
【0055】
制御部60は、S11において手動パージを実行しないと判断したことに応じて(S11:No)、S13へ進む。この場合、制御部60は、印刷ジョブがあるか否かを判断する(S13)。制御部60は、S13において、例えば印刷キューに印刷ジョブがあるか否かを判断する。制御部60は、印刷ジョブがないと判断したことに応じて(S13:No)、S11へ進む。
【0056】
制御部60は、S13において印刷ジョブがあると判断したことに応じて(S13:Yes)、S14へ進む。この場合、制御部60は、インク残量センサ41がOFFであるか否かを判断する(S14)。インク残量センサ41がOFFであることは、サブタンク35に収容されたインクの残量が所定量未満であることを示す。S14は、条件判断処理の一例である。制御部60は、インク残量センサ41がOFFであると判断したことに応じて(S14:Yes)、S15へ進む。この場合、制御部60は、プリンタ10に吐出検知機能があるか否かを判断する(S15)。
【0057】
制御部60は、吐出検知機能があると判断したことに応じて(S15:Yes)、S16へ進む。この場合、制御部60は、チェック実行条件を満たすか否かを判断する(S16)。チェック実行条件は、S20のチェック処理を実行する必要があるか否かを判断するための条件である。チェック実行条件は、例えば、前回の吐出検知から100枚以上印刷したという条件である。あるいは、チェック実行条件は、午前6時以降の最初の印刷であるという条件でもよい。チェック実行条件は、これら以外の条件でもよく、複数の条件の組合せでもよい。
【0058】
制御部60は、チェック実行条件を満たさないと判断したことに応じて(S16:No)、S17へ進む。この場合、制御部60は、1ノズル列使用フラグがONであるか否かを判断する(S17)。制御部60は、1ノズル列使用フラグがONでない(OFFである)と判断したことに応じて(S17:No)、S18へ進む。この場合、制御部60は、使用ノズル列数Nを4として、Nノズル列使用処理を実行する(S18)。
【0059】
制御部60は、S17において1ノズル列使用フラグがONであると判断したことに応じて(S17:Yes)、S19へ進む。この場合、制御部60は、使用ノズル列数Nを1として、Nノズル列使用処理を実行する(S19)。制御部60は、その後のS26において、前回使用された使用ノズル列をそのまま使用する。
【0060】
制御部60は、S16においてチェック実行条件を満たすと判断したことに応じて(S16:Yes)、S20へ進む。この場合、制御部60は、図8に示されるチェック処理(詳細は後述)を実行する(S20)。
【0061】
制御部60は、S15において吐出検知機能がないと判断したことに応じて(S15:No)、S21へ進む。この場合、制御部60は、印刷前パージが必要か否かを判断する(S21)。制御部60は、S21において、例えば印刷を確実に実行する必要がある場合には、印刷前パージが必要と判断する。
【0062】
制御部60は、印刷前パージが必要と判断したことに応じて(S21:Yes)、S22へ進む。この場合、制御部60は、第1ノズル列K1に対してパージを実行する(S22)。次に、制御部60は、第1ノズル列K1を使用ノズル列とする(S23)。次に、制御部60は、使用ノズル列数Nを1として、Nノズル列使用処理を実行する(S24)。
【0063】
制御部60は、S14においてインク残量センサ41がOFFでない(サブタンク35に収容されたインクの残量が所定量以上である)と判断したことに応じて(S14:No)、S25へ進む。また、制御部60は、S21において印刷前パージが必要でないと判断したことに応じて(S21:No)、S25へ進む。これらの場合、制御部60は、使用ノズル列数Nを4として、Nノズル列使用処理を実行する(S25)。
【0064】
制御部60は、S18、S19、S20、S24またはS25を実行した後、S26へ進む。次に、制御部60は、記録処理を実行し(S26)、S11へ進む。制御部60は、S26において、ノズル列内のノズル33からシートに対してインクを吐出させることにより、記録処理を実行する。
【0065】
[チェック処理]
図8が参照されて、制御部60が実行するチェック処理が説明される。チェック処理は、プリンタ10が吐出検知機能を有する場合に実行される。図8に示されるように、制御部60は、チェック処理の先頭において、吐出検知処理を実行する(S31)。制御部60は、S31において、第1から第4ノズル列K1~K4内のすべてのノズル33から少量のインクを吐出させ、そのときにヘッド32に供給される駆動信号の電流レベルまたは電圧レベルに基づいて、各ノズル33で吐出不良が発生しているか否かを検知する。制御部60は、上記検知結果に基づき、第1から第4ノズル列K1~K4が正常ノズル列か異常ノズル列かを判断する。
【0066】
次に、制御部60は、第1から第4ノズル列K1~K4がすべて正常ノズル列である否かを判断する(S32)。制御部60は、すべて正常ノズル列であると判断したことに応じて(S32:Yes)、S33へ進む。この場合、制御部60は、1ノズル列使用フラグをOFFに設定し(S33)、使用ノズル列数Nを4として、Nノズル列使用処理を実行する(S34)。
【0067】
制御部60は、S32においてすべて正常ノズル列ではない(異常ノズル列がある)と判断したことに応じて(S32:No)、S35へ進む。この場合、制御部60は、第1から第4ノズル列K1~K4の中に正常ノズル列があるか否かを判断する(S35)。制御部60は、正常ノズル列があると判断したことに応じて(S35:Yes)、S36へ進む。この場合、制御部60は、正常ノズル列のうち使用頻度が最も低いものを使用ノズル列とする(S36)。使用頻度が最も低いノズル列を使用することにより、第1から第4ノズル列K1~K4の使用頻度を揃え、第1~第4ノズル列K1~K4の劣化の程度を揃えることができる。なお、制御部60は、S36において、正常ノズル列の中から使用ノズル列をK1、K2、K3、K4の順に決定してもよい。
【0068】
制御部60は、S35において正常ノズル列がないと判断したことに応じて(S35:No)、S37へ進む。この場合、制御部60は、異常ノズル列(すなわち、第1から第4ノズル列K1~K4)のうち正常ノズルが最も多いものを使用ノズル列とする(S37)。次に、制御部60は、パージのランクを決定する(S38)。制御部60は、S38において、例えば、使用ノズル列に含まれる正常ノズルの個数や割合に基づき、パージのランクを決定する。次に、制御部60は、使用ノズル列に対してパージを実行する(S39)。制御部60は、S39において、S37で選択した使用ノズル列に対して、S38で決定したランクに応じたインクの排出量でパージを実行する。
【0069】
制御部60は、S36またはS39を実行した後、S40へ進む。次に、制御部60は、1ノズル列使用フラグをONに設定し(S40)、使用ノズル列数Nを1個として、Nノズル列使用処理を実行する(S41)。制御部60は、S34またはS41を実行した後、チェック処理を終了する。
【0070】
以上の説明では、制御部60は、S37において、異常ノズル列の中から異常ノズル数が少ない1個のノズル列を使用ノズル列とすることとした。これに代えて、制御部60は、S37において、異常ノズル列の中から異常ノズル数が少ない順に2個または3個のノズル列を使用ノズル列としてもよい。このように、制御部60は、異常ノズル列の中から異常ノズル数が少ない所定数のノズル列を選択してもよい。なお、S31、S32およびS35は異常判断処理の一例である。
【0071】
[Nノズル列使用処理]
図9が参照されて、制御部60が実行するNノズル列使用処理について説明される。図9に示されるように、制御部60は、Nノズル列使用処理の先頭において、使用ノズル列数が1個であるか4個であるかを判断する(S51)。使用ノズル列数は、Nノズル列使用処理がS19、S24またはS41から呼び出されたときは1個であると判断され、Nノズル列使用処理がS18、S25またはS34から呼び出されたときには4個であると判断される。
【0072】
Nノズル列使用処理では、搬送モードが使用される。搬送モードは、所定量の画像データを印刷するときにキャリッジ31を左右方向9に何回移動するかを示し、1パスまたは4パスに設定される。搬送モードが1パスである場合、所定量の画像データは、キャリッジ31が左右方向9に1回移動する間に印刷される。搬送モードが4パスである場合、所定量の画像データは、キャリッジ31が左右方向9に4回移動する間に印刷される。
【0073】
制御部60は、S51において使用ノズル列数が1個であると判断したことに応じて(S51:1個)、S52へ進む。この場合、制御部60は、使用ノズル列に含まれる使用ノズルを数える(S52)。次に、制御部60は、搬送モードを4パスに設定する(S53)。次に、制御部60は、画像データを使用ノズル列に配置する(S54)。次に、制御部60は、印刷制御の変更を表示部16に表示し(S55)、Nノズル列使用処理を終了する。
【0074】
制御部60は、S51において使用ノズル列数が4個であると判断したことに応じて(S51:4個)、S56へ進む。この場合、制御部60は、搬送モードを1パスに設定する(S56)。次に、制御部60は、画像データを第1から第4ノズル列K1~K4に配置し(S57)、Nノズル列使用処理を終了する。
【0075】
制御部60は、S51において使用ノズル数が4個であると判断した場合には、S56において搬送モードを4パスに設定する。この場合、S26では、第1から第4ノズル列K1~K4のすべてのノズル33からインクが吐出される。一方、制御部60は、S51において使用ノズル数が1個であると判断した場合には、S56において搬送モードを1パスに設定する。この場合、S26では、第1から第4ノズル列の中から選択された1個の使用ノズル列のノズル33からインクが吐出される。このように制御部60は、複数のノズル列のすべてのノズル33からインクを吐出させる場合には、キャリッジ31を左右方向9に1回移動させてインクを吐出させ、一部のノズル列のノズル33からインクを吐出させる場合には、キャリッジ31を左右方向9に複数回(ここでは4回)移動させてインクを吐出させる。
【0076】
[作用効果]
以上に示されるように、本実施形態に係るプリンタ10は、サブタンク35と、複数のノズル33を含むヘッド32と、制御部60とを備えている。複数のノズル33は、副走査方向に並んで複数のノズル列を形成している。制御部60は、サブタンク35に収容されたインクの残量が所定量未満であるという条件を満たすか否かを判断する条件判断処理を実行し(S14)、条件判断処理で条件を満たすと判断した場合(S14:Yes)、複数のノズル列のうち一部のノズル列に対してメンテナンス処理としてパージを実行し(S39)、一部のノズル列内のノズルからシートに対してインクを吐出させて記録処理を実行する(S41、S26)。
【0077】
本実施形態に係るプリンタ10は、インクの残量が所定量未満である場合には、一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、メンテナンス処理後の一部のノズル列内のノズル33からインクを吐出させる。したがって、メンテナンス処理で消費されるインクの量を削減し、インクの残量が少ないときでも、メンテナンス処理を実行した後にシートに対してインクを吐出できる。
【0078】
制御部60は、複数のノズル列が正常ノズル列か異常ノズル列かを判断する異常判断処理を実行し(S31)、条件判断処理で条件を満たすと判断し、かつ異常判断処理でヘッド32が正常ノズル列を含むと判断した場合(S14:Yes、S35:Yes)、正常ノズル列に対するパージを実行することなく、正常ノズル列内のノズルからシートに対してインクを吐出させて記録処理を実行する(S41、S26)。このようにヘッド32が正常ノズル列を含む場合には、正常ノズル列に対するメンテナンス処理を実行することなく、正常ノズル列からインクを吐出させることにより、メンテナンス処理で消費されるインクの量をさらに削減できる。
【0079】
制御部60は、条件判断処理で条件を満たすと判断し、かつ異常判断処理で複数のノズル列のすべてが異常ノズル列であると判断した場合(S14:Yes、S35:No)、異常ノズル列の中から異常ノズル数が少ない所定数(ここでは1個)のノズル列を選択し(S37)、選択したノズル列に対するパージを実行し(S39)、選択したノズル列内のノズル33からシートに対してインクを吐出させて記録処理を実行する(S41、S26)。異常ノズル数が少ないほど、ノズル列のメンテナンス処理で消費される液体の量は少ない。したがって、複数のノズル列のすべてが異常ノズル列である場合には、異常ノズル数が少ないノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、メンテナンス処理後のノズル列からインクを吐出させることにより、メンテナンス処理で消費されるインクの量をさらに削減できる。
【0080】
制御部60は、複数のノズル列のすべてのノズル33からインクを吐出させる場合には、キャリッジ31を左右方向9に1回移動させてインクを吐出させ、一部のノズル列のノズル33からインクを吐出させる場合には、キャリッジ31を左右方向9に複数回(ここでは4回)移動させてインクを吐出させる。したがって、一部のノズル列のノズル33からインクを吐出させる場合に、すべてのノズル列のノズル33からインクを吐出させる場合と同等の解像度でシートにインクを吐出できる。
【0081】
[変形例]
上記実施形態に係るプリンタ10については、各種の変形例を構成できる。プリンタ10の制御部60は、S14において、サブタンク35に収容されたインクの残量が所定量未満であるこという条件を満たすか否かを判断することとした。第1変形例に係るプリンタの制御部は、廃液タンク56に収容された廃液の量が所定量以上であるという条件を満たすか否かを判断してもよい。
【0082】
サブタンク35に収容されたインクの減少量と、廃液タンク56に収容された廃液の量との間には、正の相関関係がある。すなわち、プリンタ10が印刷やパージを実行したときに、サブタンク35に収容されたインクの減少量に応じた量だけ、廃液タンク56に収容された廃液は増加する。第1変形例に係るプリンタの制御部は、印刷やパージを実行したときの廃液の量(予測値)や廃液となったインクの蒸発量(予測値)などに基づき、廃液タンク56に収容された廃液の量を算出する。算出された廃液の量は、RAM63およびEEPROM64に記憶される。
【0083】
プリンタ10の制御部60と同様に、第1変形例に係るプリンタの制御部(以下、第1変形例において、制御部と称される)は、図7から図9に示される処理を実行する。ただし、制御部は、図7に示されるS14に代えて、図10(A)に示されるS101を実行する。制御部は、S101において、算出された廃液の量に基づき、廃液タンク56がニアフル(ほぼ満タン)であるか否かを判断する。廃液タンク56がニアフルであることは、廃液タンク56に収容された廃液の量が所定量以上であることの一例であり、S101は、条件判断処理の一例である。制御部は、廃液タンク56がニアフルであると判断したことに応じて(S101:Yes)、S15へ進み、廃液タンク56がニアフルでないと判断したことに応じて(S101:No)、S25へ進む。
【0084】
第1変形例に係るプリンタは、サブタンク35と、複数のノズル33を含むヘッド32と、廃液タンク56と、制御部とを備えている。複数のノズル33は、副走査方向に並んで複数のノズル列を形成している。制御部は、廃液タンク56に収容された廃液の量が所定量以上であるという条件を満たすか否かを判断する条件判断処理を実行し(S101)、条件を満たすと判断した場合、複数のノズル列のうち一部のノズル列に対してパージを実行し(S39)、一部のノズル列内のノズルからシートに対してインクを吐出させて記録処理を実行する(S41、S26)。
【0085】
第1変形例に係るプリンタは、廃液の量が所定量以上である場合には、一部のノズル列に対するメンテナンス処理を実行し、メンテナンス処理後の一部のノズル列内のノズル33から液体を吐出させる。したがって、実施形態に係るプリンタ10と同様に、メンテナンス処理で消費されるインクの量を削減し、インクの残量が少ないときでも、メンテナンス処理を実行した後にシートに対してインクを吐出できる。
【0086】
第2変形例に係るプリンタは、実施形態に係るプリンタ10に、カートリッジ37の配送契約が締結されているか否かに基づく判断を追加したものである。プリンタ10の制御部60と同様に、第2変形例に係るプリンタの制御部(以下、第2変形例において、制御部と略称される)は、図7から図9に示される処理を実行する。ただし、制御部は、図7に示されるS14に代えて、図10(B)に示されるS201~S203を実行する。
【0087】
制御部は、S201において、RAM63またはEEPROM64に記憶された契約情報に基づき、カートリッジ37の配送契約が締結されているか否かを判断する。制御部は、カートリッジ37の配送契約が締結されていると判断したことに応じて(S201:Yes)、S202へ進む。この場合、制御部は、カートリッジ37が未配送であるか否かを判断する(S202)。制御部は、S202において、例えば、「カートリッジは未配送ですか?」というメッセージを表示部16に表示し、操作パネル17を経由して入力されたユーザからの回答に基づき、カートリッジ37が未配送であるか否かを判断する。
【0088】
制御部は、カートリッジ37が未配送であると判断したことに応じて(S202:Yes)、S203へ進む。この場合、制御部は、インク残量センサ41がOFFであるか否かを判断する(S203)。制御部は、インク残量センサ41がOFFであると判断したことに応じて(S203:Yes)、S15へ進む。
【0089】
制御部は、S201において、カートリッジ37の配送契約が締結されていないと判断したことに応じて(S201:No)、S25へ進む。制御部は、S202において、カートリッジ37が未配送でない(配送済みである)と判断したことに応じて(S202:No)、S25へ進む。制御部は、インク残量センサ41がOFFでないと判断したことに応じて(S203:No)、S25へ進む。
【0090】
このように第2変形例に係るプリンタは、カートリッジ37の配送契約が締結されているか否かを示す契約情報を記憶する記憶部(RAM63、EEPROM64)をさらに備えている。制御部は、契約情報がカートリッジ37の配送契約が締結されていることを示し(S201:Yes)、かつカートリッジ37が配送されない場合に(S202:Yes)、S15以降の処理を実行する。したがって、カートリッジ37の配送契約が締結されている状態でカートリッジ37が直ちに配送されない場合に、メンテナンス処理で消費されるインクの量を削減できる。
【0091】
なお、制御部は、例えば、S201において、カートリッジ37の配送契約が解除されることが確定しているか否かを判断し、S202において、配送契約の残り日数が7日以下であるか否かを判断してもよい。
【0092】
第3変形例に係るプリンタは、第1変形例に係るプリンタに、廃液タンク56の配送契約が締結されているか否かに基づく判断を追加したものである。プリンタのユーザとプリンタの製造会社や販売代理店との間で、廃液タンク56に収容されている廃液の量が多くなったときに、ユーザに廃液タンク56が自動的に配送される配送契約が締結されることがある。第3変形例に係るプリンタでは、EEPROM64に記憶された契約情報は、廃液タンク56の配送契約が締結されているか否かを示す。
【0093】
プリンタ10の制御部60と同様に、第3変形例に係るプリンタの制御部(以下、第3変形例において、制御部と称される)は、図7から図9に示される処理を実行する。ただし、制御部は、図7に示されるS14に代えて、図10(C)に示されるS301~S303を実行する。
【0094】
制御部は、S301において、RAM63またはEEPROM64に記憶された契約情報に基づき、廃液タンク56の配送契約が締結されているか否かを判断する。制御部は、廃液タンク56の配送契約が締結されていると判断したことに応じて(S301:Yes)、S302へ進む。この場合、制御部は、廃液タンク56が未配送であるか否かを判断する(S302)。制御部は、S302において、例えば、「廃液タンクは未配送ですか?」というメッセージを表示部16に表示し、操作パネル17を経由して入力されたユーザからの回答に基づき、廃液タンク56が未配送であるか否かを判断する。
【0095】
制御部は、廃液タンク56が未配送であると判断したことに応じて(S302:Yes)、S303へ進む。この場合、制御部は、廃液タンク56はニアフルであるか否かを判断する(S303)。制御部は、廃液タンク56がニアフルであると判断したことに応じて(S302:Yes)、S15へ進む。
【0096】
制御部は、S301において、廃液タンク56の配送契約が締結されていないと判断したことに応じて(S301:No)、S25へ進む。制御部は、S302において、廃液タンク56が未配送でない(配送済みである)と判断したことに応じて(S302:No)、S25へ進む。制御部は、廃液タンク56がニアフルであると判断したことに応じて(S303:No)、S25へ進む。
【0097】
このように第3変形例に係るプリンタは、廃液タンク56の配送契約が締結されているか否かを示す契約情報を記憶する記憶部(RAM63、EEPROM64)をさらに備えている。制御部は、契約情報が廃液タンク56の配送契約が締結されていることを示し(S301:Yes)、かつ廃液タンク56が配送されない場合に(S302:Yes)、S15以降の処理を実行する。したがって、廃液タンク56の配送契約が締結されている状態で廃液タンク56が直ちに配送されない場合に、メンテナンス処理で消費されるインクの量を削減できる。
【0098】
実施形態に係るプリンタ10は、収容体として、サブタンク35とカートリッジ37を備えることとした(カートリッジモデル)。カートリッジモデルのプリンタの場合、プリンタのユーザとプリンタの製造会社または販売代理店との間で、カートリッジ37や廃液タンク56の配送契約が締結されることがある。変形例に係るプリンタは、インクの注入口を有するタンクを備えていてもよい(タンクモデル)。タンクモデルのプリンタでは、ユーザがインクボトルに収容されたインクをタンクの注入口に注ぐことにより、プリンタに新たなインクが供給される。タンクモデルのプリンタの場合、プリンタのユーザとプリンタの製造会社または販売代理店との間で、インクボトルや廃液タンク56の配送契約が締結されることがある。
【0099】
プリンタ10は、ヘッド32のメンテナンス処理として、パージを実行することとした。パージには、ノズル列内のノズル33を吸引する吸引パージと、ノズル列に対応する排気ポートを吸引する排気パージとが含まれていてもよい。また、プリンタ10は、ヘッド32のメンテナンス処理として、パージの代わりに、フラッシングを実行してもよい。また、変形例に係るプリンタは、インク残量センサ41以外の液面センサや、装着ケース36にカートリッジ37が装着されているか否かを検知するための装着センサを備えていてもよい。
【0100】
また、実施形態に係るプリンタ10の制御部60は、サブタンク35に収容されたインクの残量が所定量未満であるこという条件を満たすと判断した場合(S14:Yes)であって、S15およびS16においてYes、S32およびS35においてNoと判断した場合、またはS15においてNo、S21においてYesと判断した場合に、使用ノズル列数Nを1個として、メンテナンス処理を実行し(S22、S39)、記録処理を実行することとした(S26)。これに代えて、変形例に係るプリンタの制御部は、サブタンク35に収容されたインクの残量が所定量未満であるという条件を満たすと判断した場合に、他の条件が満たされているか否かにかかわらず、使用ノズル列数Nを1個として、メンテナンス処理を実行し、記録処理を実行してもよい。あるいは、変形例に係るプリンタの制御部は、廃液タンク56に収容された廃液の量が所定量以上であるという条件を満たすと判断した場合に、他の条件が満たされているか否かにかかわらず、使用ノズル列数Nを1個として、メンテナンス処理を実行し、記録処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0101】
10・・・プリンタ(液体吐出装置)
31・・・キャリッジ
32・・・ヘッド
33・・・ノズル
35・・・サブタンク(収容体)
37・・・カートリッジ(収容体)
56・・・廃液タンク(廃液収容体)
60・・・制御部
63・・・RAM(記憶部)
64・・・EEPROM(記憶部)
図1
図2
図3
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図8
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図10