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  • 特開-電解水生成装置 図1
  • 特開-電解水生成装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046559
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240327BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152007
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】近藤 龍一
(72)【発明者】
【氏名】横田 善民
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB14
4D061EB19
4D061EB37
4D061EB39
4D061GA02
4D061GA09
4D061GC12
(57)【要約】
【課題】本件発明は、水温と、流量により、オゾン濃度が制御された電解水を生成することができる電解水生成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、温度センサと、流量センサとを用いて、検知した水温で、電流値を制御し、更に、検知した流量で制御した電流値を補正することで目標とするオゾン濃度となるように電極への出力制御をすることができるので、低コストで精度が高いオゾン濃度制御が可能となる。また、水温に基づいて、電極への電流値を制御することができ、電極寿命の長寿命化および消費電力の削減も可能になり、低水温時には、余剰オゾンガスの発生を抑制することで臭いやオゾンガス中毒の予防を可能にすることを特徴とする電解水生成装置を採用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解によってオゾンを含有する電解水を生成する電解水生成装置であり、
少なくとも一対の電極を備える電解槽と、
当該電解槽の水温を検知する温度センサと、
温度センサから検知した水温に基づいて電極への電流を制御する制御装置とを備え、
生成される電解水のオゾン濃度を調整することを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記電解槽のへ流入量を検知するために、流量センサを備え、前記流量センサから検知した流量に基づいて電極への電流値を補正する請求項1に記載の電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、オゾン電解水を生成する電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解水とは、純水や水道水に必要に応じて化合物を添加したものを原料水として、原料水内に設置した複数の電極(陽極と陰極)の間に直流電圧を印加して電解することによって得られるオゾンや次亜塩素酸などの電解生成物を含有する水溶液のことである。このような電解水には、殺菌や消毒などの効果があることから、機材の衛生管理や、殺菌が必要な手洗いなどに利用されている。
【0003】
従来、オゾンを含有する電解水を生成する装置は、生成される電解水のオゾン濃度を制御するために、吸光光度計により、オゾン濃度を検知することでオゾン濃度を制御してきた。吸光光度計を用いた電解水生成装置として、例えば特許文献1は、一対の電極を備え、前記一対の電極間に電力を供給し、水を電気分解することで、電解水を生成する電力制御部と、前記電解水のオゾン濃度を測定する電解水濃度センサとを備え、前記電力制御部は、前記電解水濃度センサによって測定されるオゾン濃度が目標になるように、前記一対の電極間に供給する電力を調整することでオゾン濃度を制御にする電解水生成装置を開示している。この特許文献1が開示する従来の電解水生成装置では、オゾン水を目標濃度にするため、吸光光度計を用いてオゾン濃度を計測し、電極に流す電流を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-64621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示された方法では、オゾン濃度の高精度な制御には、頻繁な校正が必要となる。また、吸光光度計によるオゾン濃度を検知する濃度センサを用いると、濃度センサに結露が生じた場合は濃度測定の精度が低下したり、部品の値段が高く、コストがかかるという問題もあった。
【0006】
そのため、高濃度のオゾン水生成を行うと、電極への過負荷が起きて、電極寿命の低下および消費電力が高くなる問題点があった。更に、低水温時に、過剰な出力による余剰なオゾンガスの発生が起きて、臭いやオゾンガス中毒などの悪影響を及ぼす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上述した課題を解決するために、鋭意研究の結果、以下の電解水生成装置に想到した。
【0008】
本件発明に係る電解水生成装置は、電気分解によってオゾンを含有する電解水を生成する電解水生成装置であり、少なくとも一対の電極を備える電解槽と、当該電解槽の水温を検知する温度センサと、温度センサから検知した水温に基づいて電極への電流を制御する制御装置とを備え、制御装置による電流の制御によって生成される電解水のオゾン濃度を調整することを特徴としている。
【0009】
また、前記電解槽のへ流入量を検知するために、流量センサを備え、前記流量センサから検知した流量に基づいて電極への電流値を補正することを特徴とする電解水生成装置を採用した。
【発明の効果】
【0010】
本件発明に係る電解水生成装置は、水温に基づいて目標とするオゾン濃度となるように電極への出力制御をすることができるので、低コストで精度が高いオゾン濃度制御が可能となる。また、水温に基づいて電極への電流値を制御することができ、電極への過負荷を防止することができることから、電極寿命の長寿命化および消費電力の削減も可能になった。更に、温度に基づいて出力を制御することができるため、低水温時には、余剰オゾンガスの発生を抑制することで臭いやオゾンガス中毒の予防ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電解水生成装置の略構成図である。
図2】1.0ppm濃度のオゾン水を生成するための検量線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本件発明に係る電解水生成装置の形態に関して述べる。なお、以下に説明するものは、単に一態様を示したものであり、以下の記載内容に限定解釈されるものではない。
【0013】
1.電解水生成装置
本件発明に係る電解水生成装置は、水温に基づいて、電流を制御できる電解水生成装置であって、電解槽内には、少なくとも一対の電極と、少なくとも一対の電極間に電圧を印加するための少なくとも一対の給電部材とを備えており、少なくとも一対の電極間に電圧を印加して、原料水にオゾンを発生させる電解部と、水温を検知する温度センサと、流入量を検知する流量センサと、制御部とを備えている。
【0014】
図1に、本件発明の電解水生成装置1の略構成図を示す。電解水生成装置1は、電解部10と、塩素添加部11と、制御部12とを有している。電解部10は、陽極30と陰極31との少なくとも一対の電極と、陽極30と陰極31との間に電圧を印加するための給電部材32と給電部材33との少なくとも一対の給電部材とを有しており、陽極30と陰極31は対向して配置されている。陽極30と給電部材32と、及び陰極31と給電部材33とは、それぞれが電流が流れることが可能な状態で接続されている。そして、給電部材32と給電部材33とは、給電線34と給電線35とを介して電源部13に接続されている。また、電解部10には、原料水を電解部水槽15に供給するための原料水流路21と、生成した電解水を電解部水槽15から取り出すための電解水流路23とが接続されている。
【0015】
水量調整部14には、水の入力として水流路20が接続されており、水量調整部14の出力として原料水流路21が接続されている。また、温度センサ16と、流量センサ17は原料水流路21が接続されており、塩素添加部11には塩素添加流路22が接続されている。そして、塩素添加流路22は、原料水流路21に合流するように接続されている。そして、制御部12は、少なくとも図1における塩素添加部11と、電源部13と、水量調整部14と、温度センサ16と、流量センサ17との間を、以降で説明する制御を行うことができる手段で破線で示すように接続している。なお、電解水生成装置1においては、制御部12は、図1に図示されていない各部の制御についても行うことができる。
【0016】
温度センサ16には、サーミスタを用いることが好ましい。サーミスタは小さな変化を測定できるほど高感度であり、高い絶対精度と、結露が生じた場合でも計測精度が落ちるという欠点もない。また、温度センサを設置する場所は、原料水流路21であることが好ましい。さらに、流量センサ17は、原料水流路21に設置するのが好ましい。また、上記温度センサは、サーミスタに限定されず、その他の温度センサを使用してもよい。
【0017】
〔原料水〕
オゾンを発生させる場合、原料水流路21から電解部水槽15に供給する原料水は、水流路20から流入する水に対して、水量調整部14から単位時間あたりに流出する水を適切な量に調整して原料水流路21に供給された水を用いる。そして、水道水は加圧されていることから、水量調整部14に例えばニードル弁などを用いて弁の開度を調整することによって、適切な量に調整することができるからである。なお、水量調整部14から単位時間あたりに流出する水を適切な量に調整することができれば、上記に限定されず使用することができる。
【0018】
〔制御部〕
制御部12は、温度センサ16で計測した水温に基づいて、電解部10に通電する電流値を切り替えられる。更に、流量センサ17で計測した流量に基づいて、通電する電流値を補正してもよい。また、オゾンを発生させるオゾン水生成モードと、次亜塩素酸を発生させる次亜塩素酸水生成モードとを有している。そして、制御部12は、オゾン水生成モードでは、制御部12は、温度センサ16で水温を計測し、計測した水温に基づいて電流値を制御し、流量センサ17で流量を計測し、計測した流量に基づいて、電流値の制御に補正を行う。上述の電流値の制御および補正を行うときは、制御部12に備えられている水温と電流値とオゾン濃度との相関を示す検量線のデータを基に、電源部13において目標のオゾン濃度を有するオゾン水を生成させるに適した電流を陽極30と陰極31との間に通電させる機能を有している。当該制御部に用いられるデータは、オゾン生成の効率が低い高水温時を最低基準として作られている。電解水生成装置1は、オゾン水生成モードを実行することによって、電解部水槽15内の原料水を電解して電解水流路23から目標オゾン濃度のオゾン水を得ることができる。
【0019】
上記制御部12には、水温のみと、水温及び流量とを用いた2種類の方法で電流値を決定することができる。水温のみを用いて電流値を制御する場合、流量制御機構を持たない場合、流量はある程度把握できる。図2に示す異なる流量に基づく水温と電流値と目標オゾン濃度1.0ppmの相関関係の検量線を参考にして、水温に対して電流値を選択し、陽極30と陰極31とに通電する電流値を決定している。図2に示すオゾン濃度1ppmが目標の場合の検量線は、流量が1.0L/minの場合は三角のマーカー、流量が2.0L/minの場合は四角のマーカー、流量が4.0L/minの場合は丸のマーカーを用いた線分図で表している。なお、陽極30と陰極31とに通電する電流値は、図2に記載されているデータの水温の範囲に限定されない。また、目標オゾン濃度1ppmは本件発明の一態様であり、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で目標オゾン濃度は適宜変更可能である。
【0020】
水温及び流量を用いて電流値を制御する場合、図2に示すオゾン濃度1.0ppmが目標の場合の検量線に基づいて、水温に対応する電流値を選択し、流量に基づいて選択した電流値に補正を行うことで、陽極30と陰極31とに通電する電流値を決定している。なお、陽極30と陰極31とに通電する電流値は、図2に記載されているデータの水温の範囲に限定されない。また、目標オゾン濃度1.0ppmは本件発明の一態様であり、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で目標オゾン濃度は適宜変更可能である。
【0021】
〔電解部〕
電解部10では、電解部水槽15内に少なくとも一対の陽極30と陰極31を備えている。電解部水槽15内の原料水を電解することができる限りにおいて、この陽極30と陰極31とはどのような配置関係であっても良い。
【0022】
電解部水槽15を覆う外装部分に用いる部材は、電解部水槽15内で電解による電解水の生成を行うことができるものであれば使用できるが、絶縁性を有する樹脂材料が好ましい。容易に成形することができ、かつ、外装部分に電流が流れないことから電解部水槽15内の原料水の電解を阻害しないからである。そして、この外装部分には、原料水を電解部水槽15に供給するための原料水流路21と、生成した電解水を電解部水槽15から取り出すための電解水流路23とを接続するための開口部、及び給電部材32と給電部材33とを貫通させるための開口部を設けることが好ましい。なお、原料水流路21と電解水流路23とを接続するための開口部の位置は、図1に示した位置に限定されない。
【0023】
陽極30と陰極31との間隔は、原料水を効率良く電解することができる間隔であれば良く、特に限定されない。ただし、陽極30と陰極31との間隔を狭くしすぎると、電解部10や陽極30及び陰極31の加工精度に対して、間隔を正確に維持して陽極30と陰極31とを配置することが困難であることから好ましくない。一方、陽極30と陰極31との間隔を広くしすぎると、電解を行うことが困難になる場合や、電解に必要な印加電圧として好ましい間隔の範囲の場合よりも高電圧が必要になることから好ましくない。したがって、適切な間隔に設定することが好ましい。
【0024】
〔電源部〕
電源部13は、電解を行うに必要な電力を、給電線34と給電線35と、及び給電部材32と給電部材33とを介して、陽極30と陰極31とに供給する。電源部13は、制御部12から、水温のみ、または水温および流量に基づいて、決定された電流値で制御し、電解で適切なオゾン水濃度に適した電流値で、電流を出力する。
【0025】
以上説明した本件発明に係る実施の形態は、本件発明の一態様であり、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、以下実施例を挙げて本件発明をより具体的に説明するが、本件発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0026】
流量が1.0L/minのとき、水温に基づいて電流値を制御し、水温が14.7℃以から24.0℃に変化させ、電流値が1.6Aで通電させ、10分間後に、通電する電流値及び生成されるオゾン水のオゾン濃度を計測した。
【実施例0027】
流量を1.0L/minから2.0L/minに変化させ、水温及び流量に基づいて電流値を制御し、水温が14.7℃で、電流値が1.6Aで通電させ、10分間後に、実施例1に記載の方法と同様に計測した。
【比較例】
【0028】
〔比較例1〕
流量が1.0L/minのとき、水温が14.7℃以から24.0℃に変化させ、水温に基づいて電流値を制御せず、電流値が1.6Aで通電させ、10分間後に、通電する電流値及び生成されるオゾン水のオゾン濃度を計測した。
【0029】
〔比較例2〕
流量を1.0L/minから2.0L/minに変化させ、水温及び流量に基づいて電流値を制御せず、水温が14.7℃で、比較例1に記載の方法と同様に計測した。
【0030】
〔評価〕
実施例1と実施例2及び比較例1と比較例2に記載の電流値の通電方法で、水温及び流量におけるオゾン濃度の変化を計測し、電流制御を行えているか評価を行った。実施例1と実施例2及び、比較例1と比較例2では、同様の温度センサと、流量センサとを用いて計測した。実施例及び比較例では、目標オゾン濃度を1.0ppmに設定している。また、電流を通電させる陽極と陰極の表面積は、各々600cmである。更に、オゾン濃度の濃度計測は、計測機器の関係上、計測誤差が10%前後生じます。
【0031】
電流制御を行わなかった場合の結果を表1に示す。水温及び流量に基づいて、電流制御を行った場合の結果を表2に示す。
【0032】
表1から、比較例1および比較例2で、水温が高くなるほど、オゾン濃度が低下しており、オゾン生成能力が低下していることがわかる。また、水温が低くなるほど、オゾン濃度が高くなり、オゾン生成能力が向上していることがわかる。以上のことから、水温が変化することによって、オゾン生成能力に影響があることがわかる。
【0033】
【表1】
【0034】
また、表2からは、実施例1の場合は、10分後に電流値が1.6Aから2.6Aに変化している、これは水温に基づいて、図2の検量線に従って、電流値を制御することができていることがわかる。また、オゾン濃度も、オゾン濃度1.0ppmに対して、生成されるオゾン水の濃度を10%前後以内に抑えることができたことがわかる。また、実施例2の場合は、流量の変化によって、1.6Aから2.5Aに電流値が変化しているため、流量による電流値の補正を行えているのがわかる。また、オゾン濃度1.0ppmに対して、生成されるオゾン水の濃度を10%前後以内に抑えることができたことがわかる。以上のことから、温度センサ及び流量センサを用いることで、計測した水温のみの場合、または水温及び流量の場合どちらでも電流を制御でき、任意のオゾン濃度に維持されたオゾン水を生成できることが明らかになった。
【0035】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0036】
本件発明に係る電解水生成装置は、水温に基づいて目標とするオゾン濃度となるように電極への出力制御をすることができるので、低コストで精度が高いオゾン濃度制御が可能となる。また、水温に基づいて電極への電流値を制御することができ、電極への過負荷を防止することができることから、電極寿命の長寿命化および消費電力の削減も可能になった。更に、温度に基づいて出力を制御することができるため、低水温時には、余剰オゾンガスの発生を抑制することで臭いやオゾンガス中毒の予防ができるようになる。
【符号の説明】
【0037】
1 電解水生成装置
10 電解部
11 塩素添加部
12 制御部
13 電源部
14 水量調整部
15 電解部水槽
16 温度センサ
17 流量センサ
20 水流路
21 原料水流路
22 塩素添加流路
23 電解水流路
30 陽極
31 陰極
32 給電部材
33 給電部材
34 給電線
35 給電線
図1
図2