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特開2024-46573建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046573
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/43 20100101AFI20240327BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240327BHJP
【FI】
G01S19/43
G05D1/02 L
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004187
(22)【出願日】2023-01-16
(62)【分割の表示】P 2022150784の分割
【原出願日】2022-09-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207872
【氏名又は名称】大末建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 浩則
(72)【発明者】
【氏名】久保田 直行
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰成
(72)【発明者】
【氏名】草刈 佑太
【テーマコード(参考)】
5H301
5J062
【Fターム(参考)】
5H301AA03
5H301BB03
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD17
5H301DD18
5H301FF11
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH01
5H301HH11
5H301HH13
5H301LL01
5H301LL06
5J062AA04
5J062BB01
5J062CC07
5J062DD23
5J062FF01
5J062FF02
(57)【要約】
【課題】建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステムを提供する。
【解決手段】RTK測位精度を提供する基地局とロボットとを備え、ロボットは、自己位置判定を行う機構により測位して得た自己位置のRTK座標と、現場基準点と到達目標地点の座標間の距離をRTK上の距離に変換して得る到達目標地点のRTK座標の差から直線距離を計測し、障害物情報の3Dデータに対して走行可否判定を行った結果により直線距離上の走行不可地点を回避する迂回経路となる経路情報の作成を行い、経路情報は地面状況と当該地面状況に応じた予定速度情報を含み、ロボットは、経路情報に基づき自動走行中は自己位置における速度を計算し、予定速度情報内の自己位置相当位置での予定速度との比較を行い、停止判断、迂回経路再作成判断を行いRTK測位された到達目標地点に到達するロボットシステムを提供する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステムであって、
RTK測位精度を提供する基地局と、
走行ロボットであって、
自己位置の測位を行うRTK1と、前記走行ロボットの先頭方向を認識するためのRTK2及びRTK3とから構成されたRTKモジュールであって、前記RTK2及びRTK3は前記RTK1とは前記先頭方向に対して後方にRTK1から等距離であり且つ前記RTK1上を通過する線分であり前記走行ロボットの前部中央と後部中央を結ぶ線分に対して線対象となる左右位置に配置された、前記RTKモジュールと、
少なくとも1つの到達目標地点が設定された設計図データを記録する手段と、
前記基地局を介した前記RTK1によるRTK測位結果に基づき自己位置判定を行う機構と、
前記基地局を介した前記RTK1及びRTK2及びRTK3によるRTK測位結果に基づき、前記RTK1の測位結果を前記走行ロボット本体の前方位置と見なした前記走行ロボット本体の先頭部の向きと進行方向を判定する機構と、
前記RTK1による前記RTK測位結果から前記設計図データをRTK座標に変換した前記到達目標地点との差異を認識して前記走行ロボットの走行方向及び走行距離を認識する機構と、
前記走行方向及び走行距離情報に基づき前記到達目標地点まで自動走行する機構と、
Lidarによる周辺障害物情報の3Dデータを収集する機構と、
を有する走行ロボットと、
を備え、
前記走行ロボットは、前記自己位置判定を行う機構により測位して得た自己位置のRTK座標と、前記設計図データ内に設定された現場基準点と到達目標地点のx座標、y座標間の距離をRTK上の距離に変換して得る到達目標地点のRTK座標の差から直線距離を計測し、前記Lidarによって前記走行ロボットの周辺を測位した結果得られる前記周辺障害物情報の前記3Dデータに対して、あらかじめ設定された判定基準に基づく走行可否判定を行った結果により前記直線距離上の走行不可地点を回避する迂回経路となる走行経路情報の自動作成を行い、前記走行経路情報は前記周辺障害物情報の3Dデータを収集する機構によって得た地面状況と当該地面状況に応じた予定走行速度情報を含み、
前記走行ロボットは、更に、前記走行経路情報に基づき自動走行する機構を有し、前記自動走行中は自己位置における走行速度を計算し、前記予定走行速度情報内の自己位置相当位置での予定走行速度との比較を行い、比較結果に基づき停止判断、迂回経路再作成判断を行いRTK測位された到達目標地点に到達することができることを特徴とする、ロボットシステム。
【請求項2】
前記設計図データには到達目標地点を複数定めることができ、到達目標地点が複数ある場合には最初の到達目標地点への到達後に、現場基準点と次の到達目標点のx座標、y座標間の距離をRTK上の距離に変換して得る直線距離をもとに前記Lidarによる前記周辺障害物情報の前記3Dデータの取得と走行不可地点を回避する走行経路の自動作成を行い、前記地面状況と前記予定走行速度情報に基づき前記次の到達目標地点へ自動走行することができる、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記ロボットシステムであって、RTK測位機構を有する他計測器具とRTK情報を共有することのできる、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記建設現場の屋外地面の走行に際しての衝撃を予測し自己の故障リスクを低減するサスペンション機構を有する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記あらかじめ設定された判定基準は、前記走行ロボットの走行機構で乗り越えられない重機走行跡や掘削土砂の凹凸、前記走行ロボット及びロボットシステムの水濡れによる故障の原因となる雨後の水たまり等の走行を妨げる場所は回避すべき場所とみなす判定基準とする、請求項1に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭芯位置の調査を自動化するRTK杭芯位置調査ロボットシステムおよび建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭工事における杭芯位置の確認は最重要項目であるが、基礎杭工事の熟練技術者による目測を要し、判断の属人化による位置確認誤りが起こりうる。高齢化に伴い熟練技術者が減少した場合、属人判断による誤りは更に増加が見込まれる。そのような問題を解決する一例として、自律走行ロボットを用いて自動化するシステムが期待されてきている。近年は、RTK(Real Time Kinematics)測位が普及し、衛星を利用して、数cm以内の誤差で杭芯位置の確認をすることも可能になっており、RTK測位システムを搭載した自走ロボットによって杭芯位置測位を行うことにより、従来手法の測位結果と比較し誤り検知、精度確認を行うことが可能となる。また、自走ロボットの導入により杭芯位置確認の省力化も図ることができる。
【0003】
本願の先行技術の一例として、以下のような特許文献が挙げられる。
【0004】
特許文献1では、基準点に光学式測量機をセットし、杭芯位置の墨出を行い、杭を打設する前に、GPS測量機により墨出位置の確認作業を行うシステムが提案されている。
【0005】
特許文献2では、杭を含む工事現場の画像をカメラを用いて複数枚撮影して、工事現場の三次元モデルを生成し、当該三次元モデル内から杭頭を検出して、検出された杭頭と、予め取得した設計情報との整合を判別するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-202357号公報
【特許文献2】特開2019-066242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的のひとつは、あらかじめ他の手法で決定され、現場にマーキングされた杭芯位置を示す仮杭に対して、設計値との誤差を調査するためのRTK杭芯位置調査ロボットシステムを提供することである。本発明による測定を従来手法による測定に先行して行う場合は、従来手法による測定に予め目安位置を与え、測定を省力化することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のRTK杭芯位置調査システムでは、RTK測位を変換したRTK座標を建設現場の設計図上の寸法、方向に合わせて変換する。この際、設計図上で建設現場の基準となるX軸及びY軸は東西南北の方位に従って決められるわけではないため、RTK測位の緯度経度情報から変換した東西南北座標を設計図上の座標として表すには、設計図上のX軸方向、Y軸方向に合わせて角度補正する必要がある。角度補正は、RTK測位結果のうちの角度補正の基準とする2点を設計図上の2点との差から補正角を求め、RTK取得結果全体を補正角を用いて回転することで行う。また、RTK取得結果は周辺環境やGNSS衛星の状況によって数cmの誤差が生じる場合があるため、角度補正に用いた2点の基準点を距離補正にも使用し、RTKの2点間距離と図面上の2点間距離を合わせることで、測定対象とする建設現場全体のRTK距離補正の基準値を得る。杭芯位置の調査においては、建設現場のx軸、y軸のゼロ位置となる1点とRTK取得結果との間の角度、距離を、先述の方法で導き出した補正角度を用いて回転し、基準距離との比率を用いて微調整を行い、ゼロ位置からのx軸、y軸それぞれのミリメートル座標値に変換する。現場にマーキングされた杭芯位置の誤差計測に際しては、本システムのRTK測位結果と比較し、直線距離、x軸、y軸各方向への距離の差を求める。距離の差は本システム上に記憶し、直線距離が許容誤差を超える場合は杭芯マーキング位置の再確認を促し、x軸、y軸方向の誤差表示と合わせ、施工精度是正のために用いる。RTK座標と杭芯位置の比較に際しては、専用マーカを被せた杭芯を3Dカメラで撮影し、画像認識による杭芯位置を検出してRTKが取得した杭芯座標との誤差を計算する。専用マーカは、土砂などにより変色する杭の検出を画像処理で高精度化するため、建設現場に特化した配色を用いる。
【0009】
専用マーカと本システムの画像認識は、建設現場内の任意位置の座標計測にも用いることができる。任意位置の計測に際しては、任意位置に設置した専用マーカの中心位置を画像認識により特定してRTK測位し、上述の角度補正、距離補正を行うことにより、任意位置の座x座標、y座標を設計図上のゼロ位置からの距離として取得する。
【0010】
本システムにより取得したRTK座標と設計図上のx軸、y軸座標及び杭芯マーキング位置との差異の距離はシステム内に記憶され、設計図画像上への座標描画や距離の一覧表形式など、任意の方法で閲覧することが可能である。
RTK杭芯位置調査システムを専用マーカーを中心とした誤差計測範囲内に自動的に到達、設置させるための手段として、次項の建設現場屋外自律走行ロボットに搭載する。
【0011】
建設現場屋外自律走行ロボットでは、建設現場図面データと図面データ内で指定された地点をRTK座標に変換したものを到達目標地点とし、ロボットは自機に搭載されたRTKモジュールで取得する自己位置のRTK座標と到達目標地点のRTK座標との距離を特定しながら、到達目標地点に向かい走行する。走行中、自機前方に搭載された3Dカメラにより地面状況の撮影と画像認識、走行可否の分類を行い、重機走行跡や掘削土砂などの凹凸、雨後の水たまり等の走行を妨げる場所は回避すべき場所として検知する。回避動作は低速走行によるスリップ防止、高速走行による凹凸の乗り潰し、方向転換による完全回避から、3Dカメラで取得した画像と事前に学習し回避動作別に分類された地点データとの突合により自動で選択、実行される。方向転換による回避を行う場合は、周囲をLiDAR(Light Detection And Ranging)と3Dカメラにより周囲状況を探査し、走行ルートを再設定する。
低速走行の対象:下り坂、走行及び内部機構に支障をきたさないぬかるみ
高速走行の対象:乗り越えられる角度・高さの土、敷き鉄板との段差
方向転換の対象:LiDARで反射の得られない箇所(水たまり、または大きな凹みと
みなす)、高速走行、低速走行対象のうち、各上限を超える場所
図面に無く設置された障害物
通常走行の対象:丈の短い草、高速走行、低速走行対象のうち、各下限を下回る場所
【0012】
本発明の一態様によると、建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステムであって、
RTK測位精度を提供する基地局と、
走行ロボットであって、
自己位置の測位を行うRTK1と、前記走行ロボットの先頭方向を認識するためのRTK2及びRTK3とから構成されたRTKモジュールであって、前記RTK2及びRTK3は前記RTK1とは前記先頭方向に対して後方にRTK1から等距離であり且つRTK1上を通過する線分であり前記走行ロボットの前部中央と後部中央を結ぶ線分に対して線対象となる左右位置に配置された、前記RTKモジュールと、
少なくとも1つの到達目標地点が設定された設計図データを記録する手段と、
前記基地局を介した前記RTK1によるRTK測位結果に基づき自己位置判定を行う機構と、
前記基地局を介した前記RTK2及びRTK3によるRTK測位結果に基づき前記走行ロボット本体の先頭部の向きと進行方向を判定する機構と、
前記RTK1による前記RTK測位結果から前記設計図データと前記到達目標地点の差異を認識するとともにRTK2及びRTK3による前記走行ロボットの正面方向を認識することにより前記走行ロボットの自己位置及び自己方向を起点とした走行方向を認識する機構と、
Lidarによる周辺障害物情報の3Dデータを収集する機構と、
を有する走行ロボットと、
を備え、
前記走行ロボットは、前記自己位置判定を行う機構により測位して得た自己位置のRTK座標と、前記設計図データ内に設定された現場基準点と到達目標地点のx座標、y座標間の距離をRTK上の距離に変換して得る到達目標地点のRTK座標の差から直線距離を計測し、前記Lidarによって前記走行ロボットの周辺を測位した結果得られる前記周辺障害物情報の前記3Dデータに対して、あらかじめ設定された判定基準に基づく走行可否判定を行った結果により前記直線距離上の走行不可地点を回避する迂回経路となる走行経路情報の自動作成を行い、前記走行経路情報は前記周辺障害物情報の3Dデータを収集する機構によって得た地面状況と当該地面状況に応じた予定走行速度情報を含み、
前記走行ロボットは、更に、前記走行経路情報に基づき自動走行する機構を有し、前記自動走行中は自己位置における走行速度を計算し、前記予定走行速度情報内の自己位置相当位置での予定走行速度との比較を行い、比較結果に基づき停止判断、迂回経路再作成判断を行いRTK測位された到達目標地点に到達することができることを特徴とする、ロボットシステムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のRTK測位システムは、建設現場において従来手法で得られた杭芯位置の精度確認と施工誤りの是正に有効である。また、本発明のRTK自律走行ロボットにより、作業員が専用マーカを用いて計測位置を示すだけで自動的な複数地点の測位が可能となり、作業効率の向上に有効となる。
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置調査ロボットシステムの構成をブロック図で示す。
図2図2は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムで使用するRTK杭芯位置調査システムの構成をブロック図で示す
図3図3は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムで使用するRTK基地局の構成をブロック図で示す。
図4図4は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理の一例を示す。
図5図5は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムで使用する杭芯位置検知用マーカの一例を示す。
図6図6は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムで使用する杭芯位置検知用マーカを検出するための情報処理の一例を示す。
図7図7は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムを本発明の一実施例によるRTK自律走行ロボットに搭載して運用する場合の構成例を示す。
図8図8は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の一例を示す。
図9図8は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の一例を示す。
図10図8は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の一例を示す。
図9A図9Aは、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の別の一例を示す。
図9B図9Bは、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の別の一例を示す。
図9C図9Cは、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の別の一例を示す。
図11図10は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの構成をブロック図で示す。
図12図11は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの情報処理の一例を示す。
図13図12は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの情報処理の一例を示す。
図14図13は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの走行経路判定処理の一例を示す。
図15図14は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの走行可否判定処理の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置調査ロボットシステム100の構成をブロック図で示す。
【0016】
本実施例のRTK杭芯位置調査ロボットシステム100は、RTK杭芯位置調査システム200、RTK基地局300、建設現場自律走行ロボット400を含む。
【0017】
RTK杭芯位置調査システム200は、RTK測位を活用して、杭芯位置を調査するシステムである。
【0018】
RTK基地局300は、RTK杭芯位置調査システムが杭芯位置のRTK測位を行うに際してのRTK測定精度を向上させる手段である。
【0019】
RTK基地局300のうち、RTK測位機能は有料サービスなどの既存の基地局に置き換えても良い。RTK測位機能を有料サービスに置き換える場合、RTK基地局300からRTKモジュール310が不要となる。
【0020】
建設現場自律走行ロボット400は、RTK測位と画像解析とセンサー情報を活用して建設現場屋外の地面を目的地に向けて自律走行するロボットである。
【0021】
図2は、本発明の一実施例によるシステムで使用するRTK杭芯位置調査システム200の構成をブロック図で示す。
【0022】
RTK杭芯位置調査ロボット200は、RTKモジュール210、RTKモジュール位置調整機構220、レーザ照射機構230、バッテリ240、3Dカメラ250、インターネット接続260から構成される。
【0023】
RTKモジュール210は、RTK測量を行うための手段である。
【0024】
RTKモジュール位置調整機構220は、RTKモジュール210を地面から垂直に保持する手段であり、RTKモジュールを水平に移動させる手段である。RTKモジュールがオペレータから与えられた座標に対して自律的に移動するため、RTKモジュール位置調整機構はRTKモジュールから与えられる水平方向の縦横移動距離情報に従ってRTKモジュールを到達目標地点まで移動させる。
【0025】
レーザマーカ照射機構230は、RTKモジュールの到達点から下向き垂直にレーザー光を照射し、RTKモジュールの示す到達地点を明示するための手段である。
【0026】
バッテリ240は、システム全体を動作させるためのエネルギーを供給する手段である。
【0027】
3Dカメラ250は、杭心などの計測対象地点に被せられた計測地点認識専用マーカを探査する手段である。
【0028】
インターネット接続260は、後述のRTK基地局300との間でインターネットを介したRTK補正情報の授受や、DBサーバ330との計測地点情報及び計測結果の送受信を行う手段である。
【0029】
図3は、本発明の一実施例によるシステムで使用するRTK基地局300の構成をブロック図で示す。
【0030】
RTK基地局300は、RTKモジュール310、ネット接続320、DBサーバ330、RTK座標変換・調整340、バッテリ350、から構成される。
【0031】
RTKモジュール310は、RTK測量を行うための手段である。
【0032】
ネット接続320は、インターネット接続するための手段である。
【0033】
DBサーバ330は、RTK杭芯調査システム200とRTK基地局300との間の接続の確立と維持を行い、計測基準点情報を共有させるための手段である。
【0034】
RTK座標変換・解析340は、RTK計測基準点情報の保持と、RTK測位結果を現場図面データ上にプロットするための角度及び縮尺補正値の算出及び保持と、3Dカメラ260などで撮像した計測地点認識専用マーカからの計測地点特定のための画像処理と、RTKモジュール210が特定したRTK測位対象位置と画像処理後の計測対象地点との距離計測および誤差解析を行う手段である。
【0035】
バッテリ350は、RTK基地局300全体を動作させるためのエネルギーを供給する手段である。
【0036】
図4は、本発明の一実施例によるシステムの情報処理の一例を示す。
【0037】
S4010では、基地局と無線ネットワーク環境を準備する。具体的には、機器のネットワーク接続を行う。また、RTK基地局設置を行う。RTK基地局の設置はRTK測位対象となる建設現場内が望ましいが、建設現場がビルなどの遮蔽物に囲まれRTK測位が難しい場合は、RTK基地局は概ね半径10km以内の見晴らしのいい地点に設置してもよい。なお、RTK基地局は、有料サービスなどの既存の基地局に置き換えても良い。
【0038】
S4020では、RTK測位を行う目標地点に目標位置登録専用マーカを設置する。具体的には、杭芯等の別手法で測位、設置された精度確認対象地点をRTK測位によって精度確認する場合は精度確認対象地点上に専用マーカを設置し、任意地点のRTK測位と設計図データ上への測位地点プロットのみを行う場合は、測位対象の地面上に専用マーカを設置する。
【0039】
S4030では、測位対象地点のRTK測位を行う。具体的には、杭芯位置調査システムに目標杭芯位置データを登録し、杭芯位置調査システム本体を専用マーカ上に設置し、調査開始指令を行い、測位対象地点のRTK測位を行う。測位対象地点と目標杭芯位置データの差異を測定する場合は、RTKモジュールは事前投入された目標杭芯位置データに従いRTK測位を行い、目標地点との差異をRTK座標からミリメートル情報に変換したXY平面上の移動指示情報としてRTK位置調整機構に伝達し、RTK位置調整機構は、伝達された移動指示情報に基づき、RTKモジュールを移動させる。任意地点のRTK測位を行う場合は、RTK杭芯位置調査システムを設置した位置から3Dカメラにより検出した専用マーカの中心位置の垂直上方に、RTK位置調整機構によりRTKモジュールを移動する。測位対象地点が複数ある場合は、複数の測位対象地点を登録のうえ、S4030のRTK測位を繰り返す。また、3Dカメラは専用マーカの検出に加えRTKモジュール到達地点の撮影を行い、検査位置写真として後述のレポートに出力するため記録する。
【0040】
S4040では、S4030で取得したRTK測位結果のうち2地点を、建設現場データと照合するための基準地点とし、角度補正及び距離補正を行う。
【0041】
S4050では、S4030で取得したRTK測位結果をS4040で算出した角度補正値により回転させ、距離補正比率を用いて縮尺調整を行う。
【0042】
S4060では、S4050で補正を行ったRTK測位結果を用いて、専用マーカ位置とRTK測位結果の差異を算出する。この際、設計図データのx、y座標開始位置をゼロ地点とし、目標地点とRTK取得結果の直線距離、x距離及びy距離の差異を算出する。任意地点の専用マーカ上のRTK測位を行う場合は、距離の差異算出は行わず、設計図データのx、y座標開始位置をゼロ地点とした、専用マーカ位置のx座標地点、y座標地点の算出のみを行う。目標杭芯位置データ全てに対してのS4060完了をもって杭芯位置確認は終了となる。具体的には、調査レポートを作成し、終了する。
【0043】
本発明の一実施例によるシステムの情報処理のデータ処理の一例を図8図9に示す。
【0044】
図5は、本発明の一実施例によるシステムで使用する杭芯位置検知用マーカの一例を示す。
【0045】
本実施例の専用マーカは、土砂などにより変色する杭芯の検出を画像処理で高精度化するため、建設現場に特化した配色を用いる。好ましくは、検知用マーカの形状は、傘状または円盤状である。好ましくは、外側を白地とし、中央に青色の塗り潰し。反射が少ない「艶なし」を使用。更に、中心部に覗き穴を設けて、杭または木杭の十字印を確認できるようにする。これにより、設置精度を確保することができる。まあ、外側の白地にはメモ書きを可能とする。
【0046】
図6は、本発明の一実施例によるシステムで使用する杭芯位置検知用マーカを検出するための情報処理の一例を示すものであり、S4060の情報処理の一部を詳細に示すものである。
【0047】
S7010では、特定の範囲の色(本実施例では、青色)を抽出する。
【0048】
S7020では、画像の平滑化を行う。
【0049】
S7030では、Canny法によりエッジを検出を行う。Cannyエッジ検出器は、画像の輪郭(エッジ)部分を検出するアルゴリズムである。ここで、Canny法とは、エッジ検出のためのアルゴリズムのひとつである。
【0050】
S7040では、領域抽出を行う。
【0051】
S7050では、最小外接円の検出を行う。
【0052】
図7は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムを本発明の一実施例によるRTK自律走行ロボットに搭載して運用する場合の構成例を示す。
【0053】
図8A、8B、8Cは、本発明の一実施例によるシステムの情報処理のデータ処理の一例を示す。本発明によるシステムの専用マーカ位置RTK測位では補正されたGNSS情報が取得され、RTK座標へ変換した後、建設現場の縮尺、補正角を与えることで建設現場設計図データ上にRTK測位結果が配置される。配置されたデータと杭芯位置を比較する場合は、設計図データ上に杭芯位置とRTK位置の各座標と距離の差が描画される。
【0054】
図9A図9B図9Cは、本発明の一実施例によるシステムの情報処理のデータ処理の別の一例を示す。RTK測位結果、杭芯位置座標、基準となる補正角及び縮尺はテキストデータとして入出力されるため、描画画面の構成は一様ではなく柔軟に設計可能である。
【0055】
図10は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの構成をブロック図で示す。
【0056】
建設現場自律走行ロボットは、RTKモジュール410、インターネット接続420、LiDAR430、経路解析440、サスペンション450、移動機構460から構成される。RTKモジュール410は、RTKによる自己位置及び到達目標地点を測位するための手段であり、自己位置の測位を行うRTK1と、ロボットの先頭方向を認識するためのRTK2及びRTK3で構成される。RTK2とRTK3はRTK1とは先頭方向に対して後方にRTK1から等距離となる左右位置に配置されており、RTK1と同時にRTK測位を行ってRTK1よりも目標地点のRTK座標から離れていれば、ロボット本体の先頭部は目標地点に向かっているとみなし、目標地点のRTK座標からRTK2、3が近ければロボット本体の先頭部は目標地点の逆方向を向いているとみなす。RTK2、RTK3によりロボット本体の進行方向を把握し、RTK1により目標地点との距離を測位して進行方向を定める。
【0057】
インターネット接続420は、前述のRTK基地局300との間でインターネットを介したRTK補正情報の授受を行う。
【0058】
LiDAR430は、ロボットシステム400の周辺の障害物情報をレーザー光によって収集する。LiDAR430に使用するセンサは、3Dカメラや3D-LiDARなどである。収集した障害物情報は、経路解析440によって走行ルート補正のために使用される。
【0059】
経路解析440は、RTKモジュール410によって取得されたRTK測位情報と、経路解析440によって取得された周辺障害物情報と、後述の移動機構460によって取得されたモータートルク情報を用いて、目標地点への走行ルート補正を行う。
【0060】
サスペンション450は、移動機構460による走行中の振動から上部に配置される各機構を保護して故障を防止するとともに、RTK410の測位を安定させる。
【0061】
なお、図7に示すRTK杭芯位置確認システムとRTK自律走行ロボットに搭載して運用する構成とする場合は、RTK杭芯位置確認システムに搭載するRTKモジュールがRTK自律走行ロボットのRTKモジュールのうち自己位置測位を行うRTK1の役割を兼ね、RTK1を省略することが可能である。
【0062】
図11は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの情報処理の一例を示す。
S11010では、基地局・ネットワーク環境準備をおこなう。
S11020では、ロボットシステム目標座標設定をおこなう。
S11030では、ロボットシステム初期位置決定をおこなう。
S11040では、ロボットシステム自律走行をおこなう。
【0063】
図12は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの情報処理の一例を示す。
【0064】
建設現場自律走行ロボットは作業員から走行指示を受けると、RTK自己位置測位S12010により自己位置のRTK測位を行い、設計図データから渡された専用マーカ座標をRTK変換した目標地点座標をもとに目標地点への直線距離での走行経路を決定する。
【0065】
S12020の周辺障害物サーチでは、LiDARによる周辺障害物情報の3Dデータ収集を行い、S12010のRTK自己位置測位で取得した走行経路周辺の走行不能場所の存在を明らかにする。
【0066】
S12030の経路・中継地点決定では、S12010で取得したRTK測位結果とS12020で取得した走行不能場所情報の3Dデータを重ね合わせ、目標地点座標への経路上に走行不能場所が存在する場合には、3Dデータと設計図データを重ね合わせたデータ上で迂回経路を決定する。迂回により目標地点がLiDAR到達範囲外となる場合には、LiDAR到達範囲内の走行可能場所に中継地点を定め、RTK座標に変換して次の移動先情報とする。これらの周辺障害物情報を用いた迂回経路設定には、別途収集した建設現場地面の画像情報、ロボットの走行にかかるモーター負荷情報を用いた事前学習データに基づく強化学習による自立判断を行ってもよい。
【0067】
S12040の走行、S12050の地面状態検知・ルート補正、S12060の走行は、S12070の目標地点到達に至るまで、周辺障害物情報の収集による迂回経路及び中継地点の決定を繰り返し行うことを示す。
【0068】
S12070の目標地点到達後、次の目標地点情報がある場合には次の目標地点情報をRTK変換した座標を目標地点として図12の情報処理を繰り返し行う。また、S12070の目標地点到達後にRTK杭芯調査システム200の杭芯位置測位処理が指定されている場合は、本情報処理は杭芯位置測位処理からの終了判断を受け取るまで待機した後、次の目標地点情報の有無の判断と本情報処理の継続に移行する。
【0069】
図13は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの走行経路判定処理の一例を示す。
【0070】
S13010の水たまり計測・迂回路マップ作製では、LiDARによる周辺照射を行った結果、反射が得られない箇所を水たまりその他走行に適さない地面状況と判断し、RTK目的地情報と設計図データを基にした迂回経路および中継地点情報の作成を行う。
【0071】
S13020の凹凸計測・速度調整マップ作製では、LiDARによる周辺照射結果のうち迂回経路として選定された経路上に存在する凹凸の情報を元に、自律走行ロボットが乗り越えるために必要なモータートルク数と想定される速度を算出する。算出に際しては、別途建設現場を同一の移動機構によって手動走行して得られたモータートルク数、速度情報を事前学習データとした強化学習によって算出を行ってもよい。
【0072】
図14は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの走行可否判定処理の一例を示す。
【0073】
S14010では、移動機構からクローラトルクを取得する。
【0074】
S14020では、S14010で取得したクローラトルクとロボット本体の加速度や傾き情報からロボット本体の走行速度を算出する。
【0075】
S14030の速度調整マップ読み込みでは、スリップなどの走行を妨げる地面状況でない場合に移動機構が出すべき走行速度を、走行経路上の各地点での走行速度情報として取得する。
【0076】
S14040の現在地予定速度取得では、S14030速度調整マップ読み込みで得た経路上の各地点での予定速度情報とRTKによって取得したロボット本体の自己位置とを対比し、経路上のロボット自己位置における予定速度を取得する。
【0077】
S14050の走行速度予実比較では、S14040現在地予定速度取得で取得したRTK自己位置における予定速度と、S14020で得たロボット本体の走行速度を比較する。
【0078】
S14060の停止・迂回判断では、S14050走行速度予実比較の結果から速度の予実差が移動機構の走行を妨げる閾値を超過するかどうかを判断し、閾値を超過した場合には停止及び迂回の判断を行う。
【0079】
S14070の周辺経路・中継地点決定では、S14071のRTK自己位置測位、S14072の周辺障害物サーチ、S14073の経路・中継地点決定として、S12010、S12020、S12030と同様の迂回経路・中継地点の決定を行う。図13におけるこれらの走行可否判定処理に際しては、別途建設現場を同一の移動機構によって手動走行して得られたモータートルク数、速度情報を事前学習データとした強化学習によって算出を行ってもよい。
【0080】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭芯位置の調査を自動化するRTK杭芯位置調査ロボットシステムおよび建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭工事における杭芯位置の確認は最重要項目であるが、基礎杭工事の熟練技術者による目測を要し、判断の属人化による位置確認誤りが起こりうる。高齢化に伴い熟練技術者が減少した場合、属人判断による誤りは更に増加が見込まれる。そのような問題を解決する一例として、自律走行ロボットを用いて自動化するシステムが期待されてきている。近年は、RTK(Real Time Kinematics)測位が普及し、衛星を利用して、数cm以内の誤差で杭芯位置の確認をすることも可能になっており、RTK測位システムを搭載した自走ロボットによって杭芯位置測位を行うことにより、従来手法の測位結果と比較し誤り検知、精度確認を行うことが可能となる。また、自走ロボットの導入により杭芯位置確認の省力化も図ることができる。
【0003】
本願の先行技術の一例として、以下のような特許文献が挙げられる。
【0004】
特許文献1では、基準点に光学式測量機をセットし、杭芯位置の墨出を行い、杭を打設する前に、GPS測量機により墨出位置の確認作業を行うシステムが提案されている。
【0005】
特許文献2では、杭を含む工事現場の画像をカメラを用いて複数枚撮影して、工事現場の三次元モデルを生成し、当該三次元モデル内から杭頭を検出して、検出された杭頭と、予め取得した設計情報との整合を判別するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-202357号公報
【特許文献2】特開2019-066242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的のひとつは、あらかじめ他の手法で決定され、現場にマーキングされた杭芯位置を示す仮杭に対して、設計値との誤差を調査するためのRTK杭芯位置調査ロボットシステムを提供することである。本発明による測定を従来手法による測定に先行して行う場合は、従来手法による測定に予め目安位置を与え、測定を省力化することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のRTK杭芯位置調査システムでは、RTK測位を変換したRTK座標を建設現場の設計図上の寸法、方向に合わせて変換する。この際、設計図上で建設現場の基準となるX軸及びY軸は東西南北の方位に従って決められるわけではないため、RTK測位の緯度経度情報から変換した東西南北座標を設計図上の座標として表すには、設計図上のX軸方向、Y軸方向に合わせて角度補正する必要がある。角度補正は、RTK測位結果のうちの角度補正の基準とする2点を設計図上の2点との差から補正角を求め、RTK取得結果全体を補正角を用いて回転することで行う。また、RTK取得結果は周辺環境やGNSS衛星の状況によって数cmの誤差が生じる場合があるため、角度補正に用いた2点の基準点を距離補正にも使用し、RTKの2点間距離と図面上の2点間距離を合わせることで、測定対象とする建設現場全体のRTK距離補正の基準値を得る。杭芯位置の調査においては、建設現場のx軸、y軸のゼロ位置となる1点とRTK取得結果との間の角度、距離を、先述の方法で導き出した補正角度を用いて回転し、基準距離との比率を用いて微調整を行い、ゼロ位置からのx軸、y軸それぞれのミリメートル座標値に変換する。現場にマーキングされた杭芯位置の誤差計測に際しては、本システムのRTK測位結果と比較し、直線距離、x軸、y軸各方向への距離の差を求める。距離の差は本システム上に記憶し、直線距離が許容誤差を超える場合は杭芯マーキング位置の再確認を促し、x軸、y軸方向の誤差表示と合わせ、施工精度是正のために用いる。RTK座標と杭芯位置の比較に際しては、専用マーカを被せた杭芯を3Dカメラで撮影し、画像認識による杭芯位置を検出してRTKが取得した杭芯座標との誤差を計算する。専用マーカは、土砂などにより変色する杭の検出を画像処理で高精度化するため、建設現場に特化した配色を用いる。
【0009】
専用マーカと本システムの画像認識は、建設現場内の任意位置の座標計測にも用いることができる。任意位置の計測に際しては、任意位置に設置した専用マーカの中心位置を画像認識により特定してRTK測位し、上述の角度補正、距離補正を行うことにより、任意位置の座x座標、y座標を設計図上のゼロ位置からの距離として取得する。
【0010】
本システムにより取得したRTK座標と設計図上のx軸、y軸座標及び杭芯マーキング位置との差異の距離はシステム内に記憶され、設計図画像上への座標描画や距離の一覧表形式など、任意の方法で閲覧することが可能である。
RTK杭芯位置調査システムを専用マーカーを中心とした誤差計測範囲内に自動的に到達、設置させるための手段として、次項の建設現場屋外自律走行ロボットに搭載する。
【0011】
建設現場屋外自律走行ロボットでは、建設現場図面データと図面データ内で指定された地点をRTK座標に変換したものを到達目標地点とし、ロボットは自機に搭載されたRTKモジュールで取得する自己位置のRTK座標と到達目標地点のRTK座標との距離を特定しながら、到達目標地点に向かい走行する。走行中、自機前方に搭載された3Dカメラにより地面状況の撮影と画像認識、走行可否の分類を行い、重機走行跡や掘削土砂などの凹凸、雨後の水たまり等の走行を妨げる場所は回避すべき場所として検知する。回避動作は低速走行によるスリップ防止、高速走行による凹凸の乗り潰し、方向転換による完全回避から、3Dカメラで取得した画像と事前に学習し回避動作別に分類された地点データとの突合により自動で選択、実行される。方向転換による回避を行う場合は、周囲をLiDAR(Light Detection And Ranging)と3Dカメラにより周囲状況を探査し、走行ルートを再設定する。
低速走行の対象:下り坂、走行及び内部機構に支障をきたさないぬかるみ
高速走行の対象:乗り越えられる角度・高さの土、敷き鉄板との段差
方向転換の対象:LiDARで反射の得られない箇所(水たまり、または大きな凹みと
みなす)、高速走行、低速走行対象のうち、各上限を超える場所
図面に無く設置された障害物
通常走行の対象:丈の短い草、高速走行、低速走行対象のうち、各下限を下回る場所
【0012】
本発明の一態様によると、建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステムであって、
RTK測位精度を提供する基地局と、
走行ロボットであって、
自己位置の測位を行うRTK1と、前記走行ロボットの先頭方向を認識するためのRTK2及びRTK3とから構成されたRTKモジュールであって、前記RTK2及びRTK3は前記RTK1とは前記先頭方向に対して後方にRTK1から等距離であり且つRTK1上を通過する線分であり前記走行ロボットの前部中央と後部中央を結ぶ線分に対して線対象となる左右位置に配置された、前記RTKモジュールと、
少なくとも1つの到達目標地点が設定された設計図データを記録する手段と、
前記基地局を介した前記RTK1によるRTK測位結果に基づき自己位置判定を行う機構と、
前記基地局を介した前記RTK2及びRTK3によるRTK測位結果に基づき前記走行ロボット本体の先頭部の向きと進行方向を判定する機構と、
前記RTK1による前記RTK測位結果から前記設計図データと前記到達目標地点の差異を認識するとともにRTK2及びRTK3による前記走行ロボットの正面方向を認識することにより前記走行ロボットの自己位置及び自己方向を起点とした走行方向を認識する機構と、
Lidarによる周辺障害物情報の3Dデータを収集する機構と、
を有する走行ロボットと、
を備え、
前記走行ロボットは、前記自己位置判定を行う機構により測位して得た自己位置のRTK座標と、前記設計図データ内に設定された現場基準点と到達目標地点のx座標、y座標間の距離をRTK上の距離に変換して得る到達目標地点のRTK座標の差から直線距離を計測し、前記Lidarによって前記走行ロボットの周辺を測位した結果得られる前記周辺障害物情報の前記3Dデータに対して、あらかじめ設定された判定基準に基づく走行可否判定を行った結果により前記直線距離上の走行不可地点を回避する迂回経路となる走行経路情報の自動作成を行い、前記走行経路情報は前記周辺障害物情報の3Dデータを収集する機構によって得た地面状況と当該地面状況に応じた予定走行速度情報を含み、
前記走行ロボットは、更に、前記走行経路情報に基づき自動走行する機構を有し、前記自動走行中は自己位置における走行速度を計算し、前記予定走行速度情報内の自己位置相当位置での予定走行速度との比較を行い、比較結果に基づき停止判断、迂回経路再作成判断を行いRTK測位された到達目標地点に到達することができることを特徴とする、ロボットシステムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のRTK測位システムは、建設現場において従来手法で得られた杭芯位置の精度確認と施工誤りの是正に有効である。また、本発明のRTK自律走行ロボットにより、作業員が専用マーカを用いて計測位置を示すだけで自動的な複数地点の測位が可能となり、作業効率の向上に有効となる。
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置調査ロボットシステムの構成をブロック図で示す。
図2図2は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムで使用するRTK杭芯位置調査システムの構成をブロック図で示す
図3図3は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムで使用するRTK基地局の構成をブロック図で示す。
図4図4は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理の一例を示す。
図5図5は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムで使用する杭芯位置検知用マーカの一例を示す。
図6図6は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムで使用する杭芯位置検知用マーカを検出するための情報処理の一例を示す。
図7図7は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムを本発明の一実施例によるRTK自律走行ロボットに搭載して運用する場合の構成例を示す。
図8A図8Aは、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の一例を示す。
図8B図8Bは、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の一例を示す。
図8C図8Cは、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の一例を示す。
図9A図9Aは、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の別の一例を示す。
図9B図9Bは、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の別の一例を示す。
図9C図9Cは、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムの情報処理のデータ処理の別の一例を示す。
図10図10は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの構成をブロック図で示す。
図11図11は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの情報処理の一例を示す。
図12図12は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの情報処理の一例を示す。
図13図13は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの走行経路判定処理の一例を示す。
図14図14は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの走行可否判定処理の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置調査ロボットシステム100の構成をブロック図で示す。
【0016】
本実施例のRTK杭芯位置調査ロボットシステム100は、RTK杭芯位置調査システム200、RTK基地局300、建設現場自律走行ロボット400を含む。
【0017】
RTK杭芯位置調査システム200は、RTK測位を活用して、杭芯位置を調査するシステムである。
【0018】
RTK基地局300は、RTK杭芯位置調査システムが杭芯位置のRTK測位を行うに際してのRTK測定精度を向上させる手段である。
【0019】
RTK基地局300のうち、RTK測位機能は有料サービスなどの既存の基地局に置き換えても良い。RTK測位機能を有料サービスに置き換える場合、RTK基地局300からRTKモジュール310が不要となる。
【0020】
建設現場自律走行ロボット400は、RTK測位と画像解析とセンサー情報を活用して建設現場屋外の地面を目的地に向けて自律走行するロボットである。
【0021】
図2は、本発明の一実施例によるシステムで使用するRTK杭芯位置調査システム200の構成をブロック図で示す。
【0022】
RTK杭芯位置調査ロボット200は、RTKモジュール210、RTKモジュール位置調整機構220、レーザ照射機構230、バッテリ240、3Dカメラ250、インターネット接続260から構成される。
【0023】
RTKモジュール210は、RTK測量を行うための手段である。
【0024】
RTKモジュール位置調整機構220は、RTKモジュール210を地面から垂直に保持する手段であり、RTKモジュールを水平に移動させる手段である。RTKモジュールがオペレータから与えられた座標に対して自律的に移動するため、RTKモジュール位置調整機構はRTKモジュールから与えられる水平方向の縦横移動距離情報に従ってRTKモジュールを到達目標地点まで移動させる。
【0025】
レーザマーカ照射機構230は、RTKモジュールの到達点から下向き垂直にレーザー光を照射し、RTKモジュールの示す到達地点を明示するための手段である。
【0026】
バッテリ240は、システム全体を動作させるためのエネルギーを供給する手段である。
【0027】
3Dカメラ250は、杭心などの計測対象地点に被せられた計測地点認識専用マーカを探査する手段である。
【0028】
インターネット接続260は、後述のRTK基地局300との間でインターネットを介したRTK補正情報の授受や、DBサーバ330との計測地点情報及び計測結果の送受信を行う手段である。
【0029】
図3は、本発明の一実施例によるシステムで使用するRTK基地局300の構成をブロック図で示す。
【0030】
RTK基地局300は、RTKモジュール310、ネット接続320、DBサーバ330、RTK座標変換・調整340、バッテリ350、から構成される。
【0031】
RTKモジュール310は、RTK測量を行うための手段である。
【0032】
ネット接続320は、インターネット接続するための手段である。
【0033】
DBサーバ330は、RTK杭芯調査システム200とRTK基地局300との間の接続の確立と維持を行い、計測基準点情報を共有させるための手段である。
【0034】
RTK座標変換・解析340は、RTK計測基準点情報の保持と、RTK測位結果を現場図面データ上にプロットするための角度及び縮尺補正値の算出及び保持と、3Dカメラ260などで撮像した計測地点認識専用マーカからの計測地点特定のための画像処理と、RTKモジュール210が特定したRTK測位対象位置と画像処理後の計測対象地点との距離計測および誤差解析を行う手段である。
【0035】
バッテリ350は、RTK基地局300全体を動作させるためのエネルギーを供給する手段である。
【0036】
図4は、本発明の一実施例によるシステムの情報処理の一例を示す。
【0037】
S4010では、基地局と無線ネットワーク環境を準備する。具体的には、機器のネットワーク接続を行う。また、RTK基地局設置を行う。RTK基地局の設置はRTK測位対象となる建設現場内が望ましいが、建設現場がビルなどの遮蔽物に囲まれRTK測位が難しい場合は、RTK基地局は概ね半径10km以内の見晴らしのいい地点に設置してもよい。なお、RTK基地局は、有料サービスなどの既存の基地局に置き換えても良い。
【0038】
S4020では、RTK測位を行う目標地点に目標位置登録専用マーカを設置する。具体的には、杭芯等の別手法で測位、設置された精度確認対象地点をRTK測位によって精度確認する場合は精度確認対象地点上に専用マーカを設置し、任意地点のRTK測位と設計図データ上への測位地点プロットのみを行う場合は、測位対象の地面上に専用マーカを設置する。
【0039】
S4030では、測位対象地点のRTK測位を行う。具体的には、杭芯位置調査システムに目標杭芯位置データを登録し、杭芯位置調査システム本体を専用マーカ上に設置し、調査開始指令を行い、測位対象地点のRTK測位を行う。測位対象地点と目標杭芯位置データの差異を測定する場合は、RTKモジュールは事前投入された目標杭芯位置データに従いRTK測位を行い、目標地点との差異をRTK座標からミリメートル情報に変換したXY平面上の移動指示情報としてRTK位置調整機構に伝達し、RTK位置調整機構は、伝達された移動指示情報に基づき、RTKモジュールを移動させる。任意地点のRTK測位を行う場合は、RTK杭芯位置調査システムを設置した位置から3Dカメラにより検出した専用マーカの中心位置の垂直上方に、RTK位置調整機構によりRTKモジュールを移動する。測位対象地点が複数ある場合は、複数の測位対象地点を登録のうえ、S4030のRTK測位を繰り返す。また、3Dカメラは専用マーカの検出に加えRTKモジュール到達地点の撮影を行い、検査位置写真として後述のレポートに出力するため記録する。
【0040】
S4040では、S4030で取得したRTK測位結果のうち2地点を、建設現場データと照合するための基準地点とし、角度補正及び距離補正を行う。
【0041】
S4050では、S4030で取得したRTK測位結果をS4040で算出した角度補正値により回転させ、距離補正比率を用いて縮尺調整を行う。
【0042】
S4060では、S4050で補正を行ったRTK測位結果を用いて、専用マーカ位置とRTK測位結果の差異を算出する。この際、設計図データのx、y座標開始位置をゼロ地点とし、目標地点とRTK取得結果の直線距離、x距離及びy距離の差異を算出する。任意地点の専用マーカ上のRTK測位を行う場合は、距離の差異算出は行わず、設計図データのx、y座標開始位置をゼロ地点とした、専用マーカ位置のx座標地点、y座標地点の算出のみを行う。目標杭芯位置データ全てに対してのS4060完了をもって杭芯位置確認は終了となる。具体的には、調査レポートを作成し、終了する。
【0043】
本発明の一実施例によるシステムの情報処理のデータ処理の一例を図8図9に示す。
【0044】
図5は、本発明の一実施例によるシステムで使用する杭芯位置検知用マーカの一例を示す。
【0045】
本実施例の専用マーカは、土砂などにより変色する杭芯の検出を画像処理で高精度化するため、建設現場に特化した配色を用いる。好ましくは、検知用マーカの形状は、傘状または円盤状である。好ましくは、外側を白地とし、中央に青色の塗り潰し。反射が少ない「艶なし」を使用。更に、中心部に覗き穴を設けて、杭または木杭の十字印を確認できるようにする。これにより、設置精度を確保することができる。まあ、外側の白地にはメモ書きを可能とする。
【0046】
図6は、本発明の一実施例によるシステムで使用する杭芯位置検知用マーカを検出するための情報処理の一例を示すものであり、S4060の情報処理の一部を詳細に示すものである。
【0047】
S7010では、特定の範囲の色(本実施例では、青色)を抽出する。
【0048】
S7020では、画像の平滑化を行う。
【0049】
S7030では、Canny法によりエッジを検出を行う。Cannyエッジ検出器は、画像の輪郭(エッジ)部分を検出するアルゴリズムである。ここで、Canny法とは、エッジ検出のためのアルゴリズムのひとつである。
【0050】
S7040では、領域抽出を行う。
【0051】
S7050では、最小外接円の検出を行う。
【0052】
図7は、本発明の一実施例によるRTK杭芯位置確認システムを本発明の一実施例によるRTK自律走行ロボットに搭載して運用する場合の構成例を示す。
【0053】
図8A、8B、8Cは、本発明の一実施例によるシステムの情報処理のデータ処理の一例を示す。本発明によるシステムの専用マーカ位置RTK測位では補正されたGNSS情報が取得され、RTK座標へ変換した後、建設現場の縮尺、補正角を与えることで建設現場設計図データ上にRTK測位結果が配置される。配置されたデータと杭芯位置を比較する場合は、設計図データ上に杭芯位置とRTK位置の各座標と距離の差が描画される。
【0054】
図9A図9B図9Cは、本発明の一実施例によるシステムの情報処理のデータ処理の別の一例を示す。RTK測位結果、杭芯位置座標、基準となる補正角及び縮尺はテキストデータとして入出力されるため、描画画面の構成は一様ではなく柔軟に設計可能である。
【0055】
図10は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの構成をブロック図で示す。
【0056】
建設現場自律走行ロボットは、RTKモジュール410、インターネット接続420、LiDAR430、経路解析440、サスペンション450、移動機構460から構成される。RTKモジュール410は、RTKによる自己位置及び到達目標地点を測位するための手段であり、自己位置の測位を行うRTK1と、ロボットの先頭方向を認識するためのRTK2及びRTK3で構成される。RTK2とRTK3はRTK1とは先頭方向に対して後方にRTK1から等距離となる左右位置に配置されており、RTK1と同時にRTK測位を行ってRTK1よりも目標地点のRTK座標から離れていれば、ロボット本体の先頭部は目標地点に向かっているとみなし、目標地点のRTK座標からRTK2、3が近ければロボット本体の先頭部は目標地点の逆方向を向いているとみなす。RTK2、RTK3によりロボット本体の進行方向を把握し、RTK1により目標地点との距離を測位して進行方向を定める。
【0057】
インターネット接続420は、前述のRTK基地局300との間でインターネットを介したRTK補正情報の授受を行う。
【0058】
LiDAR430は、ロボットシステム400の周辺の障害物情報をレーザー光によって収集する。LiDAR430に使用するセンサは、3Dカメラや3D-LiDARなどである。収集した障害物情報は、経路解析440によって走行ルート補正のために使用される。
【0059】
経路解析440は、RTKモジュール410によって取得されたRTK測位情報と、経路解析440によって取得された周辺障害物情報と、後述の移動機構460によって取得されたモータートルク情報を用いて、目標地点への走行ルート補正を行う。
【0060】
サスペンション450は、移動機構460による走行中の振動から上部に配置される各機構を保護して故障を防止するとともに、RTK410の測位を安定させる。
【0061】
なお、図7に示すRTK杭芯位置確認システムとRTK自律走行ロボットに搭載して運用する構成とする場合は、RTK杭芯位置確認システムに搭載するRTKモジュールがRTK自律走行ロボットのRTKモジュールのうち自己位置測位を行うRTK1の役割を兼ね、RTK1を省略することが可能である。
【0062】
図11は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの情報処理の一例を示す。
S11010では、基地局・ネットワーク環境準備をおこなう。
S11020では、ロボットシステム目標座標設定をおこなう。
S11030では、ロボットシステム初期位置決定をおこなう。
S11040では、ロボットシステム自律走行をおこなう。
【0063】
図12は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの情報処理の一例を示す。
【0064】
建設現場自律走行ロボットは作業員から走行指示を受けると、RTK自己位置測位S12010により自己位置のRTK測位を行い、設計図データから渡された専用マーカ座標をRTK変換した目標地点座標をもとに目標地点への直線距離での走行経路を決定する。
【0065】
S12020の周辺障害物サーチでは、LiDARによる周辺障害物情報の3Dデータ収集を行い、S12010のRTK自己位置測位で取得した走行経路周辺の走行不能場所の存在を明らかにする。
【0066】
S12030の経路・中継地点決定では、S12010で取得したRTK測位結果とS12020で取得した走行不能場所情報の3Dデータを重ね合わせ、目標地点座標への経路上に走行不能場所が存在する場合には、3Dデータと設計図データを重ね合わせたデータ上で迂回経路を決定する。迂回により目標地点がLiDAR到達範囲外となる場合には、LiDAR到達範囲内の走行可能場所に中継地点を定め、RTK座標に変換して次の移動先情報とする。これらの周辺障害物情報を用いた迂回経路設定には、別途収集した建設現場地面の画像情報、ロボットの走行にかかるモーター負荷情報を用いた事前学習データに基づく強化学習による自立判断を行ってもよい。
【0067】
S12040の走行、S12050の地面状態検知・ルート補正、S12060の走行は、S12070の目標地点到達に至るまで、周辺障害物情報の収集による迂回経路及び中継地点の決定を繰り返し行うことを示す。
【0068】
S12070の目標地点到達後、次の目標地点情報がある場合には次の目標地点情報をRTK変換した座標を目標地点として図12の情報処理を繰り返し行う。また、S12070の目標地点到達後にRTK杭芯調査システム200の杭芯位置測位処理が指定されている場合は、本情報処理は杭芯位置測位処理からの終了判断を受け取るまで待機した後、次の目標地点情報の有無の判断と本情報処理の継続に移行する。
【0069】
図13は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの走行経路判定処理の一例を示す。
【0070】
S13010の水たまり計測・迂回路マップ作製では、LiDARによる周辺照射を行った結果、反射が得られない箇所を水たまりその他走行に適さない地面状況と判断し、RTK目的地情報と設計図データを基にした迂回経路および中継地点情報の作成を行う。
【0071】
S13020の凹凸計測・速度調整マップ作製では、LiDARによる周辺照射結果のうち迂回経路として選定された経路上に存在する凹凸の情報を元に、自律走行ロボットが乗り越えるために必要なモータートルク数と想定される速度を算出する。算出に際しては、別途建設現場を同一の移動機構によって手動走行して得られたモータートルク数、速度情報を事前学習データとした強化学習によって算出を行ってもよい。
【0072】
図14は、本発明の一実施例による建設現場自律走行ロボットの走行可否判定処理の一例を示す。
【0073】
S14010では、移動機構からクローラトルクを取得する。
【0074】
S14020では、S14010で取得したクローラトルクとロボット本体の加速度や傾き情報からロボット本体の走行速度を算出する。
【0075】
S14030の速度調整マップ読み込みでは、スリップなどの走行を妨げる地面状況でない場合に移動機構が出すべき走行速度を、走行経路上の各地点での走行速度情報として取得する。
【0076】
S14040の現在地予定速度取得では、S14030速度調整マップ読み込みで得た経路上の各地点での予定速度情報とRTKによって取得したロボット本体の自己位置とを対比し、経路上のロボット自己位置における予定速度を取得する。
【0077】
S14050の走行速度予実比較では、S14040現在地予定速度取得で取得したRTK自己位置における予定速度と、S14020で得たロボット本体の走行速度を比較する。
【0078】
S14060の停止・迂回判断では、S14050走行速度予実比較の結果から速度の予実差が移動機構の走行を妨げる閾値を超過するかどうかを判断し、閾値を超過した場合には停止及び迂回の判断を行う。
【0079】
S14070の周辺経路・中継地点決定では、S14071のRTK自己位置測位、S14072の周辺障害物サーチ、S14073の経路・中継地点決定として、S12010、S12020、S12030と同様の迂回経路・中継地点の決定を行う。図13におけるこれらの走行可否判定処理に際しては、別途建設現場を同一の移動機構によって手動走行して得られたモータートルク数、速度情報を事前学習データとした強化学習によって算出を行ってもよい。
【0080】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場の屋外地面を走行するためのロボットシステムであって、
RTK測位精度を提供する基地局と、
走行ロボットであって、
自己位置の測位を行うRTK1と、前記走行ロボットの先頭方向を認識するためのRTK2及びRTK3とから構成されたRTKモジュールであって、前記RTK2及びRTK3は前記RTK1とは前記先頭方向に対して後方にRTK1から等距離であり且つ前記RTK1上を通過する線分であり前記走行ロボットの前部中央と後部中央を結ぶ線分に対して線対象となる左右位置に配置された、前記RTKモジュールと、
少なくとも1つの到達目標地点が設定された設計図データを記録する手段と、
前記基地局を介した前記RTK1によるRTK測位結果に基づき自己位置判定を行う機構と、
前記基地局を介した前記RTK1及びRTK2及びRTK3によるRTK測位結果に基づき、前記RTK1の測位結果を前記走行ロボット本体の前方位置と見なした前記走行ロボット本体の先頭部の向きと進行方向を判定する機構と、
前記RTK1による前記RTK測位結果から前記設計図データをRTK座標に変換した前記到達目標地点との差異を計算して前記走行ロボットの走行方向及び走行距離を決定する機構であって、前記設計図データ内で指定された地点をRTK座標に変換して到達目標地点とするとともに、予めRTK測位により得られた基準点2点のRTK座標から、平面直角座標系のRTK座標へ変換したのち、東西南北座標を前記設計図データのそれぞれx軸とy軸方向に基づいて変換して得る角度補正値、そして距離を設計図データ上の基準点2点間の距離とを比較して得る距離補正比率を導き、前記角度補正値及び距離補正比率を用いて、前記到達目標地点のRTK座標を補正して前記走行ロボットの走行方向及び走行距離を決定する機構と、
前記走行方向及び走行距離情報に基づき前記到達目標地点まで自動走行する機構と、
Lidarによる周辺障害物情報の3Dデータを収集する機構と、
を有する走行ロボットと、
を備え、
前記走行ロボットは、前記自己位置判定を行う機構により測位して得た自己位置のRTK座標と、前記到達目標地点の補正されたRTK座標の差から直線距離を計測し、前記Lidarによって前記走行ロボットの周辺を測位した結果得られる前記周辺障害物情報の前記3Dデータに対して、あらかじめ設定された判定基準に基づく走行可否判定を行った結果により前記直線距離上の走行不可地点を回避する迂回経路となる走行経路情報の自動作成を行い、前記走行経路情報は前記周辺障害物情報の3Dデータを収集する機構によって得た地面状況と当該地面状況に応じた予定走行速度情報を含み、
前記走行ロボットは、更に、前記走行経路情報に基づき自動走行する機構を有し、前記自動走行中は自己位置における走行速度を計算し、前記予定走行速度情報内の自己位置相当位置での予定走行速度との比較を行い、比較結果に基づき停止判断、迂回経路再作成判断を行い前記到達目標地点に到達することができることを特徴とする、ロボットシステム。
【請求項2】
前記設計図データには到達目標地点を複数定めることができ、到達目標地点が複数ある場合には最初の到達目標地点への到達後に、次の到達目標のRTK座標をもとに前記Lidarによる前記周辺障害物情報の前記3Dデータの取得と走行不可地点を回避する走行経路の自動作成を行い、前記地面状況と前記予定走行速度情報に基づき前記次の到達目標地点へ自動走行することができる、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記ロボットシステムであって、RTK測位機構を有する他計測器具とRTK情報を共有することのできる、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記建設現場の屋外地面の走行に際しての衝撃を予測し自己の故障リスクを低減するサスペンション機構を有する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記あらかじめ設定された判定基準は、前記走行ロボットの走行機構で乗り越えられない重機走行跡や掘削土砂の凹凸、前記走行ロボット及びロボットシステムの水濡れによる故障の原因となる雨後の水たまり等の走行を妨げる場所は回避すべき場所とみなす判定基準とする、請求項1に記載のロボットシステム。