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▶ 南亞塑膠工業股▲分▼有限公司の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046576
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】粉末組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20240327BHJP
   C01F 7/021 20220101ALI20240327BHJP
【FI】
C01B21/064 Z
C01F7/021
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006909
(22)【出願日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】111135985
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
(72)【発明者】
【氏名】劉 家霖
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB02
4G076BA37
4G076BC08
4G076CA02
4G076DA02
(57)【要約】
【課題】無機充填剤は、樹脂および銅箔との結合性をしばしば欠くため、吸水不良、基板の剥離強度不良などの問題が発生しやすく、それによって、基板の安定性および信頼性が低下する。
【解決手段】
第1の粉末と第2の粉末と修飾官能基とを含む粉末組成物を提供する。第1の粉末の粒径範囲は、1ミクロン~100ミクロンである。第2の粉末および修飾官能基は、第1の粉末上で修飾される。第2の粉末の粒径範囲は、10ナノメートル~1ミクロンである。また、粉末組成物の製造方法をも提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径範囲は1ミクロン~100ミクロンである第1の粉末と、
前記第1の粉末上で修飾され、粒径範囲は10ナノメートル~1ミクロンである第2の粉末と、
前記第1の粉末上で修飾された修飾官能基と、
を備える、粉末組成物。
【請求項2】
前記修飾官能基は、ビニル基、アクリル基、エポキシ基もしくは無水マレイン酸、アミン基またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
前記第1の粉末は、セラミック粒子、金属粒子またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項4】
前記セラミック粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムまたはそれらの組み合わせを備え、前記金属粒子は、銅、アルミニウム、チタン、インジウムまたはそれらの組み合わせを備える、請求項3に記載の粉末組成物。
【請求項5】
前記第2の粉末は、セラミック粒子、金属粒子またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項6】
前記セラミック粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムまたはそれらの組み合わせを備え、前記金属粒子は、銅、アルミニウム、チタン、インジウムまたはそれらの組み合わせを備える、請求項5に記載の粉末組成物。
【請求項7】
第1の粉末を準備することと、
第2の粉末と修飾官能基とを前記第1の粉末上で修飾することと、
を含む、粉末組成物の製造方法。
【請求項8】
前記修飾後に高温真空焼結を行うことをさらに含む、請求項7に記載の粉末組成物の製造方法。
【請求項9】
前記修飾官能基を有する化合物を前記第1の粉末に化学気相成長法、化学修飾法または物理的混合法によって結合させることをさらに含む、請求項7に記載の粉末組成物の製造方法。
【請求項10】
前記化合物は、シロキサンカップリング剤である、請求項9に記載の粉末組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物およびその製造方法に関し、より詳細には、粉末組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、第5世代(5G)エレクトロニクスの分野では、出力および周波数の増大のため、低誘電損失、高放熱性および良好な剥離強度を有する新しい形態の基板が求められる。さらに、基板材料において、無機充填剤は、しばしば使用される。無機充填剤は、樹脂および銅箔との結合性をしばしば欠くため、吸水不良、基板の剥離強度不良などの問題が発生しやすく、それによって、基板の安定性および信頼性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
無機充填剤は、樹脂および銅箔との結合性をしばしば欠くため、吸水不良、基板の剥離強度不良などの問題が発生しやすく、それによって、基板の安定性および信頼性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、粉末組成物およびその製造方法を提供する。これによって、粉末組成物によって製造される基板の安定性および信頼性を効果的に向上させ得る。
【0005】
本発明の粉末組成物は、第1の粉末と、第2の粉末と、修飾官能基とを含む。第1の粉末の粒径範囲は、1ミクロン~100ミクロンである。第2の粉末および修飾官能基は、第1の粉末上で修飾される。第2の粉末の粒径範囲は、10ナノメートル~1ミクロンである。
【0006】
本発明の一実施形態では、上記修飾官能基は、ビニル基、アクリル基、エポキシ基もしくは無水マレイン酸、アミン基またはそれらの組合せを含む。
【0007】
本発明の一実施形態では、上記第1の粉末は、セラミック粒子、金属粒子またはそれらの組み合わせを含む。
【0008】
本発明の一実施形態では、上記セラミック粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムまたはそれらの組み合わせを含み、金属粒子は、銅、アルミニウム、チタン、インジウムまたはそれらの組み合わせを含む。
【0009】
本発明の一実施形態では、上記第2の粉末は、セラミック粒子、金属粒子またはそれらの組み合わせを含む。
【0010】
本発明の一実施形態では、上記セラミック粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムまたはそれらの組み合わせを含み、金属粒子は、銅、アルミニウム、チタン、インジウムまたはそれらの組み合わせを含む。
【0011】
本発明の粉末組成物の製造方法は、少なくとも次のステップを含む。第1の粉末を準備すること、第2の粉末および修飾官能基を第1の粉末上で修飾することである。
【0012】
本発明の一実施形態では、上記修飾の後、高温真空焼結を行うことをさらに含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、上記粉末組成物の製造方法は、化学気相成長法、化学修飾法または物理的混合法によって、修飾官能基を有する化合物を第1の粉末に結合させることをさらに含む。
【0014】
本発明の一実施形態では、上記化合物は、シロキサンカップリング剤である。
【発明の効果】
【0015】
第2の粉末および修飾官能基が第1の粉末上で修飾され、第2の粉末の粒径範囲(10ナノメートル~1ミクロン)が第1の粉末の粒径範囲(1ミクロン~100ミクロン)より小さい設計によって、粉末組成物、樹脂および銅箔間の結合性が向上し、関連する物理的特性(熱伝導性、吸水性、剥離強度、耐熱性または誘電率(Dk)/誘電損失(Df)性能など)が向上し、これによって、粉末組成物によって製造される基板の安定性および信頼性がさらに向上し得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態では、粉末組成物は、第1の粉末と、第2の粉末と、修飾官能基とを含む。加えて、本発明では、第2の粉末および修飾官能基が第1の粉末上で修飾され、第2の粉末の粒径範囲(10ナノメートル~1ミクロン)が第1の粉末の粒径範囲(1ミクロン~100ミクロン)より小さい設計によって、粉末組成物、樹脂および銅箔間の結合性が向上し、関連する物理的特性(熱伝導性、吸水性、剥離強度、耐熱性または誘電率(Dk)/誘電損失(Df)性能など)が向上し、これによって、粉末組成物によって製造される基板の安定性および信頼性がさらに向上し得る。ここで、粉末組成物における第1の粉末の使用比は、30wt%~70wt%であり得、粉末組成物における第2の粉末の使用比は、0.5wt%~5wt%であり得る。
【0017】
一実施形態では、修飾官能基は、ビニル、アクリル、エポキシもしくは無水マレイン酸、アミノまたはそれらの組み合わせを含むが、本発明は、これに限定されない。
【0018】
一実施形態では、第1の粉末は、セラミック粒子、金属粒子またはそれらの組み合わせを含む。例えば、セラミック粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムまたはそれらの組み合わせを含み、金属粒子は、銅、アルミニウム、チタン、インジウムまたはそれらの組み合わせを含むが、本発明はこれらに限定されない。
【0019】
一実施形態では、第2の粉末は、セラミック粒子、金属粒子またはそれらの組み合わせを含む。例えば、セラミック粒子は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムまたはそれらの組み合わせを含み、金属粒子は、銅、アルミニウム、チタン、インジウムまたはそれらの組み合わせを含むが、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
一実施形態では、第1の粉末は、第2の粉末と同じであり得るが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態では、第1の粉末は、第2の粉末と異なり得、第1の粉末および第2の粉末は、実際の設計要件に従って決定され得る。加えて、第1の粉末および第2の粉末は、基板作製に適した任意の無機充填剤であり得る。
【0021】
加えて、本実施形態では、粉末組成物の製造方法は、少なくとも次のステップを含む。第1の粉末を準備し、第2の粉末および修飾官能基を第1の粉末上で修飾することである。例えば、製造方法は、次のステップを含み得る。まず、第1の粉末と第2の粉末とを混合し、その混合方法は、例えば、湿式高速混合または乾式高速混合である。次に、修飾官能基を有する化合物を化学気相成長法、化学修飾法または物理的混合法によって混合した上記粉末(第1の粉末)に結合させ、その結果、修飾官能基が結合される。化合物は、シロキサンカップリング剤であり得、化学的修飾方法は、例えば、適切な電気化学的前処理方法による修飾である。電気化学的前処理法は、当業者に既知であり得、本明細書ではあらためてその詳細を説明しない。次いで、上記の結合修飾官能基の混合粉末を高温で焼成して、より安定な不均一結合粉末組成物を生成し得る。これによって、粉末組成物の製造がおおよそ完了するが、本発明の粉末組成物は、上記製造方法に限定されない。第2の粉末および修飾官能基が第1の粉末上で修飾され得る限り、その全てが本発明の保護範囲に含まれる。例えば、粉末組成物の製造工程は、均質化、脱泡、遠心分離、加熱などの手順をさらに含み得る。
【0022】
一実施形態では、シロキサンカップリング剤は、Z-6030を含む。
【0023】
下記の実施例および比較例は、本発明の効果を説明するために挙げられるが、本発明の請求の範囲は、実施例の範囲に限定されない。
【実施例0024】
各実施例および比較例において、作製した銅箔基板を、下記の方法に従って評価した。
【0025】
熱伝導率分析試験:界面材料熱抵抗測定器および熱伝導率測定器を使用した。
【0026】
銅箔の剥離強度(lb/in):銅箔と回路担体との間の剥離強度を測定した。
【0027】
吸水率(%):試料を圧力釜中において120℃、2気圧で120分間加熱した後、加熱前後の重量変化を算出した。
【0028】
288℃におけるはんだ耐熱性(秒):圧力釜中において120℃、2気圧で120分間加熱した後、288℃のはんだ炉中に浸漬し、試料が破裂および剥離するまでの時間を記録した。
【0029】
誘電率Dk:Agilent Technologies社製誘電分析器(E4991A)によって、周波数10GHzにおける誘電率Dkを測定した。
【0030】
誘電損失Df:Agilent Technologies社製誘電分析器(E4991A)によって、周波数10GHzにおける誘電損失Dfを測定した。
【0031】
<実施例1、比較例1>
【0032】
表1に示す樹脂組成物をトルエンと混合し、熱硬化性樹脂組成物のワニスを形成した。上記ワニスを南亜ファイバーグラスクロス(南亜プラスチック社製、クロスタイプ1078)に室温で含浸させた後、110℃(含浸機にて)で数分間乾燥させ、樹脂含有量76wt%のプリプレグを得た。最後に、4片のプリプレグを、厚さ35μmの銅箔2枚の間に重ね、圧力25kg/cmおよび温度85℃の条件下で20分間一定温度に維持した後、加熱速度3℃/minで185℃まで加熱して120分間一定温度に維持し、130℃まで徐冷して厚さ0.8mmの銅箔基板を得た。表1における二酸化ケイ素(タイプSS15V)は、ミクロンサイズの粉末であり、必要に応じて耐熱性を向上させるためおよびナノアルミナを用いて窒化ホウ素粉末を修飾するために使用され得、ナノアルミナ(第2の粉末、粒径10ナノメートル~50ナノメートル)およびシロキサンカップリング剤(シランZ6030)は、物理的に混合され得、まず結合を形成し、その後、窒化ホウ素粉末(第1の粉末、粒径35ミクロン)と物理的に混合され、その結果、ナノスケールアルミナは、窒化ホウ素粉末に吸着され得、次いで、(シラン由来の)修飾官能基は窒化ホウ素粉末に修飾され得ることに留意されたい。
【0033】
調製された銅箔基板の物理的特性を試験し、その結果を表1に示す。表1の実施例1と比較例1との結果を比較すると、次の結論が導かれ得る。すなわち、従来の粉末組成物によって製造された基板(比較例1)と比較して、本発明の粉末組成物によって製造された基板(実施例1)は、関連する物理的特性(熱伝導率、吸水率、剥離強度、熱抵抗またはDk/Df性能など)が向上し得、および本発明の粉末組成物によって製造された基板の安定性および信頼性がさらに向上し得る。
【0034】
【表1】
【0035】
本発明の粉末組成物は、実際の設計要件に応じて、任意の適切な樹脂および銅箔を用いて所望の基板を形成するために使用され得、これは、本発明内に限定されないことに留意されたい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
第2の粉末および修飾官能基が第1の粉末上で修飾され、第2の粉末の粒径範囲(10ナノメートル~1ミクロン)が第1の粉末の粒径範囲(1ミクロン~100ミクロン)より小さい設計によって、粉末組成物、樹脂および銅箔間の結合性が向上し、関連する物理的特性(熱伝導性、吸水性、剥離強度、耐熱性またはDk/Df性能など)が向上し、これによって、粉末組成物によって製造される基板の安定性および信頼性がさらに向上し得る。
【外国語明細書】