(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046584
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】射出成形機の制御方法および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240327BHJP
B29C 45/03 20060101ALI20240327BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/03
B29C45/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064239
(22)【出願日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2022151042
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 康弘
(72)【発明者】
【氏名】岡 啓ニ郎
(72)【発明者】
【氏名】樫内 弘幸
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AP06
4F202AR07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CL12
4F202CL40
4F202CL42
4F202CL50
4F206AP06
4F206AR07
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM05
4F206JN21
4F206JP13
4F206JP14
4F206JQ82
4F206JQ88
4F206JQ90
4F206JT33
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】 可動部の原点等の設定時とその後の制御時で可動部の負荷等の状態が異なっていたとしても、正確な可動部の位置検出または表示、移動制御の安定、成形時の歩留まり向上、射出成形機の使い勝手の良さなどの少なくとも一つを図る。
【解決手段】 可動部319の位置を位置センサ350により検出して原点0の設定または基準位置の設定を行い、その後異なる状況の可動部319の位置を前記原点0または前記基準位置を用いて位置センサ350により検出する際に、該位置センサ350の検出値に対してオフセット量Oに基づく補正を行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機の制御方法において、
前記可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、
その後異なる状況の可動部の位置を前記原点または前記基準位置を用いて位置センサにより検出する際に、該位置センサの検出値に対してオフセット量に基づく補正を行う、射出成形機の制御方法。
【請求項2】
可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機の制御方法において、
前記可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、
その後異なる状況の可動部の位置を前記原点または前記基準位置を用いて位置センサにより検出しつつ可動部の移動制御を行う際に、該可動部の目標移動量に対してオフセット量に基づく補正を行う、射出成形機の制御方法。
【請求項3】
可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機の制御方法において、
第1の可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、
その後異なる状況の第1の可動部の位置を前記原点または前記基準位置を用いて位置センサにより検出し、前記第1の可動部に関連する第2の可動部の位置として出力または表示を行う際に、該位置センサの検出値または該位置センサの検出値に基づく第2の可動部の目標移動量に対してオフセット量に基づく補正を行う、射出成形機の制御方法。
【請求項4】
前記第1の可動部を介して第2の可動部に負荷が加えられた状態で第1の可動部の位置を検出して位置センサの原点の設定または基準位置の設定を行う、請求項3に記載の射出成形機の制御方法。
【請求項5】
前記位置センサの検出値に対してオフセット量に基づく補正を行った後の値に基づき、第1の可動部および第2の可動部の移動制御を行う、請求項3または請求項4に記載の射出成形機の制御方法。
【請求項6】
前記第1の可動部はタイバであり、前記第2の可動部は可動盤であり、タイバと可動盤とはハーフナットを介して連結されており、
前記タイバが型締機構により牽引された状態でタイバの位置を位置センサにより検出して該位置センサの原点の設定または基準位置の設定を行う、請求項4に記載の射出成形機の制御方法。
【請求項7】
前記位置センサにより検出されオフセット量に基づき補正された第2の可動部の位置は表示画面に表示される、請求項3に記載の射出成形機の制御方法。
【請求項8】
可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機において、
前記可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行なった後に異なる状況において可動部の位置を前記原点または前記基準位置を用いて位置センサにより検出する際に、該位置センサの検出値に対してオフセット量に基づく補正を行う制御装置を備えた、射出成形機。
【請求項9】
可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機において、
前記可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、
その後異なる状況の可動部の位置を前記原点または前記基準位置を用いて位置センサにより検出しつつ可動部の移動制御を行う際に、該可動部の目標移動量に対してオフセット量に基づく補正を行う、射出成形機。
【請求項10】
可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機において、
第1の可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定をなった後に、異なる状況において第1の可動部の位置を前記原点または前記基準位置を用いて位置センサにより検出し、前記第1の可動部に関連する第2の可動部の位置として出力または表示を行う際に、該位置センサの検出値または該位置センサの検出値に基づく第2の可動部の目標移動量に対してオフセット量に基づく補正を行う制御装置を備えた、射出成形機。
【請求項11】
前記第1の可動部はタイバであり、前記第2の可動部は可動盤であり、タイバと可動盤とはハーフナットを介して連結されており、
前記位置センサは前記タイバの位置を検出する位置センサである、請求項10に記載の射出成形機。
【請求項12】
前記第1の可動部はトグル型締装置のクロスヘッドであり、前記第2の可動部は可動盤であり、前記クロスヘッドと前記可動盤はトグル型締装置のリンクを介して連結されており、
前記位置センサは型締用のサーボモータのロータリエンコーダまたは前記クロスヘッドの位置を検出するリニアスケールである、請求項10に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機の制御方法および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機の制御方法および射出成形機としては、特許文献1の技術が知られている。特許文献1では、[請求項1]や[
図2]等に示されるように型閉方向に可動盤を移動させ、最大型締力以下の設定型締力が検出されたオフセット位置にて可動盤を停止して制御原点を補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1は、前記制御原点設定後は、前記制御原点を基準に可動盤のアプローチ位置や型締位置の検出やそれに伴う制御が行われているものに過ぎない。即ちその後の可動盤の位置を検出した制御は全て制御原点を中心にした制御が行われる。しかしながら前記におけるアプローチ位置や型締位置における可動盤の状態は、可動盤に加えられる負荷なども相違しており、全ての位置において必ずしも原点設定時と同じ状態の可動盤に対して位置の検出が行われているとは言えないものであった。
【0005】
本発明は、前記の問題に対して、可動部の原点等の設定時とその後の制御時で可動部の負荷等の状態が異なっていたとしても、正確な可動部の位置検出または表示、移動制御の安定、成形時の歩留まり向上、射出成形機の使い勝手の良さなどの少なくとも一つを図ることができる射出成形機の制御方法および射出成形機を提供することを目的とする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る射出成形機の制御方法は、可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機の制御方法において、前記可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後異なる状況の可動部の位置を前記原点または前記基準位置を用いて位置センサにより検出する際に、該位置センサの検出値に対してオフセット量に基づく補正を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の射出成形機の制御方法および射出成形機によれば、可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後の制御において前記原点または前記基準位置を用いて可動部の制御を行う射出成形機の制御方法において、前記可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、その後異なる状況の可動部の位置を前記原点または前記基準位置を用いて位置センサにより検出する際に、該位置センサの検出値に対してオフセット量に基づく補正を行うので、正確な可動部の位置検出または表示、移動制御の安定、成形時の歩留まり向上、射出成形機の使い勝手の良さなどの少なくとも一つを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の射出成形機の側面図である。
【
図2】第1の実施形態の制御装置の要部のブロック図である。
【
図3】第1の実施形態の各工程を示す説明図である。
【
図4】第1の実施形態の制御方法を示すフローチャート図である。
【
図5】第1の実施形態の制御方法を示す説明図である。
【
図6】第2の実施形態の射出成形機の側面図である。
【
図7】第3の実施形態の制御方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0010】
<射出成形機>
本発明の1実施形態の射出成形機1について
図1を参照して説明する。
図1は射出成形機の側面図である。成形機の一種である射出成形機1は、基台2上に型締装置3と射出装置4を備えている。型締装置3は、固定金型311が取り付けられる固定盤312に対して可動金型313が取り付けられる可動盤314を移動させる2基の型開閉機構315と固定金型311と可動金型313の型締を行う4基の型締機構316の型締シリンダ317を備えたものである(ただし
図1では手前側の型開閉機構315と型締機構316のみ記載)。なお本発明において可動盤314は第2の可動部に相当する。また射出装置4は加熱シリンダ4a内部に図示しないスクリュ等を備え、発泡成形等のキャビティCを拡張する型開成形を可能とするものである。
【0011】
基台2上に固定される固定盤312の反金型取付面312a側の中央部には前記射出装置4のノズル4bを挿入するためのすり鉢部312bが設けられ、すり鉢部312bの中央には固定金型311に前記ノズル4bが接続される孔が設けられている。また固定盤312内部の四隅近傍には型締機構316の型締シリンダ317がそれぞれ設けられている。型締シリンダ317はピストン318の前進側のロッドが本発明の軸部材に相当するタイバ319を構成している。従って本発明では、固定盤312に軸部材のタイバ319が連設されている。なお本発明においてタイバ319は第1の可動部に相当する。型締シリンダ317は、ピストン318の型開側(
図1においては左側)に型締側油室317aを備え、ピストン318の型閉側(
図1においては右側)に強力型開側油室317bを備えた復動シリンダである。また型締シリンダ317はバルブ、センサ、ポンプ、タンク等を備えた油圧装置320に接続されている。
【0012】
前記各タイバ319の外周の先端側近傍位置には、係合溝321が型開閉方向の所定の長さにわたって複数同じピッチの溝が形成されている。係合溝321は、タイバ319の軸方向Lに対して直角方向に設けられた型締側当接面とタイバ319の軸方向Lに対して傾斜方向に設けられた強力型開側当接面とその間の軸方向Lと平行な底面を有する。ただし係合溝321の強力型開側当接面は軸方向Lに対して直角方向の面であってもよい。また係合溝321は連続するねじ溝であってもよい。そして各タイバ319は、可動盤314の四隅近傍に設けられた挿通孔322にそれぞれ挿通されている。可動盤314における反金型取付面314aにおける四隅近傍の挿通孔322の両側には、係合機構323が各タイバ319に対応してそれぞれ配設されている。
【0013】
また基台2上には、成形金型351を構成する固定金型311が取り付けられる固定盤312に対して成形金型351を構成する可動金型313が取り付けられる可動盤314を近接・離間移動させる型開閉機構315が2基配設されている。型開閉機構315はサーボ機構を用いたものであり、第1の実施形態ではサーボモータ338とボールねじ機構339を用いられている。より具体的には基台2の上面のブラケットにサーボモータ338が固定され、サーボモータ338は位置検出機構であるロータリエンコーダ338aを備えている。またロータリエンコーダ338aを含むサーボモータ338はサーボアンプ342と制御装置343に接続されている。また制御装置343は前記油圧装置320とも接続されている。
【0014】
次に制御装置343で行われる制御のうち、コアバック制御に関連して位置センサ350の原点の設定と可動盤314の位置演算、位置表示に関する機能的なブロックについて
図2の制御装置の要部のブロック図において説明する。制御装置343のコアバック制御部353は、位置センサ350からの信号が入力される入力部354と、位置センサ350の原点0を補正して設定する原点補正部355を備えている。また原点補正部355には、補正された原点0に基づき可動盤314の位置を演算する可動盤位置演算部356が接続されている。また可動盤位置演算部356は、可動盤314の位置を表示画面に表示する可動盤位置表示部357を備えており、可動盤位置表示部357は、出力部359にも接続されている。また出力部359には表示画面360を備えた表示装置361が接続されている。
【0015】
またコアバック制御部353にはタイバ移動制御部358が設けられ、タイバ移動制御部358は、入力部354、原点補正部355,出力部359とも接続されている。なお上記のブロック図は概念的なものであり、実際の制御装置343のハード構成とは異なっている。そして制御装置343は、前記第1の可動部であるタイバ319の位置を位置センサ350により検出して原点0の設定または基準位置の設定をなった後に、異なる状況において第1の可動部の位置を前記原点0または前記基準位置を用いて位置センサ350により検出し、前記第1の可動部に関連する第2の可動部である可動盤314の位置として出力または表示を行う際に、該位置センサ350の検出値に対してオフセット量Oに基づく補正を行う機能を備えている。または位置センサ350の検出位置に基づく可動盤314の目標移動量に対してオフセット量Oに基づく補正を行う機能を備えている。
【0016】
ボールねじ機構339のボールねじ340は基台2上のブラケットにボールねじ340の軸方向が型開閉方向に一致するように一端の側と他端の側がそれぞれベアリングを介して回転自在に取り付けられている。そしてサーボモータ338の駆動軸が、前記ボールねじ340に直接接続されるか、またはベルトを介して接続されており、ボールねじ340はサーボモータ338の駆動により回転自在となっている。また可動盤314の側面下部または下面にはブラケットを介してボールねじナット341がそれぞれ固定されており、前記ボールねじ340は前記ボールねじナット341にそれぞれ挿通されている。これらの機構により2基の型開閉機構315のサーボモータ338の駆動により可動盤314が型開閉方向にそれぞれ移動可能となっている。また可動盤314の位置はロータリエンコーダ338aにより検出され、可動盤314はサーボアンプ342等によりクローズドループ制御による速度制御(位置制御を含む)が行われる。なお型開閉機構315のサーボ機構は、サーボバルブを使用してクローズドループ制御可能な2本の油圧シリンダからなる機構等でもよい。また固定盤312に対する可動盤314の位置または固定金型311に対する可動金型313の位置は、前記ロータリエンコーダ338a以外のリニアスケールなどの位置検出機構により測定されるものでもよい。また型開閉機構315は2基に限定されず、1基や他の複数基でもよい。
【0017】
<タイバ移動機構>
型締装置3は、型締シリンダ317とは別にタイバ319を一定距離軸方向に移動させるタイバ移動機構345をタイバ319の本数に対応して4基備えている(ただし
図1では2基のみが記載されている)。本発明においてタイバ移動機構345は、コアバック制御等の型開制御を行うための型開機構に相当する。各型締シリンダ317のピストン318の型開側(
図1においては右側)にはロッド349が固定され、前記ロッド349の先端には直角方向に結合板347がジョイント等を介してかまたは直接取り付けされている。また固定盤312の反金型取付面312aには複数のガイド棒348が前記ロッド349と平行方向に取り付けられ、前記ガイド棒348は結合板347に設けられた挿通孔に挿通されている。更に前記反金型取付面312aの前記ロッド349の両側にはタイバ移動シリンダ346が前記ロッド349と平行にそれぞれ取り付けられている。そして前記タイバ移動シリンダ346の反金型取付面側のロッド346bはそれぞれ結合板347に取り付けられ、前記ロッド349とロッド346bは一体に連結されている。
【0018】
タイバ移動シリンダ346のシリンダ部346aの内部には図示しないピストンが設けられている。そしてタイバ移動シリンダ346のピストンの型開側(
図1においては左側)にはタイバ319を型閉方向に移動させる際に作動油が供給されるタイバ型閉方向移動用油室が設けられ、また前記ピストンの型閉側(
図1においては右側)には、タイバ319を型開方向に移動させる際に作動油が供給されるタイバ型開方向移動用油室が設けられている。タイバ移動シリンダ346は、両ロッド型のシリンダであり、タイバ型閉方向移動用油室の側に設けられたロッド346bは前記のように結合板347に連結されている。そして前記タイバ型閉方向移動用油室とタイバ型開方向移動用油室の増圧面の面積は同じ面積となっている。前記タイバ移動シリンダ346は、油圧装置320のクローズドループ制御により流量制御可能なバルブ344等を介して図示しないポンプから作動油が供給され制御されるようになっている。なお前記流量制御可能なバルブ344は、サーボバルブであってもよく、他の可変流量制御バルブであってもよい。
【0019】
型開機構であるタイバ移動機構345は、これら機構を備え、タイバ移動シリンダ346の作動により結合板347がガイド棒348にガイドされて前進および後退方向に移動され、同時に結合板347に接続されるロッド349、ピストン318、タイバ319も前進および後退方向に移動される。また固定盤312と結合板347の間には、リニアスケール等の位置センサ350が取り付けられ、固定盤312に対するタイバ319の位置は位置センサにより測定可能となっている。位置センサ350は、磁歪式直線変位センサであるリニアスケールが使用されるがこれに限定されず電磁誘導式、光学式、レーザー式、超音波式の非接触センサやポテンショメータ、ロータリエンコーダなどでもよい。また前記位置センサまたは位置センサから制御装置343に入力される際の制御信号もデジタル信号、アナログ信号のどちらでもよい。また位置センサは原点の設定が必要なものであっても原点の設定が必要でないものであってもよい。またタイバ移動機構345に油圧機構を採用する場合は、タイバ移動シリンダの数は限定されず、固定盤312内にタイバ移動シリンダを設けてもよい。またタイバ移動機構345はクローズドループ制御により制御(位置制御または速度制御)されるものであれば、電動機構を採用してもよい。その場合サーボモータとボールねじ機構を用いたものでもよく、その場合はサーボモータに取り付けられているロータリエンコーダが位置センサとなる。また位置センサが設けられる位置も上記には限定されず、固定盤312とタイバ319の間に直接センサを設けてもよいし、可動盤314の後部に基台上に直立したタイバホルダ盤などを設ける場合などではタイバホルダ盤とタイバの間の距離を位置センサにより測定してもよい。
【0020】
<係合機構>
次に係合機構323について説明する。係合機構323は、タイバ319と可動盤314を連結するためのものである。係合機構323は係合歯を備えた一対のハーフナットからなる第1のハーフナット機構324と、係合歯を備えた一対のハーフナットからなる第2のハーフナット機構327とから構成される。そして、第1のハーフナット機構324の一対のハーフナットと第2のハーフナット機構327の一対のハーフナットは、駆動機構のアクチュエータである油圧シリンダ325によりタイバ319の係合溝321に対して移動可能となっている。また第2のハーフナット機構327は、移動機構332によりタイバ319の軸方向に移動可能となっている。なお係合機構は、一対のハーフナットのみを備える一般的なものでもよい。
【0021】
<射出成形機の制御方法および射出成形機の成形方法>
次に
図1に示される実施形態の射出成形機1の型締装置3の制御方法と発泡成形品の成形方法について
図1ないし
図4、取り分け
図3を参照して説明する。第1の実施形態では、型締装置3に取り付けられる成形金型351はインロー金型とも呼ばれるものであり、キャビ型である固定金型311に対してコア型である可動金型313の型開閉方向の位置が変化してもキャビティCが容積変更された状態で保持されるものである。なお成形金型351は別の方式のコアバック成形(型開成形)が可能な金型でもよい。
【0022】
型締装置3の固定盤312と可動盤314に前記のようなコアバック制御が可能な成形金型351が取り付けられると次に成形金型351の型厚が測定される。そして成形金型351の型厚を参酌して可動盤314を型閉した際の係合機構323の位置に対して、タイバ319の係合溝321の位置が係合可能な位置となるように、タイバ移動機構345を作動させて型締機構316の型締シリンダ317のピストン318とタイバ319の位置が移動調整される。
【0023】
また射出装置4においては供給された発泡成形用の樹脂材料が加熱シリンダ4a内で可塑化され、準備される。本発明における発泡成形は、発泡剤を添加する化学発泡成形であってもよく、ガスを注入する物理発泡成形であってもよい。なお物理発泡成形には超臨界発泡成形も含まれる。
【0024】
<型締装置の作動>
型締装置の作動に関し、型締装置3の作動は制御装置343からサーボアンプ342や油圧装置320等に指令信号が送られ開始される。まず可動盤314が後退した型開き状態から型開閉機構315のサーボモータ338の作動によりボールねじ340が回転され、ボールねじ340に挿通されるボールねじナット341が型開閉方向に移動されることにより、型開位置に停止していた可動盤314および可動金型313は、固定盤312および固定金型311に向けて移動される。その間の係合機構323の第1のハーフナット機構324と第2のハーフナット機構327の位置関係は、両者が最も離隔した状態にある。
【0025】
次に型開閉機構315の作動により固定金型311に対して可動金型313が型当接されると固定金型311と可動金型313の間には成形を行うための容積可変のキャビティCが形成される(型閉工程)。型当接がなされると型開閉機構315のサーボモータ338はサーボロックされて可動盤314は位置保持される。次に係合機構323の第1のハーフナット機構324の一対ハーフナットと第2のハーフナット機構327の一対のハーフナットは油圧シリンダ325の前進作動によりタイバ319に向けて前進され、前記ハーフナットの係合歯がタイバ319の係合溝321に係合される(係合機構323による係合工程)。
【0026】
次に型締機構316である型締シリンダ317の型締側油室317aに作動油が供給されてタイバ319が型締方向にけん引されて型締増圧されると、係合機構323の第1のハーフナット機構324の一対のハーフナットの型締側当接面とタイバ319の型締側当接面の間の間隙が解消され、前記型締側当接面と前記型締側当接面が当接される。また同様に第2のハーフナット機構327の一対のハーフナットの係合歯の型締側当接面とタイバ319の係合溝321の型締側当接面の間も当接される。そして更に型締シリンダ317の型締側油室317aに作動油が供給され、型締シリンダ317が増圧されることにより固定金型311と可動金型313が型締される。そして所定の型締力となったことが確認されると、射出装置4から発泡成形用の化学発泡剤等が添加された溶融樹脂がキャビティCに向けて射出される(型締工程)。なお型締工程の際、型開閉機構315のサーボモータ338は無負荷状態となっている。
【0027】
本実施形態では型締工程開始から後で説明する圧抜工程開始までの間はキャビティCの容積の拡張は行われないがキャビティ面と溶融樹脂の間にスキン層が形成される。所定時間が経過すると移動機構332を作動させて第2のハーフナット機構327を型閉方向に移動させる。このことにより第1のハーフナット機構324のハーフナットの係合歯と、第2のハーフナット機構327のハーフナットの係合歯の間にタイバ319の係合溝321と係合溝321の間の凸部が挟まれてタイバ319と可動盤314が連結・固定される。そのことにより第1の可動部であるタイバ319と第2の可動部である可動盤314は一体の可動部を構成する(可動盤・タイバ連結工程)。
【0028】
可動盤・タイバ連結工程が終了すると次に圧抜工程に移行する。なお本発明は、一般的な一対のみのハーフナットを備えた型締装置の場合は、可動盤・タイバ連結工程は存在せずに型締工程から圧抜工程に移行する。圧抜工程では、型締シリンダ317の型締側油室317aはドレンに接続され型締側油室317a内の作動油の圧力が0に落とされる(圧抜工程)。
【0029】
<原点の設定とオフセット量の追加>
本実施形態では、この際に位置センサ350の原点(または制御上の基準位置)の補正と設定を行うので、
図4および
図5を参照して説明する。圧抜工程が開始されると(s1)、圧抜工程の間、型締シリンダ317の圧力を圧力センサ352などで検出する。そして圧力センサ352により検出される型締シリンダ317の圧力が原点補正用圧力である所定値となった時点で(s2)、位置センサ350によりタイバ319のタイバ位置P1を検出する(s3)。即ち本実施形態では型締力により第1の可動部であるタイバ319を介して第2の可動部である可動盤314に負荷が加えられた状態で位置センサ350の原点0の補正と設定が行われる。具体的にはタイバ319に位置は、型締方向(
図5では右側)に移動された状態である。なおタイバ319と可動盤314は上記のように係合機構323で固定的に連結されており、タイバ319と可動盤314は本発明の可動部に相当する。そして設定された位置センサ350の原点0は制御装置343の原点補正部355内に記憶され、その後のコアバック制御において可動盤314と可動金型313の移動制御のための基礎データとして用いられる。
【0030】
より具体的には一つの圧力センサ352により型締シリンダ317の圧力が検出され所定値となった時点で、各タイバ319にそれぞれ設けられるタイバ移動機構345の位置センサ350の原点を補正する(s4)。このように型締シリンダ317の型締側の圧力が残っている状態で各位置センサ350の原点を同時に補正する理由は、タイバ319ごとに設けられている位置センサ350の値が最も安定的かつ固定盤312に対する可動盤314の平行度が保った状態で検出できるからである。また完全に型締シリンダ317の圧力がゼロになり型閉力もゼロとなる前にコアバック成形のためのタイバ移動シリンダ346の型開力を付与する場合は、型締シリンダ317の圧力が残っているうち(タイバ319に対して及ぼされる物理量である負荷が異なる状況)に位置センサ350の原点補正(以後の可動部の制御に用いる基準位置の設定を行う)を行うことが望ましいという理由もある。
【0031】
なおこの際の原点補正は、型締シリンダ317の圧力が残存した状態であってタイバ319を介して可動盤314に物理量(負荷)が及ぼされた状態で先にタイバ319の位置を検出するものであり、本発明における「先に第1の可動部の位置を検出して位置センサの原点補正または制御上の基準位置の設定を行う、」に相当する。また位置センサ350の原点0を補正する時点は、前記に限定されず型締工程において型締シリンダ317により固定金型311に対して可動金型313が型締されている時点でもよく、本発明では可動盤314およびタイバ319に負荷がかかっている状態で行われることが必須ではないが望ましい。
【0032】
また原点0の設定は、成形サイクル毎に行ってもよいが、複数の成形サイクルに1回行ってもよい。また原点0の設定は、位置センサ350の検出値をそのまま原点0としてもよいが、過去のN回の原点設定時の位置センサ350により検出された位置の平均値から、或る成形サイクルの原点設定時の位置センサ350により検出される位置が一定以上乖離している場合は、、前記平均値を原点0に用いるなど演算により定めるものでもよい。
【0033】
次に位置センサ350の新たに設定された原点0に基づく可動盤314の位置のオフセットについて
図5を参照して説明する。
図5において上半分は、型締シリンダ317の圧抜中の原点設定時の状態を示している。また
図5において下半分は、型締シリンダ317の圧抜完了後のコアバック作動開始時の状態を示している。上記のように原点0の設定は、上記したようにまだ型締シリンダ317に型締方向の圧力が残っている状態で行われる。即ち
図5の上側半分において示されるようにタイバ319が、射出装置4側(
図5では右側)に移動および牽引された状態で位置センサ350によりタイバ位置P1の検出が行われる。
【0034】
そのため圧抜前のタイバ位置P1を用いた固定盤312に対する可動盤314の位置は位置センサ350の検出値としては小さい数値となる。従って位置センサ350における原点0も相対的に小さい値の部分で設定される。一方
図5の下側に示されるように型締シリンダ317’の圧抜が進行して圧抜完了されるとタイバ319’の伸びは解消され位置センサ350’の部分におけるタイバ319’は左側に移動されることになる。そのため位置センサ350により検出されるタイバ位置P1’(固定盤312に対する可動盤314’の位置の値は相対的に大きくなる。
【0035】
しかしながら圧抜前のタイバ位置P1を原点0とし、原点0を基準としてそこからコアバック制御のための所定の移動量を加算した場合は、圧抜完了までの間に実際には型開されていないのに移動量の一部が消費されてしまうことになる。そのため圧抜前に位置センサ350によりタイバ319の原点0の位置を設定し、前記原点0にコアバック制御のストローク分を加算してタイバ駆動手段によりタイバ319を移動させてコアバック制御を行った場合、コアバック終了位置では実際に必要なコアバック制御のストローク分だけ可動盤314’が型開されていないということになる。
【0036】
この際のコアバック制御における移動量がどれだけ不足するか数値を把握するためには次の方法を行う。まず圧抜前に位置センサ350により検出されるタイバ位置P1を検出する。そして前記タイバ位置P1から固定盤312の金型取付面312cから位置センサ350までの距離P3を減算して可動盤314の金型取付面314bと固定盤312の金型取付面312cの間の距離P2を求める。前記P2はタイバ位置P1の値を用いて演算により自動的に演算できる。ただしタイバ319の伸びおよび移動量は、前記距離P2と前記距離P3の合算となって現れるので前記距離P2、前記距離P3共に、
図5の下側半分に示される圧抜完了後の同様の距離P2’および距離P3’よりも大きな距離となる。
【0037】
次に圧抜前の固定盤312の金型取付面312cに対する可動盤314の金型取付面314bの正確な実測距離P4を測定する。正確な実測距離P4の測定するためには、
図5において一点鎖線で記載されるように固定盤312と可動盤314を接続してリニアスケール371(位置センサ)を実際に取付ける。そして前記リニアスケール371により固定盤312の金型取付面312cと可動盤314の金型取付面314bとの間の正確な実測距離P4を測定する。
【0038】
この際に型開閉機構315のサーボモータ338のロータリエンコーダ338aを用いて可動盤314の位置を測定せずに、リニアスケール371を別途取り付けて可動盤314の位置を測定するのは、タイバ319の位置に対応した固定盤312の四隅近傍の金型取付面312cと可動盤314の四隅近傍の金型取付面314bとの間の実測距離P4をそれぞれ測定するためである。
【0039】
そして前記位置センサ350により検出され演算された距離P2とリニアスケール371により測定された前記実測距離P4を比較しその差分を求める。すると前記圧抜が完了していない状態では前記距離P2は前記実測距離P4よりも一定値だけ大きい値となる。この際の前記距離P2が前記実測距離P4よりも大きいということは、実際には可動盤314の位置(型開量)は同じであるにも関わらず、タイバ319が牽引および移動されているので位置センサ350により検出される可動盤314の位置のほうがタイバ319の移動量を含んでいるということでもある。
【0040】
本実施形態ではこの際の一定値の差分(距離P2マイナス実測距離P4)をオフセット量Oとして求める。
または圧抜完了よりも前のタイバ位置P1と、圧抜完了後のタイバ位置P1’を比較してオフセット量Oを求めるようにしてもよい。そして実際のコアバック制御時には、原点0の設定後にタイバ319’ごとに位置センサ350により検出されるタイバ位置P1’に対して、タイバ319’ごとに同一量のオフセット量Oが追加する(s5)。その結果コアバック制御時の移動量(ストローク)が自動的に演算および生成される。そして前記オフセット量Oが追加されたコアバックストロークの制御値によりタイバ319’および可動盤314’の移動制御が行われる。また同時に位置センサ350’により検出されオフセット量Oに基づき補正された数値が、可動盤314’の位置として表示装置361の表示画面360に表示される(s6)。
【0041】
なお前記オフセット量Oは、通常は同一の値が自動的に設定されるが、圧抜工程の圧力の差やその他の要因により異なる数値が設定されるようにしてもよい。また
図7の第3の実施形態の制御方法のフローチャートに示されるように位置センサ350’に基づくオフセット量Oは、コアバック制御時の可動盤314’の目標移動量に対しそれぞれ同一値または同一値以外の値を加算するものであってもよい。その場合、可動盤314’の目標移動量に対してオフセット量Oが追加され(s5)、オフセット量を追加した目標移動量に基づいて可動盤314’の移動指令がなされ(s6)、目標移動量分、タイバ移動機構345のタイバ移動シリンダ346が制御されてタイバ319’および可動盤314’が移動され(s7)、タイバ319’が目標移動量に到達・コアバック制御終了か(s9)が判断される。移動量に対してオフセット量Oを加算する場合は、原点0の補正は必須では無く、何らかの基準位置を用いて移動量分の制御を行うものでもよい。
【0042】
圧抜工程の途中からタイバ移動機構345のタイバ移動シリンダ346に型開方向の型開力を付与する場合は、原点0の補正、設定後にコアバック制御工程が開始されるものに限定されず、原点0の補正前にコアバック制御工程が開始されているものでもよい。本実施形態では係合機構323によりタイバ319と可動盤314は固定的に一体となっていることからコアバック制御工程におけるタイバ319の係合溝321とハーフナットの係合歯の間の間隙分の距離をタイバ319が移動しても可動盤314が移動されない問題も無くなり、可動盤314の移動の応答性が向上する。いずれにしても圧抜工程が終了すると(S7=Y)、次にコアバック制御工程に移行する。
【0043】
<コアバック制御の設定表示とコアバック制御>
このコアバック制御工程においては、位置センサ350によりタイバ位置P2を検出してコアバック制御が行われる。ただし表示画面360における可動盤位置としては、タイバ位置P2―オフセット量Oの演算の結果が表示される(s8)。一例としては、表示画面360に表示される可動盤314の位置が、設定された通り0から20まで移動したとすると、実際の位置センサ350により読み込まれる検出値は、それよりもオフセット量Oだけ大きい値となっている(仮にオフセット量が1だとすると、1から21まで移動したと表示される)。このようにすることにより、検出されるタイバ位置P2=可動盤位置が、表示画面360の可動盤314の位置の設定値と相違していても設定値の通りに可動盤314が移動されているように見えるので射出成形機1の使い勝手が良い。なお本実施形態においてオフセット量Oは、加算または減算用の一定値の補正値であって、演算により変化する値ではない。また本発明は、可動部に負荷がかかる最適な時点で原点0を補正し、前記原点0に基づいて、可動盤314の制御を行うので、移動制御の安定、成形時の歩留まり向上に繋がる。
【0044】
なお本実施形態ではキャビティを拡張させながらキャビティ内の溶融樹脂の発泡を促すコアバック制御(型開制御)は、各タイバ移動機構345をそれぞれ個別に制御することにより行われる。この際に位置センサ350の原点0はそれぞれ補正されているから各タイバ319共に正確な移動制御が行われる。またこの間は、型開閉機構のサーボモータは無負荷の状態となっている。そしてタイバ移動機構345により、可動盤314が各キャビティ内の成形品が所望の厚みとなる当初の設定位置まで移動完了するまではタイバ移動シリンダ346に対して上記の流量制御が行われ、可動盤314が所定位置に到達したことが検出されるとコアバック制御工程は終了する(s9)(コアバック制御工程)。
【0045】
そしてコアバック制御工程が終了すると次に冷却工程に移行する。冷却工程では基本的にはタイバ移動機構345のタイバ移動シリンダ346を制御してタイバ319とタイバと固定的に連結される可動盤314および可動金型313をも目標位置に保持して所定時間が経過させる。コアバック制御工程と冷却工程において型締シリンダ317は無負荷となっている。ただしキャビティC内の樹脂は冷却収縮されるものでは、型締シリンダ317の型締側油室317aやタイバ移動シリンダ346のタイバ型閉方向移動用油室に作動油を供給してタイバ319を型閉方向に移動させるか、または型開閉機構315のサーボモータ338により可動盤314を型閉側に移動させてキャビティCの容積を縮小させてもよい(冷却工程)。
【0046】
そして冷却工程の終了の少し前か終了後に移動機構332の油圧シリンダの後退側油室に作動油を供給して第2のハーフナット機構327の一対のハーフナットを第1のハーフナット機構324の一対のハーフナットら離隔させる。このことによりタイバ319に対する係合機構323によるロックが解消される。次に型締シリンダ317の強力型開側油室317bに作動油を供給して強力型開を行う(強力型開工程)。なお強力型開工程は離型の容易な成形品の場合は必須のものではない。
【0047】
次に係合機構323を開閉作動させる駆動機構の油圧シリンダ325が後退方向に作動され、第1のハーフナット機構324の一対のハーフナットと、第2のハーフナット機構327の一対のハーフナットはそれぞれタイバ319の係合溝321から離脱される(ハーフナット離脱工程)。その後、型開閉機構315のサーボモータ338を作動させて可動盤314および可動金型313を型開完了位置まで移動させる(型開工程)。そして図示しないエジェクタ機構の作動により成形された発泡成形品を可動金型313のキャビティ面から突出し、図示しない取出機で取り出す(取出工程)。そして連続成形時に成形サイクルが終了しないとき(s10=N)は次の成形サイクルに移行する。
【0048】
なお本発明は、第1の可動部の位置を検出してその成形サイクルだけでなくその後の成形サイクルの制御において第2の可動部の位置として出力または表示を行う際に所定のオフセット量Oに基づいて補正を行うものでもよい。即ち1回、位置センサ350の原点設定をした後、次に原点設定するまでの複数の成形サイクルにおいて可動盤314等を移動させる際に表示画面360に画面表示する際の可動盤314の位置を所定のオフセット量Oに基づいて補正を行う。または位置センサ350の原点設定をした後、次に原点設定するまでの複数の成形サイクルにおいて可動盤314等を移動制御する際に可動盤314の制御位置を所定のオフセット量Oに基づいて補正を行う。
【0049】
一例としては型締時から圧抜完了時までの間の可動盤314に負荷が加えられている状態におけるタイバ319の位置を位置センサ350で検出して原点0の補正と設定を行う。それに対して次の成形サイクルにおいてタイバ319等の可動部に対して及ぼされる負荷等の物理量が異なる状況で射出圧縮成形を行う際に位置センサ350により検出される可動盤314の四隅近傍のタイバ319の位置の表示の数値を同一の所定のオフセット量Oに基づいて補正を行う。または前記射出圧縮成形を行う際に可動盤314の制御位置の数値を所定のオフセット量Oに基づいて補正を行う。そのことにより負荷をかけた状態で可動盤314の位置での原点の補正と設定が可能となるとともに、実態に近い可動盤位置の表示が可能となる。
【0050】
またタイバ319を介して可動盤314に負荷が加えられた状態で先にロータリエンコーダ等の各種の位置センサにより検出して原点0の補正と設定を行うものには限定されず、位置センサの基準値の補正と設定を行うものでもよい。更にはその後に行われる位置センサの基準値等を用いて行うものは可動盤等の位置の出力であって、出力値に所定のオフセット量に基づく補正を加えて、制御に用いるものでもよい。位置センサにアブソリュート式ロータリエンコーダ等で原点補正を行わないものを使用する場合は、制御上の基準位置の補正が行われる。
【0051】
次に
図6に示される第2の実施形態の射出成形機401について説明する。第2の実施形態の射出成形機401はトグル式の型締装置402と電動式の射出装置403を備えている。射出成形機401のトグル式の型締装置402は、基台404上の固定金型405が取り付けられる固定盤406に対して可動金型407が取り付けられる可動盤408がタイバ409に沿って型開閉方向に移動可能となっている。可動盤408の後方にはハウジング410が設けられ、ハウジング410と固定盤406の間に前記タイバ409がわたされている。ハウジング410には型締用のサーボモータ411が取り付けられ、前記サーボモータ411の駆動軸412は、プーリ413やベルト414を介してボールねじ機構415のボールねじに接続されている。また可動盤408とハウジング410の間にはトグルリンク416が設けられ、トグルリンク416はボールねじとボールねじナットからなるボールねじ機構415を介して接続されたクロスヘッド417にも接続されている。
【0052】
本発明では前記第1の可動部はトグル式の型締装置402のクロスヘッド417であり、前記第2の可動部は可動盤408であり、前記クロスヘッド417と前記可動盤408はトグル式の型締装置402のトグルリンク416を介して連結されており、前記位置センサは型締用のサーボモータ411のロータリエンコーダ411aまたは前記クロスヘッド417の位置を検出する図示しないリニアスケールに相当する。
【0053】
また射出装置403は、スクリュ430が内蔵される加熱シリンダ418が取り付けられる前プレート419と、射出用のサーボモータ420が取り付けられる後プレート421との間に計量用のサーボモータ422が取り付けられるプッシャプレート423が設けられている。またプッシャプレート423にはスクリュが計量用のサーボモータ422により回転可能に取り付けられている。そして射出用のサーボモータ420の駆動力はボールねじ機構415を介してプッシャプレート423に伝達されてプッシャプレート423は前後進移動される。またこれらのトグル式の型締装置402と射出装置403の制御を行う制御装置425が設けられている。そして制御装置425には表示画面426を備えた表示装置427が接続されている。
【0054】
そして
図6に示される第2の実施形態ではトグル式の型締装置402では、第1の可動部であるクロスヘッド417の位置はサーボモータ411のロータリエンコーダ411aにより検出される。そしてクロスヘッド417の位置を検出し、前記位置に所定のトグル係数を乗算等してクロスヘッド417の位置に関連する可動盤408の位置を演算している。しかしながらクロスヘッド417の位置と可動盤408の位置の関係には所定のトグル係数以外の要素もある。一例としてトグルリンク416のブッシュの摩耗によるガタやボールねじとボールねじナットの間のバックラッシ、ベルトの伸びなどの経年変化の問題等がある。
【0055】
特に型締時や射出圧縮成形時等のクロスヘッド417、トグルリンク416、可動盤408に負荷がかかった状態と、型開時などで前記クロスヘッド417、トグルリンク416、可動盤408に負荷がかかっていない状態では、前記ブッシュ部分のガタやバックラッシの影響から、計算通りの可動盤408が検出できない場合があった。例えば型締時または射出圧縮成形時(負荷状態)に第1の可動部の位置であるクロスヘッド417の位置をサーボモータ411のロータリエンコーダ411aや図示しないリニアスケール(直線センサ)等の位置センサで検出し原点0の補正および再設定や基準位置の補正および再設定を行ったとする。その場合、負荷の異なる可動盤408が型開完了位置で成形品を取り出す際の停止制御においては、前記位置センサの検出値に対してオフセット量Oの補正が行われる(一定値の補正値の加算または減算を行う)。
【0056】
また逆にクロスヘッド417、トグルリンク416、可動盤408に負荷がかかっていない型開完了位置などで位置センサの原点0や基準位置の補正設定を行った場合は、型締時や圧縮成形時の可動盤408の位置を位置センサで検出する際はオフセット量Oの補正が行われることも想定される。従ってオフセット量Oは加算される場合もあれば減算される場合もある。それらの補正により正確な可動盤408の位置として出力または表示することができる。
【0057】
また射出装置403についても第1の可動部の位置を検出して第2の可動部の位置として出力または表示を行う射出成形機の制御方法において、第1の可動部の位置を検出しその後の制御において第2の可動部の位置として出力または表示を行う際に所定のオフセット量Oに基づいて補正を行うことが行われる。例えば計量中など第2の可動ブロックであるスクリュ430に負荷(背圧)が加えられた状態で、前記スクリュ430が回転自在に連結される第1の可動ブロックであるプッシャプレート423の位置を射出用のサーボモータ420のロータリエンコーダ420aや図示しないリニアスケール等の位置センサにより検出し、位置センサの原点補正や制御上の基準位置の設定を行う。その後の制御において、射出時のスクリュ430を表示する際や保圧切換位置などの設定を行う際には、可動部であるスクリュ430に対する負荷が異なるので前記ロータリエンコーダ420aや図示しないリニアスケール等の位置センサの表示位置を所定のオフセット量Oに基づいてスクリュ430の位置補正を行うようにしてもよい。
【0058】
従って本発明における「可動部の位置を位置センサにより検出して原点の設定または基準位置の設定を行い、
その後異なる状況の可動部の位置を前記原点または前記基準位置を用いて位置センサにより検出する」とは、原点の設定または基準位置の設定時と、その後の制御時における可動部に対して及ぼされる状況が異なっていればよく、必ずしも原点の設定または基準位置の設定時のほうの負荷が高いものには限定されない。また前記可動部に対して及ぼされる物理量が異なる状況とは、力による負荷が加えられている状況に限定されず、慣性力を含む外力により可動部が移動完了した状況でもよい。または前記異なる状況の可動部とは、温度差による可動部が熱膨張した場合や、可動部の温度差による位置センサの検出値に誤差が発生する場合などでもよい。
【0059】
なお本発明の射出成形機で射出される材料は、樹脂の他、繊維等を含有した樹脂、発泡剤等を含有した樹脂、マグネシウムを含む金属、セラミックスなどが含まれ限定されない。またいずれの射出成形機においても可動盤やスクリュ等の移動方向は水平方向に限定されず、縦方向に移動されるものでもよい。
【0060】
なお本発明については、一々列挙はしないが、上記したものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても適用されることは言うまでもないことである。また以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0061】
0 原点
1,401 射出成形機
2,404 基台
3,402 型締装置
4,403 射出装置
311,405 固定金型
312,406 固定盤
313,407 可動金型
314,408 可動盤(第2の可動部)
315 型開閉機構
319、409 タイバ(第1の可動部)
323 係合機構
330,430 スクリュ(第2の可動部)
338,411,422 サーボモータ
338a ロータリエンコーダ(センサ)
343 制御装置
345 タイバ移動機構
346 タイバ移動シリンダ
350 位置センサ(センサ)
417 クロスヘッド(第1の可動部)
423 プッシャプレート(第1の可動部)