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  • 特開-高炉操業方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004659
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】高炉操業方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C21B5/00 315
C21B5/00 316
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104378
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 啓史
(72)【発明者】
【氏名】山岡 裕輝
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012BD03
(57)【要約】
【課題】休風後再度送風する高炉立ち上げ時に、送風開始初期から炉内装入物に高温の送風をすることができる高炉操業方法を提案する
休風後再度送風する高炉立ち上げ時に、送風開始初期から炉内装入物に高温の送風をすることができる高炉操業方法を提案する
【解決手段】高炉の操業を停止して休風し、その後再び熱風送風を開始して再稼働させる高炉操業方法において、羽口を通じての炉内への熱風の供給に先立ち、熱風炉から環状管やバーナを経て羽口に至るまでの配管経路内を予熱してから、炉内への熱風吹き込みを開始する。好ましくは、配管経路内の予熱送風を、まず羽口を不定形耐火物にて封止した上で、バーナの後端部および/または配管に設けた放風弁を開放して放風することにより行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の操業を停止して休風し、その後再び熱風送風を開始して再稼働させる高炉操業方法において、
羽口を通じての炉内への熱風の供給に先立ち、熱風炉から環状管やバーナを経て羽口に至るまでの配管経路内を予熱してから、炉内への熱風吹き込みを開始する、高炉操業方法。
【請求項2】
前記配管経路内の予熱送風は、まず羽口を不定形耐火物にて封止した上で、バーナの後端部および/または配管に設けた放風弁を開放して放風することにより行う、請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項3】
前記配管経路内の予熱送風は、まず羽口を不定形耐火物にて封止した上で、バーナの後端部を開放して放風することにより行う、請求項2記載の高炉操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操業を停止して高炉を休風し、その後、再度送風を開始するための高炉操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉は、送風方向に配置された多数の羽口から吹き込んだ高温空気や酸素と、炉頂から原料とともに装入したコークスとの反応によって生成した高温還元ガスによって、鉄鉱石の昇温、還元、溶解を行い羽口下部に設置した出銑口から溶銑と溶融スラグとを炉外に排出する設備である。高炉の通常操業時においては、炉内の反応熱と羽口からの熱供給がバランスしているため、高炉の安定的な操業が可能である。
【0003】
ここで、高炉の長時間の休風または休止を行う際には、高炉内への熱供給が停止する。一方で、高炉内部の温度と大気の温度差によって放熱が継続するため、炉内の冷却が進行し、一部の溶融物は凝固する。送風を再開する時には、炉内の凝固層を溶解させなければならず、そのためには凝固物が通過するコークス充填層を加熱する必要がある。このため、高炉の長期休風、または再稼働が見込まれる休止時には、炉内のコークス比を上げて休風に入り、送風後に微粉炭の吹込みが開始できるまでの熱補償を行う。それとともに、出銑口上の1~2本の羽口以外を耐火物等により閉塞させ、送風に伴って生成する溶銑滓の量を制限し、少量の溶融物の円滑な排出のサイクルを確立させる。その後、隣接部の羽口を開口し、徐々に開口羽口本数を増やし、通常の操業まで回復させる方法をとる。
【0004】
休風後に高炉を通常の操業まで回復させる方法として、引用文献1には、炉内装入物が羽口の下方に積層している減尺状態で休風している高炉において、炉内装入物を羽口から挿入したバーナで加熱して炉内温度を維持することが開示されている。また、特許文献2には、出銑口からバーナを挿入し、当該バーナから酸素等を吹き込んで出銑口-羽口間のコークスを燃焼させて凝固物の体積を減少させた後に、当該体積減少領域に炉頂より新たなコークスを投入し、羽口から送風することで、高炉を通常の操業まで回復できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-235437号公報
【特許文献2】特許第6947345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の方法では、高炉休風中に熱風炉から高炉炉体羽口までの配管経路を予熱して昇温させることはなく、長期休風後の操業立ち上げ(再稼働)時に送風温度が低くなるという課題があった。また、従来は、高炉休風中に熱風炉から高炉炉体までに至る一連の配管(環状管エルボ、熱風支管、上部・下部水平管、混冷管、バーナ等)を昇温しようとした場合、昇温過程で温度が低い配管内の空気を、羽口を通じて炉内へ排出しなければならない。そのため、炉内で低温の溶融物が生成されることとなり、休風立ち上げ(再稼働)に支障をきたす可能性があった。即ち、従来は、高炉休風中の配管経路の昇温を実施してこなかった。
【0007】
本発明の目的は、こうした従来技術が抱えている課題を解決して、休風後再度送風する高炉立ち上げ時に、送風開始初期から炉内装入物に高温の送風をすることができる高炉操業方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高炉操業方法は、高炉の操業を停止して休風し、その後再び熱風送風を開始して再稼働させる高炉操業方法において、羽口を通じての炉内への熱風の供給に先立ち、熱風炉から環状管やバーナを経て羽口に至るまでの配管経路内を予熱してから、炉内への熱風吹き込みを開始する、高炉操業方法である。
【0009】
なお、本発明の高炉操業方法においては、
(1)前記配管経路内の予熱送風は、まず羽口を不定形耐火物にて封止した上で、バーナの後端部および/または配管に設けた放風弁を開放して放風することにより行うこと、
(2)前記配管経路内の予熱送風は、まず羽口を不定形耐火物にて封止した上で、バーナの後端部を開放して放風することにより行うこと、
がそれぞれ好ましい態様となるものと考えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高炉操業方法によれば、休風中に、熱風を、熱風炉から封止した羽口手前まで通し、バーナの後端部および/または配管に設けた放風弁、好ましくはバーナ後端部から炉外へ放出することで、高炉内に熱風を送ることなく、熱風炉から羽口までの耐火物を昇温できる。その結果、長期間休風後の操業再開に当たって羽口から炉内に熱風を吹き込む送風の初期から送風の温度を、通常操業に近い熱風温度に上げることができるようになり、効率の良い安定した高炉の再稼働が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の高炉操業方法を実施する装置の一実施形態を説明するための模式図である。
図2】(a)~(d)は、それぞれ、本発明の高炉操業方法の一実施形態を説明するための模式図である。
図3】実施例における各羽口の熱風の温度の変化の一例を示すグラフである。
図4】実施例における各羽口の熱風の温度の変化の他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものではない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の高炉操業方法を実施する装置の一実施形態を説明するための模式図である。図1において、1は高炉、11は熱風炉である。本実施形態において、高炉1の操業を停止して休風している。2は炉内装入物、3は羽口、4は出銑口、5は複数の羽口3に設けられたバーナ、6はバーナ5に熱風炉11からの熱風を供給するための環状管である。高炉を休風する際、減尺する場合もしない場合も本発明が適用できるが、図1では、一例として炉内装入物2のレベルを羽口3の直上付近にまで減尺した例を示している。また、熱風炉11は、送風機12からの送風を、燃焼室13および蓄熱室14を介して熱風として供給している。熱風炉11から供給される熱風は、環状管6に供給されている。
【0014】
図2(a)~(d)は、それぞれ、本発明の高炉操業方法の一実施形態を説明するための模式図である。図2(a)~(d)に示す実施形態では、羽口3およびバーナ5の部分を示しているが、他の構成は図1に示した装置構成と同じである。なお、図中21は、バーナ5の後端部に設けられた覗き窓である。
【0015】
図2(a)は、休風時ではなく通常操業での熱風の流れを示しており、熱風炉11からの熱風は、環状管6およびバーナ5を通じて羽口3から高炉1の内部に供給されている。本発明では、高炉の休風時において、まず、図2(b)に示すように、羽口3を不定形耐火物22(例えばキャスタブル)にて封止する。次に、図2(c)に示すように、バーナ5の後端部に設けた覗き窓を開放する。次に、図2(c)に示すように覗き窓21を開放した状態で、図2(d)に示すように、熱風炉11からの熱風を、環状管6およびバーナ5に供給する。この場合、羽口3が不定形耐火物22で封止されるとともにバーナ5の後端部に設けられた覗き窓21は開放された状態であるため、供給された熱風は、バーナ5の覗き窓21を通じて炉外に放風される。なお、ここで、バーナ5の後端部の覗き窓21から放風したが、これに限るものではなく、高炉に近い位置での配管系統に弁を設けて放風できるようにしてもよいし、放風できる配管ルートを新設してもよい。
【0016】
上述したように、本発明は、熱風炉11から高炉1の羽口3に至るまでの配管経路の特にその内張りれんがを、本格的な操業再開の前に、予め予熱することを特徴としている。具体的には、熱風炉11からの供給される熱風により、配管経路内の内張りれんがを予熱すると同時に、その予熱のために温度が低下した熱風炉11からの送風を、羽口3を通じて再稼働前の炉内に送り込むことなく、羽口3の手前好ましくはバーナ5の後端部の覗き窓21から放風して炉内に入らないようにすることにある。
【0017】
そのために、本発明では、羽口3に予めキャスタブルの如き不定形耐火物を詰めて羽口3を封止することにより、内張れんがとの熱交換で温度の下がった送風が羽口3を通じて炉内に入ることを阻止している。
【実施例0018】
内容積5000mの高炉1において、図1に示す装置構成を用いて、図2(a)~(d)に示す工程に基づき、休風時に熱風炉11から環状管6やバーナ5を経て羽口3に至るまでの配管経路を予熱した。そして、休風後の再稼働において、複数の羽口3のうち、#2羽口、#9羽口、#10羽口における送風温度の変化を求めた。図3では、予熱をせず、羽口3に不定形耐火物も詰めずに高炉内に送風を開始した場合を示しているが、開始から4時間たっても温度が650℃から50℃程度しかあがっていないことがわかる。これに対し、図4では、羽口3に不定形耐火物を詰め、バーナ5の後端部から放風して予熱した場合を示しており、適宜風量を増量することで4時間程度でも200℃程度温度をあげることができ、羽口3に詰めた不定形耐火物を取り除いて休風後の再稼働を行うことで、高炉内に低温の送風を行う必要がなくなった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係る高炉操業方法によれば、高炉の再稼働だけでなく、高炉以外の様々の竪型溶解炉においても、安定した操業方法を提供できる。
【符号の説明】
【0020】
1 高炉
2 炉内装入物
3 羽口
4 出銑口
5 バーナ
6 環状管
11 熱風炉
12 送風機
13 燃焼室
14 蓄熱室
21 覗き窓
22 不定形耐火物

図1
図2
図3
図4