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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046598
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】便通異常改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/9068 20060101AFI20240327BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20240327BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20240327BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240327BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240327BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240327BHJP
【FI】
A61K36/9068
A61P1/10
A61P1/12
A61P17/00
A61P19/00
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023116294
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2022164328
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023068868
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】竹中 涼
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB09
4B018LE02
4B018MD10
4B018MD36
4B018MD37
4B018MD53
4B018MD66
4B018ME11
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF06
4C088AB81
4C088CA02
4C088CA03
4C088CA05
4C088CA10
4C088CA30
4C088MA37
4C088NA14
4C088ZA72
4C088ZA73
4C088ZA89
4C088ZA96
(57)【要約】
【課題】 本発明は、天然物由来の成分を有効成分とする、新たな便通異常改善剤、肌のかさつき改善剤又は腰痛改善剤を提供する。
【解決手段】 発明者らは、加熱ショウガ抽出物に、便秘、頻便若しくは下痢改善効果、排便回数正常化効果等の便通異常改善効果、肌のかさつき効果又は腰痛改善効果があることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、便通異常改善剤。
【請求項2】
加熱ショウガ抽出物がジンゲロールよりショウガオールを多く含む、請求項1記載の便通異常改善剤。
【請求項3】
便秘改善用、頻便改善用若しくは下痢改善用、又は排便回数正常化用である、請求項1又は2記載の便通異常改善剤。
【請求項4】
加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、肌のかさつき改善剤。
【請求項5】
加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、腰痛改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物由来の成分を有効成分とする便通異常改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、慢性的に腹痛・不快感・腹部膨満感・便秘や下痢など便通の異常を来たす人が増加しており、また、腰痛や肌荒れに悩む人も多いことから、日常的に無理なく摂取でき、かつ、これらの症状に改善効果を有する飲食品の開発が望まれている。
【0003】
便通異常の改善については、例えば、超臨界CO2抽出によって得られるショウガの親油性抽出物およびアーティチョーク抽出物を含む組成物が過敏性腸症候群の予防および治癒に有用であること(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5769634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、天然物由来の成分を有効成分とする、新たな便通異常改善剤、肌のかさつき改善剤又は腰痛改善剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、加熱ショウガ抽出物に、便秘、頻便若しくは下痢改善効果、排便回数正常化効果等の便通異常改善効果、肌のかさつき改善効果又は腰痛改善効果があることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]の態様に関する。
[1]加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、便通異常改善剤。
[2]加熱ショウガ抽出物がジンゲロールよりショウガオールを多く含む、[1]記載の便通異常改善剤。
[3]便秘改善用、頻便改善用若しくは下痢改善用、又は排便回数正常化用である、[1]又は[2]記載の便通異常改善剤。
[4]加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、肌のかさつき改善剤。
[5]加熱ショウガ抽出物を有効成分とする、腰痛改善剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって天然物由来の成分を有効成分とする安全な便秘、頻便若しくは下痢改善剤、排便回数正常化剤等の便通異常改善剤、肌のかさつき改善剤又は腰痛改善剤を提供でき、摂取することで、便秘、頻便若しくは下痢改善効果、排便回数正常化効果等の便通異常改善効果、肌のかさつき改善効果又は腰痛改善効果が得られ、各種飲食品、医薬品、医薬部外品等に含ませて利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の便秘、頻便若しくは下痢改善剤、排便回数正常化剤等の便通異常改善剤、肌のかさつき改善剤又は腰痛改善剤(以後、まとめて本発明の製剤と呼ぶことがある)は、加熱ショウガ抽出物を有効成分として含有し、摂取により便秘、頻便若しくは下痢改善効果、排便回数正常化効果等の便通異常改善効果、肌のかさつき改善効果又は腰痛改善効果を発する。また、該便通異常改善剤は、便秘、頻便若しくは下痢改善用、又は排便回数正常化用に使用することができる。
【0010】
本発明で使用する加熱ショウガ抽出物は、ショウガ科植物を抽出前後に加熱して得られる抽出物であって、抽出法としては、超臨界抽出法、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法等が例示でき、不織布、メッシュ等を用いたろ過、遠心分離等により、固液分離したショウガ抽出液を加熱処理してもよく、加熱処理後に抽出又は固液分離して液部を回収してもよい。濃縮及び/又は乾燥した、濃縮品や乾燥品が好ましく、ドラムドライ、エアードライ、スプレードライ、真空乾燥及び/又は凍結乾燥等により乾燥して、粉末化でき、一般的な賦形剤を使用できる。具体的には、加熱ショウガ抽出物は、乳化剤を加えて乳化することで分散性を高めた後、デキストリン等の賦形剤を配合して、噴霧乾燥して得られる粉末品が好ましく、例えばジンジャーエキスパウダーS、H、E又はNE(池田糖化工業株式会社製)を使用できる。生の植物中又は未加熱のショウガ抽出物中では、ジンゲロール含有量よりショウガオール含有量の方がはるかに少ないことが知られているが、本発明では、抽出前後に加熱等の処理を行ってショウガオール含有量を高めており、加熱ショウガ抽出物はジンゲロールよりショウガオールを多く含むのが好ましく、ショウガオールをジンゲロールの1.5倍以上含むのがより好ましく、2倍以上含むのがさらに好ましく、3倍以上含むのが特に好ましく、上限は特に限定されないが、15倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましい。ショウガオール含有量が高められれば特に限定されないが、製造方法として例えば、100~300℃、好ましくは120~250℃で加熱することで、ショウガオール含有量の高い加熱ショウガ抽出物を製造できる。加熱ショウガ抽出物中のショウガオール含有量は、0.1~20重量%が好ましく、0.2~15重量%がより好ましく、0.5~10重量%がさらに好ましい。
【0011】
前記乳化剤は、乳化能力を有する成分であれば特に限定されないが、例えば、アカシアガム、ガティガム、キサンタンガム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム等の多糖類、カゼイン、大豆タンパク質等のタンパク質又はタンパク加水分解物、レシチン、酵素処理レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。乳化処理は、一般的な乳化方法で行うことができる。詳細には、乳化装置を用いて行うことができ、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモミキサー、ホモディスパー等を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。
【0012】
本発明の製剤の摂取方法としては、加熱ショウガ抽出物を経口摂取すればよく、本発明の効果が認められる摂取量であれば特に限定されないが、加熱ショウガ抽出物の一人一日当たりの摂取量は、5~2,000mgが好ましく、10~1,000mgがより好ましく、20~500mgがさらに好ましく、加熱ショウガ抽出物中に含まれる6-ショウガオールの一人一日当たりの摂取量は、0.1~50mgが好ましく、0.2~40mgがより好ましく、0.4~20mgがさらに好ましく、0.5~15mgが特に好ましい。該摂取量を摂取できるよう、本発明の組成物を1日1回又は数回に分けて摂取すればよい。
【0013】
本発明の製剤はその有効成分が天然物由来であり、かつ、製造が容易なため、広く利用でき、各種製品に添加が可能で、液体で添加してもよく、乾燥品を添加してもよい。添加する飲食品等は特に限定されないが、飲料、食品、調味料、機能性食品、サプリメント等の各種飲食品の他、医薬品、医薬部外品、飼料等にも利用できる。各種製品中の加熱ショウガ抽出物の含有量は、摂取により本発明の効果が認められる量であれば特に限定されないが、0.001~80重量%が好ましく、0.005~60重量%がより好ましく、0.01~50重量%がさらに好ましい。
【実施例0014】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【実施例0015】
(便秘、下痢、肌のかさつき又は腰痛の評価試験)
成人の男女で、日常的に便秘・下痢気味、肌の不調又は関節痛の自覚症状を有する29名を被験者として、1日に1回1カプセルずつ、30日間連続で摂取させた。
【0016】
カプセルの配合内訳は、加熱ショウガ抽出液に、アカシアガム(インスタントガム、Nexira株式会社製)を乳化剤として加えて乳化し、デキストリン(サンデック(登録商標)#300、三和澱粉工業株式会社製)を賦形剤として加えて噴霧乾燥して得られた粉末の加熱ショウガ抽出物(ジンジャーエキスパウダーE、池田糖化工業株式会社製)100mg(40%)、デキストリン(パインデックス(登録商標)#100、松谷化学工業株式会社社製)147mg(58.8%)及びステアリン酸カルシウム3mg(1.2%)(合計250mg)とした。
【0017】
ジンジャーエキスパウダーEに含まれる6-ジンゲロール、6-ショーガオール及び6-パラドールの含量を、表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
摂取前(0日目)を基準として、試験最終日における各評価項目(便秘、下痢、肌のかさつき又は腰痛)の状態を「良い:+2点」、「やや良い:+1点」、「変わらない:0点」、「やや悪い:-1点」、「悪い:-2点」の5段階で評価した。それぞれの評価項目で被験者全員の試験最終日の点数を合計し、人数で除した数字が0より大きい場合は改善、0より小さい場合を悪化していると判断した。その結果を表2に示した。
【0020】
【表2】
【0021】
表2より、便秘、下痢、肌のかさつき又は腰痛の各評価項目で改善が確認できた。特に、便秘の評価項目で、優れた効果を有していることが明らかとなった。尚、各評価項目で、改善が確認できたことから、加熱ショウガ抽出物による、便秘改善効果、下痢改善効果といった便通異常改善効果、肌のかさつき改善効果及び腰痛改善効果が明らかになり、加熱ショウガ抽出物を有効成分とする便通異常改善剤、肌のかさつき改善剤又は腰痛改善剤として有用であることが分かった。
【実施例0022】
(排便回数の評価試験)
便秘気味(1週間の排便回数が3~5回)の健常な日本人の成人男女30人を試験対象として、被験食品を摂取する群と対照食品(プラセボ)を摂取する群の2グループに分けた。被験者には、1日当たり1カプセルを4週間連続で摂取させた。
【0023】
カプセルの配合内訳は、被験食品が、加熱ショウガ抽出物(ジンジャーエキスパウダーE)100mg(6-ショウガオールとして2mg)、デキストリン(パインデックス(登録商標)#100)147mg、ステアリン酸カルシウム3mg(合計:250mg)で、プラセボが、デキストリン(サンデック(登録商標)#300)100mg、デキストリン(パインデックス(登録商標)#100)147mg、ステアリン酸カルシウム3mg(合計:250mg)とした。
【0024】
摂取開始日を0日目として、摂取22日目から28日目の期間における、7日間の排便回数合計を被験食品群とプラセボ群とで比較し、結果を表3に示した。
【0025】
【表3】
【0026】
加熱ショウガ抽出物を4週間毎日100mg(6-ショウガオールとして2mg)摂取することで、1週間の排便回数が平均で4回だった被験者の排便回数が、6.8回まで増加した。これはプラセボ群と比較して優位な増加であり、加熱ショウガ抽出物が便秘改善効果を有することで、排便回数を正常化させる効果が明らかになり、加熱ショウガ抽出物を有効成分とする排便回数正常化剤といった便通異常改善剤として有用であることが分かった。
【実施例0027】
(排便回数の評価試験)
1週間の排便回数が10~20回の健常な日本人の成人男女30人を試験対象として、被験食品を摂取する群と対照食品(プラセボ)を摂取する群の2グループに分けた。被験者には、1日当たり1カプセルを4週間連続で摂取させた。尚、被験食品及び対照食品(プラセボ)は、実施例2と同じ配合のカプセルを使用した。
【0028】
摂取開始日を0日目として、摂取22日目から28日目の期間における、7日間の排便回数合計を被験食品群とプラセボ群とで比較し、結果を表4に示した。
【0029】
【表4】
【0030】
加熱ショウガ抽出物を4週間毎日100mg(6-ショウガオールとして2mg)摂取することで、1週間の排便回数が平均で13回だった被験者の排便回数が、7.2回まで減少した。これはプラセボ群と比較して優位な減少であり、加熱ショウガ抽出物が頻便改善効果を有することで、排便回数を正常化させる効果が明らかになり、加熱ショウガ抽出物を有効成分とする排便回数正常化剤といった便通異常改善剤として有用であることが分かった。