(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004660
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】無人搬送車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B66F9/24 M
B66F9/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104379
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】柿田 頼輝
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333BB02
3F333BE02
3F333FA08
3F333FD06
3F333FD08
3F333FE04
(57)【要約】
【課題】簡単な処理でマストの傾動角を制御することができる無人搬送車両を提供する。
【解決手段】無人搬送車両は、マストと、マストに取り付けられたフォークと、マストを傾動させるティルトシリンダ15と、を有する荷役装置と、マストの姿勢を制御する制御装置30と、を備える。制御装置30は、フォークの定位置で保持される荷物の重量を検出する検出部34と、検出部34で検出された荷物の重量に基づいて、定位置での荷物の重量とフォークの撓み角度の推定値との関係を示すデータを参照し、フォークの撓み角度を推定する推定部35と、推定値に基づいて、フォークを水平にするためのマストの傾動角の補正量を算出する算出部37と、補正量に基づいて、ティルトシリンダ15によりマストの傾動角を制御する制御部38と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マストと、前記マストに取り付けられたフォークと、前記マストを傾動させるティルトシリンダと、を有する荷役装置と、
前記マストの姿勢を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記フォークの定位置で保持される荷物の重量を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記荷物の重量に基づいて、前記定位置での前記荷物の重量と前記フォークの撓み角度の推定値との関係を示すデータを参照し、前記フォークの撓み角度を推定する推定部と、
前記推定値に基づいて、前記フォークを水平にするための前記マストの傾動角の補正量を算出する算出部と、
前記補正量に基づいて、前記ティルトシリンダにより前記マストの傾動角を制御する制御部と、を有する無人搬送車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記荷物の画像を取得する取得部と、
前記画像に基づいて、前記荷物のカテゴリを判別する判別部と、を更に有し、
前記データは、前記荷物のカテゴリに対応する複数のカテゴリ別データを含み、
前記推定部は、前記判別部によって判別された前記荷物のカテゴリに基づいて、前記複数のカテゴリ別データの中から、前記フォークの撓み角度の推定に用いるカテゴリ別データを選択する、請求項1に記載の無人搬送車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記荷物が前記フォークの前記定位置で保持されているか否かを確認する確認部を、更に有する、請求項1又は2に記載の無人搬送車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出部による前記荷物の重量の検出の実行前に、前記マストが垂直となるように、前記ティルトシリンダにより前記マストの傾動角を制御する、請求項1又は2に記載の無人搬送車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人搬送車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無人搬送車両として、例えば特許文献1に記載の無人搬送車両がある。この従来の無人搬送車両は、マストと、マストに取り付けられたフォークと、を有する荷役装置を備える。この従来の無人搬送車両は、荷物の重心を算出し、算出された荷物の重心から荷物によりフォークにかかるモーメントを算出し、該モーメントからフォークの撓み角度を算出する。さらに、この従来の無人搬送車両は、算出されたフォークの撓み角度を用いて、フォークが水平となるようにマストの傾動角を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のような手法では、マストの傾動角を制御するにあたって、荷物の重心及び該荷物によりフォークにかかるモーメントを算出する必要があり、処理が複雑になるおそれがある。
【0005】
本開示では、上記課題の解決のためになされたものであり、簡単な処理でマストの傾動角を制御することができる無人搬送車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る無人搬送車両は、マストと、マストに取り付けられたフォークと、マストを傾動させるティルトシリンダと、を有する荷役装置と、マストの姿勢を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、フォークの定位置で保持される荷物の重量を検出する検出部と、検出部で検出された荷物の重量に基づいて、定位置での荷物の重量とフォークの撓み角度の推定値との関係を示すデータを参照し、フォークの撓み角度を推定する推定部と、推定値に基づいて、フォークを水平にするためのマストの傾動角の補正量を算出する算出部と、補正量に基づいて、ティルトシリンダによりマストの傾動角を制御する制御部と、を有する。
【0007】
この無人搬送車両では、当該無人搬送車両においてフォークの定位置に荷物が保持される傾向があることを鑑み、フォークの定位置での荷物の重量とフォークの撓み角度の推定値との関係を示すデータを参照することで、フォークの撓み角度を推定する。そして、フォークの撓み角度の推定値に基づいて算出した補正量に基づいてマストの傾動角を制御する。この無人搬送車両では、フォークの定位置での荷物の重量に基づいてフォークの撓み角度を推定することで、荷物の重心及び荷物によりフォークにかかるモーメントの算出が不要となるため、簡単な処理でマストの傾動角を制御することができる。
【0008】
制御装置は、荷物の画像を取得する取得部と、画像に基づいて、荷物のカテゴリを判別する判別部と、を更に有していてもよい。データは、荷物のカテゴリに対応する複数のカテゴリ別データを含んでいてもよい。推定部は、判別部によって判別された荷物のカテゴリに基づいて、複数のカテゴリ別データの中から、フォークの撓み角度の推定に用いるカテゴリ別データを選択してもよい。この場合、荷物のカテゴリ別に、荷物の重量に対するフォークの撓み角度の推定値を算出できる。したがって、フォークの撓み角度を精度良く推定することができる。
【0009】
制御装置は、荷物がフォークの定位置で保持されているか否かを確認する確認部を更に有していてもよい。これにより、データから得られるフォークの撓み角度の推定値と、荷物の重量による実際のフォークの撓み角度との間にずれが生じることを抑制することができる。
【0010】
制御部は、検出部による荷物の重量の検出の実行前に、マストが垂直となるように、ティルトシリンダによりマストの傾動角を制御してもよい。荷物の重量を検出する際のマストの姿勢を垂直に揃えることで、データから得られるフォークの撓み角度の推定値と、荷物の重量による実際のフォークの撓み角度との間にずれが生じることをより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、簡単な処理でマストの傾動角を制御することができる無人搬送車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に係る無人搬送車両の一例を示す側面図である。
【
図2】無人搬送車両が荷物を保持した際の荷物及びフォークの構成を示す図である。
【
図3】制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】定位置での荷物の重量とフォークの撓み角度の推定値との関係を示すデータの一例を示す図である。
【
図5】制御装置によるマストの姿勢の制御が行われた後の荷物及びフォークの構成を示す図である。
【
図6】制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る無人搬送車両の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本開示に係る無人搬送車両1の一例を示す側面図である。無人搬送車両1は、例えば屋内外の任意の位置に設定された荷取位置で荷物Wを受け取り、受け取った荷物Wを搬送する自動運転フォークリフトとして構成されている。
図1に示されるように、無人搬送車両1は、走行装置2と、走行装置2の前側に配置された荷役装置3と、マスト11の姿勢を制御する制御装置30(
図3参照)と、を備えている。
【0015】
走行装置2は、車体4と、車体4の前部に配置された一対の駆動輪である前輪5と、車体4の後部に配置された一対の操舵輪である後輪6と、を有している。車体4には、ヘッドガードを含むフレームによって構成された運転室7が設けられている。運転室7内には、リフトシリンダ14の操作に用いるリフト操作レバー、ティルトシリンダ15の操作に用いるティルト操作レバー、無人搬送車両1の操舵のためのステアリングなどが配置されている。加えて、走行装置2は、前輪5を回転させる走行モータと、無人搬送車両1のハンドル軸を回転させることにより後輪6を転舵させる転舵モータと、を有している。無人搬送車両1では、走行モータが前輪5を回転させ、転舵モータが後輪6を転舵させることで、走行装置2による自動走行が実現される。
【0016】
荷役装置3は、車体4の前部に取り付けられたマスト11と、マスト11にリフトブラケット12を介して取り付けられ、荷物Wを保持する一対のフォーク13と、フォーク13を昇降させるリフトシリンダ14と、マスト11を傾動させるティルトシリンダ15と、フォーク13が荷物Wを保持する際の定位置Pを規定するスペーサ16と、を有している。フォーク13は、リフトブラケット12から前方に突出するように取り付けられている。フォーク13は、荷物Wを保持していない状態では、
図1に示されるように、マスト11に対して垂直(地面に対して水平)となるようにリフトブラケット12に取り付けられている。
【0017】
本実施形態では、スペーサ16は、例えば箱型をなしており、スペーサ16の背面は、フォーク13の基端部と接している。スペーサ16の設置位置は、フォーク13上における荷物Wの積載部分が十分に確保される位置であればよく、上述した位置に限定されない。例えばスペーサ16の背面は、フォーク13の基端部から離間していてもよい。スペーサ16は、例えば金属材料によって形成されている。これにより、スペーサ16は、荷物Wの押し込みによる形状の変化がないように十分な強度を有している。スペーサ16を構成する金属材料としては、例えばアルミニウム、強化プラスチックが挙げられる。
【0018】
無人搬送車両1は、上述したように、例えば自動運転フォークリフトとして構成されており、荷物Wをフォーク13の定位置Pで保持することを前提として運用される。上述したように、フォーク13が荷物Wを保持する際の定位置Pは、スペーサ16によって規定されている。本実施形態では、定位置Pは、フォーク13の基端側かつスペーサ16の前面に接する位置となっている。
【0019】
図2を参照して、無人搬送車両1が荷物Wを保持した際のフォーク13の撓み角度θ1について、説明する。
図2は、無人搬送車両1が荷物Wを保持した際の荷物W及びフォーク13の構成を示す図である。上述したように、無人搬送車両1では、フォーク13の定位置Pで荷物Wを保持することを前提とした運用がなされており、荷物Wは、定位置Pにおいてスペーサ16の前面に接するようにフォーク13に保持されている。
【0020】
フォーク13の定位置Pで荷物Wを保持する場合、荷物Wの重量によってフォーク13に撓みが生じることがある。荷物Wの重量によってフォーク13に撓みが生じると、
図2に示されるように、マスト11が地面に対して垂直な姿勢となっている場合であっても、フォーク13の先端側が基端側よりも低くなり、水平に対する撓み角度θ1をもって傾斜してしまうことが考えられる。これに対し、無人搬送車両1は、フォーク13の撓みに対する荷物Wの保持性能を維持すべく、撓み角度θ1の推定によるマスト11の姿勢を制御する制御装置30を備えている。以下、当該機能を実現するための構成要素の詳細を述べる。
【0021】
図3は、制御装置30の機能的構成を示すブロック図である。制御装置30は、上述した荷物Wの重量によるフォーク13の撓み角度θ1を考慮して、マスト11の姿勢を制御する装置である。制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する電子制御ユニットである。制御装置30は、例えばROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御装置30は、機能要素として、取得部31と、判別部32と、確認部33と、検出部34と、推定部35と、保有部36と、算出部37と、制御部38と、を有する。
【0022】
取得部31は、荷物Wの画像を取得する部分である。本実施形態では、取得部31は、撮像装置20と情報通信可能に接続されている。取得部31は、撮像装置20から荷物Wの画像を取得し、取得した荷物Wの画像を判別部32へ出力する。撮像装置20は、フォーク13に保持される荷物Wを撮像する装置である。本実施形態では、無人搬送車両1が撮像装置20を備えている。
図1に示される例では、撮像装置20は、マスト11の上部に取り付けられている。撮像装置20は、例えばリフトブラケット12の上部に取り付けられていてもよい。撮像装置20は、例えばCCDカメラなどの撮像素子を備えて構成されている。撮像装置20は、カラー画像を取得する装置であってもよく、モノクロ画像を取得する装置であってもよい。
【0023】
撮像装置20は、例えば荷物Wがフォーク13の定位置Pで保持されたタイミングで荷物Wを撮像し、荷物Wの画像を取得部31に出力する。この場合、後述する確認部33において、荷物Wがフォーク13の定位置Pで保持されていることを示す情報を撮像装置20に出力し、荷物Wの撮像のトリガーとしてもよい。撮像装置20は、荷物Wがフォーク13の定位置Pで保持されるタイミングよりも前に荷物Wを撮像してもよい。この場合、例えば光学センサ等で無人搬送車両1への荷物Wの接近を検出し、当該検出を荷物Wの撮像のトリガーとしてもよい。
【0024】
判別部32は、荷物Wのカテゴリを判別する部分である。判別部32は、取得部31から受け取った荷物Wの画像に基づいて荷物Wのカテゴリを判別する。荷物Wのカテゴリとは、荷物Wの中身による分類ではなく、荷物Wの重心位置の高さ位置或いは前後位置による分類を示す。判別部32は、荷物Wの重心位置を推定するための演算を実行せず、荷物Wの重心位置は、荷物のサイズ(コンテナや箱のサイズ)から予め大まかにカテゴライズされている。本実施形態では、荷物Wのカテゴリは、荷物Wのサイズに応じて、3つのカテゴリに分けられている。判別部32は、取得部31から受け取った荷物Wの画像を解析し、荷物Wのサイズに基づいて荷物Wのカテゴリを判別する。判別部32は、荷物Wのカテゴリの判別結果を示す情報を確認部33に出力する。
【0025】
確認部33は、荷物Wがフォーク13の定位置Pで保持されているか否かを確認する部分である。確認部33は、判別部32から荷物Wのカテゴリの判別結果を示す情報を受け取ると、リミットスイッチ17からの検出情報を待機する。リミットスイッチ17は、
図1に示されるように、スペーサ16の前面に設けられている。本実施形態では、リミットスイッチ17は、接触式のリミットスイッチであり、荷役装置3の構成要素となっている。フォーク13が定位置Pで荷物Wを保持していない状態では、リミットスイッチ17は、スペーサ16の前面から前方に張り出している。
【0026】
フォーク13が定位置Pで荷物Wを保持した状態では、荷物Wによってリミットスイッチ17がスペーサ16側に押し込まれ、荷物Wが定位置Pで保持されていることを示す検出情報がリミットスイッチ17から確認部33に出力される。確認部33は、検出情報を受け取ることで荷物Wが定位置Pで保持されていることを確認し、検出情報を検出部34に出力する。なお、確認部33は、判別部32から荷物Wのカテゴリの判別結果を示す情報を受け取ってから一定の時間が経過するまでにリミットスイッチ17からの検出信号を受け取らなかった場合には、その旨を示す警告情報を外部に報知してもよい。この場合、定位置Pからずれた状態で荷物Wがフォーク13に保持されることを防止できる。
【0027】
検出部34は、荷物Wの重量を検出する部分である。検出部34は、確認部33から検出情報を受け取ると、荷物Wの重量を検出する。本実施形態では、検出部34は、例えばマスト11が地面に対して垂直な状態におけるリフトシリンダ14の圧力と荷物Wの重量との関係を示すデータを保有している。検出部34は、確認部33から検出信号を受け取ったタイミングでリフトシリンダ14の圧力を取得し、取得した圧力に基づいて上記データを参照することにより、荷物Wの重量を検出する。検出部34は、荷物Wの重量の検出結果を示す情報を、荷物Wのカテゴリの判別結果を示す情報と共に推定部35に出力する。
【0028】
推定部35は、フォーク13の撓み角度θ1を推定する部分である。推定部35は、検出部34から荷物Wの重量の検出結果を示す情報を受け取ると、定位置Pでの荷物Wの重量とフォーク13の撓み角度θ1の推定値との関係を示すデータを参照し、フォーク13の撓み角度θ1の推定値を取得する。推定部35は、撓み角度θ1の推定結果を示す情報を算出部37に出力する。
【0029】
図4は、定位置Pでの荷物Wの重量とフォーク13の撓み角度θ1の推定値との関係を示すデータdの一例を示す図である。
図4に示される例では、定位置Pでの荷物Wの重量とフォーク13の撓み角度θ1の推定値との関係を示すデータdは、荷物Wのカテゴリに対応する複数のカテゴリ別データを含んでいる。ここでは、荷物Wの3つのカテゴリに対応して、データdに3つのカテゴリ別データd1,d2,d3が含まれている。
図4に示される例では、カテゴリ別データd1,d2,d3のいずれにおいても、荷物Wの重量と撓み角度θ1の推定値との関係が線形となっており、荷物Wの重量が増加するほど撓み角度θ1の推定値が増加する関係となっている。
【0030】
推定部35は、荷物Wのカテゴリの判別結果を示す情報に基づいて荷物Wのカテゴリを特定し、カテゴリ別データd1,d2,d3の中からフォーク13の撓み角度θ1の推定に用いるカテゴリ別データを選択する。次に、推定部35は、荷物Wの重量の検出結果を示す情報に基づいて選択したカテゴリ別データを参照し、フォーク13の撓み角度θ1の推定値を取得する。
【0031】
本実施形態では、複数のカテゴリ別データd1,d2,d3を含むデータdは、保有部36に保有されている。データdは、無人搬送車両1が定位置Pで荷物を保持し、かつ、マスト11が垂直であるという条件の下で、荷物の重量を変えながらフォーク13の撓み量を実測することで生成され、保有部36に予め格納されている。
【0032】
算出部37は、マスト11の傾動角θ2の補正量を算出する部分である。算出部37は、推定部35から撓み角度θ1の推定結果を示す情報を受け取ると、当該情報に基づいて、フォーク13を水平にするためのマスト11の傾動角θ2(
図5参照)の補正量を算出する。本実施形態では、算出部37は、フォーク13の撓み角度θ1の推定値とフォーク13が水平である際の角度との差分値をマスト11の傾動角θ2の補正量として算出する。算出部37は、フォーク13の撓み角度θ1の推定値とフォーク13が水平である際の角度との差分値に所定の係数を乗算した値をマスト11の傾動角θ2の補正量として算出してもよい。算出部37は、算出した補正量を制御部38に出力する。
【0033】
制御部38は、マスト11の傾動角θ2を制御する部分である。一例では、制御部38は、算出部37から受け取った補正量に基づいて、ティルトシリンダ15によりマスト11の傾動角θ2を制御する。本実施形態では、
図5に示されるように、制御部38は、算出部37から受け取った補正量に基づいてマスト11を後傾させる。これにより、荷物Wの重量によって先端側が基端側よりも低くなるように撓んだフォーク13がマスト11と共に回動し、荷物Wがフォーク13の定位置Pで水平に保持される。
【0034】
図6を参照して、制御装置30の動作の一例を説明する。
図6は、制御装置30の動作の一例を示すフローチャートである。
【0035】
ステップS1では、荷物Wの画像を取得する。ステップS2では、荷物Wの画像に基づいて判別部32が荷物Wのカテゴリを判別する。ステップS3では、荷物Wがフォーク13の定位置Pで保持されているか否かを確認する。荷物Wが定位置Pで保持されていない場合には、その旨の警告が報知されてもよい。ステップS4では、マスト11が垂直となるようにマスト11の傾動角θ2を制御する。ステップS5では、マスト11が垂直となった状態で検出部34が荷物Wの重量を検出する。ここでは、例えばリフトシリンダ14の圧力に基づいて荷物Wの重量を検出する。
【0036】
ステップS6では、フォーク13の撓み角度θ1を推定する。ここでは、ステップS2にて判別された荷物Wのカテゴリに基づいて、複数のカテゴリ別データd1,d2,d3の中からフォーク13の撓み角度θ1の推定に用いるカテゴリ別データを選択する。次に、ステップS5にて検出された荷物Wの重量に基づいて選択されたカテゴリ別データを参照し、フォーク13の撓み角度θ1を推定する。
【0037】
ステップS7では、算出部37がマスト11の傾動角θ2の補正量を算出する。ここでは、ステップS6にて推定されたフォーク13の撓み角度θ1の推定値と、フォーク13が水平である際の角度との差分値を、マスト11の傾動角θ2の補正量として算出する。ステップS8では、制御部38がマスト11の傾動角θ2を制御する。ここでは、ステップS7にて算出されたマスト11の傾動角θ2の補正量に基づいて、ティルトシリンダ15によりマスト11の傾動角θ2を制御する。当該傾動角θ2に基づいてマスト11を後傾させることにより、荷物Wがフォーク13の定位置Pで水平に保持される。
【0038】
以上説明したように、無人搬送車両1では、フォーク13の定位置Pに荷物Wが保持される傾向があることを鑑み、フォーク13の定位置Pでの荷物Wの重量とフォーク13の撓み角度θ1の推定値との関係を示すデータdを参照することで、フォーク13の撓み角度θ1を推定する。そして、フォーク13の撓み角度θ1の推定値に基づいて算出した補正量に基づいてマスト11の傾動角θ2を制御する。無人搬送車両1では、フォーク13の定位置Pでの荷物Wの重量に基づいてフォーク13の撓み角度θ1を推定することで、荷物Wの重心及び荷物Wによりフォーク13にかかるモーメントの算出が不要となるため、簡単な処理でマスト11の傾動角θ2を制御することができる。
【0039】
無人搬送車両1では、制御装置30は、荷物Wの画像を取得する取得部31と、画像に基づいて、荷物Wのカテゴリを判別する判別部32と、を有している。データdは、荷物Wのカテゴリに対応する複数のカテゴリ別データd1,d2,d3を含んでいる。推定部35は、判別部32によって判別された荷物Wのカテゴリに基づいて、複数のカテゴリ別データd1,d2,d3の中から、フォーク13の撓み角度θ1の推定に用いるカテゴリ別データを選択する。この場合、荷物Wのカテゴリ別に、荷物Wの重量に対するフォーク13の撓み角度θ1の推定値を算出できる。したがって、フォーク13の撓み角度θ1を精度良く推定することができる。
【0040】
無人搬送車両1では、制御装置30は、荷物Wがフォーク13の定位置Pで保持されているか否かを確認する確認部33を有している。これにより、データdから得られるフォーク13の撓み角度θ1の推定値と、荷物Wの重量による実際のフォーク13の撓み角度θ1との間にずれが生じることを抑制することができる。
【0041】
無人搬送車両1では、制御部38は、検出部34による荷物Wの重量の検出の実行前に、マスト11が垂直となるように、ティルトシリンダ15によりマスト11の傾動角θ2を制御する。荷物Wの重量を検出する際のマスト11の姿勢を垂直に揃えることで、データdから得られるフォーク13の撓み角度θ1の推定値と、荷物Wの重量による実際のフォーク13の撓み角度θ1との間にずれが生じることをより確実に抑制することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0043】
例えば無人搬送車両1は、必ずしも撮像装置20を備えていなくてもよい。この場合、例えば無人搬送車両1の走行エリアに設けられている固定カメラから荷物Wの画像を取得し、荷物Wのカテゴリの判別に用いてもよい。また、例えば制御装置30は、必ずしも保有部36を有していなくてもよい。この場合フォーク13の定位置Pでの荷物Wの重量とフォーク13の撓み角度θ1の推定値との関係を示すデータdは、制御装置30とは異なる外部サーバに格納されていてもよい。当該外部サーバから所定の通信ネットワークを介してデータdを受信することで、推定部35での撓み角度θ1の推定値の取得を実施できる。
【0044】
本開示の要旨は、以下の[1]~[4]のとおりである。
[1]マストと、前記マストに取り付けられたフォークと、前記マストを傾動させるティルトシリンダと、を有する荷役装置と、前記マストの姿勢を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記フォークの定位置で保持される荷物の重量を検出する検出部と、前記検出部で検出された前記荷物の重量に基づいて、前記定位置での前記荷物の重量と前記フォークの撓み角度の推定値との関係を示すデータを参照し、前記フォークの撓み角度を推定する推定部と、前記推定値に基づいて、前記フォークを水平にするための前記マストの傾動角の補正量を算出する算出部と、前記補正量に基づいて、前記ティルトシリンダにより前記マストの傾動角を制御する制御部と、を有する無人搬送車両。
[2]前記制御装置は、前記荷物の画像を取得する取得部と、前記画像に基づいて、前記荷物のカテゴリを判別する判別部と、を更に有し、前記データは、前記荷物のカテゴリに対応する複数のカテゴリ別データを含み、前記推定部は、前記判別部によって判別された前記荷物のカテゴリに基づいて、前記複数のカテゴリ別データの中から、前記フォークの撓み角度の推定に用いるカテゴリ別データを選択する、[1]に記載の無人搬送車両。
[3]前記制御装置は、前記荷物が前記フォークの前記定位置で保持されているか否かを確認する確認部を、更に有する、[1]又は[2]に記載の無人搬送車両。
[4]前記制御部は、前記検出部による前記荷物の重量の検出の実行前に、前記マストが垂直となるように、前記ティルトシリンダにより前記マストの傾動角を制御する、[1]~[3]のいずれかに記載の無人搬送車両。
【符号の説明】
【0045】
1…無人搬送車両、3…荷役装置、11…マスト、13…フォーク、15…ティルトシリンダ、30…制御装置、31…取得部、32…判別部、33…確認部、34…検出部、35…推定部、37…算出部、38…制御部、d…データ、d1,d2,d3…カテゴリ別データ、P…定位置、W…荷物、θ1…撓み角度、θ2…傾動角。