(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046608
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】第1の電子部品により受信された第1のクロック信号と第2の電子部品により受信された第2のクロック信号との間の位相差を判断する方法
(51)【国際特許分類】
H03K 5/26 20060101AFI20240327BHJP
G06F 1/10 20060101ALI20240327BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H03K5/26 C
G06F1/10 520
G06F1/10 510
H01Q3/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023142035
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】2209612
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】517204025
【氏名又は名称】テレダイン・イー・2・ブイ・セミコンダクターズ・エス・ア・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シモン・ジョレ
(72)【発明者】
【氏名】カンタン・ベロー-シュドロー
(72)【発明者】
【氏名】レミ・ローブ
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ブレイセ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・マルタン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・コシャール
【テーマコード(参考)】
5J021
5J039
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021FA22
5J021FA29
5J021HA07
5J039JJ07
5J039JJ15
5J039KK23
5J039KK28
5J039MM01
5J039MM02
5J039MM16
5J039NN05
(57)【要約】
【課題】第1の電子部品により受信された第1のクロック信号と第2の電子部品により受信された第2のクロック信号との間の位相差を判断する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、第1の電子部品(CE1)により受信された第1のクロック信号(CK1)と第2の電子部品(CE2)により受信された第2のクロック信号(CK2)との間の位相差を判断する方法に関し、本方法は以下の工程:
S10)第1の校正信号(S12)を送信する工程;
S20)第1の遅延(T
1)を測定する工程;
S30)第2の校正信号(S21)を送信する工程;
S40)第2の遅延(T
2)を測定する工程;
S50)第1の校正信号(S12)の送信と第2の校正信号(S21)のアクティブエッジに続く第1のクロック信号(CK1)のアクティブエッジとの間のクロックパルスの数(n)を測定する工程;及び
S60)クロックパルスの数(n)のパリティに依存して位相差を判断する工程を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子部品(CE1)により受信された第1のクロック信号(CK1)と第2の電子部品(CE2)により受信された第2のクロック信号(CK2)との間の位相差を判断する方法であって、前記第1のクロック信号(CK1)及び前記第2のクロック信号(CK2)は同期して生成されそして同一クロック周期(Tc)を有し、前記方法は:
S10)前記第1のクロック信号(CK1)と同期した第1の校正信号(S12)を前記第1の電子部品(CE1)により送信する工程;
S20)前記第1の校正信号(S12)のアクティブエッジと前記第1の校正信号(S12)のアクティブエッジに続く前記第2のクロック信号(CK2)のアクティブエッジとの間の第1の遅延(T1)を測定する工程;
S30)前記第2のクロック信号(CK2)と同期した第2の校正信号(S21)を前記第2の電子部品(CE2)により送信する工程;
S40)前記第2の校正信号(S21)のアクティブエッジと前記第2の校正信号(S21)のアクティブエッジに続く前記第1のクロック信号(CK1)のアクティブエッジとの間の第2の遅延(T2)を測定する工程;
S50)前記第1の校正信号(S12)の前記送信と前記第2の校正信号(S21)の前記アクティブエッジに続く前記第1のクロック信号(CK1)の前記アクティブエッジとの間のクロックパルスの数(n)を測定する工程であって、クロックパルスの前記数(n)は前記クロック周期(Tc)の倍数に対応する、測定する工程;及び
S60)クロックパルスの前記数(n)のパリティに依存して前記位相差を判断する工程を含む方法。
【請求項2】
nが奇数ならば、
【数1】
nが偶数ならば
【数2】
ここで、nはクロックパルスの前記数に対応し、T
φは前記第1のクロック信号(CK1)と前記第2のクロック信号(CK2)との間の前記位相差に対応し、T
1は前記第1の遅延に対応し、T
2は前記第2の遅延に対応し、そしてT
cは前記クロック周期に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の校正信号(S21)は前記第1の遅延(T1)に続く所定数のクロックパルス後に送信される、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の電子部品(CE1)と前記第2の電子部品(CE2)との間の前記位相差を工程S60)において判断された前記位相差に依存して修正する工程をさらに含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記位相差は定期的に判断される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の校正信号(S12)は第1のライン(L1)上で配索され、前記第2の校正信号(S21)は第2の線(L2)上で配索され、前記第1のライン(L1)の前記長さ及び前記第2の線(L2)の前記長さは等しい、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の校正信号(S12)及び前記第2の校正信号(S21)は同じ双方向ライン上で配索され、前記第2の校正信号(S21)は、前記第1の校正信号(S12)と前記第2の校正信号(S21)との間の競合を回避するように前記第1の校正信号(S12)の受信に対し遅延される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1の電子部品(CE1)により受信された第1のクロック信号(CK1)と第2の電子部品(CE2)により受信された第2のクロック信号(CK2)との間の位相差を判断する為ためのシステムであって、前記第1のクロック信号(CK1)及び前記第2のクロック信号(CK2)は同期して生成されそして同一クロック周期(Tc)を有し、前記システムは以下のこと:
-前記第1のクロック信号(CK1)と同期した第1の校正信号(S12)を前記第1の電子部品(CE1)により送信すること、
-前記第1の校正信号(S12)のアクティブエッジと前記第1の校正信号(S12)のアクティブエッジに続く前記第2のクロック信号(CK2)のアクティブエッジとの間の第1の遅延(T1)を測定すること、
-前記第2のクロック信号(CK2)と同期した第2の校正信号(S21)を前記第2の電子部品(CE2)により送信すること、
-前記第2の校正信号(S21)のアクティブエッジと前記第2の校正信号(S21)のアクティブエッジに続く前記第1のクロック信号(CK1)のアクティブエッジとの間の第2の遅延(T2)を測定すること
-前記第1の遅延(T1)と前記第2の遅延(T2)との間のクロックパルスの前記数(n)を測定することであって、クロックパルスの前記数(n)は前記クロック周期(Tc)の倍数に対応する、測定すること;及び
-クロックパルスの前記数(n)のパリティに依存して位相差を判断すること、を行うように構成されるシステム。
【請求項9】
nが奇数ならば、
【数3】
nが偶数ならば
【数4】
ここで、nはクロックパルスの前記数に対応し、T
φは前記第1のクロック信号(CK1)と前記第2のクロック信号(CK2)との間の前記位相差に対応し、T
1は前記第1の遅延に対応し、T
2は前記第2の遅延に対応し、そしてT
cは前記クロック周期に対応する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の電子部品(CE1)及び前記第2の電子部品(CE2)はアナログ-ディジタル変換器又はディジタル-アナログ変換器である、請求項8及び9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一項に従って位相差を判断するための少なくとも1つのシステムを含むということ特徴とするアレイアンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の電子部品により受信された第1のクロック信号と第2の電子部品により受信された第2のクロック信号との間の位相差を判断する方法と第1の電子部品により受信された第1のクロック信号と第2の電子部品により受信された第2のクロック信号との間の位相差を判断するためのシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
電子システムでは、クロック分配制約はクロック周波数とともに増加する。同じタイプの様々な部品(例えばアンテナアレイ内の又はAESAレーダ(AESA:Active Electronically Scanned Array(能動電子的走査アレイ))内の複数のアナログ-ディジタル変換器)同士を連携させるためにそれらの間のクロックアラインメントを照査することが時々必要である。これらのクロックアラインメントは1度より良い精度を有する必要が時々ある。例えば、12GHzクロック関して、1度の位相差はほぼ200fsに対応する。これらの必要とされる小さな位相差はPCB製造中の配索及びプロセス変動、又はさらには部品により直接影響される。これがクロックアラインメントを困難にする。
【0003】
複数の電子部品を採用する構成では、1又は複数のクロック生成器がクロック信号を様々なクロック経路上で送信する。前述の分散のために、クロック信号の位相は1つの部品から別の部品で異なり得、これが電子部品の同期を潜在的に危険にさらす。
【0004】
100フェムト秒の程度のアラインメントを実現するために、各部品間の位相差が、測定され、そして次に、後処理を介し又はクロック経路上の遅延生成を介し又は部品内に埋め込まれた解決策の使用を介しのいずれかで修正されなければならない。
【0005】
位相差を測定するために、1つの知られた解決策は製造後に最終システムを較正することにその本質がある。所定信号が様々な部品への入力として注入され、そしてチャネル間の位相差が後処理を介し比較される。
【0006】
この解決策は以下の欠点を有する:
-システム毎に位相を動作範囲(温度、供給電圧レベル、動作周波数)全体にわたって特徴付けることが必要である。これは複雑且つ高価な試験手段を必要とする。
-正しい修正を適用するためにこれらのパラメータの値をリアルタイムで照査することが必要であり、これは特にチャネルの数が多い場合に著しい追加複雑性を生じる。
-調節が部品経年変化の結果として時間の経過とともに失われるという危険性がある。したがって部品は定期的に更新されなければならない。
【0007】
いくつかのシステムは位相差の測定をリアルタイムで更新する目的で較正チャネルを組み込む。この解決策の主利点は動作範囲全体にわたる工場内の特徴付けの局面が回避されるということである。位相差はリアルタイムで測定され、そして対応する補正が適用される。補正は部品の経年変化を考慮する。
【0008】
しかし、位相差をリアルタイムで測定するための知られた解決策は以下の欠点を有する:
-較正のための特定チャネルが提供されなければならなく、これはシステムのサイズ、消費電力、コスト及び複雑性を増加させる。加えて、スイッチが校正モードと通常動作モードとの間で切り替えるために必要とされる。これらのスイッチはスプリアス高周波信号を生成することによりRF性能を劣化させ得る。
-校正モードと通常動作モードとは排他的である。したがって、較正中にサービスの喪失がある。
-位相差の測定は様々なチャネル間の相関を行うことにその本質がある。これらの相関は、特にチャネルの数が多い場合に多くの計算能力を必要とする。これらの計算はシステムにより行われるので、較正のために使用される資源は他のタスクのために利用可能ではない。
【0009】
したがって、電子部品へ分配されるクロック信号の位相差をリアルタイムで判断する方法であって較正中にサービスの喪失を生じない方法の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の主題は、第1の電子部品により受信された第1のクロック信号と第2の電子部品により受信された第2のクロック信号との間の位相差を判断する方法であり、第1のクロック信号及び第2のクロック信号は同期して生成されそして同一クロック周期を有し、本方法は以下の工程を含む:
S10)第1のクロック信号と同期した第1の校正信号を第1の電子部品により送信する工程;
S20)第1の校正信号のアクティブエッジと第1の校正信号のアクティブエッジに続く第2のクロック信号のアクティブエッジとの間の第1の遅延を測定する工程;
S30)第2のクロック信号と同期した第2の校正信号を第2の電子部品により送信する工程;
S40)第2の校正信号のアクティブエッジと第2の校正信号のアクティブエッジに続く第1のクロック信号のアクティブエッジとの間の第2の遅延を測定する工程;
S50)第1の校正信号の送信と、第2の校正信号のアクティブエッジに続く第1のクロック信号のアクティブエッジとの間のクロックパルスの数を測定する工程であって、クロックパルスの数はクロック周期の倍数に対応する、測定する工程;
S60)クロックパルスの数のパリティに依存して位相差を判断する工程。
【0011】
有利には、
nが奇数ならば
【数1】
nが偶数ならば
【数2】
ここで、nはクロックパルスの数に対応し、T
φは第1のクロック信号と第2のクロック信号との間の位相差に対応し、T
1は第1の遅延に対応し、T
2は第2の遅延に対応し、そしてT
cはクロック周期に対応する。
【0012】
有利には、第2の校正信号は第1の遅延に続く所定数のクロックパルス後に送信される。
【0013】
有利には、本方法はさらに、第1の電子部品と第2の電子部品との間の位相差を工程S60において判断された位相差に依存して修正する工程を含む。
【0014】
有利には、位相差は定期的に判断される。
【0015】
有利には、第1の校正信号は第1のライン上で配索され、第2の校正信号は第2のライン上で配索され、第1のラインの長さと第2のラインの長さは等しい。
【0016】
変形形態として、第1の校正信号及び第2の校正信号は同じ双方向ライン上で配索され、第2の校正信号は、第1の校正信号と第2の校正信号との間の競合を回避するように第1の校正信号の受信に対し遅延される。
【0017】
本発明はまた、第1の電子部品により受信された第1のクロック信号と第2の電子部品により受信された第2のクロック信号との間の位相差を判断するシステムに関し、第1のクロック信号及び第2のクロック信号は同期して生成されそして同一クロック周期を有し、本システム以下のことをするように構成される:
-第1のクロック信号と同期した第1の校正信号を第1の電子部品により送信すること;
-第1の校正信号のアクティブエッジと第1の校正信号のアクティブエッジに続く第2のクロック信号のアクティブエッジとの間の第1の遅延を測定すること;
-第2のクロック信号と同期した第2の校正信号を第2の電子部品により送信すること;
-第2の校正信号のアクティブエッジと第2の校正信号のアクティブエッジに続く第1のクロック信号のアクティブエッジとの間の第2の遅延を測定すること;
-第1の遅延と第2の遅延との間のクロックパルスの数を測定することであって、クロックパルスの数はクロック周期の倍数に対応する、測定すること;
-クロックパルスの数のパリティに依存して位相差を判断すること。
【0018】
有利には:
nが奇数ならば
【数3】
nが偶数ならば
【数4】
ここで、nはクロックパルスの数に対応し、T
φは第1のクロック信号と第2のクロック信号との間の位相差に対応し、T
1は第1の遅延に対応し、T
2は第2の遅延に対応し、そしてT
cはクロック周期に対応する。
【0019】
有利には、第1の電子部品及び第2の電子部品はアナログ-ディジタル変換器又はディジタル-アナログ変換器である。
【0020】
本発明はまた、位相差を判断するための少なくとも前述のシステムを含むアレイアンテナシステムに関する。
【0021】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、一例として与えられる添付図面を参照して記載される説明を読むと明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】値φ及びδの様々な特定ケースのタイミング図を示す。
【
図5】値φ及びδの様々な特定ケースのタイミング図を示す。
【
図6】値φ及びδの様々な特定ケースのタイミング図を示す。
【
図7】値φ及びδの様々な特定ケースのタイミング図を示す。
【
図8】値φ及びδの様々な特定ケースのタイミング図を示す。
【
図9】値φ及びδの様々な特定ケースのタイミング図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
表現「クロック信号」は回路の行為が行われる際に設定する振動電気信号を意味するものと理解される。その周期はクロックサイクルと呼ばれる。
【0024】
用語「チャネル」(通信チャネル又は送信チャネル)は、一定量の情報が源(又は送り手)から受取人(又は受け手)へ送信されることを可能にする媒体(物理的か否かに関わらず)を意味するものと理解される。
【0025】
本発明が実装される構成が
図1に示される。クロック周期T
cを有するクロック信号がクロック生成器GHにより生成される。クロック生成器GHは、安定したクロックサイクルを有する圧電気水晶ベース発振器又はクロック信号を配送することができる他の部品であり得る。
【0026】
第1の電子部品CE1及び第2の電子部品CE2は、同期して動作し、そしてそうするためにクロック信号を使用する。本発明の一実施形態によると、第1の電子部品CE1及び第2の電子部品CE2はアンテナアレイのアナログ-ディジタル変換器又はディジタル-アナログ変換器である。
【0027】
本明細書の残りでは、第1の電子部品CE1は第1のクロック信号CK1を受信すると考えられ、そして第2の電子部品CE2は第2のクロック信号CK2を受信すると考えられる。第1のクロック信号CK1及び第2のクロック信号CK2は、同期して生成される:すなわちクロック生成器GHにより配送された同じクロック信号に由来する又は同期して働く複数のクロック生成器に由来するかのいずれかである。
【0028】
部品間の技術的分散;温度のような環境制約;又は一方ではクロック生成器GHと第1の電子部品CE1との間のそして他方ではクロック生成器GHと第2の電子部品CE2の間の様々なケーブル長のために、クロック信号の位相は部品のそれぞれにより受信される際に異なる:すなわち部品のそれぞれにより受信されるクロック信号のアクティブエッジ(立上りエッジ又は立下りエッジ)は時間がシフトされる。
【0029】
本明細書の残りでは、2つのクロック信号間の位相差にもかかわらず、クロックサイクル(周期Tc)は、同一であると考えられ、そしてクロック生成器GHにより課されるクロックサイクルに対応すると考えられる。
【0030】
位相差を測定するために、本発明は、隣接部品間の校正ラインによるクロックのエッジに対する既知校正信号のエッジの位置の比較の原理に基づく。部品同士は、それらのクロックと同期するエッジをこの校正ライン上で互いに送信する。中央制御ユニットとの通信を集中型較正ラインへ提供する必要がなく、これはPCB上の実装を容易にする。具体的には、本発明は変換器のディジタルインタフェースを同期させるために使用される既存チャネルを使用する。
【0031】
図3において、第1のクロック信号CK1及び第2のクロック信号CK2は角度φだけ位相がずれる((1)参照)、又は時間T
Φだけシフトされ、これらの2つの量は次の関係式:
φ=2π.T
φ.Fc ここでF
c=1/T
c
により関係付けられる。
【0032】
本発明による方法の第1の工程S10では、第1の校正信号S12が第1のクロック信号CK1と同期して第1の電子部品CE1により送信される(
図3の(2)参照)。第1の校正信号S12は二進信号である。
図3において、第1の電子部品CE1による送信と第2の電子部品CE2による受信との間の伝播遅延Tpは、第1の電子部品CE1の側の第1の校正信号S12の送信の時間を計るために使用されるクロック信号CK1の立上りエッジと第2の電子部品CE2の側の第1の校正信号S12の立上りエッジとの間の遅延に対応する(
図3の(3)参照)が、立上りエッジよりむしろ立下りエッジを考慮することが判断されてもよく、本発明による方法はこれにより修正されない。
【0033】
第2の工程S20では、第1の遅延T
1が、第1の校正信号S12のアクティブエッジと第1の校正信号S12のアクティブエッジに続く第2のクロック信号CK2のアクティブエッジとの間で測定される。第1の遅延T
1は第1の電子部品CE1の次のクロックエッジから遅延δだけ分離される(
図3の(4)参照)。
【0034】
第3の工程S30では、第2の校正信号S21が第2のクロック信号CK2と同期して第2の電子部品CE2により送信される(
図3の(5)参照)。
図3において、この送信は第2のクロック信号CK2の立上りエッジ上で発生する;すなわち、これは慣例であり、そして本発明はまた立下りエッジ上の校正信号の送信により実施される可能性がある。
【0035】
第2の校正信号S21は二進信号である。
図3において、第2の電子部品CE2による送信と第1の電子部品CE1による受信との間の伝播遅延T
pは第1の電子部品CE1の側の立上りエッジと第2の電子部品CE2の側の立上りエッジとの間の遅延に対応する(
図3の(6)参照)。
【0036】
第1の校正信号S12及び第2の校正信号S21が送信されるラインは同一長を有し、したがって校正信号の伝播遅延自体は同一である。変形形態として、第1の校正信号S12及び第2の校正信号S21は双方向ライン上で送信され得る。この場合、所定遅延を導入する双方向バッファが第1の校正信号S12と第2の校正信号S21との間の競合を回避するために必要とされる。
【0037】
第2の校正信号S21は、第1の校正信号S12を受信した直後の連続アクティブエッジ上で送信され得る。しかし、既知数のクロックパルス後に第2の校正信号S21を再送信することが望ましい。これは、測定を決定論的にし、したがって、技術的分散及び環境制約などの外部影響が無視されることを可能にする。
【0038】
第4の工程S40では、第2の遅延T
2が、第2の校正信号S21のアクティブエッジと第2の校正信号S21のアクティブエッジに続く第1のクロック信号CK1のアクティブエッジとの間で測定される。第2の校正信号S21は、第1のクロック信号CK1の次のクロックエッジの前に遅延T
2を有しそして第2のクロック信号CK2の次のクロックエッジの前に遅延δを有し第1の電子部品CE1に到達する(
図3の(7)参照)。
【0039】
第5の工程S50では、第1の校正信号S12の送信と第2の校正信号S21のアクティブエッジに続く第1のクロック信号CK1のアクティブエッジとの間のクロックパルスの数nが判断される。クロックパルスは周期Tcの1クロックサイクルに対応する。この数は、第1の電子部品CE1内に埋め込まれた計数ユニットにより判断され得る。第2の電子部品CE2はまた計数ユニットを含み得、これは、位相差を判断するための手順を開始することを可能にする。
【0040】
第6の工程S60では、位相差はクロックパルスの数nのパリティに依存して判断される。
図3では、一例として、n=5。
【0041】
校正信号の送信及びクロックパルスの数のパリティの判断は、部品へ複雑性をほとんど追加しなく、したがって部品の設計へ容易に取り込まれ得る。加えて、隣接部品間の2つの単一PCBラインだけが校正信号を送信するために必要とされる。1つの特に有利な実施形態では、唯1つのPCBラインが双方向リンクの文脈では必要である。測定は、システムのユーザにとって完全に透明であり(サービスの喪失無し)リアルタイムで行われ得る。
【0042】
Φ<π(したがってT
φ<1/2T
C)及びδ<T
φの特定ケースが
図3に詳細に示された。
【0043】
図4~9は、あらゆる可能なケースのタイミング図を示す。
【0044】
あらゆるケースでは、上に定義された遅延に基づき、次式を書くことが可能である:
n.Tc=2.Tp+T1+T2 (一般式No.1)
【0045】
より一般的形式では、第1の遅延T1の終わりと第2の校正信号S21の送信との間の待ち時間を考慮するためにクロックパルスの数が前式に加えられ得る。この数は知られているので、以下の様々な計算工程におけるその結果と何も変わらない。したがって、計算を単純化するために、待つことのために費やされるクロックパルスの数はゼロに等しいと考えられることになる。
【0046】
T
pを整数のクロックパルスと残りとの合計へ分解することが可能である:
【数5】
【0047】
以下のδの定義によると:
Tc=r+δ (一般式No.3)
【0048】
図4はφ<π及びδ<T
φである第1の特定ケースを示す。
【0049】
この第1のケースでは、第1の遅延T1及び第2の遅延T2は次式に等しい:
T1=δ+Tφ (ケース1の特定式No.1)
T2=δ-Tφ+Tc (ケース1の特定式No.2)
【0050】
【0051】
一般式とケース1の特定式とを組み合わせることにより、下記式が取得される:
n.Tc=2.Tp+T1+T2
n.Tc=2.(q.Tc+r)+2.δ+Tc
n.Tc=(2q+3).Tc
n=2q+3
【0052】
したがって、ケース1に関して、nは奇数である。
【0053】
同じやり方で、φ<π及びT
φ<δ<T
c-T
φである
図5に示すケース2に関して、第1の遅延T
1及び第2の遅延T
2はそれぞれ次式に等しい:
T
1=δ+T
φ (ケース2の特定式No.1)
T
2=δ-T
φ (ケース2の特定式No.2)
【0054】
【0055】
上記と同じ計算を適用することにより、次式が取得される:
n=2(q+1)
【0056】
したがって、ケース2に関して、nは偶数である。
【0057】
φ<π及びδ>T
c-T
φである
図6に示すケース3に関して、第1の遅延T
1及び第2の遅延T
2はそれぞれ次式に等しい:
T
1=δ+T
φ-T
c (ケース3の特定式No.1)
T
2=δ-T
φ (ケース3の特定式No.2)
【0058】
【0059】
上記と同じ計算を適用することにより、次式が取得される:
n=2q+1
【0060】
したがって、ケース3関して、nは奇数である。
【0061】
φ>π及びδ<T
c-T
φである
図7に示すケース4に関して、第1の遅延T
1及び第2の遅延T
2はそれぞれ次式に等しい:
T
1=δ+T
φ (ケース4の特定式No.1)
T
2=δ-T
φ+T
c (ケース4の特定式No.2)
【0062】
【0063】
上記と同じ計算を適用することにより、次式が取得される:
n=2q+3
【0064】
したがって、ケース4に関し、nは奇数である。
【0065】
φ>π及びT
c-T
φ<δ<T
φである
図8に示すケース5関して、第1の遅延T
1及び第2の遅延T
2はそれぞれ次式に等しい:
T
1=δ+T
φ-T
c (ケース5の特定式No.1)
T
2=δ-T
φ+T
c (ケース5の特定式No.2)
【0066】
【0067】
上記と同じ計算を適用することにより、次式が取得される:
n=2(q+1)
【0068】
したがって、ケース5に関し、nは偶数である。
【0069】
φ>π及びδ>T
φである
図9に示すケース6関して、第1の遅延T
1及び第2の遅延T
2はそれぞれ次式に等しい:
T
1=δ+T
φ-T
c (ケース6の特定式No.1)
T
2=δ-T
φ (ケース6の特定式No.2)
【0070】
【0071】
上記と同じ計算を適用することにより、次式が取得される:
n=2q+1
【0072】
したがって、ケース6に関し、nは奇数である。
【0073】
したがって、当該の特定ケースに関係なく、以下のことが結論付けられ得る:
nが奇数ならば
【数12】
nが偶数ならば
【数13】
【0074】
クロック信号間の位相差の角度値Φは、式Φ=2π.Tφ.FcによりTφに関係付けられ、ここでFc=1/Tcである。
【0075】
したがって、第1の校正信号S12の送信と第2の校正信号S21のアクティブエッジに続く第1のクロック信号CK1のアクティブエッジとの間のクロックパルスの数nを計数することで、上記式が、判断される2つのクロック信号間の位相差を計算するために使用されることを可能にする。
【0076】
一実施形態によると、第1の遅延T1及び第2の遅延T2は、特に仏国特許出願公開第3,043,477A1号明細書に記載されるように同期信号(同期信号はまたクロックエッジに近接する)の準安定性を検出するために通常使用される遅延を判断することにより判断され得る。
【0077】
位相差を判断する方法は定期的に実施され得る。これは、大きな温度差を有する環境がクロック間の著しい位相差を引き起こし得るのでこれらの環境において特に有利であり得る。衛星内のアレイアンテナ内のアナログ-ディジタル変換器又はディジタル-アナログ変換器の使用の文脈では、位相アラインメントが制御下に保たれることが必須である。
【0078】
本発明による方法はまた、上に説明された方法に従って判断される位相差に依存して2つのクロック信号のうちの1つのクロック信号の位相を修正する工程を含み得る。補正は電子部品内に埋め込まれるTDA解決策を使用して自動的に行われ得る(TDAはTime Delay Adjustment(時間遅れ調節)を表わす)。
【0079】
本発明は、2つの電子部品により受信されたクロック信号間の位相差の判断の文脈で説明された。必要に応じて、3つ以上の電子部品により受信された3つ以上のクロック信号間の位相差が、電子部品をペアで結合することにより、そして位相差値を制御ユニットへ送信することにより判断され得る。
【0080】
クロック信号間の位相差を判断するために、そして対応補正を2つの電子部品の一方と電子部品に近接して配置された他の電子部品とへ適用するために互いに非常に遠く離れた2つの電子部品を対にすること(これは非常に大きなアンテナアレイに当てはまり得る)もまた有利であり得る。
【0081】
したがって、本発明による方法及びシステムは、位相差誤差が外部部品からの助けなしに測定されることを可能にし、これは、その実装を容易にする。
【符号の説明】
【0082】
CE1 第1の電子部品
CE2 第2の電子部品
CK1 第1のクロック信号
CK2 第2のクロック信号
GH クロック生成器
n クロックパルスの数
S12 第1の校正信号
S21 第2の校正信号
S10、S20、S30、S40、S50、S60 工程
T1 第1の遅延
T2 第2の遅延
TC クロック周期
TP 伝搬遅延
Tφ 第1のクロック信号と第2のクロック信号との位相差
δ 遅延
φ 角度
【外国語明細書】