(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046625
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ポリイミド、ポリイミドフィルム、及び、積層体
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240327BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240327BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08G73/10
B32B17/10
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151485
(22)【出願日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2022151406
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】599055382
【氏名又は名称】学校法人東邦大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 匡俊
(72)【発明者】
【氏名】石井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸太
(72)【発明者】
【氏名】涌井 洋行
(72)【発明者】
【氏名】東 昌男
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
【テーマコード(参考)】
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F100AG00
4F100AG00B
4F100AK49
4F100AK49A
4F100BA02
4F100BA07
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4F100JA05
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4J043QB15
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4J043XA16
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4J043XB14
4J043ZA12
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】 仮接着(弱接着)・易剥離工程に適した剥離強度を示し、且つ、非常に高い光学的透明性を有するポリイミドフィルムを得ることが可能な、新規なポリイミドを提供すること。
【解決手段】 テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との反応物であるポリイミドであり、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格を有し、芳香族基を有さない第1のテトラカルボン酸二無水物成分と、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格及び1個以上の芳香族基を有し、カルボン酸無水物のカルボニル基がビシクロ環に対してエキソ位に結合している第2のテトラカルボン酸二無水物成分とを含み、全テトラカルボン酸二無水物成分を100モル%としたときに、第1のテトラカルボン酸二無水物成分と第2のテトラカルボン酸二無水物成分との合計が80モル%以上であり、第1のテトラカルボン酸二無水物成分が第2のテトラカルボン酸二無水物成分よりも多いポリイミド。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との反応物であるポリイミドであり、
前記テトラカルボン酸二無水物成分は、第1のテトラカルボン酸二無水物成分及び第2のテトラカルボン酸二無水物成分を含有し、
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分は、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格を有し、芳香族基を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物であり、
前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分は、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格及び1個以上の芳香族基を有し、カルボン酸無水物のカルボニル基がビシクロ環に対してエキソ位に結合しているテトラカルボン酸二無水物成分であり、
前記ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸二無水物成分を100モル%としたときに、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分と前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分との合計が80モル%以上であり、
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分が前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分よりも多いことを特徴とするポリイミド。
【請求項2】
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分が2,5-ビス(2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-ジカルボン酸無水物)シクロペンタノンであり、
前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分が5,5-(1,4-フェニレン)-エキソ-ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-シス-エキソ-1,3―ジオン)である請求項1に記載のポリイミド。
【請求項3】
前記ジアミン成分は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを含み、
前記ポリイミドに含まれる全ジアミン成分を100モル%としたときに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンの含有量が65モル%超である請求項1又は請求項2に記載のポリイミド。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のポリイミドを含有するポリイミドフィルム。
【請求項5】
シランカップリング剤で表面改質したガラス支持体の改質面に室温で圧着後、熱処理して仮接着させた後、90°剥Z離試験を実施して得られる剥離強度が0.12~1.0N/cmの範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
請求項4に記載のポリイミドフィルムと、シランカップリング剤で表面改質したガラス支持体との積層体であって、
前記積層体の90°剥離試験によるガラス支持体からのポリイミドフィルムの剥離強度が0.12~1.0N/cmの範囲にあることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド、ポリイミドフィルム、及び、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、折り曲げ・展開操作が繰り返し可能で、薄く軽量で大面積化可能なフレキシブルディスプレイの需要が増加している。フレキシブルディスプレイは一般に、ガラス支持体(約0.4mm~0.8mm厚)上にポリイミド層(およそ20~500μm厚)を形成し、その上にデバイス構成部品・素子を形成・実装した後、ガラス支持体を剥離・除去する工程を経て製造される。
【0003】
ガラス支持体上にポリイミド層を形成する際、通常ガラス支持体上にポリイミド前駆体のワニスを塗布・乾燥(キャスト製膜)し、これを高温で加熱処理して、ポリイミド前駆体の脱水閉環反応(熱イミド化反応)を経てポリイミドに変換する方法(二段階法)かあるいは、ポリイミド自身が溶媒可溶性である場合は、ガラス支持体上にポリイミドのワニスを塗布・乾燥する方法が用いられる。
【0004】
このようにして形成されたポリイミド層上にデバイス構成部品・素子を形成・実装した後、ガラス支持体を剥離・除去するが、多くの場合、ポリイミド層はガラス支持体に強固に密着しているため、機械的に剥離しようとすると、ポリイミド層の平坦性が失われるばかりか、構成部品や素子が損傷する恐れがある。また、水やアルコール等の溶媒に浸漬することによってもしばしばポリイミド/ガラス界面剥離が容易になるが、構成部品や素子が溶媒により損傷する恐れがあるため、浸漬法は適用不可である。またエッチング処理による剥離法では、剥離工程に長時間を要するだけでなく、有害な廃エッチング剤の後処理も必要となる。
【0005】
また、ガラス支持体とポリイミド層との間に易熱分解性の犠牲層を設けておき、剥離したいタイミングで加熱して犠牲層を熱分解させることで剥離する方法も考えられるが、犠牲層から発生するアウトガスが構成部品や素子を汚染する恐れがあるため、好ましくない。
【0006】
また、ガラス支持体とポリイミドフィルムを、UV硬化型粘着剤を介して密着させておき、構成部品・素子の実装工程終了後にガラス支持体の背面側から面光源を用いて紫外線照射してラジカル重合を促進させ、粘着性を消失させることで剥離する方法(例えば非特許文献1および2参照)も考えられる。しかしながらUV硬化型粘着剤の主成分であるアクリル系粘着剤や重合反応性オリゴマーの熱寸法安定性が低いため、構成部品・素子実装工程中の温度サイクルに間に部品や回路の位置ずれ等の問題がある。更にUV硬化型粘着剤の構成成分は耐熱性に劣り、熱分解に伴うアウトガス発生の問題があるため、UV硬化型粘着剤を用いる方法は本目的に適していない。
【0007】
現在ポリイミド層とガラス支持体との界面剥離を促進する最も実用的方法として、レーザーリフトオフ法が知られている(例えば非特許文献3参照)。レーザーリフトオフ法は、高出力のレーザー〔例えばXeClエキシマーレーザー(波長308nm)やNd-YAGレーザー(第3高調波:355nm)等〕をガラス支持体の背面側から照射して、ポリイミド/ガラス界面におけるポリイミド面を熱的・光化学的に急速分解(アブレーション)することで分解ガスを発生させて剥離を行う方法である。しかしながら、この方法で使用する高出力レーザーは通常、点光源であるため、界面剥離を行うのに、レーザー照射位置を二次元的にスキャンする必要がある。このため、レーザーリフトオフ法は、大面積の剥離には時間を要する。また、剥離という単純な工程のために、高価なレーザーリフトオフ設備を導入する必要がある。
【0008】
レーザーリフトオフ法は、ポリイミド/ガラス密着界面におけるポリイミド面をレーザーアブレーションにより分解し、発生するアウトガスにより剥離を行う方法であるため、ポリイミド表面の分解に伴うポリイミド層のカーリングや大きな寸法変化を引き起こす恐れがある。更にポリイミド表面の平坦性の喪失や分解による着色・焦げ、アウトガスによる局所的膨れが生じる恐れもある。また、ポリイミド素材として無色・透明ポリイミドを用いた場合、アブレーションによる上記のような外観の悪化(焦げ、着色)は特に顕著になる。また、プラスチック基板として無色・透明ポリイミドを用いた場合は更に、波長にもよるが、強力なレーザー光がポリイミド層に留まらず(完全に吸収されず)、一部透過してデバイス構成部品・素子まで到達し、これらが損傷する恐れもある。
【0009】
上記の問題を回避するための方法として、レーザーアブレーションを行わない易剥離技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、シランカップリング剤で表面処理したガラス支持体に、ある特定のポリイミドフィルム(例えば、東洋紡(株)社製XENOMAX(登録商標))を室温で圧着後熱処理することで、仮接着(弱接着)・易剥離に最適な剥離強度を実現することができる。このように剥離強度を制御することで、ポリイミドフィルム上にデバイス構成部品・素子を実装する工程の間は十分な界面密着を確保しながら、実装完了後はレーザー照射やUV硬化型粘着剤等を一切使用することなく、所望するタイミングでガラス支持体を容易に剥離・除去できる易剥離性を実現することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Micromachines, 11, 953 (2020).
【非特許文献2】日本接着学会誌, 38, 471-476 (2002).
【非特許文献3】Journal of Information Display, 15, 1-4 (2014).
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら多くのポリイミドフィルムは上記の方法で室温圧着後、熱処理した際に、仮接着(弱接着)・易剥離に適した密着性(剥離強度)を示さない。
【0013】
本発明の課題は、仮接着(弱接着)・易剥離工程に適した剥離強度を示し、且つ、非常に高い光学的透明性を有するポリイミドフィルムを得ることが可能な、新規なポリイミドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、テトラカルボン酸二無水物成分として、剥離強度は低くなるが透明性を高めることが可能な第1のテトラカルボン酸二無水物成分と、剥離強度を高めることができる第2のテトラカルボン酸二無水物成分とを用いることにより、仮接着(弱接着)・易剥離工程に適した剥離強度を示し、且つ、非常に高い光学的透明性を有するポリイミドフィルムを得ることが可能な新規なポリイミドを提供可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との反応物であるポリイミドであり、
前記テトラカルボン酸二無水物成分は、第1のテトラカルボン酸二無水物成分及び第2のテトラカルボン酸二無水物成分を含有し、
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分は、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格を有し、芳香族基を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物であり、
前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分は、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格及び1個以上の芳香族基を有し、カルボン酸無水物のカルボニル基がビシクロ環に対してエキソ位に結合しているテトラカルボン酸二無水物成分であり、
前記ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸二無水物成分を100モル%としたときに、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分と前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分との合計が80モル%以上であり、
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分が前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分よりも多いことを特徴とするポリイミド。
【0016】
1個以上の脂肪族ビシクロ骨格を有し、芳香族基を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物である第1のテトラカルボン酸二無水物成分をポリイミドに用いると、得られるポリイミドフィルムは、剥離強度は低くなるが透明性が高まる。
一方、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格及び1個以上の芳香族基を有し、カルボン酸無水物のカルボニル基がビシクロ環に対してエキソ位に結合している第2のテトラカルボン酸二無水物成分をポリイミドに用いると、得られるポリイミドフィルムは、剥離強度が高くなる。
本発明では、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分を主成分として使用して透明性を高く維持しつつ、前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分を併用することにより、剥離強度を高める。このような性質を有する第1のテトラカルボン酸二無水物成分、及び、第2のテトラカルボン酸二無水物成分を全テトラカルボン酸二無水物成分に対して合計で80モル%以上含有させることにより、仮接着(弱接着)・易剥離工程に適した剥離強度を示し、非常に高い光学的透明性を有するポリイミドフィルムを得ることが可能なポリイミドを提供することができる。
【0017】
[2]前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分が2,5-ビス(2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-ジカルボン酸無水物)シクロペンタノン(「CpODA」ともいう)であり、
前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分が5,5-(1,4-フェニレン)-エキソ-ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-シス-エキソ-1,3―ジオン)(CAS登録番号2376123-22-5、以下、「BZDAxx」ともいう)である前記[1]に記載のポリイミド。
【0018】
[3]前記ジアミン成分は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを含み、
前記ポリイミドに含まれる全ジアミン成分を100モル%としたときに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(「TFMB」ともいう)の含有量が65モル%超である前記[1]又は[2]に記載のポリイミド。
【0019】
ジアミン成分として、直線性の高い分子構造を有する2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを65モル%超含有すると、得られるポリイミドフィルムのCTEを低くすることができる。
【0020】
[4]前記[1]又は[2]に記載のポリイミドを含有するポリイミドフィルム。
【0021】
[5]シランカップリング剤で表面改質したガラス支持体の改質面に室温で圧着後、熱処理して仮接着させた後、90°剥離試験を実施して得られる剥離強度が0.12~1.0N/cmの範囲にあることを特徴とするポリイミドフィルム。
【0022】
[6]前記[4]に記載のポリイミドフィルムと、シランカップリング剤で表面改質したガラス支持体との積層体であって、
前記積層体の90°剥離試験によるガラス支持体からのポリイミドフィルムの剥離強度が0.12~1.0N/cmの範囲にあることを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、仮接着(弱接着)・易剥離工程に適した剥離強度を示し、非常に高い光学的透明性を有するポリイミドフィルムを得ることが可能なポリイミド提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<ポリイミド>
本実施形態に係るポリイミドは、
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との反応物であるポリイミドであり、
前記テトラカルボン酸二無水物成分は、第1のテトラカルボン酸二無水物成分及び第2のテトラカルボン酸二無水物成分を含有し、
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分は、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格を有し、芳香族基を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物であり、
前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分は、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格及び1個以上の芳香族基を有し、カルボン酸無水物のカルボニル基がビシクロ環に対してエキソ位に結合しているテトラカルボン酸二無水物成分であり、
前記ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸二無水物成分を100モル%としたときに、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分と前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分との合計が80モル%以上であり、
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分が前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分よりも多い。
【0025】
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分は、2個の脂肪族ビシクロ骨格を有することが好ましい。前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分は、2個の脂肪族ビシクロ骨格と1個の芳香族基を有し、カルボン酸無水物のカルボニル基がビシクロ環に対してエキソ位に結合していることが好ましい。
【0026】
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分としては、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3c-カルボキシメチルシクロペンタンー1r,2c,4c-トリカルボン酸1,4:2,3-二無水物、ビシクロ-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下CBDAと称する)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,5-ビス(2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-ジカルボン酸無水物)シクロペンタノン(以下CpODAと称する)が挙げられる。
【0027】
前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分としては、5,5-(1,4-フェニレン)-エキソ-ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-シス-エキソ-1,3―ジオン)(CAS登録番号2376123-22-5、以下(以下「BzDAxx」ともいう)等が例として挙げられる。
【0028】
本実施形態に係るポリイミドは、前記テトラカルボン酸二無水物成分として、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分と前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分とを含む。
本実施形態に係るポリイミドは、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分が前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分よりも多い。
【0029】
1個以上の脂肪族ビシクロ骨格を有し、脂肪族基を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物である第1のテトラカルボン酸二無水物をポリイミドに用いると、得られるポリイミドフィルムは、剥離強度は低くなるが透明性が高まる。その理由は明らかではないが、芳香族基を有さないために分子内及び分子間のC-T相互作用が弱まるため透明性が高くなり、極性の低い脂肪族ビシクロ骨格と極性の高い支持体との相互作用を強められないために剥離強度が低くなると推察される。
一方、1個以上の脂肪族ビシクロ骨格及び1個以上の芳香族基を有し、カルボン酸無水物のカルボニル基がビシクロ環に対してエキソ位に結合している第2のテトラカルボン酸二無水物をポリイミドに用いると、得られるポリイミドフィルムは、剥離強度が高くなる。その理由は明らかではないが、芳香族基の高い平面性や芳香環特有のπ電子、及びビシクロ環のエキソ位に結合したカルボニル基が支持体との相互作用を高めているために剥離強度が高くなると推察される。
本実施形態では、前記第1のテトラカルボン酸二無水物を主成分として使用して透明性を高く維持しつつ、前記第2のテトラカルボン酸二無水物を併用することにより、低すぎる剥離強度を高める。
このような性質を有する第1のテトラカルボン酸二無水物、及び、第2のテトラカルボン酸二無水物を含有させることにより、仮接着(弱接着)・易剥離工程に適した剥離強度を示し、非常に高い光学的透明性を有するポリイミドフィルムを得ることが可能なポリイミドを提供することができる。
【0030】
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分と前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分との比率は、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分が前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分よりも多ければ、特に限定されないが、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分と前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分との合計を100モル%としたときに、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分が51モル%以上95モル%以下であることが好ましく、70モル%以上93モル%以下であることがより好ましく、75モル%以上90モル%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分、及び、前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分は、ポリイミドフィルムの低熱膨張特性発現の観点から、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分が2,5-ビス(2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-ジカルボン酸無水物)シクロペンタノン(CpODA)であり、前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分が1,4-ビス(2-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-ジカルボン酸無水物)ベンゼン(BZDA)であることが好ましい。前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分は、5,5-(1,4-フェニレン)-エキソ-ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-シス-エキソ-1,3―ジオン)(CAS登録番号2376123-22-5、(BzDAxx))であることがより好ましい。
【0032】
本実施形態に係るポリイミドは、前記ポリイミドに含まれる全テトラカルボン酸二無水物成分を100モル%としたときに、前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分と前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分との合計が80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。前記第1のテトラカルボン酸二無水物成分、及び、前記第2のテトラカルボン酸二無水物成分を全テトラカルボン酸二無水物に対して合計で80モル%以上含有させることにより、仮接着(弱接着)・易剥離工程に適した剥離強度を示し、非常に高い光学的透明性を有するポリイミドフィルムを得ることが可能なポリイミドを提供することができる。
【0033】
本実施形態に係るポリイミドは、ポリイミドフィルムの光学的透明性を著しく損なわない範囲で、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含んでいても構わない。例えば、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が使用可能である。その他、ピロメリットテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ハイドロキノンビス(トリメリテートアンハイドライド)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が例として挙げられる。これらを単独または部分的あるいは2種類以上併用することもできる。
【0034】
前記ジアミン成分としては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0035】
前記芳香族ジアミンは特に限定されないが、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノキシレン、2,4-ジアミノデュレン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(3-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、o-トリジン、m-トリジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p-ターフェニレンジアミン等が挙げられる。これらを単独または部分的あるいは2種類以上併用することもできる。
【0036】
ポリイミドフィルムの低熱膨張特性発現の観点から、上記の芳香族ジアミンのうち、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下TFMBと称する)を好適に用いることができる。
【0037】
ジアミンとしてTFMBを用いる場合、ポリイミドに含まれる全ジアミン成分を100モル%としたときに、65モル%超含有することが好ましく、80モル%以上含有することがより好ましく、90モル%以上含有することがさらに好ましい。
ジアミン成分として、直線性の高い分子構造を有する2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを65モル%超含有すると、得られるポリイミドフィルムの線熱膨張係数(以下、CTEともいう)を低くすることができる。
【0038】
ポリイミドフィルムの光学的透明性を改善するために、他の要求特性を著しく損なわない範囲で、ジアミンとして脂肪族ジアミンを用いることができる。特に限定されないが、例えば、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3-エチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(3,5-ジエチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス-1,4-シクロヘキサンジアミン、シス-1,4-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3-ジアミノアダマンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3-プロパンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン等が挙げられる。これらを単独または部分的あるいは2種類以上併用することもできる。
【0039】
<ポリイミドまたはその前駆体の重合およびポリイミドフィルムの作製>
本実施形態に係るポリイミドまたはその前駆体の重合およびポリイミドフィルムの作製方法は特に限定されず、公知の方法即ち(A)2段階法(ポリイミド前駆体の重合、塗工・乾燥、加熱脱水閉環(熱イミド化)、(B)化学イミド化法(上記(A)で得られたポリイミド前駆体ワニスに脱水閉環剤(化学イミド化剤)を添加、室温で撹拌して化学イミド化、ポリイミド粉末を単離、純溶媒に再溶解、塗工・乾燥、熱処理)および(C)ワンポット法(溶媒中でモノマーの加熱・リフラックス、ポリイミドワニスの塗工・乾燥、熱処理またはポリイミドワニスからポリイミドを単離、再溶解、塗工・乾燥、熱処理)のいずれかを適用することができる。
【0040】
<2段階法>
まず上記(A)2段階法について説明する。ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の重合は以下のようにして行う。反応容器中、ジアミンを脱水処理済みの溶媒に溶解し、所定量のテトラカルボン酸二無水物粉末を添加し、密封して0~100℃、好ましくは20~60℃で0.1~100時間、好ましくは3~72時間撹拌する。
【0041】
その際、反応容器に仕込むモノマー成分即ちジアミンとテトラカルボン酸二無水物との物質量(mol)比は、ジアミン1に対して、テトラカルボン酸二無水物を0.8~1.1とすることができるが、好ましくは0.9~1.1であり、より好ましくは0.95~1.05である。ポリイミド前駆体の重合度をできるだけ高める場合は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物は実質的に等モルで仕込まれる。
【0042】
また、重合を開始する際のモノマー(固形分)濃度は、7~50質量%、好ましくは10~40質量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより、モノマー及びポリマーの溶解性を十分確保することができ、且つ高重合度のポリイミド前駆体の均一なワニスを得ることができる。7質量%より低いモノマー濃度で重合を行うと、ポリイミド前駆体の重合度が十分に高くならず、ポリイミド前駆体を製膜した段階あるいは後工程でポリイミドに変換した際にフィルムが脆弱になり、場合によってはフィルムにクラックが入る恐れがある。また、50質量%以上で重合を開始すると、モノマーが十分に溶解しない恐れがある。また、生成したポリイミド前駆体が析出したり、反応溶液がゲル化したりする恐れもある。
【0043】
重合反応が進み、ポリイミド前駆体の重合度が増加しすぎて、反応溶液の粘度が高くなりすぎて十分に撹拌しにくくなった場合は、適宜同一の脱水処理済み溶媒で希釈することもできる。
【0044】
ポリイミド前駆体を重合する際のテトラカルボン酸二無水物成分、及び、ジアミン成分の詳細は、<ポリイミド>の項で説明した成分を用いることができる。また、添加量(含有量)の詳細についても、<ポリイミド>の項で説明した含有量とすることができる。
【0045】
ポリイミド前駆体を重合する際の溶媒は、原料モノマーと生成するポリイミド前駆体が十分に溶解し、且つこれらと溶媒が反応しなければ問題はなく特に限定されない。例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ-プチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-プチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が使用可能である。更にフェノール、o-クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプチル、プロピレングリコールメチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン等の一般的な溶媒も部分的に使用してもよい。
【0046】
ポリイミド前駆体のフィルム形成性や靭性の観点から、重合によって得られたポリイミド前駆体の固有粘度は0.5dL/g以上であることが好ましく、1.0dL/g以上であることがより好ましい。
【0047】
上記のように得られたポリイミド前駆体の均一なワニスを用いて以下のようにしてポリイミドフィルムを作製する。まず、ポリイミド前駆体のワニスをガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に塗工し、オーブン中40~150℃、好ましくは50~120℃で10分から4時間、好ましくは30分~2時間乾燥する。
【0048】
得られたポリイミド前駆体フィルムを基板上で真空中または窒素等の不活性ガス雰囲気中、あるいは空気中、200~400℃、好ましくは250~350℃で5分から4時間、好ましくは10分~2時間加熱脱水環化(熱イミド化)することでポリイミドに変換してポリイミドフィルムを作製することができる。またポリイミドフィルムの着色を抑制するという観点から、熱イミド化は真空中あるいは不活性ガス中、330℃以下で行うことが好ましい。
【0049】
熱イミド化反応の完結は、別途反応追跡用にポリイミド前駆体の薄膜を作製しておき、製品と同一の温度条件で熱イミド化した後、赤外線吸収スペクトルを測定して、ポリイミド前駆体由来のアミドC=O伸縮振動吸収帯の完全な消失とイミドC=O伸縮振動吸収帯の出現から確認することができる。
【0050】
熱イミド化工程後、ポリイミドフィルムを基板上から剥離して本発明の仮接着(弱接着)・易剥離法プラスチック基板に供するポリイミド自立フィルムが得られる。剥離の際、ポリイミドフィルム/基板積層体を水やアルコール浴等に浸漬して剥離を促進してもよい。また、残留歪を除く等の目的で、得られた自立フィルムを真空中あるいは不活性ガス中で更に熱処理してもよい。その際フィルムの変形、着色、配向緩和によるCTEの増加等悪影響を抑制するため、熱処理の温度条件を適宜選択することができる。
【0051】
<化学イミド化法>
ポリイミドの溶媒溶解性が高い場合、上記(B)化学イミド化法によるイミド化を経て製膜し、ポリイミドフィルムを作製することができる。以下に具体的に説明する。
【0052】
上記のように重合して得られたポリイミド前駆体のワニスを同一溶媒で適宜希釈し、撹拌しながら、塩基と脱水剤からなる化学イミド化剤をゆっくりと添加し、密封容器中0~100℃、好ましくは20~60℃で1~48時間、好ましくは2~24時間撹拌することで、反応溶液の均一性を確保しながらイミド化(化学イミド化)を完結することができる。
【0053】
化学イミド化剤中の塩基としては有機3級アミンが使用可能であり、特に限定されないが、例えばピリジン、ピコリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等が用いられる。毒性や経済性の観点からピリジンが好適に使用される。
【0054】
化学イミド化剤中の脱水剤としては、特に限定されず、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸等の酸無水物が使用可能であるが、除去の容易さや経済性の観点から無水酢酸が好適に用いられる。
【0055】
化学イミド化剤中の脱水剤と塩基の混合比は特に限定されず、脱水剤の質量を1とすると、塩基の質量は0.1~5の範囲であり、好ましくは0.2~2の範囲である。
【0056】
化学イミド化剤は、その中に含まれる脱水剤がポリイミド前駆体中のカルボキシル基量即ち理論脱水量(モル)の1~20倍量の範囲になるように添加する。化学イミド化剤の添加量が十分でないと、イミド化が未完結となる場合や、イミド化完結に長時間を要する場合がある。一方、化学イミド化剤の添加量が多すぎると、生成物であるポリイミドに対する溶解性が不十分となり、沈殿析出やゲル化が起こり、イミド化も完結しない場合がある。この観点から、ポリイミド前駆体溶液に添加する化学イミド化剤中の脱水剤は理論脱水量(モル)の3~10倍量の範囲であることが好ましい。
【0057】
化学イミド化により生成するポリイミドの溶媒溶解性が高い場合、化学イミド化後の反応溶液からポリイミドを粉末として単離した後、これを重水素化溶媒に溶解して1H-NMRスペクトルを測定し、ポリイミド前駆体由来のアミド基(NHCO)のプロトンピークやカルボキシル基(COOH)のプロトンピークの完全な消失より、化学イミド化反応の完結を確認することができる。
【0058】
ポリイミドのフィルム形成性や靭性の観点から、化学イミド化により得られたポリイミドの固有粘度は0.5dL/g以上であることが好ましく、1.0dL/g以上であることがより好ましい。
【0059】
ポリイミド前駆体のワニスに化学イミド化剤を添加・所定時間撹拌して得られた均一なポリイミドワニスをそのまま製膜工程に使用することもできるが、反応溶液よりポリイミドを単離し、これを純粋な溶媒に再溶解して化学イミド化剤をあらかじめ除去したワニスを用いてもよい。その場合、化学イミド化反応終了後、反応溶液を適宜同一溶媒で希釈し、大量の沈殿剤(貧溶媒)例えば水、メタノール、エタノール、プロパノールやこれらの混合溶液中に撹拌しながらゆっくりと滴下してポリイミドを析出させ、濾過・洗浄・乾燥してポリイミドを適切な形状(繊維状粉末)として単離・乾燥し、これを5~40質量%、好ましくは10~30質量%の固形分濃度で純粋な溶媒に再溶解して均一なポリイミドワニスを得ることができる。再溶解にはポリイミド前駆体の重合に用いた溶媒と同一なものが使用可能であるが、異なった溶媒を用いてもよい。また混合溶媒を用いてもよい。単離したポリイミド粉末を溶媒に再溶解する際、30~150℃、好ましくは50~100℃で1分~4時間、好ましくは10分から1時間加熱してもよい。
【0060】
上記のようにして得られたポリイミドの均一なワニスをガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に塗工し、オーブン中50~180℃、好ましくは60~150℃で5分から4時間、好ましくは10分~2時間乾燥する。次いで真空中または窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、200~350℃、好ましくは250~300℃で5分から4時間、好ましくは10分~2時間熱処理することで基板上にポリイミドフィルムが形成される。またフィルムの着色を抑制するという観点から、熱処理は真空中あるいは不活性ガス中、且つ300℃以下で行うことが好ましい。また、ポリイミドフィルム表面の平滑性確保および低熱膨張特性発現の観点から上記乾燥・熱処理工程は緩やかな昇温となるように多段階で行うことができる。
【0061】
次いでポリイミドフィルムを基板上から剥離して、本発明の仮接着(弱接着)・易剥離法プラスチック基板に供するポリイミド自立フィルムが得られる。剥離の際、ポリイミドフィルム/基板積層体を水やアルコール浴等に浸漬して剥離を促進してもよい。また、残留歪を除く等の目的で、得られた自立フィルムを真空中あるいは不活性ガス中で更に熱処理してもよい。その際フィルムの変形、着色、配向緩和によるCTEの増加等悪影響を抑制するため、熱処理の温度条件を適宜選択することができる。
【0062】
<ワンポット重合法>
上記(C)ワンポット重合法は溶媒中、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物よりポリイミド前駆体で止めることなく一段階でポリイミドを重合する方法であり、生成するポリイミドの溶媒溶解性が十分に高い場合、ワンポット重合法により均一なポリイミドワニスを得ることができ、これを用いて簡便にポリイミドフィルムを作製することができる。以下にその方法を具体的に説明する
【0063】
窒素導入管、撹拌装置、ディーン・スタークトラップおよびコンデンサーを備えたセパラブルフラスコ中、ジアミン、共沸剤およびイミド化触媒を重合溶媒に溶かしておき、撹拌しながらテトラカルボン酸二無水物粉末を添加し、150~250℃、好ましくは160~200℃で0.5~12時間、好ましくは1~7時間加熱還流することでポリイミドのワニスが得られる。ワニスの着色を抑制するという観点から、重合反応は窒素等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましいが、不活性ガスの導入を省略することもできる。
【0064】
上記ワンポット重合反応の際、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の仕込比(モル比)は、ジアミンの総量1に対して、テトラカルボン酸二無水物を0.8~1.1とすることができるが、好ましくは0.9~1.1であり、より好ましくは0.95~1.05である。ポリイミドの重合度をできるだけ高める場合は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物は実質的に等モルで仕込まれる。
【0065】
また、重合を開始する際のモノマー(固形分)濃度は、7~50質量%、好ましくは10~40質量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより、モノマー及びポリマーの溶解性を十分確保することができ、且つ高重合度のポリイミドの均一なワニスを得ることができる。7質量%より低いモノマー濃度で重合を行うと、ポリイミドの重合度が十分に高くならず、フィルムが脆弱になり、場合によってはフィルムにクラックが入る恐れがある。また、50質量%以上で重合を開始すると、モノマーが十分に溶解しない恐れがある。また、生成したポリイミドが析出したり、反応溶液がゲル化したりする恐れもある。
【0066】
重合反応が進み、ポリイミドの重合度が急激に増加し、反応溶液の粘度が高くなりすぎて十分に撹拌しにくくなった場合は、適宜同一の脱水処理済み溶媒で希釈することもできる。
【0067】
ワンポット重合の際に用いる溶媒は、原料モノマーと生成するポリイミドが十分に溶解し、これらと反応せず且つイミド化反応完結の観点から沸点が150℃で以上であればよく、特に限定されない。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド系溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン等の環状エステル溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒、ジグライム、トリグライム等のエーテル系溶媒、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェノール系溶媒、シロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒が使用可能である。これらの溶媒を単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。反応原料の溶解性や沸点の観点から、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンおよびγ-ブチロラクトンが好適に用いることができる。
また、使用する溶媒は場合によっては低吸湿性であることが好ましい。低吸湿性溶媒用いることで、塗工の際、吸湿によりポリイミドが部分的に析出して塗膜が白化するリスクが低減することに加え、塗工設備の湿度管理が不要になるなど低コスト化にも有利である。この観点からγ-ブチロラクトン、シロペンタノン、シクロヘキサノン、ジグライム、トリグライム等を好適に用いることができる。
【0068】
ワンポット重合中、イミド化反応により生ずる副生成物である水を除去するために用いられる共沸剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、クメン、シクロヘキサン、酢酸エチル、ピリジン等が挙げられる。沸点や除去のしやすさの観点からトルエンやキシレンが好適に用いられる。また、共沸剤の使用により重合溶媒の溶解力が低下するため、反応溶液がゲル化することがあり、これを防止するために場合によっては共沸剤を使用しなくてもよい。
【0069】
ワンポット重合の際、適宜イミド化触媒を使用することができる。例えば、塩基性触媒として1-エチルピペリジン、ピリジン、ビピリジン、ピコリン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、アクリジン、フェナジン、ベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾールおよびこれらの異性体、誘導体等の他、安息香酸およびその類似体等の有機酸が使用可能である。これらの塩基性触媒および酸性触媒は単独で使用してもこれらを併用してもよい。これらの触媒の添加量は特に制限はないが、理論脱水量1に対して、モル比0.1~10倍量の範囲である。ただし、上記イミド化触媒はポリイミドワニスを着色し、結果としてポリイミドフィルムの透明性を低下させる場合があるため、適当量添加することが望ましい。
【0070】
ワンポット重合法でポリイミドを重合する際のテトラカルボン酸二無水物成分、及び、ジアミン成分の詳細は、<ポリイミド>の項で説明した成分を用いることができる。また、添加量(含有量)の詳細についても、<ポリイミド>の項で説明した含有量とすることができる。
【0071】
ワンポット重合後、イミド化反応の完結は、ポリイミドを粉末として単離したものを重水素化溶媒に溶解して1H-NMRスペクトルを測定し、ポリイミド前駆体由来のNHCOプロトンやCOOHプロトンシグナルの完全な消失より確認することができる。
【0072】
ポリイミドのフィルム形成性や靭性の観点から、ワンポット重合によって得られたポリイミドの固有粘度は0.5dL/g以上であることが好ましく、1.0dL/g以上であることがより好ましい。
【0073】
ワンポット重合により得られた均一なポリイミドワニスをそのまま製膜工程に用いることもできるが、反応後の溶液を貧溶媒中に滴下・沈殿析出・濾過・洗浄・乾燥・再溶解操作により、触媒残渣を除去したポリイミドワニスを用いてポリイミドフィルムを作製してもよい。その場合、ワンポット重合終了後、反応溶液を適宜同一溶媒で希釈し、大量の沈殿剤(貧溶媒)例えば水、メタノール、エタノール、プロパノールやこれらの混合溶液中に撹拌しながらゆっくりと滴下してポリイミドを析出させ、濾過・洗浄・乾燥してポリイミドを適切な形状(繊維状粉末)として単離・乾燥し、これを5~40質量%、好ましくは10~30質量%の固形分濃度で純粋な溶媒に再溶解して均一なポリイミドワニスを得ることができる。再溶解にはワンポット重合に用いた溶媒と同一なものが使用可能であるが、異なった溶媒を用いてもよい。また混合溶媒を用いてもよい。単離したポリイミド粉末を溶媒に再溶解する際、30~150℃、好ましくは50~100℃で1分~4時間、好ましくは10分から1時間加熱してもよい。
【0074】
上記のようにして得られたポリイミドの均一なワニスをガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に塗工し、オーブン中50~180℃、好ましくは60~150℃で5分から4時間、好ましくは10分~2時間乾燥する。次いで真空中または窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、200~350℃、好ましくは250~300℃で5分から4時間、好ましくは10分~2時間熱処理することで基板上にポリイミドフィルムが形成される。またフィルムの着色を抑制するという観点から、熱処理は真空中あるいは不活性ガス中、且つ300℃以下で行うことが好ましい。また、ポリイミドフィルム表面の平滑性確保および低熱膨張特性発現の観点から上記乾燥・熱処理工程は緩やかな昇温となるように多段階で行うことできる。
【0075】
次いでポリイミドフィルムを基板上から剥離して、本発明の仮接着(弱接着)・易剥離法プラスチック基板に供するポリイミド自立フィルムが得られる。剥離の際、ポリイミドフィルム/基板積層体を水やアルコール浴等に浸漬して剥離を促進してもよい。また、残留歪を除く等の目的で、得られた自立フィルムを真空中あるいは不活性ガス中で更に熱処理してもよい。その際フィルムの変形、着色、配向緩和によるCTEの増加等悪影響を抑制するため、熱処理の温度条件を適宜選択することができる。
【0076】
上記の重合・製膜方法によらず、本発明のポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されず、適宜調節することができる。ディスプレイデバイスのガラス基板代替プラスチック基板材料として用いる場合、フィルム厚は10~100μmが好適な範囲である。
【0077】
上記の重合・製膜方法によらず、ポリイミドフィルムの要求特性を損なわない範囲で、上記のようにして得られたポリイミドワニスまたはポリイミド前駆体ワニスに無機フィラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線安定剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤を添加してポリイミドフィルムを製膜してもよい。
【0078】
本実施形態のポリイミドフィルムは、以下の方法により求まる剥離強度が、0.12~1.0N/cmの範囲であることが好ましい。
<剥離強度測定用サンプル作製方法>
シランカップリング剤にて表面改質したガラス支持体の改質面に、ロールラミネーターを用いて、ポリイミドフィルムを室温で加圧・圧着する。この時の圧力は5kgf/cm2とする。ついでこれをオーブンにて空気中、150℃、10分、加熱して仮接着(弱接着)を完了する。これを測定対象の試験片(積層体)とする。
<剥離強度の測定方法>
15本の試験片について、ハンディーフォースゲージ付オートマチックサーボスタンド(日本計測システム社製、JSV-H1000)を用い、試験片のポリイミドフィルム端(掴みしろ)をパンタグラフ式ワンタッチチャックに固定し、剥離速度100mm/分、剥離区間長50mmとして90°剥離試験を実施し、得られた剥離強度曲線を解析ソフト(剥離試験プログラム:SOP-PEEL)で解析して求める。
【0079】
上記のようにして得られた積層体の剥離強度が0.12~1.0N/cmの範囲であれば、ガラス支持体に仮接着された本実施形態のポリイミドフィルム上に支障なくデバイス構成部品・素子を形成・実装することができ、実装工程終了後に所望するタイミングで、レーザー照射やUV硬化型粘着剤等を用いることなく、ガラス支持体を容易に剥離・除去することができる。前記剥離強度は0.15~0.8N/cmの範囲であるとより好ましく、0.2~0.6N/cmの範囲であるとさらに好ましい。
【0080】
前記ポリイミドフィルムは、ディスプレイデバイスのプラスチック基板に適用するため、高い光学的透明性を有することが必要である。そのため前記ポリイミドフィルムは波長400nmにおける光透過率(T400)が40%以上、好ましくは50%以上であるかあるいは、黄色度指数(YI)が10.0以下であり、5.0以下であることが好ましい。光透過率(T400)は60%以上であることがより好ましく、黄色度指数(YI)は5以下であることがより好ましい。光透過率(T400)が40%以上であるか、黄色度指数(YI)が10以下であると、フィルムの着色が抑えられているといえる。また、濁度は5.0%以下であると好ましく2.0%以下であるとより好ましい。濁度が5.0%以下であると、透明基板としての視認性が良好となる。
【0081】
前記ポリイミドフィルムは、デバイス構成部品・素子を形成・実装する工程の際の熱変形を避けるため、優れた短期耐熱性(即ち非常に高いガラス転移温度(Tg))を有することが望ましい。そのため本発明のポリイミドフィルムのTgは300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがさらに好ましく、375℃以上であることがさらに好ましい。
【0082】
デバイス構成部品・素子を形成・実装する工程で実施される複数の高温加熱-室温冷却の温度サイクルに伴う構成部品・素子や回路の位置ずれ、界面剥離、反り、透明電極の破損、残留ひずみの蓄積等のプラスチック基板由来の不具合を避けるため、プラスチック基板として用いる透明ポリイミドフィルムは低熱膨張性を有していることが望ましい。そのため本発明のポリイミドフィルムの線熱膨張係数(CTE)は30ppm/K以下であることが好ましく、25ppm/K以下であることがより好ましい。
【0083】
以上、ポリイミドフィルムについて説明した。
【0084】
次に、ポリイミドフィルムとガラス支持体との積層体について説明する。
【0085】
<ガラス支持体の表面改質>
シランカップリング剤でガラス支持体の表面改質する方法は特に限定されず、以下に例示する公知の方法を適用することができる。
【0086】
使用するガラス支持体の種類は、特に制限されず、様々な材質のガラスを用いることができる。例えばソーダライムガラス、無アルカリガラス、パイレックスガラス、バイコールガラス、石英ガラス等が使用可能である。
【0087】
ガラス支持体の表面改質工程で使用するシランカプリング剤は、特に限定されないが、アミノ基を有するカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0088】
前記シランカップリング剤としては、前記のほかに、n-プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ドデシルリクロロシラン、ドデシルトリメトキシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリクロロシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロプロピルシラン、トリクロロテトラデシルシラン、トリメトキシプロピルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、トリクロロ-2-シアノエチルシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランなどを使用することもできる。
【0089】
前記シランカップリング剤のなかでも、1つの分子中に1個のケイ素原子を有するシランカップリング剤が特に好ましく、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
前記カップリング剤としては、前記のほかに、1-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプトプロピオン酸ブチル、3-(ジメトキシメチルシリル)-1-プロパンチオール、4-(6-メルカプトヘキサロイル)ベンジルアルコール、11-アミノ-1-ウンデセンチオール、11-メルカプトウンデシルホスホン酸、11-メルカプトウンデシルトリフルオロ酢酸、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、11-メルカプトウンデシトリ(エチレングリコール)、(1-メルカプトウンデイック-11-イル)テトラ(エチレングリコール)、1-(メチルカルボキシ)ウンデック-11-イル)ヘキサ(エチレングリコール)、ヒドロキシウンデシルジスルフィド、カルボキシウンデシルジスルフィド、ヒドロキシヘキサドデシルジスルフィド、カルボキシヘキサデシルジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、2,3-ブタンジチオール、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、1-デカンチオール、1-ドデカンチオール、3-メルカプトプロピオン酸-2-エチルヘキシル、3-メルカプトプロピオン酸エチル、1-ヘプタンチオール、1-ヘキサデカンチオール、ヘキシルメルカプタン、イソアミルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸-3-メトキシブチル、2-メチル-1-ブタンチオール、1-オクタデカンチオール、1-オクタンチオール、1-ペンタデカンチオール、1-ペンタンチオール、1-プロパンチオール、1-テトラデカンチオール、1-ウンデカンチオール、1-(12-メルカプトドデシル)イミダゾール、1-(11-メルカプトウンデシル)イミダゾール、1-(10-メルカプトデシル)イミダゾール、1-(16-メルカプトヘキサデシル)イミダゾール、1-(17-メルカプトヘプタデシル)イミダゾール、1-(15-メルカプト)ドデカン酸、1-(11-メルカプト)ウンデカン酸、1-(10-メルカプト)デカン酸などを使用することもできる。
【0090】
経済性と効果の観点からは、3-アミノプロピルトリメトキシシランが好適である。
【0091】
まずガラス支持体上に、アルコール等で適度に希釈したシランカップリング剤溶液を適量乗せ、スピンコート法で均一に塗布する。バーコート法、浸漬法で塗布してもよい。塗膜の均一性の観点からスピンコート法が好適に用いられる。
【0092】
シランカップリング溶液を塗布した後、空気中ホットプレートにて、60~150℃、好ましくは80~130℃で10秒~10分、好ましくは30秒~5分加熱して溶媒を除去して皮膜を形成する。
【0093】
<表面改質したガラス支持体へのポリイミド自立フィルムの仮接着(弱接着)>
次に上記のようにして表面改質したガラス支持体の改質面に、ロールラミネーターを用い、均一な厚みのポリイミド自立フィルムを室温で加圧・圧着する。この時の圧力は表面改質済みガラス支持体とポリイミドの自立フィルムが十分に密着すればよく、特に制限はないが、通常1~10kgf/cm2、好ましくは3~8kgf/cm2である。次いでこれをオーブンにて空気中、100~200℃、好ましくは120~170℃で1~60分、好ましくは5~30分加熱して仮接着(弱接着)を完了する。
【0094】
以上により、ポリイミドフィルムとカラス支持体との積層体が得られる。前記積層体は、前記ポリイミドフィルムを使用しているため、仮接着(弱接着)・易剥離工程に適した剥離強度を示すこととなる。
【実施例0095】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における物性値は、次の示す方法により評価した。
【0096】
〔物性評価〕
<赤外線吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT-IR4100)を用い、透過法にて本発明のポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定し、イミド化の完結を確認した。
【0097】
<1H-NMRスペクトル>
日本電子社製NMR分光光度計(ECP400)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を溶媒として、ワンポット重合法または化学イミド化法で得られたポリイミド粉末試料の1H-NMRスペクトルを測定し、イミド化の完結を確認した。
【0098】
<固有粘度>
ポリイミドの粉末をN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、またはポリイミド前駆体ワニスを同一溶媒で希釈して、固形分濃度0.5重量%の溶液とし、オストワルド粘度計を用いて30℃で還元粘度(ηred)を測定した。この値は実質的に固有粘度と見なすことができ、この値が高いほどポリイミドの分子量が高いことを表す。通常、この条件で測定された還元粘度が1.0dL/g以上であると、十分高分子量であると見なすことができる。
【0099】
<ガラス転移温度(Tg)>
リガク社製熱機械分析装置(TMA8311)を用い、試験片(長さ:20mm、幅:5mm、チャック間長さ:15mm)の温度-試験片長曲線において、試験片長が急激に増加した温度を2つの接線の交点からポリイミドフィルム(約20μm厚)のガラス転移温度(Tg)を求めた。Tgが高いほど、短期耐熱性(物理的耐熱性)が高いことを表す。
【0100】
<線熱膨張係数(CTE)>
リガク社製熱機械分析装置(TMA8311)を用い、試験片(長さ:20mm、幅:5mm、チャック間長さ:15mm)に膜厚1μm当たり静荷重0.5gをかけて、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100~200℃の範囲での平均値としてポリイミドフィルム(約20μm厚)のフィルム面(XY)方向のCTEを求めた。この値が低いほど、ガラス温度領域における熱寸法安定性に優れていることを表す。
【0101】
<5%重量減少温度(Td
5)>
ネッチジャパン社製熱重量分析装置(TG-DTA2000S)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリイミドフィルム(膜厚約20μm)の初期重量が5%減少した時の温度を測定した。Td
5の値が高いほど、熱安定性(化学的耐熱性)が高いことを表す。
【0102】
<機械的特性(弾性率、破断伸び、破断強度)>
A&D社製引張試験機(テンシロンUTM-2)を用いて、ポリイミド試験片(3mm×30mm×約20μm厚)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力―歪曲線の初期の勾配から引張弾性率(E)、フィルムが破断時の伸び率から破断伸び(εb)、破断時の応力から破断強度(σb)を求めた。破断伸びが高いほどフィルムの靭性が高いことを意味する。
【0103】
<ポリイミドフィルムの透明性:光透過率、黄色度指数、ヘイズ>
ポリイミドフィルムの透明性は以下の光学特性から評価した。日本分光社製紫外-可視分光光度計(V-530)を用いて波長200~800nmの範囲でポリイミドフィルム(膜厚約20μm)の光透過率曲線を測定し、波長400nmにおける光透過率T400)を求めた。またこのスペクトルを基に、日本分光社製色彩計算プログラムを用い、ASTM E313規格に基づいて黄色度指数(YI)を求めた。更に、日本電色工業社製ヘイズメーター(NDH4000)を用い、JIS K7361-1およびJIS K7136規格に基づき、全光線透過率(Ttot)および濁度(ヘイズ)を求めた。T400およびTtotが高いほど、またYIおよび濁度が低いほど、フィルムの光学的透明性が高いことを表す。
【0104】
<仮接着(弱接着)・易剥離性:剥離強度>
ポリイミドの自立フィルムより、剥離試験用フィルム(幅:正確に10mm、長さ:60mm、厚み:約20μm)を切り出し、以下の方法により剥離強度を求めた。
<剥離強度測定用サンプル作製方法>
3-アミノプロピルトリメトキシシランにて表面改質したガラス支持体の改質面に、ロールラミネーターを用い、ポリイミドフィルムを室温で加圧・圧着した。この時の圧力は5kgf/cm2とした。ついでこれをオーブンにて空気中、150℃、10分、加熱して仮接着(弱接着)を完了した。
<剥離強度の測定方法>
15本の試験片について、ハンディーフォースゲージ付オートマチックサーボスタンド(日本計測システム社製、JSV-H1000)を用い、試験片のポリイミドフィルム端(掴みしろ)をパンタグラフ式ワンタッチチャックに固定し、剥離速度100mm/分、剥離区間長50mmとして90°剥離試験を実施し、得られた剥離強度曲線を解析ソフト(剥離試験プログラム:SOP-PEEL)で解析して求めた。
【0105】
<ポリイミドの重合および製膜>
[合成例1]
以下のようにしてワンポット重合を行った。窒素導入管、撹拌装置、ディーン・スタークトラップ付コンデンサーを備えたセパラブル三口フラスコに2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)1.6015g(5mmol)および触媒として安息香酸1.2230g(10mmol)を入れ、十分に脱水したDMAcを3.78mLを加えて室温で溶解した後、触媒として1-エチルピペリジン1.1385g(10mmol)を加えた。この溶液に下記式(1):
【化1】
で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(CpODA、ENEOS社製)の粉末1.7300g(4.5mmol)および下記式(2):
【化2】
で表される5,5-(1,4-フェニレン)-エキソ-ビス(ヘキサヒドロ-4,7-メタノイソベンゾフラン-シス-エキソ-1,3―ジオン)(CAS登録番号2376123-22-5、BzDAxx、ENEOS社製)の粉末0.2033g(0.5mmol)を加え、窒素雰囲気中で撹拌しながら反応容器を160℃のオイルバスにて加熱した(初期モノマー(固形分)濃度:50質量%)。適宜DMAcを追加しながら窒素雰囲気中160℃で5時間反応させ、均一で粘稠なポリイミドワニスを得た(最終的な固形分濃度:18.1質量%)。触媒残渣を除去するため、このワニスにDMAc30mLを加えて適度に希釈した後、1.5Lのメタノール中にゆっくり滴下してポリイミドを析出させ、沈殿を濾別・メタノールで洗浄後、100℃で12時間真空乾燥してポリイミドを繊維状粉末として単離した。得られたポリイミドの還元粘度は1.76dL/gであり、十分高分子量体であった。単離したポリイミド粉末を重水素化ジメチルスルホオキシドに溶解して
1H-NMRスペクトルを測定したところ、化学イミド化反応が完結していることが確認された。
【0106】
[合成例2]
CpODAの量を1.5385g(4.0mmol)、BZDAxxの量を0.4064g(1.0mmol)にした以外は合成例1に記載した方法に従ってワンポット重合を行ってポリイミドを重合・単離した。
【0107】
[合成例3]
CpODAの量を1.3453g(3.5mmol)、BZDAxxの量を0.6096g(1.5mmol)にした以外は合成例1に記載した方法に従ってワンポット重合を行ってポリイミドを重合・単離した。
【0108】
[合成例4]
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、CpODAとBzDAxxを併用する代わりに、CpODAを単独で用いた以外は、合成例1に記載した方法に従ってワンポット重合を行ってポリイミドを重合・単離した。
【0109】
[合成例5]
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、CpODAとBzDAxxを併用する代わりに、BzDAxxを単独で用いた以外は、合成例1に記載した方法に従ってワンポット重合を行ってポリイミドを重合・単離した。
【0110】
[合成例6]
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、CpODAとBzDAxxを併用する代わりに1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を単独で使用し、重合溶媒としてγ-ブチロラクトンを用いて、200℃で4時間ワンポット重合を実施した以外は、合成例1に記載した方法と同様にして、ポリイミドを重合・単離した。
【0111】
[実施例1]
合成例1で得たポリイミド粉末を純粋なDMAcに再溶解し、15質量%の均一なワニスとした。バーコーターを用いてこのワニスをガラス基板に塗工し、熱風乾燥器中65℃で2時間乾燥し、次いで真空中150℃、200℃で各30分、250℃で1時間乾燥させた。次いで水または温水に浸漬してフィルムをガラス基板から剥がし、残留歪を除くため、真空中300℃で1時間熱処理を行い、約23μm厚の柔軟なポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムに対して各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0112】
[実施例2]
合成例1に記載のポリイミドの代わりに合成例2に記載のポリイミドを用いた以外は、実施例1に記載した方法に従って厚み23μmのポリイミドフィルムを作製した。得られたポリイミドフィルムに対して各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0113】
[実施例3]
合成例1に記載のポリイミドの代わりに合成例3に記載のポリイミドを用いた以外は、実施例1に記載した方法に従って厚み22μmのポリイミドフィルムを作製した。得られたポリイミドフィルムに対して各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0114】
[比較例1]
合成例1に記載のポリイミドの代わりに合成例4に記載のポリイミドを用いた以外は、実施例1に記載した方法に従って厚み22μmのポリイミドフィルムを作製した。得られたポリイミドフィルムに対して各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0115】
[比較例2]
合成例1に記載のポリイミドの代わりに合成例5に記載のポリイミドを用いた以外は、実施例1に記載した方法に従って厚み14μmのポリイミドフィルムを作製した。得られたポリイミドフィルムに対して各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0116】
[比較例3]
合成例1に記載のポリイミドの代わりに合成例6に記載のポリイミドを用いた以外は、実施例1に記載した方法に従って厚み23μmのポリイミドフィルムを作製した。得られたポリイミドフィルムに対して各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0117】
[比較例4]
東洋紡社製ポリイミドフィルム(XENOMAX、43μm厚)を準備した。このポリイミドフィルムに対して各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0118】
実施例1のポリイミドフィルムは、波長400nmにおける光透過率(T400)は87.0%と非常に高い値であり、黄色度指数(YI)は1.8と非常に低い値であることから、該ポリイミドフィルムは非常に高い光学的透明性を有していることがわかった。また、ガラス転移温度(Tg)は385℃であり、極めて高い短期耐熱性を有していた。また、線熱膨張係数(CTE)は20.3ppm/Kと非常に低い値であり、低熱膨張特性(熱寸法安定性)も有していた。該ポリイミドフィルムは十分な柔軟性(εb)および十分な化学的耐熱性(Td
5)も保持していた。また、剥離強度は0.2N/cmであり、仮接着・易剥離工程適合性を有していた。
【0119】
実施例2のポリイミドフィルムは、非常に高いT400値(86.3%)および非常に低いYI値(1.8)を示したことから、極めて高い光学的透明性を有してることがわかった。また、非常に高いTg(393℃)より、極めて高い短期耐熱性も有していた。更に非常に低いCTE値(21.1ppm/K)より、低熱膨張特性(熱寸法安定性)も示した。並びに十分な柔軟性(εb)および十分な長期耐熱性(Td
5)も保持していた。また、剥離強度は0.2N/cmであり、仮接着・易剥離工程適合性を有していた。
【0120】
実施例3のポリイミドフィルムは、非常に高いT400値(87.3%)および非常に低いYI値(1.9)を示したことから、極めて高い光学的透明性を有してることがわかった。また、非常に高いTg(411℃)より、極めて高い短期耐熱性も有していた。更に非常に低いCTE値(23.7ppm/K)より、低熱膨張特性(熱寸法安定性)も示した。並びに十分な柔軟性(εb)および十分な長期耐熱性(Td
5)も保持していた。また、剥離強度は0.6N/cmであり、仮接着・易剥離工程適合性を有していた。
【0121】