(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046626
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理プログラムおよび情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G16C 20/70 20190101AFI20240327BHJP
G16C 60/00 20190101ALI20240327BHJP
G16C 20/30 20190101ALI20240327BHJP
G06F 16/9038 20190101ALI20240327BHJP
【FI】
G16C20/70
G16C60/00
G16C20/30
G06F16/9038
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151503
(22)【出願日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2022151566
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 海
(72)【発明者】
【氏名】杉本 哲平
(72)【発明者】
【氏名】茂本 勇
(72)【発明者】
【氏名】小柳 昂平
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝次
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175HA05
5B175HB03
5B175JC04
(57)【要約】
【課題】物性情報とともに、その材料の提供可能性に関する情報をユーザに提供することができる情報処理方法、情報処理プログラムおよび情報処理システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る情報処理システムは、コンピュータが、処方の情報を提供するための情報提供処理を実行する情報処理方法であって、物性値に関する検索条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、データベースを参照して、検索条件を満たす処方を検索する検索ステップと、処方を説明変数、物性値の実測値を目的変数とする学習済みモデルを用いて、データベースに存在しない仮想処方の物性値の推測値を算出する推測値算出ステップと、推測値が、検索条件を満たす仮想処方を探索する探索ステップと、検索条件を満たす仮想処方について、実現可能性を算出する実現可能性算出ステップと、検索ステップおよび/または探索ステップにおける結果、ならびに、実現可能性を表示装置に表示させる表示ステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、処方の情報を提供するための情報処理を実行する情報処理方法であって、
物性値に関する検索条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、
データベースを参照して、前記検索条件を満たす処方を検索する検索ステップと、
処方を説明変数、物性値の実測値を目的変数とする学習済みモデルを用いて、前記データベースに存在しない仮想処方の物性値の推測値を算出する推測値算出ステップと、
前記推測値が、前記検索条件を満たす前記仮想処方を探索する探索ステップと、
前記検索条件を満たす仮想処方について、実現可能性を算出する実現可能性算出ステップと、
前記検索ステップおよび/または前記探索ステップにおける結果、ならびに、前記実現可能性を表示装置に表示させる表示ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項2】
前記入力受付ステップの前または後に実行され、前記処方の満たすべき条件の入力を受け付ける第2の入力受付ステップ、
をさらに含む請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記表示ステップは、処方について、各処方に付される番号のみを表示する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記探索ステップは、仮想処方の推測値が検索条件を満たさない場合、予め設定された設定回数を上限として、他の仮想処方について探索処理を繰り返す、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記実現可能性算出ステップは、処方を説明変数、実現可能性を目的変数とする学習済みモデルを用いて前記実現可能性を算出する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記入力受付ステップにおいて入力された検索条件を前記データベースに記憶させる記憶ステップ、
をさらに含む請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、処方の情報を処理させる情報処理プログラムであって、
物性値に関する検索条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、
データベースを参照して、前記検索条件を満たす処方を検索する検索ステップと、
処方を説明変数、物性値の実測値を目的変数とする学習済みモデルを用いて、前記データベースに存在しない仮想処方の物性値の推測値を算出する推測値算出ステップと、
前記推測値が、前記検索条件を満たす前記仮想処方を探索する探索ステップと、
前記検索条件を満たす仮想処方について、実現可能性を算出する実現可能性算出ステップと、
前記検索ステップおよび/または前記探索ステップにおける結果、ならびに、前記実現可能性を表示装置に表示させる表示ステップと、
を前記コンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【請求項8】
物性値に関する検索条件の入力を受け付ける入力部と、
データベースを参照して、前記検索条件を満たす処方を検索する検索部、
処方を説明変数、物性値の実測値を目的変数とする学習済みモデルを用いて、前記データベースに存在しない仮想処方の物性値の推測値を算出し、該推測値が、前記検索条件を満たす前記仮想処方を探索する探索部と、
前記検索条件を満たす処方および/または仮想処方について、実現可能性を算出する実現可能性算出部と、
前記検索部および/または前記探索部における結果、ならびに、前記実現可能性を表示装置に表示させる表示部と、
を備える情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、情報処理プログラムおよび情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品を開発するうえで、要求する物性に見合う材料を迅速かつ適切に選択することが重要である。この際、多岐にわたる原料の組み合わせから、所望の特性を有する組み合わせを推定する技術として、樹脂組成物の製造条件情報から、該樹脂組成物の物性情報を推定する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1では、製造条件情報をもとに生成される学習済みモデルを用いて、物性情報を推測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、材料のユーザが部品を製造するには、部品の要求特性に見合った材料が供給されることが好ましい。しかしながら、ユーザは、要求特性を満たす材料が製品化されていない場合、部品の要求特性に見合った材料を材料供給者に要求し、試作素材で部品を試作し、所望の物性に見合うか確認する必要があり、部品開発に時間がかかるおそれがあった。また、ユーザは要求特性に見合う可能性のある、学習モデル等で推測された材料の情報を得ることができるが、実際にその材料が提供可能であるか否かを知ることはできない場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、樹脂組成物の物性情報とともに、その材料の提供可能性に関する情報をユーザに提供することができる情報処理方法、情報処理プログラムおよび情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る情報処理方法は、コンピュータが、処方の情報を提供するための情報処理を実行する情報処理方法であって、物性値に関する検索条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、データベースを参照して、前記検索条件を満たす処方を検索する検索ステップと、処方を説明変数、物性値の実測値を目的変数とする学習済みモデルを用いて、前記データベースに存在しない仮想処方の物性値の推測値を算出する推測値算出ステップと、前記推測値が、前記検索条件を満たす前記仮想処方を探索する探索ステップと、前記検索条件を満たす仮想処方について、実現可能性を算出する実現可能性算出ステップと、前記検索ステップおよび/または前記探索ステップにおける結果、ならびに、前記実現可能性を表示装置に表示させる表示ステップと、を含む。
【0007】
本発明に係る情報処理方法は、上記発明において、前記入力受付ステップの前または後に実行され、前記処方の満たすべき条件の入力を受け付ける第2の入力受付ステップ、をさらに含む。
【0008】
本発明に係る情報処理方法は、上記発明において、前記表示ステップは、処方について、各処方に付される番号のみを表示する。
【0009】
本発明に係る情報処理方法は、上記発明において、前記探索ステップは、仮想処方の推測値が検索条件を満たさない場合、予め設定された設定回数を上限として、他の仮想処方について探索処理を繰り返す。
【0010】
本発明に係る情報処理方法は、上記発明において、前記実現可能性算出ステップは、処方を説明変数、実現可能性を目的変数とする学習済みモデルを用いて前記実現可能性を算出する。
【0011】
本発明に係る情報処理方法は、上記発明において、前記入力受付ステップにおいて入力された検索条件を前記データベースに記憶させる記憶ステップ、をさらに含む。
【0012】
本発明に係る情報処理プログラムは、コンピュータに、処方の情報を処理させる情報処理プログラムであって、物性値に関する検索条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、データベースを参照して、前記検索条件を満たす処方を検索する検索ステップと、処方を説明変数、物性値の実測値を目的変数とする学習済みモデルを用いて、前記データベースに存在しない仮想処方の物性値の推測値を算出する推測値算出ステップと、前記推測値が、前記検索条件を満たす前記仮想処方を探索する探索ステップと、前記検索条件を満たす仮想処方について、実現可能性を算出する実現可能性算出ステップと、前記検索ステップおよび/または前記探索ステップにおける結果、ならびに、前記実現可能性を表示装置に表示させる表示ステップと、を前記コンピュータに実行させる。
【0013】
本発明に係る情報処理システムは、物性値に関する検索条件の入力を受け付ける入力部と、データベースを参照して、前記検索条件を満たす処方を検索する検索部、処方を説明変数、物性値の実測値を目的変数とする学習済みモデルを用いて、前記データベースに存在しない仮想処方の物性値の推測値を算出し、該推測値が、前記検索条件を満たす前記仮想処方を探索する探索部と、前記検索条件を満たす処方および/または仮想処方について、実現可能性を算出する実現可能性算出部と、前記検索部および/または前記探索部における結果、ならびに、前記実現可能性を表示装置に表示させる表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂組成物の物性情報とともに、その材料の提供可能性に関する情報をユーザに提供することができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、生成された材料物性の予測データを用いてCAE計算(シミュレーション)を行うことで、部品の予測物性まで得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る処方探索装置の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、情報処理システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、検索条件入力処理の概要を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、検索処理の概要を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、処方探索処理の概要を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、表示処理の概要を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、問合せ処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る情報処理システムの実施形態を、図面に基づいて、詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、本発明の個々の実施形態は、独立したものではなく、それぞれ組み合わせて適宜実施することができる。
【0018】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。これらの図に示す情報処理システム1は、学習用データを用いて学習した学習済みモデルを生成する学習装置2と、要求された特性を有する処方を探索する処方探索装置3と、処方探索装置3の推定結果を含む情報を表示する表示装置4と、入力装置5と、記憶装置6とを備える。情報処理システム1の各装置は、通信ネットワークを介して互いに通信可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を用いて構成されるものであり、有線、無線を問わない。
【0019】
学習装置2は、学習用データを作成し、この学習用データを用いて機械学習することによって学習モデルを生成する。学習装置2は、パーソナルコンピュータ等を用いて構成される。学習装置2は、入力される学習用データや、記憶装置6に記憶される学習用データを用いて機械学習を行って学習済みモデルを生成する。学習装置2が行う機械学習は、公知の機械学習方法を採用することができる。機械学習に採用される統計モデルとしては、例えば、単純線形回帰モデル、Ridge回帰、Lasso回帰、Elastic Net回帰、一般加法モデル、ランダムフォレスト回帰、部分的最小二乗回帰(PLS回帰)、ルールフィット回帰、勾配ブースティング決定木、エクストラツリー、サポートベクトル回帰、ガウス過程回帰、k最近傍法による回帰、カーネルリッジ回帰、ニューラルネットワーク等が挙げられる。
【0020】
例えば、学習装置2は、正則化を用いた機械学習によって学習済みモデルを生成する場合、学習モデルのハイパーパラメータの候補値を複数与え、与えられたハイパーパラメータの候補値のそれぞれに対して学習を実行し、一つの目的変数について、一つの学習済みモデルを生成し、この学習済みモデルを記憶装置6に記憶(格納)する。その後、学習装置2は、各候補値によって機械学習して得た複数の学習モデルに対し、学習用データを用いて、交差検証またはホールドアウト検証による予測誤差を算出し、最小の予測誤差を与える学習済みモデルを選択する。なお、ここでいうハイパーパラメータは、学習装置2が学習を行うためにあらかじめ設定しておくパラメータであり、例えば正則化の係数などを含む。また、ニューラルネットワークを用いた学習済みモデルの場合のハイパーパラメータには、ニューラルネットワークの層の数なども含まれる。
【0021】
学習装置2は、処方を説明変数、物性値を目的変数とする学習済みモデルを生成する。本実施の形態では、処方を説明変数、物性値を目的変数とする第1学習済みモデルと、処方を説明変数、実現可能性を目的変数とする第2学習済みモデルとをそれぞれ生成する。ここで、処方には、材料を構成する名称または番号、重量や価格等が対応付けられている。また、物性値は、曲げ弾性率や曲げ強度、引張強度、引張伸度、ウェルド強度、サイズ等があり、実測値(既知の値)が用いられる。物性値は、外観やリサイクル性、ライフサイクルインベントリ(LCI)等の評価値を含んでもよい。
第1学習済みモデルの生成には、例えば、深層学習やElastic Net回帰、サポートベクトル回帰、PLS回帰などの回帰アルゴリズムのほか、ランダムフォレストや勾配ブースティング決定木などの分類アルゴリズムが好適に用いられる。
第2学習済みモデルの生成には、例えば、k最近傍法による回帰、ガウス過程回帰、母集団推定を用いる方法が好適に用いられる。
【0022】
学習装置2は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の1または複数のハードウェアを用いて構成されるコンピュータである。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係る処方探索装置の概略構成を示す図である。
処方探索装置3は、要求に適合する物性値を与える処方を出力する。処方探索装置3は、検索部31、探索部32、実現可能性算出部33、制御部34および記憶部35を有する。
【0024】
検索部31は、記憶装置6を参照して、要求に適合する物性値を与える処方を検索する。
【0025】
探索部32は、記憶装置6に存在しない処方について、要求に適合する物性値を与える処方を検索する。探索部32は、記憶装置6に存在しない処方(仮想処方)を生成し、学習装置2が生成した学習済みモデルを用いて、当該処方の物性値の推測値を算出する。
【0026】
実現可能性算出部33は、探索部32が生成した仮想処方について、当該処方の実現可能性を算出する。この実現可能性は、その仮想処方をユーザに提供する提供可能性に相当する。
【0027】
制御部34は、処方探索装置3を構成する各部の動作を統括的に制御する。制御部34は、メモリと、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを有するプロセッサを用いて構成される。制御部34は、記憶部35から各種プログラムをメモリの作業領域に読み出して実行し、プロセッサによるプログラムの実行を通じて各構成部等を制御することによって、ハードウェアとソフトウェアとが協働し、処方探索装置3の各部の動作を生成する。
【0028】
記憶部35は、各種プログラム等があらかじめインストールしたROM(Read Only Memory)、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いて構成される。各種プログラムは、HDD、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0029】
表示装置4は、処方探索装置3の設定結果を含む情報を表示する。表示装置4は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescent Display)や、PU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の1または複数のハードウェアを用いて構成される。なお、表示装置4に、スピーカやタッチパネル等を設け、音声出力機能および入力機能を実現させてもよい。
【0030】
入力装置5は、処方探索装置3への指示入力を受け付ける。入力装置5は、各種情報の入力を受け付け、受け付けた情報を処方探索装置3へ出力する。入力装置5は、キーボード、マウス、マイク、タッチパネル等のユーザインタフェースを用いて構成される。入力装置5は、処方探索を行うユーザの端末であるものを例として示すが、その他の入力装置として、学習装置2や、処方探索装置3、表示装置4、記憶装置6への指示入力を受け付ける各種入力装置を含んでもよい。
【0031】
記憶装置6は、処方探索装置3を動作させるための各種プログラム、および処方探索装置3の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。各種プログラムには、学習モデルを用いて実行される処方探索プログラムも含まれる。また、記憶装置6は、既知の処方と、その処方に関連付けられた物性値や実現可能性を、蓄積材料データとして記憶するデータベースとしても機能する。この処方と物性(または実現可能性)との関連データは、学習用データとしても用いられる。さらに、記憶装置6は、ユーザに検索された条件(例えば物性値)や、検索回数等を記憶する。記憶装置6は、各種プログラム等があらかじめインストールされたROM、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM、HDD、SSD等を用いて構成される。各種プログラムは、HDD、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。また、処方探索装置3が、通信ネットワークを介して各種プログラムを取得することも可能である。
【0032】
〔処理概要〕
次に、情報処理システム1が行う処理の概要について、
図3を参照して説明する。
図3は、情報処理システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。以下の処理では、処方の情報を要求する側(以下、「ユーザ」という)が、表示装置4および入力装置5を所持し、処方の情報を提供する側(以下、「提供者」という)が、学習装置2、処方探索装置3および記憶装置6を備えるものとして説明する。なお、学習装置2、処方探索装置3および記憶装置6については、通信ネットワークを介して通信可能であればよく、同じ施設内に設けられる必要はない。
【0033】
まず、ユーザが、入力装置5を介して検索条件を入力する(ステップS1)。ここで入力される検索条件とは、例えば処方探索装置3から配信されるか、または入力装置5に予め記憶されている物性のカテゴリおよびその物性値であり、複数の検索候補特性として組をなす物性のカテゴリおよびその物性値から選択されるものである。
【0034】
図4は、検索条件入力処理の概要を示すフローチャートである。ユーザは、入力装置5を介して、検索条件とする特性を入力する(ステップS11:(第1の)入力受付ステップ)。この入力処理では、ユーザが、例えば表示装置4に表示される検索候補一覧のなかから、入力装置5を介して、物性のカテゴリおよびその物性値の組(特性)を選択する。また、検索候補一覧のなかに該当する組または物性値が無ければ、ユーザが、入力装置5を介して物性のカテゴリやその物性値を入力するようにしてもよい。
【0035】
また、ユーザは、処方の満たすべき条件を入力する(ステップS12:第2の入力受付ステップ)。ユーザは、入力装置5を介して、検索して抽出する処方の条件、例えば、必須元素、必須化合物、上限価格等を入力する。より具体的には、検索して抽出する処方における樹脂材料の種類、強化繊維の有無などの条件が挙げられる。
なお、ステップS11およびS12は、入力順序が逆であってもよい。
【0036】
検索条件および処方のみたすべき条件が入力された後、ユーザによって検索ボタンが押下される(ステップS13)。検索ボタンは、表示装置4の表示画面上に表示されて、ポインタ等によって選択入力するものであってもよいし、入力装置5に設けられるボタンであってもよい。検索ボタンが押下されると、検索指示信号が生成される(ステップS14)。また、ユーザによって設定された各条件が、検索情報として記憶装置6に出力される(ステップS15)。この際、検索情報は、入力装置5から送信されてもよいし、表示装置4から送信されてもよい。
【0037】
図3に戻り、検索ボタンの押下によって検索指示信号が生成されると、その検索指示信号が提供者側(処方探索装置3)に送信される(ステップS2)。この際、検索指示信号は、入力装置5から送信されてもよいし、表示装置4から送信されてもよい。
【0038】
処方探索装置3は、検索指示信号を受信すると、検索処理を実行する(ステップS3)。
【0039】
図5は、検索処理の概要を示すフローチャートである。処方探索装置3の検索部31は、設定された検索条件を満たす処方を検索する(ステップS21)。この検索処理では、検索部31が、例えば記憶装置6を参照して、物性値を満たす処方を選択、抽出する。ここでは、設定されている物性値を満たすすべての処方が抽出される。抽出後、検索結果が生成される(ステップS22)。
【0040】
図3に戻り、処方探索装置3の制御部34は、処方の満たすべき条件を満たしている処方があるか否かを判断する(ステップS4)。制御部34は、処方の満たすべき条件を満たす処方がある場合(ステップS4:Yes)、ステップS6に移行する。これに対し、制御部34は、抽出した処方が、処方の満たすべき条件を満たす処方がない場合(ステップS4:No)、ステップS5に移行する。
【0041】
ステップS5において、処方探索装置3の探索部32が、設定されている物性値を有し、かつ、処方の満たすべき条件を満たす処方の探索処理を実行する。
【0042】
図6は、処方探索処理の概要を示すフローチャートである。探索部32は、まず、記憶装置6に記憶されている蓄積材料データに存在しない処方を生成する(ステップS31)。この際の処方生成方法としては、例えば、候補処方の一覧を作成した後、その一覧の中から無作為あるいは順番に候補を選択する方法(それぞれランダムサーチ、グリッドサーチ)や、ベイズ最適化等の最適化アルゴリズムを用いて処方候補を選択する方法などがある。
【0043】
処方生成後、探索部32は、処方を説明変数、物性値を目的変数とする第1学習済みモデルを用いて、処方の物性値を予測する(ステップS32)。探索部32は、生成した処方を第1学習済みモデルに入力し、物性値を取得する。
【0044】
また、実現可能性算出部33は、処方を説明変数、実施可能性を目的変数とする第2学習済みモデルを用いて、処方の実施可能性を予測する(ステップS33)。ここで、実施可能性は、その処方の製品が提供される可能性を示す。
なお、ステップS32およびS33は、処理順序が逆であってもよいし、同時であってもよい。また、ガウス過程回帰やk最近傍法等、物性値と実現可能性とを同時に予測可能な方法を用いる場合、第2学習済みモデルは、第1学習済みモデルと同じであってもよい。
【0045】
その後、制御部34は、生成した処方の予測結果を、予測情報として記憶装置6に出力する(ステップS34)。これにより、新たな処方による物性値、実施可能性が、蓄積材料データとして記憶装置6に格納される。なお、この処方の物性値は予測値であるため、学習用データとしては用いられない。
【0046】
また、制御部34は、当該処方が検索条件を満たすか否かを判断する(ステップS35)。制御部34は、ステップS4と同様にして、当該処方および物性値が、条件を満たすか否かを判断する。制御部34は、当該処方が検索条件を満たすと判断した場合(ステップS35:Yes)、ステップS37に移行する。これに対し、制御部34は、当該処方が検索条件を満たさないと判断した場合(ステップS35:No)、ステップS36に移行する。
【0047】
ステップS36において、制御部34は、ステップS31~ステップS35の一連の処理の繰返回数が、設定回数以下であるか否かを判断する。設定回数は、予め設定されており、蓄積材料データに存在しない処方による物性値予測の繰返回数の上限値である。制御部34は、繰返回数が設定回数以下であると判断した場合(ステップSS36:Yes)、ステップS31に戻り、新たな処方による予測処理を繰り返す。これに対し、制御部34は、繰返回数が設定回数より大きいと判断した場合(ステップSS36:No)、ステップS37に移行する。
【0048】
ステップS37において、制御部34は、探索結果を生成する。
なお、本実施の形態では、記憶装置6において条件に合致する処方が存在しなかった場合に探索処理を実行する例について説明したが、検索結果によらず、検索処理および探索処理の両方を実行するようにしてもよい。
また、探索処理において、少なくとも探索結果として出力される処方には、番号が付与される。
【0049】
図3に戻り、制御部34は、検索および/または探索処理が終了すると、処方探索結果をユーザ側(表示装置4)に送信する(ステップS6)。この際、処方検索結果は、入力装置5に送信されてもよい。
なお、処方の満たすべき条件を満たしている処方があるか否かを判断するステップ(ステップS4)を経ずに、ステップS5およびステップS6を実行してもよい。
【0050】
表示装置4は、処方検索結果を受信すると、表示処理を実行する(ステップS7)。
【0051】
図7は、表示処理の概要を示すフローチャートである。表示装置4は、処方検索結果に含まれる検索結果(ステップS3)および探索結果(ステップS5)を統合する(ステップS41)。この際、表示装置4は、例えば、データベースから抽出され、物性値を満たす一方で設定条件を満たしていない処方を組とする一つ又は複数の検索結果と、推定値が要求されている物性値を満たし、かつ設定条件を満たす処方を組とする探索結果とが、処理結果として統合される。
【0052】
表示装置4は、各処方を、実現可能性にしたがって並べ替える(ステップS42)。この際、実現可能性のほか、設定された物性値に対する合致度などにしたがって並べ替えてもよい。なお、並べ替えの有無や、並べ替えの条件は、設定変更が可能である。
この際、取得した処方が一つである場合や、該当する処方がない場合は、本ステップを省略することができる。
【0053】
その後、表示装置4は、並べ替え後の処方情報を表示する(ステップS43)。
【0054】
なお、
図7に示す処理は、入力装置5や、処方探索装置3が行い、表示装置は、処理後のデータを取得して表示するのみとしてもよい。
【0055】
図3に戻り、ユーザは、入力装置5を介して、問合せ処理を行う(ステップS8)。ユーザは、例えば、入力フォームを用いて問合せ内容を送信したり、チャット機能を用いて提供者側に問合せしたりする。
【0056】
図8は、問合せ処理の概要を示すフローチャートである。ユーザは、例えば、表示されている(抽出された)処方のうち、さらに要求に見合う処方を絞って表示させるためのフィルタリング条件を設定する(ステップS51)。
【0057】
表示装置4では、ステップS51で設定されたフィルタリング条件に応じて、検索結果および/または探索結果のフィルタリングが実行される(ステップS52)。その後、表示装置4では、フィルタリング結果が表示される(ステップS53)。
なお、フィルタリング処理が不要である場合には、ステップS51~S53の処理は省略できる。
【0058】
ユーザは、表示装置4に表示されている処方から、問合せを行う処方を問合せ情報として選択する(ステップS54)。問合せ対象の処方が選択された後、ユーザによって問合せボタンが押下される(ステップS55)。問合せボタンは、検索ボタンと同様に、表示装置4の表示画面上に表示されて、ポインタ等によって選択入力するものであってもよいし、入力装置5に設けられるボタンであってもよい。問合せボタンが押下されると、問合せ信号が生成される(ステップS56)。問合せ信号は、入力装置5が生成してもよいし、表示装置4が生成してもよい。
【0059】
図3に戻り、問合せボタンの押下によって問合せ信号が生成されると、その問合せ信号が提供者側(処方探索装置3)に送信される(ステップS9)。この際、検索指示信号は、入力装置5から送信されてもよいし、表示装置4から送信されてもよい。
【0060】
処方探索装置3は、問合せ信号を受信すると、問合せ情報を記憶装置6に格納する処理を実行する(ステップS10)。提供者側では、要求された物性や、問合せがあった処方のデータを蓄積することによって、ユーザのニーズに関する情報を増やしたり、そのニーズを把握、共有したりできる。
【0061】
図9は、上述した処理時に表示される画像の一例を示す図である。画像W1には、検索設定タブと、検索結果タブとが設けられ、上段に検索した条件(検索設定)が表示され、下段に検索結果が表示される。すなわち、画像W1は、二組の検索設定・検索結果を示す例を示す。
【0062】
ステップS1における検索条件の入力処理では、検索設定タブにおいて、検索対象の各項目のチェックボックスCBにチェックマークを入力すると、数値範囲が表示される(
図9の上段参照)。ユーザは、選択した項目の数値範囲を設定し、検索ボタンSRを選択入力(押下)する。この際、選択した項目が表示されていない場合、例えば、検索条件ボタンSLを選択入力することによって、入力画面が表示され、ユーザはその入力画面に項目や数値範囲を入力する。
【0063】
ステップS6における処理結果の表示処理では、検索結果タブにおいて、各処方に付与されている番号(No.)ごとに、物性値(BenMdl、・・・)と、実現可能性とが表示される(
図9の下段参照)。また、プルダウン等の選択によって、表示する物性値の種別を変更することができる。
【0064】
また、問合せ処理では、例えば、ユーザが処方の番号を選択すると、問合せボタンが表示され、ユーザが当該問合せボタンを選択入力することによって、問合せ信号が生成される。
なお、上段の検索設定は、ステップS1における検索条件の入力処理のほか、再検索処理に用いることができる。
【0065】
以上説明した実施の形態では、ユーザから入力された物性値に対し、当該物性値を満たす処方(番号)と、その実施可能性を表示するようにした。この際、データベース(ここでは記憶装置6)に該当する物性値を有する処方が存在しない場合、新たな処方を生成して学習済みモデルを用いて物性値を予測することによって、予測された処方(番号)を実現可能性とともにユーザに提供する。本実施の形態によれば、物性値とともにその実現性を表示することによって、物性情報とともに、その材料の提供可能性に関する情報をユーザに提供することができる。
【0066】
また、本実施の形態では、設定された物性値を有する処方がデータベースに存在しない場合でも、データベースに存在しない処方をユーザに提供するため、提供者側においては、幅広くユーザに情報を提供することができ、ユーザ側においては、要求する物性値を有する材料を取得できる可能性が広がる。
【0067】
また、本実施の形態では、提供する情報として、処方について内容は表示せず、番号のみとしたため、送信する情報量を削減し、検索処理等に要する時間を短くすることができる。また、処方が簡易的に表示されるため、情報量が少なく、表示画面の視認性を上げることができる。
【0068】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、処方探索装置が学習部の機能を備えてもよい。この場合、処方探索装置は、処方の目的変数(物性値)を算出することに加え、学習用データを生成し、学習済みモデルを逐次更新する。
【符号の説明】
【0069】
1 情報処理システム
2 学習装置
3 処方探索装置
4 表示装置
5 入力装置
6 記憶装置
31 検索部
32 探索部
33 実現可能性算出部
34 制御部
35 記憶部