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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046628
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】波長変換装置及び光伝送システム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20240327BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G02F1/37
H04J14/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152211
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022151500
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(委託)/全光信号処理による光伝送ネットワーク大容量化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】村中 秀史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智行
(72)【発明者】
【氏名】竹山 智明
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA07
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102BD02
2K102DA01
2K102DA10
2K102DA20
2K102DD05
2K102EA25
2K102EB06
2K102EB22
5K102AD02
5K102AK00
5K102KA01
5K102KA42
5K102MB01
5K102MC00
5K102MD01
5K102MD03
5K102MH02
5K102MH03
5K102MH13
5K102MH14
5K102MH22
5K102PC11
5K102PH31
5K102PH42
5K102RB19
(57)【要約】
【課題】広帯域伝送における受信側の信号品質低下を抑制する波長変換装置及び光伝送システムを提供することを目的とする。
【解決手段】波長変換装置は、第1波長帯に属する複数の第1波長を含む第1波長多重光を第2波長帯に属する複数の第2波長を含む第2波長多重光に変換する光学媒質と、前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する第1モニタと、前記光学媒質の変換特性を調整するための制御情報を保持する記憶部と、前記第1モニタによる第1観測結果に応じて、前記記憶部から取得した前記制御情報により前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う制御部と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯に属する複数の第1波長を含む第1波長多重光を第2波長帯に属する複数の第2波長を含む第2波長多重光に変換する光学媒質と、
前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する第1モニタと、
前記光学媒質の変換特性を調整するための制御情報を保持する記憶部と、
前記第1モニタによる第1観測結果に応じて、前記記憶部から取得した前記制御情報により前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う制御部と、
を備える波長変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の第1波長と前記複数の第2波長と第3波長帯に属する複数の第3波長とを含む広帯域波長多重光を伝送した伝送路で生じる2次チルトを補償するように、前記制御情報により前記光学媒質の変換特性を調整する第1制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、ゼロ分散波長のばらつきを補償するように前記光学媒質の変換特性を調整する第2制御を行い、前記第2制御の結果に基づいて前記制御情報を前記記憶部に記録した後に、前記第1制御を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の波長変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記変換特性の調整に基づく変換効率の低下量が変換特性の調整前の前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーの偏差を上回る場合に前記第1制御をリセットする、
ことを特徴とする請求項3に記載の波長変換装置。
【請求項5】
前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する第2モニタをさらに有し、
前記制御部は、前記第1観測結果および前記第2モニタによる第2観測結果に応じて、前記記憶部から取得した前記制御情報により前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記光学媒質の温度を調整して前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項7】
励起光を出力する励起光源をさらに有し、
前記制御部は、前記励起光源から前記光学媒質に入力された前記励起光の波長を調整して前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項8】
受信側の波長変換装置と送信側の波長変換装置とを含む光伝送システムであって、
前記受信側の波長変換装置は、
第1波長帯に属する複数の第1波長を含む第1波長多重光を増幅する受信側光増幅器と、増幅後の前記第1波長多重光を第2波長帯に属する複数の第2波長を含む第2波長多重光に変換する第1光学媒質と、前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する受信側第1モニタと、前記第1光学媒質の変換特性を調整するための第1制御情報を保持する第1記憶部と、前記受信側第1モニタによる第1観測結果に応じて、前記第1記憶部から取得した前記第1制御情報により前記第1光学媒質の変換特性を調整する制御を行う受信側制御部と、を有し、
前記送信側の波長変換装置は、
第1送信器から出力された前記第2波長多重光を前記第1波長多重光に変換する第2光学媒質と、変換後の前記第1波長多重光を増幅する送信側第1光増幅器と、第2送信器から出力された前記第2波長多重光を増幅する送信側第2光増幅器と、前記送信側第2光増幅器から出力された前記第2波長多重光と、前記送信側第1光増幅器から出力された前記第1波長多重光とを合波して前記受信側の波長変換装置と前記送信側の波長変換装置とを接続する伝送路に出力する光カプラと、を有する、
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項9】
前記送信側の波長変換装置は、
前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、
前記第2光学媒質の変換特性を調整するための第2制御情報を保持する第2記憶部と、
前記受信側制御部から出力された前記第1観測結果および前記送信側第1モニタによる第2観測結果に応じて、前記第2記憶部から取得した前記第2制御情報により前記第2光学媒質の変換特性を調整する制御を行う送信側制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の光伝送システム。
【請求項10】
前記受信側の波長変換装置は、
前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する受信側第2モニタをさらに有し、前記受信側制御部が前記受信側第2モニタから前記受信側第2モニタによる第2観測結果を取得して前記第1観測結果とともに前記送信側の波長変換装置に出力し、
前記送信側の波長変換装置は、
前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、前記受信側制御部から出力された前記第1観測結果及び前記第2観測結果と前記送信側第1モニタによる第3観測結果とに応じて、前記伝送路を通過した後の前記第1波長多重光の各波長のパワーの偏差が低減するように、前記送信側第1光増幅器のスロープを調整する制御と、前記第2光学媒質の変換特性を温度で調整する制御とを行う送信側制御部と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項8に記載の光伝送システム。
【請求項11】
前記送信側の波長変換装置は、
前記送信側第1光増幅器から出力された前記第1波長多重光のパワーを減衰させる第1可変光減衰器と、
前記送信側第2光増幅器から出力された前記第2波長多重光のパワーを減衰させる第2可変光減衰器と、
前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、
前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する送信側第2モニタと、
前記送信側第1モニタによる第3観測結果と前記送信側第2モニタによる第4観測結果とに応じて、前記伝送路を通過する前の前記第1波長多重光の各波長のパワーの偏差が低減するように、前記送信側第1光増幅器と前記送信側第2光増幅器の各スロープを調整する制御と、前記第1可変光減衰器と前記第2可変光減衰器の各減衰量を調整する制御と、前記第2光学媒質の変換特性を温度で調整する制御とを行う送信側制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の光伝送システム。
【請求項12】
前記受信側の波長変換装置は、
前記受信側制御部が前記第1観測結果を波長帯ごとに取得し、線形の信号品質を算出する所定の第1算出手法と、前記第1観測結果とに基づいて、線形の第1信号品質を波長帯ごとに算出して前記送信側の波長変換装置に出力し、
前記送信側の波長変換装置は、
前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、
前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する送信側第2モニタと、
非線形の信号品質を算出する所定の第2算出手法と、前記送信側第1モニタによる第3観測結果と、前記送信側第2モニタによる第4観測結果とに基づいて、非線形の第2信号品質を波長帯ごとに算出し、
一般化された信号品質を算出する所定の第3算出手法と、前記受信側制御部から出力された前記第1信号品質と、前記第2信号品質とに基づいて、前記第1信号品質及び前記第2信号品質のいずれとも異なる第3信号品質を波長帯ごとに算出し、
前記第3信号品質が低減するように、前記送信側第1光増幅器と前記送信側第2光増幅器の各スロープを調整する制御と、前記第2光学媒質の変換特性を温度で調整する制御とを行う送信側制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の光伝送システム。
【請求項13】
前記送信側の波長変換装置は、
前記送信側第1光増幅器から出力された前記第1波長多重光のパワーを減衰させる第1可変光減衰器と、
前記送信側第2光増幅器から出力された前記第2波長多重光のパワーを減衰させる第2可変光減衰器と、
前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、
前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する送信側第2モニタと、
線形の信号品質を算出する所定の第1算出手法と、非線形の信号品質を算出する所定の第2算出手法と、前記送信側第1モニタによる第3観測結果と、前記送信側第2モニタによる第4観測結果とに基づいて、線形の第1信号品質と非線形の第2信号品質のそれぞれを波長帯ごとに算出し、
一般化された信号品質を算出する所定の第3算出手法と、前記第1信号品質と、前記第2信号品質とに基づいて、前記第1信号品質及び前記第2信号品質のいずれとも異なる第3信号品質を波長帯ごとに算出し、
前記第3信号品質が低減するように、前記送信側第1光増幅器と前記送信側第2光増幅器の各スロープを調整する制御と、前記第1可変光減衰器と前記第2可変光減衰器の各減衰量を調整する制御と、前記第2光学媒質の変換特性を温度で調整する制御とを行う送信側制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の光伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、波長変換装置及び光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速・大容量の通信を行うために、複数の波長の光信号を多重伝送する波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送方式が知られている。また、伝送容量を拡大するために、C帯(Conventional Band)やL帯(Long Band)などの複数の波長帯を使用したマルチバンドの広帯域伝送が知られている。例えば、C帯は1530nm~1565nmの波長帯であり、L帯は1565nm~1625nmの長波長の波長帯である。
【0003】
WDM伝送方式では、例えば、光伝送路における誘導ラマン散乱(SRS:Stimulated Raman Scattering)などの影響を受けて、伝送中の短波長側と長波長側とに大きなパワー偏差(チルト)が生じる。その結果、受信側の信号品質が低下する。そこで、受信側の信号品質低下を抑制するためには、チルト補償が求められている(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-186735号公報
【特許文献2】特開2014-229913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、C帯とL帯を使用した広帯域伝送では例えばSRSに起因する上記チルト(1次チルト)の出現が確認されたものの、C帯とL帯の2つの波長帯に限定されているため、2次チルトの出現を確認することは難しかった。
【0006】
しかしながら、C帯とL帯だけでなくS帯(Short band)も使用して伝送容量をさらに拡大する新たな広帯域伝送では、波長帯が広くなったことによりSRSに起因する2次チルトの出現が確認され始めた。S帯は例えば1460nm~1530nmの波長帯である。このように、C帯とL帯とS帯を使用した広帯域伝送においては、SRSに起因する2次チルトに対してもチルト補償を実施し、受信側の信号品質低下を抑制することが望ましい。
【0007】
そこで、1つの側面では、広帯域伝送における受信側の信号品質低下を抑制する波長変換装置及び光伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施態様では、波長変換装置は、第1波長帯に属する複数の第1波長を含む第1波長多重光を第2波長帯に属する複数の第2波長を含む第2波長多重光に変換する光学媒質と、前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する第1モニタと、前記光学媒質の変換特性を調整するための制御情報を保持する記憶部と、前記第1モニタによる第1観測結果に応じて、前記記憶部から取得した前記制御情報により前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う制御部と、を有する。
【0009】
1つの実施態様では、光伝送システムは、受信側の波長変換装置と送信側の波長変換装置とを含む光伝送システムであって、前記受信側の波長変換装置は、第1波長帯に属する複数の第1波長を含む第1波長多重光を第2波長帯に属する複数の第2波長を含む第2波長多重光に変換する第1光学媒質と、前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する第1モニタと、前記第1光学媒質の変換特性を調整するための第1制御情報を保持する第1記憶部と、前記第1モニタによる第1観測結果に応じて、前記第1記憶部から取得した前記第1制御情報により前記第1光学媒質の変換特性を調整する制御を行う受信側制御部と、を有し、前記送信側の波長変換装置は、第1送信器から出力された前記第2波長多重光を前記第1波長多重光に変換する第2光学媒質と、第2送信器から出力された前記第2波長多重光と、前記第2光学媒質から出力された前記第1波長多重光とを合波して前記受信側の波長変換装置と送信側の波長変換装置とを接続する伝送路に出力する光カプラと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
広帯域伝送における受信側の信号品質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は光伝送システムの一例である。
図2図2は2次チルトの一例を説明する図である。
図3図3は第1実施形態に係る送信側の波長変換装置の一例である。
図4図4は第1実施形態に係る受信側の波長変換装置の一例である。
図5図5は第1実施形態に係る受信側の波長変換部の一例である。
図6図6はゼロ分散波長を説明するグラフの一例である。
図7図7は波長差分と位相不整合量やパラメトリック利得の関係を説明する図である。
図8図8は波長変換によるチルトの一例である。
図9図9は第1実施形態に係る受信側の制御部の一例である。
図10図10はゼロ分散波長のばらつきに対する補償の一例を示すフローチャートである。
図11図11は第1実施形態に係るチルト補償の一例を示すフローチャートである。
図12図12は第2実施形態に係る受信側の波長変換装置の一例である。
図13図13は第2実施形態に係る受信側の波長変換部の一例である。
図14図14は第2実施形態に係る受信側の制御部の一例である。
図15図15は第2実施形態に係るチルト補償の一例を示すフローチャートである。
図16図16は第3実施形態に係る送信側の波長変換装置と受信側の波長変換装置の一例である。
図17図17は第3実施形態に係る受信側の波長変換部の一例である。
図18図18は第3実施形態に係る送信側の波長変換部の一例である。
図19図19は第3実施形態に係る制御部の一例である。
図20図20は第3実施形態に係るチルト補償の一例を示すフローチャートである。
図21図21はスペクトル変化の一例である。
図22図22は第4実施形態に係る受信側の波長変換部の一例である。
図23図23は第4実施形態に係る送信側の波長変換部の一例である。
図24図24は第4実施形態に係るチルト補償の一例を示すフローチャートである。
図25図25は第5実施形態に係る送信側の波長変換部の一例である。
図26図26は第5実施形態に係る制御部の一例である。
図27図27は第5実施形態に係るチルト補償の一例を示すフローチャートである。
図28図28は第6実施形態に係る受信側の波長変換装置の一例である。
図29図29は第6実施形態に係る送信側の波長変換装置の一例である。
図30図30は第6実施形態に係る制御部の一例である。
図31図31は第6実施形態に係る制御部の他の一例である。
図32図32は第6実施形態に係るチルト補償の一例を示すフローチャートである。
図33図33は第7実施形態に係る制御部の一例である。
図34図34は第7実施形態に係るチルト補償の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本件を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、光伝送システムSTは送信側の波長変換装置100と受信側の波長変換装置200とを含んでいる。波長変換装置100と波長変換装置200は光伝送路300を介して互いに接続されている。光伝送路300は例えば光ファイバを含んでいる。波長変換装置100には第1WDM送信器10と第2WDM送信器20と第3WDM送信器30が接続されている。第1WDM送信器10と第3WDM送信器30は第1送信器の一例である。第2WDM送信器20は第2送信器の一例である。波長変換装置200には第1WDM受信器40と第2WDM受信器50と第3WDM受信器60が接続されている。
【0014】
第1WDM送信器10は複数の第1単波長送信器(図1においてTx#1と記載)11と光合波器12(図1においてMUXと記載)を含んでいる。複数の第1単波長送信器11はC帯に属する互いに異なる波長の単波長光λ11,・・・,λ1nをそれぞれ送信する。単波長光λ11,・・・,λ1nは例えば信号光である。単波長光λ11,・・・,λ1nは制御光であってもよい。光合波器12は単波長光λ11,・・・,λ1nを合波し、波長多重光λ1Cを出力する。これにより、第1WDM送信器10はC帯に属する波長多重光λ1Cを送信する。
【0015】
第2WDM送信器20は複数の第2単波長送信器(図1においてTx#2と記載)21と光合波器22を含んでいる。複数の第2単波長送信器21はC帯に属する互いに異なる波長の単波長光λ21,・・・,λ2nをそれぞれ送信する。単波長光λ21,・・・,λ2nは信号光である。単波長光λ21,・・・,λ2nは制御光であってもよい。光合波器22は単波長光λ21,・・・,λ2nを合波し、波長多重光λ2Cを出力する。これにより、第2WDM送信器20はC帯に属する波長多重光λ2Cを送信する。
【0016】
第3WDM送信器30は複数の第3単波長送信器(図1においてTx#3と記載)31と光合波器32を含んでいる。複数の第3単波長送信器31はC帯に属する互いに異なる波長の単波長光λ31,・・・,λ3nをそれぞれ送信する。単波長光λ31,・・・,λ3nは信号光である。単波長光λ31,・・・,λ3nは制御光であってもよい。光合波器32は単波長光λ31,・・・,λ3nを合波し、波長多重光λ3Cを出力する。これにより、第3WDM送信器30はC帯に属する波長多重光λ3Cを送信する。
【0017】
波長変換装置100には第1WDM送信器10から送信された波長多重光λ1Cと第2WDM送信器20から送信された波長多重光λ2Cと第3WDM送信器30から送信された波長多重光λ3Cが入力される。波長多重光λ1Cが入力されると、波長変換装置100は波長多重光λ1CをS帯に属する波長多重光λ1Sに変換する。波長多重光λ3Cが入力されると、波長変換装置100は波長多重光λ3CをL帯に属する波長多重光λ3Lに変換する。変換後、波長変換装置100は波長多重光λ1Sと波長多重光λ2Cと波長多重光λ3Lとを合波し、マルチバンド光λmbとして光伝送路300に出力する。これにより、マルチバンド光λmbは光伝送路300を通過する。なお、マルチバンド光λmbは広帯域波長多重光の一例である。
【0018】
マルチバンド光λmbが光伝送路300を通過する際、SRSに起因するチルトが発生する。具体的には、SRSに起因する1次チルトと2次チルトが発生する。例えば、図2に示すように、-2dBmの送信パワーでマルチバンド光λmbを送信した場合、伝送距離が延びるにつれて、L帯に属する波長の受信パワーが低下する。C帯に属する波長の受信パワー及びS帯に属する波長の受信パワーもL帯の場合と同様に低下する。このように、伝送距離に伴い、低下量は変化する。
【0019】
ここで、L帯に属する最短波長と最長波長を結ぶ破線の曲線を最短波長と最長波長を結ぶ直線(不図示)に近似した場合、曲線と直線の中央部のパワーの変化量は小さい。このように、L帯に属する短波長側と長波長側にパワー偏差が発生しても、曲線を直線に1次近似できる場合には、このパワー偏差を1次チルトとして扱い、後述する波長変換装置200が備える光増幅器で1次チルトを補償する。なお、C帯についてはL帯の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
一方、例えば伝送距離が80kmにまで延びると、S帯に属する最短波長と最長波長を結ぶ実線の曲線を最短波長と最長波長を結ぶ破線の直線に近似した場合、実線の曲線と破線の直線の中央部のパワーの変化量はL帯やC帯の場合と比べて大きくなる。例えば、実線の曲線と破線の直線の中央部のパワーの変化量は2dBm程度になる。これにより、受信側のOSNR(Optical Signal to Noise Ratio:光信号対雑音比)が2dB程度低下する。
【0021】
このように、伝送距離が延伸し、S帯に属する短波長側と長波長側にパワー偏差が発生すると、曲線の直線への1次近似が難しくなる。この場合、このパワー偏差を2次チルトとして扱い、後述する波長変換装置200が備える波長変換部で2次チルトを補償する。
【0022】
図1に戻り、光伝送路300を通過したマルチバンド光λmbは波長変換装置200に入力される。マルチバンド光λmbが入力されると、波長変換装置200はマルチバンド光λmbを波長多重光λ1Sと波長多重光λ2Cと波長多重光λ3Lに分波する。分波後、波長変換装置200は波長多重光λ1Sを波長多重光λ1Cに変換し、波長多重光λ1Cを第1WDM受信器40に出力する。波長変換装置200は波長多重光λ2Cを変換せずに、波長多重光λ2Cを第2WDM受信器50に出力する。波長変換装置200は波長多重光λ3Lを波長多重光λ3Cに変換し、波長多重光λ3Cを第3WDM受信器60に出力する。
【0023】
第1WDM受信器40は複数の第1受信器(図1においてRx#1と記載)41と光分波器42(図1においてDEMUXと記載)を含んでいる。光分波器42は波長多重光λ1Cを単波長光λ11,・・・,λ1nに分波し、各単波長光λ11,・・・,λ1nを波長が対応する第1受信器41のそれぞれに出力する。これにより、第1受信器41の各々はC帯に属する単波長光λ11,・・・,λ1nを受信する。
【0024】
第2WDM受信器50は複数の第2受信器(図1においてRx#2と記載)51と光分波器52を含んでいる。光分波器52は波長多重光λ2Cを単波長光λ21,・・・,λ2nに分波し、各単波長光λ21,・・・,λ2nを波長が対応する第2受信器51のそれぞれに出力する。これにより、第2受信器51の各々は単波長光λ21,・・・,λ2nを受信する。
【0025】
第3WDM受信器60は複数の第3受信器(図1においてRx#3と記載)61と光分波器62を含んでいる。光分波器62は波長多重光λ3Cを単波長光λ31,・・・,λ3nに分波し、各単波長光λ31,・・・,λ3nを波長が対応する第3受信器61のそれぞれに出力する。これにより、第3受信器61の各々は単波長光λ31,・・・,λ3nを受信する。
【0026】
次に、図3を参照して、波長変換装置100の詳細について説明する。
【0027】
図3に示すように、波長変換装置100は、光増幅器101,102,103,104,105と、光カプラ106と、波長変換部110,160とを含んでいる。光増幅器101は波長変換部110の前段に設けられ、光増幅器104は波長変換部110の後段に設けられている。光増幅器103は波長変換部160の前段に設けられ、光増幅器105は波長変換部160の後段に設けられている。
【0028】
光増幅器101は第1WDM送信器10と接続されている。光増幅器102は第2WDM送信器20と接続されている。光増幅器103は第3WDM送信器30と接続されている。光増幅器102,104,105は光カプラ106に接続されている。光カプラ106は光伝送路300に接続されている。
【0029】
光増幅器101はC帯に属する波長多重光λ1Cを増幅して波長変換部110に出力する。波長変換部110は波長多重光λ1CをS帯に属する波長多重光λ1Sに変換し、光増幅器104に出力する。光増幅器104はS帯に属する波長多重光λ1Sを増幅して光カプラ106に出力する。光増幅器102はC帯に属する波長多重光λ2Cを増幅して光カプラ106に出力する。
【0030】
光増幅器103はC帯に属する波長多重光λ3Cを増幅して波長変換部160に出力する。波長変換部160は波長多重光λ3CをL帯に属する波長多重光λ3Lに変換し、光増幅器105に出力する。光増幅器105はL帯に属する波長多重光λ3Lを増幅して光カプラ106に出力する。光カプラ106は波長多重光λ1Sと波長多重光λ2Cと波長多重光λ3Lとを合波し、マルチバンド光λmbとして光伝送路300に出力する。
【0031】
次に、図4を参照して、波長変換装置200の詳細について説明する。
【0032】
図4に示すように、第1実施形態に係る波長変換装置200は、WDMフィルタ201と、光増幅器202,203,204,205,206と、波長変換部210,260とを含んでいる。また、波長変換装置200は、OCM(Optical channel monitor)207,208と、制御部209,209-1とを含んでいる。OCM207,208は受信側第1モニタの一例である。OCM207は制御部209に含まれていてもよい。OCM208は制御部209-1に含まれていてもよい。
【0033】
光増幅器202は波長変換部210の前段に設けられ、光増幅器204は波長変換部210の後段に設けられている。光増幅器203は波長変換部260の前段に設けられ、光増幅器206は波長変換部260の後段に設けられている。
【0034】
光増幅器204は第1WDM受信器40と接続されている。光増幅器205は第2WDM受信器50と接続されている。光増幅器206は第3WDM受信器60と接続されている。光増幅器202,203,205はWDMフィルタ201に接続されている。WDMフィルタ201は光伝送路300に接続されている。
【0035】
WDMフィルタ201には光伝送路300を通過したマルチバンド光λmbが入力される。WDMフィルタ201はマルチバンド光λmbを波長多重光λ1Sと波長多重光λ2Cと波長多重光λ3Lとに分波する。光増幅器202はS帯に属する波長多重光λ1Sを増幅して波長変換部210に出力する。波長変換部210はS帯に属する波長多重光λ1SをC帯に属する波長多重光λ1Cに変換し、光増幅器204に出力する。光増幅器204は、1次チルトを補償するように、C帯に属する波長多重光λ1Cを増幅して、第1WDM受信器40に出力する。
【0036】
光増幅器205は、1次チルトを補償するように、C帯に属する波長多重光λ2Cを増幅して、第2WDM受信器50に出力する。光増幅器203はL帯に属する波長多重光λ3Lを増幅して波長変換部260に出力する。波長変換部260は波長多重光λ3LをC帯に属する波長多重光λ3Cに変換し、光増幅器206に出力する。光増幅器206は、1次チルトを補償するように、C帯に属する波長多重光λ3Cを増幅して、第3WDM受信器60に出力する。
【0037】
OCM207は波長変換部210から出力されたC帯に属する波長多重光λ1Cのパワーを観測する。より詳しくは、OCM207は波長多重光λ1Cに含まれる複数の単波長光λ11,・・・,λ1nの光パワーである波長パワーを観測する。OCM207は観測結果を電気的な制御信号により制御部209に出力する。OCM208は波長変換部260から出力されたC帯に属する波長多重光λ3Cのパワーを観測する。より詳しくは、OCM208は波長多重光λ3Cに含まれる複数の単波長光λ31,・・・,λ3nの光パワーである波長パワーを観測する。OCM208は観測結果を電気的な制御信号により制御部209-1に出力する。なお、OCM207,208が出力する観測結果は第1観測結果の一例である。
【0038】
制御部209はOCM207から出力された観測結果に基づいて、マルチバンド光λmbを伝送した光伝送路300で生じた2次チルトを補償するように、波長変換部210の変換特性を調整する。詳細は後述するが、波長変換部210は非線形光学媒質といった波長変換媒質を含み、制御部209は波長変換媒質の温度を制御することにより、波長変換部210の変換特性を調整する。
【0039】
制御部209-1はOCM208から出力された観測結果に基づいて、マルチバンド光λmbを伝送した光伝送路300で生じた2次チルトを補償するように、波長変換部260の変換特性を調整する。詳細は後述するが、波長変換部260は非線形光学媒質といった波長変換媒質を含み、制御部209-1は波長変換媒質の温度を制御することにより、波長変換部260の変換特性を調整する。
【0040】
次に、図5を参照して、WDMフィルタ201と波長変換部210の詳細について説明する。なお、波長変換部260は基本的に波長変換部210と同様の構成を有するため、詳細な説明を省略する。
【0041】
図5に示すように、WDMフィルタ201は光フィルタ21Aと光フィルタ21Bを含んでいる。光フィルタ21Aはマルチバンド光λmbから波長多重光λ1Sを分離し、マルチバンド残光λrを光フィルタ21Bに出力する。波長多重光λ1Sは光増幅器202に入力される。
【0042】
マルチバンド光λmbから波長多重光λ1Sが分離されるため、マルチバンド残光λrは波長多重光λ2Cと波長多重光λ3Lを含んでいる。光フィルタ21Bはマルチバンド残光λrを波長多重光λ2Cと波長多重光λ3Lに分離して出力する。波長多重光λ2Cは光増幅器205(図4参照)に入力される。波長多重光λ3Lは光増幅器203(図4参照)に入力される。
【0043】
波長変換部210は、励起光源211、光カプラ212、波長変換媒質213、光フィルタ214、光分岐タップ(図5においてTAP(Terminal Access Point)と記載)215、温度センサ216、及びヒータ217を含んでいる。波長変換部210はヒータ217と共にTEC(Thermo Electric Cooler:熱電クーラー)を含んでいてもよい。波長変換媒質213は光学媒質及び第1光学媒質の一例である。波長変換媒質213は具体的には非線形光学媒質である。非線形光学媒質は光ファイバであってもよいし、PPLN(Periodically Poled Lithium Niobate:周期分極反転ニオブ酸リチウム)導波路素子といった非線形光学結晶素子であってもよい。
【0044】
励起光源211はS帯より長い波長帯(例えば1520nm帯など)の励起光λpを出力する。励起光λpは異なる2つの波長を含んでいる。光カプラ212は光増幅器202に接続されている。このため、光カプラ212には励起光λpと波長多重光λ1Sが入力される。光カプラ212は波長多重光λ1Sに励起光λpを加え、波長変換媒質213に出力する。
【0045】
波長変換媒質213は、波長変換媒質213が持つ波長分散の分散特性と、励起光λpが引き起こす波長変換媒質213内の屈折率変動とに基づいて、波長多重光λ1Sを波長多重光λ1Cに変換し、波長多重光λ1Sと共に出力する。このように、波長変換媒質213は第1波長帯の一例であるS帯に属する複数の波長を含む波長多重光λ1Sを、第2波長帯の一例であるC帯に属する複数の波長を含む波長多重光λ1Cに変換する。一方、励起光λpは波長変換媒質213を透過する。したがって、波長変換媒質213は波長多重光λ1Sと波長多重光λ1Cと励起光λpを出力する。なお、L帯は第3波長帯の一例である。
【0046】
光フィルタ214は波長変換媒質213から出力された波長多重光λ1Sと波長多重光λ1Cと励起光λpから波長多重光λ1Sと励起光λpとを除去し、波長多重光λ1Cを出力する。図示しないが、光フィルタ214は波長フィルタと偏波フィルタとを含み、まず、波長フィルタが波長多重光λ1Sを除去し、次に、偏波フィルタが励起光λpを除去する。これにより、波長多重光λ1Cが除去されずに残り、波長多重光λ1Cが光フィルタ214から出力される。
【0047】
光分岐タップ215は波長多重光λ1Cを分岐し、波長多重光λ1Cを光増幅器204とOCM207に出力する。これにより、光増幅器204は波長多重光λ1Cを増幅することができる。また、OCM207は波長多重光λ1Cに含まれる複数の単波長光λ11,・・・,λ1nの波長パワーを観測することができる。
【0048】
温度センサ216は波長変換媒質213の温度を検出し、検出した温度を電気的な信号により制御部209に出力する。制御部209は、OCM207から出力された観測結果と温度センサ216が検出した波長変換媒質213の温度とに基づいて、2次チルトを補償するように、ヒータ217の温度を制御する。波長変換部210がTECを含む場合には、制御部209はTECの温度を制御してもよい。このように、制御部209はヒータ217やTECを介して波長変換媒質213の温度を制御し、波長変換媒質213の変換特性を調整する。
【0049】
例えば、制御部209による制御に基づいて、ヒータ217が波長変換媒質213を温めれば、波長変換媒質213の変換特性が変化する。波長変換媒質213の変換特性が変化することにより、2次チルトを補償するような、2次チルトと逆向きの2次チルトが発生する。したがって、光伝送路300で発生する2次チルトをこの逆向きの2次チルトで相殺することにより、2次チルトに起因するOSNRの低下を抑制することができる。
【0050】
図6乃至図8を参照して、波長変換媒質213の変換特性が温度により変化する仕組みについて説明する。
【0051】
図6に示すように、波長変換媒質213は、分散カーブDwに示すように、波長λに依存する分散特性を有する。この分散カーブDwは所定の波長λa,λbで2次の分散βがゼロになるゼロ分散波長をもつ。しかしながら、ゼロ分散波長にはばらつきがあるため、制御部209は波長変換媒質213の温度を制御することにより分散カーブDwを水平軸方向にシフトさせて、ゼロ分散波長のばらつきを補償する。なお、制御部209は波長変換媒質213に入力された励起光λpの波長を動かして調整することによりゼロ分散波長のばらつきを補償してもよい。
【0052】
なお、図6では2次の分散βを一例として説明したが、偶数次の高次分散β2m(m=1,2,3,…)は以下の算出式(1)と係数ω,ωとにより表すことができる。
<算出式(1)>
【数1】
算出式(1)における係数ω,ωは以下のとおりである。
ω:励起光の周波数
ω:ゼロ分散周波数
ここで、β2mは係数(励起光の周波数)ωでの2m次の分散を意味している。
【0053】
次に、上述した偶数次の高次分散β2mを考慮した位相不整合量Δβは以下の算出式(2)と係数ωにより表すことができる。
<算出式(2)>
【数2】
算出式(2)におけるΔωはω-ωによって表される。係数ωは信号光の周波数である。
【0054】
したがって、算出式(1)と算出式(2)により、6次(m=3)の分散までの位相不整合量Δβは以下の算出式(3)により表すことができる。
<算出式(3)>
【数3】
【0055】
ここで、上記算出式(3)において、位相不整合量Δβに対する6次の分散βの影響は軽微であるため無視してもよい。したがって、4次の分散βがゼロでない場合に限れば、位相不整合量Δβは4次式に近似でき、図7(a)及び(b)に示すように、位相不整合量Δβは4次のグラフにより表すことができる。なお、図7(a)の上段では、分散βと分散βの両方が正(+)の場合が表され、図7(a)の下段では、分散βが正であり、分散βが負(-)の場合が表されている。一方、図7(b)の上段では、分散βが負であり、分散βが正の場合が表され、図7(b)の下段では、分散βと分散βの両方が負の場合が表されている。
【0056】
位相不整合量Δβは4次式で表現された場合、図7(c)及び(d)に示すように、2次チルトが発生する。パラメトリック利得Gは例えば以下の算出式(4)により算出することができる。
<算出式(4)>
【数4】
なお、Psoutは波長変換媒質213から出力される信号光の出力パワーを表している。Psinは波長変換媒質213に入力される信号光の入力パワーを表している。
【0057】
ここで、図7(c)及び(d)に示すように、2次チルトの向きは分散βの正負により決定される。例えば、分散βが正であれば、上に凸の2次チルトが発生し、分散βが負であれば、下に凸の2次チルトが発生する。分散βは波長変換媒質213の温度によってシフトされるため、制御部209が波長変換媒質213の温度を制御することにより2次チルトを制御することができる。これにより、例えば図8に示すように、波長変換媒質213で2次チルトが発生すれば、光伝送路300で発生した2次チルトの形状を変化させることができる。
【0058】
ここでは便宜的にパラメトリック増幅で説明したが、波長変換でも同様の2次チルト変化を確認することができる。図21は高非線形ファイバを用いた場合に1℃ごとに温度制御した場合のL帯に変換された疑似WDM信号のスペクトル(波長範囲1575~1608nm)の変化を示している。5℃の温度変化で波長1575~1585nmの範囲では温度変化による強度変化はほとんど見られないものの、波長1585~1608nmの範囲において最大2dBの変化が生じていることが確認できる。パラメトリック増幅よりはチルト制御量が小さいものの、2dB程度の2次チルトを補償する可能性があることを示している。
【0059】
次に、図9を参照して、制御部209の詳細について説明する。なお、制御部209-1については基本的に制御部209と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0060】
制御部209は、ハードウェア回路として、第1演算部29A、第1制御部29B、第2演算部29C、第2制御部29D、及びメモリ29Eを含んでいる。第1制御部29B及び第2制御部29Dは制御部(具体的には受信側制御部)の一例である。メモリ29Eは記憶部(具体的には第1記憶部)の一例である。第1演算部29A、第1制御部29B、第2演算部29C、第2制御部29D、及びメモリ29Eは、例えば単一のLSI(Large-Scale Integration:大規模集積回路)によって実現される。第1演算部29A及び第1制御部29Bは協働してゼロ分散波長のばらつきを補償する。第2演算部29C及び第2制御部29Dは協働して光伝送路300で発生する2次チルトを補償する。ゼロ分散波長のばらつきを補償する第1演算部29A及び第1制御部29Bの動作、並びに2次チルトを補償する第2演算部29C及び第2制御部29Dの動作の詳細については後述する。
【0061】
なお、第1演算部29A、第1制御部29B、第2演算部29C、及び第2制御部29Dは、例えば単一のCPU(Central Processing Unit)によって実現されてもよいし、それぞれ個別のCPUによって実現されてもよい。第1演算部29A、第1制御部29B、第2演算部29C、及び第2制御部29Dは単一の又は複数のASIC(Application Specific Integrated Circuit)で実現されてもよいし、単一の又は複数のFPGA(Field Programmable Gate Array)で実現されてもよい。メモリ29Eは、例えばRAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)を含んでいる。メモリ29Eが記憶するプログラムを例えばCPUなどが読み込んで処理を実行することにより波長変換装置200は動作する。プログラムは後述するフローチャートに応じたものとすればよい。
【0062】
次に、図10を参照して、第1実施形態に係る波長変換装置200の第1補償動作について説明する。第1補償動作は、OCM207、第1演算部29A、及び第1制御部29Bによるゼロ分散波長のばらつきに対する補償を行う動作である。
【0063】
例えば波長変換装置200に電力が供給されて波長変換装置200の運用が開始すると、OCM207は波長多重光λ1Cのパワーを観測する(ステップS1)。より詳しくは、OCM207は波長多重光λ1Cに含まれる複数の単波長光λ11,・・・,λ1nの波長パワーを観測する。波長パワーを観測すると、OCM207は観測結果を電気的な制御信号により第1演算部29Aに出力する。なお、観測結果は各波長と各波長の波長パワーを含んでいる。
【0064】
観測結果が入力されると、第1演算部29Aは観測結果に基づいて波長多重光λ1Cの平均パワーを推定する(ステップS2)。具体的には、第1演算部29Aは各波長の波長パワーを波長数で割ることにより平均パワーを推定する。平均パワーを推定すると、第1演算部29Aは観測結果に基づいて波長多重光λ1Cのチルトを推定する(ステップS3)。具体的には、第1演算部29Aは長波長側の波長パワーと短波長側の波長パワーの差を算出することにより波長多重光λ1Cのチルトを推定する。なお、第1演算部29Aは観測結果と公知の算出式とに基づいて平均パワーとチルトを推定してもよい。また、ステップS2とS3の処理順序は逆であってもよい。
【0065】
第1演算部29Aがチルトを推定すると、第1制御部29Bはヒータ217の温度を制御する(ステップS4)。例えば、第1制御部29Bは平均パワーと温度の関係を定義した算出式(又は関数)に基づいてヒータ217の温度を平均パワーに応じた温度に設定する。第1制御部29Bは平均パワーと温度の関係を定義したテーブルを参照してヒータ217の温度を平均パワーに応じた温度に設定してもよい。平均パワーと温度の関係を定義したこのようなテーブルはメモリ29Eに格納されていればよい。第1制御部29Bがヒータ217の温度を制御して、波長変換媒質213の温度が上昇すると、波長変換媒質213の変換特性が調整され、第1演算部29Aが推定する平均パワーが変化する。
【0066】
ヒータ217の温度を制御すると、第1演算部29Aは平均パワーが向上するか否かを判断する(ステップS5)。例えば、第1演算部29Aは温度上昇前後の平均パワーを比較し、平均パワーが向上するか否かを判断する。平均パワーが向上していない場合(ステップS5:NO)、第1制御部29BはステップS4の処理を実行する。これにより、第1制御部29Bはヒータ217の温度を再び制御する。このように、平均パワーが向上するまで、第1制御部29Bはヒータ217の温度を制御する。
【0067】
平均パワーが向上すると(ステップS5:YES)、第1演算部29Aはチルトが低下するか否かを判断する(ステップS6)。例えば、第1演算部29Aは温度上昇前後のチルトを比較し、チルトが低下するか否かを判断する。チルトが低下していない場合(ステップS6:NO)、第1制御部29BはステップS4の処理を実行する。すなわち、第1制御部29Bはチルトが低下するまでヒータ217の温度を制御する。これにより、第1制御部29Bはヒータ217の温度を再び制御する。このように、平均パワーが向上し、かつ、チルトが低下するまで、第1制御部29Bはヒータ217の温度を制御する。
【0068】
なお、チルトが低下していない場合、第1制御部29Bはチルトと温度の関係を定義した算出式(又は関数)に基づいてヒータ217の温度を制御する。第1制御部29Bはチルトと温度の関係を定義したテーブルを参照してヒータ217の温度を制御してもよい。なお、チルトと温度の関係を定義したこのようなテーブルはメモリ29Eに格納されていればよい。
【0069】
チルトが低下すると(ステップS6:YES)、第1制御部29BはステップS5,S6の処理で肯定された平均パワー及びチルト、並びに平均パワー及びチルトが肯定された際のヒータ217に対する温度設定値を関連付けて制御情報(具体的には第1制御情報)としてメモリ29Eに記録する(ステップS7)。関連付けは例えば算出式(又は関数)やテーブルを採用すればよい。なお、第1制御部29Bは平均パワーとチルトが肯定された際の温度のメモリ29Eへの記録を温度センサ216に指示し、温度センサ216がこの温度を温度設定値としてメモリ29Eに記録してもよい。平均パワーとチルトと温度設定値が記録されると、OCM207、第1演算部29A、及び第1制御部29Bによるゼロ分散波長のばらつきに対する第1補償動作が終了する。このように、制御部209はゼロ分散波長のばらつきを補償するように波長変換媒質213の変換特性を調整する制御を行う。
【0070】
次に、図11を参照して、第1実施形態に係る波長変換装置200の第2補償動作について説明する。第2補償動作は、OCM207、第2演算部29C、及び第2制御部29Dによって2次チルトに対する補償を行う動作である。
【0071】
まず、第2演算部29Cは平均パワー、チルト及び温度設定値が互いに関係付けられた制御情報をメモリ29Eから読み出す(ステップS11)。ここで制御情報は、きめ細かな精度を出すため、ステップS7でメモリ29Eに記録されたものを用いる。なお、制御可能な範囲内で予め定めた制御情報をメモリ29Eに記録しておき、活用してもよい。
【0072】
制御情報を読み出すと、第2制御部29Dはヒータ217の温度を制御する(ステップS12)。例えば、第2制御部29Dは平均パワーと温度の関係を定義した算出式(又は関数)に基づいてヒータ217の温度を平均パワーに応じた温度に設定する。第2制御部29Dは平均パワーと温度の関係を定義したテーブルを参照してヒータ217の温度を平均パワーに応じた温度に設定してもよい。第2制御部29Dがヒータ217の温度を制御して、波長変換媒質213の温度が上昇すると、波長変換媒質213の変換特性が調整され、第2演算部29Cが推定する平均パワーが変化する。なお、第1制御部29BはTECの温度を制御してもよい。この場合、波長変換媒質213の温度は下降する。
【0073】
温度を制御すると、OCM207は波長多重光λ1Cのパワーを観測する(ステップS13)。より詳しくは、OCM207は波長多重光λ1Cに含まれる複数の単波長光λ11,・・・,λ1nの波長パワーを観測する。波長パワーを観測すると、OCM207は観測結果を電気的な制御信号により第2演算部29Cに出力する。
【0074】
観測結果が入力されると、第2演算部29Cは観測結果に基づいて波長多重光λ1Cの平均パワーを推定する(ステップS14)。具体的には、第2演算部29Cは各波長の波長パワーを波長数で割ることにより平均パワーを推定する。平均パワーを推定すると、第2演算部29Cは観測結果に基づいて波長多重光λ1Cのチルトを推定する(ステップS15)。具体的には、第2演算部29Cは長波長側の波長パワーと短波長側の波長パワーの差を算出することにより波長多重光λ1Cのチルトを推定する。なお、第2演算部29Cは観測結果と公知の算出式とに基づいて平均パワーとチルトを推定してもよい。また、ステップS14とS15の処理順序は逆であってもよい。
【0075】
第2演算部29Cがチルトを推定すると、第2制御部29Dは第2演算部29Cが推定したチルトがステップS11の処理で読み出したチルトである読出チルト未満であるか否かを判断する(ステップS16)。推定したチルトが読出チルト以上である場合(ステップS16:NO)、ステップS12からS15の処理が繰り返される。言い換えれば、推定したチルトが読出チルト未満になるまで、ステップS12からS15の処理が繰り返される。これにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償が維持される。
【0076】
推定したチルトが読出チルト未満である場合(ステップS16:YES)、第2制御部29Dは第2演算部29Cが推定した平均パワーがステップS11の処理で読み出した平均パワーである読出パワー未満であるか否かを判断する(ステップS17)。推定した平均パワーが読出パワー以上である場合(ステップS17:NO)、第2演算部29CはステップS11の処理で読み出した温度設定値である読出温度に基づく温度制御を第2制御部29Dに指示する(ステップS18)。
【0077】
これにより、第2制御部29Dは読出温度に基づいてヒータ217の温度を制御する(ステップS19)。このように、平均パワーが過大になることにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償が損なわれる可能性がある場合には、チルト補償を処理の途中でリセットする。これにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償が維持される。
【0078】
一方、推定した平均パワーが読出パワー未満である場合(ステップS17:YES)、ステップS18,S19の処理はスキップされる。これにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償とチルト補償が両立する。推定した平均パワーが読出パワー未満である場合、又はステップS19の処理が終了すると、OCM207、第2演算部29C、及び第2制御部29Dによる2次チルトに対する第2補償動作が終了する。
【0079】
このように、第1実施形態に係る波長変換装置200では、OCM207が波長多重光λ1Cのパワーを観測し、制御部209が観測結果に応じて、メモリ29Eから取得した制御情報により波長変換媒質213の変換特性を調整する制御を行う。例えば、制御部209はヒータ217の温度を制御して、波長変換媒質213の温度や励起光λpの波長を調整する制御を行う。これにより、ゼロ分散波長のばらつきが補償されつつ、2次チルトが補償される。
【0080】
なお、制御部209が波長変換媒質213の変換特性を調整すると、変換特性の調整に基づいて波長変換媒質213の変換効率が低下する場合がある。具体的には、S帯からC帯への波長帯の変換効率が低下し、高精度な変換が抑制される可能性がある。このため、制御部209は波長変換媒質213の変換特性の調整に基づく変換効率の低下量が所定量以上であるか否かを判断する。そして、変換効率の低下量が所定量以上である場合、制御部209は2次チルトに対する補償をリセットし、2次チルトに対する補償に優先してゼロ分散波長のばらつきを補償するように、波長変換媒質213の変換特性を調整する。
【0081】
(第2実施形態)
続いて、図12乃至図15を参照して、本件の第2実施形態について説明する。なお、図12乃至図14において、図4図5及び図9に示される各部と同様の構成には原則として同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図12に示すように、第2実施形態に係る波長変換装置200は、第1実施形態に係る波長変換装置200と対比すると、OCM221,271をさらに含んでいる。OCM221,271は受信側第2モニタの一例である。OCM221は制御部209に含まれていてもよい。OCM271は制御部209-1に含まれていてもよい。
【0083】
図13に示すように、第2実施形態に係る波長変換部210は光カプラ212の前段にTAP218を備えており、TAP218はOCM221に接続されている。したがって、S帯に属する波長多重光λ1Sが波長変換部210に入力されると、波長多重光λ1SはTAP218により分岐されて、OCM221に入力される。すなわち、OCM221は波長変換媒質213に入力される前の波長多重光λ1Sのパワーを観測する。より詳しくは、OCM221は波長多重光λ1Sに含まれる複数の波長光の波長パワーを観測する。OCM221は観測結果を電気的な制御信号により制御部209に出力する。
【0084】
なお、第2実施形態に係る波長変換部260は基本的に第1実施形態に係る波長変換部210と同様の構成を有する。したがって、L帯に属する波長多重光λ3Lが波長変換部260に入力されると、波長多重光λ3Lは波長変換部260が備えるTAP(不図示)により分岐されて、OCM271(図12参照)に入力される。すなわち、OCM271は波長変換部260が備える波長変換媒質に入力される前の波長多重光λ3Lのパワーを観測する。より詳しくは、OCM271は波長多重光λ3Lに含まれる複数の波長光の波長パワーを観測する。OCM271は観測結果を電気的な制御信号により制御部209-1に出力する。なお、OCM221,271が出力する観測結果は第2観測結果の一例である。
【0085】
図14に示すように、第2実施形態に係る制御部209は第1演算部29Aと第1制御部29Bとメモリ29Eとを含んでいる。第2実施形態に係る制御部209は第2演算部29Cと第2制御部29Dを含んでいない点で第1実施形態に係る制御部209と相違する。OCM221が出力する観測結果は第1演算部29Aに入力される。したがって、第1演算部29AにはOCM207が出力する観測結果とOCM221が出力する観測結果が入力される。なお、第2実施形態に係る制御部209-1については基本的に第2実施形態に係る制御部209と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0086】
次に、図15を参照して、第2実施形態に係る波長変換装置200の第2補償動作について説明する。第2実施形態に係る第2補償動作は、OCM207,221、第1演算部29A、及び第1制御部29Bによって2次チルトに対する補償を行う動作である。なお、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償を行う第1補償動作については、第1実施形態と共通するため、第2実施形態では詳細な説明を省略する。
【0087】
まず、OCM221は波長帯を変換する前の波長多重光λ1Sのパワーを観測する(ステップS21)。より詳しくは、OCM221は波長多重光λ1Sに含まれる複数の波長光の波長パワーを観測する。波長パワーを観測すると、OCM207は観測結果を電気的な制御信号により第1演算部29Aに出力する。
【0088】
次に、OCM207は波長帯を変換した後の波長多重光λ1Cのパワーを観測する(ステップS22)。より詳しくは、OCM207は波長多重光λ1Cに含まれる複数の単波長光λ11,・・・,λ1nの波長パワーを観測する。波長パワーを観測すると、OCM207は観測結果を電気的な制御信号により第1演算部29Aに出力する。
【0089】
OCM207,221のそれぞれから観測結果が第1演算部29Aに入力されると、第1演算部29Aは第1平均パワーと第2平均パワーを推定する(ステップS23)。具体的には、第1演算部29Aは、OCM207から入力された観測結果に基づいて、波長多重光λ1Cの第1平均パワーを推定する。また、第1演算部29Aは、OCM221から入力された観測結果に基づいて、波長多重光λ1Sの第2平均パワーを推定する。
【0090】
第1平均パワーと第2平均パワーを推定すると、第1演算部29Aは第1チルトと第2チルトを推定する(ステップS24)。具体的には、第1演算部29Aは、OCM207から入力された観測結果に基づいて、波長多重光λ1Cの第1チルトを推定する。また、第1演算部29Aは、OCM221から入力された観測結果に基づいて、波長多重光λ1Sの第2チルトを推定する。
【0091】
第1チルトと第2チルトを推定すると、第1制御部29Bはヒータ217の温度を制御する(ステップS25)。第1実施形態で説明したように、第1制御部29Bは、算出式に基づいて又はテーブルを参照して、ヒータ217の温度を制御する。ヒータ217の温度を制御すると、第1演算部29Aは第1チルトが第2チルト以下であるか否かを判断する(ステップS26)。第1チルトが第2チルト以下でない場合(ステップS26:NO)、第1制御部29BはステップS25の処理を実行する。これにより、第1制御部29Bはヒータ217の温度を再び制御する。このように、第1チルトが第2チルト以下になるまで、第1制御部29Bはヒータ217の温度を制御する。
【0092】
第1チルトが第2チルト以下になると(ステップS26:YES)、第1演算部29Aは第1平均パワーが第2平均パワー未満であるか否かを判断する(ステップS27)。なお、図15では、第1平均パワーを単に第1パワーと記載し、第2平均パワーを単に第2パワーと記載している。第1平均パワーが第2平均パワー未満でない場合(ステップS27:NO)、第1演算部29Aはメモリ29Eから温度設定値を読み出し、読み出した温度設定値である読出温度に基づく温度制御を第1制御部29Bに指示する(ステップS28)。
【0093】
これにより、第1制御部29Bは読出温度に基づいてヒータ217の温度を制御する(ステップS29)。このように、第1平均パワーが第2平均パワー以上になることにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償が損なわれる可能性がある場合には、チルト補償を処理の途中でリセットする。これにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償が維持される。
【0094】
一方、第1平均パワーが第2平均パワー未満である場合(ステップS27:YES)、ステップS28,S29の処理はスキップされる。これにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償とチルト補償が両立する。第1平均パワーが第2平均パワー未満である場合、又はステップS29の処理が終了すると、OCM207,221、第1演算部29A、及び第1制御部29Bによる2次チルトに対する第2補償動作が終了する。
【0095】
このように、第2実施形態に係る波長変換装置200では、OCM207,221がそれぞれ波長多重光λ1Cのパワーと波長多重光λ1Sのパワーとを観測し、制御部209がこれらの観測結果に基づいて波長変換媒質213の変換特性を調整する。これにより、ゼロ分散波長のばらつきが補償されつつ、2次チルトが補償される。
【0096】
(第3実施形態)
続いて、図16乃至図20を参照して、本件の第3実施形態について説明する。なお、図16乃至図19において、図3乃至図5及び図9に示される各部と同様の構成には原則として同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
図16に示すように、第3実施形態に係る波長変換装置100は、第1実施形態に係る波長変換装置100と対比すると、OCM107,108と、制御部109,109-1と、OSC(Optical Supervisory Channel:光監視チャネル)通信部(図16において単にOSCと記載)131,181とをさらに含んでいる。OCM107,108は送信側第1モニタの一例である。第3実施形態に係る波長変換装置200は、第1実施形態に係る波長変換装置200と対比すると、OSC通信部231,281をさらに含んでいる。OSC通信部131,181はOSC受信部の一例である。OSC通信部231,281はOSC送信部の一例である。
【0098】
図17に示すように、OSC通信部231は制御部209から出力された制御信号に応じたOSC光λxを光学的に送信する。図17では省略されているが、OSC通信部281は制御部209-1から出力された制御信号に応じたOSC光λyを光学的に送信する。なお、OSC光λxは光伝送路300を通過してもよいし、光伝送路300と異なる別の光伝送路を通過してもよい。
【0099】
図18に示すように、波長変換部110は、励起光源111、光カプラ112、波長変換媒質113、光フィルタ114、光分岐タップ(図18においてTAPと記載)115、温度センサ116、及びヒータ117を含んでいる。波長変換部210はヒータ117と共にTECを含んでいてもよい。波長変換媒質113は第2光学媒質の一例である。
【0100】
励起光源111はC帯より短い波長帯の励起光λqを出力する。励起光λqは異なる2つの波長を含んでいる。光カプラ112は光増幅器101に接続されている。このため、光カプラ112には励起光λqと波長多重光λ1Cが入力される。光カプラ112は波長多重光λ1Cに励起光λqを加え、波長変換媒質113に出力する。
【0101】
波長変換媒質113は、波長変換媒質213と同様に、波長多重光λ1Cを波長多重光λ1Sに変換し、波長多重光λ1Cと共に出力する。一方、励起光λqは波長変換媒質113を透過する。したがって、波長変換媒質113は波長多重光λ1Cと波長多重光λ1Sと励起光λqを出力する。
【0102】
光フィルタ114は波長変換媒質113から出力された波長多重光λ1Cと波長多重光λ1Sと励起光λqから波長多重光λ1Cと励起光λqとを除去し、波長多重光λ1Sを出力する。光分岐タップ115は波長多重光λ1Sを分岐し、波長多重光λ1Sを光増幅器104とOCM107に出力する。これにより、光増幅器104は波長多重光λ1Sを増幅することができる。また、OCM107は波長多重光λ1Sに含まれる複数の波長光の波長パワーを観測することができる。
【0103】
温度センサ116は波長変換媒質113の温度を検出し、検出した温度を電気的な信号により制御部109に出力する。OSC通信部131はOSC通信部231から送信されたOSC光λxを光学的に受信し、OSC光λxに応じた制御信号を制御部109に送信する。
【0104】
制御部109は、OCM107から出力された観測結果と温度センサ116が検出した波長変換媒質213の温度とOSC通信部131から送信された制御信号とに基づいて、2次チルトを補償するように、ヒータ117の温度を制御する。これにより、波長変換媒質113の変換特性が調整される。
【0105】
なお、図16に示すように、OSC通信部281は制御部209-1から出力された制御信号に応じたOSC光λyを光学的に送信する。OSC通信部181はOSC通信部281から送信されたOSC光λyを光学的に受信し、OSC光λyに応じた制御信号を制御部109-1に送信する。OSC光λyは光伝送路300を通過してもよいし、光伝送路300と異なる別の光伝送路を通過してもよい。制御部109-1は制御信号に基づいて波長変換部160が備えるヒータ(不図示)の温度を制御して、波長変換部160が備える波長変換媒質(不図示)の変換特性を調整する。
【0106】
図19(a)に示すように、第3実施形態に係る制御部109は第3演算部19Aと第3制御部19Bとメモリ19Eとを含んでいる。第3制御部19Bは送信側制御部の一例である。メモリ19Eは第2記憶部の一例である。第3制御部19Bは、第1実施形態の場合と同様に、平均パワー及びチルト、並びにヒータ117に対する温度設定値を関連付けて制御情報(具体的には第2制御情報)としてメモリ19Eに記録する。OSC131が送信する観測結果は第3演算部19Aに入力される。なお、第3実施形態に係る制御部109-1については基本的に第3実施形態に係る制御部109と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0107】
図19(b)に示すように、第3実施形態に係る制御部209は第1演算部29Aと第1制御部29Bとメモリ29Eとを含んでいる。第1制御部29Bが送信する制御信号はOSC231に入力される。なお、第3実施形態に係る制御部209-1については基本的に第3実施形態に係る制御部209と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0108】
次に、図20を参照して、第3実施形態に係る波長変換装置200の第2補償動作について説明する。第3実施形態に係る第2補償動作は、OCM107,207、第1演算部29A、第1制御部29B、第3演算部19A、及び第3制御部19Bなどによって2次チルトに対する補償を行う動作である。なお、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償を行う第1補償動作については、第1実施形態と共通するため、第3実施形態では詳細な説明を省略する。
【0109】
まず、OCM207は波長帯を変換した後の波長多重光λ1Cのパワーを観測する(ステップS31)。より詳しくは、OCM207は波長多重光λ1Cに含まれる複数の単波長光λ11,・・・,λ1nの波長パワーを観測する。波長パワーを観測すると、OCM207は観測結果を電気的な制御信号により第1演算部29Aに出力する。
【0110】
次に、OCM107は波長変換媒質113で波長帯を変換する前の波長多重光λ1Sのパワーを観測する(ステップS32)。より詳しくは、OCM107は波長変換媒質113で波長帯を変換した後であって、波長変換媒質213で波長帯を変換する前の波長多重光λ1Sに含まれる複数の波長光の波長パワーを観測する。波長パワーを観測すると、OCM107は観測結果を電気的な制御信号により第3演算部19Aに出力する。
【0111】
次に、第1演算部29Aは第1平均パワーを推定し、第3演算部19Aは第2平均パワーを推定する(ステップS33)。具体的には、OCM207から観測結果が第1演算部29Aに入力されると、第1演算部29Aは、OCM207から入力された観測結果に基づいて第1平均パワーを推定する。OCM107から観測結果が第3演算部19Aに入力されると、第3演算部19Aは、OCM107から入力された観測結果に基づいて第2平均パワーを推定する。
【0112】
次に、第1演算部29Aは第1チルトを推定し、第3演算部19Aは第2チルトを推定する(ステップS34)。具体的には、第1演算部29Aは、OCM207から入力された観測結果に基づいて、波長多重光λ1Cの第1チルトを推定する。また、第3演算部19Aは、OCM107から入力された観測結果に基づいて、波長多重光λ1Sの第2チルトを推定する。
【0113】
なお、第1演算部29Aが第1平均パワーと第1チルトを推定すると、第1制御部29Bは第1平均パワーと第1チルトとメモリ29Eに格納された温度設定値とを含む制御信号をOSC通信部231に送信する。これにより、OSC通信部231は制御信号に応じたOSC光λxを送信する。OSC通信部131はOSC通信部231から送信されたOSC光λxを受信して、OSC光λxに応じた制御信号を第3演算部19Aに送信する。
【0114】
第1チルトと第2チルトを推定すると、第3制御部19Bはヒータ117の温度を制御する(ステップS35)。第1実施形態と同様に、第3制御部19Bは、算出式に基づいて又はテーブルを参照して、ヒータ117の温度を制御する。ヒータ117の温度を制御すると、第3演算部19Aは第1チルトが第2チルト以下であるか否かを判断する(ステップS36)。第1チルトが第2チルト以下でない場合(ステップS36:NO)、第3制御部19BはステップS35の処理を実行する。これにより、第3制御部19Bはヒータ117の温度を再び制御する。このように、第1チルトが第2チルト以下になるまで、第3制御部19Bはヒータ117の温度を制御する。
【0115】
第1チルトが第2チルト以下になると(ステップS36:YES)、第3演算部19Aは第1平均パワーが第2平均パワー未満であるか否かを判断する(ステップS37)。なお、図20では、第1平均パワーを単に第1パワーと記載し、第2平均パワーを単に第2パワーと記載している。第1平均パワーが第2平均パワー未満でない場合(ステップS37:NO)、第3演算部19Aは制御信号から温度設定値を読み出し、読み出した温度設定値である読出温度に基づく温度制御を第3制御部19Bに指示する(ステップS38)。
【0116】
これにより、第3制御部19Bは読出温度に基づいてヒータ117の温度を制御する(ステップS39)。このように、第1平均パワーが第2平均パワー以上になることにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償が損なわれる可能性がある場合には、チルト補償を処理の途中でリセットする。これにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償が維持される。
【0117】
一方、第1平均パワーが第2平均パワー未満である場合(ステップS37:YES)、ステップS38,S39の処理はスキップされる。これにより、ゼロ分散波長のばらつきに対する補償とチルト補償が両立する。第1平均パワーが第2平均パワー未満である場合、又はステップS39の処理が終了すると、OCM107,207、第1演算部29A、第1制御部29B、第3演算部19A、及び第3制御部19Bなどによる2次チルトに対する第2補償動作が終了する。
【0118】
このように、第3実施形態に係る波長変換装置100では、OCM107が波長多重光λ1Sのパワーを観測し、OCM207が波長多重光λ1Cのパワーを観測する。制御部109はこれらの観測結果に基づいて、波長変換媒質113の変換特性を調整する。これにより、ゼロ分散波長のばらつきが補償されつつ、2次チルトが補償される。
【0119】
(第4実施形態)
続いて、図22乃至図24を参照して、本件の第4実施形態について説明する。なお、図22において、図13及び図17に示される各部と同様の構成には原則として同一の符号を付し、その説明を省略する。また、図23において、図18に示される各部と同様の構成には原則として同一の符号を付し、その説明を省略する。図22及び図23では、C帯に関する構成及びL帯に関する構成は省略されて示されている。L帯に関する構成は、例えば図16を参照して説明したように、基本的にS帯に関する構成と同様である。
【0120】
図22に示すように、OSC通信部231は制御部209から出力された制御信号に応じたOSC光λxを光学的に送信する。図22では省略されているが、第3実施形態と同様に、OSC通信部281は制御部209-1から出力された制御信号に応じたOSC光λyを光学的に送信する(図16参照)。なお、OSC光λxは光伝送路300を通過してもよいし、光伝送路300と異なる別の光伝送路を通過してもよい。
【0121】
また、図22に示すように、第4実施形態に係る波長変換装置200はWSS(Wavelength Selective Switch:波長選択スイッチ)232を含んでいる。WSS232は光増幅器204と第1WDM受信器40との間に配置されている。WSS232は光増幅器204から出力された波長多重光λ1Cの方路を選択して出力する。例えば、WSS232は一部の波長を含む波長多重光λ1Cを第1WDM受信器40に出力する。また、WSS232は残りの波長を含む波長多重光λ1Cを波長変換装置200の下流に配置された別の波長変換装置(不図示)に出力する。
【0122】
一方、図23に示すように、OSC通信部131はOSC通信部231から送信されたOSC光λxを光学的に受信し、OSC光λxに応じた制御信号を制御部109に送信する。図23では省略されているが、第3実施形態と同様に、OSC通信部181は制御部209-1から出力された制御信号に応じたOSC光λyを光学的に受信する(図16参照)。なお、OSC光λxは光伝送路300を通過してもよいし、光伝送路300と異なる別の光伝送路を通過してもよい。
【0123】
また、図23に示すように、第4実施形態に係る波長変換装置100は、光増幅器101に代えて、WSS132を含んでいる。WSS132は第1WDM送信器10と波長変換部110が備える光カプラ112との間に配置されている。WSS132は第1WDM送信器10から出力された波長多重光λ1Cの方路を選択して出力する。例えば、WSS132は一部の波長を含む波長多重光λ1Cを光カプラ112に出力する。また、WSS132は残りの波長を含む波長多重光λ1Cを波長変換装置100,200と異なる別の波長変換装置(不図示)に出力する。
【0124】
さらに、第4実施形態に係る光増幅器104はプレアンプ14Aとチルト補償部14Bとポストアンプ14Cとを含んでいる。チルト補償部14Bは例えばVOA(Variable Optical Attenuator:可変光減衰器)といったハードウェア回路によって実現することができる。プレアンプ14Aは波長変換部110のTAP115から出力された波長多重光λ1Sを増幅する。チルト補償部14Bは、制御部209による制御に基づいて、プレアンプ14Aから出力された波長多重光λ1Sを減衰させる。ポストアンプ14Cはチルト補償部14Bから出力された波長多重光λ1Sを増幅し、光カプラ106に出力する。
【0125】
次に、図24を参照して、第4実施形態に係る波長変換装置100,200を有する光伝送システムSTのチルト補償について説明する。第4実施形態に係る光伝送システムSTは、波長変換装置100,200の連携により、1次チルト、2次チルト、及び3次チルト以降の残留チルトに対する補償を行う。
【0126】
まず、OCM207,221はそれぞれパワーを観測する(ステップS41)。より詳しくは、OCM207は波長多重光λ1Cに含まれる複数の単波長光λ11,・・・,λ1nの波長パワーを観測する。また、OCM221は波長多重光λ1Sに含まれる複数の単波長光λ11,・・・,λ1nの光パワーである波長パワーを観測する。すなわち、OCM207は波長変換部210による変換後の波長多重光λ1Cの波長パワーを観測し、OCM221は波長変換部210による変換前の波長多重光λ1Sの波長パワーを観測する。波長パワーを観測すると、OCM207,221はそれぞれ観測結果(すなわち波長パワー)を電気的な制御信号により制御部209に出力する。
【0127】
次に、制御部209はパワー情報を出力する(ステップS42)。より詳しくは、制御部209は、制御信号に基づいて、OCM207,221による各観測結果を含むパワー情報をOSC通信部231に送信する。パワー情報は例えば波長パワーのスペクトル(すなわち波長特性)を含んでいる。制御部209がパワー情報をOSC通信部231に送信すると、OSC通信部231はパワー情報に応じたOSC光λxを送信する。OSC通信部131はOSC通信部231から送信されたOSC光λxを受信して、OSC光λxに応じたパワー情報を制御部109に送信する。
【0128】
次に、制御部109は1次チルト及び2次チルトを推定する(ステップS43)。より詳しくは、制御部109はOSC通信部131から送信されたパワー情報と、OCM107から入力された観測結果に基づいて、波長多重光λ1S及び波長多重光λ1Cのそれぞれの1次チルトと2次チルトを推定する。例えば、制御部109はパワー情報に含まれる2種類の観測結果とOCM107から入力された観測結果のいずれか1つ又は2つに基づいて、光伝送路300を通過した後の波長多重光λ1S及び波長多重光λ1Cのそれぞれの1次チルトと2次チルトを推定することができる。制御部109は2種類の観測結果とOCM107から入力された観測結果の3つ全てに基づいて、光伝送路300を通過した後の波長多重光λ1S及び波長多重光λ1Cのそれぞれの1次チルトと2次チルトを推定してもよい。
【0129】
次に、制御部109は1次チルトが所定範囲内であるか否かを判断する(ステップS44)。より詳しくは、制御部109は波長変換部210からOCM207に出力された波長多重光λ1Cの1次チルトが光増幅器202から波長変換部210に出力された波長多重光λ1Sの1次チルトの範囲であるか否かを判断する。
【0130】
1次チルトが所定範囲内でない場合(ステップS44:NO)、制御部109は光増幅器104のスロープを制御する(ステップS45)。例えば、制御部109は、波長多重光λ1Sの各波長のパワーの偏差が低減するように、光増幅器104が有するチルト補償部14Bのスロープを調整する制御を行う。このように、制御部109は波長多重光λ1Sにおける1次チルトを補償する。制御部109は、1次チルトが上述した所定範囲内に収まるまで、ステップS44,45の処理を繰り返す。
【0131】
1次チルトが所定範囲内である場合(ステップS44:YES)、制御部109は波長変換部110の温度を制御する(ステップS46)。より詳しくは、制御部109は、温度センサ116が検出した波長変換媒質113の温度に基づいて、ヒータ117の温度を制御する。第1実施形態で説明したように、制御部109は、算出式に基づいて又はテーブルを参照して、ヒータ117の温度を制御することができる。このように、制御部109は、波長変換媒質113の変換特性を温度で調整する制御を行うことにより、波長多重光λ1Sにおける2次チルトを補償する。
【0132】
次に、制御部109は2次チルトが低下したか否かを判断する(ステップS47)。例えば、制御部109は波長変換部210から出力された波長多重光λ1Cの2次チルトが最小か否かを判断する。2次チルトが低下していない場合(ステップS47:NO)、制御部109は、2次チルトが低下するまで、ステップS46,47の処理を繰り返す。
【0133】
2次チルトが低下すると(ステップS47:YES)、制御部109はWSS132の平均パワーを制御し(ステップS48)、処理を終了する。より詳しくは、制御部109は、上述した2種類の観測結果とOCM107から入力された観測結果の1つ若しくは2つ又は全てに基づいて、残留チルトに対する補償量を算出し、算出した補償量に基づいて、WSS132の平均パワーを調整する制御を行う。このように、制御部109は、WSS132の平均パワーを調整する制御を行うことにより、波長多重光λ1Sにおける残留チルトを補償する。以上説明したように、第4実施形態係る光伝送システムSTによれば、2次チルトだけでなく、1次チルト及び残留チルトも併せて補償することができる。
【0134】
(第5実施形態)
続いて、図25乃至図27を参照して、本件の第5実施形態について説明する。なお、図25において、図16及び図23に示される各部と同様の構成には原則として同一の又は対応する符号を付し、その説明を省略する。図25では、L帯に関する構成は省略されて示されている。L帯に関する構成は、例えば図16を参照して説明したように、基本的にS帯に関する構成と同様である。
【0135】
図25に示すように、第5実施形態に係る波長変換装置100はWSS133を含んでいる。第5実施形態に係る光増幅器102はチルト補償部12Bを含んでいる。WSS133は第2WDM送信器20と光増幅器102との間に配置されている。WSS133は第2WDM送信器20から出力された波長多重光λ2Cの方路を選択して出力する。例えば、WSS133は一部の波長を含む波長多重光λ2Cを光増幅器102に出力する。また、WSS133は残りの波長を含む波長多重光λ2Cを波長変換装置100,200と異なる別の波長変換装置(不図示)に出力する。
【0136】
また、第5実施形態に係る波長変換装置100は、VOA142,143と、TAP152,153と、PD(Photo Diode:光検出器)162,163とを含んでいる。VOA142は第1可変光減衰器の一例である。VOA143は第2可変光減衰器の一例である。PD162は送信側第1モニタの一例である。PD163は送信側第2モニタの一例である。VOA142とTAP152は光学的に接続されている。TAP152とPD162は光学的に接続されている。VOA143とTAP153は光学的に接続されている。TAP153とPD163は光学的に接続されている。
【0137】
一方で、第5実施形態に係る波長変換装置100では、第4実施形態に係る波長変換装置(図23参照)と異なり、OSC通信部131が除外されている。したがって、第5実施形態に係る光伝送システムSTは、波長変換装置100,200が互いに連携せずに、波長変換装置100単独で1次チルト及び2次チルトに対する補償を行う。
【0138】
なお、第5実施形態に係る波長変換装置100では、OCM107及びTAP115も除外されている。すなわち、第5実施形態に係る波長変換部11Aは第4実施形態に係る波長変換部110と相違する。
【0139】
ここで、VOA142及びTAP152はいずれも光増幅器104と光カプラ106との間に配置されている。VOA142は光増幅器104の下流に配置され、光増幅器104と光学的に接続されている。TAP152はVOA142の下流に配置され、光カプラ106と光学的に接続されている。一方で、VOA143及びTAP153はいずれも光増幅器102と光カプラ106との間に配置されている。VOA143は光増幅器102の下流に配置され、光増幅器102と光学的に接続されている。TAP153はVOA143の下流に配置され、光カプラ106と光学的に接続されている。
【0140】
VOA142は光増幅器104から出力された波長多重光λ1Sを減衰させて、TAP152に出力する。TAP152は波長多重光λ1Sを分岐して、波長多重光λ1Sの一部をPD162に出力する。PD162は光伝送路300を通過する前の波長多重光λ1Sを検出して、波長多重光λ1Sの各波長のパワーを観測する。一方、VOA143は光増幅器102から出力された波長多重光λ1Cを減衰させて、TAP153に出力する。TAP153は波長多重光λ1Cを分岐して、波長多重光λ1Cの一部をPD163に出力する。PD163は光伝送路300を通過する前の波長多重光λ1Cを検出して、波長多重光λ1Cの各波長のパワーを観測する。
【0141】
次に、図26を参照して、第5実施形態に係る制御部109の詳細について説明する。なお、C帯及びL帯に関する制御部(不図示)については基本的に制御部109と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0142】
図26に示すように、第5実施形態に係る制御部109はパワー演算部19Fと第4演算部19Gと第5演算部19Hとチルト制御部19Iとパワー制御部19Jとを含んでいる。パワー演算部19FはPD162からS帯に属する波長のパワーを取得し、取得したパワーに基づいて、波長多重光λ1Sの平均パワーと1次チルトと2次チルトを推定する。同様に、パワー演算部19FはPD163からC帯に属する波長のパワーを取得し、取得したパワーに基づいて、波長多重光λ1Cの平均パワーと1次チルトと2次チルトを推定する。
【0143】
第4演算部19Gは、パワー演算部19Fが推定したS帯に属する波長の平均パワーに基づいて、S帯に属する波長の平均パワーに応じた1次チルト補償量を算出する。同様に、第4演算部19Gは、パワー演算部19Fが推定したC帯に属する波長の平均パワーに基づいて、C帯に属する波長の平均パワーに応じた1次チルト補償量を算出する。
【0144】
第5演算部19Hは、パワー演算部19Fが推定したS帯に属する波長の平均パワーに基づいて、S帯に属する波長の平均パワーに応じたパワー補償量を算出する。同様に、第5演算部19Hは、パワー演算部19Fが取得したC帯に属する波長の平均パワーに基づいて、C帯に属する波長の平均パワーに応じたパワー補償量を算出する。
【0145】
チルト制御部19Iは、第4演算部19Gが算出した1次チルト補償量に基づいて、光増幅器102,104を制御する。具体的には、チルト制御部19Iは、S帯に属する波長のパワーに応じた1次チルト補償量に基づいて、光増幅器104のチルト補償部14Bを制御する。チルト制御部19Iは、C帯に属する波長のパワーに応じた1次チルト補償量に基づいて、光増幅器102のチルト補償部12Bを制御する。チルト制御部19Iによる制御により、チルト補償部12B,14Bはそれぞれ1次チルトを補償する。
【0146】
また、チルト制御部19Iは、パワー演算部19Fが取得したS帯に属する波長のパワーと温度センサ116が検出した波長変換媒質113の温度とに基づいて、2次チルトを補償するように、ヒータ117の温度を制御する。例えば、チルト制御部19Iは、図9図14図19(a)のいずれかの構成を含んでいてもよい。
【0147】
パワー制御部19Jは、第5演算部19Hが算出したパワー補償量に基づいて、VOA142,143を制御する。具体的には、パワー制御部19Jは、S帯に属する波長のパワーに応じたパワー補償量に基づいて、VOA142を制御する。パワー制御部19Jは、C帯に属する波長のパワーに応じたパワー補償量に基づいて、VOA143を制御する。パワー制御部19Jによる制御により、VOA142,143はそれぞれ波長多重光λ1S,λ1Cのパワーを減衰させる。
【0148】
次に、図27を参照して、第5実施形態に係る波長変換装置100,200を有する光伝送システムSTのチルト補償について説明する。第5実施形態に係る光伝送システムSTでは、波長変換装置100が単独で、1次チルト及び2次チルトに対する補償を行う。
【0149】
まず、パワー演算部19Fは波長多重光λ1S,λ1Cの各パワーを取得する(ステップS51)。上述したように、パワー演算部19FはPD162からS帯に属する波長のパワーを取得する。また、パワー演算部19FはPD163からC帯に属する波長のパワーを取得する。パワー演算部19Fは波長多重光λ1S,λ1Cの各パワーを取得すると、平均パワーと1次チルトとを推定する。
【0150】
次に、第4演算部19Gは1次チルト補償量を算出する(ステップS52)。より詳しくは、第4演算部19Gは、パワー演算部19Fが取得したS帯に属する波長の平均パワーに基づいて、S帯に属する波長の平均パワーに応じた1次チルト補償量を算出する。また、第4演算部19Gは、パワー演算部19Fが取得したC帯に属する波長の平均パワーに基づいて、C帯に属する波長のパワーに応じた1次チルト補償量を算出する。第4演算部19Gが1次チルト補償量を算出すると、チルト制御部19Iは、S帯に属する波長の平均パワーに応じた1次チルト補償量に基づいて、光増幅器104のチルト補償部14Bを制御する。また、チルト制御部19Iは、C帯に属する波長の平均パワーに応じた1次チルト補償量に基づいて、光増幅器102のチルト補償部12Bを制御する。
【0151】
次に、第5演算部19Hはパワー補償量を算出する(ステップS53)。より詳しくは、第5演算部19Hは、パワー演算部19Fが推定したS帯に属する波長の平均パワーに基づいて、S帯に属する波長の平均パワーに応じたパワー補償量を算出する。同様に、第5演算部19Hは、パワー演算部19Fが推定したC帯に属する波長の平均パワーに基づいて、C帯に属する波長の平均パワーに応じたパワー補償量を算出する。第5演算部19Hがパワー補償量を算出すると、パワー制御部19Jは、S帯に属する波長の平均パワーに応じたパワー補償量に基づいて、VOA142を制御する。パワー制御部19Jは、C帯に属する波長の平均パワーに応じたパワー補償量に基づいて、VOA143を制御する。
【0152】
次に、パワー演算部19Fは波長多重光λ1S,λ1Cの各パワーと1次チルトが低下したか否かを判断する(ステップS54)。例えば、パワー演算部19Fは光伝送路300を通過する前の波長多重光λ1Sの平均パワーと波長多重光λ1Cの平均パワーがいずれも所定の第1閾値範囲に収まっているか否かを判断する。また、パワー演算部19Fは光伝送路300を通過する前の波長多重光λ1Sの1次チルトと波長多重光λ1Cの1次チルトがいずれも所定の第2閾値範囲に収まっているか否かを判断する。なお、波長数を増大する場合には、パワー演算部19Fはパワーが向上したか否かを判断してもよい。
【0153】
波長多重光λ1S,λ1Cの各パワーと1次チルトが低下していない場合(ステップS54:NO)、ステップS51乃至S54の処理が繰り返される。すなわち、波長多重光λ1S,λ1Cの各パワーと1次チルトが低下するまで、ステップS51乃至S54の処理が繰り返される。
【0154】
波長多重光λ1S,λ1Cの各パワーと1次チルトが低下すると(ステップS54:YES)、チルト制御部19Iは温度を制御する(ステップS55)。より詳しくは、チルト制御部19Iは温度センサ116から読み出した波長変換媒質113の読出温度に基づいてヒータ117の温度を制御する。
【0155】
次に、パワー演算部19Fは2次チルトを推定する(ステップS56)。上述したように、パワー演算部19FはPD162からS帯に属する波長のパワーを取得し、取得したパワーに基づいて、波長多重光λ1Sの2次チルトを推定する。同様に、パワー演算部19FはPD163からC帯に属する波長のパワーを取得し、取得したパワーに基づいて、波長多重光λ1Cの2次チルトを推定する。
【0156】
次に、パワー演算部19Fは2次チルトが低下したか否かを判断する(ステップS57)。例えば、パワー演算部19Fは光伝送路300を通過する前の波長多重光λ1Sの2次チルトと波長多重光λ1Cの2次チルトの両方が最小か否かを判断する。2次チルトが低下していない場合(ステップS57:NO)、ステップS55乃至S57の処理が繰り返される。すなわち、波長多重光λ1S,λ1Cの2次チルトが低下するまで、ステップS55乃至S57の処理が繰り返される。そして、2次チルトが低下すると(ステップS57:YES)、第5実施形態に係るチルト補償を終了する。
【0157】
このように、第5実施形態によれば、残留チルトに対する補償が省略されているだけでなく、波長変換装置100単独でチルト補償が完結する。このため、第5実施形態に係る光伝送システムSTは、第4実施形態における波長変換装置100,200の連携による光伝送システムSTのチルト補償に比べて、チルト補償を高速に実行することができる。
【0158】
(第6実施形態)
続いて、図28乃至図32を参照して、本件の第6実施形態について説明する。なお、図28において、図22に示される各部と同様の構成には原則として同一の又は対応する符号を付し、その説明を省略する。また、図29において、図23に示される各部と同様の構成には原則として同一の又は対応する符号を付し、その説明を省略する。図28及び図29では、L帯に関する構成は省略されて示されている。L帯に関する構成は、例えば図16を参照して説明したように、基本的にS帯に関する構成と同様である。
【0159】
図28に示すように、OSC通信部231は制御部209から出力された制御信号に応じたOSC光λxを光学的に送信する。図28では省略されているが、第3実施形態と同様に、OSC通信部281は制御部209-1から出力された制御信号に応じたOSC光λyを光学的に送信する(図16参照)。さらに、OSC通信部291は制御部209-2から出力された制御信号に応じたOSC光λzを光学的に送信する。なお、OSC光λzは光伝送路300を通過してもよいし、光伝送路300と異なる別の光伝送路を通過してもよい。
【0160】
また、図28に示すように、第6実施形態に係る波長変換装置200はWSS233を含んでいる。WSS233は光増幅器205と第2WDM受信器50との間に配置されている。WSS233は光増幅器205から出力された波長多重光λ2Cの方路を選択して出力する。例えば、WSS233は一部の波長を含む波長多重光λ2Cを第2WDM受信器50に出力する。また、WSS233は残りの波長を含む波長多重光λ2Cを波長変換装置200の下流に配置された別の波長変換装置(不図示)に出力する。
【0161】
さらに、第6実施形態に係る波長変換装置200は、光増幅器25A、TAP25B、OCM207-1、及び制御部209-2を含んでいる。光増幅器25A及びTAP25Bは、光フィルタ21Bと光増幅器205との間に配置されている。TAP25Bは光増幅器25Aの下流に配置されている。なお、光増幅器25Aは波長変換装置200から除外してもよい。OCM207-1はTAP25Bと制御部209-2との間に配置されている。
【0162】
これにより、波長多重光λ2Cは、TAP25Bにより分岐されて、OCM207-1に導かれる。OCM207-1は、波長多重光λ2Cに含まれる複数の単波長光の波長パワーを観測する。OCM207-1は観測結果(すなわち波長パワー)を電気的な制御信号により制御部209-2に出力する。制御部209-2は、制御信号に基づいて、OCM207-1による観測結果を含むパワー情報をOSC通信部291に送信する。これにより、OSC通信部291はパワー情報に応じたOSC光λzを送信する。
【0163】
一方、図29に示すように、OSC通信部191はOSC通信部291から送信されたOSC光λzを光学的に受信し、OSC光λzに応じた制御信号を制御部109-2に送信する。図29では省略されているが、第3実施形態と同様に、OSC通信部181は制御部209-1から出力された制御信号に応じたOSC光λyを光学的に受信する(図16参照)。
【0164】
また、図29に示すように、第6実施形態に係る波長変換装置100は、波長変換部11AとWSS133を含んでいる。波長変換部11AはTAP115を除外した波長変換部110と同様の構成を有する(図25参照)。WSS133は第2WDM送信器20と光増幅器102との間に配置されている。WSS133は第2WDM送信器20から出力された波長多重光λ2Cの方路を選択して出力する。例えば、WSS133は一部の波長を含む波長多重光λ2Cを光増幅器102に出力する。また、WSS133は残りの波長を含む波長多重光λ2Cを波長変換装置100,200と異なる別の波長変換装置(不図示)に出力する。
【0165】
さらに、第6実施形態に係る波長変換装置100は、PD162,163、TAP192、及びWDMフィルタ193を含んでいる。WDMフィルタ193は光フィルタ194,195を含んでいる。光フィルタ194,195としては例えばBPF(Band Pass Filter)などがある。TAP192は光カプラ106と光伝送路300との間に配置されている。
【0166】
WDMフィルタ193はPD162,163及びTAP192と光学的に接続されている。より詳しくは、光フィルタ194がPD162及びTAP192と光学的に接続されている。また、光フィルタ194は光フィルタ195とも光学的に接続されている。光フィルタ195はPD163と光学的に接続されている。
【0167】
これにより、マルチバンド光λmbは、TAP192により分岐されて、WDMフィルタ193の光フィルタ194に導かれる。光フィルタ194はマルチバンド光λmbから波長多重光λ1Sを分離し、マルチバンド残光λrを光フィルタ195に出力する。波長多重光λ1SはPD162に入力される。
【0168】
マルチバンド光λmbから波長多重光λ1Sが分離されるため、マルチバンド残光λrは波長多重光λ2Cと波長多重光λ3Lを含んでいる。光フィルタ195はマルチバンド残光λrを波長多重光λ2Cと波長多重光λ3Lに分離して出力する。波長多重光λ2CはPD163に入力される。波長多重光λ3Lは制御部109-1(図16参照)と接続された不図示のPDに入力される。PD162は波長多重光λ1Sを検出して、波長多重光λ1Sの各波長のパワーを観測する。PD163は波長多重光λ2Cを検出して、波長多重光λ2Cの各波長のパワーを観測する。
【0169】
次に、図30を参照して、第6実施形態に係る制御部109,209の詳細について説明する。なお、L帯に関する制御部(不図示)については基本的に制御部109と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0170】
図30に示すように、第6実施形態に係る制御部109は非線形SNR(Signal to Noise Ratio)算出部19KとGSNR(Generalized SNR:一般化SNR)算出部19Mとパワー制御部19Nとを含んでいる。一方、第6実施形態に係る制御部209は線形SNR算出部29Kを含んでいる。
【0171】
非線形SNR算出部19Kは、PD162が観測した波長多重光λ1Sのパワーを取得し、取得したパワーと以下の算出式(5)とに基づいて、非線形SNRをSNR_NLとして算出する。非線形SNRは非線形の第2信号品質の一例である。
<算出式(5)>
【数5】
【0172】
ここで、分子のP_CH(T)は、波長変換装置100における観測対象波長チャネルのパワーを表す。すなわち、P_CH(T)は、例えばPD162が観測したC帯の波長多重光λ1Sのパワーを表す。分子のB_CHは、C帯の帯域幅を表す。したがって、P_CH(T)/B_CHは、観測対象波長チャネルの単位帯域幅当たりの光パワーに相当する。
【0173】
分母のG_NLIは単位帯域幅当たりの非線形雑音の光パワーを表す。G_NLIは、非線形雑音の光パワーを表すP_NLIが以下の算出式(6)で表される場合、以下の算出式(7)で表される。
<算出式(6)>
【数6】
<算出式(7)>
【数7】
【0174】
ここで、算出式(6)のηは非線形SNRを計算するための既知の比例係数を表す。このため、P_NLIは、例えば光カプラ106に入力される波長多重光λ1Sのパワーの3乗に比例する。算出式(7)のηdは光伝送路300のファイバ種別などによって定まる既知の比例係数を表す。B_CHは既知であるため、波長多重光λ1Sのパワーが非線形SNR算出部19Kに通知されると、非線形SNR算出部19Kは非線形SNRを算出することができる。
【0175】
線形SNR算出部29Kは、OCM207で観測された波長多重光λ1Cの光パワーと以下の算出式(8)とに基づいて、線形SNRをSNR_Lとして算出する。線形SNRは線形の第1信号品質の一例である。
<算出式(8)>
【数8】
【0176】
ここで、P_CHは、波長変換装置200における観測対象波長チャネルのパワーを表す。すなわち、P_CHは、例えばOCM207が観測したC帯の波長多重光λ1Cのパワーを表す。P_ASEは、ASE(Amplified Spontaneous Emission:自然放射増幅)雑音の光パワーを表す。このように、線形SNRは波長多重光λ1CのパワーとASE雑音の光パワーの比で表される。線形SNR算出部29Kは線形SNRを算出すると、線形SNRを含む線形SNR情報を制御部109のGSNR算出部19Mに出力する。
【0177】
GSNR算出部19Mは、非線形SNR算出部19Kが算出した非線形SNRと、線形SNR算出部29Kが算出して出力した線形SNR情報の線形SNRと、以下の算出式(9)とに基づいて、GSNRを算出する。GSNRは第3信号品質の一例である。
<算出式(9)>
【数9】
【0178】
GSNR算出部19Mは、GSNRを算出すると、GSNRをパワー制御部19Nに通知する。なお、算出式(5)乃至(9)を利用して算出するGSNRは、例えば以下の文献1,2を参考にすることができる。特に、P_NLIは文献2に記載されたGN(Gaussian noise)/EGN(Enhanced GN)モデルを用いて算出される。
文献1:P. Poggiolini, Analytical Modeling of Non-Linear Propagation in Coherent Systems, in Proc. OFC 2013, Anaheim, CA, USA, Mar. 2013.
文献2:Pierluigi Poggiolini et al. “Closed Form Expressions of the Nonlinear Interference for UWB Systems,” ECOC 2022, paper Tu1D.1.
【0179】
パワー制御部19Nは、GSNR算出部19Mから通知されたGSNRに基づいて、光増幅器104に対するスロープ制御と、波長変換部11Aに対する温度制御と、WSS132に対するパワー制御と、を実行する。パワー制御部19Nは、光増幅器104のチルト補償部14Bに対してスロープ制御を実行し、波長変換部11Aのヒータ117に対して温度制御を実行する。
【0180】
スロープ制御は、例えば後段の波長変換装置200に入力される波長多重光λ1Sの波長特性(スペクトル)が平坦になるように、前段の波長変換装置100で波長多重光λ1Sの波長特性を調整しながら波長特性にスロープをつける制御である。波長特性にスロープをつけた状態の波長多重光λ1Sが合波されて送信されることにより、光伝送路300を通過した後の波長多重光λ1Sの1次チルトが補償される。
【0181】
温度制御は波長変換部11Aの変換特性を温度で調整する制御である。波長変換部11Aの変換特性が調整されることにより、光伝送路300を通過した後の波長多重光λ1Sの2次チルトが補償される。パワー制御は、例えば波長多重光λ1Cにダミー光を挿入し、波長多重光λ1Cのパワーを増大させる制御である。これにより、光伝送路300を通過した後の波長多重光λ1Sの残留チルトが補償される。
【0182】
なお、図31に示すように、制御部109-2,209-2は基本的に上述した制御部109,209と同様の構成を有する。このため、制御部109-2,209-2の詳細な説明は省略する。例えば、制御部109-2が有するパワー制御部19Nは、GSNR算出部19Mから通知されたGSNRに基づいて、光増幅器102に対するスロープ制御を実行する。具体的には、パワー制御部19Nは、光増幅器102のチルト補償部12Bに対してスロープ制御を実行する。これにより、光伝送路300を通過した後の波長多重光λ2Cの1次チルトが補償される。
【0183】
次に、図32を参照して、第6実施形態に係る波長変換装置100,200を有する光伝送システムSTのチルト補償について説明する。第6実施形態に係る光伝送システムSTでは、波長変換装置100,200が連携して、1次チルト、2次チルト及び残留チルトに対する補償を行う。
【0184】
まず、制御部209,209-2の各線形SNR算出部29Kは波長多重光λ1C,λ2Cの各パワーを取得する(ステップS61)。制御部209の線形SNR算出部29Kは波長多重光λ1CをOCM207から取得することができる。制御部209-2の線形SNR算出部29Kは波長多重光λ2CをOCM207-1から取得することができる。
【0185】
波長多重光λ1C,λ2Cの各パワーを取得すると、各線形SNR算出部29Kは線形SNRを算出する(ステップS62)。すなわち、制御部209の線形SNR算出部29Kは、波長多重光λ1Cのパワーに基づいて、波長多重光λ1Cの線形SNRを算出する。制御部209-2の線形SNR算出部29Kは、波長多重光λ2Cのパワーに基づいて、波長多重光λ2Cの線形SNRを算出する。
【0186】
次に、各線形SNR算出部29Kは線形SNR情報を出力する(ステップS63)。より詳しくは、制御部209の線形SNR算出部29Kは、波長多重光λ1Cの線形SNRを含む線形SNR情報を制御部109に出力する。制御部209-2の線形SNR算出部29Kは、波長多重光λ2Cの線形SNRを含む線形SNR情報を制御部109-2に出力する。
【0187】
次に、制御部109,109-2の各非線形SNR算出部19Kは波長多重光λ1S,λ2Cの各パワーを取得する(ステップS64)。制御部109の非線形SNR算出部19Kは波長多重光λ1SのパワーをPD162から取得することができる。制御部109の非線形SNR算出部19Kは波長多重光λ2CのパワーをPD163から取得することができる。
【0188】
波長多重光λ1S,λ2Cの各パワーを取得すると、各非線形SNR算出部19Kは非線形SNRを算出する(ステップS65)。すなわち、制御部109の非線形SNR算出部19Kは、波長多重光λ1Sのパワーに基づいて、波長多重光λ1Sの非線形SNRを算出する。制御部109-2の非線形SNR算出部19Kは、波長多重光λ2Cのパワーに基づいて、波長多重光λ2Cの非線形SNRを算出する。
【0189】
次に、制御部109,109-2の各GSNR算出部19MはGSNRを算出する(ステップS66)。すなわち、制御部109のGSNR算出部19Mは、波長多重光λ1Sの線形SNRと非線形SNRとに基づいて、波長多重光λ1SのGSNRを算出する。制御部109-2のGSNR算出部19Mは、波長多重光λ2Cの線形SNRと非線形SNRとに基づいて、波長多重光λ2CのGSNRを算出する。
【0190】
次に、制御部109,109-2の各パワー制御部19Nは光増幅器104,102のスロープを制御する(ステップS67)。より詳しくは、制御部109のパワー制御部19Nは、波長多重光λ1SのGSNRに基づいて、光増幅器104のチルト補償部14Bのスロープを調整する制御を行う。また、制御部109-2のパワー制御部19Nは、波長多重光λ2CのGSNRに基づいて、光増幅器102のチルト補償部12Bのスロープを調整する制御を行う。このように、制御部109,109-2による制御により、チルト補償部14B,12Bは1次チルトを補償する。
【0191】
次に、制御部109のパワー制御部19Nは波長変換部11Aの温度を制御する(ステップS68)。例えば、パワー制御部19Nは波長多重光λ1SのGSNRと温度センサ116が検出した波長変換媒質113の温度とに基づいて、ヒータ117の温度を制御し、波長変換媒質113の変換特性を調整する制御を行う。このように、制御部109は2次チルトを補償する。
【0192】
次に、制御部109のパワー制御部19NはGSNRが低下したか否かを判断する(ステップS69)。GSNRが低下していない場合(ステップS69:NO)、制御部109のパワー制御部19NはステップS68の処理を実行する。すなわち、GSNRが低下するまで、制御部109のパワー制御部19NはステップS68,S69の処理を繰り返す。
【0193】
GSNRが低下すると(ステップS69:YES)、制御部109のパワー制御部19Nは平均パワーを制御し(ステップS70)、処理を終了する。より詳しくは、制御部109のパワー制御部19Nは、GSNRに基づいて、残留チルトに対する補償量を算出し、算出した補償量に基づいて、WSS132の平均パワーを調整する制御を行う。このように、制御部109は、WSS132の平均パワーを調整する制御を行うことにより、波長多重光λ1Sにおける残留チルトを補償する。以上説明したように、第6実施形態係る光伝送システムSTによれば、非線形SNR及び線形SNRをも考慮して、2次チルトだけでなく、1次チルト及び残留チルトも併せて補償することができる。
【0194】
(第7実施形態)
続いて、図33及び図34を参照して、本件の第7実施形態について説明する。第7実施形態に係る波長変換装置100は、制御部109の構成を除き、図25を参照して説明した第5実施形態に係る波長変換装置100と基本的に同様である。このため、図33において、図26図30図31に示される各部と同様の構成には原則として同一の又は対応する符号を付し、その説明を省略する。図26では、L帯に関する構成は省略されて示されている。L帯に関する構成は基本的にS帯に関する構成と同様である。
【0195】
図33に示すように、第7実施形態に係る制御部109は、線形SNR算出部29Kと、非線形SNR算出部19Kと、GSNR算出部19Mと、チルト制御部19Iと、パワー制御部19Nとを含んでいる。
【0196】
線形SNR算出部29Kは、PD162からS帯に属する波長のパワーを取得し、取得したパワーに基づいて、波長多重光λ1Sの線形SNRを算出する。同様に、線形SNR算出部29Kは、PD163からC帯に属する波長のパワーを取得し、取得したパワーに基づいて、波長多重光λ2Cの線形SNRを算出する。
【0197】
非線形SNR算出部19Kは、PD162からS帯に属する波長のパワーを取得し、取得したパワーに基づいて、波長多重光λ1Sの非線形SNRを算出する。同様に、非線形SNR算出部19Kは、PD163からC帯に属する波長のパワーを取得し、取得したパワーに基づいて、波長多重光λ2Cの非線形SNRを算出する。
【0198】
GSNR算出部19Mは、波長多重光λ1Sの線形SNRと非線形SNRとに基づいて、波長多重光λ1SのGSNRを算出する。同様に、GSNR算出部19Mは、波長多重光λ2Cの線形SNRと非線形SNRとに基づいて、波長多重光λ2CのGSNRを算出する。
【0199】
チルト制御部19Iは、波長多重光λ1SのGSNRに基づいて、光増幅器104のチルト補償部14Bのスロープを調整する制御を行う。また、チルト制御部19Iは、波長多重光λ2CのGSNRに基づいて、光増幅器102のチルト補償部12Bのスロープを調整する制御を行う。さらに、チルト制御部19Iは、波長多重光λ1SのGSNRと温度センサ116が検出した波長変換媒質113の温度とに基づいて、ヒータ117の温度を制御し、波長変換媒質113の変換特性を調整する制御を行う。
【0200】
パワー制御部19Nは、波長多重光λ1SのGSNRに基づいて、S帯に属する波長の平均パワーに応じたパワー補償量を算出し、算出したパワー補償量に基づいて、VOA142の平均パワーを調整する制御を行う。また、パワー制御部19Nは、波長多重光λ2CのGSNRに基づいて、C帯に属する波長の平均パワーに応じたパワー補償量を算出し、算出したパワー補償量に基づいて、VOA143の平均パワーを調整する制御を行う。
【0201】
このように、第7実施形態によれば、残留チルトに対する補償が省略されている。このため、第7実施形態に係る光伝送システムSTは、残留チルトに対する補償を実行する場合に比べて、線形SNR及び非線形SNRをも考慮した1次と2次のチルト補償を高速に実行することができる。
【0202】
次に、図34を参照して、第7実施形態に係る波長変換装置100,200を有する光伝送システムSTのチルト補償について説明する。第7実施形態に係る光伝送システムSTでは、波長変換装置100が単独で、1次チルト及び2次チルトに対する補償を行う。
【0203】
まず、線形SNR算出部29K及び非線形SNR算出部19Kは、波長多重光λ1S,λ2Cの各パワーをそれぞれ取得する(ステップS71)。線形SNR算出部29Kは波長多重光λ1SのパワーをPD162から取得することができる。また、線形SNR算出部29Kは波長多重光λ2CのパワーをPD163から取得することができる。一方、非線形SNR算出部19Kは波長多重光λ1SのパワーをPD162から取得することができる。また、非線形SNR算出部19Kは波長多重光λ2CのパワーをPD163から取得することができる。
【0204】
波長多重光λ1S,λ2Cの各パワーを取得すると、線形SNR算出部29Kは線形SNRを算出する(ステップS72)。すなわち、線形SNR算出部29Kは、波長多重光λ1Sのパワーに基づいて、波長多重光λ1Sの線形SNRを算出する。また、線形SNR算出部29Kは、波長多重光λ2Cのパワーに基づいて、波長多重光λ2Cの線形SNRを算出する。
【0205】
次に、非線形SNR算出部19Kは非線形SNRを算出する(ステップS73)。すなわち、非線形SNR算出部19Kは、波長多重光λ1Sのパワーに基づいて、波長多重光λ1Sの非線形SNRを算出する。また、非線形SNR算出部19Kは、波長多重光λ2Cのパワーに基づいて、波長多重光λ2Cの非線形SNRを算出する。
【0206】
次に、GSNR算出部19MはGSNRを算出する(ステップS74)。すなわち、GSNR算出部19Mは、波長多重光λ1Sの線形SNRと非線形SNRとに基づいて、波長多重光λ1SのGSNRを算出する。また、GSNR算出部19Mは、波長多重光λ2Cの線形SNRと非線形SNRとに基づいて、波長多重光λ2CのGSNRを算出する。
【0207】
次に、チルト制御部19Iは光増幅器104,102のスロープを制御する(ステップS75)。より詳しくは、チルト制御部19Iは、波長多重光λ1SのGSNRに基づいて、光増幅器104のチルト補償部14Bのスロープを調整する制御を行う。また、チルト制御部19Iは、波長多重光λ2CのGSNRに基づいて、光増幅器102のチルト補償部12Bのスロープを調整する制御を行う。このように、チルト制御部19Iの制御により、チルト補償部14B,12Bは1次チルトを補償する。
【0208】
次に、パワー制御部19NはVOA142,143の平均パワーを制御する(ステップS76)。より詳しくは、パワー制御部19Nは、波長多重光λ1SのGSNRに基づいて、VOA142の減衰量を調整する制御を行う。また、パワー制御部19Nは、波長多重光λ2CのGSNRに基づいて、VOA143の減衰量を調整する制御を行う。パワー制御部19Nの制御により、VOA142,143は平均パワーを補償する。
【0209】
次に、チルト制御部19Iは波長変換部11Aの温度を制御する(ステップS77)。例えば、チルト制御部19Iは波長多重光λ1SのGSNRと温度センサ116が検出した波長変換媒質113の温度とに基づいて、ヒータ117の温度を制御し、波長変換媒質113の変換特性を調整する制御を行う。このように、チルト制御部19Iの制御により、波長変換部11Aは2次チルトを補償する。
【0210】
次に、チルト制御部19IはGSNRが低下したか否かを判断する(ステップS78)。GSNRが低下していない場合(ステップS78:NO)、チルト制御部19IはステップS77の処理を実行する。すなわち、GSNRが低下するまで、チルト制御部19IはステップS77,S78の処理を繰り返す。GSNRが低下すると(ステップS78:YES)、処理を終了する。
【0211】
以上説明したように、第7実施形態係る光伝送システムSTによれば、非線形SNR及び線形SNRをも考慮して、1次チルトと2次チルトに対するチルト補償を高速に実行することができる。
【0212】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0213】
なお、以上の説明に関してさらに以下の付記を開示する。
(付記1)第1波長帯に属する複数の第1波長を含む第1波長多重光を第2波長帯に属する複数の第2波長を含む第2波長多重光に変換する光学媒質と、前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する第1モニタと、前記光学媒質の変換特性を調整するための制御情報を保持する記憶部と、前記第1モニタによる第1観測結果に応じて、前記記憶部から取得した前記制御情報により前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う制御部と、を備える波長変換装置。
(付記2)前記制御部は、前記複数の第1波長と前記複数の第2波長と第3波長帯に属する複数の第3波長とを含む広帯域波長多重光を伝送した伝送路で生じる2次チルトを補償するように、前記制御情報により前記光学媒質の変換特性を調整する第1制御を行う、ことを特徴とする付記1に記載の波長変換装置。
(付記3)前記制御部は、ゼロ分散波長のばらつきを補償するように前記光学媒質の変換特性を調整する第2制御を行い、前記第2制御の結果に基づいて前記制御情報を前記記憶部に記録した後に、前記第1制御を行う、ことを特徴とする付記2に記載の波長変換装置。
(付記4)前記制御部は、前記変換特性の調整に基づく変換効率の低下量が変換特性の調整前の前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーの偏差を上回る場合に前記第1制御をリセットする、ことを特徴とする付記3に記載の波長変換装置。
(付記5)前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する第2モニタをさらに有し、前記制御部は、前記第1観測結果および前記第2モニタによる第2観測結果に応じて、前記記憶部から取得した前記制御情報により前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う、ことを特徴とする付記1に記載の波長変換装置。
(付記6)前記制御部は、前記光学媒質の温度を調整して前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う、ことを特徴とする付記1に記載の波長変換装置。
(付記7)励起光を出力する励起光源をさらに有し、前記制御部は、前記励起光源から前記光学媒質に入力された前記励起光の波長を調整して前記光学媒質の変換特性を調整する制御を行う、ことを特徴とする付記1に記載の波長変換装置。
(付記8)前記光学媒質は、PPLN(Periodically Poled Lithium Niobate)を含む非線形光学媒質である、ことを特徴とする付記1又は2に記載の波長変換装置。
(付記9)前記第1波長帯はS帯であり、前記第2波長帯はC帯であり、前記第3波長帯はL帯である、ことを特徴とする付記2に記載の波長変換装置。
(付記10)受信側の波長変換装置と送信側の波長変換装置とを含む光伝送システムであって、前記受信側の波長変換装置は、第1波長帯に属する複数の第1波長を含む第1波長多重光を増幅する受信側光増幅器と、増幅後の前記第1波長多重光を第2波長帯に属する複数の第2波長を含む第2波長多重光に変換する第1光学媒質と、前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する受信側第1モニタと、前記第1光学媒質の変換特性を調整するための第1制御情報を保持する第1記憶部と、前記受信側第1モニタによる第1観測結果に応じて、前記第1記憶部から取得した前記第1制御情報により前記第1光学媒質の変換特性を調整する制御を行う受信側制御部と、を有し、前記送信側の波長変換装置は、第1送信器から出力された前記第2波長多重光を前記第1波長多重光に変換する第2光学媒質と、変換後の前記第1波長多重光を増幅する送信側第1光増幅器と、第2送信器から出力された前記第2波長多重光を増幅する送信側第2光増幅器と、前記送信側第2光増幅器から出力された前記第2波長多重光と、前記送信側第1光増幅器から出力された前記第1波長多重光とを合波して前記受信側の波長変換装置と前記送信側の波長変換装置とを接続する伝送路に出力する光カプラと、を有する、ことを特徴とする光伝送システム。
(付記11)前記送信側の波長変換装置は、前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、前記第2光学媒質の変換特性を調整するための第2制御情報を保持する第2記憶部と、前記受信側制御部から出力された前記第1観測結果および前記送信側第1モニタによる第2観測結果に応じて、前記第2記憶部から取得した前記第2制御情報により前記第2光学媒質の変換特性を調整する制御を行う送信側制御部と、をさらに有することを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
(付記12)前記受信側の波長変換装置は、前記受信側制御部から出力された前記第1観測結果を光学的に送信するOSC送信部を有し、前記送信側の波長変換装置は、前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する第2モニタと、前記第2光学媒質の変換特性を調整するための第2制御情報を保持する第2記憶部と、前記OSC送信部から送信された前記第1観測結果を光学的に受信するOSC受信部と、前記OSC受信部が受信した前記第1観測結果および前記第2モニタによる第2観測結果に応じて、前記第2記憶部から取得した前記第2制御情報により前記第2光学媒質の変換特性を調整する制御を行う送信側制御部とをさらに有する、ことを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
(付記13)前記受信側の波長変換装置は、前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する受信側第2モニタをさらに有し、前記受信側制御部が前記受信側第2モニタから前記受信側第2モニタによる第2観測結果を取得して前記第1観測結果とともに前記送信側の波長変換装置に出力し、前記送信側の波長変換装置は、前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、前記受信側制御部から出力された前記第1観測結果及び前記第2観測結果と前記送信側第1モニタによる第3観測結果とに応じて、前記伝送路を通過した後の前記第1波長多重信号光の各波長のパワーの偏差が低減するように、前記送信側第1光増幅器のスロープを調整する制御と、前記第2光学媒質の変換特性を温度で調整する制御とを行う送信側制御部と、をさらに有する、ことを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
(付記14)前記送信側の波長変換装置は、前記送信側第1光増幅器から出力された前記第1波長多重光のパワーを減衰させる第1可変光減衰器と、前記送信側第2光増幅器から出力された前記第2波長多重光のパワーを減衰させる第2可変光減衰器と、前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する送信側第2モニタと、前記送信側第1モニタによる第3観測結果と前記送信側第2モニタによる第4観測結果とに応じて、前記伝送路を通過する前の前記第1波長多重信号光の各波長のパワーの偏差が低減するように、前記送信側第1光増幅器と前記送信側第2光増幅器の各スロープを調整する制御と、前記第1可変光減衰器と前記第2可変光減衰器の各減衰量を調整する制御と、前記第2光学媒質の変換特性を温度で調整する制御とを行う送信側制御部と、をさらに有することを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
(付記15)前記受信側の波長変換装置は、前記受信側制御部が前記第1観測結果を波長帯ごとに取得し、線形の信号品質を算出する所定の第1算出手法と、前記第1観測結果とに基づいて、線形の第1信号品質を波長帯ごとに算出して前記送信側の波長変換装置に出力し、前記送信側の波長変換装置は、前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する送信側第2モニタと、非線形の信号品質を算出する所定の第2算出手法と、前記送信側第1モニタによる第3観測結果と、前記送信側第2モニタによる第4観測結果とに基づいて、非線形の第2信号品質を波長帯ごとに算出し、一般化された信号品質を算出する所定の第3算出手法と、前記受信側制御部から出力された前記第1信号品質と、前記第2信号品質とに基づいて、前記第1信号品質及び前記第2信号品質のいずれとも異なる第3信号品質を波長帯ごとに算出し、前記第3信号品質が低減するように、前記送信側第1光増幅器と前記送信側第2光増幅器の各スロープを調整する制御と、前記第2光学媒質の変換特性を温度で調整する制御とを行う送信側制御部と、をさらに有することを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
(付記16)前記送信側の波長変換装置は、前記送信側第1光増幅器から出力された前記第1波長多重光のパワーを減衰させる第1可変光減衰器と、前記送信側第2光増幅器から出力された前記第2波長多重光のパワーを減衰させる第2可変光減衰器と、前記第1波長帯に属する前記複数の第1波長のパワーを観測する送信側第1モニタと、前記第2波長帯に属する前記複数の第2波長のパワーを観測する送信側第2モニタと、線形の信号品質を算出する所定の第1算出手法と、非線形の信号品質を算出する所定の第2算出手法と、前記送信側第1モニタによる第3観測結果と、前記送信側第2モニタによる第4観測結果とに基づいて、線形の第1信号品質と非線形の第2信号品質のそれぞれを波長帯ごとに算出し、一般化された信号品質を算出する所定の第3算出手法と、前記第1信号品質と、前記第2信号品質とに基づいて、前記第1信号品質及び前記第2信号品質のいずれとも異なる第3信号品質を波長帯ごとに算出し、前記第3信号品質が低減するように、前記送信側第1光増幅器と前記送信側第2光増幅器の各スロープを調整する制御と、前記第1可変光減衰器と前記第2可変光減衰器の各減衰量を調整する制御と、前記第2光学媒質の変換特性を温度で調整する制御とを行う送信側制御部と、をさらに有することを特徴とする付記10に記載の光伝送システム。
【符号の説明】
【0214】
ST 光伝送システム
10 第1WDM送信器
20 第2WDM送信器
30 第3WDM送信器
40 第1WDM受信器
50 第2WDM受信器
60 第3WDM受信器
100,200 波長変換装置
107,207,207-1,208,221,271 OCM
109,109-1,109-2,209,209-1,209-2 制御部
113,213 波長変換媒質
131,181,191,231,281,291 OSC通信部
142,143 VOA
162,163 PD
300 光伝送路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34