(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046635
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】太陽光発電装置の固定構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20180101AFI20240327BHJP
H02S 30/00 20140101ALI20240327BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20240327BHJP
【FI】
E04D13/18
H02S30/00
H02S20/23 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023154215
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022151702
(32)【優先日】2022-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 和司
(72)【発明者】
【氏名】横田 生吹樹
【テーマコード(参考)】
2E108
5F251
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108LL01
2E108MM03
2E108MM04
2E108MM05
2E108NN07
5F251JA02
5F251JA13
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】固定具が、太陽光発電装置の受光面を介して発電部に向かう光を遮らないため、固定具により太陽光発電装置の発電量が減少することを防止可能な太陽光発電装置の固定構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る太陽光発電装置1の固定構造は、受光面6からの光が発電部に入射することにより発電部で発電を行う発電シート5を有する太陽光発電装置1と、太陽光発電装置1を固定対象3に固定するための複数の固定具4とを備える。固定具4は、固定対象3から露出する露出部30と、露出部30と一体に設けられ、固定対象3に埋設される埋設部31とを備える。露出部30と太陽光発電装置1における受光面6の反対側にある面7とは、接着層32を介して接着される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面からの光が発電部に入射することにより発電部で発電を行う発電シートを有する太陽光発電装置と、
前記太陽光発電装置を固定対象に固定するための一又は複数の固定具とを備え、
前記固定具は、前記固定対象から露出する露出部と、前記露出部と一体に設けられ、前記固定対象に埋設される少なくとも一つの埋設部とを備え、
前記露出部と前記太陽光発電装置における前記受光面の反対側にある面とが接着層を介して接着されている太陽光発電装置の固定構造。
【請求項2】
前記発電シートは、可撓性を有し、
前記発電シートの曲げ強さは、10MPa以上200MPa以下である請求項1に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【請求項3】
前記固定具は、樹脂から形成されている請求項1に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【請求項4】
前記接着層は、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クロロプレンゴム、スチレン、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上を含む樹脂組成物から形成されている請求項1に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置と、太陽光発電装置を固定するための固定具とを備えた太陽光発電装置の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽光発電装置を固定するために、太陽光発電装置を囲む枠体を金具を用いて支持材に締結することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、受光面からの光が発電部に入射することにより発電部で発電を行う太陽光発電装置を上記の枠体で囲む場合には、枠体が発電部に向かう光を遮ることで、太陽光発電装置の発電量が減少する問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、受光面からの光が発電部に入射することにより発電部で発電を行う発電シートを有する太陽光発電装置の固定構造であって、固定具が受光面を介して発電部に向かう光を遮らないため、固定具により太陽光発電装置の発電量が減少することを防止可能な太陽光発電装置の固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0007】
項1.受光面からの光が発電部に入射することにより発電部で発電を行う発電シートを有する太陽光発電装置と、
前記太陽光発電装置を固定対象に固定するための一又は複数の固定具とを備え、
前記固定具は、前記固定対象から露出する露出部と、前記露出部と一体に設けられ、前記固定対象に埋設される少なくとも一つの埋設部とを備え、
前記露出部と前記太陽光発電装置における前記受光面の反対側にある面とが接着層を介して接着されている太陽光発電装置の固定構造。
【0008】
項2.前記発電シートは、可撓性を有し、
前記発電シートの曲げ強さは、10MPa以上200MPa以下である項1に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【0009】
項3.前記固定具は、樹脂から形成されている項1又は2に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【0010】
項4.前記接着層は、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クロロプレンゴム、スチレン、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上を含む樹脂組成物から形成されている項1乃至3のいずれかに記載の太陽光発電装置の固定構造。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、露出部と太陽光発電装置における受光面の反対側にある面とが接着されるため、固定具が受光面を介して発電部に向かう光を遮らない。したがって固定具によって太陽光発電装置の発電量が減少することを防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略平面図である。
【
図3】(A)は
図1のb-b線に沿って太陽光発電装置1を切断した状態を示す概略断面図であり、(B)は(A)のc部分の拡大図であり、(C)は(A)のd-d線に沿って発電部を切断した状態を示す断面図である。
【
図5】(A)~(F)は固定具を示す図であり、(A)~(F)の上図は固定具の平面図であり、(A)~(F)の下図は固定具の断面図である。
【
図6】(A)は、本発明の変形例に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略平面図であり、(B)は、(A)のe-e線に沿って固定構造を切断した状態を示す概略断面図である。
【
図7】(A)及び(B)は、本発明の変形例に係る太陽光発電装置の固定構造の概略断面図である。
【
図8】(A)は、本発明の変形例に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略平面図であり、(B)は、(A)のf-f線に沿って固定構造を切断した状態を示す概略断面図である。
【
図9】(A)は、本発明の変形例に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略平面図であり、(B)は、(A)のg-g線に沿って固定構造を切断した状態を示す概略断面図である。
【
図10】(A)は、本発明の変形例に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略平面図であり、(B)は、(A)のh-h線に沿って固定構造を切断した状態を示す概略断面図である。
【
図11】本発明の変形例に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る太陽光発電装置1の固定構造2を示す概略平面図であり、
図2は、
図1におけるa-a線概略断面図である。
図3(A)は、
図1のb-b線に沿って太陽光発電装置1を切断した状態を示す概略断面図である。
図3(B)は、
図3(A)のc部分の拡大図である。
図3(C)は、
図3(A)のd-d線に沿って発電部11を切断した状態を示す断面図である。
【0014】
本実施形態に係る固定構造2は、太陽光発電装置1と、太陽光発電装置1を固定対象3に固定するための固定具4とを備える。本実施形態では、固定対象3が地盤である場合について説明するが、本発明は固定対象3を地盤に限定するものではない。
【0015】
(太陽光発電装置1)
本発明において、「太陽光発電装置」とは、受光面6からの光が発電部11に入射することにより発電部11で発電を行う発電シート5を有する装置を意味する。発電シート5と一体に設けられるシート(後述の繊維含有シート42など)は、「太陽光発電装置1」の構成に含まれる。本明細書でいう「シート」は、その物体の厚さが、平面視における外縁の間の最大長さに対して、10%以下である形状を意味する。平面視における形状が矩形状である場合、「平面視における外縁の間の最大長さ」は、対角線の長さを意味する。平面視における形状が円形状である場合、「平面視における外縁の間の最大長さ」は、直径の長さを意味する。本明細書では、膜状、箔状、フィルム状等も、「シート状」に含まれる。
【0016】
本実施形態では、太陽光発電装置1は、上記の発電シート5のみを備える。発電シート5は、平面視略矩形状に形成されている。発電シート5の形状としては、例えば、平面視略円形状、平面視楕円形状、平面視多角形状等であってもよく、特に制限はない。
【0017】
発電シート5は、
図3に示すように、バックシート10と、発電部11と、バリアシート12と、封止剤13と、封止縁材14とを備える。バリアシート12は、発電シート5の受光面6を構成する。バックシート10は、受光面6の反対側にある面7の大半を構成する。発電部11及び封止剤13は、バックシート10とバリアシート12との間に配置される。封止縁材14は、バックシート10の外周縁15とバリアシート12の外周縁16との間を封止する。
【0018】
発電シート5は、可撓性を有する。本明細書における「可撓性を有する」とは、対象物が撓み得る性質を意味する。本実施形態に係る発電シート5の曲げ強さは、特に限定されないが、好ましくは10MPa以上であり、より好ましくは20MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上である。また、発電シート5の曲げ強さは、好ましくは200MPa以下であり、より好ましくは150MPa以下であり、より好ましくは100MPa以下である。また、発電シート5は、曲げ弾性率で定義されていてもよく、好ましくは100MPa以上であり、より好ましくは500MPa以上である。一方、発電シート5の曲げ弾性率は、好ましくは10000MPa以上であり、より好ましくは5000MPa以下が好ましい。発電シート5を曲げ弾性率で定義する場合、曲げ強さは上記の範囲に含まれなくてもよい。発電シート5の曲げ強さ及び曲げ弾性率の測定方法は、JIS K 7171に準拠して測定される。このように、発電シート5が可撓性を有することで、設置面の形状に対して追従することができ、なおかつ、設置された状態において、風等でバタつきにくい。発電シート5の曲げ強さの設定は、主に、バックシート10及びバリアシート12の曲げ強さによって実現され得る。バックシート10及びバリアシート12については、後ほど詳述する。発電シート5の曲げ強さが、50MPa以上150MPa以下に設定されることで、施工性を良好にしながら、ひび割れ等の破損が生じることを抑制できる。本明細書でいう「曲げ強さ」は、例えば、JIS 7171に準拠する測定方法で測定される。
【0019】
本明細書において「発電シート5」には、複数の発電部11を有する太陽光発電シートモジュール、複数の太陽光発電シートモジュールを有する太陽光発電シートストリング、及び複数の太陽光発電シートストリングを有する太陽光発電シートアレイを含む。
【0020】
(バックシート10)
バックシート10は、水蒸気に対するバリア性能、及び外力に対する保護性能を有する。バックシート10は、透光性があってもよいが、必ずしも透光性は必要ではない。本明細書でいう「透光性がある」とは、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、10%以上であることを意味する。
【0021】
バックシート10は、可撓性を有する。バックシート10に用いられる材料としては、縦弾性係数が100MPa以上10000MPa以下であることが好ましく、より好ましくは、1000MPa以上5000MPa以下である。バックシート10の材料として、具体的には、例えば、プラスチックフィルム、プラスチック基板等が挙げられる。
【0022】
バックシート10の厚さは、50μm以上であることが好ましく、より好ましくは、100μm以上であり、より好ましくは、200μm以上である。また、バックシート10の厚さは、1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは、800μm以下であり、より好ましくは、600μm以下である。バックシート10の厚さが50μm以上1000μm以下であることにより、発電シート5の曲げ強さを、50MPa以上150MPa以下に設定しやすい。
【0023】
(発電部11)
発電部11は、光起電力効果を利用した光電変換素子であり、太陽光を受けることで発電を行う発電セル110を備える。本実施形態では、発電部11は、複数の発電セル110が太陽光発電装置1の面方向(例えば太陽光発電装置1の長手方向X或い幅方向Y(
図1))に配置された光電変換ユニットから構成される。なお、発電部11は一つの発電セル110によって構成されてもよい。
【0024】
図3(A)に示すように、発電セル110は、透光性基材20と、透光性導電層21と、発電層22と、電極23と、を備える。透光性基材20、透光性導電層21、発電層22、及び電極23は、バリアシート12からバックシート10に向かう方向に沿って、この順で積層されている。すなわち、透光性基材20がバリアシート12に対向し、電極23がバックシート10に対向するように配置される。
【0025】
(透光性基材20)
透光性基材20は、透光性導電層21、発電層22、及び電極23を支持する。透光性基材20は、透光性を有する。透光性基材20の透光性は、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、10%以上であればよいが、好ましくは、50%以上であり、より好ましくは、80%以上である。本明細書では、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、80%以上であることを、「透明」であるとする。
【0026】
透光性基材20の材料としては、例えば、無機材料、有機材料、金属材料等が挙げられる。無機材料としては、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET; polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN; polyethylene naphthalene)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック、高分子フィルム等が挙げられる。金属材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、シリコン等が挙げられる。
【0027】
透光性基材20の厚さは、透光性導電層21、発電層22及び電極23を支持することができれば、特に制限はなく、例えば、30μm以上300μm以下が挙げられる。
【0028】
透光性基材20は、発電部11の製造過程で必要になる基材であり、必ずしも必要な構成ではない。透光性基材20は、例えば、発電部11の製造途中にだけ利用されてもよく、製造後又は製造途中に取り除かれてもよい。なお、取り除かれる場合、透光性基材20に代えて、透光性を有さない基材を用いてもよい。
【0029】
(透光性導電層21)
透光性導電層21は、導電性を有する層であり、カソードとして機能する。透光性導電層21は、透光性を有する。透光性導電層21は、透明であることが好ましい。
【0030】
透光性導電層21としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO; Indium Tin Oxide)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO; F-doped Tin Oxide)、ネサ膜等の透明な材料が挙げられる。透光性導電層21は、透光性基材20の表面に対して、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法等により形成される。
【0031】
また、透光性導電層21としては、不透光性材料を用いつつ、光を透過可能なパターンを形成することで、透光性を有するように構成してもよい。不透光性材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、ニッケル、スズ、亜鉛、又はこれらを含む合金等が挙げられる。光を透過可能なパターンとしては、例えば、格子状、線状、波線状、ハニカム状、丸穴状等が挙げられる。
【0032】
透光性導電層21の厚さは、例えば、30nm以上300nm以下であることが好ましい。透光性導電層21が、30nm以上300nm以下であると、可撓性を高く保ちながら、良好な導電性を得ることができる。
【0033】
(発電層22)
発電層22は、光の照射によって光電変換を生じさせる層であり、光を吸収することで生成された励起子から、電子と正孔とを生じさせる。
図3(B)に示すように、発電層22は、正孔輸送層221と、光電変換層222と、電子輸送層223と、を備える。正孔輸送層221、光電変換層222、及び電子輸送層223は、透光性導電層21から電極23に向かう方向に沿って、この順で積層されている。
【0034】
(正孔輸送層221)
正孔輸送層221は、光電変換層222で発生した正孔を、透光性導電層21へ抽出し、かつ光電変換層222で発生した電子が、透光性導電層21へ移動するのを妨げる。正孔輸送層221の材料としては、例えば、金属酸化物を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化セシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。また、その他、デラフォサイト型化合物半導体(CuGaO2)、酸化銅、チオシアン酸銅(CuSCN)、五酸化バナジウム(V2O5)、酸化グラフェン等が用いられてもよい。また、正孔輸送層221の材料として、p型有機半導体又はp型無機半導体を用いることもできる。
【0035】
正孔輸送層221の厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、10nm以上500nm以下であり、更に好ましくは、10nm以上50nm以下である。正孔輸送層221の厚さが、1nm以上1000nm以下であれば、正孔の輸送が実現できる。
【0036】
(光電変換層222)
光電変換層222(光活性層)は、吸収した光を光電変換する層である。光電変換層222の材料としては、吸収した光を光電変換することができれば特に制限はなく、例えば、アモルファスシリコン、ペロブスカイト、非シリコン系材料(半導体材料CIGS)等が用いられる。また、光電変換層222は、ペロブスカイト化合物、アモルファスシリコン、及び非シリコン系材料のいずれか複数を複合したタンデム型の積層構造としてもよい。非シリコン系材料が用いられた光電変換層は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)を含む半導体材料CIGSが用いられており、光電変換層の厚さを薄くしやすい。
【0037】
以下では、光電変換層222の一例として、ペロブスカイトが用いられる光電変換層を挙げて説明する。ペロブスカイト化合物を含む光電変換層222は、入射光の角度に対する発電効率の依存性(以下、入射角依存性という場合がある)が比較的低いという利点がある。これにより、本実施形態では、より高い発電効率を得ることができる。
【0038】
ペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト結晶構造体及びこれに類似する結晶を有する構造体である。ペロブスカイト結晶構造体は、組成式 ABX3 で表される。この組成式において、例えば、Aは有機カチオン、Bは金属カチオン、Xはハロゲンアニオンを示す。ただし、Aサイト、Bサイト及びXサイトはこれに限定されない。
【0039】
Aサイトを構成する有機カチオンの有機基としては、特に制限はなく、例えば、アルキルアンモニウム誘導体、ホルムアミジニウム誘導体等が挙げられる。Aサイトを構成する有機カチオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0040】
Bサイトを構成する金属カチオンの金属としては、特に制限はなく、例えば、Cu、Ni、Mn、Fe、Co、Pd、Ge、Sn、Pb、Eu等が挙げられる。Bサイトを構成する金属カチオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0041】
Xサイトを構成するハロゲンアニオンのハロゲンには、特に制限はなく、例えば、F、Cl、Br、I等が挙げられる。Xサイトを構成するハロゲンアニオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0042】
光電変換層222の厚さは、例えば、1nm以上100000nm以下が好ましく、より好ましくは、5nm以上50000nm以下であり、更に好ましくは、10nm以上1000nm以下である。光電変換層222の厚さが、1nm以上100000nm以下であると、光電変換効率が向上する。
【0043】
(電子輸送層223)
電子輸送層223は、光電変換層222で発生した電子を電極23へ抽出し、かつ光電変換層222で発生した正孔が、電極23へ移動するのを妨げる。電子輸送層223としては、例えば、ハロゲン化合物又は金属酸化物のいずれかを含むことが好ましい。
【0044】
ハロゲン化合物としては、例えば、ハロゲン化リチウム(LiF、LiCl、LiBr、LiI)、ハロゲン化ナトリウム(NaF、NaCl、NaBr、NaI)等が挙げられる。金属酸化物を構成する元素としては、チタン、モリブデン、バナジウム、亜鉛、ニッケル、リチウム、カリウム、セシウム、アルミニウム、ニオブ、スズ、バリウム等が挙げられる。また、電子輸送層223の材料として、n型有機半導体又はn型無機半導体を用いることもできる。
【0045】
電子輸送層223の厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、10nm以上500nm以下であり、更に好ましくは、10nm以上50nm以下である。電子輸送層223の厚さが、1nm以上1000nm以下であれば、電子の輸送が実現できる。
【0046】
(電極23)
電極23は導電性を有し、アノードとして機能する。電極23は、光電変換層222によって生じた光電変換に応じて、光電変換層222から電子を取り出すことができる。電極23は、透光性を有していてもよいし、不透光性材料で構成されてもよい。電極23の材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、ニッケル、スズ、亜鉛、又はこれらを含む合金等が挙げられる。
【0047】
(バリアシート12)
バリアシート12は、透光性及び可撓性を有しており、透明であることが好ましい。バリアシート12は、水蒸気に対するバリア性能、及び外力に対する保護性能を有する。
【0048】
バリアシート12に用いられる材料としては、縦弾性係数が100MPa以上10000MPa以下であることが好ましく、より好ましくは、1000MPa以上5000MPa以下である。バリアシート12の材料として、具体的には、例えば、プラスチックフィルム、ビニルフィルム等が挙げられる。
【0049】
バリアシート12の厚さは、50μm以上であることが好ましく、より好ましくは、100μm以上であり、より好ましくは、200μm以上である。また、バリアシート12の厚さは、1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは、800μm以下であり、より好ましくは、600μm以下である。バリアシート12の厚さが50μm以上1000μm以下であることにより、発電シート5としての曲げ強さを、50MPa以上150MPa以下に設定しやすい。
【0050】
(封止剤13)
封止剤13は、バリアシート12とバックシート10との間に発電部11を配置した状態で、バリアシート12とバックシート10との間に充填される。封止剤13は、発電部11に対して、発電部11の周囲から浸水するのを妨げる。封止剤13は、透光性を有しており、好ましくは、透明である。
【0051】
封止剤13として、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA; Ethylene-vinyl acetate)、ポリオレフィン、ブチルゴム、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール等を使用できる。
【0052】
(封止縁材14)
封止縁材14は、バックシート10とバリアシート12との間に発電部11及び封止剤13が配置された状態で、バックシート10の外周縁15とバリアシート12の外周縁16との間を封止する。
図3(A)に示すように、封止縁材14は、第1接着部101と、第2接着部102と、第1接着部101と第2接着部102とをつなぐ封着部103と、を備える。第1接着部101は、バリアシート12の上面に接着される。第2接着部102は、バックシート10の下面に接着される。第1接着部101、封着部103、及び第2接着部102は、一体に形成されている。
【0053】
封止縁材14の材料としては、例えば、ブチルゴム、シリコーンゴム等からなるテープ材が挙げられる。
【0054】
(発電シート5の作用)
発電シート5の受光面6から発電シート5に光が入射されると、発電層22の光電変換層222が光を吸収して光電変換を行うことで、光電変換層222で電子と正孔とが生じる。当該電子が電子輸送層223を介して電極23(アノード)へ抽出され、正孔が正孔輸送層221を介して透光性導電層21(カソード)へ抽出されることで、透光性導電層21から電極23へと電流が流れる(すなわち発電が行われる)。
【0055】
発電部11を構成する光電変換ユニットでは、各発電セル110の電極23(アノード)に延長部23aが設けられる(
図3(C))。当該電極23の延長部23aは透光性導電層21(カソード)側へ延びる。隣り合う2つの発電セル110,110では、一方のセル110の電極23の延長部23aが、他方のセル110の透光性導電層21に接合される。この接合により、発電シート5に光が照射される間では、発電部11(光電変換ユニット)の一方側端にある透光性導電層21Aから、発電部11の他方側端にある電極23Aへと電流が流れる(
図3(C)では電流の流れを矢印で示している)。当該電流は、図示しない配電線を介して取り出される。
【0056】
発電部11を上記の光電変換ユニットから構成することで、一部の発電セル110で不具合が生じても、発電部11からの電気取り出し量を安定化させることができる。
【0057】
なお各発電セル110の電極23(アノード)に延長部23aを設けることの代わりに、各発電セル110の透光性導電層21(カソード)に、電極23(アノード)側へ延びる延長部を設けてもよい。この場合、隣り合う2つの発電セル110,110では、一方のセル110の透光性導電層21の延長部が、他方のセル110の電極23に接合される。このようにしても上記と同様の効果が得られる。
【0058】
また発電部11に透光性基材20を設ける場合には、発電部11の製造を容易にする観点から、
図3(C)に示すように、各発電セル110の透光性導電層21、発電層22及び電極23を、共通の透光性基材20に支持させることが好ましい。
【0059】
また発電部11が一つの発電セル110によって構成される場合には、電極23から透光性導電層21へと流れる電流が配電線を介して取り出される。
【0060】
なお太陽光発電装置1には、複数の発電部11が含まれていてもよい。この場合、複数の発電部11は、発電シート5の面方向に配置されて、直列又は並列に電気的に接続される。
【0061】
発電部11が光電変換ユニットから構成される場合には、複数の発電部11を直列に接続するために、隣り合う2つの発電部11,11において、一方の発電部11の端にある透光性導電層21Aと、他方の発電部11の端にある電極23Aとを、配電線を介して接続することが行われる。複数の発電部11を並列に接続する場合には、隣り合う2つの発電部11,11の端にある透光性導電層21A,21A同士と、上記隣り合う2つの発電部11,11の端にある電極23A,23A同士とを、それぞれ配電線を介して接続することが行われる。
【0062】
また発電部11が一つの発電セル110から構成される場合には、複数の発電部11を直列に接続するために、隣り合う2つの発電部11,11において、一方の発電部11の透光性導電層21と、他方の発電部11の電極23とを配電線を介して接続することが行われる。複数の発電部11を並列に接続する場合には、隣り合う2つの発電部11,11の透光性導電層21,21同士と、上記隣り合う2つの発電部11,11の電極23,23同士とを、それぞれ配電線を介して接続することが行われる。
【0063】
なお発電部11が、上記の光電変換ユニット及び一つの発電セル110のいずれから構成される場合においても、隣り合う発電部11,11の間の距離は、0mm超であればよく、好ましくは2mm以上であり、より好ましくは10mm以上であり、更に好ましくは、15mm以上である。また、隣り合う発電部11,11の間の距離は、100mm以下が好ましく、より好ましくは50mm以上であり、更に好ましくは、20mm以下である。
【0064】
(固定具4)
図2に示すように、固定具4は、固定対象3から露出する露出部30と、露出部30と一体に設けられ、固定対象3に埋設される埋設部31とを備える。露出部30は、太陽光発電装置1における受光面6の反対側にある面7と接着層32を介して接着される。
図1には、太陽光発電装置1の四つの角部と各辺の中央に固定具4を設ける例を示しているが、固定具4の数や位置は図示例に限定されない。太陽光発電装置1を固定可能な限りにおいて、任意の複数の固定具4が任意の位置に設けられ得る。例えば
図6(A),
図6(B)に示すように、太陽光発電装置1の長手方向X及び幅方向Yに等しい間隔をあけて複数の固定具4が設けられてもよい。
【0065】
固定具4の材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂を用いて固定具4を形成することが好ましい。このようにすることで、万一、固定具4が飛散しても、固定具4による周辺部の損傷を抑制できる。固定具4を形成する樹脂として、例えば、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイドを使用できる。また繊維で強化された樹脂を用いて固定具4を形成してもよい。また対候性の観点から固定具4の色は黒であることが好ましい。
【0066】
(埋設部31)
埋設部31は、露出部30の重心から下側に延びるものであって、固定対象3(地盤)に埋設される。本実施形態では、埋設部31は円柱状を呈しているが、固定対象3への埋設ができれば埋設部31の形状は特に限定されない。例えば埋設部31は角柱状とされてもよい。
【0067】
また
図4(A),
図4(B)に示すように、埋設部31は、露出部30から延びる円柱状又は板状の本体部33と、本体部33の外周面から環状に突出する一又は複数の突出部34と備えていてもよい。
図4(A)に示すように複数の突出部34が埋設部31に設けられる場合には、複数の突出部34は本体部33の長手方向に間隔をあけて設けられる。
図4(B)に示すように一の突出部34が設けられる場合には、例えば本体部33における露出部30と反対側の端部(本体部33の下端部)に突出部34が設けられる。また上記の突出部34を設ける場合には、露出部30側(上側)になるほど突出部34の外径を大きくすることが好ましい。このようにすることで、固定対象3への埋設部31の挿入の容易さと、固定対象3からの埋設部31の抜けにくさとを両立できる。
【0068】
また
図4(C)に示すように、埋設部31は、露出部30から延びる円柱状の本体部35と、本体部35の外周面に形成された螺旋状の螺子部36と備えていてもよい。この場合には、埋設部31を固定対象3にねじ込むことで、埋設部31が固定対象3に埋設される。
【0069】
また
図4(D),
図4(E),
図4(F),
図4(G)に示すように、埋設部31は、露出部30から延びる筒状の本体部37を備えていてもよい。このようにすれば、埋設部31が固定対象3に接触する面積を大きく確保できるので、固定具4によって太陽光発電装置1が固定対象3に固定される力を向上できる。
【0070】
また
図4(E)に示すように、埋設部31は、本体部37の内周面から環状に突出する一又は複数の突出部38をさらに備えていてもよい。また
図4(F)に示すように、埋設部31は、本体部37の外周面から環状に突出する一又は複数の突出部39を備えていてもよい。また
図4(G)に示すように、埋設部31は、本体部37の内周面及び外周面からそれぞれ環状に突出する一又は複数の突出部38,39を備えていてもよい。以上のようにすれば、固定具4によって太陽光発電装置1が固定される力をより一層向上できる。
【0071】
また本体部37の内周面に突出部38を設ける場合(
図4(E),
図4(G))には、露出部30側(上側)になるほど突出部38の内径が小さくなるように突出部38を設けることが好ましい。また本体部37の外周面に突出部39を設ける場合(
図4(F),
図4(G))には、露出部30側(上側)になるほど突出部39の外径が大きくなるように突出部39を設けることが好ましい。
【0072】
埋設部31の長さLは、特に限定されるものではないが、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは25mm以上であり、より好ましくは100mm以上である。また上記の埋設部31の長さLは、好ましくは500mm以下であり、より好ましくは200mm以下である。
【0073】
また露出部30から延びる埋設部31の部分は、延伸方向Jでその直径が変わらないように形成されていてもよいし、延伸方向Jで次第にその直径が変わるように形成されてもよい(例えば下端部が先細りとなるように形成されていてもよい)。上記の「露出部30から延びる埋設部31の部分」は、
図2の例における埋設部31の全部や、
図4(A),
図4(B),
図4(C),
図4(D),
図4(E),
図4(F),
図4(G)の例における本体部33,35,37に相当する。また上記の直径は、上記の「露出部30から延びる埋設部31の部分」が円柱状もしくは円筒状であれば、その直径もしくは外径を指し、上記の「露出部30から延びる埋設部31の部分」が円柱状もしくは円筒状でない場合は、上記の「露出部30から延びる埋設部31の部分」の横断面の外接円の直径を指す。上記の横断面は、埋設部31の延伸方向Jと直交する方向Kにおける断面を意味する。
【0074】
また露出部30から延びる埋設部31の部分の直径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは15mm以上である。また上記の露出部30から延びる埋設部31の部分の直径は、好ましくは200mm以下であり、より好ましくは150mm以下である。延伸方向Jで埋設部31の横断面が変わる場合は、上記の直径は、「露出部30から延びる埋設部31の部分」の最大直径を意味する。
【0075】
(露出部30)
露出部30は、太陽光発電装置1の面7をなすバックシート10の下面又は封止縁材14の下面と、接着層32を介して接着される。露出部30は、下端における直径が、上記の「埋設部30から延びる埋設部31の部分の直径」よりも大きなものである。
【0076】
なお本実施形態では、露出部30の横断面形状は円形を呈しているが(
図1,
図5(A))、接着層32によって露出部30を太陽光発電装置1に接着することができれば、露出部30の横断面形状は特に限定されない。例えば、露出部30の横断面形状は、六角形状(
図5(B))、角が尖った四角形(
図5(C))、角に丸みのある四角形(
図5(D))、十字状(
図5(E))、或いは卍字状(
図5(F))であってもよい。なお上記の露出部30の横断面形状とは、埋設部31の延伸方向Jと直交する方向Kにおける露出部30の断面の形状形状を意味する。
【0077】
太陽光発電装置1の面7に接着される露出部30の上端における直径は、特に限定されるものではないが、太陽光発電装置1の面7を広くしっかりと露出部30に接着する観点から、好ましくは30mm以上であり、より好ましくは50mm以上である。また上記の露出部30の上端における直径は、好ましくは500mm以下であり、より好ましくは200mm以下である。なお上記の「露出部30の上端における直径」は、露出部30の上端における横断面(すなわち露出部30の上面)の形状が円形状であれば当該横断面の直径を指し、露出部30の上端における横断面(すなわち露出部30の上面)が円形状でない場合は当該横断面の外接円の直径を指す。
【0078】
露出部30の上端における横断面(すなわち露出部30の上面)の面積は、特に限定されるものではないが、好ましく650mm2以上であり、より好ましくは2000mm2以上である。また、露出部30の上端における横断面(すなわち露出部30の上面)の面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは200,000mm2以下であり、より好ましくは20,000mm2以下である。
【0079】
上記の「露出部30の上端における直径」と上記の「露出部30から延びる埋設部31の部分の直径(埋設部31の延伸方向Jで直径が変わる場合は最大直径)」との比率は、特に限定されるものではないが、太陽光発電装置1の面7を広くしっかりと露出部30に接着するためには、上記の「露出部30の上端における直径」は、上記の「露出部30から延びる埋設部31の部分の直径」の1.1倍以上とすることが好ましく、1.8倍以上とすることがより好ましい。また、上記の「露出部30の上端における直径」は、上記の「押さえ部30から延びる埋設部31の部分の直径」の2.5倍以下とすることが好ましい。
【0080】
また太陽光発電装置1と露出部30との接着を安定して維持するために、太陽光発電装置1の面7の面積S1に対する各露出部30の上端における横断面(すなわち各露出部30の上面)の面積S2の比率(S2/S1×100%)を、0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは5%以上とし、且つ、太陽光発電装置1の面7の面積S1に対する「固定構造2に設けられる全ての露出部30の上端における横断面の面積S2の合計ΣS2」の比率(ΣS2/S1×100%)を、5%以上、より好ましくは10%、さらに好ましくは20%とすることが好ましい。
【0081】
また太陽光発電装置1と露出部30との接着を安定して維持するために、太陽光発電装置1の面7の面積S1から太陽光発電装置1の発電部11の面積S3の総和ΣS3を引いた面積S4(S4=S1-ΣS3)に対する、各露出部30の上端における横断面(すなわち各露出部30の上面)の面積S2の比率(S2/S4×100%)を、10%以上とすることが好ましく、50%以上とすることがより好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。なお必ずしも、比率(S2/S1×100%)及び比率(ΣS2/S1×100%)を上記の値に調整することと、比率(S2/S4×100%)を上記の値に調整することとを両立する必要はなく、いずれか一方のみの調整を行うようにしてもよい。
【0082】
(接着層32)
接着層32(
図2)は、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クロロプレンゴム、スチレン、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上を含む樹脂組成物から形成される。なお本発明は接着層32の材料を上記の樹脂組成物に限定するものではない。また接着層32は800cP以上の粘度を有することが好ましいが、接着層32の粘度は800cP未満であってもよい。
【0083】
(作用効果)
本実施形態によれば、固定具4の露出部30が、太陽光発電装置1における受光面6の反対側にある面7と接着されるため、固定具4が受光面6を介して発電部11に向かう光を遮るものにならない。したがって固定具4によって太陽光発電装置1の発電量が減少することを防止可能である。
【0084】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されず種々改変できる。以下、本発明の変形例を説明する。なお以下では上記実施形態に示す構成と対応する構成については、上記実施形態と同一の名称を使用して、上記実施形態と相違する点を説明し、上記実施形態と共通する点については説明を省略する。
【0085】
例えば本発明の固定構造は、
図7(A),
図7(B)に示すように変形されてもよい。
【0086】
図7(A),
図7(B)に示す固定構造40,41は、太陽光発電装置1が、発電シート5と、発電シート5よりも固定対象3(地盤)側に配置される繊維含有シート42とを備える。当該固定構造40,41では、繊維含有シート42によって受光面6の反対側にある太陽光発電装置1の面7が構成されており、当該太陽光発電装置1の面7と露出部30とが接着層32を介して接着されている。
【0087】
繊維含有シート42は、繊維を含有するシートである。繊維含有シート42として、繊維の周囲が樹脂で被覆された繊維強化シート、或いは不織布を使用できる。この場合、繊維含有シート42に含ませる繊維の材料として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリオレフィン、アスファルト、珪砂が使用される。繊維含有シート42の引張強度は1N/cm以上10000N/cm以下であることが好ましい。繊維含有シート42の厚さは、例えば、0.1mm以上100mm以下であることが好ましい。繊維含有シート42は、発電シート5のバックシート10(
図3(A))と接着層(図示せず)を介して接着される。当該接着層の材料として、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クロロプレンゴム、スチレン、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上を含む樹脂組成物を使用できる。上記の接着層の厚さは、例えば、0.1mm以上100mm以下であることが好ましい。また繊維含有シート42とバックシート10との接合を安定して維持する観点から、上記の接着層を介する繊維含有シート42とバックシート10のせん断剥離強度を0.1N/cm以上とすることが好ましい(上記のせん断剥離強度は、JIS K6850の方法によって計測される値である)。
【0088】
上記の固定構造40,41によれば、太陽光が繊維含有シート42によって遮られることで、草木が固定対象3(地盤)に生えてくることを防止できる。
【0089】
図7(B)に示す固定構造41では、埋設部31が、固定対象3(地盤)中に設けられるコンクリート43に埋め込まれる。
図7(B)に示す固定構造41によれば、埋設部31がコンクリート43に埋め込まれることで、固定対象3が軟弱地盤である場合でも、固定具4によって太陽光発電装置1を固定できる。なお固定構造41では、
図4(C)に示した螺子部36を備える固定具4を使用することが好ましい。この場合、コンクリート43に形成した螺子穴に固定具4をねじ込むことで、固定具4がコンクリート43に埋設される。
【0090】
なお上記実施形態に示した固定構造2(
図1,
図2,
図6)においても、上記の固定構造41(
図6(B))と同様に、埋設部31が、固定対象3(地盤)中に設けられるコンクリート43に埋設されてもよい。
【0091】
また本発明の固定構造が備える固定具は、上記の固定具4に限定されず、例えば、
図8~
図10に示すように変形され得る。
図8.
図9.
図10は、それぞれ変形例の固定具50.51.52を実施形態に示した固定構造2に適用する例を示しているが、変形例の固定具50.51.52は
図7(A),
図7(B)に示す固定構造40.41にも適用され得る。また固定具50.51.52も、固定具4と同様に、例えば、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂を用いて形成される。また対候性の観点から固定具50.51.52の色は黒であることが好ましい。
【0092】
図8,
図9に示す固定具50.51は、それぞれ、埋設部31の延伸方向Jと直交する方向Kにおける露出部30及び埋設部31の断面が同一の形状を呈する。
【0093】
図8に示す固定具50は、方向Kにおける露出部30及び埋設部31の断面が同一の円形を呈する。
図8は、太陽光発電装置1の四つの角部と各辺の中央に固定具50を設ける例を示しているが、固定具50の数や設置位置は図示例に限定されず、例えば太陽光発電装置1の長手方向X及び幅方向Yに等しい間隔をあけて複数の固定具50を設けてもよい。
【0094】
図9に示す固定具51は、方向Kにおける露出部30及び埋設部31の断面が矩形を呈する。
図9は、太陽光発電装置1の幅方向Yに延びる複数の固定具51が、太陽光発電装置1の長手方向Xに等しい間隔をあけて設けられる例を示しているが、太陽光発電装置1の長手方向Xに延びる固定具51を、太陽光発電装置1の幅方向Yに等しい間隔をあけて設けてもよい。
【0095】
図10に示す固定具52は、露出部30と、露出部30と一体に設けられる複数の埋設部31とを備える。固定具52の露出部30は、格子状を呈しており、接着層32を介して太陽光発電装置1の面7に接着される。固定具52の各埋設部31は、それぞれ、露出部30の格子の交点から延びており、固定対象3に埋設される。各埋設部31は、例えば、円柱状、板状、
図4(A),
図4(B),
図4(D),
図4(E),
図4(F),
図4(G)に示す埋設部31と同様の形状を呈する。
【0096】
また上記実施形態では、固定対象3が地盤である例を示したが、固定対象3を屋根材等の建造物としてもよい。上記の屋根材としては、例えば、折板屋根、スレート屋根、ルーフデッキ、瓦棒葺き、立平葺き等に用いられる屋根材が挙げられる。屋根は、縦葺きであってもよいし、横葺きであってもよい。上記の場合には、固定具は、建造物(固定対象3)に埋め込まれる埋設部と、太陽光発電装置1を建造物(固定対象3)側へ押し付ける面を有した露出部とを備えるものとされる。
【0097】
また上記実施形態では、太陽光発電装置1が、可撓性を有する発電シート5を備える例を示したが、太陽光発電装置1が備える発電シートは、従来のシリコン系パネルシートのように、硬くて可撓性を有しないパネルシートであってもよい。
【0098】
また固定具4,50,51.52が飛散した際に固定具4,50,51.52による周辺物の破損を防止する観点から、周辺物を破損させにくい材料である軽量な金属や多孔質な金属を用いて固定具4,50,51.52を形成してもよい。固定具4,50,51.52を形成する金属は、設置個所の安全基準によって適宜選定することができる。金属を選定することで,固定具4,50,51.52を小型化・薄肉化できるため、固定具4,50,51.52を樹脂単独で製造することに比べて、固定具4の軽量化・小型化が可能となる場合もある。
【0099】
金属を用いて固定具4,50,51.52を形成する場合には,固定具4,50,51.52そのものの強度及び対候性を向上することもできる。
【0100】
また固定具4,50,51.52の強度を向上させる別の手段として、固定具4,50,51.52の材料を、樹脂の中に強化繊維を含む複合強化材料とすることも挙げられる。
【0101】
上記の複合強化材に含まれる強化繊維の材質は、特に限定されず、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、金属繊維等が挙げられる。繊維の含有量は、体積中に5%以上であることが好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がより好ましい。これにより、固定具4,50,51.52を適切な強度とすることができる。一方、強化繊維の含有量を、体積中に80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下とすることで、成形性を付与することができる。なお、強化繊維の平均繊維長さは、露出部30の直径(延伸方向Jで露出部30の直径が変わる場合は最大直径)の100%以下、より好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下であるとよい。なお、露出部30の直径とは、露出部30の横断面が円形状であれば当該横断面の直径を指し、露出部30の横断面が円形状でない場合は当該横断面の外接円の直径を指す。
【0102】
また本発明の固定構造には、「受光面6を介して発電部11に向かう光」が遮られない限りにおいて、
図11及び
図12に示すように、太陽光発電装置1の枠部としてカバー部材60が設けられてもよい。
図11及び
図12は、それぞれカバー部材60を
図1及び
図2に示した固定構造2に適用する例を示しているが、カバー部材60は
図7~
図10に示す固定構造にも適用され得る。
【0103】
カバー部材60は、紫外線遮断性を有しており、幅一方側部61及び幅他方側部62が幅中間部63に対して逆側に折れ曲がった形状を呈する。当該カバー部材60は、幅一方側部61が太陽光発電装置1の外縁部64の表面に沿い、幅中間部63が太陽光発電装置1の外周縁65に沿い、幅他方側部62が太陽光発電装置1の外側にある固定対象3の表面66に沿うように設けられることで、太陽光発電装置1の外縁部64の上側と、太陽光発電装置1の外周縁65と固定対象3の表面66の間とを覆う。「太陽光発電装置の外縁部」とは、太陽光発電装置1の外周縁65から所定幅を有する太陽光発電装置1の部分を意味する。
【0104】
上記の太陽光発電システム600によれば、カバー部材60に「太陽光発電装置1の外縁部64の上側を覆う部分(幅一方側部61に相当)」が設けられていることで、カバー部材60と太陽光発電装置1の外周縁65との間に隙間(図示せず)が生じている場合でも(カバー部材60の幅中間部63が外周縁65に密着していない場合でも)、紫外線が接着層32に照射されることを防止できる。
【0105】
カバー部材60の材料は、紫外線の遮断性を有すれば、特に限定されないが、カバー部材60として、例えばアルミニウム等の金属からなるフレームを使用できる。カバー部材60が金属製のフレームとされる場合には、カバー部材60をボルトや接着剤等を用いて固定対象3の表面66に固定することが行われる。
【0106】
また
図12に示すように、太陽光発電装置1の全周がカバー部材60によって囲まれるように、カバー部材60を設けることが好ましい。このようにすれば接着層32の全部の劣化を防止することができる。なお太陽光発電装置1の全周をカバー部材60で囲むために、
図12に示すように太陽光発電装置1の各辺に対して直線状のカバー部材60を設けてもよく、或いは太陽光発電装置1の全周を囲む環状のカバー部材60を設けてもよい。なお本発明は、太陽光発電装置1の全周がカバー部材60に囲まれない場合(すなわち太陽光発電装置1の周囲の一部のみにカバー部材60を設ける場合)を除外するものではない。この場合でも、カバー部材60が設けられる箇所では、紫外線が接着層32に照射されることを防止できるので、接着層32の劣化を防止できる。
【0107】
カバー部材60は太陽光発電装置1を適度に押さえることが好ましく、カバー部材60と太陽光発電装置1間の接触圧力は0.5MPa以上,より好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは2.5MPa以上であり、25MPa以下、より好ましくは15MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下である。上記圧力は感圧紙等で計測してもよい。上記範囲とすることで、太陽光発電装置1の変形を阻害することなく、太陽光発電装置1の固定の補強及び風等による太陽光発電装置1の端部のバタつきを抑制することができる。
【0108】
太陽光発電装置1の端部からの止水性を向上させるという観点から、太陽光発電装置1が接触するカバー部材60の部分に連続的な凸部を設けてもよい。凸部により太陽光発電装置5の周辺部が圧縮されることで、圧縮による接触圧で太陽光発電装置1の止水性を向上させることができ、より長期間安定的に設置しておくことが可能となる。
【0109】
凸部による太陽光発電装置1の潰ししろは、太陽光発電装置1の厚みを100%としてときに、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上であり、25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。
【0110】
上記範囲とすることで、適切な止水性を向上させつつ、太陽光発電装置1の変形を阻害しない。
【0111】
また
図1~
図12に示す固定構造には、太陽光発電装置1を固定対象3側へ押し付ける押付面を有した押さえ部と、当該押さえ部と一体に設けられ、一部が固定対象3に埋設される埋設部とを備えた樹脂製の固定具が設けられてもよい。当該固定具を形成する樹脂として、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル、ABS、ポリプロピレン、PPS、ポリカーボネートを使用できる。
【0112】
また、本発明の固定構造には、太陽光発電装置の代わりに、光エネルギーを電力以外のエネルギーに変換する装置が設けられてもよい。この種の装置として、例えば光エネルギーを熱エネルギーに変換する光発熱シート(太陽光駆動型熱電変換デバイス)等があげられる。
【符号の説明】
【0113】
1 太陽光発電装置
2,40,41 固定構造
3 固定対象
4,50,51.52 固定具
6 受光面
7 受光面の反対側にある面
30 露出部
31 埋設部
32 接着層