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特開2024-46658含フッ素ジオキソランの製造方法及びその製造に有用な組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046658
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】含フッ素ジオキソランの製造方法及びその製造に有用な組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/14 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
C07D317/14 CSP
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007361
(22)【出願日】2024-01-22
(62)【分割の表示】P 2021143513の分割
【原出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠希
(72)【発明者】
【氏名】伊野 忠
(72)【発明者】
【氏名】篠木 紀之
(72)【発明者】
【氏名】南 史子
(72)【発明者】
【氏名】真利 大地
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2-(ジフルオロメチレン)構造を有する1,3-ジオキソラン化合物を製造する方法等を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物の製造方法であって、下記工程A、工程B、工程C、及び工程Dを含む製造方法等に関する。
式(2)で表される化合物を、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物等と反応させて、式(3)で表される化合物へ変換する、工程A。

[式中、R~Rは、フッ素原子等である。Xは、ヒドロキシ基等である。Mは、アルカリ金属原子等である。]
工程Aの反応生成物の水溶液のpHを7.0~11.0に調整する、工程B。
工程BにおけるpH測定結果に応じて、工程Aで得られる反応生成物、当該反応生成物に水を混合した液、又はpH調整液を濃縮して濃縮物を得る工程C。
工程Cで得られる濃縮物を加熱することにより式(3)で表される化合物を熱分解して、式(1)で表される化合物を生成する工程D。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、又はエーテル性酸素を含んでも良いC1-C7フルオロアルキル基である。]
で表される化合物の製造方法であって、
下記工程A、工程B、工程C、及び工程Dを含む製造方法。
(工程A)
式(2):
【化2】
[式中、Xは、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルコキシ基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物を、
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩、並びにアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の塩基と反応させて、
式(3):
【化3】
[式中、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物へ変換して、反応生成物を得る工程A。
(工程B)
工程Aで得られる反応生成物のpHを測定して、7.0~11.0の範囲内であれば当該反応生成物又は当該反応生成物に水を混合した液を次の工程に供し、7.0~11.0の範囲外であれば当該反応生成物のpHを7.0~11.0に調整したpH調整液を次の工程に供する工程B。
(工程C)
工程BにおけるpH測定結果に応じて、工程Aで得られる反応生成物、当該反応生成物に水を混合した液、又はpH調整液を濃縮して濃縮物を得る工程C。
(工程D)
工程Cで得られる濃縮物を加熱することにより式(3)で表される化合物を熱分解して、式(1)で表される化合物を生成する工程D。
【請求項2】
前記R~Rが、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C7アルキル基、又はパーフルオロC1-C7アルコキシ基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記Rがトリフルオロメチル基またはフッ素原子であり、R~Rがいずれもフッ素原子である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記Xが、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、トリフルオロメトキシ、又は2,2,2-トリフルオロエトキシである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、及びマグネシウムエトキシドからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程Bにおける7.0~11.0のpHの範囲が7.0~10.5である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程Bが、工程Aで得られる反応生成物のpHを測定し、当該反応生成物のpHを7.0~9.0に調整し、得られたpH調整液を次の工程に供する工程である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程C及び工程Dが同じ反応器内で連続して行われる、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
式(3):
【化4】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、又はエーテル性酸素を含んでもよいC1-C7フルオロアルキル基であり、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。]
で表される化合物、及び
式(4):
【化5】
[式中、Yは、水素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩、並びにアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の塩基
を含有する組成物であって、
当該組成物が、式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の水溶液であれば、そのpHが7.0~11.0の範囲内であり、非水溶液であればその組成物に水を添加した水溶液のpHが7.0~11.0の範囲内となる、組成物。
【請求項10】
前記R~Rが、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C7アルキル基、又はパーフルオロC1-C7アルコキシ基である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記Rがトリフルオロメチル基又はフッ素原子であり、R~Rがいずれもフッ素原子である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記Yが、水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、トリフルオロメチル、又は2,2,2-トリフルオロエチルである、請求項9~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、及びマグネシウムエトキシドからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項9~12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記水溶液のpHが7.0~10.5の範囲内である、請求項9~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記水溶液のpHが7.0~9.0の範囲内である、請求項9~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
当該組成物が、式(3)及び式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の非水溶液であり、水の含有量が組成物質量に対して3000ppm以下である、請求項9~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
水の含有量が組成物質量に対して1000ppm以下である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
水の含有量が組成物質量に対して100ppm以下である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
式(3):
【化6】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子又はエーテル性酸素を含んでもよいC1-C7フルオロアルキル基であり、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。]
で表される化合物、及び
式(4):
【化7】
[式中、Yは、水素原子又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに
水を含有する組成物であって、
水の含有量が、組成物質量に対して1ppm~400ppmである組成物。
【請求項20】
前記水の含有量が組成物質量に対して1ppm~200ppmである請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記水の含有量が組成物質量に対して1ppm~100ppmである請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記R~Rが、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C7アルキル基、又はパーフルオロC1-C7アルコキシ基である、請求項19~21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
前記Rがトリフルオロメチル基又はフッ素原子であり、R~Rがいずれもフッ素原子である、請求項19~21のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
前記Yが、水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、トリフルオロメチル、又は2,2,2-トリフルオロエチルである、請求項19~23のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素ジオキソランの製造方法及びその製造に有用な組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)のような2-(ジフルオロメチレン)構造を有する1,3-ジオキソラン化合物は光ファイバーを構成するフッ素樹脂の原料モノマー等として使用されている。このパーフルオロジオキソランを製造する方法としては、例えば、次式に示すような、パーフルオロ(-3,6-ビスメチル-1,4-ジオキサン-2-オンを原料とし、2-COF体、2-カルボン酸塩、2-メチレン体へ変換する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【化1】
【0003】
この方法では、フッ化カルボニル体に塩基を作用させてケン化してカルボン酸塩へ変換し、加熱によりこのカルボン酸塩を熱分解して目的のジフルオロメチレン体を生成させることが一般的に行われている。しかし、フッ化カルボニル体から得られるカルボン酸塩を熱分解する際にプロトン源である水が存在すると、目的のジフルオロメチレン体だけでなく、ジフルオロメチレン体中の二重結合にHFが付加したHF付加体(例えば次に示す2-ヒドロ-パーフルオロ(2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン)):
【化2】
も生成するため、目的物の収率が低下する。
【0004】
さらにこのHF付加体の沸点が目的のジフルオロメチレン体の沸点と近いため、蒸留によってHF付加体を目的のジフルオロメチレン体から分離することが容易ではない。
【0005】
このため、カルボン酸塩に共存する水の低減に注目されている。例えば、特許文献3には、次のように記載されている。
「本発明者らは、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)の製造方法について鋭意検討した結果、原料であるパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)およびその加水分解生成物の少なくともいずれか一方を、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンからなる群から選択される1種以上のカチオンを含む塩基性水溶液と反応させた後、生じたパーフルオロ(2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)カルボン酸アルカリ金属塩またはパーフルオロ(2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)カルボン酸アルカリ土類金属塩を含む液体を、分液操作により分取後、水の留去および水の吸着からなる群から選
択される水分含有率低減処理の1種以上を行い、その後に液相系での脱炭酸反応に用いることにより、分離困難な2-ヒドロ-パーフルオロ(2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン)の生成を抑制しながら高収率でパーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)が得られることを新たに見出した。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/166632号
【特許文献2】国際公開第2020/230822号
【特許文献3】国際公開第2020/095915号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、対応するカルボン酸塩から、2-(ジフルオロメチレン)構造を有する1,3-ジオキソラン化合物(例えば、2-(ジフルオロメチレン)-4,4,5-トリフルオロ-5-(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン)を製造する方法であって、HF付加体(例えば、2-ヒドロ-パーフルオロ(2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン))の副生が抑制された新たな方法の提供を一つの目的とする。
本開示は、HF付加体の副生が抑制された、2-(ジフルオロメチレン)構造を有する1,3-ジオキソラン化合物の製造に有用な、前記カルボン酸塩を含有する組成物の提供を一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、2-(ジフルオロメチレン)構造を有する1,3-ジオキソラン化合物の製造過程において、フッ化カルボニル体に塩基を作用させてケン化してカルボン酸塩へ変換して得られる生成物(当該生成物が非水溶液であれば当該生成物の水溶液)のpHが7.0~11.0の範囲内であると、又は当該生成物(当該生成物が非水溶液であれば当該生成物の水溶液)のpHが7.0~11.0の範囲外であればpHを7.0~11.0に調整することによって、その後のカルボン酸塩を熱分解によって、HF付加体の副生が抑制されて高純度の目的物が得られることを見出した。
【0009】
本開示は、次の態様を包含する。
項1.
式(1):
【化3】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、又はエーテル性酸素を含んでも良いC1-C7フルオロアルキル基である。]
で表される化合物の製造方法であって、
下記工程A、工程B、工程C、及び工程Dを含む製造方法。
(工程A)
式(2):
【化4】
[式中、Xは、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルコキシ基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物を、
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩、並びにアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の塩基と反応させて、
式(3):
【化5】
[式中、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物へ変換して、反応生成物を得る工程A。
(工程B)
工程Aで得られる反応生成物のpHを測定して、7.0~11.0の範囲内であれば当該反応生成物又は当該反応生成物に水を混合した液を次の工程に供し、7.0~11.0の範囲外であれば当該反応生成物のpHを7.0~11.0に調整したpH調整液を次の工程に供する工程B。
(工程C)
工程BにおけるpH測定結果に応じて、工程Aで得られる反応生成物、当該反応生成物に水を混合した液、又はpH調整液を濃縮して濃縮物を得る工程C。
(工程D)
工程Cで得られる濃縮物を加熱することにより式(3)で表される化合物を熱分解して、式(1)で表される化合物を生成する工程D。
項2.
前記R~Rが、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C7アルキル基、又はパーフルオロC1-C7アルコキシ基である、請求項1に記載の製造方法。
項3.
前記Rがトリフルオロメチル基またはフッ素原子であり、R~Rがいずれもフッ素原子である、請求項1に記載の製造方法。
項4.
前記Xが、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、トリフルオロメトキシ、又は2,2,2-トリフルオロエトキシである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
項5.
前記塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、及びマグネシウムエトキシドからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
項6.
前記工程Bにおける7.0~11.0のpHの範囲が7.0~10.5である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
項7.
前記工程Bが、工程Aで得られる反応生成物のpHを測定し、当該反応生成物のpHを7.0~9.0に調整し、得られたpH調整液を次の工程に供する工程である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
項8.
前記工程C及び工程Dが同じ反応器内で連続して行われる、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
項9.
式(3):
【化6】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、又はエーテル性酸素を含んでもよいC1-C7フルオロアルキル基であり、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。]
で表される化合物、及び
式(4):
【化7】
[式中、Yは、水素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩、並びにアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の塩基
を含有する組成物であって、
当該組成物が、式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の水溶液であれば、そのpHが7.0~11.0の範囲内であり、非水溶液であればその組成物に水を添加した水溶液のpHが7.0~11.0の範囲内となる、組成物。
項10.
前記R~Rが、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C7アルキル基、又はパーフルオロC1-C7アルコキシ基である、請求項9に記載の組成物。
項11.
前記Rがトリフルオロメチル基又はフッ素原子であり、R~Rがいずれもフッ素原子である、請求項9に記載の組成物。
項12.
前記Yが、水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、トリフルオロメチル、又は2,2,2-トリフルオロエチルである、請求項9~11のいずれかに記載の組
成物。
項13.
前記塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、及びマグネシウムエトキシドからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項9~12のいずれかに記載の組成物。
項14.
前記水溶液のpHが7.0~10.5の範囲内である、請求項9~13のいずれかに記載の組成物。
項15.
前記水溶液のpHが7.0~9.0の範囲内である、請求項9~13のいずれかに記載の組成物。
項16.
当該組成物が、式(3)及び式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の非水溶液であり、水の含有量が組成物質量に対して3000ppm以下である、請求項9~15のいずれかに記載の組成物。
項17.
水の含有量が組成物質量に対して1000ppm以下である、請求項16に記載の組成物。
項18.
水の含有量が組成物質量に対して100ppm以下である、請求項16に記載の組成物。項19.
式(3):
【化8】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子又はエーテル性酸素を含んでもよいC1-C7フルオロアルキル基であり、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。]
で表される化合物、及び
式(4):
【化9】
[式中、Yは、水素原子又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに
水を含有する組成物であって、
水の含有量が、組成物質量に対して1ppm~400ppmである組成物。
項20.
前記水の含有量が組成物質量に対して1ppm~200ppmである請求項19に記載の
組成物。
項21.
前記水の含有量が組成物質量に対して1ppm~100ppmである請求項19に記載の組成物。
項22.
前記R~Rが、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C7アルキル基、又はパーフルオロC1-C7アルコキシ基である、請求項19~21のいずれかに記載の組成物。
項23.
前記Rがトリフルオロメチル基又はフッ素原子であり、R~Rがいずれもフッ素原子である、請求項19~21のいずれかに記載の組成物。
項24.
前記Yが、水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、トリフルオロメチル、又は2,2,2-トリフルオロエチルである、請求項19~23のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、対応するカルボン酸塩を熱分解して2-(ジフルオロメチレン)構造を有する1,3-ジオキソラン化合物を製造する際に、副生物である2-ヒドロ-2-トリフルオロメチル体の生成を低減でき、高純度の目的物を製造できる。
本開示の組成物は、2-(ジフルオロメチレン)構造を有する1,3-ジオキソラン化合物の製造の原料として使用されると、副生物の生成を抑制することができ、2-(ジフルオロメチレン)構造を有する1,3-ジオキソラン化合物を高純度で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の前記概要は、本開示の各々の開示された実施形態または全ての実装を記述することを意図するものではない。
本開示の後記説明は、実例の実施形態をより具体的に例示する。
本開示のいくつかの箇所では、例示を通してガイダンスが提供され、及びこの例示は、様々な組み合わせにおいて使用できる。
それぞれの場合において、例示の群は、非排他的な、及び代表的な群として機能できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられる。
【0012】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
【0013】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0014】
特に断りのない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
【0015】
本明細書中、表記「Cn-Cm」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0016】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(例:n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(例:n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(例:n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル等の、直鎖又は分岐鎖状の、C1-C10(好ましくはC1-C7、より好ましくはC1-C6、より一層好ましくはC1-C4)、特に好ましくはC1-C3)のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル等の環状のC3-C10(例えば、C3-C6、C4-C6、C3-C5、C5-C6)のアルキル基が挙げられる。
【0017】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルコキシ基」は、RO-[当該式中、Rはアルキル基(例:C1-C10アルキル基)である。]で表される基であることができる。
アルコキシ基の例は、メチル、エチル、プロピル(例:n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(例:n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(例:n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル等の、直鎖又は分岐鎖状の、C1-C10(好ましくはC1-C7、より好ましくはC1-C6、より一層好ましくはC1-C4)、特に好ましくはC1-C3)のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル等の環状のC3-C10(例えば、C3-C6、C4-C6、C3-C5、C5-C6)のアルキル基を包含する。
【0018】
本明細書中、特に断りのない限り、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基であり、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基も包含する。
フルオロアルキル基の炭素数は、例えば、1~10、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、又は1であることができる。
フルオロアルキル基の例は、1~3個のフッ素原子を有するメチル、1~5個のフッ素原子を有するエチル、1~7個のフッ素原子を有するプロピル(例:n-プロピル、イソプロピル)、1~9個のフッ素原子を有するブチル(例:n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、1~11個のフッ素原子を有するペンチル(例:n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル)、1~13個のフッ素原子を有するヘキシル、1~15個のフッ素原子を有するヘプチル、1~17個のフッ素原子を有するオクチル、1~19個のフッ素原子を有するノニル、1~21個のフッ素原子を有するデシル等の、直鎖又は分岐状の、C1-C10(好ましくはC1-C7、より好ましくはC1-C6、より一層好ましくはC1-C4、特に好ましくはC1-C3)のフルオロアルキル基(好ましくはパーフルオロアルキル基)を包含する。
フルオロアルキル基に含まれるフッ素原子の数は、1個~置換可能な最大個数であってよく、例えば1~21個、1~19個、1~17個、1~15個、1~13個、1~11個、1~9個、1~7個、1~5個、1~3個等とできる。
【0019】
本明細書中、特に断りのない限り、「フルオロアルコキシ基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基であり、アルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルコキシ基も包含する。
フルオロアルコキシ基の炭素数は、例えば、1~10、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、又は1であることができる。
フルオロアルコキシ基の例は、1~3個のフッ素原子を有するメトキシ、1~5個のフッ素原子を有するエトキシ、1~7個のフッ素原子を有するプロポキシ(例:n-プロポ
キシ、イソプロポキシ)、1~9個のフッ素原子を有するブトキシ(例:n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ)、1~11個のフッ素原子を有するペントキシ(例:n-ペントキシ、tert-ペントキシ、ネオペントキシ、イソペントキシ、sec-ペントキシ、3-ペントキシ)、1~13個のフッ素原子を有するヘキシルオキシ、1~15個のフッ素原子を有するヘプチルオキシ、1~17個のフッ素原子を有するオクチルオキシ、1~19個のフッ素原子を有するノニルオキシ、1~21個のフッ素原子を有するデシルオキシ等の、直鎖又は分岐状の、C1-C10(好ましくはC1-C7、より好ましくはC1-C6、より一層好ましくはC1-C4、特に好ましくはC1-C3)のフルオロアルコキシ基(好ましくはパーフルオロアルコキシ基)を包含する。
フルオロアルコキシ基に含まれるフッ素原子の数は、1個~置換可能な最大個数であってよく、例えば1~21個、1~19個、1~17個、1~15個、1~13個、1~11個、1~9個、1~7個、1~5個、1~3個等とできる。
【0020】
本明細書中、特に断りのない限り、「エーテル性酸素を含んでも良いC1-C7フルオロアルキル基」は、炭素数1~7の前述のフルオロアルキル基、及びエーテル性酸素を含むC1-C7フルオロアルキル基を包含する。また、「エーテル性酸素を含んでも良いC1-C7フルオロアルキル基」は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置換された、エーテル性酸素を含んでも良いパーフルオロC1-C7アルキル基を包含する。
エーテル性酸素を含むC1-C7フルオロアルキル基は、その末端に又は内部に、エーテル性酸素である「-O-」を有する、C1-C7フルオロアルキル基(好ましくはパーフルオロC1-Cアルキル基)を包含する。したがって、エーテル性酸素を含むC1-C7フルオロアルキル基は、C1-C7フルオロアルキル基の末端又は炭素-炭素結合間にエーテル性の酸素原子を有する基と称することもできる。トリフルオロメトキシ(CF-O-)は末端に「-O-」を有するフルオロアルキル基の一例であり、パーフルオロ(メトキシメチル)(CF-O-CF-)は構造の内部に「-O-」を有するフルオロアルキル基の一例である。
エーテル性酸素を含むC1-C7フルオロアルキル基に含まれるエーテル性酸素の数は1、2、3個等とできるが、1又は2個が好ましく、1個が好ましい。
エーテル性酸素を含むC1-C7フルオロアルキル基の炭素数は、1~7であり、好ましくはC1-C6、より好ましくはC1-C4、一層好ましくはC1-C3とできる。
【0021】
エーテル性酸素を含むC1-C7フルオロアルキル基は、C1-C7フルオロアルコキシ基、C1-C6フルオロアルコキシトリフルオロメチル基、C1-C5フルオロアルコキシペンタフルオロエチル基等を包含する。
【0022】
C1-C7フルオロアルコキシ基の例は、1~3個のフッ素原子を有するメトキシ、1~5個のフッ素原子を有するエトキシ、1~7個のフッ素原子を有するプロポキシ(例:n-プロポキシ、イソプロポキシ)、1~9個のフッ素原子を有するブトキシ(例:n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ)、1~11個のフッ素原子を有するペンチルオキシ(例:n-ペンチルオキシ、tert-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、sec-ペンチルオキシ、3-ペンチルオキシ)、1~13個のフッ素原子を有するヘキシルオキシ、1~15個のフッ素原子を有するヘプチルオキシ等を包含する。
【0023】
C1-C6フルオロアルコキシトリフルオロメチル基は、C1-C6フルオロアルコキシ-CF-である。C1-C6フルオロアルコキシの例は、前記の「フルオロアルコキシ基」の例に記載されている。
【0024】
C1-C5フルオロアルコキシペンタフルオロエチル基は、C1-C5フルオロアルコ
キシ-CF-である。C1-C5フルオロアルコキシの例は、前記の「フルオロアルコキシ基」の例に記載されている。
【0025】
本明細書中、特に断りのない限り、「一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基」は、C1-C3アルキル基、及び一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されたC1-C3アルキル基を包含する。換言すれば、「一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基」は、C1-C3アルキル基、及びC1-C3フルオロアルキル基を包含する。また、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されたC1-C3アルキル基は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロC1-C3アルキル基を包含する。
C1-C3アルキル基及びC1-C3フルオロアルキル基の例は、前記のアルキル基の例及び前記のフルオロアルキル基の例に記載されている。
【0026】
本明細書中、特に断りのない限り、「一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルコキシ基」は、C1-C3アルコキシ基、及び一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されたC1-C3アルコキシ基を包含する。換言すれば、「一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルコキシ基」は、C1-C3アルコキシ基、及びC1-C3フルオロアルコキシ基を包含する。また、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されたC1-C3アルコキシ基は、アルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロC1-C3アルコキシ基を包含する。
C1-C3アルコキシ基及びC1-C3フルオロアルコキシ基の例は、前記のアルコキシ基の例及び前記のフルオロアルコキシ基の例に記載されている。
【0027】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルカリ金属」の例は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムを包含し、好適な例は、リチウム、ナトリウム、カリウムを包含し、より好適な例は、ナトリウム、カリウムを包含する。
【0028】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルカリ土類金属」の例は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムを包含し、好適な例は、マグネシウム、カルシウムを包含する。
【0029】
式(1)で表される化合物の製造方法
本開示の一実施態様は、式(1):
【化10】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、又はエーテル性酸素を含んでも良いC1-C7フルオロアルキル基である。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(1)と称する場合がある。)の製造方法である。
当該製造方法は、工程A、工程B、工程C、及び工程Dを包含する。
工程Bを除いた、工程A、工程C、及び工程Dは、公知の方法で実施してもよく、例えば、特許文献1、特許文献2、特開2005-002014号公報、米国特許第3308107号明細書、又は米国特許第6664431号明細書に記載の方法に準じて実施してもよい。当該公報は、引用により本明細書に組み入れられる。
【0030】
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のC1-C7フルオロアルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のC1-C7フルオロアルキル基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のC1-C6フルオロアルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のC1-C6フルオロアルキル基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のC1-C5フルオロアルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のC1-C5フルオロアルキル基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のC1-C4フルオロアルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のC1-C4フルオロアルキル基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のC1-C3フルオロアルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のC1-C3フルオロアルキル基であることができる。
【0031】
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C7アルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C7アルキル基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C6アルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C6アルキル基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C5アルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C5アルキル基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C4アルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C4アルキル基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C3アルキル基、又はエーテル性酸素を含む直鎖状又は分岐状のパーフルオロC1-C3アルキル基であることができる。
【0032】
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C7アルキル基、又はパーフルオロC1-C7アルコキシ基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C6アルキル基、又はパーフルオロC1-C6アルコキシ基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C5アルキル基、又はパーフルオロC1-C5アルコキシ基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C4アルキル基、又はパーフルオロC1-C4アルコキシ基であることができる。
~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C3アルキル基、又はパーフルオロC1-C3アルコキシ基であることができる。
【0033】
~Rは、少なくとも1つの基がフッ素原子であり、残りの基は、当該残りの基が複数あるときは独立して、パーフルオロC1-C2アルキル基又はパーフルオロC1-C3アルコキシ基であってよい。
~Rは、少なくとも2つの基がフッ素原子であり、残りの基は、当該残りの基が複数あるときは独立して、パーフルオロC1-C2アルキル基又はパーフルオロC1-C3アルコキシ基であってよい。
~Rは、少なくとも3つの基がフッ素原子であり、残りの基は、パーフルオロC
1-C3アルキル基又はパーフルオロC1-C2アルコキシ基であってよい。
~Rは、少なくとも3つの基がフッ素原子であり、残りの基は、パーフルオロC1-C3アルキル基であってよい。
~Rは、全てフッ素原子であってよい。
がトリフルオロメチル基又はフッ素原子であり、R~Rがいずれもフッ素原子であってよい。
【0034】
化合物(1)の具体例は、パーフルオロ(2-メチレン-1,3-ジオキソラン)、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)、パーフルオロ(2-メチレン-4-エチル-1,3-ジオキソラン)、パーフルオロ(2-メチレン-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン)、パーフルオロ(2-メチレン-4,5-ジエチル-1,3-ジオキソラン)、パーフルオロ(2-メチレン-4-メトキシメチル-1,3-ジオキソラン)、パーフルオロ(2-メチレン-4-エトキシメチル-1,3-ジオキソラン)、2-(ジフルオロメチレン)-3a,4,4,6,6,6a-ヘキサフルオロテトラヒドロフロ[3,4-d][1,3]ジオキソール、2-(ジフルオロメチレン)-3a,4,4,5,5,6,6,7,7,7a-デカフルオロヘキサヒドロベンゾ[d] [1,3]ジオキソールを包含し、パーフルオロ(2-メチレン-1,3-ジオキソラン)、
パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)が好ましい。
【0035】
工程A
工程Aでは、式(2):
【化11】
[式中、Xは、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルコキシ基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(2)と称する場合がある。)を、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩、並びにアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の塩基と反応させて、
式(3):
【化12】
[式中、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(3)と称する場合がある。)へ変換して、反応生成物を得る。
【0036】
化合物(2)は、公知の化合物であり、例えば特許文献1又は2に記載された方法、又は当該方法を適宜改変することによって製造できる。
【0037】
Xは、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルコキシ基であることができる。Xは、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、トリフルオロメトキシ、又は2,2,2-トリフルオロエトキシであることができる。Xは、ヒドロキシ基、フッ素原子、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメトキシ、又は2,2,2-トリフルオロエトキシであることができる。
Xは、フッ素原子、塩素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルコキシ基であることができる。Xは、フッ素原子、塩素原子、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、トリフルオロメトキシ、又は2,2,2-トリフルオロエトキシであることができる。Xは、フッ素原子、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメトキシ、又は2,2,2-トリフルオロエトキシであることができる。Xは、フッ素原子、メトキシ、又はトリフルオロメトキシであることができる。
【0038】
化合物(2)の具体例は、パーフルオロ(2-ホルミル-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン)、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボニル クロライド、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 メチルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 エチルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 n-プロピルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 i-プロピルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 トリフルオロメチルエステル、及び4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 2,2,2-トリフルオロエチルエステルを包含する。
化合物(2)の好適な具体例は、パーフルオロ(2-ホルミル-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン)、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 メチルエステル、及び4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 トリフルオロメチルエステルを包含する。
【0039】
塩基は、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、及びアルコキシド、並びにアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、及びアルコキシドを包含し、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用されてもよい。
水酸化物の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び水酸化バリウムを包含する。
炭酸塩の例は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸水素リチウムを包含する。
アルコキシドの例は、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシウムメトキシド、及びカルシウムエトキシドを包含する。
【0040】
塩基は、好ましくは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カリウムエト
キシド、ナトリウムエトキシド、及びマグネシウムエトキシドからなる群より選択される少なくとも1種である。
塩基は、より好ましくは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0041】
化合物(3)は、工程Aで使用される塩基に対応した、化合物(2)のカルボン酸塩である。化合物(3)の具体例及び好適な具体例は、各々、前記化合物(2)の具体例及び好適な具体例に対応するカルボン酸塩である。
Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子であることができる。
Mは、アルカリ金属原子が好ましく、カリウム原子又はナトリウム原子がより好ましい。
Mは、工程Aにおいて使用される塩基に対応する基であることができる。したがって、塩基がカリウム塩であれば、Mはカリウム原子であることができる。
【0042】
工程Aは、溶媒の存在下、又は非存在下で実施してもよい。
溶媒としては、水又は有機溶媒を使用してもよい。溶媒は1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
有機溶媒の例は、アルキルアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、飽和炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、及びハロゲン化炭化水素系溶媒を包含する。
有機溶媒の好適な例は、アルキルアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、及びニトリル系溶媒を包含する。
【0044】
アルキルアルコール系溶媒の例は、直鎖又は分岐鎖状のC1-C10アルキルアルコールであり、好ましくは、直鎖又は分岐鎖状のC1-5アルキルアルコールであり、より好ましくは、直鎖又は分岐鎖状のC1-4アルキルアルコールであり、より一層好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、又はtert-ブチルアルコールであり、特に好ましくは、メタノール又はエタノールである。
【0045】
エーテル系溶媒の好適な具体例は、ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及び1,2-ジメトキシエタン、クラウンエーテルを包含する。
【0046】
芳香族系溶媒の好適な具体例は、ベンゼン、トルエン、及びキシレンを包含する。
飽和炭化水素系溶媒の好適な具体例は、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、及びn-ヘプタンを包含する。
ニトリル系溶媒の好適な具体例は、1,4-ジシアノブタン、アセトニトリル及びベンゾニトリルを包含する。
スルホキシド系溶媒の好適な具体例は、ジメチルスルホキシド及びスルホランを包含する。
ハロゲン化炭化水素系溶媒の好適な具体例は、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロベンゼン、及びクロロベンゼン、パーフルオロヘキサンを包含する。
【0047】
有機溶媒の好適な具体例は、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジシアノブタン、塩化メチレン、ク
ロロホルム、テトラヒドロフラン、パーフルオロヘキサン、及びアセトニトリルを包含する。
【0048】
工程Aに用いる塩基の量は、化合物(2)の1モルに対して、好ましくは、0.05~10モルの範囲内、より好ましくは0.1~10モルの範囲内、さらに好ましくは0.1~5モルの範囲内であってよい。
また、塩基の量は、工程Aで得られる反応生成物の水溶液のpHが所定の範囲(例えば7.0~11.0、好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)内となる量であってよい。そのような量である場合、次の工程Bにおいて、当該水溶液のpHを調整する作業を省略することができる。
【0049】
工程Aにおいて溶媒を使用する場合、その量は、技術常識等に基づき、溶媒として機能しえる量を採用すればよい。
【0050】
工程Aの反応温度は、好ましくは、-50~120℃の範囲内、より好ましくは、-20~100℃の範囲内、さらに好ましくは、-10~70℃の範囲内であってよい。
【0051】
工程Aの反応時間は、目的物質が生成する限り特に制限されないが、好ましくは、0.1時間~48時間の範囲内、より好ましくは、0.1時間~24時間の範囲内、さらに好ましくは0.1時間~12時間の範囲内であってよい。
【0052】
工程Aでは化合物(2)が化合物(3)へ変換され、化合物(3)を含有する反応生成物が得られる。
反応生成物は、水溶液または非水溶液であってよい。水溶液は化合物(3)の水溶液を包含する。非水溶液は、化合物(3)を含有する有機溶媒及び化合物(3)を含有する固形物を包含する。
工程Aにおいて溶媒として水又は水とその他の溶媒との混合溶媒を使用した場合、反応生成物は化合物(3)の水溶液として得られる。
工程Aにおいて溶媒として有機溶媒を使用した場合、反応生成物は化合物(3)を含有する有機溶媒として得られる。
工程Aにおいて溶媒を使用しない場合、反応生成物は化合物(3)を含有する固形物として得られる。
反応生成物は、次の工程Bに供される。
【0053】
工程B
工程Bは、工程Aで得られる反応生成物(反応生成物を濃縮したものであってもよい)を、次の工程Cの濃縮工程に供する前に、そのpHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)であるかをpH測定により確認し、そのpHが範囲外であるときはpHを調整してその範囲内とするための工程である。したがって、工程Aで得られる反応生成物のpHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)であるときは、その反応生成物のpHを調整しなくてもよい。
このため、工程Bでは、工程Aで得られる反応生成物(つまり、化合物(3)を含有する反応生成物)のpHを測定し、必要に応じて、pH7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)に調整する。
pHは、pH試験紙、pHメーター(例えば、HORIBA製 卓上型pH・水質分析
計 F-74)、又はpH指示薬を用いた滴定で特定される値であってよい。
工程Aで得られる反応生成物は液体でもよいし固形物でもよい。
測定されたpHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の範囲内である場合、工程Aで得られる反応生成物を工程BにおけるpH
測定後に工程Cへ供してもよいし、工程Aで得られる反応生成物に水を混合して得られる液(「水混合液」と称することがある。)を工程Cに供してもよい。当該反応生成物が固形物であり水に溶解する場合、水混合液は当該固形物の水溶液であってよい。
測定されたpHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の範囲外である場合、工程Aで得られる反応生成物のpHを7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の範囲内に調整した液(「pH調整液」と称することがある。)を工程Cに供することができる。
【0054】
pH測定について説明する。
工程Aで得られる反応生成物が化合物(3)の水溶液である場合、この水溶液の一部又は全部をpH測定に供することができる。
工程Aで得られる反応生成物が化合物(3)を含有する有機溶媒である場合、この有機溶媒の一部又は全部に水を混合した混合液をpH測定に供することができる。なお、混合液を静置すると水相と有機相とに分液するときは水相をpH測定に供することができる。
工程Aで得られる反応生成物が化合物(3)を含有する固形物である場合、この固形物の一部又は全部に水を混合して化合物(3)を溶解した液をpH測定に供することができる。
【0055】
pHの調整にはpH調整剤として公知の物質を使用することができる。pHの調整に使用される物質の例としては、酸としては、フッ化水素の水溶液、硫酸水溶液、塩化水素の水溶液、リン酸水溶液が挙げられ、塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシウムメトキシド、及びカルシウムエトキシドが挙げられ、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0056】
工程C
工程Cでは、工程BにおけるpH測定結果に応じて、工程Aで得られる反応生成物、当該反応生成物に水を混合した液(水混合液)、又はpH調整液が濃縮される。
【0057】
濃縮工程は、公知の濃縮方法に準じて実施できる。濃縮方法の例としては、減圧留去、乾燥、抽出、析出、蒸留、クロマトグラフィー処理等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。好ましい濃縮方法は、減圧留去、乾燥である。
濃縮の条件の例は、0~140℃での減圧留去、0~140℃での乾燥を包含する。
濃縮によって得られる濃縮物は液状、ゲル状、及び固体状であることができる。
濃縮工程では、化合物(3)濃度が、例えば99質量%以上になるまで濃縮する。
【0058】
工程D
工程Dでは、工程Cで得られる濃縮物を加熱する。濃縮物を加熱することにより濃縮物に含有される化合物(3)が脱炭酸されて化合物(1)が高純度で生成する。
【0059】
工程Dは、有機溶媒中で実施してもよいし、無溶媒で実施してもよい。有機溶媒としては、化合物(3)を脱炭酸できる溶媒であれば特に限定されない。有機溶媒は、化合物(3)の脱炭酸に使用され得ることが知られている溶媒であってよい。有機溶媒の例及び好適な例は、工程Aにおける有機溶媒のそれらと同じである。有機溶媒の好適な具体例は、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジシアノブタン、及びアセトニトリルを包含する。
【0060】
工程Dに用いる有機溶媒の量は、技術常識等に基づき、溶媒として機能しえる量を採用すればよい。
【0061】
工程Dの反応温度は、溶媒を含む場合は好ましくは、50~400℃の範囲内、より好ましくは、70~300℃の範囲内、さらに好ましくは、100~200℃の範囲内であってよい。溶媒を含まない場合は好ましくは、100~400℃の範囲内、より好ましくは、150~400℃の範囲内、さらに好ましくは、150~350℃の範囲内であってよい。
【0062】
工程Dの反応時間は化合物(1)が生成する限り特に制限されないが、好ましくは、0.1時間~48時間の範囲内、より好ましくは、0.1時間~24時間の範囲内、さらに好ましくは0.1時間~12時間の範囲内であってよい。
【0063】
工程Dの反応は、不活性ガス(例:窒素ガス)の存在下又は不存在下で実施され得、好適には不存在下で実施され得る。
【0064】
工程Dは、減圧下、大気圧下、又は加圧条件下にて実施され得る。
【0065】
工程Dで生成した化合物(1)は、所望により、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、蒸留、精留、クロマトグラフィー等の慣用の方法、又はこれらの組み合わせにより単離、又は精製できる。
【0066】
組成物(1)
本開示の一実施形態は、式(3):
【化13】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、又はエーテル性酸素を含んでもよいC1-C7フルオロアルキル基であり、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。]
で表される化合物、及び
式(4):
【化14】
[式中、Yは、水素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物(本明細書中、化合物(4)と称する場合がある。)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩、並びにアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の塩基を含有する組成物である。
【0067】
当該組成物は、水溶液または非水溶液であってよい。水溶液は化合物(3)及び(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の水溶液を包含する。非水溶液は、化合物(3)及び(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する有機溶媒、又は化合物(3)及び(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する固形物を包含する。
当該組成物が、水溶液であれば、そのpHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の範囲内であり、非水溶液であればその組成物に水を添加した水溶液のpHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の範囲内となる、組成物(本明細書中、組成物(1)と称する場合がある。)である。
【0068】
Yは、水素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基であることができる。
Yは、水素原子、C1-C3アルキル基、又はパーフルオロC1-C3アルキル基であることができる。
Yは、水素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されたC1-C3アルキル基であることができる。
Yは、水素原子、又はC1-C3アルキル基であることができる。
Yは、水素原子、又はパーフルオロC1-C3アルキル基であることができる。
【0069】
Yの例は、水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、パーフルオロn-プロピル、及びパーフルオロi-プロピルを包含する。
Yは、水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、トリフルオロメチル、又は2,2,2-トリフルオロエチルであってよい。
Yは、水素原子、メチル、エチル、又はトリフルオロメチルであってよい。
Yは、メチル、エチル、n-プロピル、又はi-プロピル、トリフルオロメチル、又は2,2,2-トリフルオロエチルであってよい。
【0070】
式(3)及び式(4)中のR~R及びMの詳細については、前記のこれらについての説明記載が適用される。
【0071】
化合物(4)の具体例は、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 メチルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 エチルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 n-プロピルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 i-プロピルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 トリフルオロメチルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 2,2,2-トリフルオロエチルエステルを包含する。
化合物(4)の好適な具体例は、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 メチルエステル、4,4,5-トリフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボン酸 トリフルオロメチルエステルを包含する。
【0072】
化合物(3)及び化合物(4)は前記工程Aによって生成するため、組成物(1)は、
前記工程Aで得られる反応生成物、この反応生成物の水混合液(例えば、この反応生成物の水溶液)、pH調整液等であることができる。したがって、この組成物は前記工程A、工程B等によって製造できる。また、この組成物は、化合物(3)及び化合物(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに前記塩基を混合することでも製造できる。
【0073】
組成物(1)は、前記工程Cにおいて濃縮の対象となり得る、工程Aで得られる反応生成物、当該反応生成物に水を混合した液、又は当該反応生成物のpHをpH7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)に調整したpH調整液であってもよい。
したがって、組成物(1)は、工程Aで得られる反応生成物のpHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の範囲内であるときは、工程Aで得られる反応生成物又は工程Aで得られる反応生成物に水を混合して得られる液であることができ、工程Aで得られる反応生成物の水溶液のpHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の範囲外であるときは、工程Aで得られる反応生成物のpHを7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の範囲内に調整した液であることができる。
【0074】
組成物(1)は、化合物(3)及び化合物(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、組成物(1)の質量に対して、例えば1~99.9質量%含有することができ、好適には10~99.9質量%、より好適には50~99.9質量%含有することができる。
【0075】
組成物(1)は、化合物(3)と化合物(4)を含有する場合、化合物(3)の含有割合は、化合物(3)及び化合物(4)の合計に対して、例えば0.1~99.9質量%とでき、好適には50~99.9質量%、より好適には75~99.9質量%とできる。
【0076】
組成物(1)は、塩基を、組成物(1)の質量に対して、例えば0.1ppm~500ppm含有することができ、好適には0.1ppm~100ppm、より好適には0.1ppm~50ppm含有することができる。
【0077】
組成物(1)が非水溶液である場合、組成物(1)は、少量の水を含有してもよい。組成物(1)は、水を、組成物(1)の質量に対して、例えば3000ppm以下で含有することができ、好適には1000ppm以下、より好適には100ppm以下で含有することができる。
組成物(1)が非水溶液であって水を含有する場合、組成物(1)は、水を、組成物(1)の質量に対して、例えば1ppm以上で含有することができ、好適には5ppm以上、より好適には10ppm以上で含有することができる。
組成物(1)に含有される水の量は、前記上限値及び下限値を適宜組み合わせた範囲内とでき、例えば1ppm~3000ppm、5ppm~3000ppm、10ppm~3000ppm、1ppm~1000ppm、5ppm~1000ppm、10ppm~1000ppm、1ppm~100ppm、5ppm~100ppm、10ppm~100ppmなどとできる。
【0078】
組成物(1)は、化合物(3)及び化合物(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに塩基に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、ハロゲン化水素のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、無機酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩等が挙げられる。組成物(1)は、他の成分を、組成物(1)の質量に対して、例えば0.1~30質量%含有することができる。
【0079】
組成物(1)を前記工程Cに供して濃縮し、濃縮物を前記工程Dで加熱することによって化合物(3)が脱炭酸されて、高純度の化合物(1)を生成する一方、副生物であり、化合物(1)との分離が容易ではないHF付加体の生成が低減される。これは、組成物(1)のpHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の範囲内であることによるものと推察される。組成物(1)は化合物(1)の供給源として有用である。
【0080】
組成物(2)
本開示の一実施形態は、式(3):
【化15】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、又はエーテル性酸素を含んでもよいC1-C7フルオロアルキル基であり、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。]
で表される化合物、及び
式(4):
【化16】
[式中、Yは、水素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに
水を含有する組成物であって、水の含有量が組成物質量に対して1ppm~400ppmである組成物(本明細書中、組成物(2)と称する場合がある。)である。
【0081】
式(3)及び式(4)中のR~R、M及びYの詳細については、前記のこれらについての説明記載が適用される。
【0082】
組成物(2)は、前記工程Cで得られる濃縮物等であることができる。したがって、組成物(2)は前記工程C等によって製造できる。この製造方法では、pHが7.0~11.0(好ましくは7.0~10.5、より好ましくは7.0~9.0)の組成物が濃縮されることで、濃縮後の水分含量を低減することができる。
また、組成物(2)は、化合物(3)及び化合物(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに水を混合して製造してもよい。
【0083】
組成物(2)は、化合物(3)及び化合物(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、組成物(2)の質量に対して、例えば1~99.9質量%含有することができ、好適には10~99.9質量%、より好適には50~99.9質量%含有することができる。
【0084】
組成物(2)は、化合物(3)と化合物(4)を含有する場合、化合物(3)の含有割
合は、化合物(3)及び化合物(4)の合計に対して、例えば0.1~99.9質量%とでき、好適には50~99.9質量%、より好適には75~99.9質量%とできる。
【0085】
組成物(2)は、水を、組成物(2)の質量に対して、例えば1ppm~400ppm含有することができ、好適には1ppm~200ppm、より好適には1ppm~100ppm、さらに好適には1ppm~50ppm含有することができる。
【0086】
組成物(2)は、化合物(3)及び化合物(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに水に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、ハロゲン化水素のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、無機酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩等が挙げられる。組成物(2)は、他の成分を、組成物(2)の質量に対して、例えば0.1~50質量%含有することができる。
【0087】
組成物(2)を前記工程Dに供して加熱することによって化合物(3)が脱炭酸されて、高純度の化合物(1)を生成する一方、副生物であり、化合物(1)との分離が容易ではないHF付加体の生成が低減される。これは、組成物(2)の水含有量が非常に小さいことによるものと推察される。組成物(2)は化合物(1)の供給源として有用である。
【0088】
組成物(1)及び(2)に含有される水分量はカールフィッシャー法(電量滴定法)で特定することができる。
【0089】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能であることが理解されるであろう。
【実施例0090】
以下、実施例等によって本開示の一実施態様を更に詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0091】
実施例等においてpH測定はHORIBA製 卓上型pH・水質分析計 F-74を使用して行い、水分量の測定はカールフィッシャー法(電量滴定法)で行い、組成物の質量に対する量として表した。
【0092】
実施例等中の記号及び略称は、以下の意味で用いられる。
GC:ガスクロマトグラフィー
化合物a~f:次式で表される化合物
【化17】
【0093】
製造例1:化合物a及びbの製造
特許文献1の実施例1及び2の記載に従って化合物aを含む租体を、特許文献1の実施例1~3の記載に従って化合物bを含む粗体を合成し、比較例及び実施例の原料として使用した。
【0094】
比較例1
化合物aを含む粗体7.2g(純度74%)を反応容器に加え、12.7gの炭酸カリウム、28gの1,2-ジメトキシエタンをさらに加えて60℃で2時間撹拌し反応液を得た。反応液を濾過、濃縮し、NMRで解析したところ7.2gの化合物eを含む濃縮物であった(収率46%)。その濃縮物の1gを水50gに溶解させてpHを測定したところ、pHは12.0であった。得られた濃縮物を反応器に加え、200℃で4時間、300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率55%(化合物c:化合物d=92:8(モル比))で得た。
【0095】
比較例2
化合物aを含む粗体12.1g(純度95%)を反応容器に加え、5.3gの炭酸カリウム、10gの水をさらに加えて0~10℃で3時間撹拌し反応液を得た。反応液を濾過、濃縮し、NMRで解析したところ13.0gの化合物eを含む濃縮物であった(収率98%)。その濃縮物の1gを水50gに溶解させてpHを測定したところ、pHは12.0であった。得られた濃縮物を反応器に加え、200℃で4時間、300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率63%(化合物c:化合物d=88:12(モル比))で得た。
【0096】
比較例3
化合物bを含む粗体41g(純度98%)を反応容器に加え、7.4gの水酸化カリウム、42gのメタノールをさらに加えて20℃で1時間撹拌し反応液を得た。反応液を濾過、濃縮し、NMRで解析したところ44.8gの化合物eを含む濃縮物であった(収率95%)。その濃縮物の1gを水50gに溶解させてpHを測定したところ、pHは13.6であった。得られた濃縮物を反応器に加え、200℃で4時間、300℃で1時間加
熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率72%(化合物c:化合物d=90:10(モル比))で得た。
【0097】
実施例1
化合物aを含む粗体7.2g(純度74%)を反応容器に加え、2.4gの炭酸カリウム、28gの1,2-ジメトキシエタンをさらに加えて60℃で2時間撹拌し反応液(組成物(1):化合物e、炭酸カリウム、KF、水(860ppm)を含む組成物)を得た。反応液を濾過、濃縮し、NMRで解析したところ3.1gの化合物eを含む濃縮物であった(収率51%)。その濃縮物の1gを水50gに溶解させてpHを測定したところ、pHは10.9であった。得られた濃縮物を反応器に加えて140℃で15時間真空乾燥し、高濃縮物(組成物(2):化合物e、炭酸カリウム、KF、水(92ppm)を含む組成物)となったことを確認してから300℃まで昇温し、さらに300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率78%(化合物c:化合物d=>99:<1(モル比))で得た。
【0098】
実施例2
化合物aを含む粗体7.2g(純度74%)を反応容器に加え、12.7gの炭酸カリウム、28gの1,2-ジメトキシエタンをさらに加えて60℃で2時間撹拌し反応液を得た。反応液を濾過し、反応液の1gを10gの水に入れ、激しく攪拌したのち静置し、水相のpHを確認したところpH12.0であった。前記反応液にフッ化水素酸を加えてpH7.7のpH調整液(組成物(1):化合物e、炭酸カリウム、KF、水を含む組成物)を調製した。pH調整液を濾過、濃縮して濃縮物を得た。得られた濃縮物をNMRで解析したところ2.7gの化合物eを含んでいた(収率44%)。得られた濃縮物を反応器に加えて140℃で15時間真空乾燥し、高濃縮物(組成物(2):化合物e、炭酸カリウム、KF、水(63ppm)を含む組成物)となったことを確認してから300℃まで昇温し、さらに300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率85%(化合物c:化合物d=>99:<1(モル比))で得た。
【0099】
実施例3
化合物aを含む粗体12.1g(純度95%)を反応容器に加え、5.2gの炭酸カリウム、10gの水をさらに加えて0~10℃で3時間撹拌し反応液(組成物(1):化合物e、炭酸カリウム、KF、水を含む組成物)を得た。反応液を濾過、濃縮し、NMRで解析したところ12.7gの化合物eを含む濃縮物であった(収率98%)。その濃縮物の1gを水50gに溶解させてpHを測定したところ、pHは9.6であった。得られた濃縮物を反応器に加えて140℃で15時間真空乾燥し、高濃縮物(組成物(2):化合物e、炭酸カリウム、KF、水(70ppm)を含む組成物)となったことを確認してから300℃まで昇温し、さらに300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率69%(化合物c:化合物d=>99:<1(モル比))で得た。
【0100】
実施例4
化合物aを含む粗体12.1g(純度95%)を反応容器に加え、6.2gの炭酸カリウム、10gの水をさらに加えて0~10℃で3時間撹拌し反応液を得た。反応液を濾過してpHを確認したところpH12.0であった。前記反応液にフッ化水素酸を加えてpH7.9のpH調整液(組成物(1):化合物e、炭酸カリウム、KF、水を含む組成物)を調製した。pH調整液を濾過、濃縮して濃縮物を得た。得られた濃縮物をNMRで解析したところ12.9gの化合物eを含んでいた(収率98%)。得られた濃縮物を反応器に加えて140℃で15時間真空乾燥し、高濃縮物(組成物(2):化合物e、炭酸カリウム、KF、水(97ppm)を含む組成物)となったことを確認してから300℃ま
で昇温し、さらに300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率70%(化合物c:化合物d=>99:<1(モル比))で得た。
【0101】
実施例5
化合物aを含む粗体12.1g(純度95%)を反応容器に加え、4.0gの炭酸ナトリウム、12gの水をさらに加えて0~10℃で3時間撹拌し反応液(組成物(1):化合物f、炭酸ナトリウム、NaF、水を含む組成物)を得た。反応液を濾過、濃縮し、NMRで解析したところ12.1gの化合物fを含む濃縮物であった(収率95%)。その濃縮物の1gを水50gに溶解させてpHを測定したところ、pHは9.9であった。得られた濃縮物を反応器に加えて140℃で15時間真空乾燥し、高濃縮物(組成物(2):化合物f、炭酸ナトリウム、NaF、水(87ppm)を含む組成物)となったことを確認してから300℃まで昇温し、さらに300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率73%(化合物c:化合物d=>99:<1(モル比))で得た。
【0102】
実施例6
化合物bを含む粗体41.0g(純度98%)を反応容器に加え、7.3gの水酸化カリウム、42gのメタノールをさらに加えて20℃で1時間撹拌し反応液(組成物(1):化合物b:1.6GC%、化合物e、水酸化カリウム、水(2022ppm)を含む組成物)を得た。反応液を濾過、濃縮し、NMRで解析したところ43.5gの化合物eを含む濃縮物であった(収率95%)。その濃縮物の1gを水50gに溶解させてpHを測定したところ、pHは10.1であった。得られた濃縮物を反応器に加えて140℃で15時間真空乾燥し、高濃縮物(組成物(2):化合物e、水酸化カリウム、水(121ppm)を含む組成物)となったことを確認してから300℃まで昇温し、さらに300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率78%(化合物c:化合物d=>99:<1(モル比))で得た。
【0103】
実施例7
化合物bを含む粗体41.0g(純度98%)を反応容器に加え、8.4gの水酸化カリウム、42gのメタノールをさらに加えて20℃で1時間撹拌し反応液を得た。反応液を濾過し、反応液の1gを10gの水に入れ、激しく攪拌したのち静置し、水相のpHを確認したところpH12.0であった。前記反応液にフッ化水素酸を加えてpH7.5のpH調整液(組成物(1):化合物b:2.0GC%、化合物e、水酸化カリウム、水)を調製した。pH調整液を濾過、濃縮して濃縮物を得た。得られた濃縮物をNMRで解析したところ43.0gの化合物eを含んでいた(収率95%)。得られた生成物を反応器に加えて140℃で15時間真空乾燥し、高濃縮物(組成物(2):化合物e、水酸化カリウム、水(54ppm)を含む組成物)となったことを確認してから300℃まで昇温し、さらに300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃トラップに回収し、NMR、GCで解析した結果、化合物cを含む生成物を収率80%(化合物c:化合物d=>99:<1(モル比))で得た。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3):
【化1】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、フッ素原子、又はエーテル性酸素を含んでもよいC1-C7フルオロアルキル基であり、Mは、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子である。]
で表される化合物、及び
式(4):
【化2】
[式中、Yは、水素原子、又は一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されてよいC1-C3アルキル基であり、R~Rは前記と同じ。]
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、並びに
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩、並びにアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の塩基
を含有する組成物であって、
当該組成物が、式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する有機溶媒又は固形物であり、その組成物に水を添加した水溶液のpHが7.0~11.0の範囲内となり、
当該組成物の水の含有量が組成物質量に対して1ppm~3000ppmである
組成物。
【請求項2】
前記R~Rが、それぞれ独立して、フッ素原子、パーフルオロC1-C7アルキル基、又はパーフルオロC1-C7アルコキシ基である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記Rがトリフルオロメチル基又はフッ素原子であり、R~Rがいずれもフッ素原子である、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記Yが、水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、トリフルオロメチル、又は2,2,2-トリフルオロエチルである、請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、及びマグネシウムエトキシドからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記水溶液のpHが7.0~10.5の範囲内である、請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記水溶液のpHが7.0~9.0の範囲内である、請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
水の含有量が組成物質量に対して1ppm~1000ppmである、請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
水の含有量が組成物質量に対して1ppm~100ppmである、請求項のいずれかに記載の組成物。