(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004666
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240110BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104389
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】江森 健太
(72)【発明者】
【氏名】新井田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 瑛美
(72)【発明者】
【氏名】山上 滋春
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA11
5E322BB02
5E322EA11
5E322FA09
5F136BA04
5F136CA01
5F136JA10
(57)【要約】
【課題】ヒートシンク自体を加工する必要がなく、汎用性が高い安価な冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明の冷却装置は、ベースプレートの一方の主面に複数のフィンが立設し、上記フィンの間に流路が形成されたヒートシンクと、板状の誘電体で隔てられた1対の電極がオフセットして配置され、上記誘電体の主面の面内方向に誘起流を発生させるプラズマアクチュエータと、を備える。
そして、上記プラズマアクチュエータが、上記ヒートシンクの流路方向端部の外側に隣接し、上記誘電体の主面と上記ベースプレート主面とが平行に配置されて上記誘起流を上記流路方向に発生させることとしたため、ヒートシンクの加工が不要であり、汎用性が高く安価な冷却装置を提供することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートの一方の主面に複数のフィンが立設し、上記フィンの間に流路が形成されたヒートシンクと、
板状の誘電体で隔てられた1対の電極がオフセットして配置され、上記誘電体の主面の面内方向に誘起流を発生させるプラズマアクチュエータと、
を備える冷却装置であって、
上記プラズマアクチュエータが、上記ヒートシンクの流路方向端部の外側に隣接し、上記誘電体の主面と上記ベースプレート主面とが平行に配置されて上記誘起流を上記流路方向に発生させることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
上記プラズマアクチュエータが、上記誘起流の流れ方向上流側に位置することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
上記誘起流が発生させる誘電体の主面と、ベースプレートの一方の主面とが面一であることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
流路方向に気流を発生させるファンを、さらに備えることを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
上記ファンが、ブロアファンであることを特徴とする請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
上記ファンが、上記プラズマアクチュエータを備えていることを特徴とする請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
上記ファンのフレームが誘電体であり、上記1対の電極が設けられて上記プラズマアクチュエータを構成していることを特徴とする請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
上記プラズマアクチュエータは、上記流路方向の電極間ギャップが、流路部分で狭くフィン部分で広いことを特徴とする請求項1~7のいずれか1つの項に記載の冷却装置。
【請求項9】
上記プラズマアクチュエータの一方の電極が、櫛歯形状であることを特徴とする請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
上記プラズマアクチュエータをバースト駆動することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項11】
上記フィンがストレートフィンであることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項12】
上記フィンのベースプレートとは反対側に蓋をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に係り、更に詳細には、ヒートシンクとプラズマアクチュエータとを備える冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバータ等の電力変換装置には、半導体、コンデンサ、コイルなど、発熱体となる電子部品が含まれており、これらの電子部品を冷却するためにヒートシンクが取り付けられる。
【0003】
近年、電力変換装置の小型化や大電力化が要求されており、電子部品を高密度に配置して小型化すると、電力変換装置内の発熱要素の密度が上昇し、加えて大電力化によって発熱要素の発熱量が増大するので、これらを冷却するヒートシンクの性能も向上させる必要がある。
【0004】
ヒートシンクの冷却性能は、一般的にその体積(熱容量)、材料(熱伝導率)、及び形状に応じた表面積(伝熱面積)に依存するため、ヒートシンクの冷却性能を向上させるためにヒートシンク自体を大型化すると、電力変換装置全体が大型化してしまうので、電力変換装置を小型化することは困難である。
【0005】
特許文献1には、ヒートシンクのフィンに電極を設けてプラズマアクチュエータとし、フィンの間に誘起流を発生させる冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却装置にあっては、フィンにプラズマアクチュエータの機能を持たせたものであり、ヒートシンク自体を加工しなければならず汎用性が低い。加えて、フィンの一部を絶縁体で覆う必要があり、放熱面積が減少してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヒートシンク自体を加工する必要がなく、汎用性が高い安価な冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、プラズマアクチュエータをヒートシンクの流路方向端部の外側に隣接して設けることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の冷却装置は、ベースプレートの一方の主面に複数のフィンが立設し、上記フィンの間に流路が形成されたヒートシンクと、板状の誘電体で隔てられた1対の電極がオフセットして配置され、上記誘電体の主面の面内方向に誘起流を発生させるプラズマアクチュエータと、を備える。
そして、上記プラズマアクチュエータが、上記ヒートシンクの流路方向端部の外側に隣接し、上記誘電体の主面と上記ベースプレート主面とが平行に配置されて上記誘起流を上記流路方向に発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラズマアクチュエータをヒートシンクの流路方向端部の外側に隣接して設けることとしたため、ヒートシンクの加工が不要であり、汎用性が高く安価な冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】プラズマアクチュエータの要部断面図である。
【
図2】本発明の冷却装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】ブロアファンを設けた本発明の冷却装置の一例を示す平面図である。
【
図5】櫛歯型の電極を設けたプラズマアクチュエータと、ヒートシンクのフィンとの位置関係の一例を示す平面図である。
【
図6】プラズマアクチュエータをバースト駆動したときの誘起流が渦を巻く状態を説明する断面図である。
【
図7】プラズマアクチュエータとヒートシンクとを複数設けたときの一例を示す断面図である。
【
図8】放射状のフィンを有するヒートシンクの中央にプラズマアクチュエータを備えるブロアファンを配置した冷却装置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の冷却装置について詳細に説明する。
本発明の冷却装置は、ヒートシンクとプラズマアクチュエータとを備える。
上記ヒートシンクは、ベースプレートの一方の主面に複数のフィンが立設してフィンの間に流路が形成されている。また、上記プラズマアクチュエータは、
図1に示すように、1対の電極が板状の誘電体で隔てられ、該誘電体の面内方向にオフセットして配置されており、バリア放電により上記誘電体の主面の面内方向に誘起流を発生させる。
【0014】
このプラズマアクチュエータは、
図2に示すように、上記誘電体の主面と上記ベースプレートの主面とが平行になるように、ヒートシンクの流路方向端部の外側に隣接して配置され、誘起流を上記流路方向に発生させる。なお、
図2中、X軸方向が流路方向であり、ベースプレートの他方の主面に発熱体(被冷却体)が当接している。
【0015】
本発明の冷却装置は、ヒートシンク自体にプラズマアクチュエータの機能を付与したヒートシンクとプラズマアクチュエータとが一体の冷却装置ではなく、ヒートシンクとプラズマアクチュエータとがそれぞれ別の部材であるので、ヒートシンクを加工する必要がなく、市販品を使用できるので汎用性が高い。
【0016】
また、本発明の冷却装置は、プラズマアクチュエータがヒートシンクの流路方向端部の外側に隣接して配置されており、誘電体の主面とベースプレートの主面とが平行であるので、プラズマアクチュエータが発生する誘起流によって、ヒートシンクのフィン間に形成された流路内に気流を流すことができる。
【0017】
プラズマアクチュエータは、誘起流の流れ方向上流側に設けても、下流側に設けてもよい。上流側に設けることで発生した誘起流を流路に流すことができ、下流側に設けることで誘起流によって空気を流路の反対側から流路内に引き込むことができるが、上流側に設けることで、誘起流をフィンやベースプレートに直接当てて冷却性能を向上させることができる。
【0018】
また、プラズマアクチュエータは、流路内に気流を流すことができればよく、
図2中、Z軸方向にベースプレートから離れて設けられていても構わないが、誘電体の主面と、ベースプレートの一方の主面とが面一であることが好ましい。
【0019】
ヒートシンクは、そのベースプレートに発熱体(被冷却体)が当接しており、ベースプレートが最も高温になる。誘電体の主面とベースプレートの一方の主面とが面一であることで、空気の粘性によってベースプレートの主面に沿って誘起流が流れるので冷却性能が向上し、さらに、ベースプレートの反対側(フィンの頂部)から流路外に気流が漏れにくくなって、冷却効率が向上する。
【0020】
本発明の冷却装置は、
図3,4に示すように、流路方向(X軸方向)に気流を発生させるファンを備えることができる。ファンで発生させた気流を、誘起流の流れ方向と同じ方向に流すことで、誘起流と相俟って流路内を流れる気流が増大し冷却効率をさらに向上させることができる。
【0021】
すなわち、ファンで発生させた気流は、下流側に向かうにつれて気流の流速が遅くなるだけでなく、ベースプレートの表面に流速が遅い境界層が形成されるので、ファンで気流を送ったとしても、ベースプレートの表面近傍では気流の流れが遅くなり、ベースプレートから気体への熱伝導が低下してしまう。
【0022】
本発明の冷却装置は、上記のように、プラズマアクチュエータの誘起流が空気の粘性によってベースプレートの主面に沿って流れてベースプレートから気体に伝熱するので、最も高温になるベースプレートからの放熱が効率よく行われる。またファンで発生させた気流によってフィンからの放熱が促進されるので、プラズマアクチュエータとファンとが相俟って冷却効率が飛躍的に向上する。なお、
図3、5はベースプレート、
図4、6,7はフィンを省略している。
【0023】
上記ファンは、軸流ファンであってもよいが、ブロアファン(遠心ファン)であることが好ましい。
【0024】
軸流ファンは、ファンの回転軸方向と吐出し方向とが同方向で、吐き出される空気の形状が略円筒形であるので、ベースプレートの流路方向と直交する方向(Y軸方向)端部のベースプレートの表面近傍にも気流を流すためには、ノズルなどによって気流を整流する必要がある。
【0025】
これに対しブロアファンは、軸流ファンと異なり、
図4に示すように、ファンの回転軸方向、すなわち空気の吸込み方向と吐出し方向とが直交しており、ベースプレートの流路方向と直交する方向(Y軸方向)に気流が均等に吐き出され、流路方向と直交する方向(Y軸方向)全域に亘って、ベースプレートの表面近傍に気流を流すことができるので冷却性能を向上させることができる。
【0026】
上記ファンは、上記プラズマアクチュエータを備えていることが好ましい。ファンがプラズマアクチュエータを備えていることで、プラズマアクチュエータの設置スペースをファンとは別に設ける必要がなくなるので、小型化と冷却性能の向上とを両立させることができる。
【0027】
上記ブロアファンは、上記のように、空気の吐き出し方向がファンの回転軸方向と直交しているので、ファンの回転軸を、該軸方向と直交する面を有するフレームで支持することができる。したがって、ベースプレートに対してフレームを平行に設置することができる。
【0028】
このフレームを誘電体で形成し、これに1対の電極を設けてプラズマアクチュエータとし、
図4に示すようにファンとプラズマアクチュエータとを一体化することで、ブロアファンとは別にプラズマアクチュエータを設ける場合に比して、省スペース化を図ることが可能である。
【0029】
上記プラズマアクチュエータの流路方向の電極間ギャップは、
図5に示すように、流路部分が狭くフィン部分が広いことか好ましい。誘起流を発生させる放電は、電極間ギャップが狭い箇所で起こりやすく、電極間ギャップが広い箇所では生じ難い。
【0030】
電極間ギャップが流路部分で狭くフィン部分で広いことことで、誘起流を流路部分に選択的に発生させ、誘起流がフィンに当たることで生じる圧力損失を低減でき、誘起流が効率よく流路を流れるようになるので、冷却性能を向上させることができる。
【0031】
上記電極間ギャップは、一方の電極を線状とし、他方の電極を櫛歯状とし、櫛歯型の電極の歯先を線状の電極に向けて配置することで形成できる。このような電極は、櫛歯型の電極の目(歯と歯との間隔)を調節することで、誘起流を発生させる箇所や発生させない箇所を設計することができ、冷却性能向上に繋がらない不要な電力消費を低減することができる。
【0032】
上記プラズマアクチュエータは、バースト駆動することが好ましい。バースト駆動は、電極間に印加する交流電圧のOnとOffを周期的に切り替える駆動方法である。
【0033】
電極間に印加する電界を周期的にOn・Offすることで、Onのときに誘起流が発生しOffのときに止まるので、誘起流の流れ方向で圧力差が生じ、
図6に示すように、誘起流とは逆向きの流れが生じて渦が発生する。この渦の発生により熱伝達が向上し、冷却性能を向上させることができる。
【0034】
上記ヒートシンクは、ベースプレートに立設するフィンがストレートフィンであることが好ましい。フィンが平板状であると、誘起流がフィンに沿って流れるので、圧力損失を低減しながら表面積を増大させて冷却性能を向上させることができる。
【0035】
また、上記ヒートシンクは、フィンのベースプレートとは反対側(頂部)に蓋を備えることが好ましい。フィンの頂部に蓋が設けられていることで、流路を流れる気流の漏れを防ぎ、流路内を流れる気流が流路の出口まで流れるようになるので、冷却性能が向上する。
【0036】
(変形例)
本発明の冷却装置のヒートシンク、プラズマアクチュエータ及びファンの数は、それぞれ1つに限られず、ヒートシンクやプラズマアクチュエータを複数設け、
図7に示すように、中央に配置したファンの両側に、直線状や十字型にプラズマアクチュエータとヒートシンクとを設けることもできる。
【0037】
また、
図8に示すように、放射状にストレートフィンが延びるヒートシンクの中心にブロアファンを配置し、ブロアファンの上面化や吸い込んだ空気をベースプレートの面内方向に放射状に吐き出させてもよい。
【0038】
この場合、プラズマアクチュエータをブロアファンのフレームに設けることは、
図3,
図4と同様であるが、プラズマアクチュエータの電極をファンの外周に沿って円形に設ける。
【0039】
電極が円形のプラズマアクチュエータは、ブロアファンが発生する気流と同様に誘起流を放射状に発生させ、ブロアファンが発生する気流をプラズマアクチュエータが吸い込み、加速された誘起流を発生させるので、冷却性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ヒートシンク
11 ベースプレート
12 フィン
13 流路
14 蓋
2 プラズマアクチュエータ
21 誘電体
22a 高電圧電極
22b GND電極
23 プラズマ
24 誘起流
25 交流電源
3 ファン
31 羽根
32 回転軸(モータ)
33 フレーム
34 吸い込み気流
35 吐き出し気流
4 発熱体(被冷却体)