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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046668
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 47/02 20060101AFI20240327BHJP
   F16K 47/12 20060101ALI20240327BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20240327BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F16K47/02 D
F16K47/12
F16K31/04 Z
F16K1/42 G
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016064
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2021155611の分割
【原出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪野 泰利
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しつつ、騒音をさらに低減できる電動弁を提供する。
【解決手段】電動弁は、弁室を備えた弁本体と、前記弁本体に設けられ、弁座を備えた弁座部材と、前記弁室内に配置され、前記弁座に接近又は離間する方向に昇降可能な弁体と、を有し、前記弁座部材は、配管に接続可能であり、前記弁座に隣接するオリフィス部と、前記オリフィス部に繋がる整流孔とを備え、前記整流孔の中心軸線は、前記オリフィス部の軸線に対し非平行であり且つ交差することなく、前記オリフィス部の内周面と、前記オリフィス部の軸線との間を通過し、前記整流孔の中心軸線を含み、前記オリフィス部の軸線に平行な面に、その法線方向に沿って前記オリフィス部の軸線を投影したときに、投影された前記オリフィス部の軸線に対し、前記整流孔の中心軸線が交差し、その交点を挟んで、前記弁座側に向かう投影された前記軸線と、前記整流孔の先端側に向かう前記中心軸線とは鈍角を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に設けられ、弁座を備えた弁座部材と、
前記弁室内に配置され、前記弁座に接近又は離間する方向に昇降可能な弁体と、を有し、
前記弁座部材は、前記弁座に隣接するオリフィス部と、前記オリフィス部に繋がる整流孔とを備え、
前記整流孔の中心軸線は、前記オリフィス部の軸線に対し非平行であり且つ交差することなく、前記オリフィス部の内周面と、前記オリフィス部の軸線との間を通過し、
前記整流孔の中心軸線を含み、前記オリフィス部の軸線に平行な面に、その法線方向に沿って前記オリフィス部の軸線を投影したときに、投影された前記オリフィス部の軸線に対し、前記整流孔の中心軸線が交差し、その交点を挟んで、前記弁座側に向かう投影された前記軸線と、前記整流孔の先端側に向かう前記中心軸線とは鈍角を形成する、
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記整流孔の中心軸線と、前記オリフィス部の軸線との最小距離は、前記整流孔の内径の0.3倍~0.7倍である、
ことを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項3】
前記整流孔は、前記オリフィス部から複数本に分岐する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁座部材は、前記オリフィス部を内部に形成するとともに、配管に嵌合する円筒部を備えている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記円筒部の端部に円錐台形部が形成されており、前記整流孔の外方端は、前記円錐台形部の外周面に位置する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電動弁。
【請求項6】
前記オリフィス部の内方端にテーパ状部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項7】
前記整流孔から前記弁座部材の外部へと延在する連通開口を有し、前記連通開口の内径は前記整流孔の内径より小さい、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項8】
前記整流孔の内方端にテーパ状部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項9】
前記オリフィス部は、前記弁座側から順に、第1孔と、前記第1孔より大径の第2孔とを有する、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項10】
前記オリフィス部は、前記弁座側から順に、第1孔と、前記第1孔より大径の第2孔と、前記第2孔より大径の第3孔とを有する、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項11】
前記オリフィス部の周方向に沿って、複数本の前記整流孔が形成されており、前記整流孔の一つは、周方向に隣接する他の前記整流孔に対して、前記オリフィス部の軸線方向に偏位している、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項12】
前記オリフィス部の軸線方向に沿って、複数本の前記整流孔が配列している、
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項13】
前記オリフィス部の内側に、旋回流発生構造を配設した、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の電動弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルにおいて流量制御弁として使用される電動弁は、モータにより回転駆動される弁軸の雄ねじ部を弁本体に設けられた雌ねじ孔に螺合させてなるねじ機構を有し、このねじ機構により回転運動を軸線方向運動に変換することによって、弁軸を軸線方向に変位させ、流量を制御している。
【0003】
例えば特許文献1には、絞り機能と気泡細分化機能を発揮する多数の小孔を備えた薄板部材(パンチングプレート)を本体に取り付けて、冷媒を通過させる電動弁が開示されている。かかる薄板部材によれば、二相流状態で通過する冷媒の整流機能、絞り機能、二相流状態の冷媒中の気泡を細分化する機能を発揮し、気泡に起因する冷媒通過音を効果的に低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-107623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷凍サイクルにおいて、冷媒は、一般的には気液二相流状態で配管から電動弁の弁本体に流入するため、本来的に気泡を含んでいる。また、冷媒がオリフィスを通過する際に圧力降下が生じて気泡が発生する。このような気泡が破裂する際に騒音を発生することとなる。
【0006】
特許文献1の電動弁によれば、気泡に起因する冷媒通過音を減少させることができるが、さらなる静穏化の余地がある。
【0007】
本発明者らは、特許文献1の電動弁において、オリフィスを通過した冷媒が、圧力回復の過程で薄板部材の小孔を通過し、より大径のパイプ内に進入する際に、乱流が発生して騒音が発生することを見出した。また、特許文献1の電動弁は薄板部材を必要とするため、部品点数が増加し、組み付けに手間がかかるという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、組付容易性を確保しつつ、騒音をさらに低減できる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電動弁は、
弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に設けられ、弁座を備えた弁座部材と、
前記弁室内に配置され、前記弁座に接近又は離間する方向に昇降可能な弁体と、を有し、
前記弁座部材は、前記弁座に隣接するオリフィス部と、前記オリフィス部に繋がる整流孔とを備え、
前記整流孔の中心軸線は、前記オリフィス部の軸線に対し非平行であり且つ交差することなく、前記オリフィス部の内周面と、前記オリフィス部の軸線との間を通過し、
前記整流孔の中心軸線を含み、前記オリフィス部の軸線に平行な面に、その法線方向に沿って前記オリフィス部の軸線を投影したときに、投影された前記オリフィス部の軸線に対し、前記整流孔の中心軸線が交差し、その交点を挟んで、前記弁座側に向かう投影された前記軸線と、前記整流孔の先端側に向かう前記中心軸線とは鈍角を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組付容易性を確保しつつ、騒音をさらに低減できる電動弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る弁座部材の縦断面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る弁座部材を下方向から見た斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る弁座部材の下面図である。
図5図5は、第2の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る弁座部材の下面図である。
図7図7は、第3の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図8図8は、第3の実施形態に係る弁座部材の下面図である。
図9図9は、第4の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図10図10は、第5の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図11図11は、第6の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図12図12は、第7の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図13図13は、第7の実施形態にかかる弁座部材の下面図である。
図14図14は、第8の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図15図15は、第8の実施形態にかかる弁座部材の下面図である。
図16図16は、第9の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図17図17は、第10の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図18図18は、第11の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図19図19は、第12の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図20図20は、第13の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図21図21は、第14の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図22図22は、第15の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図23図23は、第16の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図24図24は、第17の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
図25図25は、本実施形態の変形例に係る電動弁に用いることができる弁座部材と多孔質フィルタとを組み合わせた構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態について説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動弁1を示す縦断面図である。ここで、電動弁1におけるロータ側を上方といい、ニードル弁側を下方という。また、「オリフィス」とは、開弁時におけるニードル弁と弁座との隙間をいい、隙間が最小となる位置のニードル弁の外径と弁座の内径とで形成される環状面の面積が「オリフィス断面積」である。「オリフィス部」とは、弁座から下流側の部位であって整流孔との境界までの流路をいう。さらに「流路断面積」とは、冷媒が流れる方向に直交する流路の断面積をいう。
【0014】
(流量制御弁の構成)
電動弁1は、上端が開口した有底円筒状の弁本体10と、弁本体10の上端面に下端部が溶接等により密封接合された有頂円筒状のキャン45と、弁本体10の内側に固定されたガイドステム15と、ガイドステム15の内側に配設された弁軸21と、弁軸21に対し一体的に回動可能に連結固定されたロータ30と、を備えている。ロータ30の周囲には、ロータ30を回転駆動すべく、キャン45の外周に外嵌されたステータが配設されるが、ここでは図示を省略する。ロータ30とステータとで、ステッピングモータが構成される。電動弁1及びオリフィス部の軸線をLとする。
【0015】
弁本体10は、中空円筒部10aと底壁部10bとを連設してなる。弁本体10はSUS製の板材をプレス成形することによって形成できるが、SUS素材を圧造することによって形成してもよい。ただし、弁本体10は、SUS(ステンレス)以外の素材(例えば真鍮)を用いることができるし、プレス加工や圧造以外の加工方法(例えば削り出し加工)を用いても形成できる。
【0016】
底壁部10bにおいて、その中央に円形の開口10dが形成されており、開口10dには、弁座部材11がロウ付け等で固定されている。
【0017】
図2は、弁座部材11の縦断面図であり、図3は、弁座部材11を下方向から見た斜視図であり、図4は、弁座部材11の下面図である。なお、断面図において、実際に視認される断面構成とは異なる場合がある。
【0018】
略円筒状の弁座部材11は、上部円筒部11aと、上部円筒部11aより大径の中部円筒部11bと、中部円筒部11bより大径の下部円筒部11cと、中部円筒部11bと下部円筒部11cの境界付近から径方向内方へと延在する隔壁部11dと、隔壁部11dから下方に向かって延在する内側円筒部11eとを連設してなる。内側円筒部11eの下端は、円錐台形部11fを備える。
【0019】
中部円筒部11bが弁本体10の開口10dに嵌合し、上部円筒部11aは弁本体10の内部に突出し、下部円筒部11cは弁本体10の外部に配設される。また下部円筒部11cと、内側円筒部11eとの間には、環状空間SPが形成される。下部円筒部11cの下端内周側には、段部11gが形成されている。環状空間SP内に進入させた第一の配管T1(図1)の端部が、内側円筒部11eの外周に嵌挿され、ロウ付けなどにより接続される。段部11gは、配管T1をロウ付けする際に、ロウ材を貯留する部位となる。なお、本明細書において第一の配管T1を単に配管と呼称することがある。
【0020】
内側円筒部11eの上端から軸線Lに沿って下方に向かい、底壁11hまで延在する円筒孔11iが軸線Lと同軸に形成されている。円筒孔11iの下端外周から斜め外方に延在する整流孔11j1,11j2,11j3,11j4(図4参照)が、周方向に分岐して等間隔に複数本(ここでは4本)形成されており、各整流孔の外方端は、円錐台形部11fの外周面に位置する。なお、整流孔の数は、2,3本、または5本以上であってよい。単一の整流孔を有する実施形態以外の後述する実施形態においても、同様である。
【0021】
円筒形状の整流孔11j1,11j2,11j3,11j4は、下方に向かって傾斜しており、ここでは、弁座部材11に組付けた第一の配管T1の内壁を向いている。軸線Lに平行で、整流孔11j1,11j2,11j3,11j4の中心軸線X1、X2,X3,X4を含む面に対し、その法線方向に沿って軸線Lをそれぞれ投影すると、投影された軸線Lと中心軸線X1、X2,X3,X4とは直角以外の角度で交差する。その交点を挟んで、オリフィス側に向かう投影された軸線Lと、整流孔の先端側に向かう各中心軸線X1、X2,X3,X4とは鈍角を形成する。
【0022】
さらに、整流孔11j1,11j2,11j3,11j4の中心軸線X1、X2,X3,X4(図4)は、円筒孔11iに交差するが、軸線Lに対して、ねじれの関係にあり、すなわち軸線Lと空間的に交差しない。換言すれば、中心軸線X1、X2,X3,X4は、円筒孔11iの内周面と軸線Lとの間を通過する。ここで、中心軸線X1、X2,X3,X4と、軸線Lとの最小距離Δは互いに等しいが、異なっていてもよい。最小距離Δは、整流孔の内径をφとしたとき、0.3φ~0.7φの範囲であると好ましい。換言すれば、整流孔の中心軸線X1、X2,X3,X4と、オリフィス部の軸線Lとの最小距離Δは、整流孔の内径の0.3倍~0.7倍であると好ましい。最小距離Δが小さすぎれば、旋回流を生じさせる効果が小さく、最小距離Δが大きすぎれば、電動弁の大型化を招くからである。
【0023】
整流孔の数は、2本、3本あるいは5本以上であってもよいが、周方向に等間隔で配置されていると好ましい。円筒孔11iがオリフィス部を構成する。円筒孔11iの上端内周には、弁座11kが形成されている。整流孔11j1,11j2,11j3,11j4の長さ及び内径は、互いに等しく、またこれら整流孔は軸線Lに対して回転対称的に同じ関係を有する。そのため、4本の整流孔を代表して、整流孔11j1について構成を説明する。
【0024】
本実施形態において、整流孔11j1の長さは、整流孔11j1の内径より長く、また円筒孔11iの内周半径より長い。整流孔11j1の長さとは、軸線Lに平行で中心軸線X1を通る面で電動弁1を切断した断面において、整流孔11j1の内壁が中心軸線X1を挟んだ一対の線分として表され、該内壁の線分の一端同士を結ぶ直線と、他端同士を結ぶ直線に、整流孔11jの中心軸線Xが点PT1、PT2で交差したときに、2点PT1、PT2間の距離をいう。
【0025】
さらに、4本の整流孔11j1,11j2,11j3,11j4の流路断面積の合計は、ニードル弁(弁体)25の最大リフト時(最大開弁時)における円錐部25dと弁座11kとの間に形成される流路断面積(すなわちオリフィス断面積)よりも大きい。また、円筒孔11iの流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔11j1,11j2,11j3,11j4の流路断面積の合計は、円筒孔11iの流路断面積より大きいと好ましい。
【0026】
図1において、弁本体10の中空円筒部10aには、入口開口10eが形成されており、入口開口10eに第二の配管T2の端部が嵌挿され、ロウ付けなどにより接続されている。入口開口10eの軸線をOとする。
【0027】
弁本体10の上端にキャン45の下端が突き当てられた状態で、キャン45の下端内周に鍔状円盤18が嵌合しており、これらは溶接により接合されている。これにより、弁本体10とキャン45とが密閉した状態で一体化される。
【0028】
鍔状円盤18は、複数の貫通孔(不図示)を備えており、この貫通孔を介して、冷媒が弁本体10側とキャン45側との間で移動することが可能になる。
【0029】
ロータ30の内側に配設された樹脂製のガイドステム15は、中実円筒状の本体15aと、中空円筒部15bとを連設してなる。本体15aは、軸線Lに沿って雌ねじ孔15cを有する。またガイドステム15の上方に、閉弁方向用可動ストッパ35を設置している。
【0030】
中空円筒部15bの中間部外周には、弁本体10の上端に溶接された鍔状円盤18が配設されており、この鍔状円盤18を介して、ガイドステム15は弁本体10に対して固定される。中空円筒部15bには、均圧穴15dが形成されている。
【0031】
また、ロータ30及び弁軸21の制御用原点位置を設定すべく、ガイドステム15の本体15aの上面には、断面矩形状の閉弁方向用固定ストッパ55が上向きに突設されており、またガイドステム15の本体15aの下面には、断面矩形状の開弁方向用固定ストッパ56が下向きに突設されている。ここで、ロータ30及び弁軸21の制御用原点位置とは、閉弁方向用可動ストッパ35が閉弁方向用固定ストッパ55に当接して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達した時の位置のことである。
【0032】
金属製の弁軸21は、ロータ30に取り付けられた環状の連結体32が外嵌した端部21aと、雌ねじ孔15cに螺合する雄ねじ部21bと、下端近傍に形成された鍔状部21cと、下端連結部21dとを同軸に連設してなる。
【0033】
弁軸21に固定された閉弁方向用可動ストッパ35が、雄ねじ部21bの上端付近に配設され、ロータ30の上壁下面に係止されている。閉弁方向用可動ストッパ35の下面には、断面矩形状のストッパ部35aが形成されている。
【0034】
また、弁軸21の雄ねじ部21bの下端近傍には、鍔状部21cの上面に突き当てるようにして、開弁方向用可動ストッパ36が圧入により嵌合している。開弁方向用可動ストッパ36の上面には、断面矩形状のストッパ部36aが形成されている。ここでは、開弁方向用可動ストッパ36の内周に雌ねじを形成して、雄ねじ部21bと螺合させることにより、開弁方向用可動ストッパ36と弁軸21との固定を行っている。
【0035】
弁軸21の下方において、弁ホルダ23が、中空円筒部15bの内側に摺動可能に嵌合して配設されている。弁ホルダ23は、中空円筒部23aと、上壁23bとを連設した有頂円筒形状を有している。上壁23bの中央には、段付き開口23cが形成されており、中空円筒部23aは連通穴23dを有する。弁ホルダ23の中空円筒部23aの開放した下端は、閉弁状態で第二の配管T2より下方に配設され、カシメ固定された環状部材27により閉止されている。
【0036】
段付き開口23cの段部に弁軸21の鍔状部21cが当接した状態で、下端連結部21dが段付き開口23cを貫通しており、この下端連結部21dを拡径するようにカシメ加工することで、弁軸21と弁ホルダ23とが固定連結されている。弁本体10と弁ホルダ23との間に、弁室29が画成される。
【0037】
環状部材27を通して弁ホルダ23から突出するようにして、ニードル弁25が配置されている。ニードル弁25は、円柱状の軸部25aと、弁鍔部25bと、弁円筒部25cと、下方に向かうにしたがって縮径する円錐部25dと、複数の円錐形状を段階的に形成した先細部25eとを連設してなる。円錐部25dのテーパ角(軸線Lと交差する角度)は、円錐部25dに接する先細部25eのテーパ角よりも大きい。
【0038】
軸部25aの外周には、リング状部材31が圧入等により嵌合している。リング状部材31の外径は、環状部材27の内径より大きいため、弁ホルダ23からニードル弁25が脱落することが阻止される。リング状部材31と環状部材27との間には、ワッシャ28が配設されており、リング状部材31と環状部材27との相対回転時の摩擦を軽減する。
【0039】
弁ホルダ23の上壁23bと、ニードル弁25との間に、下端鍔部26aを有する円筒状のばね受け部材26が配設されている。さらに上壁23bと下端鍔部26aとの間には、コイルバネ24が配設され、弁ホルダ23に対してばね受け部材26を下方に向かって付勢している。
【0040】
円錐部25dが弁座部材11の弁座11kに着座して、上方に向かう反力を受けたときに、ニードル弁25により上向きに付勢されたばね受け部材26が弁ホルダ23の上壁23bの下面(または下端連結部21d)に当接することで、ニードル弁25は弁軸21に対して軸線方向に係止される。
【0041】
上記した弁軸21、弁ホルダ23、ニードル弁25、及びコイルバネ24は、ニードル弁25が弁座11kから離間している状態(開弁状態)においては、ガイドステム15に対して実質的に一体的に回転しながら昇降する。
【0042】
(流量制御弁の動作)
電動弁1の動作を、具体的に説明する。
ここで、第二の配管T2から弁室29内に冷媒(流体)が進入しているものとする。
【0043】
外部の制御装置から不図示のステータにパルス給電が行われることにより、ロータ30及び弁軸21が一方向に回転駆動され、雌ねじ孔15cと雄ねじ部21bからなるねじ送り機構により、弁軸21及び閉弁方向用可動ストッパ35が回転しながら下降し、ニードル弁25が弁座11kに着座してオリフィスが閉止される。これにより、弁室29から第一の配管T1側へ向かう冷媒の流れを遮断する。
【0044】
この時点では、可動ストッパ35は未だ固定ストッパ55に当接しておらず、ロータ30及び弁軸21の回転下降は停止されず、コイルバネ24が所定量圧縮されるまでパルス給電が継続される。それにより、ニードル弁25が弁座11kに着座したまま回転が制止される一方、ロータ30、弁軸21、弁ホルダ23等はさらに回転しながら下降する。
【0045】
このとき、着座したニードル弁25に対して弁軸21及び弁ホルダ23が下降するため、コイルバネ24が縮長圧縮され、これにより弁軸21及び弁ホルダ23の下降力が吸収される。その後、コイルバネ24の圧縮量が所定量となったとき、可動ストッパ35が固定ストッパ55に当接して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達し、ステータに対しパルス給電が継続されてもロータ30及び弁軸21の下降は強制的に停止される。
【0046】
このように、ニードル弁25が弁座11kに着座してオリフィスが閉止された後においても、可動ストッパ35が固定ストッパ55に当接して係止される制御用原点位置に達するまでは、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転下降が継続されることにより、コイルバネ24が圧縮される。そのため、コイルバネ24の付勢力によりニードル弁25が弁座11kに強く押し付けられ、冷媒漏れ等を確実に防止できる。
【0047】
一方、上記制御用原点位置からステータに、逆極性のパルス給電を行うと、ロータ30及び弁軸21が閉弁時とは逆方向に回転駆動され、雌ねじ孔15cと雄ねじ部21bからなるねじ送り機構により、ロータ30、弁軸21、弁ホルダ23及び開弁方向用可動ストッパ36が回転しながら上昇する。これに伴い、ニードル弁25に対する押圧力が弱められ、コイルバネ24が伸張して、ニードル弁25が弁座11kから離れると、オリフィスが開放される。これにより、第二の配管T2から弁室29内へと進入した冷媒は、円錐部25dと弁座11kとの間の隙間を通過して、円筒孔11iを通って第一の配管T1へと流れる。
【0048】
この場合、ステータへのパルス給電に応じてニードル弁25のリフト量が定まるため、冷媒の流量制御を行える。さらにパルス給電を続けることで、最終的にニードル弁25が全開状態となる。さらにパルス給電が継続された場合、可動ストッパ36が開弁方向用固定ストッパ56に当接して係止され、これにより、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転及び上昇が強制的に停止せしめられる。
【0049】
本実施形態によれば、開弁時に円錐部25dと弁座11kとの間の隙間を通過して、弁座部材11の円筒孔11iに進入した冷媒は、底壁11hに当接して流れの向きを変えられ、円筒状の整流孔11j1,11j2,11j3,11j4を介して弁座部材11の外部へと流出する。このとき、整流孔11j1,11j2,11j3,11j4の中心軸X1,X2,X3,X4と軸線Lはねじれの関係にあるため、円筒孔11i内の軸線L付近の冷媒よりも、円筒孔11iの内周面に近い側の冷媒の方が各整流孔に迅速に供給されることとなる。
【0050】
また、軸線Lに対し、整流孔11j1,11j2,11j3,11j4の中心軸線X1,X2,X3,X4は、同一の配置関係で円筒孔11iの内周側にずれているため、整流孔11j1,11j2,11j3,11j4からの排出により、円筒孔11iを通過する冷媒には、図2に矢印で示すように旋回流RFが生じる。
【0051】
開弁時に円錐部25dと弁座11kとの間のオリフィスを通過する冷媒は、気相液相混合の状態であることが多い。このような冷媒が狭いオリフィスを通過する際に、気液が交互に通過することに起因して音を発するが、円筒孔11i内に乱流が生じている場合、不規則な音の変化を招き、これをユーザーが騒音と認識する恐れがある。これに対し、本実施の形態によれば、円筒孔11i内に旋回流RFを創出することにより、多数の小さな渦が生じる乱流の発生を抑制し、円筒孔11i内を安定した状態を維持できる。そのため、気相液相状態の冷媒がオリフィスを通過する際の音を均等化させることができ、それによりユーザーが騒音と認識することを抑制できる。
【0052】
また、円筒孔11i内に旋回流RFが創出されると、遠心力で比重の大きな液相冷媒が外側に集まり、比重の小さい気相冷媒が中央側に集まりやすく、それにより冷媒をより安定した状態に維持することができる。
【0053】
さらに、円筒孔11i内に乱流が生じる場合と比較して、旋回流RFが創出されることにより、ニードル弁25に付与される圧力も安定し、ニードル弁25の振動や、振動に起因した異音を抑制できる。
【0054】
また、整流孔を設けた弁座部材11に整流効果を持たせることで、別個に整流部材を設ける必要がなくなり、部品点数が削減される。
【0055】
加えて、本実施形態によれば、オリフィス部である円筒孔11iを通過した冷媒を、整流孔11j1,11j2,11j3,11j4から第一の配管T1の内壁に衝突させるように流出させているため、冷媒の流速を強制的に低減し、乱流が発生する前に冷媒圧力を回復させることができる。これにより、騒音の原因となる気泡の発生を抑制できる。
【0056】
さらに、整流孔11j1,11j2,11j3,11j4から流出した冷媒も旋回流であるため、第一の配管T1の内壁に沿って旋回しながら下流側へと流れていく。このとき、遠心力で比重の大きな液相冷媒が第一の配管T1の内壁側に集まり、比重の小さい気相冷媒が第一の配管T1の中央側に集まりやすく、それにより冷媒をより安定した状態に維持することができ、旋回流のない場合と比べて異音を低減できる。
【0057】
なお、冷媒が第一の配管T1から第二の配管T2に向かって流れる場合、第一の配管T1から弁座部材11内に進入した冷媒は、整流孔11j1,11j2,11j3,11j4によって流れの向きを変えられて旋回流となり、軸線方向に沿ってストレートにオリフィスに向かわない。したがって、冷媒がオリフィスを通過する際に安定した状態となり、また流速の軸線方向成分が小さくなることにより、開弁時におけるニードル弁25の振動を抑制できる。
【0058】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Aの縦断面図である。図6は、第2の実施形態に係る弁座部材11Aの下面図である。弁座部材11A以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、整流孔以外の弁座部材11Aの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。以下の実施形態においても、第1の実施形態と同様にオリフィス部および整流孔の下流域に冷媒の旋回流を創出することができる。
【0059】
本実施形態の弁座部材11Aは、図4に示す弁座部材11に対して、整流孔を2本とした点が異なる。より具体的には、円筒孔11iの下端外周から斜め外方に延在する整流孔11Aj1,11Aj2が、周方向に分岐して対向する方向に2本形成されており、各整流孔の外方端は、円錐台形部11fの外周面に位置する。整流孔11Aj1,11Aj2の中心軸線X1、X2は、円筒孔11iに交差するが、軸線Lに対して、ねじれの関係にあり、すなわち軸線Lと空間的に交差しない。本実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0060】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Bの縦断面図である。図8は、第3の実施形態に係る弁座部材11Bの下面図である。弁座部材11B以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、整流孔以外の弁座部材11Bの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0061】
本実施形態の弁座部材11Bは、図4に示す弁座部材11に対して、整流孔を3本とした点が異なる。より具体的には、円筒孔11iの下端外周から斜め外方に延在する整流孔11Bj1,11Bj2、11Bj3が、周方向に分岐して等間隔で3本形成されており、各整流孔の外方端は、円錐台形部11fの外周面に位置する。整流孔11Bj1,11Bj2,11Bj3の中心軸線X1、X2、X3は、円筒孔11iに交差するが、軸線Lに対して、ねじれの関係にあり、すなわち軸線Lと空間的に交差しない。本実施形態においても、第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0062】
[第4の実施形態]
図9は、第4の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Cの縦断面図である。弁座部材11C以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Cの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、4本の整流孔の代表として、整流孔11Cj1の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0063】
本実施形態の弁座部材11Cは、図2に示す弁座部材11に対して、底壁11Chに、円筒孔11Ciの下端となるテーパ状部11Cmを形成した点が主として異なる。テーパ状部11Cmの一部に、整流孔11Cj1が接している。本実施形態においても、内側円筒部11Ceの下端に、円錐台形部11Cfが配設される。また整流孔11Cj1の中心軸線X1は、円筒孔11Ciに交差するが、軸線Lに対して、ねじれの関係にあり、すなわち軸線Lと空間的に交差しない。
【0064】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Ciに沿って流れてテーパ状部11Cmに至る。冷媒の少なくとも一部はテーパ状部11Cmで滞留した後、整流孔11Cj1に進入するため、冷媒圧力を回復させやすいという効果がある。また、冷媒がテーパ状部11Cmのエッジ部を通過する際に、気泡を分散化する効果もある。なお、テーパ状部11Cmは、例えばドリルなどの切削工具を用いて円筒孔11Ciを形成する際に、工具先端形状を転写することで形成できる。
【0065】
[第5の実施形態]
図10は、第5の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Dの縦断面図である。弁座部材11D以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Dの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、4本の整流孔の代表として、整流孔11Dj1の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0066】
本実施形態の弁座部材11Dは、図2に示す弁座部材11に対して、整流孔11Dj1の中間位置から、軸線Lに平行に底壁11Dhを貫通して、端部が円錐台形部11Dfの頂面(下面)に位置する連通開口11Dmを形成した点が主として異なる。連通開口11Dmの内径は、整流孔11Dj1の内径の1/4以下であると好ましい。本実施形態においても、内側円筒部11Deの下端は、円錐台形部11Dfを備える。また整流孔11Dj1の中心軸線X1は、円筒孔11Diに交差するが、軸線Lに対して、ねじれの関係にあり、すなわち軸線Lと空間的に交差しない。
【0067】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Diに沿って旋回しながら流れて底壁11Dhに至る。ここから、冷媒は整流孔11Dj1を通過して弁座部材11Dの外部へと流出するが、その際に第一の配管T1の内壁に衝突して渦を形成することがある。かかる渦が冷媒の圧力回復を妨げるおそれがある。
【0068】
これに対し、本実施形態によれば、冷媒が連通開口11Dmの上端を通過する際に連通開口11Dmの内部に負圧が発生するため、連通開口11Dmの下端から冷媒を吸い上げる。これにより、第一の配管T1の内壁に衝突して形成される渦を速やかに消失させることができる。
【0069】
[第6の実施形態]
図11は、第6の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Eの縦断面図である。弁座部材11E以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Eの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、4本の整流孔の代表として、整流孔11Ej1の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0070】
隔壁部11dから下方に向かって延在する内側円筒部11Eeは、隔壁部11d側の拡径部11Ee1と、拡径部11Ee1より外径が小さい先端側の縮径部11Ee2とからなる。第一の配管T1(図1)は、拡径部11Ee1にのみ嵌合する。
【0071】
内側円筒部11Eeの内部に形成された円筒孔11Eiの下端から、整流孔11Ej1が弁座11k側に向かって斜めに延在するように形成されている。整流孔11Ej1は、弁座部材11Eに組付けた第一の配管T1の内壁を向いている。すなわち整流孔11Ej1の中心軸線X1は第一の配管T1(図1参照)の内壁と交差するが、軸線Lとは交差しない。
【0072】
軸線Lに平行で、整流孔11Ej1の中心軸線X1を含む面に対し、その法線方向に沿って軸線Lを投影すると、投影された軸線Lと中心軸線X1とは直角以外の角度で交差する。その交点を挟んで、オリフィス側に向かう投影された軸線Lと、整流孔の先端側に向かう中心軸線X1とは鋭角を形成する。
【0073】
本実施形態においても、整流孔11Ej1の長さ(孔内壁の軸線方向最短長)は、整流孔11Ej1の内径より長く、また円筒孔11Eiの内周半径より長い。また、4本の整流孔の流路断面積の合計は、最大開弁時のオリフィス断面積よりも大きい。また、円筒孔11Eiの流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔の流路断面積の合計は、円筒孔11Eiの流路断面積より大きいと好ましい。
【0074】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Eiに沿って旋回しながら流れて底壁11Ehに至る。ここで、冷媒は流れの方向を鋭角に曲げられ、整流孔11Ej1を通過して弁座部材11Eの外部へと流出する。
【0075】
第一の配管T1と縮径部11Ee2との間には間隙があるため、縮径部11Ee2から流れ出る冷媒は、第一の配管T1の内壁に当たり、さらに第一の配管T1と縮径部11Ee2との間隙を通過して下方に向かう。このとき、第一の配管T1と縮径部11Ee2との間から流れ出る冷媒の流速は、最大開弁時のオリフィス断面積を通過する冷媒の流速よりも遅くなる。
【0076】
[第7の実施形態]
図12は、第7の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Fの縦断面図である。図13は、第7の実施形態にかかる弁座部材11Fの下面図である。弁座部材11F以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Fの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0077】
本実施形態の弁座部材11Fは、内側円筒部11Feおよび整流孔11Fjの形状が主として異なる。
【0078】
隔壁部11dから下方に向かって延在する内側円筒部11Feは、隔壁部11d側の拡径部11Fe1と、拡径部11Fe1より外径が小さい先端側の縮径部11Fe2とからなる。第一の配管T1(図1)は、拡径部11Fe1にのみ嵌合する。
【0079】
内側円筒部11Feの内部に形成された円筒孔11Fiの下端から、整流孔11Fjが径方向外方に延在するように形成されている。また整流孔11Fjの中心軸線X1は、円筒孔11Fiに交差するが、軸線Lに対して、ねじれの関係にあり、すなわち軸線Lと空間的に交差しない。軸線Lに平行で、整流孔11Fjの中心軸線X1を含む面に対し、その法線方向に沿って軸線Lを投影すると、投影された軸線Lと中心軸線X1とは直交する。整流孔11Fjは、弁座部材11Fに組付けた第一の配管T1の内壁を向いている。
【0080】
本実施形態においても、整流孔11Fjの長さは、整流孔11Fjの内径より長く、また円筒孔11Fiの内周半径より長いと好ましい。また、整流孔11Fjの流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積よりも大きい。また、円筒孔11Fiの最小流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔11Fjの流路断面積は、円筒孔11Fiの流路断面積より大きいと好ましい。
【0081】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Fiに沿って旋回しながら流れて底壁11Fhに至る。ここで、冷媒は流れの方向を略直角に曲げられ、整流孔11Fjを通過して弁座部材11Fの外部へと流出する。
【0082】
第一の配管T1と縮径部11Fe2との間には間隙があるため、縮径部11Fe2から流れ出る冷媒は、第一の配管T1の内壁に当たり、さらに第一の配管T1と縮径部11Fe2との間隙を通過して下方に向かう。このとき、第一の配管T1と縮径部11Fe2の間から流れ出る冷媒の流速は、最大開弁時のオリフィス断面積を通過する冷媒の流速よりも遅くなる。
【0083】
[第8の実施形態]
図14は、第8の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Gの縦断面図である。図15は、第8の実施形態にかかる弁座部材11Gの下面図である。弁座部材11G以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Gの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0084】
本実施形態の弁座部材11Gは、図12、13に示す弁座部材11Fに対して、整流孔11Gjの内方端部に、テーパ状部11Gmを形成した点が主として異なる。
【0085】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Giに沿って旋回しながら流れてテーパ状部11Gmに至る。冷媒の少なくとも一部はテーパ状部11Gmで滞留した後、整流孔11Gjに進入するため、冷媒圧力を回復させやすいという効果がある。また、冷媒がテーパ状部11Gmのエッジ部を通過する際に、気泡を分散化する効果もある。なお、テーパ状部11Gmは、例えばドリルなどの切削工具を用いて整流孔11Gjを形成する際に、工具先端形状を転写することで形成できる。
【0086】
[第9の実施形態]
図16は、第9の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Hの縦断面図である。弁座部材11H以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Hの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、4本の整流孔の代表として、整流孔11Hj1の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0087】
円筒孔11Hiは、弁座11kの下方に配設された第1孔11Hi1と、第1孔11Hi1より大径の第2孔11Hi2と、第2孔11Hi2より大径の第3孔11Hi3とを有する。第1孔11Hi1と第2孔11Hi2とは、第1テーパ部11Hi4により連結され、第2孔11Hi2と第3孔11Hi3とは、第2テーパ部11Hi5により連結されている。第3孔11Hi3(及び第2テーパ部11Hi5)の下端に、整流孔11Hj1が連通している。なお、円筒孔11Hiは、例えばシャンク径が刃先外径より小さいエンドミル工具などを用いて加工形成できる。また、第1孔11Hi1の流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔の流路断面積の合計は、第1孔11Hi1の流路断面積より大きいと好ましい。整流孔11Hj1の中心軸線X1は、円筒孔11Hiに交差するが、軸線Lに対して、ねじれの関係にあり、すなわち軸線Lと空間的に交差しない。
【0088】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、第1孔11Hi1と、第1テーパ部11Hi4と、第2孔11Hi2と、第2テーパ部11Hi5と、第3孔11Hi3に沿って旋回しながら流れて底壁11Hhに至る。このときオリフィスから底壁11Hhに至るまでに、流路断面積が三段階で拡大する。これにより冷媒圧力を徐々に回復させることができる。
【0089】
さらに、冷媒は、斜め下方を向いた整流孔11Hj1を通過して弁座部材11Hの外部へと流出して、第一の配管T1の内壁に当たることで、冷媒の流速を強制的に低減し、乱流が発生する前に冷媒圧力を回復させることができる。
【0090】
なお、4本の整流孔(11Hj1)の流路断面積の合計は、第1孔11Hi1の流路断面積より大きいと好ましい。さらに、4本の整流孔(11Hj1)の流路断面積の合計は第3孔11Hi3の流路断面積より小さいとより好ましい。
【0091】
[第10の実施形態]
図17は、第10の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Iの縦断面図である。弁座部材11I以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Iの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、4本の整流孔の代表として、整流孔11Ij1の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0092】
本実施形態においても、整流孔11Ij1の中心軸線X1は第一の配管T1(図1参照)の内壁と交差するが、軸線Lとは交差しない。
【0093】
円筒孔11Iiは、弁座11kの下方に配設された第1孔11Ii1と、第1孔11Ii1より大径の第2孔11Ii2とを有する。第1孔11Ii1と第2孔11Ii2とは、テーパ部11Ii3により連結される。第2孔11Ii2の下端に、整流孔11Ij1が連通している。なお、円筒孔11Iiは、例えばシャンク径が刃先外径より小さいエンドミル工具などを用いて加工形成できる。また、第1孔11Ii1の流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔の流路断面積の合計は、第1孔11Ii1の流路断面積より大きいと好ましい。
【0094】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、第1孔11Ii1と、テーパ部11Ii3と、第2孔11Ii2に沿って旋回しながら流れて底壁11Ihに至る。このときオリフィスから底壁11Ihに至るまでに、流路断面積が二段階で拡大する。これにより冷媒圧力を徐々に回復させることができる。
【0095】
さらに、冷媒は、斜め下方を向いた整流孔11Ij1を通過して弁座部材11Iの外部へと流出して、第一の配管T1の内壁に当たることで、冷媒の流速を強制的に低減し、乱流が発生する前に冷媒圧力を回復させることができる。
【0096】
[第11の実施形態]
図18は、第11の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Jの縦断面図である。弁座部材11J以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Jの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、4本の整流孔の代表として、整流孔11Jj1の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0097】
円筒孔11Jiは、弁座11kの下方に配設された第1孔11Ji1と、第1孔11Ji1より大径の第2孔11Ji2とを有する。第1孔11Ji1と第2孔11Ji2とは、テーパ部11Ji3により連結される。第2孔11Ji2の下端に、整流孔11Jj1が連通している。なお、円筒孔11Jiは、例えばシャンク径が刃先外径より小さいエンドミル工具などを用いて加工形成できる。また、第1孔11Ji1の流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔の流路断面積の合計は、第1孔11Ji1の流路断面積より大きいと好ましい。また整流孔11Jj1の中心軸線X1は、円筒孔11Jiに交差するが、軸線Lに対して、ねじれの関係にあり、すなわち軸線Lと空間的に交差しない。
【0098】
円筒孔11Jiの下端に繋がる中央孔11Jnは、円筒孔11Jiと同軸であり、円筒孔11Ji及び整流孔11Jj1の内径よりも小さい内径を有する。
【0099】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、第1孔11Ji1と、テーパ部11Ji3と、第2孔11Ji2に沿って旋回しながら流れて底壁11Jhに至る。このときオリフィスから底壁11Jhに至るまでに、流路断面積が二段階で拡大する。これにより冷媒圧力を徐々に回復させることができる。
【0100】
底壁11Jhに到達した冷媒の一部は、整流孔11Jj1を通過して弁座部材11Jの外部へと流出し、第一の配管T1に衝突するが、このとき渦が形成される場合がある。一方、底壁11Jhに到達した冷媒の残りは、ストレートに中央孔11Jnを通過して、弁座部材11Jの外部へと流出するが、それにより第一の配管T1の内壁に形成された渦を消失させる効果がある。このため、速やかな冷媒の圧力回復を図ることができる。
【0101】
[第12の実施形態]
図19は、第12の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Kの縦断面図である。弁座部材11K以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Kの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、4本の整流孔の代表として、整流孔11Kj1の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0102】
本実施形態においても、整流孔11Kj1の中心軸線X1は第一の配管T1(図1参照)の内壁と交差するが、軸線Lとは交差しない。
【0103】
本実施形態においては、円筒孔11Kiの下端と上端との間に整流孔11Kj1が連結している。これにより、円筒孔11Kiの下端には、整流孔11Kj1との連結部まで、冷媒の滞留部11Kpが底壁11Khに形成されることとなる。
【0104】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Kiに沿って旋回しながら流れて底壁11Khの滞留部11Kpに至る。ここで、冷媒の流れはUターンして、整流孔11Kj1を通過して弁座部材11Kの外部へと流出するため、その際に冷媒の圧力回復がなされ、気泡を減少させることができる。
【0105】
[第13の実施形態]
図20は、第13の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Lの縦断面図である。弁座部材11L以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Lの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、整流孔は4本(図では2本)配設されているものとする。
【0106】
本実施形態の弁座部材11Lが、第12の実施形態と異なる点は、整流孔11Lj1に対向する整流孔11Lj3の、円筒孔11Liへの接続位置を、軸線方向下方に距離σ、ずらしている(偏位させている)ことである。距離σは、整流孔の内径をφとしたときに、0.2φ~0.8φであると好ましい。これにより、円筒孔11Liを旋回しながら通過する冷媒の流速を減少させることができる。なお、各整流孔に対し、隣接する整流孔の円筒孔11Liへの接続位置を、等距離で軸線方向にずらしていってもよいし、あるいは2組の整流孔ずつ軸線方向にずらしてもよい。
【0107】
[第14の実施形態]
図21は、第14の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Mの縦断面図である。弁座部材11M以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Mの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、4本の整流孔の代表として、整流孔11Mj1の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0108】
本実施形態においても、整流孔11Mj1の中心軸線X1は第一の配管T1(図1参照)の内壁と交差するが、軸線Lとは交差しない。
【0109】
隔壁部11dから下方に向かって延在する内側円筒部11Meは、隔壁部11d側の拡径部11Me1と、拡径部11Me1より外径が小さい先端側の縮径部11Me2とからなる。縮径部11Me2の下端には、円錐台形部11Mfが形成されている。第一の配管T1(図1)は、拡径部11Me1にのみ嵌合する。
【0110】
内側円筒部11Meの内部に形成された円筒孔11Miの下端から、整流孔11Mj1が下方に向かって斜めに延在するように形成されている。また、整流孔11Mj1の中間位置から、隔壁部11d側に向かって斜めに延在する連通開口11Mnを形成している。連通開口11Mnの内径は、整流孔Mj1の内径の1/4以下であると好ましい。
【0111】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Miに沿って旋回しながら流れて底壁11Mhに至る。ここから、冷媒は整流孔11Mj1を通過して弁座部材11Mの外部へと流出するが、その際に第一の配管T1の内壁に衝突して渦を形成することがある。かかる渦が冷媒の圧力回復を妨げるおそれがある。
【0112】
これに対し、本実施形態によれば、冷媒が連通開口11Mnの下端を通過する際に連通開口11Mnの内部に負圧が発生するため、連通開口11Mnの上端から冷媒を吸い込む。これにより、第一の配管T1の内壁に衝突して形成される渦を速やかに消失させることができる。
【0113】
[第15の実施形態]
図22は、第15の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Nの縦断面図である。弁座部材11N以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Nの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態では、12本の整流孔の代表として、整流孔11Nj1,11Nj2,11Nj3の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0114】
本実施形態においては、第1の実施形態に対し、内側円筒部11Neが長く形成されている。内側円筒部11Neは、隔壁部11d側の拡径部11Ne1と、拡径部11Ne1より外径が小さい先端側の縮径部11Ne2とからなる。第一の配管T1(図1)は、拡径部11Ne1にのみ嵌合する。内側円筒部11Neには、整流孔11Nj1,11Nj2,11Nj3が軸線Lに沿った方向において、上下に重なる位置に一列に配置されている。その他の整流孔も、同様に3本ずつ3列に配置されている。整流孔11Nj1,11Nj2,11Nj3の中心軸線X1、X2,X3は、軸線Lに平行な同一面を通過し、第一の配管T1(図1参照)の内壁と交差するが、軸線Lとは交差しない。
【0115】
本実施形態においては、最も下方の整流孔11Nj3は、円筒孔11Niの下端より上方で円筒孔11Niに連結しているが、円筒孔11Niの下端に連結されていてもよい。
【0116】
本実施の形態によれば、3列に並んだ4組の整流孔を設けることにより、円筒孔11Niの内側にて、より強い旋回流を創出することができる。なお、任意数の列の任意数の組で整流孔を設けることができる。
【0117】
[第16の実施形態]
図23は、第16の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Oの縦断面図である。弁座部材11O以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Oの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態では、12本の整流孔の代表として、整流孔11Oj1,11Oj2,11Oj3、及び整流孔11Oj4,11Oj5,11Oj6の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0118】
本実施形態の弁座部材11Oが、第15の実施形態と異なる点は、整流孔11Oj1に対向する整流孔11Oj4の、円筒孔11Oiへの接続位置を、軸線方向下方に距離σずらし、整流孔11Oj2に対向する整流孔11Oj5の、円筒孔11Oiへの接続位置を、軸線方向下方に距離σずらし、整流孔11Oj3に対向する整流孔11Oj6の、円筒孔11Oiへの接続位置を、軸線方向下方に距離σずらしていることである。これにより、円筒孔11Oiを旋回しながら通過する冷媒の流速を減少させることができる。なお、各整流孔に対し、隣接する整流孔の円筒孔11Oiへの接続位置を、等量ずつ軸線方向にずらしてもよい。
【0119】
[第17の実施形態]
図24は、第17の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Pの縦断面図である。弁座部材11P以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。また、内側円筒部以外の弁座部材11Pの構成は、第1の実施形態にかかる弁座部材11と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。本実施形態でも、4本の整流孔の代表として、整流孔11Pj1の構成を説明するが、その他の整流孔も同様の構成を有する。
【0120】
本実施形態において、円筒孔11Piは、オリフィスに繋がる上部円筒孔11Pi1と、上部円筒孔11Pi1より小径の下部円筒孔11Pi2とを有する。下部円筒孔11Pi2の内周の少なくとも一部に、旋回流発生構造としての螺旋溝11Ppが形成されている。
【0121】
螺旋溝11Ppは、軸線Lと整流孔11Pj1との位置関係に応じて、螺旋方向が定まる。より具体的には、軸線Lと整流孔11Pj1とが、図4に示す位置関係にあるときは、円筒孔11Piに沿って流れる冷媒は、進行方向に沿って反時計回りに旋回する。この場合、螺旋溝11Ppは、冷媒の旋回流をより強くすべく、円筒孔11Piの下端に向かって左回りの螺旋方向を持つことが好ましい。なお、螺旋溝を内周に形成した円筒を、円筒孔11Piに嵌合させてもよい。
【0122】
[変形例]
図25は、本実施形態の変形例に係る電動弁に用いることができる弁座部材11と多孔質フィルタFTとを組み合わせた構成を示す図であり、左半部が縦断面図であって、右半部が側面図である。多孔質フィルタFT以外の構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0123】
弁座部材11の内側円筒部11eの周囲にて、点線で示す位置から円錐台形部11fの下方まで覆うようにして、金属製または樹脂製の多孔質フィルタFTが配設されている。多孔質フィルタFTは、例えば発泡金属、網状の素材またはパンチングメタルなどから円筒状に形成され、整流孔11j1等の外方端を覆うようにして内側円筒部11eの外周に巻き付けられている。
【0124】
整流孔11j1等から流れ出た冷媒は、多孔質フィルタFTを通過することで、気泡が細分化されるため、さらに騒音の低減に効果がある。多孔質フィルタFTと組み合わせる弁座部材は、第1の実施形態に限られず、それ以外の実施形態と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 電動弁
10 弁本体
11~11O 弁座部材
11k 弁座
15 ガイドステム
21 弁軸
23 弁ホルダ
24 コイルバネ
25 ニードル弁
26 ばね受け部材
27 環状部材
29 弁室
30 ロータ
35 閉弁方向用可動ストッパ
36 開弁方向用可動ストッパ
55 閉弁方向用固定ストッパ
56 開弁方向用固定ストッパ
FT 多孔質フィルタ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
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図20
図21
図22
図23
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図25