(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046669
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016068
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2023503414の分割
【原出願日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021183277
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜也
(57)【要約】
【課題】制御基板付き電動弁の基板収容部の密封性検査を可能とする。
【解決手段】冷媒の流入路及び冷媒の流出路に連通する弁室を有する弁本体と、弁室内に形成した弁座に着座した閉弁状態と弁座から離間した開弁状態との間で弁座に対して進退動して冷媒流量を変更する弁体と、弁体を駆動する電動機23と、電動機を制御する電子部品が実装された制御基板と、制御基板を密封状態で収容可能な基板収容部43と、外部との電気的な接続を行う外部接続端子45と、外部接続端子を内部に支持すると共に相手方コネクタと嵌合することにより密封される密封構造を有するコネクタ部44とを備えた電動弁で、基板収容部とコネクタ部とを連通させ一方の開口と他方の開口との間で90°屈折した連通路51を備え、基板収容部は、コネクタ部に相手方コネクタが嵌合されたときに密封状態となる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を導入する流入路および前記冷媒を排出する流出路に連通する弁室を有する弁本体と、
前記弁室内に形成した弁座に着座した閉弁状態と前記弁座から離間した開弁状態との間で前記弁座に対して進退動することにより前記冷媒の流量を変更する弁体と、
前記弁体を駆動する電動機と、
前記電動機を制御する電子部品が実装された制御基板と、
前記制御基板を密封状態で収容可能な基板収容部と、
外部との電気的な接続を行う外部接続端子を有するとともに、相手方コネクタと嵌合することにより密封される密封構造を有するコネクタ部と
を備えた電動弁であって、
前記基板収容部と前記コネクタ部とを連通させる連通路を備え、
前記基板収容部は、
前記制御基板を内部に収容可能で、且つ当該制御基板を内部に設置することを可能とする開口を有する、ケース部と、
前記開口を閉塞する蓋体と
を有し、
前記連通路は、一方の開口と他方の開口との間で90°屈折し、
前記基板収容部は、前記コネクタ部に前記相手方コネクタが嵌合されたときに密封状態となる
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
冷媒を導入する流入路および前記冷媒を排出する流出路に連通する弁室を有する弁本体と、
前記弁室内に形成した弁座に着座した閉弁状態と前記弁座から離間した開弁状態との間で前記弁座に対して進退動することにより前記冷媒の流量を変更する弁体と、
前記弁体を駆動する電動機と、
前記電動機を制御する電子部品が実装された制御基板と、
前記制御基板を密封状態で収容可能な基板収容部と、
外部との電気的な接続を行う外部接続端子を有するとともに、相手方コネクタと嵌合することにより密封される密封構造を有するコネクタ部と
を備えた電動弁であって、
前記基板収容部は、
前記制御基板を内部に収容可能で、且つ当該制御基板を内部に設置することを可能とする開口を有する、ケース部と、
前記開口を閉塞する蓋体と
を有し、
コネクタ部付き蓋体として前記コネクタ部と前記蓋体とが一体に成形されており、
前記電動弁は、前記基板収容部と前記コネクタ部とを連通させる連通路を備え、
前記連通路は、一方の開口と他方の開口との間で90°屈折し、
前記基板収容部は、前記コネクタ部に前記相手方コネクタが嵌合されたときに密封状態となる
ことを特徴とする電動弁。
【請求項3】
前記電動機のステータを覆う外殻成形部を備え、
当該外殻成形部と前記ケース部とが一体に成形されている
請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記ステータに含まれるコイルを覆うコイル被覆成形部を前記外殻成形部の内側に備えている
請求項3に記載の電動弁。
【請求項5】
前記外殻成形部と、前記ケース部と、前記コネクタ部とが一体に成形されている
請求項3に記載の電動弁。
【請求項6】
前記外殻成形部と、前記ケース部と、前記コネクタ部とが一体に成形されている
請求項4に記載の電動弁。
【請求項7】
電動弁の弁体を駆動する電動機に備えることが可能なステータであって、
前記電動機を制御する電子部品が実装された制御基板と、
前記制御基板を密封状態で収容可能な基板収容部と、
外部との電気的な接続を行う外部接続端子を有するとともに、相手方コネクタと嵌合することにより密封される密封構造を有するコネクタ部と、
前記基板収容部と前記コネクタ部とを連通させる連通路と
を有し、
前記基板収容部は、前記コネクタ部に前記相手方コネクタが嵌合されたときに密封状態となる
ことを特徴とするステータ。
【請求項8】
前記連通路は、一方の開口と他方の開口との間で90°屈折している
請求項7に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に係り、特に、電動弁の制御基板を収容する基板収容部と、外部との電気的な接続を行うコネクタを備えた電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータ等の電動機を使用して弁の開度を制御する電動弁が空気調和機や冷蔵・冷凍装置などの冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置に従来から使用されている。
【0003】
またこのような電動弁として、コイルに励磁電流を供給し電動機を制御するコントローラを備えた電動弁がある。コントローラはプリント基板に実装され、当該基板(本願では「制御基板」又は単に「基板」と言う)は基板収容部に収容される。
【0004】
基板収容部は、例えば、樹脂で成形された箱状のケース体と、ケース体の開口を閉塞する蓋体とからなり、ケース体に基板を収容した後、ケース体の開口に蓋体を溶着することにより基板収容部を密封する。水分の浸入によって短絡が生じ、誤作動や電子部品・回路への損傷が生じることを防ぐためである。
【0005】
また、このような電動弁を開示する文献として下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような基板を備えた電動弁では、従来、基板収容部を密封した後に当該収容部の密封性を製品出荷前に事前に検査し、基板収容部が確実に密封されているか確かめる方法が無かった。
【0008】
一方、基板収容部に密封不良があれば、水分の侵入によって電動弁の誤作動や故障の原因ともなり得ることから、これを未然に防ぐ技術の提供が望まれる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、制御基板付き電動弁の基板収容部の密封性を検査することを可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る第1の電動弁は、冷媒を導入する流入路および冷媒を排出する流出路に連通する弁室を有する弁本体と、弁室内に形成した弁座に着座した閉弁状態と弁座から離間した開弁状態との間で弁座に対して進退動することにより冷媒の流量を変更する弁体と、弁体を駆動する電動機と、電動機を制御する電子部品が実装された制御基板と、制御基板を密封状態で収容可能な基板収容部と、外部との電気的な接続を行う外部接続端子を有するとともに相手方コネクタと嵌合することにより密封される密封構造を有するコネクタ部とを備えた電動弁であって、基板収容部とコネクタ部とを連通させる連通路を備え、基板収容部は、制御基板を内部に収容可能で且つ制御基板を内部に設置することを可能とする開口を有するケース部と、前記開口を閉塞する蓋体とを有し、連通路は、一方の開口と他方の開口との間で90°屈折し、基板収容部は、コネクタ部に相手方コネクタが嵌合されたときに密封状態となる。
【0011】
また、本発明に係る第2の電動弁は、冷媒を導入する流入路および冷媒を排出する流出路に連通する弁室を有する弁本体と、弁室内に形成した弁座に着座した閉弁状態と弁座から離間した開弁状態との間で弁座に対して進退動することにより冷媒の流量を変更する弁体と、弁体を駆動する電動機と、電動機を制御する電子部品が実装された制御基板と、制御基板を密封状態で収容可能な基板収容部と、外部との電気的な接続を行う外部接続端子を有するとともに相手方コネクタと嵌合することにより密封される密封構造を有するコネクタ部とを備えた電動弁であって、基板収容部は、制御基板を内部に収容可能で且つ制御基板を内部に設置することを可能とする開口を有するケース部と、前記開口を閉塞する蓋体とを有し、コネクタ部付き蓋体としてコネクタ部と蓋体とが一体に成形されており、当該電動弁は基板収容部とコネクタ部とを連通させる連通路を備え、連通路は、一方の開口と他方の開口との間で90°屈折し、基板収容部は、コネクタ部に相手方コネクタが嵌合されたときに密封状態となる。
【0012】
本発明の電動弁(上記第1及び第2の電動弁/以下同様)では、コネクタ部および基板収容部が共にコネクタ部に相手方コネクタを接続したときに密封状態(特に水や水蒸気が浸入することを防ぐ水密且つ気密の状態)となる構造を有するが、コネクタ部と基板収容部とを連通させる連通路を備えている。したがって、コネクタ部に相手方コネクタを接続していない状態では基板収容部は、コネクタ部を介して外部と連通した状態となっている。
【0013】
一方、コネクタ部に相手方コネクタを接続すると、コネクタ部が密封状態となり、これに伴い、基板収容部も密封状態となる。なお、「相手方コネクタ」とは、コネクタ部に嵌合し接続できる特定形状のコネクタを言う。すなわち、上記コネクタ部は、一般に電動弁のユーザ側に合わせた(適合する)特定の(ユーザによって異なる予め決められた一定の)形状を有するように作製され、このような特定形状の相手方コネクタを嵌合させることでコネクタ部は密封状態となる。
【0014】
したがって本発明の電動弁では、上記コネクタ部と新たに備えた連通路とを利用して密封性(気密性)の検査を行うことが出来る。具体的には、コネクタ部から連通路を通じて基板収容部内に検査用のガス(例えば空気や不活性ガス等)を圧入して基板収容部内を一定の加圧状態とし、この圧力の変化を監視することにより密封不良が無いか検査することが出来る。つまり、当該圧力が低下しなければ、基板収容部に(コネクタ部にも)密封不良が無いことが分かる。一方、当該圧力が低下すれば、圧入したガスが漏れており、密封不良が存在することが分かる。
【0015】
本発明の電動弁では、電動機のステータを覆う外殻成形部をさらに備え、当該外殻成形部と上記ケース部とを一体に成形しても良い。
【0016】
さらに、ステータに含まれるコイルを覆うコイル被覆成形部を上記外殻成形部の内側に備えていても良い。このような態様によれば、2段階の成形工程を経る(つまり二重の被覆構造とする)ことにより、成形時にコイルの巻線が損傷を受けることを防ぐとともに、複雑な形状を有する外殻成形部にボイドが発生して強度が低下することを回避することが出来る。すなわち、成形時の樹脂の圧力を受けて変形や絶縁不良・断線等の破損が生じやすいコイルを覆うコイル被覆成形部を低圧で成形した後に、これを覆う外殻成形部を高圧で成形することにより、成形時の巻線破損防止と成形部の強度確保を同時に実現することが出来る。
【0017】
なお、外殻成形部は、強度の低下を招くウェルドラインが出来ないように1箇所のゲート(導入口)から樹脂を導入して成形することが好ましい。経年使用時の温度変化等によりウェルドラインに亀裂が生じて水分が浸入することを防ぐためである。一方、上記のような二重被覆構造(外殻成形部の内側にコイル被覆成形部を備える構造)を採れば、外殻成形部により覆われることで強度を確保できるコイル被覆成形部は、強度をさほど考慮する必要がなくなるから、複数箇所のゲートから樹脂を導入することとして複雑な形状を有するコイルをより確実に覆うようにすることが可能となる。
【0018】
さらに、コネクタ部は、密封状態になるように嵌合させる必要から厳格な寸法精度が要求されるが、外殻成形部とコネクタ部とを一体に成形する場合にも上記のような二重被覆構造を採用すれば、外殻成形部と一緒にコネクタ部を高圧で成形することができ、コネクタ部の寸法精度を向上させることも可能となる。
【0019】
本発明の典型的な一態様では、外殻成形部とケース部とコネクタ部とを一体に成形する。またこの態様では、前記電動弁が、コネクタ部の内側に形成され外部接続端子の中間部を覆って支持する端子被覆成形部を備え、前記連通路を当該端子被覆成形部に形成することがある。
【0020】
さらに、端子被覆成形部を備える上記態様では、端子被覆成形部の一端部がコネクタ部の内部空間に露出する(例えば突き出す)とともに当該一端部に連通路の一方の開口が形成され、端子被覆成形部の他端部がケース部の内部空間に露出する(例えば突き出す)とともに当該他端部に連通路の他方の開口を形成されるようにすることが好ましい。コネクタ部やケース部を成形するときに当該コネクタ部やケース部を形成する材料(樹脂)が連通路内に浸入して連通路を塞いでしまうことを防ぐためである。
【0021】
また、本発明の別の典型的な一態様では、コネクタ部付き蓋体としてコネクタと蓋体とを一体に成形し、前記電動弁が、コネクタ部付き蓋体の内側に形成され外部接続端子の中間部を覆って支持する端子被覆成形部を備え、前記連通路を当該端子被覆成形部に形成する。
【0022】
また、当該態様においても前記典型的な一態様と同様の理由から(コネクタ部付き蓋体の形成時に樹脂が連通路内に浸入することを防ぐため)、端子被覆成形部の一端部がコネクタ部の内部空間に露出する(例えば突き出す)とともに当該一端部に連通路の一方の開口が形成され、端子被覆成形部の他端部がケース部の内部空間に露出するように蓋体の下面に露出する(例えば突き出す)とともに当該他端部に連通路の他方の開口が形成されるようにすることが好ましい。
【0023】
また、本発明に係るステータは、前記本発明に係る電動弁と同様の特徴を備えたものである。
【0024】
具体的には、当該ステータは、電動弁の弁体を駆動する電動機に備えることが可能なステータであって、電動機を制御する電子部品が実装された制御基板と、制御基板を密封状態で収容可能な基板収容部と、外部との電気的な接続を行う外部接続端子を有するとともに相手方コネクタと嵌合することにより密封される密封構造を有するコネクタ部と、基板収容部とコネクタ部とを連通させる連通路とを有し、基板収容部は、コネクタ部に相手方コネクタが嵌合されたときに密封状態となる。また、当該ステータにおいて連通路は、一方の開口と他方の開口との間で90°屈折していることがある。
【0025】
なお、上記本発明に係るステータにおいても本発明に係る電動弁で述べた前記各態様を同様に採用することが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、制御基板付き電動弁の基板収容部の密封性を検査することが可能となるから、基板収容部の密封不良に起因した不具合が電動弁に発生することを未然に防ぐことができ、電動弁の信頼性をより一層向上させることが出来る。
【0027】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。また、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動弁の閉弁状態を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、前記第1実施形態に係る電動弁の開弁状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、前記第1実施形態に係る電動弁の基板収容部とコネクタ部を示す正面図である。
【
図4】
図4は、前記第1実施形態に係る電動弁の基板収容部(蓋体を取り付けていない状態)とコネクタ部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、前記第1実施形態に係る電動弁の基板収容部(蓋体を取り付けていない状態)とコネクタ部を連通路が見えるように部分的に(
図3の符号B部分を)切り欠いて示す斜視図である。
【
図6】
図6は、前記第1実施形態に係る電動弁の連通路を示す縦断面図(
図3のC-C矢視断面図)である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る電動弁の閉弁状態を示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、前記第2実施形態に係る電動弁の開弁状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
図1から
図6に示すように、本発明の第1の実施形態に係る電動弁11は、例えば空気調和機のような冷凍サイクル装置において冷媒の流量を調整するため使用するのに好適な電動弁で、内部に弁室13を有するとともに弁室13に冷媒を流入させる流入路16および弁室13から冷媒を流出させる流出路15を有する弁本体12と、流入路16の弁室13に対する開口部に形成した弁座14と、弁座14に当接した閉弁状態(
図1参照)と弁座14から離れた開弁状態(
図2参照)との間で弁座14に対して進退動(上下動)することにより冷媒の通過量(流量)を変更する弁体17と、弁体17を駆動する電動機23と、電動機23を弁本体12に連結する連結部材19と、電動機23を制御するコントローラ(図示せず)を実装したプリント基板(制御基板)46と、当該基板46を収容するケース(基板収容部/ケース部)43と、ケース43の前面開口を閉塞する蓋体47と、外部との電気的な接続を行う外部接続端子45を有するコネクタ44と、ケース43の内部とコネクタ44の内部を連通させる連通孔51と、弁室13と連通する弁本体12の上部開口12aを覆って連結部材19とともに密封空間を形成するキャン(密封容器)22とを備えている。
【0030】
なお、各図には前後方向、左右方向および上下方向を表す互いに直交する二次元座標または三次元座標を適宜表示し、以下の説明はこれらの方向に基いて行う。また、本実施形態では、流入路16から冷媒を流入させ、流出路15から冷媒を流出させるようにしているが、電動弁11は冷媒の流れ方向が逆方向でも使用できることは勿論である。
【0031】
電動機23は、キャン22の外側に配置したステータ25と、キャン22の内側に回転可能で且つ上下方向へ摺動可能に配置したマグネットロータ(以下、単に「ロータ」と言う)24とを備えたステッピングモータからなる。また、ステータ25は、ヨーク26とボビン27とコイル28を含む。
【0032】
ステータ25とキャン22は、合成樹脂製の外殻カバー(外殻成形部)42によって覆われている。また、外殻カバー42の内側には、コイル28を覆う合成樹脂製のコイルカバー(コイル被覆成形部)41と、外部接続端子45の中間部を覆って支持する端子カバー(端子被覆成形部)55とを備える。
【0033】
外部接続端子45は、コネクタ44の内部空間44aに突き出して外部との電気的な接続を可能とする先端部45aと、基板46に電気的に接続される基端部45bとを有し、これら先端部45aと基端部45bとの間の部分である中間部を端子カバー55によって覆ってある。また、端子カバー55の一端部(コネクタ側の端部)はコネクタ44の内部空間44aに露出し、当該一端部には前記連通路51(
図3~
図6参照)の一方の(コネクタ側の)開口51aを形成してある。一方、端子カバー55の他端部(ケース側の端部)はケース43の内部空間43aに露出し、当該他端部には連通路51の他方の(ケース側の)開口51bを形成してある。なお、ケース内部43aとコネクタ内部44aとを連通させる連通路51は、一端にコネクタ側開口51aを有し他端にケース側開口51bを有する貫通孔である。
【0034】
また上記各カバー(コイルカバー41、端子カバー55及び外殻カバー42)は、射出成形により形成するが、成形の順序としては、まずコイルカバー41と端子カバー55(各々
図1及び
図2において細かいドット模様を施した)をそれぞれ別々に成形した後に、これらコイルカバー41と端子カバー55を外殻カバー42を成形する金型内に設置してこれら各カバー41,55を覆うように外殻カバー42(
図1及び
図2において粗いドット模様を施した)を成形する。また、外殻カバー42の成形時には、基板46を収容する箱状のケース43とコネクタ44を外殻カバー42と一体に成形する。
【0035】
なお、コイルカバー41、端子カバー55および外殻カバー42(ケース43及びコネクタ44を含む)並びに後述する蓋体47を構成する樹脂材料は、それぞれ別種類の材料とすることも出来るが、樹脂同士の接合性を高めるため、同一の材料を使用することが好ましい。
【0036】
ケース43はステータ25の側方(前方)に備え、コネクタ44はケース43の上面部に備える。ケース43の内部43aにはケース43の前面開口を通じて基板46を収容し、当該基板46を介して外部接続端子45に対してコイル28を電気的に接続する。外部電源(図示せず)からコイル28への給電を可能とするためである。また基板46には、パルス発生器およびモータ駆動回路を含むコントローラを実装する。さらにロータ24の回転を検出する磁気センサを電動弁11に備える場合には、当該磁気センサからの出力信号に基いてロータ24の回転角度や弁の開度を演算する演算装置を基板46に実装しても良い。
【0037】
ケース43とコネクタ44は共に密封可能な構造とする一方、両者(ケース43とコネクタ44)は前述したように連通路51によって連通している。すなわち、コネクタ44は、その前端部に相手方コネクタ(図示せず)を嵌合させることによりコネクタ44の内部44aが密封状態になる。相手方コネクタは、外部接続端子45に対して外部から電気的な接続を行うためのコネクタで、電動弁11のコネクタ45に対して密封状態に嵌合する形状を有する。なお、当該相手方コネクタは(したがってこれと嵌合する電動弁11のコネクタ44も)、前に述べたように電動弁11のユーザの仕様に適合した様々な形状を有する。また、密封状態とは、この電動弁11の通常の使用状態においてコネクタ44の内部44aに水分が浸入しない状態であり、本実施形態ではコネクタ44の内部44aが外部空間(大気側)と遮断されている。
【0038】
一方、ケース43は、前面開口に樹脂製の蓋体47を溶着して当該前面開口を塞ぐことにより、連通路51を通じてコネクタ44の内部44aと連通していることを除いては、外部と遮断された密封状態となっている。
【0039】
さらに電動弁11は、中心軸線Aに沿ってロータ24の内部から弁室13まで上下方向に延びる棒状の弁軸18を備えている。この弁軸18は、円柱状の胴部18aと、胴部18aの上端部に胴部18aに連続して同軸状に形成した外径が小さな上部小径部18bとを有する。また、弁軸18(胴部18a)の下端には、弁体17を一体に備えている。ロータ24は、キャン22の内側に回転可能で且つ上下方向へ摺動可能に配置し、下端に弁体17を備えた弁軸18とロータ24とが一体に上下方向へ移動することにより弁が開閉される。
【0040】
ロータ24の内側には弁軸ホルダ31を備える。弁軸ホルダ31は上端が塞がれた円筒状の形状を有し、弁軸ホルダ31の上端部に支持リング33をかしめにより固定してある。また、支持リング33を介してロータ24と弁軸ホルダ31とが一体に結合されている。弁軸ホルダ31の内周面には、雌ねじ部31aを形成する。この雌ねじ部31aは、後述するガイドブッシュ36の雄ねじ部36cと螺合して電動機23の回転を直線運動に変換して弁軸18に伝達する伝達機構(ねじ送り機構)を構成する。
【0041】
弁軸18の上部小径部18bは弁軸ホルダ31を貫通し、上部小径部18bの上端部には抜け止めとなるプッシュナット34を取り付ける。弁軸18は、弁軸ホルダ31と、弁軸18における胴部18aと上部小径部18bの間の段部との間に備えた圧縮コイルばね35によって下方に向け付勢されている。したがって、弁軸18は、これらプッシュナット34と圧縮コイルばね35によって弁軸ホルダ31に対する上下方向への相対移動が規制され、弁軸ホルダ18と一緒に上下動することになる。
【0042】
連結部材19は、互いに連通する貫通孔である大径孔19aと小径孔19bを有する筒状部材である。大径孔19aは、連結部材19の上部中心部を貫通し、後述するガイドブッシュ36を上方から嵌挿できるように径が大きい。小径孔19bは、連結部材19の下部中心部を貫通して径が小さい。また、連結部材19の上端部外周面には、リング状のベースプレート21を介して無底有蓋の(底面が開放され天面が閉塞された)円筒状のキャン22を接合する。
【0043】
連結部材19の上部の大径孔19aには、ガイドブッシュ36を固定する。ガイドブッシュ36は、外径が大きい大径円筒部36aと、大径円筒部36aの上端部に当該大径円筒部36aに連続して同軸状に形成した外径が小さい小径円筒部36bとを有する。小径円筒部36bの外周面には、弁軸ホルダ31の前記雌ねじ部31aと螺合する雄ねじ部36cを形成する。なお、ガイドブッシュ36は、大径円筒部36aを連結部材19の内側に圧入することにより連結部材19と結合させる。また、連結部材19の小径孔19bには、弁軸18の胴部18aが貫通している。
【0044】
また、弁軸ホルダ31には上ストッパ体32を備える一方、ガイドブッシュ36の大径円筒部36aには下ストッパ体37を備える。これらのストッパ体32,37は、弁軸ホルダ31の下限位置を決定するもので、弁軸ホルダ31が回転することにより下降して下限位置に至ると、上ストッパ体32が下ストッパ体37に当接して弁軸ホルダ31のさらなる回転が規制される。
【0045】
なお、電動機23の駆動力を弁体17に伝達する機構は、上記以外にも様々なものであって良く、上記構造に限定されるものではない。
【0046】
本実施形態に係る電動弁の動作を述べれば次のとおりである。
【0047】
図1に示す閉弁状態からロータ24が一方向に回転するようにステータ25(コイル28)に電流が供給されると、ロータ24に結合された弁軸ホルダ31がロータ24とともに回転する。弁軸ホルダ31の内周面には、ガイドブッシュ36の小径円筒部36bの外周面に形成した雄ねじ部36cと螺合する雌ねじ部31aを形成してあるから、これら雄ねじ部36cと雌ねじ部31aの相互作用によりロータ24(弁軸ホルダ31)の回転が上下方向の直線運動に変換されて弁軸ホルダ31は上方へ移動することとなり、弁軸ホルダ31に結合されたロータ24、並びに、弁軸ホルダ31との間の相対移動を規制された弁軸18も、弁軸ホルダ31と一緒に上方へ移動する。弁軸18の上方への移動に伴い、弁軸18の下端に備えられた弁体17は、弁座14から離れ、流入路16から流入した冷媒が弁室13を通って流出路15から流出するようになる(
図2参照)。なお、冷媒の通過量(冷媒流量)は、ロータ24の回転量によって調整することが出来る。
【0048】
一方、この開弁状態から上記一方向とは逆方向にロータ24が回転するようにステータ25(コイル28)に電流が供給されると、上記雌ねじ部31aと雄ねじ部36cの相互作用によりロータ24(弁軸ホルダ31)の回転が上下方向の直線運動に変換され、弁軸ホルダ31がロータ24および弁軸18とともに下方へ移動する。これにより弁体17が弁座14に向け下降し、弁体17が弁座14に当接すると流入路16と流出路15と間の流路が遮断されて閉弁状態(
図1参照)となる。
【0049】
本実施形態の電動弁11では、コネクタ44とケース43との間に連通路51を備えているから、ケース43に基板46を収容し前面開口を塞ぐ蓋体47を溶着した完成状態でケース43の気密性検査を行うことが出来る。検査は、例えば、コネクタ44から連通路51を介してガス(空気又は不活性ガス等)を一定の圧力でケース内部43aに圧入することによりケース内部43aを高圧状態にし、ガス圧の変化を監視すれば良い。ガス圧が低下すれば、ガスが漏れていることから、密封不良が存在することが分かる。一方、ガス圧が一定に保たれれば、密封不良が無い正常な製品であることが分かる。
【0050】
〔第2実施形態〕
図7から
図8を参照して本発明の第2の実施形態に係る電動弁について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態の電動弁11と同様の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、相違点を中心に述べる。
【0051】
図7から
図8に示すように本実施形態の電動弁61は、前記第1実施形態の電動弁11と同様に電動機(ステッピングモータ)23によって弁体17を上下動させて冷媒の流量を調整するもので、電動機23を制御する基板46を備えたものであるが、当該基板46を電動機23(ステータ25)の上面部に水平に広がるように配置し、基板46を収容するケース43を電動機23の上面部に形成する。
【0052】
本実施形態では、前記第1実施形態の電動弁11と同様に電動機23のステータ25およびキャン22を覆う外殻カバー42(
図7及び
図8において粗いドット模様を施した)と、外殻カバー42の内側に配置されてコイル28を覆うコイルカバー41(
図7及び
図8において細かいドット模様を施した)とを備えているが、第1実施形態の電動弁11と異なり、コネクタ44は外殻カバー42と一体成形せずに別工程でコネクタ付き蓋体62としてケース43の上面開口を閉塞する蓋体47と一体に成形する。
【0053】
コネクタ付き蓋体62は、2段階の成形工程を経て作製する。まず第1工程で、外部接続端子45の中間部を覆って支持する樹脂製の端子カバー(端子被覆成形部)55を成形し、続く第2工程で、端子カバー55を覆って当該端子カバー55がコネクタ44と蓋体47の間に支持されるように、言い換えれば、端子カバー55がコネクタ44と蓋体47の境界部を貫通するように、更に言い換えれば、端子カバー55の一端部がコネクタ内部44aに突き出すとともに端子カバー55の他端部が蓋体47の下面から下方へ突き出すように、コネクタ44と蓋体47を一体にコネクタ付き蓋体62として成形する。
【0054】
また本実施形態では、端子カバー55を成形する上記第1工程で端子カバー55に連通路51を形成する。この連通路51は、前記第1実施形態と同様に、コネクタ内部44aとケース内部43aとを連通させる貫通孔で、端子カバー55の一端部にコネクタ側開口51aを有し、他端部にケース側開口51bを有する。
【0055】
なお、上記第2工程では、端子カバー55のコネクタ側の端部がコネクタ44の内部空間44a内に突出することによりコネクタ側開口51aがコネクタ44の内部空間44a内に位置するとともに、蓋体側の端部が蓋体47の下面から突出することによりケース側開口51bが蓋体47の下面より下方に位置するため、外殻カバー42の成形時に(第2工程で)外殻カバー42を形成する樹脂がコネクタ側開口51aやケース側開口51bから連通路51内に浸入して連通路51(コネクタ側開口51a及びケース側開口51b)が塞がれることを防ぐことが出来る。
【0056】
コネクタ付き蓋体62は、ケース内部43aに基板46を設置した後、ケース43の上面開口を閉塞するようにケース43の上縁部に溶着する。なお、外部接続端子45と基板46との電気的な接続は、プレスフィット接続により行えば良い。具体的には、外部接続端子45の基端部(基板側の端部)45bをプレスフィットピンとし、コネクタ付き蓋体62をケース43の上面に被せたときに当該プレスフィットピンが基板46のスルーホールに圧入されるようにする。
【0057】
本実施形態では、端子カバー55を貫通する連通孔51によってケース内部43aとコネクタ内部44aとが連通された状態となる。したがって、前記第1実施形態と同様に、コネクタ44から当該連通路51を介して検査用のガスをケース内部43aに圧入し、その圧力変化を監視することにより密封不良を発見することが出来る。
【符号の説明】
【0058】
A 中心軸線
11,61 電動弁
12 弁本体
12a 上部開口
13 弁室
14 弁座
15 流出路
16 流入路
17 弁体
18 弁軸
18a 胴部
18b 上部小径部
19 連結部材
19a 大径孔
19b 小径孔
21 ベースプレート
22 キャン
23 ステッピングモータ(電動機)
24 マグネットロータ
25 ステータ
26 ヨーク
27 ボビン
28 コイル
31 弁軸ホルダ
31a 雌ねじ部(ねじ送り機構)
32 上ストッパ体
33 支持リング
34 プッシュナット
35 圧縮コイルばね
36 ガイドブッシュ
36a 大径円筒部
36b 小径円筒部
36c 雄ねじ部(ねじ送り機構)
37 下ストッパ体
41 コイルカバー
42 外殻カバー
43 ケース
43a ケース内部(ケースの内部空間)
44 コネクタ
44a コネクタ内部(コネクタの内部空間)
45 外部接続端子
45a 外部接続端子の先端部(コネクタ側の端部)
45b 外部接続端子の基端部(基板側の端部)
46 基板
47 蓋体
51 連通路
51a コネクタ側開口
51b ケース側開口
55 端子カバー
62 コネクタ付き蓋体