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特開2024-46676長尺位相差フィルム、長尺光学フィルム、長尺偏光フィルム、長尺位相差フィルムの製造方法、及び長尺光学フィルムの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046676
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】長尺位相差フィルム、長尺光学フィルム、長尺偏光フィルム、長尺位相差フィルムの製造方法、及び長尺光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】35
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020444
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2022116751の分割
【原出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】晝間 祐介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 輝賢
(72)【発明者】
【氏名】大津 萌子
(72)【発明者】
【氏名】古堅 亮
(57)【要約】
【課題】位相差層の側縁へのバリの発生を抑制する。
【解決手段】長手方向D2及び短手方向D1を含む長尺位相差フィルム10は、基材20と、基材20と重ねられた位相差層40と、備える。位相差層40は、第1領域41と、一対の第2領域42と、を含む。第1領域41は、前記短手方向D1における一対の第2領域42の間に位置する。位相差層40は、液晶組成物の硬化物を含む。第2領域42は、第2遅相軸A42を有する。第2遅相軸A42と前記長手方向D2との間の第2配向角θ42は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向及び短手方向を含む長尺位相差フィルムであって、
基材と、
前記基材と重ねられた配向膜および位相差層と、
備え、
前記位相差層は、第1領域と、一対の第2領域と、一対の第3領域と、を含み、
前記第1領域は、前記短手方向における前記一対の第2領域の間に位置し、
前記一対の第2領域は、前記短手方向における前記一対の第3領域の間に位置し、
前記位相差層は、液晶組成物の硬化物を含み、
前記配向膜は、前記基材と、前記第1領域および前記第2領域と、の間に位置し、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満であり、
前記第3領域は、第3遅相軸を有し、
前記第3遅相軸と前記長手方向との間の第3配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さく、
前記第3領域は、前記基材に接触しており、
前記基材は、遅相軸を有し、
前記基材の前記遅相軸と前記長手方向との間の角度から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、長尺位相差フィルム。
【請求項2】
前記基材は、二軸延伸樹脂基材である、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項3】
前記基材は、ポリエステル基材である、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項4】
前記第1領域は、第1遅相軸を有し、
前記第1遅相軸と前記長手方向との間の第1配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項5】
前記第1配向角は10°以上170°以下である、請求項4に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項6】
前記第1配向角は30°以上150°以下である、請求項4に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項7】
前記第1領域は、前記短手方向における前記位相差層の中心を含む、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項8】
前記第2領域の前記短手方向に沿った長さは、1mm以上100mm以下である、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項9】
前記第1領域の前記短手方向に沿った長さは、前記第2領域の前記短手方向に沿った長さの12倍以上である、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項10】
前記第3配向角は40°以上140°以下である、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項11】
前記第3領域は、前記短手方向における前記位相差層の端部を含む、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項12】
前記配向膜は、光配向膜を含む、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項13】
前記基材の前記遅相軸と前記長手方向との間の角度は、40°以上140°以下である、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項14】
前記第3領域の前記短手方向に沿った長さは、0.5mm以上50mm以下である、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項15】
波長450nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(450)は、波長550nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(550)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、波長650nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(650)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、130nm以上153nm以下である、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項16】
長手方向及び短手方向を有する長尺の基材に配向膜形成用組成物を塗布して、第1塗布膜を形成する工程と、
前記第1塗布膜の前記短手方向における端部領域及び前記端部領域を除く中央領域に、互いに偏光状態の異なる偏光を照射して、前記端部領域及び前記中央領域が互いに異なる配向方向への配向規制力を有した配向膜を前記第1塗布膜から形成する工程と、
前記基材および前記配向膜を含む中間体に液晶組成物を塗布して、第2塗布膜を形成する工程と、
前記第2塗布膜を硬化させて、前記液晶組成物の硬化物を含む位相差層を形成する工程と、を備え、
前記位相差層は、第1領域と、一対の第2領域と、一対の第3領域と、を含み、
前記第1領域は、前記中央領域に対面し、
前記一対の第2領域は、前記端部領域に対面し、前記短手方向における前記一対の第3領域の間に位置し、
前記一対の第3領域は、前記基材に対面し、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満であり、
前記第3領域は、第3遅相軸を有し、
前記第3遅相軸と前記長手方向との間の第3配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さく、
前記基材は、遅相軸を有し、
前記基材の前記遅相軸と前記長手方向との間の角度から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記基材は、二軸延伸樹脂基材である、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記基材は、ポリエステル基材である、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記第1領域は、第1遅相軸を有し、
前記第1遅相軸と前記長手方向との間の第1配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項20】
前記第1配向角は10°以上170°以下である、請求項19に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項21】
前記第1配向角は30°以上150°以下である、請求項19に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項22】
前記第1領域は、前記短手方向における中心を含む、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項23】
前記第2領域の前記短手方向に沿った長さは、1mm以上100mm以下である、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項24】
前記第1領域の前記短手方向に沿った長さは、前記第2領域の前記短手方向に沿った長さの12倍以上である、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項25】
前記第3配向角は40°以上140°以下である、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項26】
前記第3領域は、前記短手方向における前記位相差層の端部を含む、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項27】
前記第3領域は、前記基材に接触している、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項28】
前記基材の前記遅相軸と前記長手方向との間の角度は、40°以上140°以下である、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項29】
前記第3領域の前記短手方向に沿った長さは、0.5mm以上50mm以下である、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項30】
波長450nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(450)は、波長550nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(550)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、波長650nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(650)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、130nm以上153nm以下である、請求項16に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【請求項31】
請求項1~15のいずれか一項に記載の長尺位相差フィルムを、接合層を含む長尺の被転写フィルムに積層する工程と、
前記接合層に接合した前記長尺位相差フィルムから、前記基材を剥がす工程と、を備える、長尺光学フィルムの製造方法。
【請求項32】
前記長尺位相差フィルムが前記被転写フィルムに積層された状態において、前記第2領域は前記短手方向における前記接合層の端部に対面する、請求項31に記載の長尺光学フィルムの製造方法。
【請求項33】
前記長尺光学フィルムは、前記位相差層の前記第1領域と、前記第2領域の一部と、を含み、
前記位相差層の前記第3領域と、前記第2領域の前記一部以外の残部と、は前記基材上に残留する、請求項31に記載の長尺光学フィルムの製造方法。
【請求項34】
前記長尺位相差フィルムが前記被転写フィルムに積層された状態において、前記第2領域は前記短手方向における前記接合層の端部に対面し、前記第3領域は、前記短手方向における前記接合層の外側に位置し、前記被転写フィルムの前記基材に対面する、請求項31に記載の長尺光学フィルムの製造方法。
【請求項35】
前記被転写フィルムは、偏光子を含む偏光層を含む、請求項31に記載の長尺光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺位相差フィルム、長尺光学フィルム、長尺偏光フィルム、長尺位相差フィルムの製造方法、及び長尺光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルムや偏光フィルムが、有機EL表示装置や液晶表示装置等の表示装置に適用されている。特許文献1に開示されているように、位相差フィルムは、重合性液晶組成物を基材上に塗布して基材上に塗布膜を形成し、この塗布膜を硬化させることによって作製され得る。長尺の基材上に長尺の塗布膜を形成し、この塗布膜を硬化させることによって、長尺の位相差フィルムを製造できる。長尺の位相差フィルムを用いて、長尺の偏光フィルムを製造できる。ロールトゥロール方式の製造方法は、生産効率や製造コストにおいて優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-184046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、長尺の位相差フィルムの位相差層を長尺の被転写フィルムに転写して、長尺の偏光フィルムが製造されている。このように製造された長尺の偏光フィルムでは、転写された位相差層の幅方向端部にバリが生じることがあった。バリが発生すると、長尺偏光フィルムに異物が混入し、製造ラインが異物で汚染される。本開示は、位相差層の端部へのバリの発生抑制を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態における長尺位相差フィルムは、
長手方向及び短手方向を含む長尺位相差フィルムであって、
基材と、
前記基材と重ねられた位相差層と、備え、
前記位相差層は、第1領域と、一対の第2領域と、を含み、
前記第1領域は、前記短手方向における前記一対の第2領域の間に位置し、
前記位相差層は、液晶組成物の硬化物を含み、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である。
【0006】
本開示の一実施の形態における長尺光学フィルムは、
長手方向及び短手方向を含む長尺光学フィルムであって、
基材、接合層、及び位相差層を、この順で備え、
前記位相差層は、第1領域と、一対の第2領域と、を含み、
前記第1領域は、前記短手方向における前記一対の第2領域の間に位置し、
前記位相差層は、液晶組成物の硬化物を含み、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である。
【0007】
本開示の一実施の形態における長尺偏光フィルムは、
長手方向及び短手方向を含む長尺偏光フィルムであって、
偏光子を含む偏光層と、
前記偏光層と重ねられた位相差層と、を備え、
前記位相差層は、第1領域と、一対の第2領域と、を含み、
前記第1領域は、前記短手方向における前記一対の第2領域の間に位置し、
前記位相差層は、液晶組成物の硬化物を含み、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である。
【0008】
本開示の一実施の形態における長尺位相差フィルムの製造方法は、
長手方向及び短手方向を有する長尺の基材に配向膜形成用組成物を塗布して、第1塗布膜を形成する工程と、
前記第1塗布膜の前記短手方向における端部領域及び前記端部領域を除く中央領域に、互いに偏光状態の異なる偏光を照射して、前記端部領域及び前記中央領域が互いに異なる配向方向への配向規制力を有した配向膜を前記第1塗布膜から形成する工程と、
前記基材および前記配向膜を含む中間体に液晶組成物を塗布して、第2塗布膜を形成する工程と、
前記第2塗布膜を硬化させて、前記液晶組成物の硬化物を含む位相差層を形成する工程と、を備え、
前記位相差層は、前記中央領域に対面する第1領域と、前記端部領域に対面する第2領域と、を含み、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である。
【0009】
本開示の一実施の形態における長尺光学フィルムの製造方法は、
本開示の一実施の形態における長尺位相差フィルムを、接合層を含む長尺の被転写フィルムに積層する工程と、
前記接合層に接合した前記長尺位相差フィルムから、前記基材を剥がす工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、位相差層の端部へのバリの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施の形態を説明するための図であって、長尺位相差フィルムの一例を示す縦断面図である。
図2図2は、図1の長尺位相差フィルムの一例を示す平面図である。
図3図3は、長尺位相差フィルム、被転写フィルム、長尺光学フィルム及び長尺偏光フィルムの一例を示す斜視図である。
図4図4は、図2の一部拡大図である。
図5図5は、図1の長尺位相差フィルムの製造方法の一例を説明する図である。
図6図6は、図5の製造方法を説明する図である。
図7図7は、図5の製造方法を説明する図である。
図8図8は、図5の製造方法を説明する図である。
図9図9は、図5の製造方法を説明する図である。
図10図10は、図5の製造方法を説明する図である。
図11図11は、図5の製造方法を説明する図である。
図12図12は、図1の長尺位相差フィルムを用いて製造される長尺光学フィルム及び長尺偏光フィルムの一例を示す縦断面図である。
図13図13は、図12の長尺光学フィルム及び長尺偏光フィルムの製造に用いられる被転写フィルムの一例を示す縦断面図である。
図14図14は、図12の長尺光学フィルム及び長尺偏光フィルムの製造方法の一例を説明する図である。
図15図15は、図14の製造方法を説明する図である。
図16図16は、図14の製造方法を説明する図である。
図17図17は、図14の製造方法を説明する図である。
図18図18は、図12の長尺光学フィルム及び長尺偏光フィルムから得られる光学フィルム及び偏光フィルムの一適用例を示す図である。
図19図19は、光学フィルム及び偏光フィルムの他の適用例を示す図である。
図20図20は、実施例1に係る長尺位相差フィルムを、被転写フィルムとともに、示す断面図である。
図21図21は、実施例2に係る長尺位相差フィルムを、被転写フィルムとともに、示す断面図である。
図22図22は、比較例1に係る長尺位相差フィルムを、被転写フィルムとともに、示す断面図である。
図23図23は、実施例1に係る長尺光学フィルムを示す写真である。
図24図21は、比較例1に係る長尺光学フィルムを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一実施の形態は、次の[1]~[47]に関する。
【0013】
[1]
長手方向及び短手方向を含む長尺位相差フィルムであって、
基材と、
前記基材と重ねられた位相差層と、備え、
前記位相差層は、第1領域と、一対の第2領域と、を含み、
前記第1領域は、前記短手方向における前記一対の第2領域の間に位置し、
前記位相差層は、液晶組成物の硬化物を含み、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である、長尺位相差フィルム。
【0014】
[2]
前記第1領域は、第1遅相軸を有し、
前記第1遅相軸と前記長手方向との間の第1配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、[1]に記載の長尺位相差フィルム。
【0015】
[3]
前記第1配向角は10°以上170°以下である、[2]に記載の長尺位相差フィルム。
【0016】
[4]
前記第1配向角は30°以上150°以下である、[2]又は[3]に記載の長尺位相差フィルム。
【0017】
[5]
前記第1領域は、前記短手方向における前記位相差層の中心を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の長尺位相差フィルム。
【0018】
[6]
前記第2領域の前記短手方向に沿った長さは、1mm以上100mm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の長尺位相差フィルム。
【0019】
[7]
前記第1領域の前記短手方向に沿った長さは、前記第2領域の前記短手方向に沿った長さの12倍以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の長尺位相差フィルム。
【0020】
[8]
前記位相差層は、一対の第3領域を更に含み、
前記一対の第2領域は、前記短手方向における前記一対の第3領域の間に位置し、
前記第1領域は、第1遅相軸を有し、
前記第3領域は、第3遅相軸を有し、
前記第3遅相軸と前記長手方向との間の第3配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、[1]~[7]のいずれかに記載の長尺位相差フィルム。
【0021】
[9]
前記第3配向角は40°以上140°以下である、[8]に記載の長尺位相差フィルム。
【0022】
[10]
前記第3領域は、前記短手方向における前記位相差層の端部を含む、[8]又は[9]に記載の長尺位相差フィルム。
【0023】
[11]
前記基材と、前記第1領域および前記第2領域と、の間に位置する配向膜を備え、
前記第3領域は、前記基材に接触している、[8]~[10]のいずれかに記載の長尺位相差フィルム。
【0024】
[12]
前記配向膜は、光配向膜を含む、[11]に記載の長尺位相差フィルム。
【0025】
[13]
前記基材は、遅相軸を有するポリエチレンフィルムを含み、
前記ポリエチレンフィルムの前記遅相軸と前記長手方向との間の角度は、40°以上140°以下である、[11]又は[12]に記載の長尺位相差フィルム。
【0026】
[14]
前記第3領域の前記短手方向に沿った長さは、0.5mm以上50mm以下である、[8]~[13]のいずれかに記載の長尺位相差フィルム。
【0027】
[15]
波長450nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(450)は、波長550nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(550)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、波長650nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(650)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、130nm以上153nm以下である、[1]~[14]のいずれかに記載の長尺位相差フィルム。
【0028】
[16]
長手方向及び短手方向を含む長尺光学フィルムであって、
基材、接合層、及び位相差層を、この順で備え、
前記位相差層は、第1領域と、一対の第2領域と、を含み、
前記第1領域は、前記短手方向における前記一対の第2領域の間に位置し、
前記位相差層は、液晶組成物の硬化物を含み、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である、長尺光学フィルム。
【0029】
[17]
前記第1領域は、第1遅相軸を有し、
前記第1遅相軸と前記長手方向との間の第1配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、[16]に記載の長尺光学フィルム。
【0030】
[18]
前記第1配向角は10°以上170°以下である、[17]に記載の長尺光学フィルム。
【0031】
[19]
長手方向及び短手方向を含む長尺偏光フィルムであって、
偏光子を含む偏光層と、
前記偏光層と重ねられた位相差層と、を備え、
前記位相差層は、第1領域と、一対の第2領域と、を含み、
前記第1領域は、前記短手方向における前記一対の第2領域の間に位置し、
前記位相差層は、液晶組成物の硬化物を含み、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である、長尺偏光フィルム。
【0032】
[20]
前記第1領域は、第1遅相軸を有し、
前記第1遅相軸と前記長手方向との間の第1配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、[19]に記載の長尺偏光フィルム。
【0033】
[21]
前記第1配向角は10°以上170°以下である、[20]に記載の長尺偏光フィルム。
【0034】
[22]
前記第1配向角は30°以上150°以下である、[20]又は[21]に記載の長尺偏光フィルム。
【0035】
[23]
前記第2領域は、前記短手方向における前記位相差層の端部を含む、[19]~[22]のいずれかに記載の長尺偏光フィルム。
【0036】
[24]
前記第1領域は、前記短手方向における中心を含む、[19]~[23]のいずれかに記載の長尺偏光フィルム。
【0037】
[25]
前記第2領域の前記短手方向に沿った長さは、1mm以上100mm以下である、[19]~[24]のいずれかに記載の長尺偏光フィルム。
【0038】
[26]
前記第1領域の前記短手方向に沿った長さは、前記第2領域の前記短手方向に沿った長さの12倍以上である、[19]~[25]のいずれかに記載の長尺偏光フィルム。
【0039】
[27]
波長450nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(450)は、波長550nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(550)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、波長650nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(650)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、130nm以上153nm以下である、[19]~[26]のいずれかに記載の長尺偏光フィルム。
【0040】
[28]
長手方向及び短手方向を有する長尺の基材に配向膜形成用組成物を塗布して、第1塗布膜を形成する工程と、
前記第1塗布膜の前記短手方向における端部領域及び前記端部領域を除く中央領域に、互いに偏光状態の異なる偏光を照射して、前記端部領域及び前記中央領域が互いに異なる配向方向への配向規制力を有した配向膜を前記第1塗布膜から形成する工程と、
前記基材および前記配向膜を含む中間体に液晶組成物を塗布して、第2塗布膜を形成する工程と、
前記第2塗布膜を硬化させて、前記液晶組成物の硬化物を含む位相差層を形成する工程と、を備え、
前記位相差層は、前記中央領域に対面する第1領域と、前記端部領域に対面する第2領域と、を含み、
前記第2領域は、第2遅相軸を有し、
前記第2遅相軸と前記長手方向との間の第2配向角は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である、長尺位相差フィルムの製造方法。
【0041】
[29]
前記第1領域は、第1遅相軸を有し、
前記第1遅相軸と前記長手方向との間の第1配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、[28]に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0042】
[30]
前記第1配向角は10°以上170°以下である、[29]に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0043】
[31]
前記第1配向角は30°以上150°以下である、[29]又は[30]に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0044】
[32]
前記第1領域は、前記短手方向における中心を含む、[28]~[31]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0045】
[33]
前記第2領域の前記短手方向に沿った長さは、1mm以上100mm以下である、[28]~[32]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0046】
[34]
前記第1領域の前記短手方向に沿った長さは、前記第2領域の前記短手方向に沿った長さの12倍以上である、[28]~[33]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0047】
[35]
前記位相差層は、一対の第3領域を更に含み、
前記一対の第2領域は、前記短手方向における前記一対の第3領域の間に位置し、
前記第1領域は、第1遅相軸を有し、
前記第3領域は、第3遅相軸を有し、
前記第3遅相軸と前記長手方向との間の第3配向角から90°を引いた値の絶対値は、前記第2配向角から90°を引いた値の絶対値より小さい、[28]~[34]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0048】
[36]
前記第3配向角は40°以上140°以下である、[35]に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0049】
[37]
前記第3領域は、前記短手方向における前記位相差層の端部を含む、[35]又は[36]に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0050】
[38]
前記第3領域は、前記基材に接触している、[35]~[37]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0051】
[39]
前記基材は、遅相軸を有するポリエチレンフィルムを含み、
前記ポリエチレンフィルムの前記遅相軸と前記長手方向との間の角度は、40°以上140°以下である、[38]に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0052】
[40]
前記第3領域の前記短手方向に沿った長さは、0.5mm以上50mm以下である、[35]~[39]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0053】
[41]
波長450nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(450)は、波長550nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(550)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、波長650nmにおける前記位相差層の前記第1領域での面内位相差Re(650)より小さく、
前記面内位相差Re(550)は、130nm以上153nm以下である、[29]~[40]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
【0054】
[42]
[1]~[15]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムを、接合層を含む長尺の被転写フィルムに積層する工程と、
前記接合層に接合した前記長尺位相差フィルムから、前記基材を剥がす工程と、を備える、長尺光学フィルムの製造方法。
【0055】
[43]
前記長尺光学フィルムは、前記位相差層の前記第1領域と、前記第2領域の一部と、を含み、
前記位相差層の前記第2領域の前記一部以外の残部は前記基材上に残留する、[42]に記載の長尺光学フィルムの製造方法。
【0056】
[44]
前記長尺位相差フィルムが前記被転写フィルムに積層された状態において、前記第2領域は前記短手方向における前記接合層の端部に対面する、[42]又は[43]に記載の長尺光学フィルムの製造方法。
【0057】
[45]
前記長尺位相差フィルムは、[8]~[14]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムであり、
前記長尺光学フィルムは、前記位相差層の前記第1領域と、前記第2領域の一部と、を含み、
前記位相差層の前記第3領域と、前記第2領域の前記一部以外の残部と、は前記基材上に残留する、[42]~[44]のいずれかに記載の長尺光学フィルムの製造方法。
【0058】
[46]
前記長尺位相差フィルムは、[8]~[14]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムであり、
前記長尺位相差フィルムが前記被転写フィルムに積層された状態において、前記第2領域は前記短手方向における前記接合層の端部に対面し、前記第3領域は、前記短手方向における前記接合層の外側に位置し、前記被転写フィルムの前記基材に対面する、[42]~[45]のいずれかに記載の長尺光学フィルムの製造方法。
【0059】
[47]
前記被転写フィルムは、偏光子を含む偏光層を含む、[42]~[46]のいずれかに記載の長尺光学フィルムの製造方法。
【0060】
以下、本開示の一実施の形態の詳細について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0061】
本明細書において、「フィルム」、「シート」及び「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されない。例えば「位相差フィルム」は、位相差シート又は位相差板と呼ばれる部材等と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。「偏光フィルム」は、偏光シート又は偏光板と呼ばれる部材等と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0062】
「フィルム面(シート面、板面)」とは、対象となるフィルム状(シート状、板状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(シート状部材、板状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。フィルム状(シート状、板状)の部材に対する法線方向とは、当該フィルム状(シート状、板状)の部材のフィルム面(シート面、板面)への法線方向のことを指す。
【0063】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。一例として、「パラメータBは、A1以上でもよく、A2以上でもよく、A3以上でもよい。パラメータBは、A4以下でもよく、A5以下でもよく、A6以下でもよい。」との記載について検討する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0064】
方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する符号を付した矢印により共通する第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3を示している。矢印の先端側が、各方向の第1側となる。矢印の先端とは反対側が、各方向の第2側となる。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面の奥に向かう矢印を、例えば図1に示すように、円の中に×を設けた記号により示した。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう矢印を、例えば図2に示すように、円の中に点を設けた記号により示した。
【0065】
なお、図1及び図13には断面を示すハッチングを付している。その他の図では、ハッチングを省略している。また、図8図12図15図17、及び図20図22には、配向膜30の配向規制力および位相差層40の配向状態を示すハッチングを付している。図8図12図15図17、及び図20図22に付したハッチングは、断面を示すものではない。
【0066】
<<長尺位相差フィルム10>>
図1図3は、本実施の形態による長尺位相差フィルム10の一例を示している。図1及び図2に示すように、長尺位相差フィルム10は、長手方向および短手方向を有している。短手方向は、長手方向に直交してもよい。図において、長尺位相差フィルム10の長手方向は、第2方向D2として示されている。長尺位相差フィルム10の短手方向は、第1方向D1として示されている。長尺位相差フィルム10は、第1方向D1及び第2方向D2に広がっている。長尺位相差フィルム10の法線方向は、第3方向D3にとして示されている。第3方向D3は、長尺位相差フィルム10の厚み方向である。第1方向D1及び第2方向D2は、互いに直交してもよい。第3方向D3は、第1方向D1と直交してもよい。第3方向D3は、第2方向D2と直交してもよい。
【0067】
図3に示すように、長尺位相差フィルム10は、巻取軸線RAを中心として巻取コア12に巻き取った巻体10Rとして、取り扱うことができる。これにより、長尺位相差フィルム10の取り扱い性を改善できる。後述するように、長尺位相差フィルム10は、ロールトゥロール方式の製造方法によって、製造され得る。長尺位相差フィルム10は、生産効率や製造コストにおいて優れる。
【0068】
本実施の形態による、長尺位相差フィルム10は、図4に示すように、基材20と、基材20と重ねられた位相差層40と、を含む。基材20は長尺である。位相差層40は長尺である。位相差層40は、第1領域41と、一対の第2領域42と、を含む。図示された例では、位相差層40は、一対の第3領域43をさらに含む。第1領域41は、短手方向における一対の第2領域42の間に位置する。一対の第2領域42は、短手方向における一対の第3領域43の間に位置する。位相差層40は、液晶組成物の硬化物を含む。第2領域42は水平配向を有する。第2領域42は第2遅相軸A42を有し、第2遅相軸A42と長手方向との間の第2配向角θ42は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である。
【0069】
「長尺」とは、フィルム等の対象物が、広げた状態において、5m以上の長さを有することを意味し、10m以上の長さを有してもよく、100m以上の長さを有してもよい。「長手方向」とは、フィルム等の対象物を広げた状態において、最も長い端縁に沿った方向を意味する。「短手方向」とは、フィルム等の対象物を広げた状態において、最小の長さが得られる方向を意味する。
【0070】
後述するように、接合層53を含む長尺の被転写フィルム50に長尺位相差フィルム10を積層し、次に、接合層53に接合した長尺位相差フィルム10から基材20を剥がすことによって、位相差層40を被転写フィルム50に転写できる。このとき、被転写フィルム50に転写された位相差層40の短手方向における端部へのバリの発生を抑制できる。
【0071】
図示された例において、長尺位相差フィルム10は、配向膜30を更に含む。配向膜30は、第3方向D3において、基材20と位相差層40との間に位置する。配向膜30は長尺である。以下、図面を参照しながら、長尺位相差フィルム10の各層について説明する。
【0072】
<位相差層40>
位相差層40は、液晶組成物の硬化物を含む。液晶組成物は、液晶化合物を含む。液晶組成物は、重合反応する液晶組成物、すなわち重合性液晶組成物でもよい。液晶組成物は、重合性液晶化合物を含んでもよい。位相差層40は、重合性液晶化合物を含んでもよい。位相差層40は、液晶組成物を塗布することによって塗布膜を形成し、次に液晶組成物を硬化させることによって、得られ得る。塗布膜内における液晶化合物の配向状態を、水平配向、垂直配向、傾斜配向、ツイスト配向、ハイブリッド配向等に調節してもよい。塗布膜内における液晶化合物の配向を調節することにより、位相差層40内の各領域の光学特性を制御できる。位相差層40の各領域における液晶化合物の配向については、後述する。
【0073】
重合性液晶化合物は、特に限定されない。重合性液晶化合物は、複屈折を有する層の形成に用いられる重合性液晶化合物でもよい。重合性液晶化合物は、位相差層40に所望されるリタデーション値、波長分散性、配向性、溶解性等に応じて適宜選択される。
【0074】
重合性液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物である。重合性液晶化合物は、分子内に重合性官能基を含む。重合性官能基によれば、液晶化合物を重合して固定できるので、配向安定性に優れ、位相差の経時変化を低減できる。重合性液晶化合物は、単一の重合性官能基を含む単官能性液晶化合物でもよい。重合性液晶化合物は、2以上の重合性官能基を含む多官能性液晶化合物でもよい。重合性官能基を2以上有することにより、液晶化合物の三次元的な配向がより安定し、位相差の経時変化を更に低減できる。重合性液晶化合物は、3つの重合性官能基を含む多官能性液晶化合物でもよい。重合性液晶化合物は、2つの重合性官能基を含む多官能性液晶化合物でもよい。重合性官能基は、紫外線や電子線等の電離放射線によって重合してもよい。重合性官能基は、熱の作用によって重合してもよい。重合性液晶化合物は、低分子液晶化合物でもよい。重合性液晶化合物は、高分子液晶化合物でもよい。
【0075】
重合性官能基は、ラジカル重合性官能基でもよい。ラジカル重合性官能基として、少なくとも1つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が例示される。重合性官能基の具体例として、置換基を有する若しくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が例示される。
【0076】
重合性官能基は、カチオン重合性官能基でもよい。重合性官能基の具体例として、脂環式エーテル基(エポキシ基、オキセタニル基等)、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状イミノエーテル基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基等が例示される。
【0077】
重合性液晶組成物は、単一の重合性液晶化合物を含んでもよい。重合性液晶組成物は、二種以上の重合性液晶化合物を含んでもよい。二種以上の重合性液晶化合物を組み合わせることにより、リタデーション値、波長分散性、配向性、溶解性、相転移温度等を調整できる。
【0078】
重合性液晶組成物は、液晶性を有さない重合性化合物、光重合開始剤、増感剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤等の材料を1種類以上含んでもよい。
【0079】
位相差層40の波長分散性は、逆分散性でもよい。逆分散性とは、面内位相差Reが短波長側から長波長側に向かって増大する波長分散性を意味する。位相差層40の波長分散性を逆分散性とすることにより、波長に応じた面内位相差Reの変動を抑制でき、色表現に優れる。逆分散性を示す重合性液晶化合物として、特開2019-73712号公報の一般式(1)で表されるもの、国際公開番号WO2017/043438の一般式(II)で表されるものが例示される。
【0080】
逆分散性を有する位相差層40は、第1領域41において、面内位相差に関して次の光学特性を有してもよい。
Re(450)<Re(550)
Re(550)<Re(650)
Re(450)は、波長450nmにおける位相差層40の第1領域41での面内位相差である。Re(550)は、波長550nmにおける位相差層40の第1領域41での面内位相差である。Re(650)は、波長650nmにおける位相差層40の第1領域41での面内位相差である。
【0081】
位相差層40の第1領域41でのRe(450)、Re(550)、及びRe(650)は、特に限定されない。位相差層40の第1領域41をλ/4位相差層とする例において、Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、90nm以上でもよく、100nm以上でもよく、110nm以上でもよい。位相差層40の第1領域41をλ/4位相差層とする例において、Re(450)、Re(550)、及びRe(650)は、180nm以下でもよく、160nm以下でもよく、150nm以下でもよい。位相差層40の第1領域41をλ/4位相差層とする例において、面内位相差Re(550)は、130nm以上でもよく、133nm以上でもよく、136nm以上でもよい。位相差層40の第1領域41をλ/4位相差層とする例において、面内位相差Re(550)は、153nm以下でもよく、150nm以下でもよく、147nm以下でもよい。位相差層40の第1領域41での面内位相差をこのように設定することによって、位相差層40の第1領域41を偏光子との組み合わせにおいて円偏光板として利用できる。
【0082】
位相差層40の第3方向D3に沿った厚みは、0.1μm以上でもよく、0.5μm以上でもよく、1.5μm以上でもよい。位相差層40の厚みは、5.0μm以下でもよく、4.0μm以下でもよく、3.0μm以下でもよい。位相差層40の厚みをこのように設定することにより、λ/4位相差層として適切な上記面内位相差を位相差層40の第1領域41に付与できる。
【0083】
位相差層40や、長尺位相差フィルム10を構成する構成要素の厚み、後述の被転写フィルム50や長尺光学フィルム55を構成する構成要素の厚みは、走査型透過電子顕微鏡(STEM)による長尺位相差フィルム10や被転写フィルム50等の観察画像における20箇所での測定値の平均値とする。
【0084】
面内位相差は、16箇所の測定値の平均値とする。16の測定箇所は、測定サンプルの外縁から1cmの領域を余白として、該余白よりも内側の領域に関して、縦方向及び横方向を5等分する線を引いた際の、交点の16箇所を測定の中心とする。測定サンプルが四角形の場合には、四角形の外縁から1cmの領域を余白として、該余白よりも内側の領域を縦方向及び横方向に5等分した線の交点の16箇所を中心として測定を行い、その平均値を算出することによって、当該測定サンプルの面内位相差が特定される。測定サンプルが円形、楕円形、三角形、五角形等の四角形以外の形状の場合、これらの形状に内接する最大面積の正方形または長方形を特定し、該正方形または長方形に関して、上記手法により16箇所の測定が行われる。面内位相差は、大塚電子社製の商品名「RETS-100」で測定される。
【0085】
RETS-100を用いた面内位相差Reの測定は、次の手順(A1)~(A4)に従う。
(A1)まず、RETS-100の光源を安定させるため、光源をつけてから60分以上放置する。その後、回転検光子法を選択するとともに、θモードを選択する。このθモードを選択することにより、ステージは傾斜回転ステージとなる。
(A2)次いで、RETS-100に以下の測定条件を入力する。
(測定条件)
・リタデーション測定範囲:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲:0°
・測定波長範囲:400nm~800nm
・測定対象の層の平均屈折率(例えば、PETフィルムの場合には、N=1.617とする)
・厚み:STEMで別途測定した厚み
(A3)次いで、この装置にサンプルを設置せずに、バックグラウンドデータを得る。装置は閉鎖系とし、光源を点灯させる毎にこれを実施する。
(A4)その後、装置内のステージ上にサンプルを設置して、測定する。
【0086】
面内位相差の測定対象が、幅が狭い等の理由によって十分な大きさを有さない場合、測定対象と同等の条件にて十分な大きさを有する測定用サンプルを作製し、この測定用サンプルについて測定された面内位相差を測定対象の面内位相差として用いる。
【0087】
<基材20>
基材20は、位相差層40を支持する。図示された例において、基材20は、配向膜30も支持する。基材20は、透明でもよい。透明とは、JIS K7361-1:1997に準拠する全光線透過率が50%以上であることを意味し、70%以上でもよく、80%以上でもよく、90%以上でもよい。長尺位相差フィルム10をロールトゥロール方式で製造する上で、基材20は、ロール状に巻き取り可能な可撓性を有してもよい。
【0088】
基材20の材料として、樹脂を用いてもよい。基材20の材料としてポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル等が例示される。
【0089】
二軸延伸したポリエチレンフィルムは、透明性が高く、機械的特性に優れる。二軸延伸ポリエチレンフィルムは、複屈折を有し得る。複屈折を有する二軸延伸ポリエチレンフィルムは、後述するように、位相差層40を形成するための液晶組成物に含まれる液晶化合物に対して、配向規制力を発揮できる。ポリエチレンフィルム等の多くの樹脂基材では、延伸軸が遅相軸となる。二軸延伸されたポリエチレンフィルム等の多くの樹脂基材において、延伸倍率が最も大きい延伸方向が遅相軸となる。樹脂フィルムは、通常、長手方向と、長手方向に直交する短手方向と、に延伸される。短手方向の延伸倍率は、長手方向の延伸倍率よりも大きい。
【0090】
図示された例において、二軸延伸樹脂基材20の遅相軸A20が長手方向(第2方向D2)に対してなす配向角θ20から90°を引いた値の絶対値は、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値より小さい。配向角θ20は、40°以上でもよく、50°以上でもよく、60°以上でもよく、70°以上でもよく、80°以上でもよい。配向角θ20は、140°以下でもよく、130°以下でもよく、120°以下でもよく、110°以下でもよく、100°以下でもよい。配向角θ20は90°でもよい。図4に示すように、配向角は、遅相軸と長手方向(第2方向D2)との間の角の大きさである。配向角は、長手方向における一方の側に延びる軸を基準軸ASとし、この基準軸ASに対し遅相軸が反時計回り方向になす角度の大きさとなる。配向角は、0°以上180°未満の角度として特定される。図4に示された例において、基準軸ASは、第2方向D2における第1側を向いている。
【0091】
基材20は、上述した材料からなるバインダー樹脂中に、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、帯電防止剤等の1種以上を含んでもよい。
【0092】
基材20の第3方向D3に沿った厚みは、10μm以上でもよく、25μm以上でもよく、30μm以上でもよい。基材20の厚みは、1000μm以下でもよく、200μm以下でもよく、150μm以下でもよい。
【0093】
配向膜30及び位相差層40に対面する基材20の面は、表面処理を施されていなくてもよい。後述するように位相差層40を被転写フィルム50に転写する際、未表面処理面を有する基材20を容易に長尺位相差フィルム10から剥がすことができる。配向膜30及び位相差層40に対面しない基材20の面は、表面処理を施されてもよい。
【0094】
<配向膜30>
図1及び図2に示すように、長尺位相差フィルム10は、基材20と位相差層40との間に配向膜30を含んでいる。配向膜30は、配向規制力を有する。配向膜30は、位相差層40の配向を調節する。配向膜30は、位相差層40に含まれる液晶化合物を一定方向に配列させる。
【0095】
配向膜30は、以下の記載のとおり液晶化合物に対して配向規制力を発揮する。配向膜は、ラビング配向膜でもよい。ラビング配向膜は、ラビング処理によって配向規制力を付与される。配向膜形成用組成物を基材20上に塗布して基材20上に塗布膜を形成し、ラビングロール等を用いて塗布膜をラビング処理することにより、ラビング配向膜が得られる。配向膜30は、光配向膜がより好ましい。光配向膜は、偏光を照射することによって配向規制力を付与される。
【0096】
配向膜の材料は、上記によれば特に制限されない。配向膜の材料として、配向膜の材料として、ラビング配向膜の材料や光配向膜の材料として使用されている材料を用いてもよい。ラビング配向膜の材料として、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂等が例示される。
【0097】
光配向膜の材料として、より好ましくは偏光を照射することにより配向規制力を発現する光配向性材料が用いられる。光配向膜の材料は、光二量化型材料および光異性化型材料のいずれであってもよい。光配向性材料を基材20上に塗布して基材20上に塗布膜を形成し、光配向性材料の塗布膜に偏光を照射して塗布膜を硬化させることによって、光配向膜が得られる。
【0098】
配向膜30の第3方向D3に沿った厚みは、1nm以上でもよく、60nm以上でもよい。配向膜30の厚みは、1000nm以下でもよく、500nm以下でもよい。
【0099】
<位相差層40の光学特性>
本実施の形態による長尺位相差フィルム10において、位相差層40は、第1領域41と、一対の第2領域42と、一対の第3領域43と、を含む。第1領域41は、短手方向における一対の第2領域42の間に位置する。一対の第2領域42は、短手方向における一対の第3領域43の間に位置する。
【0100】
第1領域41は、長尺位相差フィルム10から切り出されて位相差フィルム10X(図3参照)として用いられる。第1領域41は、位相差フィルム10Xの用途に応じた所望の位相差を付与される。第1領域41において、液晶化合物は水平配向されてもよい。水平配向とは、液晶化合物が、位相差層40のシート面に沿って配置されていることを意味する。第1領域41において、液晶化合物は、第1方向D1及び第2方向D2によって規定される面に沿った一方向に沿って延びるよう配列されてもよい。この例において、第1領域41は、面内複屈折を有し得る。第1領域41は、面内に第1遅相軸A41を有し得る。第1領域41における液晶化合物の配向は、配向膜30に付与された配向規制力によって、調節され得る。
【0101】
図示された例において、第1領域41の第1遅相軸A41と長手方向(第2方向D2)との間の第1配向角θ41は、10°以上170°以下である。第1配向角θ41は、一例として、10°以上でもよく、20°以上でよく、30°以上でもよい。この一例において、第1配向角θ41は、80°以下でもよく、70°以下でよく、60°以下でもよい。第1配向角θ41は、他の例として、100°以上でもよく、110°以上でよく、120°以上でもよい。この他の例において、第1配向角θ41は、170°以下でもよく、160°以下でよく、150°以下でもよい。
【0102】
図4に示された例において、第1領域41はλ/4位相差層として用いられてもよい。位相差層40の第1領域41は、第1方向D1及び第2方向D2のいずれかに透過軸を有する偏光層と積層されて、円偏光板を構成してもよい。この例において、第1領域41の第1遅相軸A41と長手方向(第2方向D2)との間の第1配向角θ41は、30°以上でもよく、35°以上でもよく、40°以上でもよく、42°以上でもよい。この例において、第1配向角θ41は、90°以下でもよく、80°以下でもよく、70°以下でもよく、60°以下でもよく、55°以下でもよく、50°以下でもよく、48°以下でもよい。この例において、第1配向角θ41は、45°でもよい。
【0103】
第1領域41をλ/4位相差層として用いる他の例として、第1配向角θ41は、125°以上でもよく、130°以上でよく、132°以上でもよい。この他の例において、第1配向角θ41は、145°以下でもよく、140°以下でよく、138°以下でもよい。この他の例において、第1配向角θ41は、135°でもよい。
【0104】
配向角は、既に説明したように、遅相軸と長手方向(第2方向D2)との間の角の大きさである。配向角は、長手方向における一方の側に延びる軸を基準軸ASとし、この基準軸ASに対し遅相軸が反時計回り方向になす角度の大きさとなる。配向角は、0°以上180°未満の角度として特定される。
【0105】
図4に示すように、第2領域42において、液晶化合物は水平配向されてもよい。すなわち、第2領域42において、液晶化合物は、位相差層40の面内で配向してもよい。さらに言い換えると、第2領域42において、液晶化合物は、第1方向D1及び第2方向D2によって規定される面に沿った一方向に沿って延びるよう配列されてもよい。この例において、第2領域42は、面内複屈折を有し得る。第2領域42は、面内に第2遅相軸A42を有し得る。第2領域42における液晶化合物の配向は、配向膜30に付与された配向規制力によって、調節され得る。第2遅相軸A42と長手方向(第2方向D2)との間の第2配向角θ42は、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満である。第2配向角θ42は、一例として、10°未満でもよく、8°以下でもよく、5°以下でもよく、0°でもよい。第2配向角θ42は、170°より大きくてもよく、172°以上でもよく、175°以上でもよい。第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値は、第1配向角θ41から90°を引いた値の絶対値より大きくてよい。言い換えると、第1配向角θ41から90°を引いた値の絶対値は、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値より小さくてよい。
【0106】
図4に示すように、第3領域43は第3遅相軸A43を有する。第3領域43において、液晶化合物は水平配向されてもよい。すなわち、第3領域43において、液晶化合物は、位相差層40の面内で配向してもよい。さらに言い換えると、第3領域43において、液晶化合物は、第1方向D1及び第2方向D2によって規定される面に沿った一方向に沿って延びるよう配列されてもよい。この例において、第3領域43は、面内複屈折を有し得る。第3領域43は、面内に第3遅相軸A43を有し得る。第3遅相軸A43と長手方向(第2方向D2)との間の第3配向角θ43から90°を引いた値の絶対値は、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値より小さくてよい。言い換えると、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値は、第3配向角θ43から90°を引いた値の絶対値より大きくてよい。図示された例において、第3配向角θ43は、40°以上140°以下である。一例として、第3配向角θ43は、40°以上でもよく、50°以上でもよく、60°以上でもよく、70°以上でもよく、80°以上でもよい。第3配向角θ43は、140°以下でもよく、130°以下でもよく、120°以下でもよく、110°以下でもよく、100°以下でもよい。第3配向角θ43は、90°でもよい。
【0107】
第3領域43における液晶化合物の配向は、配向膜30に付与された配向規制力によって、調節されてもよい。第3領域43における液晶化合物の配向は、延伸によって遅相軸を付与された基材20の配向規制力に起因して、調節されてもよい。
【0108】
長尺位相差フィルムの位相差層は、長尺の被転写フィルムに転写されて、使用され得る。従来の長尺位相差フィルムの位相差層において、液晶化合物は、全面に亘って、一定の方向に配向されていた。従来の長尺位相差フィルムの位相差層を被転写フィルムに転写して、長尺位相差フィルムから基材を長手方向に剥がすと、位相差層の短手方向(幅方向)における端部にバリが発生し得た。バリが付着した位相差フィルムや、当該位相差フィルムを用いて製造された光学フィルム等の製造物は、製品として使用できない。また、発生したバリは、長尺位相差フィルムが取り扱われる製造ラインを汚染する。製造ラインがバリで汚染されると、その後に当該製造ラインで製造される製造物にも、バリが付着し得る。すなわち、長尺位相差フィルムに関連した製造物の歩留まりを大きく低下させ得る。
【0109】
本開示の発明者らが、バリの発生について検討を行ったところ、バリの発生は、長尺位相差フィルムから基材を剥がす方向と、位相差層における液晶化合物の遅相軸と、の関係に影響を受けることが知見された。
【0110】
まず、後に参照する図17にも示すように、位相差層が被転写フィルムに転写される際、位相差層の両端部分は、その他の部分から引き裂かれて、基材上に残留する。つまり、位相差層の中央部分のみが被転写フィルムに転写される。そして、位相差層を引き裂く際、位相差層はその遅相軸に沿って引き裂かれ易くなることが確認された。長尺位相差フィルムにおける遅相軸の配向角は、通常0°以外であり、10°以上80°以下または100°以上170°以下となることが多く、例えば45°又は135°となる。配向角が45°又は135°となっている位相差層については、バリが生じ易かった。
【0111】
このような現象から、配向軸を長手方向に沿わせることによって、言い換えると、配向角から90°を引いた値の絶対値を大きくすることによって、基材の引き剥がし方向である長手方向(第2方向D2)に沿って位相差層を安定して引き裂き得ることが予想される。
【0112】
このような検討に基づき、本実施の形態では、位相差層40の各領域41,42,43における液晶化合物の配向を調節している。本実施の形態において、第2領域42及び第3領域43は、長尺位相差フィルム10から切り出されて位相差フィルム10Xとして使用されることを意図されていない。第2領域42は、基材20を長尺位相差フィルム10から剥がす際に、位相差層40の引き裂きを予定された領域である。第3領域43は、長尺位相差フィルム10から剥がされた基材20に残留することを意図された領域である。
【0113】
まず、本実施の形態において、位相差層40は、第2領域42において、遅相軸A42の配向角θ42が、0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満となっている。したがって、第2領域42では、位相差層40が長手方向(第2方向D2)に沿って引き裂かれ易い。これにより、基材20の引き剥がし方向である長手方向(第2方向D2)に沿って、位相差層40を第2領域42において直線状に引き裂き得る。この結果、被転写フィルム50に転写された位相差層40Pの短手方向(第1方向D1)の端部E40Pに発生するバリを低減できる。
【0114】
また、本件発明者が得た知見によれば、位相差層40の配向軸が位相差層40を引き裂く方向に対して大きな角度をなす場合、言い換えると、位相差層40の配向角から90°を引いた値の絶対値が小さくなると、位相差層40は上記引き裂き方向へ引き裂きづらくなる。このような知見に基づき、図示された例において、位相差層40は、第2領域42における遅相軸A42の配向角θ42から90°を引いた値の絶対値よりも、第1領域41における遅相軸A41の配向角θ41から90°を引いた値の絶対値が小さくなっている。したがって、第1領域41は、第2領域42よりも長手方向に引き裂きづらい。これにより、長尺位相差フィルム10から基材20を長手方向(第2方向D2)に剥がす際、基材20の引き剥がし方向に沿った直線状の第2領域42での引き裂きが促進される。また、図示された例において、第2領域42における遅相軸A42の配向角θ42が0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満であるのに対し、第1領域41における遅相軸A41の配向角θ41は、30°以上150°以下である。したがって、第1領域41は、第2領域42と比較して、長手方向での引き裂きが顕著に困難である。これにより、長尺位相差フィルム10から基材20を剥がす際、基材20の引き剥がし方向に沿った直線状の第2領域42での引き裂きが効果的に促進される。
【0115】
また、図示された例において、位相差層40は、第2領域42における遅相軸A42の配向角θ42から90°を引いた値の絶対値よりも、第3領域43における遅相軸A43の配向角θ43から90°を引いた値の絶対値が小さくなっている。したがって、第3領域43は、第2領域42よりも長手方向に引き裂きづらい。これにより、長尺位相差フィルム10から基材20を剥がす際、第2領域42での位相差層40の引き裂きが促進される。また、図示された例において、第2領域42における遅相軸A42の配向角θ42が0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満であるのに対し、第3領域43における遅相軸A43の配向角θ43は、40°以上140°以下である。したがって、第3領域43は、第2領域42と比較して、長手方向での引き裂きが顕著に困難である。これにより、長尺位相差フィルム10から基材20を剥がす際、基材20の引き剥がし方向に沿った直線状の第2領域42での引き裂きが効果的に促進される。また、第2領域42が第2領域42よりも長手方向に引き裂きづらい第1領域41と第3領域43とによって挟まれていることにより、第2領域42をより信頼性高く直線状に引き裂くことができる。
【0116】
図2及び図4に示すように、図示された長尺位相差フィルム10において、位相差層40の第1領域41は、長尺位相差フィルム10の短手方向(第1方向D1)における中心位置を含んでいる。位相差層40の第1領域41は、位相差層40の短手方向(第1方向D1)における中心位置を含んでいる。また、第3領域43は、短手方向(第1方向D1)における位相差層40の端部E40を含んでいる。したがって、位相差フィルム10Xとして使用されることを意図された第1領域41の面積を大きく確保できる。その一方で、基材20に残留することを意図された第3領域43の面積を小さくできる。結果として、長尺位相差フィルム10から製造物を製造する際の歩留まりを十分に高くできる。
【0117】
図示された例において、第1領域41及び第2領域42は、第1方向D1に隣接している。第2領域42及び第3領域43は、第1方向D1に隣接している。したがって、長尺位相差フィルム10から製造物を製造する際の歩留まりを十分に高くできる。
【0118】
長尺位相差フィルムから製造物を製造する際の歩留まりを高くする観点および位相差層40の安定した転写を実現する観点から、各領域41,42,43の寸法を次のように決定してもよい。第2領域42の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL42(図4参照)は、1mm以上でもよく、5mm以上でもよく、10mm以上でもよい。第2領域42の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL42は、200mm以下でもよく、100mm以下でもよく、50mm以下でもよい。第3領域43の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL43(図4参照)は、0.5mm以上でもよく、1mm以上でもよく、1.5mm以上でもよい。第3領域43の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL43は、50mm以下でもよく、40mm以下でもよく、30mm以下でもよい。第1領域41の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL41(図2参照)は、第2領域42の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL42(図4参照)の6倍以上でもよく、12倍以上でもよく、20倍以上でもよい。第1領域41の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL41(図2参照)は、第2領域42の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL42(図4参照)の250倍以下でもよい。
【0119】
図示された長尺位相差フィルム10は、基材20と、位相差層40の第1領域41及び第2領域42と、の間に位置する配向膜30を含んでいる。第1領域41及び第2領域42は、配向膜30に接触している。配向膜30は、第3方向D3において第3領域43と基材20との間に位置していない。第3領域43は基材20に接触している。この例によれば、第1領域41及び第2領域42における液晶化合物の配向は、配向膜30によって調節できる。第3領域43における液晶化合物の配向は、基材20によって調節できる。例えば、基材20の表面性状や、基材20の基材遅相軸A20についての基材配向角θ20等によって、第3領域43における液晶化合物の配向を制御できる。すなわち、位相差層40の三つの領域41,42,43の配向を、高い自由度で制御できる。
【0120】
図示された例において、配向膜30は、中央領域31及び一対の端部領域32を含む。中央領域31は、第3方向D3において位相差層40の第1領域41に対面する。中央領域31は、長尺位相差フィルム10の短手方向(第1方向D1)における中心を含む。中央領域31は、配向膜30の短手方向(第1方向D1)における中心を含む。中央領域31は、配向規制力を有している。位相差層40の第1領域41において、液晶化合物は、中央領域31の配向規制力に対応した一方向に沿って延びるよう配向されている。各端部領域32は、第3方向D3において位相差層40の第2領域42に対面する。端部領域32は、短手方向(第1方向D1)における端部E30を含む。各端部領域32は、配向規制力を有している。位相差層40の第2領域42において、液晶化合物は、対面する端部領域32の配向規制力に対応した一方向に沿って延びるよう配向されている。図示された例では、中央領域31も配向規制力を有している。位相差層40の第1領域41において、液晶化合物は、対面する中央領域31の配向規制力に対応した一方向に沿って延びるよう配向されている。また、図示された例において、端部領域32は、その配向規制力に起因して調節される液晶化合物の配向方向が、中央領域31の配向規制力に起因して調節される液晶化合物の配向方向と異なるように、形成されてよい。この場合、位相差層40の第2領域42において、液晶化合物は、第1領域41において液晶化合物が延びる方向とは異なる方向に沿って延びるよう配向される。
【0121】
この例において、配向膜30は光配向膜でもよい。光配向膜によれば、配向膜30の各領域における配向規制力を、他の領域から独立して、容易に調節できる。
【0122】
この例において、基材20は、二軸延伸されたポリエチレンフィルムを含んでもよい。二軸延伸されたポリエチレンフィルムの基材遅相軸A20に関する基材配向角θ20は、通常、40°以上140°以下となる。二軸延伸されたポリエチレンフィルム上に位相差層40の第3領域43を形成することによって、第3領域43の第3遅相軸A43に関する第3配向角θ43は40°以上140°以下となる。すなわち、長手方向への引き裂きが困難な第3領域43を容易に形成できる。
【0123】
基材20の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W20(図1及び図2参照)は、1000mm以上でもよく、1150mm以上でもよく、1200mm以上でもよい。基材20の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W20は、2000mm以下でもよく、1800mm以下でもよく、1600mm以下でもよい。配向膜30の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W30(図1及び図2参照)は、950mm以上でもよく、1100mm以上でもよく、1150mm以上でもよい。配向膜30の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W30は、1950mm以下でもよく、1750mm以下でもよく、1550mm以下でもよい。位相差層40の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W40(図1及び図2参照)は、970mm以上でもよく、1120mm以上でもよく、1170mm以上でもよい。位相差層40の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W40は、1970mm以下でもよく、1770mm以下でもよく、1570mm以下でもよい。位相差層40の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W40は、配向膜30の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W30より大きくてもよい。位相差層40の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W40は、配向膜30の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W40より小さくてもよい。長尺位相差フィルム10の長手方向(第2方向D2)に沿った長さは、5m以上でもよく、10m以上でもよく、100m以上でもよい。長尺位相差フィルム10の長手方向(第2方向D2)に沿った長さは、10000m以下でもよく、8000m以下でもよく、6000m以下でもよい。
【0124】
<長尺位相差フィルム10の製造方法>
次に、長尺位相差フィルム10の製造方法の一例について説明する。以下の説明では、ロールトゥロール方式の製造方法により、図1図4に示された長尺位相差フィルム10が製造される。
【0125】
図5は、長尺位相差フィルム10の製造方法の一例および長尺位相差フィルム10の製造装置70の一例を示している。製造装置70は、長尺の基材20を巻き取った供給コア71と、製造された長尺位相差フィルム10を回収する回収コア72と、供給コア71から回収コア72まで基材20や長尺位相差フィルム10を案内する搬送ロール73と、を含んでいる。製造装置70は、配向膜30を基材20上に形成するための装置として、第1供給装置76、第1乾燥装置77及び第1硬化装置78を含んでいる。製造装置70は、位相差層40を形成するための装置として、第2供給装置81、第2乾燥装置82及び第2硬化装置83を含んでいる。
【0126】
まず、供給コア71に巻き取られた基材20を供給する。搬送ロール73によって搬送される基材20は、第1供給装置76に対面する位置を通過する。第1供給装置76は、基材20の一方の面に、光配向性材料を含む配向膜形成用組成物34を塗布する。図6に示すように、基材20の一方の面上に、配向膜用組成物34の第1塗布膜35が形成される。
【0127】
搬送ロール73によって搬送される基材20は、第1乾燥装置77に対面する位置を通過する。第1乾燥装置77は、配向膜形成用組成物34の第1塗布膜35を乾燥させる。一例として、第1乾燥装置77は、高温且つ乾燥した気体を配向膜形成用組成物34の第1塗布膜35に供給する。
【0128】
搬送ロール73によって搬送される基材20は、第1硬化装置78に対面する位置を通過する。第1硬化装置78は、配向膜形成用組成物34の第1塗布膜35の硬化プロセスに対応した構成を有する。図5に示すように、第1硬化装置78は、第1露光装置78A、第1マスク78B、第2露光装置78C、及び第2マスク78Dを含んでもよい。第1マスク78Bは、第1露光装置78Aと基材20との間に位置している。第2マスク78Dは、第2露光装置78Cと基材20との間に位置している。第1硬化装置78内において、第1露光装置78A及び第2露光装置78Cは、基材20の進行方向に並んでいる。第1硬化装置78内において、第1マスク78B及び第2マスク78Dは、基材20の進行方向に並んでいる。図示された例において、第2露光装置78C及び第2マスク78Dは、基材20の進行方向における第1露光装置78A及び第1マスク78Bの下流側に配置されている。
【0129】
図示された例において、第1露光装置78Aは、配向膜形成用組成物34の第1塗布膜35に向けて偏光を放出する。図7に示すように、第1マスク78Bは、第1透過領域78B1と一対の第1遮光領域78B2とを含んでいる。第1透過領域78B1は、第1マスク78Bに対面する基材20の短手方向D1における、一対の第1遮光領域78B2の間に位置している。第1露光装置78Aから放出された偏光は、第1透過領域78B1を透過する。第1露光装置78Aから放出された偏光は、第1遮光領域78B2で遮光される。また、図8に示すように、第2マスク78Dは、一対の第2透過領域78D1と第2遮光領域78D2とを含んでいる。第2遮光領域78D2は、第2マスク78Dに対面する基材20の短手方向D1における、一対の第2透過領域78D1の間に位置している。第2露光装置78Cから放出された偏光は、第2透過領域78D1を透過する。第2露光装置78Cから放出された偏光は、第2遮光領域78D2で遮光される。
【0130】
図7に示すように、配向膜形成用組成物34の第1塗布膜35は、第1透過領域78B1に対面する領域において、偏光を照射される。また、図8に示すように、第1塗布膜35は、第2透過領域78D1に対面する領域において、偏光を照射される。偏光を用いた露光によって、第1塗布膜35は偏光に応じた配向規制力を付与される。図示された例において、第1塗布膜35は、第1透過領域78B1に対面する領域と第2透過領域78D1に対面する領域とで、互いに偏光状態の異なる偏光を照射される。このため、第1塗布膜35は、第1透過領域78B1に対面する領域と第2透過領域78D1に対面する領域とで異なる配向方向への配向規制力を発現する。図示された例では、第1透過領域78B1に対面する領域が、配向膜30の中央領域31となる。また、第2透過領域78D1に対面する領域が、配向膜30の端部領域32となる。端部領域32は、その配向規制力に起因して調節される液晶化合物の配向方向が、中央領域31の配向規制力に起因して調節される液晶化合物の配向方向と異なる。
【0131】
なお、図示された例では、第2露光装置78C及び第2マスク78Dは、基材20の進行方向における第1露光装置78A及び第1マスク78Bの下流側に配置されているが、これに限られない。第2露光装置78C及び第2マスク78Dは、基材20の進行方向における第1露光装置78A及び第1マスク78Bの上流側に配置されていてもよい。言い換えると、配向膜30の中央領域31が端部領域32よりも先に第1露光装置78Aにより偏光を照射されてもよいし、端部領域32が中央領域31よりも先に第2露光装置78Cにより偏光を照射されてもよい。
【0132】
以上により、図9に示すように、基材20と配向膜30とを含む中間体15が得られる。中間体15において、配向膜30は、中央領域31及び端部領域32を含む。配向膜30は、中央領域31と端部領域32とで、互いに異なる配向方向への配向規制力を有する。
【0133】
図8図9、後述する図10図12図15図17、及び図20図22には、配向膜30の配向規制力および位相差層40の配向状態に応じたハッチングが付されている。図8図12図15図17、及び図20図22に付したハッチングは、断面を示すものではない。図8図12図15図17、及び図20図22において、位相差層40において液晶化合物が規則的な配向を有さない領域には、パターンを付していない。
【0134】
図5に示すように、中間体15は、搬送ロール73によって搬送され、第2供給装置81に対面する位置を通過する。第2供給装置81は、中間体15の一方の面上に、液晶化合物を含む液晶組成物44を塗布する。図10に示すように、基材20の一方の面上および配向膜30上に、第2塗布膜45が形成される。第2塗布膜45は硬化しておらず、第2塗布膜45内において液晶化合物は、配列を変更し得る。
【0135】
配向膜30の端部領域32と第3方向D3に対面する第2塗布膜45の領域において、液晶化合物は、端部領域32の配向規制力により、一定方向に延びるように配向される。配向膜30の端部領域32と第3方向D3に対面する第2塗布膜45の領域に、位相差層40の第2領域42が形成される。図4に示された長尺位相差フィルム10の製造において、第2配向角θ42が0°以上10°未満又は170°より大きく180°未満となるように第2領域42内の液晶化合物が配向され得る。
【0136】
配向膜30の中央領域31と第3方向D3に対面する第2塗布膜45の領域において、液晶化合物は、中央領域31の配向規制力により、一定方向に延びるように配向される。配向膜30の中央領域31と第3方向D3に対面する第2塗布膜45の領域に、位相差層40の第1領域41が形成される。図4に示された長尺位相差フィルム10の製造において、第1配向角θ41から90°を引いた値の絶対値が、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値より小さくなるように、第1領域41内の液晶化合物が配向され得る。
【0137】
図10に示す例では、第2塗布膜45は、短手方向(第1方向D1)において配向膜30の外側まで延びている。短手方向における「外側」とは、短手方向における中心とは反対側を意味する。短手方向における「内側」とは、短手方向における中心側を意味する。第2塗布膜45の短手方向(第1方向D1)における端部領域は、基材20と第3方向D3に対面する。第2塗布膜45の短手方向(第1方向D1)における端部領域は、基材20上に位置している。第2塗布膜45の短手方向(第1方向D1)における端部領域において、液晶化合物は、基材20から配向規制力を受ける。樹脂基材は、通常、最も延伸倍率が高い方向に配向規制力を発現する。延伸された樹脂基材は、通常、その遅相軸と平行な方向に配向規制力を発現する。延伸されたポリエステル基材は、遅相軸と平行な方向に配向規制力を発現する。基材20と第3方向D3に接触する第2塗布膜45の領域に、位相差層40の第3領域43が形成される。図4に示された長尺位相差フィルム10の製造において、第3配向角θ43から90°を引いた値の絶対値が、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値より小さくなるように、第3領域43内の液晶化合物が配向され得る。
【0138】
搬送ロール73によって搬送される中間体15は、第2乾燥装置82に対面する位置を通過する。第2乾燥装置82は、液晶組成物44の第2塗布膜45を乾燥させる。一例として、第2乾燥装置82は、高温且つ乾燥した気体を液晶組成物44の第2塗布膜45に供給する。
【0139】
搬送ロール73によって搬送される中間体15は、第2硬化装置83に対面する位置を通過する。第2硬化装置83は、液晶組成物44の第2塗布膜45の硬化プロセスに対応した構成を有する。図11に示すように、第2硬化装置83は、露光装置83Aを含んでもよい。図示された例において、露光装置83Aは、液晶組成物44の第2塗布膜45に向けて電離放射線を放出する。液晶組成物44の第2塗布膜45は、第2硬化装置83から電離放射線を照射されて、硬化する。硬化処理中、液晶化合物が配列を維持したまま、第2塗布膜45が硬化する。位相差層40の第1領域41、第2領域42及び第3領域43の各々において、液晶化合物が水平配向する。また、図示された例では、液晶化合物は、第2領域42において、第2配向角θ42が0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満となるように配列される。また、液晶化合物は、第1領域41において、第1配向角θ41から90°を引いた値の絶対値が、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値よりも小さくなるように配列される。また、液晶化合物は、第3領域43において、第3配向角θ43から90°を引いた値の絶対値が、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値よりも小さくなるように配列される。
【0140】
以上のようにして、長尺位相差フィルム10が製造される。製造された長尺位相差フィルム10は、長手方向及び短手方向を含む。長尺位相差フィルム10は、基材20、配向膜30及び位相差層40を含む。基材20、配向膜30及び位相差層40の各々は、長尺位相差フィルム10の長手方向と平行な長手方向を含む。基材20、配向膜30及び位相差層40の各々は、長尺位相差フィルム10の短手方向と平行な短手方向を含む。
【0141】
<<長尺光学フィルム55及び長尺偏光フィルム60>>
上述してきた長尺位相差フィルム10を用いて、長尺光学フィルム55が製造される。長尺光学フィルム55は、長尺の被転写フィルム50と、長尺位相差フィルム10から転写された長尺の位相差層40Pと、を含む。図12は、長尺光学フィルム55の一例を示す断面図である。図12に示された長尺光学フィルム55は、図13に示された被転写フィルム50に、図1図11に示された長尺位相差フィルム10の位相差層40を転写することによって、製造される。
【0142】
図13に示された被転写フィルム50は、長尺の偏光層52を含む。偏光層52は、特定の方向に振動する偏光成分を透過させ、特定の方向に直交する方向に振動する偏光成分を遮光する。図12に示された長尺光学フィルム55は、偏光層52と、λ/4位相差層として機能する位相差層40Pの第1領域41と、の組合せにより、円偏光板として機能する。すなわち、この例において、長尺光学フィルム55は、長尺偏光フィルム60となる。
【0143】
厳密に言えば、いずれかの波長の光に対し、長尺偏光フィルム60は円偏光板として機能し、その他の波長の光に対し、長尺偏光フィルム60は、通常、楕円偏光板として機能する。400nm以上800nm以下のいずれかの波長の光に対して円偏光板として機能する偏光板を、円偏光板と呼ぶ。
【0144】
図13及び図12に示された具体例を参照して、被転写フィルム50及び長尺光学フィルム55について、更に詳述する。
【0145】
被転写フィルム50及び長尺光学フィルム55は、長尺であって、長手方向および短手方向を有する。被転写フィルム50及び長尺光学フィルム55の構成要素となる各層も、長尺であって、長手方向および短手方向を有する。被転写フィルム50の長手方向は、被転写フィルム50の構成要素の長手方向と平行である。被転写フィルム50の短手方向は、被転写フィルム50の構成要素の短手方向と平行である。長尺光学フィルム55の長手方向は、長尺光学フィルム55の構成要素の長手方向と平行である。長尺光学フィルム55の短手方向は、長尺光学フィルム55の構成要素の短手方向と平行である。
【0146】
被転写フィルム50は、基材51及び接合層53を含む。図13に示された被転写フィルム50は、基材51、偏光層52及び接合層53を、第3方向D3にこの順で含む。被転写フィルム50の基材51は、特に限定されない。被転写フィルム50の基材51は、上述した長尺位相差フィルム10の基材20と同一でもよい。ロールトゥロール方式の製造方法を適用可能とする観点から、基材51の材料は樹脂でもよい。基材51の材料として、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、及びアクリルフィルムが例示される。基材51の第3方向D3に沿った厚みは、長尺位相差フィルム10の基材20の第3方向D3に沿った厚みと同様の範囲に設定できる。
【0147】
接合層53は、特に制限されない。接合層53は、粘着材を含んでもよいし、接着材を含んでもよい。接合層53の材料は、特に制限されない。接合層53の材料は、PVA系接着材やアクリル系粘着材でもよい。接合層53の第3方向D3に沿った厚みは、1μm以上でもよく、1.5μm以上でもよく、2μm以上でもよい。接合層53の厚みは、200μm以下でもよく、160μm以下でもよく、120μm以下でもよい。
【0148】
偏光層52は、吸収型の偏光子を含んでもよい。吸収型の偏光子は、吸収軸および透過軸を有する。吸収型の偏光子は、透過軸と平行な方向に振動する直線偏光成分を透過し、吸収軸と平行な方向に振動する直線偏光成分を吸収する。偏光層52は、反射型の偏光子を含んでもよい。反射型の偏光子は、反射軸および透過軸を有する。反射型の偏光子は、透過軸と平行な方向に振動する直線偏光成分を透過し、反射軸と平行な方向に振動する直線偏光成分を反射する。
【0149】
偏光層52の偏光子は、ヨウ素等により染色し延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルムでもよい。偏光層52の偏光子は、二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子でもよい。偏光層52の偏光子は、多層薄膜型偏光子でもよい。偏光層52の第3方向D3に沿った厚みは、0.5μm以上でもよく、1μm以上でもよく、2μm以上でもよい。偏光層52の厚みは、150μm以下でもよく、120μm以下でもよく、80μm以下でもよい。
【0150】
接合層53の短手方向(第1方向D1)における端部E53は、長尺位相差フィルム10に含まれる位相差層40の第2領域42に対面してもよい。これにより、位相差層40を転写する際、位相差層40が長手方向(第2方向D2)に沿って引き裂かれ易い第2領域42において、位相差層40を引き裂くことができる。
【0151】
接合層53の端部E53が、第2領域42に対面するため、各層の短手方向(第1方向D1)に沿った幅を次のように設定してもよい。接合層53の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W53(図13参照)は、長尺位相差フィルム10に含まれる位相差層40の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W40よりも小さくてもよい。接合層53の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W53(図13参照)は、長尺位相差フィルム10に含まれる位相差層40の第1領域41及び一対の第2領域42の短手方向(第1方向D1)に沿った合計長さL42,L41,L42よりも小さくてもよい。接合層53の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W53(図13参照)は、長尺位相差フィルム10に含まれる位相差層40の第1領域41の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL41よりも大きくてもよい。
【0152】
接合層53の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W53は、940mm以上でもよく、1090mm以上でもよく、1140mm以上でもよい。接合層53の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W53は、1940mm以下でもよく、1740mm以下でもよく、1540mm以下でもよい。
【0153】
基材51の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W51(図13参照)は、接合層53の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W53より大きくてもよい。基材51の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W51は、基材20の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W20と同様の範囲に設定してもよい。
【0154】
偏光層52の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W52は、接合層53の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W53以上でもよい。偏光層52の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W52は、基材51の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W51以下でもよい。偏光層52の幅をこのように設定することにより、接合層53が設けられている領域における被転写フィルム50の厚みの変動を抑制できる。これにより、長尺位相差フィルム10の位相差層40Pを被転写フィルム50に安定して転写できる。
【0155】
被転写フィルム50の長手方向(第2方向D2)に沿った長さは、長尺位相差フィルム10の長手方向(第2方向D2)に沿った長さと同様の範囲に設定してもよい。
【0156】
図12に示すように、長尺光学フィルム55は、被転写フィルム50と、位相差層40Pと、を含む。位相差層40Pは、長尺位相差フィルム10に含まれていた位相差層40の一部である。長尺光学フィルム55の位相差層40Pは、長尺位相差フィルム10に含まれていた位相差層40の第1領域41と、一対の第2領域42の各々の一部(第1部分)42Aと、を含む。長尺光学フィルム55の位相差層40Pは、長尺位相差フィルム10に含まれていた位相差層40の一対の第2領域42の各々の前記一部42A以外の残部(第2部分)42Bと、一対の第3領域43と、を含まない。後に参照する図17に示されているように、位相差層40の各第2領域42の短手方向(第1方向D1)における内側部分が、被転写フィルム50に転写される。位相差層40の各第2領域42の短手方向(第1方向D1)における外側部分が、第3領域43とともに基材20に残留する。第2領域42の前記内側部分が、第2領域42の前記一部42Aである。第2領域42の前記外側部分が、第2領域42の前記残部42Bである。
【0157】
図12に示された例において、被転写フィルム50は、基材51、偏光層52、接合層53、位相差層40P、及び配向膜30Pを、第3方向D3にこの順で含む。配向膜30Pは、長尺位相差フィルム10に含まれていた配向膜30の一部である。配向膜30Pは、長尺位相差フィルム10に含まれていた配向膜30のうちの位相差層40Pと第3方向D3に対面する部分である。被転写フィルム50の配向膜30Pは、長尺位相差フィルム10に含まれていた配向膜30の中央領域31と、一対の端部領域32の各々の一部(第1部分)32Aと、を含む。被転写フィルム50の配向膜30Pは、長尺位相差フィルム10に含まれていた配向膜30の一対の端部領域32の各々の前記一部32A以外の残部(第2部分)32Bを含まない。配向膜30の各端部領域32の短手方向(第1方向D1)における内側部分が、被転写フィルム50に転写される。配向膜30の各端部領域32の短手方向(第1方向D1)における外側部分が、基材20に残留する。端部領域32の前記内側部分が、端部領域32の前記一部32Aである。端部領域32の前記外側部分が、端部領域32の前記残部32Bである。
【0158】
図12に示された長尺光学フィルム55は、長尺偏光フィルム60として機能する。この用途において、位相差層40Pはλ/4位相差層として機能する。この位相差層40Pの第1領域41における第1遅相軸A41と偏光層52の透過軸との間の角度の大きさは、35°以上でもよく、40°以上でもよく、42°以上でもよい。位相差層40Pの第1遅相軸A41と偏光層52の透過軸との間の角度の大きさは、55°以下でもよく、50°以下でよく、48°以下でもよい。位相差層40Pの第1遅相軸A41と偏光層52の透過軸との間の角度は、45°でもよい。
【0159】
長尺光学フィルム55の製造方法の一例について説明する。以下の説明では、ロールトゥロール方式の製造方法により、長尺光学フィルム55の一例として、図12に示された長尺偏光フィルム60が製造される。
【0160】
図14は、長尺光学フィルム55の製造方法の一例および長尺光学フィルム55の製造装置90の一例を示している。製造装置90は、第1供給コア91、第2供給コア92、第1回収コア93、第2回収コア94、及び搬送ロール95を含む。第1供給コア91は、長尺位相差フィルム10を繰り出す。長尺位相差フィルム10は、予め製造されて第1供給コア91に巻き取られてもよい。図示された例に代えて、長尺位相差フィルム10が連続的に製造されて搬送ロール95に送り出されてもよい。第2供給コア92は、長尺の被転写フィルム50を繰り出す。長尺の被転写フィルム50は、予め製造されて第2供給コア92に巻き取られてもよい。図示された例に代えて、長尺の被転写フィルム50が連続的に製造されて搬送ロール95に送り出されてもよい。第1回収コア93は、製造された長尺光学フィルム55を回収する。第2回収コア94は、長尺の基材20を回収する。搬送ロール95は、第1搬送ロール95A及び第2搬送ロール95Bを含む。
【0161】
まず、第1供給コア91から第1搬送ロール95Aに向けて、長尺位相差フィルム10が供給される。長尺位相差フィルム10の供給と並行して、第2供給コア92から第1搬送ロール95Aに向けて被転写フィルム50が供給される。図15に示すように、長尺位相差フィルム10及び被転写フィルム50は、一対の第1搬送ロール95Aの間に供給される。一対の第1搬送ロール95Aの間で、長尺位相差フィルム10及び被転写フィルム50は積層される。長尺位相差フィルム10の位相差層40及び被転写フィルム50の接合層53が接触する。一対の第1搬送ロール95Aは、長尺位相差フィルム10及び被転写フィルム50を互いに向けて押す。これにより、位相差層40が接合層53に接合する。
【0162】
図15に示すように、接合層53の両端部E53は、それぞれ、位相差層40の第2領域42と第3方向D3に対面する。すなわち、接合層53は、位相差層40の第1領域41と、一対の第2領域42の第1方向D1における内側部分である一部42Aと、に接合する。接合層53は、位相差層40の一対の第3領域43と、一対の第2領域42の第1方向D1における外側部分である一部42A以外の残部42Bとに、第3方向D3に対面していない。長尺位相差フィルム10が被転写フィルム50に積層された状態において、第3領域43および第2領域42の残部42Bは、短手方向(第1方向D1)において接合層53より外側に位置する。
【0163】
次に、図14に示すように、積層された長尺位相差フィルム10及び被転写フィルム50は、第2搬送ロール95Bの間に向けて供給される。図14及び図16に示すように、長尺位相差フィルム10が一対の第2搬送ロール95Bの間を通過した後、基材20が長尺位相差フィルム10から引き剥がされる。ロールトゥロール方式の製造方法において、基材20は、長手方向である第2方向D2に沿って引き剥がされていく。
【0164】
図17に示すように、位相差層40のうちの接合層53に接合していた部分が、位相差層40Pとして、接合層53に接合したままに維持され、被転写フィルム50に転写される。配向膜30のうちの位相差層40Pと第3方向D3に対面する部分も、配向膜30Pとして、被転写フィルム50に転写される。図17に示すように、位相差層40は、第2領域42内の位置であって、接合層53の端部E53と第3方向D3に対面する位置において、引き裂かれる。同様に、配向膜30は、端部領域32内の位置であって、接合層53の端部E53と第3方向D3に対面する位置において、引き裂かれる。
【0165】
すなわち、位相差層40のうちの第1領域41と、第2領域42の第1方向D1における内側部分となる一部42Aとが、位相差層40Pとして、被転写フィルム50に転写される。位相差層40のうちの第3領域43と、第2領域42の第1方向D1における外側部分となる残部42Bとが、基材20に密着したままとなる。配向膜30のうちの中央領域31と、端部領域32の第1方向D1における内側部分となる一部32Aとが、配向膜30Pとして、被転写フィルム50に転写される。配向膜30のうちの端部領域32の第1方向D1における外側部分となる残部32Bが、基材20に接合したままとなる。
【0166】
以上のようにして、長尺位相差フィルム10から被転写フィルム50へと位相差層40P及び配向膜30Pを転写することによって、長尺偏光フィルム60が連続的に製造される。製造された長尺偏光フィルム60は、第1回収コア93に回収される。配向膜30P及び位相差層40Pから剥がされた基材20は、第2回収コア94に回収される。
【0167】
後述する光学フィルム55X及び偏光フィルム60Xの歩留まりを高くする観点および位相差層40の安定した転写を実現する観点から、位相差層40Pに含まれる第2領域(一部)42Aの短手方向(第1方向D1)に沿った長さL42A(図11参照)を次のように決定してもよい。長さL42Aは、1mm以上でもよく、2mm以上でもよく、5mm以上でもよい。長さL42Aは、100mm以下でもよく、50mm以下でもよく、25mm以下でもよい。同様の観点から、配向膜30Pに含まれる端部領域32(すなわち、一部32A)の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL32A(図11参照)を次のように決定してもよい。長さL32Aは、1mm以上でもよく、2mm以上でもよく、5mm以上でもよい。長さL32Aは、100mm以下でもよく、50mm以下でもよく、25mm以下でもよい。位相差層40Pに含まれる第1領域41の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL41は、位相差層40Pに含まれる第2領域(一部)42Aの短手方向(第1方向D1)に沿った長さL42Aの12倍以上でもよく、24倍以上でもよく、40倍以上でもよい。長さL41は長さL42Aの500倍以下でもよい。
【0168】
被転写フィルム50、長尺光学フィルム55及び長尺偏光フィルム60は、上述した長尺位相差フィルム10と同様に、図3に示すように、巻取軸線RAを中心として巻取コア12に巻き取った巻体50R,55R,60Rとして、取り扱うことができる。これにより、長尺のフィルム50,55,60の取り扱い易くなる。長尺のフィルム50,55,60は、ロールトゥロール方式の製造方法によって、製造され得る。長尺のフィルム50,55,60は、生産効率や製造コストにおいて優れる。長尺の長尺光学フィルム55や長尺の長尺偏光フィルム60を所望の大きさに断裁することによって、個々の光学フィルム55Xや個々の偏光フィルム60Xを得られる。この例によれば、種々の寸法を有した枚葉の光学フィルム55Xや枚葉の偏光フィルム60Xを、ニーズに合わせて、長尺の長尺光学フィルム55や長尺の長尺偏光フィルム60から得ることができる。種々の寸法を有した光学フィルム55Xや偏光フィルム60Xを適時に提供できる。
【0169】
長尺光学フィルム55や長尺の長尺偏光フィルム60から得られた光学フィルム55Xや偏光フィルム60Xは、表示装置100に適用されてもよい。図18に示された例において、光学フィルム55X及び偏光フィルム60Xは、画像形成装置としての表示素子101に重ねて配置されている。この例において、光学フィルム55X及び偏光フィルム60Xは、環境光等の外光が表示装置100の表面で反射することを抑制する反射抑制機能を有する。反射抑制機能により、表示装置100によって表示される画像のコントラストを向上できる。
【0170】
表示素子101として、液晶表示素子、有機EL表示素子、無機EL表示素子、プラズマ表示素子、電子ペーパー表示素子、LED表示素子(マイクロLEDなど)、量子ドット等が例示される。これら表示素子は、表示素子の内部にタッチパネル機能を有してもよい。
【0171】
図19に示された具体例において、表示装置100が有機EL表示装置を構成している。表示装置100は、有機EL表示パネル103及び光学フィルム55X(偏光フィルム60X)を含んでいる。光学フィルム55X(偏光フィルム60X)は、有機EL表示パネル103の画像表示面に重ねられ、反射抑制機能を発揮する。この例において、光学フィルム55Xは、λ/4位相差層として機能する位相差層40Pと、偏光子として機能する枚葉の偏光層52と、を含む。位相差層40Pは、偏光層52と有機EL表示パネル103との間に位置している。
【0172】
本実施の形態によれば、転写時に引き裂かれる位相差層40の第2領域42において、第2遅相軸A42に関する第2配向角θ42が0°以上10°未満、又は170°より大きく180°未満となっている。位相差層40が引き裂かれる方向は、液晶化合物の配向の影響を受ける。このため、位相差層40は、第2領域42内において、基材20を引き剥がす方向である長手方向(第2方向D2)におおむね沿って、引き裂かれていく。このことから、位相差層40の第2領域42における引き裂きが円滑に実施される。結果として、位相差層40Pの短手方向(第1方向D1)における端部E40Pにバリが発生することを効果的に抑制できる。
【0173】
また、図示された具体例において、第1領域41における第1遅相軸A41に関する第1配向角θ41から90°を引いた値の絶対値が、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値より小さい。このような例によれば、第1領域41は、第2領域42と比較して、長手方向(第2方向D2)に引き裂きづらい。結果として、位相差層40の第2領域42における引き裂きが円滑に実施される。
【0174】
例えば、第1配向角θ41は、10°以上170°以下でもよい。
【0175】
上述した具体例において、第1配向角θ41は30°以上150°以下でもよい。このような例によれば、第1領域41は、第2領域42と比較して、長手方向での引き裂きが顕著に困難である。結果として、長尺位相差フィルム10から基材20を剥がす際、第2領域42での位相差層40の引き裂きが効果的に促進される。
【0176】
また、図示された具体例において、第3領域43における第3遅相軸A43に関する第3配向角θ43から90°を引いた値の絶対値が、第2配向角θ42から90°を引いた値の絶対値より小さい。このような例によれば、第3領域43は、第2領域42と比較して、長手方向(第2方向D2)に引き裂きづらい。結果として、位相差層40の第2領域42における引き裂きが円滑に実施される。
【0177】
上述した具体例において、第3配向角θ43は40°以上140°以下でもよい。したがって、第3領域43は、第2領域42と比較して、長手方向での引き裂きが顕著に困難である。結果として、長尺位相差フィルム10から基材20を剥がす際、第2領域42での位相差層40の引き裂きが効果的に促進される。
【0178】
また、上述した具体例において、位相差層40の第1領域41は、短手方向(第1方向D1)における位相差層40の中心位置を含んでいてもよい。また、第3領域43は、位相差層40の短手方向(第1方向D1)における位相差層40の端部E40を含んでいてもよい。このような例によれば、位相差フィルム10Xとして使用されることを意図された第1領域41の面積を大きく確保できる。その一方で、基材20に残留することを意図された第3領域43の面積を小さくできる。結果として、長尺位相差フィルム10から位相差フィルム10Xを採取する際の歩留まりを十分に高くできる。
【0179】
また、図示された具体例において、長尺位相差フィルム10は、基材20と、位相差層40の第1領域41および第2領域42と、の間に位置する配向膜30を備えている。第3領域43は、基材20に接触している。このような例によれば、配向膜30により、位相差層40の第1領域41および第2領域42の配向を調節することができる。また、基材20により、位相差層40の第3領域43の配向を調節することができる。
【0180】
上述した具体例において、配向膜は、光配向膜を含んでいてもよい。このような例によれば、偏光を照射することによって、配向膜に配向規制力を付与することができる。
【0181】
また、上述した具体例において、基材20は、遅相軸を有するポリエチレンフィルムを含んでいてもよい。ポリエチレンフィルムの遅相軸と長手方向(第2方向D2)との間の角度は、40°以上140°以下である。このような例によれば、ポリエチレンフィルム上に位相差層40の第3領域43を形成することによって、第3領域43の第3遅相軸A43に関する第3配向角θ43を40°以上140°以下とすることができ、第3領域43の長手方向での引き裂きを極めて困難にすることができる。
【0182】
また、上述した具体例において、位相差層40の第2領域42の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL42は、1mm以上100mm以下であってよい。このような例によれば、位相差フィルム10Xの歩留まりを高くすることができ、位相差層40の安定した転写を実現可能である。
【0183】
また、上述した具体例において、位相差層40の第1領域41の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL41は、位相差層40の第2領域42の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL42の12倍以上であってよい。このような例によれば、位相差フィルム10Xの歩留まりを高くすることができ、位相差層40の安定した転写を実現可能である。
【0184】
また、上述した具体例において、位相差層40の第3領域43の短手方向(第1方向D1)に沿った長さL43は、0.5mm以上50mm以下である。このような例によれば、位相差フィルム10Xの歩留まりを高くすることができ、位相差層40の安定した転写を実現可能である。
【0185】
また、上述した具体例において、波長450nmにおける位相差層40の第1領域41での面内位相差Re(450)は、波長550nmにおける位相差層40の第1領域41での面内位相差Re(550)より小さい。また、面内位相差Re(550)は、波長650nmにおける位相差層40の第1領域41での面内位相差Re(650)より小さい。また、面内位相差Re(550)は、130nm以上153nm以下である。このような例によれば、位相差層40の波長分散性は逆分散性である。これにより、波長に応じた面内位相差Reの変動を抑制でき、色表現に優れる。
【実施例0186】
本開示を実施例により更に詳細に説明する。本開示は以下の実施例によって限定されない。
【0187】
<長尺位相差フィルム>
次に説明するようにして、実施例1、実施例2、及び比較例1に係る長尺位相差フィルムを、ロールトゥロール方式にて、製造した。
【0188】
(実施例1)
図5図11を参照して説明した上述の製造方法により、図1図4に示された長尺位相差フィルムを、ロールトゥロール方式にて、製造した。
【0189】
基材として、東洋紡社製のPETフィルム「コスモシャインA4160(厚み100μm、PETフィルム(A))」を用いた。基材は、二軸延伸フィルムであり、面内複屈折を有していた。二軸延伸における短手方向の延伸倍率が、長手方向の延伸倍率より大きくなっていた。
【0190】
基材の未処理面(非プライマー面)に配向膜形成用組成物を塗布することによって、厚み300nmの第1塗布膜を形成した。配向膜形成用組成物は、ポリシンナメート系化合物と、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(固形分4.5%)と、を含んでいた。100℃の雰囲気に1分間保持することによって、第1塗布膜を乾燥した。第1塗布膜を偏光露光して配向膜を作製した。偏光露光の条件は、照射波長を310nmとし、照射量を20mJ/cmとした。以上にて、基材および配向膜を含む中間体が得られた。
【0191】
図7及び図8を参照して説明したように、第1塗布膜の露光は、マスクを用いて部分露光とした。第1塗布膜の中央領域と端部領域とで、互いに偏光状態の異なる偏光で偏光露光した。得られた配向膜の中央領域には、配向角が45°となる配向規制力が付与された。得られた配向膜の端部領域には、配向角が0°となる配向規制力が付与された。
【0192】
JP5962760Bの実施例4の化合物4の合成を参考にして、重合性液晶化合物を合成した。この重合性液晶化合物は、逆波長分散性を示した。重合性液晶化合物100質量部に対して、開始剤としてイルガキュア907を4質量部、界面活性剤としてDIC社製のメガファックF-477を0.3質量部添加して、重合性液晶組成物を作製した。重合性液晶組成物は、固形分が20%となるように、更にトルエンを含んでいた。中間体の配向膜が形成された面に重合性液晶組成物を塗布することによって、第2塗布膜を形成した。
【0193】
次に、120℃の雰囲気に1分間保持することによって、第2塗布膜を乾燥した。その後、へレウス社製Fusion-UV装置を用いて、照射量300mJ/cmにて、第2塗布膜に紫外線を照射することにより、第2塗布膜45を硬化させて位相差層40を形成した。以上にて、基板、配向膜及び位相差層を含む長尺位相差フィルムが得られた。
【0194】
図20に示すように、実施例1の長尺位相差フィルム10に含まれる位相差層40は、配向膜30の中央領域31と第3方向D3に対面する第1領域41と、配向膜30の端部領域32と第3方向D3に対面する一対の第2領域42と、配向膜30の第1方向D1における両外方に位置して基材20と第3方向D3に対面する一対の第3領域43と、を含んでいた。第1領域41において、重合性液晶化合物は配向角45°で水平配向していた。第2領域42において、重合性液晶化合物は配向角0°で水平配向していた。第3領域43において、重合性液晶化合物は水平配向していた。第1方向D1に離間した一対の第3領域43のうちの一方の第3領域43における重合性液晶化合物の第3配向角は、60°であった。他方の第3領域43における重合性液晶化合物の第3配向角は、87°であった。第1領域41での面内位相差Reは140nmであった。面内位相差Reは、上述したように、大塚電子社製の商品名「RETS-100」を用いて測定した。
【0195】
第1領域41の長手方向に直交する短手方向(第1方向D1)における幅L41は、1250mmとした。各第2領域42の長手方向に直交する短手方向(第1方向D1)における幅L42は、30mmとした。各第3領域43の長手方向に直交する短手方向(第1方向D1)における幅L43は、5mmとした。
【0196】
(実施例2)
実施例2において、実施例1と同様にして、基材20及び配向膜30を含む中間体15を作製した。得られた中間体15の配向膜30は、配向角が45°となる配向規制力を有した中央領域31と、配向角が0°となる配向規制力を有した端部領域32と、を含んでいた。ただし、実施例2では、配向膜30の端部領域32の第1方向D1への長さを実施例1よりも長くした。中間体15上に、位相差層40を作製した。位相差層40は、実施例1と同様の作製方法で作製した。ただし、実施例2では、位相差層40の第1方向D1に沿った幅を、配向膜30の第1方向D1に沿った幅よりも短くした。位相差層40は、配向膜30と第3方向D3に対面する領域のみに位置していた。
【0197】
図21に示すように、実施例2の長尺位相差フィルム10に含まれる位相差層40は、配向膜30の中央領域31と第3方向D3に対面する第1領域41と、配向膜30の端部領域32と第3方向D3に対面する一対の第2領域42と、を含んでいた。第1領域41において、重合性液晶化合物は配向角45°で水平配向していた。第2領域42において、重合性液晶化合物は配向角0°で水平配向していた。第1領域41での面内位相差Reは140nmであった。面内位相差Reは、上述したように、大塚電子社製の商品名「RETS-100」を用いて測定した。
【0198】
第1領域41の長手方向に直交する短手方向(第1方向D1)における幅L41は、1250mmとした。各第2領域42の長手方向に直交する短手方向(第1方向D1)における幅L42は、35mmとした。
【0199】
(比較例1)
比較例1の長尺位相差フィルム110の製造方法は、第1塗布膜の全領域を同じ偏光で偏光露光した点のみにおいて、実施例1の長尺位相差フィルムの製造方法と異なっていた。したがって、比較例1において、配向膜130は、全領域において、配向角が45°となる配向規制力が付与された。比較例1において、位相差層140の配向膜130に対面する領域の全域において、重合性液晶化合物は配向角45°で水平配向していた。
【0200】
図22に示すように、比較例1の長尺位相差フィルム110に含まれる位相差層140は、配向膜130と第3方向D3に対面する第1領域141と、配向膜130の第1方向D1における両外方に位置して基材120と第3方向D3に対面する一対の第3領域143と、を含んでいた。第1領域141において、重合性液晶化合物は配向角45°で水平配向していた。第3領域143において、重合性液晶化合物は水平配向していた。第1方向D1に離間した一対の第3領域43のうちの一方の第3領域43における重合性液晶化合物の第3配向角は、60°であった。他方の第3領域43における重合性液晶化合物の第3配向角は、87°であった。第1領域での面内位相差Reは140nmであった。面内位相差Reは、上述したように、大塚電子社製の商品名「RETS-100」を用いて測定した。
【0201】
第1領域141の長手方向に直交する短手方向(第1方向D1)における幅L141は、1310mmとした。各第3領域143の長手方向に直交する短手方向(第1方向D1)における幅L143は、5mmとした。比較例1に係る長尺位相差フィルムの位相差層は、実施例1に係る長尺位相差フィルムの位相差層の第2領域42の領域に、第1領域41の構成を適用した構成を有していた。
【0202】
<評価>
図14図17を参照して説明した転写方法により、実施例1、実施例2及び比較例1の長尺位相差フィルム10,110を、接合層53を含む長尺の被転写フィルム50に積層し、次に、接合層53に接合した長尺位相差フィルム10,110から基材20を剥がすことによって、長尺光学フィルムをロールトゥロール方式にて作製した。長尺位相差フィルム及び被転写フィルムの第2方向D2に沿った長さは約20mとし、約20mの長尺光学フィルムを作製した。
【0203】
(被転写フィルム)
図20図22に示すように、被転写フィルム50は、基材51及び接合層53を含んでいた。被転写フィルムは、実施例1、実施例2及び比較例1の間で、同一の構成を有していた。富士フィルム社製のフジタックTD80UL(厚み80μm、TACフィルム(A))を、被転写フィルムの基材として用いた。この基材上に接合層を積層することにより、長尺の被転写フィルムを作製した。接合層は、パナクリーンPD-S1(パナック株式会社製)(厚み25μm)とした。被転写フィルムにおける基材の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W51(図12参照)は、1330mmであった。被転写フィルムにおける接合層の短手方向(第1方向D1)に沿った幅W53(図12参照)は、1280mmであった。
【0204】
(実施例1)
図20に示すように、実施例1の長尺位相差フィルム10を被転写フィルム50と積層した。被転写フィルム50の接合層53の第1方向D1における両端E53が、位相差層40の第2領域42と第3方向D3に対面していた。長尺位相差フィルムから基材を剥がすことによって、位相差層及び配向膜を被転写フィルムに転写して、長尺光学フィルムが得られた。位相差層及び配向膜は、第2領域内であって接合層の端部E53と対面する位置P1において引き裂かれた。位相差層及び配向膜のうちの引き裂かれた位置P1よりも第1方向D1における外側となる部分は、基材に残留した。
【0205】
(実施例2)
図21に示すように、実施例2の長尺位相差フィルム10を被転写フィルム50と積層した。被転写フィルム50の接合層53の第1方向D1における両端E53が、位相差層40の第2領域42と第3方向D3に対面していた。長尺位相差フィルムから基材を剥がすことによって、位相差層及び配向膜を被転写フィルムに転写して、長尺光学フィルムが得られた。位相差層及び配向膜は、第2領域内となる位置P2において引き裂かれ、位置P2よりも第1方向D1における外側となる部分は基材に残留した。
【0206】
(比較例1)
図22に示すように、比較例1の長尺位相差フィルム110を被転写フィルム50と積層した。被転写フィルム50の接合層53の第1方向D1における両端E53が、位相差層140の第1領域141と第3方向D3に対面していた。長尺位相差フィルムから基材を剥がすことによって、位相差層及び配向膜を被転写フィルムに転写して、長尺光学フィルムが得られた。位相差層及び配向膜は、第1領域内となる位置P3において引き裂かれ、位置P3よりも第1方向D1における外側となる部分は基材に残留した。
【0207】
(評価結果)
実施例1、実施例2及び比較例1として作製された長尺光学フィルムについて、位相差層の端部へのバリの発生を確認した。実施例1及び実施例2については、バリが発生していなかった。比較例1については、バリが確認された。図23は、実施例1として得られた長尺光学フィルム55の位相差層40の第1方向D1における端部を示す光学顕微鏡写真である。図24は、比較例1として得られた長尺光学フィルムの位相差層の第1方向D1における端部を示す写真である。図23及び図24に示された写真の倍率は、2倍である。図23及び図24に示された写真において、左側の領域に、位相差層および配向膜が転写されている。
【符号の説明】
【0208】
10:長尺位相差フィルム、10R:巻体、10X:位相差フィルム、12:巻取コア、15:中間体、20:基材、30:配向膜、30P:配向膜、31:中央領域、32:端部領域、35:第1塗布膜、40:位相差層、40P:位相差層、41:第1領域、42:第2領域、43:第3領域、44:液晶組成物、45:第2塗布膜、50:被転写フィルム、50R:巻体、52:偏光層、53:接合層、55:長尺光学フィルム、55R:巻体、55X:光学フィルム、60:長尺偏光フィルム、60R:巻体、60X:偏光フィルム、70:製造装置、71:供給コア、72:回収コア、73:搬送ロール、76:第1供給装置、77:第1乾燥装置、78:第1硬化装置、78A:第1露光装置、78B:第1マスク、78C:第2露光装置、78D:第2マスク、81:第2供給装置、82:第2乾燥装置、83:第2硬化装置、90:製造装置、91:第1供給コア、92:第2供給コア、93:第1回収コア、94:第2回収コア、95:搬送ロール、95A:第1搬送ロール、95B:第2搬送ロール、100:表示装置、103:有機EL表示パネル、D1:第1方向、D2:第2方向、D3:第3方向、A20:基材遅相軸、A41:第1遅相軸、A42:第2遅相軸、A43:第3遅相軸、θ41:第1配向角、θ42:第2配向角、θ43:第3配向角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18
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図24