(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046694
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 9/00 20060101AFI20240327BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F28D9/00
F28F3/08 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024478
(22)【出願日】2024-02-21
(62)【分割の表示】P 2021161800の分割
【原出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健
(72)【発明者】
【氏名】沼田 光春
(72)【発明者】
【氏名】寺井 航
(72)【発明者】
【氏名】田端 信哉
(72)【発明者】
【氏名】廣川 智己
(57)【要約】
【課題】性能を向上する。
【解決手段】熱交換器(100)は、積層される複数のプレート(103、104)を備える。熱交換器(100)は、冷媒と熱媒体との間で熱交換を行わせる。プレート(103、104)間には、第1流路(111)と第2流路(112)とが形成される。第1流路(111)は、二相状態の冷媒が流れる。第2流路(112)は、熱媒体が流れる。プレート(103、104)には、第1入口(115)と第1出口(116)とが形成される。第1入口(115)は、第1流路(111)に流れる冷媒の入口となる。第1出口(116)は、第1流路(111)に流れる冷媒の出口となる。プレート(103、104)の積層方向視において、第1入口(115)及び第1出口(116)は、プレート(103、104)の幅方向の中央線Lに対して、線対称である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層される複数のプレート(103)を備え、冷媒と熱媒体との間で熱交換を行わせる熱交換器であって、
前記プレート間には、
二相状態の前記冷媒が流れる第1流路(111)と、
前記熱媒体が流れる第2流路(112)と、
が形成され、
前記プレートには、
前記第1流路に流れる前記冷媒の入口となる第1入口(115)と、
前記第1流路に流れる前記冷媒の出口となる第1出口(116)と、
が形成され、
前記プレートの積層方向視において、前記第1入口及び前記第1出口は、前記プレートの幅方向の中央線(L)に対して、線対称である、熱交換器(100)。
【請求項2】
1枚の前記プレートには、前記第1入口として、1または複数の貫通穴が形成される、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記プレート間には、
前記第1入口と前記第1流路との間に形成される第1入口ヘッダ(113)と、
前記第1出口と前記第1流路との間に形成される第1出口ヘッダ(114)と、
が形成される、
請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
第1流路は、前記プレートの長手方向に延びる複数の流路であり、
前記複数の流路は、互いに離間している、
請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記プレートには、
前記第2流路に流れる前記熱媒体の入口となる第2入口(117)と、
前記第2流路に流れる前記熱媒体の出口となる第2出口(118)と、
がさらに形成され、
前記第1入口と前記第1出口とを結ぶ線と、前記第2入口と前記第2出口とを結ぶ線とがなす角度(θ)は25度未満である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記プレートには、
前記第2流路に流れる前記熱媒体の入口となる第2入口(117)と、
前記第2流路に流れる前記熱媒体の出口となる第2出口(118)と、
がさらに形成され、
前記プレートの積層方向視において、前記第2入口及び前記第2出口は、前記プレートの幅方向の中央線に対して、線対称である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記プレートには、
前記第2流路に流れる前記熱媒体の入口となる第2入口(117)と、
前記第2流路に流れる前記熱媒体の出口となる第2出口(118)と、
がさらに形成され、
前記プレートの長手方向において、前記第2入口と前記第2出口との間に、前記第1入口及び前記第1出口が位置する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記プレートには、
前記第2流路に流れる前記熱媒体の入口となる第2入口(117)と、
前記第2流路に流れる前記熱媒体の出口となる第2出口(118)と、
がさらに形成され、
前記プレートの長手方向において、前記冷媒及び前記熱媒体の高圧側の入口及び出口との間に、前記冷媒及び前記熱媒体の低圧側の入口及び出口が位置する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記第1入口は、前記第1出口よりも下方に形成される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のプレートが積層されて構成されるプレート式熱交換器が知られている。このようなプレート式熱交換器として、例えば、特開平11-173772号公報(特許文献1)が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示のプレート式熱交換器では、伝熱プレートの下端に、水入口管から導入した水を水流通路に導く第3開口が設けられるとともに、伝熱プレートの上端に、水流通路の水を水出口管に導く第4開口が設けられている。第3開口及び第4開口は、伝熱プレートの幅方向の中央部に設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、伝熱プレートの下端に、冷媒入口管から導入した冷媒を冷媒流路に導く第1開口が設けられるとともに、伝熱プレートの上端に、冷媒流通路の冷媒を冷媒出口管に導く第2開口が設けられている。しかしながら、第1開口は伝熱プレートの幅方向中央部に設けられているが、第2開口は伝熱プレートの幅方向端部に設けられている。このため、第2開口が設けられた端部に冷媒が集中する場合がある。この場合、各冷媒流通路の冷媒量が不均一になるので、性能が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点に係る熱交換器は、積層される複数のプレートを備える。熱交換器は、冷媒と熱媒体との間で熱交換を行わせる。プレート間には、第1流路と第2流路とが形成される。第1流路は、二相状態の冷媒が流れる。第2流路は、熱媒体が流れる。プレートには、第1入口と第1出口とが形成される。第1入口は、第1流路に流れる冷媒の入口となる。第1出口は、第1流路に流れる冷媒の出口となる。プレートの積層方向視において、第1入口及び第1出口は、プレートの幅方向の中央線に対して、線対称である。
【0006】
第1観点の熱交換器によれば、プレートの積層方向視において、二相状態の冷媒の入口となる第1入口、及び冷媒の出口となる第1出口は、プレートの幅方向の中央線に対して、線対称の位置に形成されている。これにより、第1入口及び第1出口の位置関係による流路抵抗の差を低減できる。このため、第1入口と第1出口との間の第1流路を通る冷媒が、二相状態で第1入口から第1流路に流入しても、第1流路を流れる冷媒量の均一化を高めることができる。したがって、冷媒の偏流を抑制できるので、熱交換器の性能を向上できる。
【0007】
第2観点に係る熱交換器は、第1観点の熱交換器であって、1枚のプレートには、第1入口として、1または複数の貫通穴が形成される。
【0008】
第2観点の熱交換器のように、第1入口として、1または複数の貫通穴が形成された、複数のプレートを用いることができる。
【0009】
第3観点に係る熱交換器は、第1観点または第2観点の熱交換器であって、プレート間には、第1入口ヘッダと、第1出口ヘッダとが形成される。第1入口ヘッダは、第1入口と第1流路との間に形成される。第1出口ヘッダは、第1出口と第1流路との間に形成される。
【0010】
第3観点に係る熱交換器では、冷媒を第1入口から第1入口ヘッダに集めて、第1入口ヘッダから第1流路に分流することができる。そして、冷媒を第1流路から第1出口ヘッダに集合させることができる。
【0011】
第4観点に係る熱交換器は、第3観点の熱交換器であって、第1流路は、プレートの長手方向に延びる複数の流路である。複数の流路は、互いに離間している。
【0012】
第4観点の熱交換器のように、第1流路として、長手方向に延び、互いに離間している複数の流路は、冷媒の偏流が生じやすい。ここでは、プレートの積層方向視において、二相状態の冷媒の入口となる第1入口、及び冷媒の出口となる第1出口は、プレートの幅方向の中央線に対して、線対称の位置に形成されている。このため、第1流路が、冷媒の偏流が生じやすい形状であっても、偏流を抑制することができる。
【0013】
第5観点に係る熱交換器は、第1観点から第4観点の熱交換器であって、プレートには、第2入口と第2出口とがさらに形成される。第2入口は、第2流路に流れる熱媒体の入口となる。第2出口は、第2流路に流れる熱媒体の出口となる。第1入口と第1出口とを結ぶ線と、第2入口と第2出口とを結ぶ線とがなす角度は25度未満である。
【0014】
第5観点の熱交換器のように、冷媒の第1入口と第1出口とを結ぶ線と、熱媒体の第2入口と第2出口とを結ぶ線とのなす角度が25度未満である場合に、冷媒の偏流を効果的に抑制することができる。
【0015】
第6観点に係る熱交換器は、第1観点から第5観点の熱交換器であって、プレートには、第2入口と第2出口とがさらに形成される。第2入口は、第2流路に流れる熱媒体の入口となる。第2出口は、第2流路に流れる熱媒体の出口となる。プレートの積層方向視において、第2入口及び第2出口は、プレートの幅方向の中央線に対して、線対称である。
【0016】
第6観点の熱交換器によれば、第2入口及び第2出口の位置関係による流路抵抗の差を低減できる。このため、第2流路を流れる熱媒体量の均一化をより高めることができる。このため、熱媒体の偏流をより抑制できるので、熱交換器の性能をより向上できる。
【0017】
第7観点に係る熱交換器は、第1観点から第6観点の熱交換器であって、プレートには、第2入口と第2出口とがさらに形成される。第2入口は、第2流路に流れる熱媒体の入口となる。第2出口は、第2流路に流れる熱媒体の出口となる。プレートの長手方向において、第2入口と第2出口との間に、第1入口及び第1出口が位置する。
【0018】
二相状態の冷媒が流れる第1流路は、熱媒体が流れる第2流路よりも偏流が生じやすい。このため、ここでは、偏流の生じやすい第1流路の第1入口及び第1出口を、偏流の生じにくい第2流路の第2入口及び第2出口よりも中央に配置する。これにより、第1流路を流れる冷媒に対して、第2入口及び第2出口による影響を小さくすることができる。
【0019】
第8観点に係る熱交換器は、第1観点から第7観点の熱交換器であって、プレートには、第2入口と第2出口とがさらに形成される。第2入口は、第2流路に流れる熱媒体の入口となる。第2出口は、第2流路に流れる熱媒体の出口となる。プレートの長手方向において、冷媒及び熱媒体の高圧側の入口及び出口との間に、冷媒及び熱媒体の低圧側の入口及び出口が位置する。
【0020】
冷媒及び熱媒体のうち、低圧側の媒体が流れる流路は、圧力損失の影響を受けやすい。このため、ここでは、圧力損失の影響の大きい低圧側の媒体の入口及び出口を、圧力損失の小さい媒体の入口及び出口よりも中央に配置する。これにより、低圧側の媒体の流路を短くすることによって、圧力損失の影響を小さくすることができる。
【0021】
第9観点に係る熱交換器は、第1観点から第8観点の熱交換器であって、第1入口は、第1出口よりも下方に形成される。
【0022】
第9観点の熱交換器のように、冷媒が下から上に流れるように、第1入口及び第1出口が形成されたプレートを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る熱交換器を備える冷媒サイクルシステムを示す概略構成図である。
【
図2】実施形態に係る熱交換器を示す分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る熱交換器のプレートを示す模式図である。
【
図4】実施形態に係る熱交換器のプレートにおいて冷媒の流れを示す模式図である。
【
図5】実施形態に係る熱交換器のプレートにおいて熱媒体の流れを示す模式図である。
【
図6】変形例に係る熱交換器のプレートを示す斜視図である。
【
図7】変形例に係る熱交換器のプレートにおいて冷媒の流れを示す模式図である。
【
図8】変形例に係る熱交換器のプレートにおいて熱媒体の流れを示す模式図である。
【
図9】別の変形例に係る熱交換器のプレートを示す模式図である。
【
図10】変形例に係るフレームを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1)冷媒サイクルシステム
本開示の一実施形態に係る熱交換器を備える冷媒サイクルシステムについて、
図1を参照して説明する。なお、
図1は、本実施形態の熱交換器100を備える冷媒サイクルシステム1を示す。
図1に示すように、冷媒サイクルシステム1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、建物等の室内の冷暖房に使用される装置である。
【0025】
冷媒サイクルシステム1は、1台の第1ユニット10と、1台のカスケードユニット30と、1台の第2ユニット50と、を有する。第1ユニット10とカスケードユニット30とは、2本の第1連絡配管61により接続されている。カスケードユニット30と第2ユニット50とは、2本の第2連絡配管62により接続されている。
【0026】
第1ユニット10と、カスケードユニット30とを接続することによって、蒸気圧縮式の一次側サイクル20が構成される。一次側サイクル20は冷媒を循環させる回路である。冷媒は、例えば、R32、R410AなどのHFC系冷媒及びHFO系冷媒の少なくとも一方を含む。ここでは、一次側サイクル20を流れる冷媒として、例えばR32を用いる。
【0027】
カスケードユニット30と、第2ユニット50とを接続することによって、蒸気圧縮式の二次側サイクル40が構成される。二次側サイクル40は、熱媒体を循環させる回路である。熱媒体は、水などであってもよく、冷媒であってもよい。ここでは、二次側サイクル40を流れる熱媒体として、例えば、二酸化炭素冷媒を用いる。
【0028】
(1-1)第1ユニット10
第1ユニット10は、熱源ユニットである。第1ユニット10は、第1圧縮機11と、第1四路切換弁12と、第1熱交換器13と、第1膨張弁14と、第1液閉鎖弁18と、第1ガス閉鎖弁19とを有する。
【0029】
第1圧縮機11は、一次側サイクル20を循環する冷媒としての低圧ガス冷媒を吸入し、それを圧縮して、高圧ガス冷媒を吐出する。第1四路切換弁12は、冷房運転の場合には
図1の実線で示す接続を行い、暖房運転の場合には
図1の破線で示す接続を行う。第1熱交換器13は、冷媒と外気との間で熱交換を行うものである。第1熱交換器13は、冷房運転の場合には凝縮機として機能し、暖房運転の場合には蒸発機として機能する。第1膨張弁14は、冷媒の流量を調節する。さらに、第1膨張弁14は、冷媒を減圧させる減圧装置として機能する。
【0030】
第1液閉鎖弁18及び第1ガス閉鎖弁19は、第1ユニット10の設置工事の場合などに、冷媒の循環する流路を遮断する。
【0031】
(1-2)カスケードユニット30
カスケードユニット30は、冷媒と熱媒体との間で熱交換をさせるためのものである。カスケードユニット30は、第2圧縮機31と、第2四路切換弁32と、カスケード熱交換器33と、一次側膨張弁34と、二次側膨張弁35と、第2液閉鎖弁38と、第2ガス閉鎖弁39と、を有する。
【0032】
第2圧縮機31は、二次側サイクル40を循環する熱媒体としての低圧ガス冷媒を吸入し、それを圧縮して、超臨界状態の高圧冷媒を吐出する。第2四路切換弁32は切換装置として機能し、冷房運転の場合には
図1の実線で示す接続を行い、暖房運転の場合には
図1の破線で示す接続を行う。
【0033】
カスケード熱交換器33は、冷媒と熱媒体との間で熱交換を行うものである。カスケード熱交換器33は、
図2に示すように、プレート式の熱交換器100である。カスケード熱交換器33は、冷媒が流れる第1流路111と、熱媒体が流れる第2流路112とを有する。第1流路111は、冷媒を通過させる。第2流路112は、熱媒体を通過させる。カスケード熱交換器33は、冷房運転の場合には冷媒の蒸発器かつ熱媒体の凝縮器として機能し、暖房運転の場合には冷媒の蒸発器かつ熱媒体の凝縮器として機能する。
【0034】
一次側膨張弁34は、一次側サイクル20を循環する冷媒の量を調節する。さらに、一次側膨張弁34は、冷媒を減圧させる。
【0035】
二次側膨張弁35は、二次側サイクル40を循環する熱媒体の量を調節する。さらに、二次側膨張弁35は、冷媒を減圧させる。
【0036】
第2液閉鎖弁38及び第2ガス閉鎖弁39は、カスケードユニット30の設置工事の場合などに、熱媒体の循環する流路を遮断する。
【0037】
(1-3)第2ユニット50
第2ユニット50は、利用ユニットである。第2ユニット50は、第2熱交換器51と、第2膨張弁52とを有する。第2熱交換器51は、熱媒体と室内空気との間で熱交換を行うものである。第2熱交換器51は、例えばマイクロチャネル熱交換器であり、扁平多穴管を有する。第2膨張弁52は、二次側サイクル40を循環する熱媒体の量を調節する。さらに、第2膨張弁52は、熱媒体を減圧させる減圧装置として機能する。
【0038】
(1-4)動作
(1-4-1)冷房運転
(1-4-1-1)一次側サイクル20の動作
第1圧縮機11は、低圧ガス冷媒を吸入し、高圧ガス冷媒を吐出する。高圧ガス冷媒は、第1四路切換弁12を経由して、第1熱交換器13へ到達する。第1熱交換器13は、高圧ガス冷媒を凝縮させ、それによって高圧液冷媒を作る。このとき、冷媒は外気へ熱を放出する。高圧液冷媒は、全開にされた第1膨張弁14を通過し、さらに第1液閉鎖弁18及び第1連絡配管61を経由して、一次側膨張弁34へ到達する。適切な開度を設定された一次側膨張弁34は、高圧液冷媒を減圧し、それによって低圧気液二相冷媒を作る。低圧気液二相冷媒は、カスケード熱交換器33の第1流路111に入る。カスケード熱交換器33は、低圧気液二相冷媒を蒸発させ、それによって低圧ガス冷媒を作る。このとき、一次側サイクル20の冷媒は、二次側サイクル40の熱媒体から熱を吸収する。低圧ガス冷媒は、第1流路111を出て、第1連絡配管61及び第1ガス閉鎖弁19を通過し、第1四路切換弁12を経由して、第1圧縮機11に吸入される。
【0039】
(1-4-1-2)二次側サイクル40の動作
第2圧縮機31は、熱媒体である低圧ガス冷媒を吸入し、超臨界状態の高圧冷媒を吐出する。高圧冷媒は、第2四路切換弁32を経由して、カスケード熱交換器33の第2流路112へ入る。カスケード熱交換器33は、高圧冷媒を放熱させることにより凝縮させ、それによって高圧液冷媒を作る。このとき、二次側サイクル40の熱媒体は、一次側サイクル20の冷媒へ熱を放出する。高圧液冷媒は、第2流路112を出て、二次側膨張弁35へ到達する。適切な開度を設定された二次側膨張弁35は、高圧液冷媒を減圧し、それによって低圧気液二相冷媒を作る。低圧気液二相冷媒は、第2液閉鎖弁38及び第2連絡配管62を通過し、第2膨張弁52へ到達する。適切な開度を設定された第2膨張弁52は、低圧気液二相冷媒の圧力をさらに低下させる。低圧気液二相冷媒は、第2熱交換器51へ到達する。第2熱交換器51は、低圧気液二相冷媒を蒸発させ、それによって低圧ガス冷媒を作る。このとき、熱媒体としての冷媒は、室内空気から熱を吸収する。低圧ガス冷媒は、第2熱交換器51を出て、第2連絡配管62及び第2ガス閉鎖弁39を通過し、第2四路切換弁32を経由して、第2圧縮機31に吸入される。
【0040】
(1-4-2)暖房運転
(1-4-2-1)一次側サイクル20の動作
第1圧縮機11は、低圧ガス冷媒を吸入し、高圧ガス冷媒を吐出する。高圧ガス冷媒は、第1四路切換弁12を経由して、第1ガス閉鎖弁19及び第1連絡配管61を通過し、カスケード熱交換器33の第1流路111へ入る。カスケード熱交換器33は、高圧ガス冷媒を凝縮させ、それによって高圧液冷媒を作る。このとき、一次側サイクル20の冷媒は、二次側サイクル40の熱媒体に熱を放出する。高圧液冷媒は、全開にされた一次側膨張弁34を通過し、次いで第1連絡配管61及び第1液閉鎖弁18を通過し、第1膨張弁14へ到達する。適切な開度を設定された第1膨張弁14は、高圧液冷媒を減圧し、それによって低圧気液二相冷媒を作る。低圧気液二相冷媒は、第1熱交換器13に到達する。第1熱交換器13は、低圧気液二相冷媒を蒸発させ、それによって低圧ガス冷媒を作る。このとき、冷媒は、外気から熱を吸収する。低圧ガス冷媒は、第1四路切換弁12を通過し、第1圧縮機11に吸入される。
【0041】
(1-4-2-2)二次側サイクル40の動作
第2圧縮機31は、熱媒体である低圧ガス冷媒を吸入し、超臨界状態の高圧冷媒を吐出する。高圧冷媒は、第2四路切換弁32を経由して、第2ガス閉鎖弁39及び第2連絡配管62を通過し、第2熱交換器51に到達する。第2熱交換器51は、高圧冷媒を放熱させることにより凝縮させ、それによって高圧液冷媒を作る。このとき、熱媒体としての冷媒は、室内空気に対して熱を放出する。その後、高圧液冷媒は、第2膨張弁52へ到達する。適切な開度を設定された第2膨張弁52は、高圧液冷媒を減圧し、それによって低圧気液二相冷媒を作る。低圧気液二相冷媒は、第2連絡配管62及び第2液閉鎖弁38を通過し、二次側膨張弁35へ到達する。適切な開度を設定された二次側膨張弁35は、低圧気液二相冷媒の圧力をさらに低下させる。低圧気液二相冷媒は、カスケード熱交換器33の第2流路112へ入る。カスケード熱交換器33は、低圧気液二相冷媒を蒸発させ、それによって低圧ガス冷媒を作る。このとき、二次側サイクル40の熱媒体は、一次側サイクル20の冷媒から熱を吸収する。低圧ガス冷媒は、第2流路112を出て、第2四路切換弁32を通過し、第2圧縮機31に吸入される。
【0042】
(2)熱交換器
(2-1)全体構成
本開示の一実施形態に係る熱交換器100について、
図1~
図5を参照して説明する。なお、
図2は、熱交換器100を分解した状態であり、プレート103、104の一部を省略している。
図3は、熱交換器100の1枚のプレート103、104において、冷媒の入口及び出口と、熱媒体の入口及び出口とを示す。
図4は、熱交換器100の1枚のプレート103、104において、冷媒の流れのイメージを示す。
図5は、熱交換器100の1枚のプレート103、104において、熱媒体の流れのイメージを示す。
図2~
図5は、熱交換器100のプレート103、104を模式的に示すものであり、入口、出口、流路等を誇張して示し、説明に使わない部分を省略している。
【0043】
熱交換器100は、冷媒と熱媒体との間で、互いに混合させることなく熱交換を行わせるものである。本実施形態の熱交換器100は、
図1に示すカスケード熱交換器33である。このため、本実施形態の冷媒は、例えば、HFC系冷媒及びHFO系冷媒の少なくとも一方を含み、本実施形態の熱媒体は、例えば二酸化炭素を含む。
【0044】
また、
図2に示すように、熱交換器100は、積層される複数のプレート103、104を備える、プレート(式)熱交換器である。プレート103、104の枚数は、特に限定されず、要求される性能に応じて適宜設定される。
【0045】
熱交換器100は、2枚のフレーム102と、複数のプレート103、104と、冷媒導入管105と、冷媒導出管106と、熱媒体導入管107と、熱媒体導出管108と、を備えている。複数のプレート103、104は、2枚のフレーム102の間に積層されている。複数のプレート103、104は、第1プレート103及び第2プレート104の2種類の伝熱プレートで構成されている。第1プレート103と第2プレート104とは交互に積層されている。フレーム102及びプレート103、104は、ろう付けにより、一体的に接合されている。
【0046】
プレート103、104は、金属製の平板で構成されている。隣り合うプレート103、104の周縁部が互いに当接して、プレート103、104間に冷媒の流路である第1流路111(
図4参照)または熱媒体の流路である第2流路112(
図5参照)が形成されている。第1流路111及び第2流路112は、交互に設けられている。第1流路111を流れる冷媒と、第2流路112を流れる熱媒体とを、プレート103、104を介して互いに熱交換させる。
【0047】
フレーム102には、冷媒導入管105と、冷媒導出管106と、熱媒体導入管107と、熱媒体導出管108とが取り付けられている。
図2では、下から上に向けて、熱媒体導出管108、冷媒導入管105、冷媒導出管106及び熱媒体導入管107の順に設けられている。
【0048】
(2-2)詳細構成
図3に示すように、プレート103、104には、第1入口115と、第1出口116と、第2入口117と、第2出口118と、が形成されている。
【0049】
第1入口115は、第1流路111に流れる冷媒の入口となる。複数のプレート103、104の第1入口115は、冷媒流入空間を構成する。冷媒流入空間は、冷媒導入管105に連通している。このため、冷媒導入管105から導入された冷媒は、第1入口115から第1流路111に流れる。冷房運転時、第1入口115には、気液二相の冷媒が通る。
【0050】
第1出口116は、第1流路111に流れる冷媒の出口となる。複数のプレート103、104の第1出口116は、冷媒流出空間を構成する。冷媒流出空間は、冷媒導出管106に連通している。このため、第1流路111を流れた冷媒は、第1出口116から冷媒導出管106に流れる。冷房運転時、第1出口116には、気相の冷媒が通る。
【0051】
第2入口117は、第2流路112に流れる熱媒体の入口となる。複数のプレート103、104の第2入口117は、熱媒体流入空間を構成する。熱媒体流入空間は、熱媒体導入管107に連通している。このため、熱媒体導入管107から導入された熱媒体は、第2入口117から第2流路112に流入する。
【0052】
第2出口118は、第2流路112に流れる熱媒体の出口となる。複数のプレート103、104の第2出口118は、熱媒体流出空間を構成する。熱媒体流出空間は、熱媒体導出管108に連通している。このため、第2流路112を流れた熱媒体は、第2出口118から熱媒体導出管108に流れる。
【0053】
冷房運転時、熱交換器100において、冷媒は蒸発し、熱媒体は凝縮する。このため、冷房運転時において、第1入口115は、冷媒及び熱媒体のうち、蒸発する媒体の入口であり、第1出口116は、冷媒及び熱媒体のうち、蒸発する媒体の出口であり、第2入口117は、冷媒及び熱媒体のうち、凝縮する媒体の入口であり、第2出口118は、冷媒及び熱媒体のうち、凝縮する媒体の出口である。
【0054】
なお、本明細書において、「凝縮」とは、気相状態から液相状態に変化することと、超臨界状態から液相状態に変化することとを含む。
【0055】
また、冷房運転時、熱交換器100において、冷媒は低圧側であり、熱媒体は高圧側である。このため、冷房運転時において、第1入口115は、冷媒及び熱媒体のうち、低圧側の媒体の入口であり、第1出口116は、冷媒及び熱媒体のうち、低圧側の出口であり、第2入口117は、冷媒及び熱媒体のうち、高圧側の媒体の入口であり、第2出口118は、冷媒及び熱媒体のうち、高圧側の媒体の出口である。
【0056】
1枚のプレート103、104には、第1入口115として、1または複数の貫通穴が形成されている。ここでは、1枚のプレート103、104には、第1入口115として、1つの貫通穴が形成されている。
【0057】
1枚のプレート103、104には、第1出口116として、1または複数の貫通穴が形成されている。ここでは、1枚のプレート103、104には、第1出口116として、1つの貫通穴が形成されている。
【0058】
1枚のプレート103、104には、第2入口117として、1または複数の貫通穴が形成されている。ここでは、1枚のプレート103、104には、第2入口117として、1つの貫通穴が形成されている。
【0059】
1枚のプレート103、104には、第2出口118として、1または複数の貫通穴が形成されている。ここでは、1枚のプレート103、104には、第2出口118として、1つの貫通穴が形成されている。
【0060】
第1入口115、第1出口116、第2入口117及び第2出口118は、同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。
図3では、第1入口115、第1出口116、第2入口117及び第2出口118は、略同じ大きさの円形の貫通穴である。
【0061】
図3に示すように、プレート103、104の積層方向視において、第1入口115及び第1出口116は、プレート103、104の幅方向(
図3における左右方向)の中央線Lに対して、線対称である。
【0062】
ここで、線対称とは、積層方向視において、中央線Lと第1入口115の図心との距離、及び、中央線Lと第1出口116の図心との距離がプレート103、104の幅寸法Wの10%以下である。
【0063】
具体的には、複数のプレート103、104は、積層方向視において、長方形である。なお、長方形の角は、直線で構成されてもよく、R形状などの曲線で構成されてもよい。このため、プレート103、104には、長手方向と短手方向とが特定され、幅方向とは短手方向である。中央線Lは、プレート103、104において、幅方向の中央を繋ぐことで特定される。
【0064】
ここでは、第1入口115は、中央線Lに対して、左右対称である。第1出口116は、中央線Lに対して、左右対称である。
図3では、第1入口115及び第1出口116の中心は、中央線L上に位置する。なお、本開示の第1入口115及び第1出口116の中心は、中央線Lに対して、プレート103、104の幅寸法Wの10%以下の範囲内で、左右のいずれかにずれてもよい。
【0065】
また、
図3に示すように、プレート103、104の積層方向視において、第2入口117及び第2出口118は、プレート103、104の幅方向(
図3における左右方向)の中央線Lに対して、線対称である。
【0066】
ここでは、第2入口117は、中央線Lに対して、左右対称である。第2出口118は、中央線Lに対して、左右対称である。
図3では、第2入口117及び第2出口118の中心は、中央線L上に位置する。なお、本開示の第2入口117及び第2出口118の中心は、中央線Lに対して、プレート103、104の幅寸法Wの10%以下の範囲内で、左右のいずれかにずれてもよい。
【0067】
プレート103、104の長手方向(
図3における上下方向)において、第2入口117と第2出口118との間に、第1入口115及び第1出口116が位置する。換言すると、第1入口115及び第1出口116は、第2入口117及び第2出口118よりも長手方向の中央に近い。
【0068】
詳細には、第1入口115は、第2入口117よりも長手方向の中央に近い。第1出口116は、第2出口118よりも長手方向の中央に近い。
【0069】
また、第1入口115、第1出口116、第2入口117及び第2出口118は、長手方向の1つの直線上に位置する。ここでは、第1入口115、第1出口116、第2入口117及び第2出口118は、プレート103、104の幅方向の中央線L上に位置する。
【0070】
第1入口115は、第1出口116の下方に形成される。第2入口117は、第2出口118の上方に形成される。
図3では、下から上に向けて、第2出口118、第1入口115、第1出口116、及び第2入口117の順に形成されている。
【0071】
また、第1入口115と第1出口116とを結ぶ線と、第2入口117と第2出口118とを結ぶ線とがなす角度は、25度未満である。ここでは、第1入口115と第1出口116とを結ぶ線は中央線Lであり、第2入口117と第2出口118とを結ぶ線は中央線Lである。このため、第1入口115と第1出口116とを結ぶ線と、第2入口117と第2出口118とを結ぶ線とがなす角度は、0度である。
【0072】
プレート103、104の表面及び裏面には、ヘリンボーン形状、コルゲート形状などの凹凸が形成されている。第1プレート103及び第2プレート104は、一方の表面が他方の裏面に対向するように積層される。
【0073】
第1プレート103の表面と第2プレート104の裏側との間には、
図4に示すように冷媒が流れる第1流路111が形成される。第1流路111には、二相状態の冷媒が流れる。詳細には、冷房運転時に、第1流路111には、気液二相状態の冷媒が流れる。
【0074】
なお、第1流路111の少なくとも一部に、気液二相状態の冷媒が流れる。ここでは、第1流路111の第1入口115近傍に、気液二相状態の冷媒が流れる。このため、第1流路111の残部には、気相または液相の冷媒が流れてもよい。ここでは、第1流路111の第1出口近傍に、気相の冷媒が流れる。
【0075】
また第1プレート103の裏面と第2プレート104の表面との間には、
図5に示すように、熱媒体が流れる第2流路112が形成される。ここでは、第2流路112には、冷房運転時に、超臨界状態の熱媒体が流れる。
【0076】
図3では、冷媒は、下から上に向けて流れ、熱媒体は、上から下に向けて流れる。このため、冷媒と熱媒体は、対向流をなす。
【0077】
図4に示すように、プレート103、104間には、第1入口ヘッダ113と、第1出口ヘッダ114と、が形成されている。第1入口ヘッダ113は、第1入口115と第1流路111との間に形成されている。第1出口ヘッダ114は、第1出口116と第1流路111との間に形成されている。
【0078】
第1入口ヘッダ113は、第1流路111に冷媒を分流するためのヘッダ空間を形成する。第1入口ヘッダ113は、第1流路111の上流側に設けられる。
【0079】
第1出口ヘッダ114は、第1流路111を流れた冷媒を集合するためのヘッダ空間を形成する。第1出口ヘッダ114は、第1流路111の下流側に設けられる。
【0080】
第1流路111は、プレート103、104の長手方向に延びる複数の流路である。複数の流路は、互いに離間している。換言すると、第1流路111を構成する複数の流路は、第1入口ヘッダ113から第1出口ヘッダ114まで、互いに分離及び合流しない。複数の流路は、蛇行してもよいが、ここでは、互いに平行に、直線状に延びる。
【0081】
また、本実施形態では、プレート103、104間には、第2入口ヘッダと、第2出口ヘッダと、がさらに形成されている(図示せず)。第2入口ヘッダは、第2入口117と第2流路112との間に形成されている。第2出口ヘッダは、第2出口118と第2流路112との間に形成されている。
【0082】
第2流路112は、プレート103、104の長手方向に延びる複数の流路である(図示せず)。複数の流路は、互いに離間している。換言すると、第2流路112を構成する複数の流路は、第2入口117から第2出口118まで、互いに分離及び合流しない。複数の流路は、第1入口115及び第1出口116を避けるように、第2入口ヘッダから第2出口ヘッダまで延びる。
【0083】
(2-3)動作
(2-3-1)冷房運転
熱交換器100の冷媒導入管105から導入された、低圧の気液二相状態の冷媒は、第1入口115を通って、第1流路111に流入する。この二相状態の冷媒は、第1流路111を流れ、隣り合う第2流路112の熱媒体と熱交換を行って蒸発し、熱媒体を冷却する。蒸発した気相の冷媒は、第1出口116を通って、冷媒導出管106から排出される。
【0084】
一方、熱交換器100の熱媒体導入管107から導入された高圧の超臨界状態の熱媒体は、第2入口117を通って、第2流路112に流入する。この熱媒体は、第2流路112を流れ、隣り合う第1流路111の冷媒と熱交換を行って凝縮し、冷却される。冷却された液相の熱媒体は、第2出口118を通って、熱媒体導出管108から排出される。
【0085】
(2-3-2)暖房運転
熱交換器100の冷媒導入管105から導入された、高圧の気相の冷媒は、第1入口115を通って、第1流路111に流入する。この気相の冷媒は、第1流路111を流れ、隣り合う第2流路112の熱媒体と熱交換を行って凝縮し、熱媒体を加熱する。凝縮した液相の冷媒は、第1出口116を通って、冷媒導出管106から導出される。
【0086】
一方、熱交換器100の熱媒体導入管107から導入された低圧の気液二相状態の熱媒体は、第2入口117を通って、第2流路112に流入する。この熱媒体は、第2流路112を流れ、隣り合う第1流路111の冷媒と熱交換を行って蒸発し、加熱される。加熱された気相の熱媒体は、第2出口118を通って、熱媒体導出管108から排出される。
【0087】
(3)特徴
(3-1)
本実施形態に係る熱交換器100は、積層される複数のプレート103、104を備える。熱交換器100は、冷媒と熱媒体との間で熱交換を行わせる。プレート103、104間には、第1流路111と第2流路112とが形成される。第1流路111は、二相状態の冷媒が流れる。第2流路112は、熱媒体が流れる。プレート103、104には、第1入口115と第1出口116とが形成される。第1入口115は、第1流路111に流れる冷媒の入口となる。第1出口116は、第1流路111に流れる冷媒の出口となる。プレート103、104の積層方向視において、第1入口115及び第1出口116は、プレート103、104の幅方向の中央線Lに対して、線対称である。
【0088】
第1入口115から第1流路111に冷媒が二相状態で流入すると、冷媒が偏流しやすい。しかし、本実施形態によれば、プレート103、104の積層方向視において、二相状態の冷媒の入口となる第1入口115、及び冷媒の出口となる第1出口116は、プレート103、104の幅方向の中央線Lに対して、線対称の位置に形成されている。これにより、第1入口115及び第1出口116の位置関係による流路抵抗の差を低減できる。このため、第1入口115と第1出口116との間の第1流路111を通る冷媒が、二相状態で第1入口115から第1流路111に流入しても、第1流路111を流れる冷媒量の均一化を高めることができる。したがって、冷媒の偏流を抑制できるので、冷媒と熱媒体との熱交換を促進できるため、熱交換器100の性能を向上できる。
【0089】
(3-2)
本実施形態に係る熱交換器100では、1枚のプレート103、104には、第1入口115として、1つの貫通穴が形成されている。このように、第1入口115として、1つの貫通穴が形成された、複数のプレート103、104を用いることができる。
【0090】
(3-3)
本実施形態に係る熱交換器100において好ましくは、プレート103、104間には、第1入口ヘッダ113と、第1出口ヘッダ114とが形成されている。第1入口ヘッダ113は、第1入口115と第1流路111との間に形成されている。第1出口ヘッダ114は、第1出口116と第1流路111との間に形成されている。
【0091】
ここでは、冷媒を第1入口115から第1入口ヘッダ113に集めて、第1入口ヘッダ113から第1流路111に分流することができる。そして、冷媒を第1流路111から第1出口ヘッダ114に集合させることができる。
【0092】
(3-4)
本実施形態に係る熱交換器100において好ましくは、第1流路111は、プレート103、104の長手方向に延びる複数の流路である。複数の流路は、互いに離間している。
【0093】
第1流路111として、長手方向に延び、互いに離間している複数の流路は、冷媒の偏流がより生じやすい。ここでは、プレート103、104の積層方向視において、二相状態の冷媒の入口となる第1入口115、及び冷媒の出口となる第1出口116は、プレート103、104の幅方向の中央線Lに対して、線対称の位置に形成されている。このため、第1流路111が、冷媒の偏流が生じやすい形状であっても、偏流を効果的に抑制することができる。
【0094】
(3-5)
本実施形態に係る熱交換器100において好ましくは、プレート103、104には、第2入口117と第2出口118とがさらに形成される。第2入口117は、第2流路112に流れる熱媒体の入口となる。第2出口118は、第2流路112に流れる熱媒体の出口となる。第1入口115と第1出口116とを結ぶ線と、第2入口117と第2出口118とを結ぶ線とがなす角度は、25度未満である。
【0095】
本発明者は、冷媒の第1入口115と第1出口116とを結ぶ線と、熱媒体の第2入口117と第2出口118とを結ぶ線とのなす角度が25度以上の場合に、プレート103、104において、局所的に熱交換が促進されない部分が生じることを突き止めた。このことから、冷媒の第1入口115と第1出口116とを結ぶ線と、熱媒体の第2入口117と第2出口118とを結ぶ線とのなす角度が25度未満である場合に、冷媒の偏流を効果的に抑制することができる。
【0096】
(3-6)
本実施形態に係る熱交換器100において好ましくは、プレート103、104の積層方向視において、第2入口117及び第2出口118は、プレート103、104の幅方向の中央線Lに対して、線対称である。
【0097】
ここでは、第2入口117及び第2出口118の位置関係による流路抵抗の差を低減できる。これにより、第2流路112を流れる熱媒体量の均一化をより高めることができる。このため、熱媒体が二相状態で第2入口117から第2流路112に流入しても、第2流路112を流れる熱媒体量の均一化を高めることができる。したがって、熱媒体の偏流をより抑制できるので、冷媒と熱媒体との熱交換をより促進できるため、熱交換器100の性能をより向上できる。
【0098】
(3-7)
本実施形態に係る熱交換器100において好ましくは、プレート103、104の長手方向において、第2入口117と第2出口118との間に、第1入口115及び第1出口116が位置する。
【0099】
二相状態の冷媒が流れる第1流路111は、熱媒体が流れる第2流路112よりも偏流が生じやすい。このため、ここでは、偏流の生じやすい第1流路111の第1入口115及び第1出口116を、偏流の生じにくい第2流路112の第2入口117及び第2出口118よりも中央に配置する。これにより、第1流路111を流れる冷媒に対して、第2入口117及び第2出口118による影響を小さくすることができる。したがって、第1流路111を流れる冷媒の偏流を抑制できる。
【0100】
(3-8)
本実施形態に係る熱交換器100において好ましくは、プレート103,104の長手方向において、冷媒及び熱媒体の高圧側の入口(本実施形態では第2入口117)及び出口(本実施形態では第2出口118)との間に、冷媒及び熱媒体の低圧側の入口(本実施形態では第1入口115)及び出口(本実施形態では第1出口116)が位置する。
【0101】
冷媒及び熱媒体のうち、低圧側の媒体(本実施形態では冷媒)が流れる流路(本実施形態では第1流路111)は、圧力損失の影響を受けやすい。このため、ここでは、圧力損失の影響の大きい低圧側の媒体の入口及び出口を、圧力損失の小さい高圧側の媒体(本実施形態では熱媒体)の入口及び出口よりも中央に配置する。これにより、低圧側の媒体の流路は、高圧側の媒体の入口及び出口を避ける必要がないので、低圧側の媒体の流路を短くすることができる。したがって、低圧側の媒体の流路における圧力損失を小さくすることができる。
【0102】
(3-9)
本実施形態に係る熱交換器100は、第1入口115は、第1出口116よりも下方に形成される。このように、冷媒が下から上に流れるように、第1入口115及び第1出口116が形成されたプレート103、104を用いることもできる。
【0103】
(4)変形例
(4-1)変形例1
上記実施形態では、プレート103、104の積層方向視において、第2入口117及び第2出口118は、プレート103、104の幅方向の中央線Lに対して、線対称であるが、これに限定されない。本変形例では、
図6に示すように、プレート103、104の積層方向視において、第2入口117及び第2出口118は、中央線Lに対して、線対称ではない。なお、
図6は、本変形例に係る熱交換器の1枚のプレート103、104において、冷媒の入口及び出口と、熱媒体の入口及び出口とを示す。
【0104】
図6に示すように、第1入口115及び第1出口116は、中央線Lに対して線対称である。ただし、本変形例の第1入口115は、実施形態よりも下方に位置し、本変形例の第1出口116は、実施形態よりも上方に位置する。
【0105】
第2入口117は、中央線Lに対して、幅方向の一方側(
図6では左側)に形成されている。第2出口118は、中央線Lに対して、幅方向の他方側(
図6では右側)に形成されている。ここでは、第2入口117と第2出口118とは、プレート103、104の中心Oに対して、点対称である。
【0106】
第1入口115と第2出口118とは、長手方向(
図6では上下方向)において、同じ位置である。第1出口116と第2入口117とは、長手方向において、同じ位置である。
【0107】
第1入口115と第1出口116とを結ぶ線(ここでは中央線L)と、第2入口117と第2出口118とを結ぶ線L1とがなす角度θは、0度を超えて25度未満である。
【0108】
図7は、本変形例に係る熱交換器の1枚のプレート103、104において、冷媒の流れのイメージを示す。
図7に示すように、第1流路111は、実施形態と同様に、下から上に向けて流れる。第1流路111は、プレート103、104の長手方向に延び、互いに離間している複数の流路である。
【0109】
図8は、本変形例に係る熱交換器の1枚のプレート103、104において、熱媒体の流れのイメージを示す。
図8に示すように、第2流路112は、左上から右下に向けて流れる。第2流路112は、プレート103、104の長手方向に25度未満に交差する方向に延び、互いに離間している複数の流路である。
【0110】
本変形例の熱交換器は、冷房専用の冷媒サイクルシステムのカスケード熱交換器に好適に用いられる。この場合、第1流路111には、二相状態の冷媒が流れる。しかし、第1入口115及び第1出口116は、中央線Lに対して線対称である。このため、第1入口115から第1流路111に流れる二相状態の冷媒の偏流を抑制できる。一方、第2入口117から第2流路112に流入する熱媒体は、気相状態である。このため、熱媒体は、第2流路112において二相状態にならないので、冷媒に比べて、偏流が生じにくい。したがって、第2入口117及び第2出口118が中央線Lに対して、線対称でないことによる影響が小さい。
【0111】
なお、本変形例の熱交換器は、上記実施形態のように、冷房運転及び暖房運転を行うカスケード熱交換器に用いることもできる。冷房運転及び暖房運転を行う場合には、中央線Lに対して線対称に位置する第1入口115と第1出口116との間に形成される第1流路111は、1つの運転時(上記実施形態では冷房運転時)において、二相状態となる冷媒が流れる。
【0112】
(4-2)変形例2
上記実施形態では、1枚のプレート103、104には、第1入口115、第1出口116、第2入口117及び第2出口118として、1の貫通穴が形成されているが、これに限定されない。本変形例では、
図9に示すように、第1入口115及び第2入口として、1つの貫通穴が形成され、第1出口116及び第2出口118として、複数の貫通穴が形成されている。なお、
図9は、本変形例に係る熱交換器の1枚のプレート103、104において、冷媒の入口及び出口と、熱媒体の入口及び出口と、冷媒及び熱媒体の流れのイメージを示す。
【0113】
第1入口115は、実施形態と同様に、中央線L上に位置している。第1出口116は、2つの貫通穴116a、116bで構成される。2つの貫通穴116a、116bは、中央線Lに対して、線対称である。ここでは、2つの貫通穴116a、116bの図心は、中央線L上に位置している。また、2つの貫通穴116a、116bの中心を結ぶ線の中点は、中央線L上に位置している。また、2つの貫通穴116a、116bの形状及び大きさは同じである。
【0114】
なお、2つの貫通穴116a、116bの図心と中央線Lとの距離は、プレート103、104の幅寸法Wの10%以下であれば、2つの貫通穴116a、116bの少なくとも一方が左右にずれていてもよく、2つの貫通穴116a、116bの大きさ及び形状に差異があってもよい。
【0115】
第2入口117は、実施形態と同様に、中央線L上に位置している。第2出口118は、2つの貫通穴118a、118bで構成される。2つの貫通穴118a、118bは、中央線Lに対して、線対称である。ここでは、2つの貫通穴118a、118bの図心は、中央線L上に位置している。また、2つの貫通穴118a、118bの中心を結ぶ線の中点は、中央線L上に位置している。また、2つの貫通穴118a、118bの形状及び大きさは同じである。
【0116】
なお、2つの貫通穴118a、118bの図心と中央線Lとの距離は、プレート103、104の幅寸法Wの10%以下であれば、2つの貫通穴118a、118bの少なくとも一方が左右にずれていてもよく、2つの貫通穴118a、118bの大きさ及び形状に差異があってもよい。
【0117】
また、実施形態における第1入口115と第1出口116とを結ぶ線、及び、第2入口117と第2出口118とを結ぶ線は、第1入口115、第1出口116、第2入口117及び第2出口118が複数形成されている場合には、その図心を結ぶ線とする。具体的には、第1入口115と第1出口116とを結ぶ線は、第1入口115と、2つの貫通穴116a、116bの図心とを結ぶ線であるので、ここでは、中央線Lと一致する。第2入口117と第2出口118とを結ぶ線は、第2入口117と、2つの貫通穴118a、118bの図心とを結ぶ線であるので、ここでは、中央線Lと一致する。このため、本変形例では、実施形態と同様に、第1入口115と第1出口116とを結ぶ線と、第2入口117と第2出口118とを結ぶ線とがなす角度は、0度である。
【0118】
プレート103、104の上下方向において、第1入口115は、第2出口118よりも上方に位置する。また、プレート103、104の上下方向において、第1出口116は、第2入口117よりも上方に位置する。
【0119】
また、第1流路111は、第1入口115から、2つの第1出口116である貫通穴116a、116bに向けて、冷媒が流れるように形成される。第2流路112は、第2入口117から、2つの第2出口118である貫通穴118a、118bに向けて、熱媒体が流れるように形成される。第1流路111の長さと、第2流路112の長さとは、略同じである。
【0120】
このように、本変形例に係る熱交換器では、1枚のプレート103、104には、第1入口115として、複数の貫通穴が形成されている。このように、第1入口115として、1つの貫通穴が形成された、複数のプレート103、104を用いることができる。
【0121】
(4-3)変形例3
上記実施形態では、
図2に示すように、フレーム102に取り付けられた冷媒導入管105とプレート103、104の第1入口115とは、上下方向及び左右方向において同じ位置であり、フレーム102に取り付けられた冷媒導出管106とプレート103、104の第1出口116とは、上下方向及び左右方向において同じ位置であり、フレーム102に取り付けられた熱媒体導入管107とプレート103、104の第2入口117とは、上下方向及び左右方向において同じ位置であり、フレーム102に取り付けられた熱媒体導出管108とプレート103、104の第2出口118とは、上下方向及び左右方向において同じ位置であるが、これに限定されない。
【0122】
図10は、本変形例に係るフレームを示す。本変形例では、
図10に示すように、フレーム102には、膨出部102aが形成されている。膨出部102aは、フレーム102において、プレート103、104と対向する面と反対側の面の一部に形成された凸部である。膨出部102aは、例えばプレス加工により形成される。
【0123】
膨出部102aには、冷媒導入管105、冷媒導出管106、熱媒体導入管107及び熱媒体導出管108が取り付けられる。ここでは、冷媒導入管105、冷媒導出管106、熱媒体導入管107及び熱媒体導出管108は、フレーム102の幅方向の中央線に対して、一直線上に位置していない。このため、本変形例では、冷媒導入管105、冷媒導出管106、熱媒体導入管107及び熱媒体導出管108をフレーム102に接続する工程の困難度合いの緩和を図ることができる。
【0124】
(4-4)変形例4
上記実施形態では、冷媒としてR32を例示し、熱媒体として二酸化炭素を例示したが、これに限定されない。冷媒としては、R32、HFO系冷媒、R32とHFO系冷媒の混合冷媒、二酸化炭素、アンモニア、プロパン等を用いることができる。熱媒体としては、R-32、HFO系冷媒、HFC-32とHFO系冷媒の混合冷媒、二酸化炭素、アンモニア、プロパン等の冷媒、水、不凍液等を用いることができる。
【0125】
なお、HFO系冷媒としては、例えば、HFO-1234yfやHFO-1234ze等を用いることができる。
【0126】
また、冷媒と熱媒体とでは、同じ冷媒が用いられていてもよく、異なる媒体が用いられていてもよいが、熱媒体は、冷媒よりも、地球温暖化係数(GWP)が低いか、オゾン層破壊係数(ODP)が低いか、燃焼性が低いか、毒性が低いか、の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0127】
(4-5)変形例5
上記実施形態では、第1流路111を流れる冷媒と、第2流路112とを流れる熱媒体とは対向流をなすが、並行流をなしてもよい。
【0128】
(4-6)変形例6
上記実施形態では、熱交換器100をカスケード熱交換器に適用したが、これに限定されない。本開示の熱交換器は、冷媒サイクルシステムに用いられる熱交換器全般に適用できる。
【0129】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0130】
33,100: 熱交換器
103,104 :プレート
111 :第1流路
112 :第2流路
113 :第1入口ヘッダ
114 :第1出口ヘッダ
115 :第1入口
116 :第1出口
116a,116b,118a,118b :貫通穴
117 :第2入口
118 :第2出口
L :中央線
θ :角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0131】