(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046698
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】洗い落とし式水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/08 20060101AFI20240327BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E03D11/08
E03D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026178
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2022029681の分割
【原出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥子
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】岡部 大輝
(57)【要約】
【課題】浮遊系汚物の排出力を向上させた洗い落とし式水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の洗い落とし式水洗大便器1は、汚物を受ける汚物受け面16と、汚物受け面の上部に形成されたリム部18と、汚物受け面の下部に形成されその内部に溜水面20が形成されるツボ部22と、を備えたボウル部6と、リム部に沿って洗浄水を吐水する1つ又は複数の吐水口24、26と、ボウル部の底部に接続された排水管路10と、を有し、吐水口24、26から吐水された洗浄水の前方主流F1及び後方主流F2が、ボウル部6の汚物受け面16を旋回して、4つの領域S1、S2、S3、S4に区分された溜水面20の3つ以上の領域に洗浄開始初期に流入するように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄して汚物を排出する洗い落とし式水洗大便器であって、
汚物を受ける汚物受け面と、
この汚物受け面の上部に形成されたリム部と、
上記汚物受け面の下部に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部と、を備えたボウル部と、
上記リム部に沿って洗浄水を吐水する1つ又は複数の吐水口と、
上記ボウル部の底部に接続された排水管路と、を有し、
上記吐水口から吐水された洗浄水の主流が、上記ボウル部の汚物受け面を旋回して、上記溜水面を平面視で前後方向及び左右方向を二分する前後方向中心線及び左右方向中心線により4つの領域に区分された上記溜水面の3つ以上の領域に洗浄開始初期に流入するように構成されていることを特徴とする洗い落とし式水洗大便器。
【請求項2】
上記溜水面に流入した洗浄水の所定のエネルギー蓄積量が1秒以内に4つの領域に区分された上記溜水面の3つ以上の領域に到達するように構成されている請求項1に記載の洗い落とし式水洗大便器。
【請求項3】
上記洗浄水の主流は、ボウル部の汚物受け面の前方側を旋回する前方主流と、ボウル部の汚物受け面の後方側を旋回する後方主流を形成する請求項1又は2に記載の洗い落とし式水洗大便器。
【請求項4】
上記洗浄水の前方主流と上記後方主流が、合流することなく、上記溜水面へ流入するように構成されている請求項3に記載の洗い落とし式水洗大便器。
【請求項5】
上記洗浄水の前方主流及び後方主流は、それぞれ、4つの領域に区分された領域の異なる領域に流入するように構成されている請求項3又は4に記載の洗い落とし式水洗大便器。
【請求項6】
上記吐水口は、前方主流を形成する第1吐水口及び後方主流を形成する第2吐水口であり、上記第1吐水口は、ボウル面の汚物受け面の前方領域の左右どちらかの一方の側に形成され、上記第2吐水口は、ボウル面の汚物受け面の後方領域の左右どちらかの他方の側に形成され、上記前方主流は、4つの領域に区分された溜水面の第1吐水口が設けられていない左右どちらかの一方の側の後方の領域に主に流入し、上記後方主流は、4つの領域に区分された溜水面の第2吐水口が設けられていない左右どちらか一方の側の前方の領域に主に流入するように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の洗い落とし式水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い落とし式水洗大便器に係り、特に、浮遊系汚物の排出力を向上させた洗い落とし式水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1乃至3に記載されているように、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落とし式の水洗大便器が知られている。
特許文献1に記載された洗い落とし式水洗大便器は、3つの吐水口から洗浄水を吐水し、その各吐水口から吐水される洗浄水の量を調整することにより、溜水面の特定の領域(後述する第2領域S2に対応する)へ強い流れを形成し、それにより、良好なボウル部洗浄能力が得られるようになっている。
特許文献2に記載された洗い落とし式水洗大便器は、2つの吐水口から洗浄水を吐水して、溜水面の第1領域(後述する第1領域S1及び第2領域S2に対応する)に大きな旋回力を有する洗浄水の主流を流入させることにより、汚物の排出性能を向上させている。
特許文献3に記載された洗い落とし式水洗大便器は、第2吐水口から多くの量の洗浄水を溜水面の後方から流入させることにより、汚物排出能力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-179958号公報
【特許文献2】特開2021-55437号公報
【特許文献3】特開2019-190217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗い落とし式水洗大便器において、乾燥面である汚物受け面の面積を小さくして汚物の付着を抑制するために溜水面を従来よりも大きくすることが考えられる。しかしながら、上述した特許文献1乃至3の洗い落とし式水洗大便器では、溜水面の特定の領域に強い洗浄水を流入させるようにしているので、溜水面を大きくすると、溜水面の特定の領域のみに強い洗浄水が流入するので、溜水面の表面が乱れてしまい、それにより、溜水面の表面に浮遊している浮遊系汚物を十分に排出することができない可能性があることが判明した。
【0005】
本発明者らは、洗い落とし式水洗大便器において、溜水面を大きく形成することにより生じる問題点を見いだし、この問題点を解決するために、鋭意研究し、本発明をなし得たのである。
【0006】
本発明は、上述した新たな問題点を解決するためになされたものであり、浮遊系汚物の排出力を向上させた洗い落とし式水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水により洗浄して汚物を排出する洗い落とし式水洗大便器であって、汚物を受ける汚物受け面と、この汚物受け面の上部に形成されたリム部と、汚物受け面の下部に形成されその内部に溜水面が形成されるツボ部と、を備えたボウル部と、リム部に沿って洗浄水を吐水する1つ又は複数の吐水口と、ボウル部の底部に接続された排水管路と、を有し、吐水口から吐水された洗浄水の主流が、ボウル部の汚物受け面を旋回して、溜水面を平面視で前後方向及び左右方向を二分する前後方向中心線及び左右方向中心線により4つの領域に区分された溜水面の3つ以上の領域に洗浄開始初期に流入するように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、吐水口から吐水された洗浄水の主流が、ボウル部の汚物受け面を旋回して、溜水面を平面視で前後方向及び左右方向を二分する前後方向中心線及び左右方向中心線により4つの領域に区分された溜水面の3つ以上の領域に洗浄開始初期に流入するように構成されているので、本発明によれば、洗浄初期に、溜水面の4つの領域に区分された領域のうちの3領域以上に洗浄水が流入するので、浮遊系汚物の排出タイミングを早くすることができ、さらに、溜水面全面に押圧力を加えることにより、溜水面が乱れることがないので、浮遊系汚物の排出力を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、溜水面に流入した洗浄水の所定のエネルギー蓄積量が1秒以内に4つの領域に区分された溜水面の3つ以上の領域に到達するように構成されている。
このように構成された本発明においては、溜水面に流入した洗浄水の所定のエネルギー蓄積量が1秒以内に4つの領域に区分された溜水面の3つ以上の領域に到達するようにしたので、溜水面にかかる押し圧力を一定にすることができ、溜水面の乱れを抑制しつつ、浮遊系汚物の排出を行うことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、洗浄水の主流は、ボウル部の汚物受け面の前方側を旋回する前方主流と、ボウル部の汚物受け面の後方側を旋回する後方主流を形成する。
このように構成された本発明においては、洗浄水の前方主流と後方主流を形成することによりボウル部の汚物受け面全体を洗浄しつつ浮遊系汚物の排出性能を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、洗浄水の前方主流と後方主流が、合流することなく、上溜水面へ流入するように構成されている。
このように構成された本発明においては、洗浄水の前方主流と後方主流が合流することなく、溜水面に流入するので、3つ以上の領域に流入する洗浄水のエネルギーを一定にし易くなり、溜水面の乱れを抑制しつつ、浮遊系汚物の排出を行うことができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、洗浄水の前方主流及び後方主流は、それぞれ、4つの領域に区分された領域の異なる領域に流入するように構成されている。
このように構成された本発明においては、洗浄水の前方主流及び後方主流は、それぞれ、4つの領域に区分された境域の異なる領域に流入する、即ち、同一の領域には流入しないようにしたので、溜水面への押し圧力を一定にしやすく、溜水面の乱れを抑制しやすい。
【0012】
本発明において、好ましくは、吐水口は、前方主流を形成する第1吐水口及び後方主流を形成する第2吐水口であり、第1吐水口は、ボウル面の汚物受け面の前方領域の左右どちらかの一方の側に形成され、第2吐水口は、ボウル面の汚物受け面の後方領域の左右どちらかの他方の側に形成され、前方主流は、4つの領域に区分された溜水面の第1吐水口が設けられていない左右どちらかの一方の側の後方の領域に主に流入し、後方主流は、4つの領域に区分された溜水面の第2吐水口が設けられていない左右どちらか一方の側の前方の領域に主に流入するように構成されている。
このように構成された本発明においては、第1吐水口及び第2吐水口から、それぞれ、吐水された洗浄がその吐水口が設けられていない側の領域へ流入するため、洗浄水がボウル面を1周旋回することなく溜水面に流入するため、溜水面への洗浄水の流入タイミングを早くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗い落とし式水洗大便器によれば、浮遊系汚物の排出力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器の平面断面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿って見た縦断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器の流水面の第1領域S1、第2領域S2、第3領域S3、及び、第4領域S4を示す平面図である。
【
図4A】本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器の第1吐水口及び第2吐水口のボウル部における配置を示す第1例の概略平面図である。
【
図4B】本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器の第1吐水口及び第2吐水口のボウル部における配置を示す第2例の概略平面図である。
【
図4C】本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器の第1吐水口及び第2吐水口のボウル部における配置を示す第3例の概略平面図である。
【
図4D】本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器の第1吐水口及び第2吐水口のボウル部における配置を示す第4例の概略平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗便器による吐水口から吐水された洗浄水が溜水面の各領域に流入するときの運動エネルギー(瞬間値)を示す線図である。
【
図6A】本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器による吐水口から吐水された洗浄水が流水面の各領域に流入するときの運動エネルギー(蓄積量)を示す線図である。
【
図6B】本発明の第1実施形態の比較例による洗い落とし式水洗大便器による吐水口から吐水された洗浄水が流水面の各領域に流入するときの運動エネルギー(蓄積量)を示す線図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器における第1吐水口及び第2吐水口から吐水された洗浄水の溜水面への流入の様子を示すボウル部の平面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態による洗い落とし式水洗大便器を斜め上方から見た斜視断面図である。
【
図11】
図2のXI-XI線に沿って見た断面図である。
【
図12】
図2のXII-XII線に沿って見た断面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態による洗い落とし式水洗大便器の吐水口から吐水された洗浄水の後方主流の流れの様子を示す斜視断面図である。
【
図14】本発明の第2実施形態による洗い落とし式水洗大便器の吐水口から吐水された洗浄水の前方主流の流れの様子を示す斜視断面図である。
【
図15】本発明の第3実施形態による洗い落とし式水洗大便器の平面断面図である。
【
図16】本発明の第3実施形態による洗い落とし式水洗大便器における吐水口(リム吐水口)の位置と洗浄水の流れを示す概念平面図である。
【
図17A】従来例1による水洗大便器における吐水口(リム吐水口)の位置と洗浄水の流れを示す概念平面図である。
【
図17B】従来例2による水洗大便器における吐水口(リム吐水口)の位置と洗浄水の流れを示す概念平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器について説明する。先ず、最初に、
図1及び
図2により、洗い落とし式水洗大便器の基本構造を説明する。
図1は本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器の平面断面図であり、
図2は
図1のII-II線に沿って見た縦断面図である。以下の説明では、洗い落とし式水洗大便器を単に「水洗大便器」という。
【0016】
図1及び
図2に示すように、水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である。水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2を洗浄する洗浄水を貯水する貯水タンク4とを備えている。便器本体2は、前方側にボウル部6を備え、後方上部には、その上流端に設けられた開口部7が貯水タンク4に連通する共通通水路8が形成されている。さらに、ボウル部6の後方下部に汚物を排出するための排水管路10が形成されている。
ここで、本明細書において、使用者から見て、水洗大便器の手前側を前側、奥側を後方、右側を右側、左側を左側、として説明する。
【0017】
上述した貯水タンク4は、排水弁12を備え、使用者が操作レバー(図示せず)を開操作することにより、排水弁12が開き、貯水タンク4内の洗浄水が便器本体2に供給されるようになっている。
なお、本実施形態においては、貯水タンク4以外に、洗浄水の水源として、水道水直圧式のものや、フラッシュバルブを用いたものでもよく、さらに、ポンプを使用して洗浄水を供給するものであってもよい。
【0018】
ボウル部6は、ボウル形状の汚物受け面16と、汚物受け面16の上方に形成されたリム部18と、汚物受け面16の下方に形成されその内部に溜水面20を形成するツボ部22を備えている。ここで、ツボ部22の溜水面20は、略三角形であり、上面視で前後方向が160mm~180mm、幅方向が125mm~145mmであり、従来の洗い落とし式水洗大便器の溜水面よりも大きく(拡大されて)形成されている。また、ツボ部22は、上面視で前後方向が20cm~24cmであり、横方向が15cm~19cmの大きさで溜水面20よりも卵型(前側が先細の楕円形状)の略三角形を形成している。
【0019】
ボウル部6のリム部18には、前方から見て左側の前方側に、洗浄水を吐水する第1吐水口24が、さらに、前方から見て右側の後方側に、洗浄水を吐水する第2吐水口26が形成されている。上述した共通通水路8は、下流側に向けて、第1通水路28と第2通水路30とに分岐し、第1通水路28は第1吐水口24まで延び、第2通水路30は第2吐水口26まで延び、貯水タンク4から洗浄水を第1吐水口24と第2吐水口26に供給するようになっている。ここで、第1吐水口24と第2吐水口26は、同一の方向に旋回する旋回流を形成する向きに洗浄水を吐水するようになっている。本実施形態の場合は、反時計回りの旋回流を形成している。
なお、本実施形態において、吐水口は、1つでも良く、さらに、2つ以上(例えば3つ)であってもよい。
【0020】
次に、
図3により、本発明の第1実施形態による水洗大便器の溜水面について説明する。
図3に示すように、説明の便宜上、ツボ部22の内部に形成された溜水面20の領域は、前後方向に延びる左右方向(幅方向)の中心線A1と、幅方向に延びる前後方向の中心線A2により、4つの領域に分割されており、これらの4つの領域について説明する。具体的には、溜水面20は、左後方側の第1領域S1、右後方側の第2領域S2、右前方側の第3領域S3、及び、左前方側の第4領域S4を含むようになっている。なお、本実施形態では、溜水面20を4つの領域に分割したが、ツボ部22を同様に4つの領域に分割してもよい。
【0021】
次に、
図4A、
図4B、
図4C、
図4Dにより、洗浄水を吐水する吐水口の種々の配置について説明する。
図4Aは本発明の第1実施形態による水洗大便器の第1吐水口及び第2吐水口のボウル部における配置を示す第1例の概略平面図であり、
図4Bは本発明の第1実施形態による水洗大便器の第1吐水口及び第2吐水口のボウル部における配置を示す第2例の概略平面図であり、
図4Cは本発明の第1実施形態による水洗大便器の第1吐水口及び第2吐水口のボウル部における配置を示す第3例の概略平面図であり、
図4Dは本発明の第1実施形態による水洗大便器の第1吐水口及び第2吐水口のボウル部における配置を示す第4例の概略平面図である。
【0022】
図4A乃至
図4Dに示すように、ボウル部6は、上面視で、前後方向に延びる左右方向(幅方向)の中心線B1と、幅方向に延びる前後方向の中心線B2により、4つの領域に分けられている。
図4Aに示す第1の例では、第1吐水口24は、ボウル部6の前方左側の領域に配置され、前方に吐水して、前方主流F1を形成し、第2吐水口26は、ボウル部6の後方右側の領域に配置され、横方向に吐水して、後方主流F2を形成する。
【0023】
図4Bに示す第2の例では、第1吐水口24は、ボウル部6の後方左側の領域に配置され、前方に吐水して、前方主流F1を形成し、第2吐水口26は、ボウル部6の後方右側の領域に配置され、横方向に吐水して、後方主流F2を形成する。
図4Cに示す第3の例では、第1吐水口24は、ボウル部6の前方左側の領域に配置され、前方に吐水して、前方主流F1を形成し、第2吐水口26は、ボウル部6の前方右側の領域に配置され、後方向に吐水して、後方主流F2を形成する。
図4Dに示す第4の例では、第1吐水口24は、ボウル部6の後方左側の領域に配置され、前方に吐水して、前方主流F1を形成し、第2吐水口26は、ボウル部6の前方右側の領域に配置され、後方向に吐水して、後方主流F2を形成する。
【0024】
本実施形態の水洗大便器1においては、
図4Aの第1例では、前方主流F1も後方主流F2も溜水面20に流入し易いが、
図4Bの第2の例では、前方主流F1が溜水面20に流入し難く、
図4Cの第3の例では、後方主流F2が溜水面20に流入し難く、
図4Dの第4の例では、前方主流F1も後方主流F2も溜水面20に流入し難くなっている。
【0025】
本実施形態の水洗大便器1においては、洗浄水の主流、即ち、前方主流F1と後方主流F2が、上述した溜水面20の4つの領域のうちの3つ以上の領域に洗浄開始初期に流入するようにして、浮遊形汚物の排出タイミングを早くするとともに、溜水面20の前面に押圧力を加えることにより、溜水面20を乱れさせることがなく、浮遊系汚物の排出力を向上させている。
【0026】
本実施形態による水洗大便器1においては、上述した特徴を実現するため、以下の手段を採用している。
手段1(第1吐水口と第2吐水口を備える場合)
先ず、
図4Aの第1の例や
図4Cの第3の例のように、第1吐水口24から吐水される洗浄水の前方主流F1の溜水面20への流入が早い場合には、(i)第1吐水口24から吐水される洗浄水の前方主流F1の溜水面20への流入を遅くするための流入遅延手段を設けている。流入遅延手段は、加圧ポンプによる洗浄水の流速制御を行う、又は、洗浄水の第1通水路28の形状、第1吐水口24の形状、汚物受け面16の形状等による流速制御を行うのがよい。また、第1吐水口24から吐水される前方主流F1の溜水面20までの距離を長くしてもよい。
【0027】
さらに、第1吐水口24から吐水される洗浄水の前方主流F1の溜水面20への流入が早い場合には、(ii)第2吐水口26から吐水される洗浄水の前方主流F1の溜水面20への流入を早くするための流入促進手段を設けている。流入促進手段は、第2吐水口26から吐水される後方主流F2が溜水面20に向けて流れるようにしてもよいし、後方主流F2の流速を上げるようにしてもよい。そのためには、加圧ポンプによる洗浄水の流速制御を行う、又は、洗浄水の第2通水路30の形状、第2吐水口26の形状、汚物受け面16の形状等による流速制御を行うのがよい。
【0028】
手段2(第1吐水口と第2吐水口を備える場合)
次に、
図4Bの第2の例や
図4Dの第4の例のように、第1吐水口24から吐水される洗浄水の前方主流F1の溜水面20への流入が遅い場合には、第1吐水口24から吐水される洗浄水の前方主流F1の溜水面20への流入を早くするための流入促進手段を設けている。流入促進手段は、加圧ポンプによる洗浄水の流速制御を行う、又は、洗浄水の第1通水路28の形状、第1吐水口24の形状、汚物受け面16の形状等による流速制御を行うのがよい。また、第1吐水口24から吐水される前方主流F1の溜水面20までの距離を短くしてもよいし、前方主流F1がツボ部22の側面に沿って溜水面20に流入するようにしてもよい。
【0029】
手段3(第1吐水口と第2吐水口を備える場合)
さらに、
図4Bの第2の例や
図4Dの第4の例のように、第1吐水口24から吐水される洗浄水の前方主流F1の溜水面20への流入が遅い場合には、第2吐水口26から吐水される洗浄水の後方主流F2の溜水面20への流入を早くするための流入促進手段を設けている。流入促進手段は、加圧ポンプによる洗浄水の流速制御を行う、又は、洗浄水の第2通水路30の形状、第2吐水口26の形状、汚物受け面16の形状等による流速制御を行うのがよい。また、第2吐水口26から吐水される後方主流F2の溜水面20までの距離を長くしてもよい。
【0030】
次に、
図5、
図6A、
図6Bにより、本実施形態による水洗大便器1における洗浄水が溜水面に流入するときの運動エネルギーについて説明する。
図5は本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗便器による吐水口から吐水された洗浄水が溜水面の各領域に流入するときの運動エネルギー(瞬間値)を示す線図であり、
図6Aは本発明の第1実施形態による洗い落とし式水洗大便器による吐水口から吐水された洗浄水が流水面の各領域に流入するときの運動エネルギー(蓄積量)を示す線図であり、
図6Bは比較例による洗い落とし式水洗大便器による吐水口から吐水された洗浄水が流水面の各領域に流入するときの運動エネルギー(蓄積量)を示す線図である。ここで、
図5、
図6A、
図6Bに示された洗浄水の運動エネルギーは、流体解析を用いて測定したものであり、
図5、
図6A、
図6Bにはその測定結果が示されている。
【0031】
先ず、使用者が貯水タンク4の操作レバー(図示せず)を開操作すると、排水弁12が開き、貯水タンク4に貯水された洗浄水が共通通水路8、第1通水路28、第2通水路30を経て、第1吐水口24と第2吐水口26から吐水される。
【0032】
ここで、
図5に示されているように、操作レバーを開操作し、吐水が開始され、洗浄水が溜水面20に流入して、この流入が終了するまで、約5.5秒かかっている。この流入期間は、洗浄開始初期E1,洗浄中期E2、洗浄後期E3に分けられる。
図5から分かるように、溜水面20の各領域(S1、S2、S3、S4)に流入する洗浄水の運動エネルギーは、溜水面20に洗浄水が流入して1秒経過したときには、相当の運動エネルギーが生じている。
【0033】
次に、
図6Aに示されているように、本実施形態による水洗大便器1においては、溜水面20の各領域S1、S2、S3、S4に流入する洗浄水の運動エネルギー(蓄積値)は、時間G1に到達したとき、全ての領域で、運動エネルギーが立ち上がっている(生じている)。また、4つの領域S1、S2、S3、S4の運動エネルギー(蓄積値)が、1秒以内の差(即ち、時間T1)で、所定値J1に到達していることが分かる。
【0034】
これに対し、本実施形態の比較例においては、溜水面20の各領域S1、S2、S3、S4に流入する洗浄水の運動エネルギー(蓄積値)は、時間G2に到達したとき、全ての領域で、運動エネルギーが立ち上がっている(生じている)。また、4つの領域S1、S2、S3、S4の運動エネルギー(蓄積値)が、1秒以上の差(即ち、時間T2)で、所定値J1に到達していることが分かる。
【0035】
次に、
図7により、本実施形態による水洗大便器1における洗浄水の溜水面への流入の様子を説明する。
図7は本実施形態による水洗大便器における第1吐水口及び第2吐水口から吐水された洗浄水の溜水面への流入の様子を示すボウル部の平面図である。
図7に示されているように、まず、第1吐水口24から吐水された洗浄水の前方主流F1は、ボウル部6の汚物受け面16の右側の前方領域を流れた後に、汚物受け面16の後方領域に到達し、溜水面20の領域S2及び領域S1に流入(流下)する。
【0036】
次に、第1吐水口26から吐水された洗浄水の後方主流F2は、ボウル部6の汚物受け面16の左側の後方領域を流れた後に、汚物受け面16の前方領域に到達し、溜水面20の領域S4及び領域S3に流入(流下)する。
この
図7からも明らかなように、本実施形態の水洗大便器1においては、洗浄水の前方主流F1と後方主流F2が合流することなく、溜水面20に流入するようになっている。
さらに、洗浄水の前方主流F1及び後方主流F2は、それぞれ、4つの領域S1、S2、S3、S4に区分された境域の異なる領域に流入するようになっている。
【0037】
以下、上述した第1実施形態による作用効果を説明する。
先ず、本実施形態による水洗大便器1においては、第1吐水口24及び第2吐水口26から吐水された洗浄水の前方主流F1及び後方主流F2が、ボウル部6の汚物受け面16を旋回して、溜水面20を平面視で前後方向及び左右方向を二分する前後方向中心線及び左右方向中心線により4つの領域S1、S2、S3、S4に区分された溜水面の3つ以上の領域に洗浄開始初期に流入するように構成されているので、本実施形態によれば、洗浄初期に、溜水面の4つの領域S1、S2、S3、S4に区分された領域のうちの3領域以上に洗浄水が流入するので、浮遊系汚物の排出タイミングを早くすることができ、さらに、溜水面20全面に押圧力を加えることにより、溜水面20が乱れることがないので、浮遊系汚物の排出力を向上させることができる。
【0038】
次に、本実施形態による水洗大便器1においては、溜水面20に流入した洗浄水の所定のエネルギー蓄積量が1秒以内に4つの領域S1、S2、S3、S4に区分された溜水面の3つ以上の領域に到達するようにしたので、溜水面20にかかる押し圧力を一定にすることができ、溜水面20の乱れを抑制しつつ、浮遊系汚物の排出を行うことができる。
【0039】
次に、本実施形態による水洗大便器1においては、洗浄水の前方主流F1と後方主流F2を形成することによりボウル部6の汚物受け面16全体を洗浄しつつ浮遊系汚物の排出性能を向上させることができる。
【0040】
次に、本実施形態による水洗大便器1においては、洗浄水の前方主流F1と後方主流F2が合流することなく、溜水面20に流入するので、3つ以上の領域に流入する洗浄水のエネルギーを一定にし易くなり、溜水面20の乱れを抑制しつつ、浮遊系汚物の排出を行うことができる。
【0041】
次に、本実施形態による水洗大便器1においては、洗浄水の前方主流F1及び後方主流F2は、それぞれ、4つの領域S1、S2、S3、S4に区分された境域の異なる領域に流入する、即ち、同一の領域には流入しないようにしたので、溜水面20への押し圧力を一定にしやすく、溜水面20の乱れを抑制しやすい。
【0042】
次に、本実施形態による水洗大便器1においては、第1吐水口24及び第2吐水口26から、それぞれ、吐水された洗浄がその吐水口が設けられていない側の領域へ流入するため、洗浄水がボウル面6を1周旋回することなく溜水面20に流入するため、溜水面20への洗浄水の流入タイミングを早くすることができる。
【0043】
次に、
図2及び
図8乃至
図14により、本発明の第2実施形態による水洗大便器101について説明する。
先ず、
図8乃至
図10により、水洗大便器101の汚物受け面16、ツボ部22の具体的な形状等について説明する。
図8は本実施形態による洗い落とし式水洗大便器を斜め上方から見た斜視断面図であり、
図9は
図2の部分拡大縦断面図である、
図10は
図1の部分拡大平面断面図である。
【0044】
先ず、
図8に示すように、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40は、汚物受け面16の左右側面16aよりも、深く凹んだ凹部40aを備えている。この凹部40aを備えた後方面40の下端40bは、ツボ部22の右側面22aと左側面22bの上端22cよりも下方まで延びている。
【0045】
図9に示すように、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40は、ツボ部22の後面22dと接続部42を介して接続されている。ここで、汚物受け面16の後方面40は、上下方向に沿って凹形状であり、接続部42が凸形状であり、後方面40と接続部42は変局点により滑らかに接続されている。この接続部42が、汚物受け面16の後方面40の下端40bに相当する。
【0046】
図10に示すように、平面視で、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40の凹部40aの横方向幅W2は、ツボ部22の最大横方向幅W1よりも狭くなるように形成されている。
【0047】
次に、
図2、
図11及び
図12により、ツボ部22の後面22dの形状について説明する。
図11は
図2のXI-XI線に沿って見た断面図であり、
図12は
図2のXII-XII線に沿って見た断面図である。
図11に示すように、ツボ部22の後面22dの上方位置は、曲率半径R1により形成され、
図12に示すように、ツボ部22の後面22dの下方位置は、曲率半径R2により形成されている。ここで、曲率半径R2の方が曲率半径R1よりも小さな値となっている(R1>R2)。このため、
図8に示すように、ツボ部22の後面22dの下方位置の曲率半径R2が、排水管路10の入口10aの後方側の曲率半径と近い値となり、ツボ部22から排水管路10へ流出する洗浄水の流れが円滑となる。
【0048】
次に、
図13及び
図14により、洗浄水の流れの様子を説明する。
図13は本実施形態による洗い落とし式水洗大便器の吐水口から吐水された洗浄水の後方主流の流れの様子を示す斜視断面図であり、
図14は本実施形態による洗い落とし式水洗大便器の吐水口から吐水された洗浄水の前方主流の流れの様子を示す斜視断面図である。
【0049】
先ず、
図13に示すように、第2吐水口26から吐水された洗浄水の後方主流F2は、汚物受け面16の後方面40を通過するが、このとき、凹部41aにより、汚物受け面16上を続けて旋回することなく、ツボ部22の左側側面22bに沿って流れ、上述した溜水面20の第4領域S4と第3領域S3にほぼ流入(流下)する。
【0050】
次に、
図14に示すように、第1吐水口24から吐水された洗浄水の前方主流F1は、汚物受け面16からツボ部22の右側面22aに沿って流れ、次に、汚物受け面16の後方面40の凹部40aに衝突して、前方主流F1の流れ方向が前後方向から横方向にベクトル変換され、前方主流F1は、上述した溜水面20の第2領域S2と第1領域S1に流流入(流下)する。
【0051】
以下、上述した本発明の実施形態による水洗大便器の作用効果を説明する。
先ず、本実施形態による水洗大便器101においては、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40が、汚物受け面16の左右側面16aよりも深く凹んだ凹部40aを備え、この後方面40が、ツボ部22の左右側面22a、22bの上端22cよりも下方まで延びているので、洗浄水の前方主流F1は、ツボ部22の側面を通り汚物受け面16の後方面40に到達し、この後方面40で流れの方向が変わり、そのまま汚物受け面16の後方面40に沿って溜水面20へ流入する流れとなる。その結果、本実施形態によれば、洗浄水の前方主流F1を、汚物受け面16を旋回して溜水面20へ流入するよりも早く溜水面20へ誘導することができるので、前方主流F1と後方主流F2を溜水面20へほぼ同じタイミングで誘導することができ、それにより、浮遊系汚物の排出性能を向上させることができる。
【0052】
次に、上述した特許文献1の水洗大便器のように、ボウル部の汚物受け面の後方凹部がツボ部の横方向幅よりも広いと前方からツボ部の側面を旋回した洗浄水が拡がってしまい溜水面への流入が遅れてしまう可能性がある。それに対して、本実施形態による水洗大便器101においては、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40の凹部40aの横方向幅W2が、ツボ部22の最大横方向幅W1よりも狭く形成されているので、前方からツボ部22の側面を旋回した洗浄水が拡がることを抑制することができ、洗浄水の前方主流F1の溜水面20への流入を早くすることができる。
【0053】
次に、本実施形態による水洗大便器101においては、ボウル部6の汚物受け面16の後方面40の凹部40aが、上下方向に沿って凹形状に形成され、その下端が凸形状の接続部42によりツボ部22の後面22dに接続されているので、洗浄水を滑らかに溜水面20へ誘導することができる。
【0054】
次に、本実施形態による水洗大便器101においては、ツボ部22の後面22dの上方位置の曲率半径R1と、下方位置の曲率半径R2では、下方位置の曲率半径R2の方が上方位置の曲率半径R1より小さくなる(R1>R2)ように形成されているので、ツボ部22から排水管路10へ流出する洗浄水の流れが円滑となり、汚物排出性能が向上する。
【0055】
次に、
図15、
図16、
図17A、
図17Bにより、本発明の第3実施形態による水洗大便器201について説明する。
先ず、
図15により、本実施形態による水洗大便器のボウル部の吐水口(リム吐水口)の位置について詳細に説明する。
図15は本実施形態による洗い落とし式水洗大便器の平面断面図である。この第3実施形態においては、上述した第1吐水口24及び第2吐水口26を、便宜上、第1リム吐水口24及び第2リム吐水口26として説明する。
【0056】
図15に示されるように、ボウル部6の平面を9つの領域に分割して、本実施形態による水洗大便器201のリム吐水口の位置を説明する。ボウル部6の平面は、溜水面20の前端s1において左右方向に延びる延長線X1、溜水面20の後端s2において左右方向に延びる延長線X2、溜水面20の左端s3において前後方向に延びる延長線Y1、及び、溜水面20の右端s4において前後方向に延びる延長線Y2よって区切られ、9つの領域(f1~f3,m1~m3,r1~r3)に分割されている。
【0057】
具体的に、ボウル部6の平面は、溜水面20の前端s1よりも前方に位置する前方領域(f1~f3)、溜水面20の前端s1と後端s2との間に位置する側方領域(m1~m3)、溜水面20の後端s2よりも後方に位置する後方領域(r1~r3)に分割されている。さらに、前方領域は、溜水面20の左端s3よりも左側に位置する左側前方領域f1、溜水面20の左端s3と右端s4との間に位置する中間前方領域f2、溜水面20の右端s4よりも右側に位置する右側前方領域f3に分割されている。同様に、側方領域は、左から、左側側方領域m1、中間側方領域m2、右側側方領域m3に分割され、後方領域は、左から、左側後方領域r1、中間後方領域r2、右側後方領域r3に分割されている。
【0058】
本実施形態では、溜水面20は、ボウル部6の中央に位置する中間側方領域m2に形成されている。第1リム吐水口24は、溜水面20の前端s1(延長線X1)よりも前方、且つ、溜水面20の左端s3(延長線Y1)よりも左側の左側前方領域f1に配置されている。さらに、第1リム吐水口24は、ボウル部6の平面視で最小の曲率半径となるボウル部6の先端よりも上流側に配置されている。
【0059】
第2リム吐水口26は、溜水面20の後端s2(延長線X2)よりも後方、且つ、溜水面20の右端s4(延長線Y2)よりも右側の右側後方領域r3に配置されている。さらに、第2リム吐水口26は、ボウル部6の後端付近に配置されている。
【0060】
第1リム吐水口24及び第2リム吐水口26は、溜水面20の前後方向を二等分する中心線Xと溜水面20の左右方向を二等分する中心線Yとが交差する交点Oを挟むように対角する左側前方領域f1及び右側後方領域r3にそれぞれ配置されている。
なお、本実施形態では、第1リム吐水口24が左側前方領域f1に配置され、第2リム吐水口26が右側後方領域r3に配置されているが、これに代えて、第1リム吐水口18を右側前方領域f3に配置し、第2リム吐水口26を左側後方領域r1に配置してもよい。
【0061】
次に、
図16、
図17A及び
図17Bを参照して、従来例1及び従来例2と比較しながら、本実施形態による水洗大便器における洗浄水の流れを説明する。
図16は本実施形態による洗い落とし式水洗大便器における吐水口(リム吐水口)の位置と洗浄水の流れを説明する概念平面図であり、
図17Aは従来例1による水洗大便器における吐水口(リム吐水口)の位置と洗浄水の流れを説明する概念平面図であり、
図17Bは従来例2による水洗大便器における吐水口(リム吐水口)の位置と洗浄水の流れを説明する概念平面図である。
【0062】
第1リム吐水口に関して、従来例1(
図17A参照)では、第1リム吐水口124が、溜水面20の前端s1と後端s2との間である左側側方領域m1に配置されているので、第1リム吐水口124から前方へ吐水された洗浄水は、左側側方領域m1で溜水面20に流入することができず、左側側方領域m1を通過して前方領域(f1~f3)を流れた後、前方側から溜水面20に流入するようになっている(
図17Aの矢印を参照)。これに対して、本実施形態(
図16参照)では、第1リム吐水口24が、溜水面20の前端s1よりも前方の左側前方領域f1に配置されているので、第1リム吐水口24から前方へ吐水された洗浄水は、前方領域(f1~f3)を流れて、他の領域を経由することなく、前方側から溜水面20に流入することができるようになっている(
図16の矢印を参照)。
【0063】
第2リム吐水口に関して、従来例2(
図17B参照)では、第2リム吐水口226が、溜水面20の前端s1と後端s2との間である右側側方領域m3に配置されているので、第2リム吐水口226から後方へ吐水された洗浄水は、右側側方領域m3で溜水面Sに流入することができず、右側側方領域m3を通過して後方領域(r1~r3)を流れた後、後方側から溜水面20に流入するようになっている(
図6(b)の矢印を参照)。これに対して、本実施形態(
図16参照)では、第2リム吐水口26が、溜水面20の後端s2よりも後方の右側後方領域r3に配置されているので、第2リム吐水口26から後方へ吐水された洗浄水は、後方領域(r1~r3)を流れて、他の領域を経由することなく、後方側から溜水面20に流入することができるようになっている(
図16の矢印を参照)。
【0064】
本実施形態(
図16参照)では、第1リム吐水口24が溜水面20の前端s1よりも前方の左側前方領域f1に配置され、第2リム吐水口26が溜水面20の後端s2よりも後方の右側後方領域r3に配置されているので、洗浄開始時、第1リム吐水口24から前方へ吐水された洗浄水及び第2リム吐水口26から後方へ吐水された洗浄水は、従来例と比較して早期且つほぼ同時に溜水面20に流入するようになっている(
図16の矢印を参照)。
【0065】
次に、上述した本発明の第3実施形態による水洗大便器201による作用効果を説明する。
本実施形態による水洗大便器201においては、第1リム吐水口24がボウル部6の内側空間における溜水面20の前端s1よりも前方に配置され、第1リム吐水口24から洗浄水が前方へ吐水されると共に、第2リム吐水口26がボウル部6内の溜水面20の後端s2よりも後方に配置され、第2リム吐水口26から後方へ洗浄水が吐水されているので、洗浄開始時、第1リム吐水口24及び第2リム吐水口26からの洗浄水を早期且つほぼ同時に溜水に流入させて、溜水面20全体に洗浄水を均等に流し込むことができる。よって、便器本体2に供給される洗浄水の全てがリム吐水口から吐水される水洗大便器において、浮遊系汚物を十分に排出させることができる。
【0066】
また、本実施形態による水洗大便器201においては、好ましくは、第1リム吐水口24及び第2リム吐水口26は、溜水面20の左端s3よりも左側又は溜水面20の右端s4よりも右側に配置されているので、洗浄開始時、第1リム吐水口24及び第2リム吐水口26からの洗浄水をより同時に溜水に流入させて、溜水面20全体に洗浄水を均等に流し込むことができる。
【0067】
本実施形態による水洗大便器201においては、好ましくは、第1リム吐水口24及び第2リム吐水口26は、平面視において、溜水面20の前後方向を二等分する中心線Xと溜水面20の左右方向を二等分する中心線Yとが交差する交点Oを挟むように対角する領域にそれぞれ配置されているので、洗浄開始時、第1リム吐水口24及び第2リム吐水口26からの洗浄水をより同時に溜水に流入させて、溜水面20全体に洗浄水を均等に流し込むことができる。
【0068】
本実施形態では、2つのリム吐水口を備える水洗大便器を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、3つ以上のリム吐水口を備える水洗大便器に適用してもよい。この場合、3つ以上のリム吐水口は、上述した左側前方領域f1、右側前方領域f3、左側後方領域r1、又は右側後方領域r3の何れかにそれぞれ分散して配置され得る。
【0069】
次に、上述した本実施形態による水洗大便器の補足説明をする。本実施形態による水洗大便器1、101、201においては、上述したように、ボウル部6には、その内部に溜水面20を形成するツボ部22が設けられており、このツボ部22は、平面視で、略三角形の形状となっている。このツボ部22は、右側側面22aと左側側面22bのそれぞれの上端22cの高さが、
図8及び
図9に示すように、前方に向けて、低くなるように形成されている。そのため、後方主流F2は、左側面22bの高さが略一定な上端22cの左側面22bに沿って流れ、上端22Cの前方に向けて低くなる傾斜部で、上端22cを沿った流れが上端22cの変化点により乖離し、左側側面22bから溜水面20へ流入する方向へ変化することにより、後方主流F2がツボ部22の側面を周回し、溜水面20への流入が遅延することを抑制する流入促進手段として機能することができる。右側側面22aの上端22cが前方から後方に向けて高くなるように形成されているため、前方主流F1は、右側側面22aに沿って流れ、上端22Cの後方に向けて高くなる傾斜部で、上端22cを沿った流れが、右側側面22bから溜水面20へ流入する方向へ変化しやすくなり、前方主流F1がツボ部22の側面を周回し、溜水面20への流入が遅延することを抑制する流入促進手段として機能することができる。
【0070】
加えて、ツボ部22の両側側面22a、22bの上縁22cの高さが前方に向けて低くなっているので、ツボ部22の後ろからツボ部22に流下して左側側面22bに沿って流れた後方主流F2は、溜水面20に流入した後に、ツボ部22の前方に突き当たって上昇する。このとき、ボウル部6の汚物受け面16の前方領域から後方主流F1がツボ部22に向けて流れ込み、ツボ部22の前方で、後方主流F2と前方主流F1が合流し、その結果、強い押し込み流れが形成され、汚物排出性能が向上する。
【符号の説明】
【0071】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 貯水タンク
6 ボウル部
10 排水管路
16 汚物受け面
18 リム部
20 溜水面
22 ツボ部
24 第1吐水口
26 第2吐水口
S1 第1領域
S2 第2領域
S3 第3領域
S4 第4領域