(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046716
(43)【公開日】2024-04-04
(54)【発明の名称】送風装置、及びヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240328BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20240328BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20240328BHJP
B60N 2/879 20180101ALI20240328BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B60H1/00 102V
B60H1/34 651A
B60H1/32 621G
B60N2/879
A47C7/74 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152033
(22)【出願日】2022-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖尋
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3L211
【Fターム(参考)】
3B084JA01
3B084JG01
3B084JG06
3B087DC05
3L211BA02
3L211BA03
3L211DA53
3L211DA62
(57)【要約】
【課題】出口からの送風空気の温度を安定化する送風機、及びヘッドレストを提供すること。
【解決手段】送風装置1は、ヘッドレスト30に取り付け可能である。送風装置1は、ファン4と、ファン4に繋がり、ファン4からの送風空気10が案内される本流路2と、熱電素子3を備える。本流路2は、熱電素子3によって第一分流路21と第二分流路22に仕切られる。第一分流路21の第一出口34をヘッドレスト30の乗員側である前側に開口させると、第二分流路22の第二出口35は非乗員側に開口する。第二分流路22は、ファン4によって吸引される空気の吸引方向Dに沿う方向に向かって形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストに取り付け可能な送風装置であって、
ファンと、
前記ファンに繋がり、該ファンからの送風空気が案内される本流路と、
熱電素子を備え、
前記本流路は、前記熱電素子によって第一分流路と第二分流路に仕切られ、
前記第一分流路の第一出口が乗員側に開口する場合、前記第二分流路の第二出口は非乗員側に開口し、
前記第二分流路は、前記ファンによって吸引される空気の吸引方向に沿う方向に向かって形成される送風装置。
【請求項2】
前記ヘッドレストに取り付けられる状態において、
前記第一出口が該ヘッドレストの前側の方向に開口する前記第一分流路と、
前記第一出口が該ヘッドレストの後側の方向に開口する前記第一分流路を備える請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の送風装置を備えるヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等のヘッドレストに取り付け可能な送風装置、及び送風装置が搭載されたヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用ヘッドレスト温度調節器が提案されている。例えば、特許文献1によれば、座席温度調節装置は、調節された空気を座席乗員の首部分に供給するように構成された通気口を有する座席部分を備える。熱電気モジュールが座席部分に配置される。熱電気モジュールは、調節された空気を供給するように空気供給物を加熱および冷却するように構成される。
【0003】
座席用の温度調節装置が、流体入口と、第1、第2の流体出口とを有する通路を提供するハウジングを備える。熱電気モジュールが、流体入口と、第1、第2の流体出口との間の通路に配置される。送風機がハウジング内に配置されており、流体を流体入口から熱電気モジュールを通して第1、第2の流体出口へと移動させるように構成される。第1の流体出口は、乗員支持面に配置されるように構成されており、調節された空気を座席乗員の首部分に供給するように構成される。第2の流体出口は、乗員支持面から遠隔の領域に配置されており、廃棄空気を座席乗員の首部分から離れる方へと導くように構成される。
【0004】
これによれば、第2の流体出口は、横方向に離間した排気通気口を備えており、排気通気口は、後方に傾斜した分割器を備えており、廃棄空気を第1の流体出口から離れる方へと横方向にかつ後方に導くように構成される、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1による乗物用ヘッドレスト温度調節器は以下の課題が想定される。第2の流体出口は、乗員支持面から遠隔の領域に配置されているものの、廃棄空気は送風機が吸入する空気の領域に向かって廃棄されるため、吸入空気に排気空気が混じってしまう恐れがある。すなわち、吸入空気は排気空気によって温度が変化してしまい、熱電気モジュールに負荷を与えるか、或いは設定通りの温度調節ができなくなるという課題が想定される。
【0007】
本発明の目的は、従来の課題を解決するもので、出口からの送風空気の温度を安定化する送風機、及びヘッドレストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る送風装置は、ヘッドレストに取り付け可能であって、ファンと、前記ファンに繋がり、該ファンからの送風空気が案内される本流路と、熱電素子を備え、前記本流路は、前記熱電素子によって第一分流路と第二分流路に仕切られ、前記第一分流路の第一出口が乗員側に開口する場合、前記第二分流路の第二出口は非乗員側に開口し、前記第二分流路は、前記ファンによって吸引される空気の吸引方向に沿う方向に向かって形成される。
【0009】
これによれば、送風装置は、熱電素子によって温度調節された送風空気を第一分流路と第二分流路の二方向に送風できる。第二分流路は、ファンによって吸引される空気の吸引方向に沿う方向に向かって形成される。第二分流路の第二出口からは、ファンによる吸引空気と混在しないように異なる方向に空気を排出できる。よって、吸引空気は送風空気の温度による影響が抑制されるので、送風装置は第一出口及び第二出口から、安定して温度調節された送風空気を送風することができる。
【0010】
また、前記送風装置は、前記ヘッドレストに取り付けられる状態において、前記第一出口が該ヘッドレストの前側の方向に開口する前記第一分流路と、前記第一出口が該ヘッドレストの後側の方向に開口する前記第一分流路を備えてもよい。
【0011】
この場合、送風装置はヘッドレストに取り付けたとき、第一分流路からの送風空気を、ヘッドレストの前側の方向、及び後側の方向の双方に送風できるので、前側の乗員と後側の乗員のそれぞれに送風することができる。
【0012】
本発明の第二の態様に係るヘッドレストは、前記送風機を備える。これによれば、ヘッドレストは、乗員側に開口する送風装置の第一出口と、非乗員側に開口する送風装置の第二出口から、安定して温度調節された送風空気を送風することができる。また、送風機が、第一出口が前側の方向に開口する第一分流路と、第一出口が後側の方向に開口する第一分流路を備えれば、温度調節された第一分流路からの送風空気を前側の乗員と後側の乗員のそれぞれに送風することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の送風装置1、及びヘッドレスト30を示す断面図である。
【
図2】本発明のヘッドレスト30を分解して示した斜視図である。
【
図3】本発明の第一実施形態の送風装置1aの全体を示す斜視図である。
【
図4】本発明のヘッドレスト30において、前面31を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明のヘッドレスト30を前面31から見た斜視図である。
【
図7】本発明の送風装置1の制御装置及び駆動源を示すブロック図である。
【
図8】本発明のヘッドレスト30を下側から見た斜視図であり、外フレーム6bに形成された第二開口33を示す。
【
図9】本発明のヘッドレスト30において、外フレーム6bを取り外した状態で下側から見た斜視図であり、ファン支持フレーム6aに形成された第一開口7を示す。
【
図10】本発明のヘッドレスト30を上側から見た斜視図であり、第二出口35を示す。
【
図11】本発明の第二実施形態の送風装置1bの要部を示す断面図である。
【
図12】本発明の第三実施形態の送風装置1cの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した送風装置1、及びヘッドレスト30を説明する。なお、発明を実施するための形態、及び参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。本発明はこれらに限定されるものではない。図面に記載されている構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0015】
<<第一態様の送風装置1の説明>>
図1から
図12までは、送風装置1、及び送風装置1を備えたヘッドレスト30を示す。本発明の第一の態様に係る送風装置1を説明する。
図2等に示すように、送風装置1及びヘッドレスト30の各方向を、図示するように、上下方向と前後方向と左右方向に定義する。送風装置1は、ヘッドレスト30に取り付け可能である。
図1及び
図3に示すように、送風装置1は、ファン4と、ファン4に繋がり、ファン4からの送風空気10が案内される本流路2と、熱電素子3を備える。
【0016】
図1に示すように、本流路2は、熱電素子3によって第一分流路21と第二分流路22に仕切られる。第一分流路21の第一出口34が乗員側に開口する場合、第二分流路22の第二出口35は非乗員側に開口する。なお、送風装置1を取り出した状態では、第二出口35は
図3に示すように本流路2に近接した位置である。後述する
図4及び
図5に示すように、第二分流路22は、取り付けられるヘッドレスト30の形状に合わせて上側に向かって延長され、第二出口35はヘッドレスト30の上端部に形成される。
【0017】
第二分流路22は、ファン4によって吸引される空気の吸引方向Dに沿う方向に向かって形成される。
図1及び
図3に示す例では、ファン4の吸引空気が吸引方向Dである下側から上側に向かって吸引されるとき、第二分流路22は吸引方向Dに沿って上側に向かって形成される。なお、第二分流路22が形成される方向である吸引方向Dに沿う方向とは、吸引方向Dに対して厳密に平方でなくてもよく、所定角度傾いていてもよい。少なくとも、第二分流路22が形成される方向に、吸引方向Dの方向のベクトル成分が含まれていればよい。
【0018】
<第一実施形態の送風装置1aを例とする詳細な説明>
次に、送風装置1の構成を、第一実施形態である送風装置1aを例に詳細に説明する。なお、送風装置1aの構成は、後述する第二実施形態の送風装置1bと第三実施形態の送風装置1cにおいて説明する固有の構成以外は共通である。
図1及び
図3に示すように、送風装置1aはフレーム6を備え、ファン4と本流路2は、フレーム6に支持される。送風空気10が送風される方向において、ファン4の側を上流側とし、送風される側を下流側とする。第一分流路21と第二分流路22は、本流路2の下流側の分岐点9において分岐する。
図1及び
図3に示す例では、分岐後の第二分流路22が、ファン4によって吸引される空気の吸引方向Dに沿う方向である上側に向かって形成される。
【0019】
送風装置1aは、
図3に示すようにユニット化され、
図2に示すようにヘッドレスト30に取り付け可能である。
図1に示すように、第二分流路22は、第一分流路21との分岐点9の下流側において上側に屈曲し、排気ダクト8に接続される。送風装置1aとヘッドレスト30との関係は後述する。
【0020】
また、
図1の例に示すように、本流路2は、少なくともファン4から熱電素子3の下流側の端部までの間において送風空気10を直線的に案内するよう形成される。本流路2はファン4からの送風空気10の送風方向と略平行に形成される。仮に、本流路2が曲折して形成されていると、送風空気10に圧力損失が生じる恐れがある。これに対し、送風装置1aは圧力損失を抑制するよう構成される。なお、
図1に示すように、本流路2は、ファン4の送風口4aを上流側の端部とし、第一分流路21と第二分流路22とが分岐する分岐点9を下流側の端部として定義する。
【0021】
また、熱電素子3は、例としてペルチェ素子3aである。第一分流路21と第二分流路22は、送風方向においてペルチェ素子3aを挟んでヒートシンク5を備える。この場合、送風空気10のうち、第一分流路21に送風される第一送風空気10aと、第二分流路22に送風される第二送風空気10bとの間には所定の温度差が形成される。ペルチェ素子3aの上流側の端部又は/及びヒートシンク5の上流側の端部は、ファン4に隣接して形成されてもよい。
【0022】
図1及び
図3に示すように、送風装置1aは、一つのファン4について一つの本流路2を備える。本流路2の内部において、すでに説明したペルチェ素子3aが本流路2の内部を上下方向に仕切るように取り付けられる。
図6に示すように、ペルチェ素子3aは、送風空気10の送風方向において、下側面がヒートシンク5aに、上側面がヒートシンク5bに接触して挟まれる。本流路2の内部は、ヒートシンク5a及びヒートシンク5bと、本流路2を形成する外殻とによって格子状の流路が形成され、上側が第二分流路22であり、下側が第一分流路21である。
【0023】
一例として、ペルチェ素子3aは、第一分流路21の側が冷却されてヒートシンク5aが冷却され、第二分流路22の側が発熱されてヒートシンク5bが加熱される。ヒートシンク5aは第一送風空気10aを冷却し、ヒートシンク5bは第二送風空気10bを加熱する。送風装置1aが、冷却された第一送風空気10aの発生を目的とする場合、第二送風空気10bは廃棄空気となる。なお、逆に第一送風空気10aを加熱し、第二送風空気10bを冷却することも可能である。例えば、夏場は第一送風空気10aを冷却し、冬場は第一送風空気10aを加熱することが考えられる。いずれの場合も、第二送風空気10bは廃棄空気となる。
【0024】
また、
図1に示す例のように、ファン4の送風口4aと、ペルチェ素子3aとヒートシンク5a及びヒートシンク5bの上流側の端部は、送風方向において近接する位置に構成される。仮に、送風口4aと、熱電素子3とヒートシンク5a及びヒートシンク5bの上流側の端部との間の距離が長いと、本流路2の内部と送風抵抗によって送風空気10に圧力損失が発生する恐れがある。これに対し、送風装置1aは圧力損失を抑制するよう構成される。
【0025】
ペルチェ素子3aを含む熱電素子3と、ヒートシンク5a及びヒートシンク5bは、本流路2における上流側の端部と下流側の端部との間に備えられる。送風空気10から分流する第一送風空気10aと第二送風空気10bは、それぞれ本流路2の内部において冷却され、或いは加熱される。すなわち、第一送風空気10aと第二送風空気10bは、熱電素子3とヒートシンク5a及びヒートシンク5bに対して送風空気10が安定的に供給されるか否かによって、安定した温度制御ができるか否かが左右される。安定した温度制御を行うためには、送風空気10の流速、圧力、送風量等が安定していることが必要である。
【0026】
また、フレーム6は、ファン4と対向する部分に第一開口7を備えてもよい。例として、ファン4は、
図1及び
図3に示すように第一開口7から吸引方向Dに空気を吸引し、吸引方向Dとは垂直方向へ送風空気10を送風する。
【0027】
図2及び
図3に示すように、例としてフレーム6はファン支持フレーム6aと外フレーム6bからなる。なお、外フレーム6bがヘッドレスト30のハウジングと一体で形成されるときは、フレーム6はファン支持フレーム6aのみでもよい。
図9に示すように、ファン支持フレーム6aは、ファン4の下側に対向する部分に第一開口7が形成され、ファン4は第一開口7から空気を吸引する。
【0028】
<熱電素子3の説明>
次に、送風装置1における熱電素子3を説明する。例として熱電素子3がペルチェ素子3aの場合を説明する。まず、ペルチェ素子3aの原理について説明する。ペルチェ素子3aは、ペルチェ効果を用いた板状の半導体熱電素子の一種である。ペルチェ素子3aは、一方向に直流電流を流すと、素子の一方の面で冷却し、他方の面で発熱する。また、他方向へ直流電流の向きを変えると、一方の面で発熱し、他方の面で冷却する。よって、直流電流の向きを変えることによって、ペルチェ素子3aにおける冷却面と発熱面とが入れ替わるので、用途に応じて冷却面と発熱面とを選択的に制御することができる。なお、熱電素子3はペルチェ素子3aである例を説明したが、この他に例えばヒーターでもよい。
【0029】
<制御装置50の説明>
次に、
図7を参照して、送風装置1におけるペルチェ素子3a及びファン4の駆動を制御する制御装置50を説明する。制御装置50は、入力装置57の入力信号を入出力インターフェース56が受取り、ROM54及びRAM55の情報を含めてCPU53によって処理を行う。ペルチェ素子3aは、制御装置50のうちのペルチェ素子制御装置51によって駆動処理される。ファン4は、制御装置50のうちのファン制御装置52によって駆動処理される。
【0030】
ペルチェ素子3aは、入出力インターフェース56からの指示信号により、ペルチェ素子駆動回路58の処理によって駆動される。ペルチェ素子駆動回路58は、ペルチェ素子電源59から電力供給される。また、ファン4は、入出力インターフェース56からの指示信号により、ファン駆動回路60の処理によって駆動される。ファン駆動回路60は、ファン駆動電源61から電力供給される。なお、ペルチェ素子駆動回路58とファン駆動回路60は、共通の電源から電力供給されてもよい。
【0031】
例えば、制御装置50は、入力装置57において、第一分流路21の第一送風空気10aを冷却するよう入力指示されると、ペルチェ素子制御装置51によって電流方向が設定され、ペルチェ素子駆動回路58によってペルチェ素子3aが駆動される。ファン制御装置52は、ペルチェ素子3aによって第一送風空気10aが冷却されるタイミングに合わせてファン4を駆動するよう制御する。
【0032】
<第一実施形態の送風装置1aを例とする効果>
以上説明した、第一態様の送風装置1の構成によれば、以下の効果を奏する。第一実施形態の送風装置1aを例にして効果を説明する。なお、後述する第二実施形態の送風装置1b、及び第三実施形態の送風装置1cも同様の効果を奏する。
図1に示すように、送風装置1aは、熱電素子3によって温度調節された送風空気10を第一分流路21と第二分流路22の二方向に送風できる。第二分流路22は、ファン4によって吸引される空気の吸引方向Dに沿う方向に向かって形成される。第二分流路22の第二出口35からは、ファン4による吸引空気と混在しないように異なる方向に空気を排出できる。よって、吸引空気は送風空気10の温度による影響が抑制されるので、送風装置1aは第一出口34及び第二出口35から、安定して温度調節された送風空気10を送風することができる。
【0033】
送風装置1は、第一分流路21の第一出口34が乗員側に開口する場合、第二分流路22の第二出口35は非乗員側に開口する。よって、送風装置1は、ヘッドレスト30に取り付けると、第一分流路21からの第一送風空気10aは乗員側に送風され、第二分流路22からの第二送風空気10bは非乗員側に送風される。第二送風空気10bが廃棄空気の場合、乗員は廃棄空気を受けることが抑制される。
【0034】
また、
図1に示すように、本流路2は、少なくともファン4から熱電素子3の下流側の端部までの間において送風される送風空気10を、直線的に案内するよう形成されてもよい。この場合、ファン4からの送風空気10は、熱電素子3の下流側の端部までの間において、本流路2における圧力損失が抑制される。よって、送風空気10は、流量及び流速が安定し、熱電素子3による安定した温度調節が可能となる。送風装置1aは、第一出口34及び第二出口35からの送風空気10の温度を安定化することができる。
【0035】
また、
図1及び
図6に示す例のように、熱電素子3がペルチェ素子3aの場合、第一送風空気10aと第二送風空気10bとの間に温度差を形成できる。ペルチェ素子3aの上流側の端部又は/及びヒートシンク5の上流側の端部は、ファン4に隣接して形成されるので、ファン4からの送風空気10における圧力損失が抑制され、ペルチェ素子3aによって第一送風空気10aと第二送風空気10bとの温度差を安定的に形成することができる。
【0036】
また、
図1及び
図9に示す例のように、フレーム6のファン4に対向する部分は第一開口7を備えるので、ファン4は外部からの空気をより吸入しやすく、安定的に送風空気10を発生して熱電素子3へ送風することができる。よって、送風装置1aは送風空気10の温度を安定化することができる。
【0037】
<第二実施形態の送風装置1b及び第三実施形態の送風装置1cに共通の説明>
次に、
図11及び
図12を参照して、第二実施形態の送風装置1bと第三実施形態の送風装置1cに共通の構成を説明する。送風装置1aと異なる点についてのみ説明する。送風装置1b及び送風装置1cは、ヘッドレスト30に取り付けられる状態において、第一出口34aがヘッドレスト30の前側の方向に開口する第一分流路21aと、第一出口34bがヘッドレスト30の後側の方向に開口する第一分流路21bとを備える。
【0038】
<第二実施形態の送風装置1bと第三実施形態の送風装置1cの効果>
以上説明した、第二実施形態の送風装置1bと第三実施形態の送風装置1cの構成によれば、以下の効果を奏する。
図11及び
図12に示すように、送風装置1b及び送風装置1cは、ヘッドレスト30に取り付けたとき、第一分流路21からの第一送風空気10aを、ヘッドレスト30の前側の方向、及び後側の方向の双方に送風できるので、前側の乗員と後側の乗員のそれぞれに送風することができる。すなわち、一つのファン4によって、第一分流路21からの第一送風空気10aを複数の方向に送風できる。
【0039】
例えば、送風装置1b及び送風装置1cは、車内が高温のとき、ヘッドレスト30を使用する乗員に対して冷却された第一送風空気10aを送風すると共に、ヘッドレスト30の後側の乗員に対しても第一送風空気10aを同時に送風することができる。さらに、廃棄空気である第二送風空気10bは、ファン4が吸引する吸引方向Dに沿う方向に向かって排出される。よって、ファン4から熱電素子3へ送風される送風空気10は、廃棄空気による温度変化の影響が抑制され、熱電素子3によって安定して温度調節される。
【0040】
<第二実施形態の送風装置1bの説明>
次に、
図11を参照して、第二実施形態の送風装置1bを説明する。送風装置1aと異なる点についてのみ説明する。送風装置1bは、本流路2が少なくとも第一本流路2aと第二本流路2bからなる。第一本流路2aと第二本流路2bは、ファン4から放射状に延びて形成される。
【0041】
図11に示す例は、第一本流路2aと第二本流路2bとは互いに反対方向に延びて形成される。ヘッドレスト30に取り付けられる状態では、第一本流路2aが前面31に向かって延び、第二本流路2bが後面32に向かって延びる。第一本流路2aは、熱電素子3によって第一分流路21aと第二分流路22aとに仕切られる。第二本流路2bは、熱電素子3によって第一分流路21bと第二分流路22aとに仕切られる。ファン4の吸引方向Dは、
図11に示す下側から上側に向かう方向であり、第二分流路22a及び第二本流路22bは、それぞれ吸引方向Dに沿う方向の上側に向かって形成される。
【0042】
なお、第一本流路2aと第二本流路2bとは、互いに反対方向に延びる例に限定されるものではなく、ヘッドレスト30に取り付けた状態において、第一本流路2aは前面31に向かって延び、第二本流路2bは側面に向かって延びてもよい。或いは、本流路2が3方向以上へ放射状に延びて形成されてもよい。
【0043】
<第二実施形態の送風装置1bの効果>
以上説明した送風装置1bの構成によれば、以下の効果を奏する。
図11に示すように、送風装置1bは一つのファン4から第一本流路2aへ第一送風空気10aが送風され、第二本流路2bへ第二送風空気10bが送風される。よって、ファン4を複数備える場合に比べて、省スペースで複数の方向へ送風することができる。
【0044】
<第三実施形態の送風装置1cの説明>
次に、
図12を参照して、第三実施形態の送風装置1cを説明する。送風装置1aと異なる点についてのみ説明する。送風装置1cは、第一分流路21が第二分流路22との分岐点9、又は分岐点9の下流において、放射状に複数に分岐される。例として、第一分流路21は、第一分流路21aと第一分流路21bに分岐される。送風装置1cは、送風装置1bに比べて本流路2は一つであり、第一分流路21が第一分流路21aと第一分流路21bとに分岐する点が異なり、第二分流路22は一つである。
【0045】
送風装置1cは、ヘッドレスト30に取り付けられるとき、第二分流路22は本流路2に対して前側に分岐して形成される。第一分流路21は、前側に第一分流を21aが延び、後側に第一分流路21bが延びて形成される。第二分流路22は、ファン4の吸引方向Dが
図12に示す下側から上側に向かう方向であり、第二分流路22は吸引方向Dに沿う方向の上側に向かって形成される。
【0046】
<第三実施形態の送風装置1cの効果>
以上説明した送風装置1cの構成によれば、以下の効果を奏する。
図12に示すように、送風装置1cは一つのファン4から一つの本流路2へ送風空気10を送風し、第一分流路21のみが二方向へ分岐される。よって、一つの本流路2を形成するためのスペースのみで複数の流路を形成できる。合わせて、廃棄空気が排出される第二分流路22は一つで済むため、排出箇所を特定することができる。
【0047】
<第一態様とは一部が異なる送風装置1の説明>
次に、以上説明した本発明の第一態様に係る送風装置1に対して、一部の構成要素が異なる例を説明する。第一態様に係る送風装置1は以下の要素が必須要素であった。すなわち、第二分流路22は、ファン4によって吸引される空気の吸引方向Dに沿う方向に向かって形成される。これに対し、第二分流路22が必ずしも吸引方向Dに沿う方向に向かって形成されない態様も可能である。
【0048】
以下に第一態様とは一部が異なる送風装置1の構成要素を説明する。送風装置1は、後述する第二の態様に係るヘッドレスト30に取り付け可能である。
図1等に示すように、送風装置1は、ファン4と、ファン4に繋がり、ファン4からの送風空気10が案内される本流路2と、熱電素子3を備える。送風空気10が送風される方向において、ファン4の側を上流側とし、送風される側を下流側とする。本流路2は、熱電素子3によって第一分流路21と第二分流路22に仕切られ、少なくともファン4から熱電素子3の下流側の端部までの間において送風される送風空気10を直線的に案内する。第一分流路21と第二分流路22は、本流路2の下流側の端部の分岐点9において、互いに交差する方向に分岐して形成される。なお、送風装置1はフレーム6を備え、本流路2とファン4はフレーム6に支持されてもよい。
【0049】
なお、以上説明した第一態様とは一部が異なる送風装置1は、第一実施形態の送風装置1aから第三実施形態の送風装置1cまでのいずれにおいても適用可能である。
【0050】
<第一態様とは一部が異なる送風装置1の効果>
以上説明した、第一態様とは一部が異なる送風装置1の構成によれば、以下の効果を奏する。ファン4からの送風空気10は、本流路2における熱電素子3の下流側の端部までの間において圧力損失が抑制される。よって、送風空気10は、流量或いは流速が安定し、熱電素子3による安定した温度調節が可能となる。送風装置1は、第一出口34及び第二出口35からの送風空気10の温度を安定化することができる。
【0051】
<<ヘッドレスト30の説明>>
次に、本発明の第二の態様に係るヘッドレスト30を説明する。ヘッドレスト30は、すでに説明した送風装置1を備える。送風装置1には、第一実施形態の送風装置1aから第三実施形態の送風装置1cまでを含む。ヘッドレスト30は、乗員の後頭部又は首部分と対向する側を前面31とし、前面31とは反対側を後面32とする。前面31は前パネルによって形成され、後面32は後パネルによって形成される。
【0052】
図1から
図3までと、
図8から
図10までを例として、送風装置1aとヘッドレスト30との関係を説明する。
図1に示すように、第二分流路22は、第一分流路21との分岐点9、又は分岐点9の下流側において排気ダクト8に接続される。
図1及び
図4に示すように、排気ダクト8は、前面31に沿ってヘッドレスト30の上側端部にまで形成され、第二出口35に接続される。
図10に示すように、ファン4から送風された第二送風空気10bは、ヘッドレスト30の上側の端部まで連続して案内されて、第二分流路22から連続して送風された第二送風空気10bは、第二出口35から排出される。なお、
図1及び
図2に示す例では、前面31である前パネルと排気ダクト8とを別部材で形成する例を示すが、前パネルと一体で排気ダクト8を形成してもよい。また、送風装置1がヘッドレスト30に取り付けられた状態では、第二分流路22は、分岐点9、又は分岐点9の下流側において接続される排気ダクト8も含めてもよい。
【0053】
図2及び
図3に示すように、ファン4及び本流路2は、ファン支持フレーム6aを介して外フレーム6bに取り付けられる。第一出口34はベゼル36、フィン受け38、及びフィン37が取り付けられる。
図1に示すように、フィン37はフィン受け38に対して回動可能であり、第一出口34を開閉可能である。
図8に示すように、外フレーム6bにおいて、ファン4の下側に対向する部分は第二開口33が形成され、
図9に示すファン支持フレーム6aの第一開口7と合わせて吸引空気がファン4に取り込まれる。
図8及び
図9に示すように、ヘッドレスト30は二本のステー40によって車両のシート上部に取り付けられる。ステー40の周辺にはステー開口39が形成される。ファン4への吸引空気は、第一開口7及び第二開口33の他に、ステー開口39からも取り込まれる。
【0054】
ヘッドレスト30はクッション層を備える。図示しないが、クッション層は例えばウレタンを使用し、前面31である前パネルの外側に接着される。そして、前面31である前パネルと、後面32である後パネルと、クッション層とが組み付けられた後、縫製されたヘッドレストカバーを上から被せる。
【0055】
なお、以上は送風装置1aとヘッドレスト30との関係、及び送風装置1aが取り付けられたヘッドレスト30について説明したが、送風装置1b及び送風装置1cにおいてもヘッドレスト30との関係は同様である。詳細な説明は省略する。
【0056】
また、
図1及び
図7に示す例のように、ヘッドレスト30の送風装置1は、熱電素子3がペルチェ素子3aであり、第一分流路21と第二分流路22は、送風方向において少なくともペルチェ素子3aを挟んでヒートシンク5を備える。ペルチェ素子3aの上流側の端部又は/及びヒートシンク5の上流側の端部は、ファン4に隣接して形成される。送風空気10のうち、第一分流路21に送風される第一送風空気10aと、第二分流路22に送風される第二送風空気10bとの間には所定の温度差が形成される。
【0057】
また、
図8に示すように、ヘッドレスト30はハウジングを備え、ハウジングのうち、ファン4と対向する部分に第二開口33を備える。ハウジングは、送風装置1のフレーム6の一部である外フレーム6bによって形成されてもよい。或いは、送風装置1とは別体であって、ヘッドレスト30のハウジングが連続して形成されてもよい。
【0058】
<<ヘッドレスト30の効果>>
以上説明したヘッドレスト30の構成によれば、以下の効果を奏する。
図1等に示すように、ヘッドレスト30は、すでに説明した送風装置1を備える。これによれば、ヘッドレスト30は、乗員側に開口する送風装置1の第一出口34と、非乗員側に開口する送風装置1の第二出口35から、安定して温度調節された送風空気10を送風することができる。また、
図11等に示すように、送風装置1は、第一出口34aが前側の方向に開口する第一分流路21aと、第一出口34bが後側の方向に開口する第一分流路21bを備えれば、温度調節された第一分流路21からの送風空気10を乗員側及び後方の双方に送風することができる。
【0059】
さらに詳細に説明すると、
図1等に示すように、ヘッドレスト30は、第一分流路21と第二分流路22が本流路2の下流側の端部の分岐点9において分岐する。第一分流路21は、第一送風空気10aがヘッドレスト30の前面31から送風されるように形成される。第二分流路22は、ヘッドレスト30の前面31に沿って形成され、第二送風空気10bがヘッドレスト30の上部から排出されるよう形成される。第一分流路21からの第一送風空気10aと、第二分流路22からの第二送風空気10bとは、送風方向が異なる方向に分離される。第一分流路21からの第一送風空気10aは、乗員の後頭部又は首部分に送風され、第二分流路22からの第二送風空気10bは、乗員及びヘッドレスト30に対して温度の影響を与えること無く送風される。ヘッドレスト30は、送風装置1によって第一出口34からの第一送風空気10aと、第二出口35からの第二送風空気10bの温度を安定化することができる。
【0060】
また、例として、
図1及び
図7に示すように、ヘッドレスト30の熱電素子3がペルチェ素子3aであれば、第一送風空気10aと第二送風空気10bとの間に温度差を形成できる。ペルチェ素子3aの上流側の端部又は/及びヒートシンク5の上流側の端部は、ファン4に隣接して形成される。よって、ファン4からの送風空気10における圧力損失が抑制され、ペルチェ素子3aによって第一送風空気10aと第二送風空気10bとの温度差を安定的に形成することができる。
【0061】
また、
図8に示すように、ヘッドレスト30は、ハウジングのファン4に対向する部分に第二開口33を備えるので、ファン4は外部からの空気をより吸入しやすく、安定的に送風空気10を発生させることができる。よって、ヘッドレスト30の送風装置1は送風空気10の温度を安定化することができる。
【符号の説明】
【0062】
1、1a、1b 送風装置
2 本流路
3 熱電素子
4 ファン
5 ヒートシンク
9 分岐点
10 送風空気10
10a 第一送風空気10
10b 第二送風空気10
21、21a、21b 第一分流路
22、22a、22b 第二分流路
30 ヘッドレスト
31 前面
32 後面
34 第一出口
35 第二出口
D 吸引方向