(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046717
(43)【公開日】2024-04-04
(54)【発明の名称】断熱配管支持部材
(51)【国際特許分類】
F16L 59/147 20060101AFI20240328BHJP
F16L 3/02 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
F16L59/147
F16L3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152035
(22)【出願日】2022-09-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】522033575
【氏名又は名称】エアロテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】長倉 新太郎
【テーマコード(参考)】
3H023
3H036
【Fターム(参考)】
3H023AA05
3H023AB07
3H023AC14
3H023AD35
3H023AD36
3H023AD55
3H036AA01
3H036AB18
3H036AB25
3H036AC02
3H036AD09
3H036AE13
(57)【要約】
【課題】粉塵の発生を抑制することが可能な、断熱配管支持部材を提供する。
【解決手段】配管を被覆するとともに該配管を支持する円環形状の断熱配管支持部材であって、前記断熱配管支持部材は半円に2分割された硬質ウレタンフォームから成る硬質断熱材を有し、前記硬質断熱材の外周面を覆う弾性体と、前記硬質断熱材の内周面を覆うウレタンシートと、半円に2分割された前記硬質断熱材の端面を覆う接着シートと、前記硬質断熱材の正面側及び裏面側を覆う防塵材と、を少なくとも備えて前記硬質断熱材が外部に露出されていないことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を被覆するとともに該配管を支持する円環形状の断熱配管支持部材であって、
前記断熱配管支持部材は半円に2分割された硬質ウレタンフォームから成る硬質断熱材を有し、
前記硬質断熱材の外周面を覆う弾性体と、
前記硬質断熱材の内周面を覆うウレタンシートと、
半円に2分割された前記硬質断熱材の端面を覆う接着シートと、
前記硬質断熱材の正面側及び裏面側を覆う防塵材と、を少なくとも備えて前記硬質断熱材が外部に露出されていない
ことを特徴とする断熱配管支持部材。
【請求項2】
前記防塵材は、粘着剤を有するとともに、該防塵材の一方側の粘着剤が前記硬質断熱材に貼付され、他方側の粘着剤の外表面には剥離紙が貼付されて養生されている
請求項1に記載の断熱配管支持部材。
【請求項3】
前記防塵材は、断熱発泡ゴムと該断熱発泡ゴムの両側面に粘着剤を有し、
前記防塵材の一方側の粘着剤が前記硬質断熱材に貼付され、他方側の粘着剤の外表面には剥離紙が貼付されて養生されている
請求項1に記載の断熱配管支持部材。
【請求項4】
前記断熱配管支持部材は支持台座の上部に載置され、
前記支持台座は、
前記断熱配管支持部材の底部との間に所定の離間距離を有して離間するように構成される
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の断熱配管支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱機能を有するとともに配管を支持することが可能な、断熱配管支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、断熱配管は所定の間隔で支持金物や吊り金物によって支持され、当該支持箇所においても配管の断熱が必要であるので、そこでは断熱機能を有する断熱配管支持部材が使用される。
【0003】
上記した配管断熱支持部材は、配管の自重や配管に加わる荷重に耐え得る強度と断熱性能が要求される部分となるため、一般的には配管に接する部分は硬質ウレタンフォーム等から形成される。例えば、非特許文献1には、硬質発泡ポリウレタン材料で形成されたパイプ用絶縁ジャケットが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社昭和コーポレーション,“スリーパーL 台型+Uバンド”,配管支持金具カタログ,株式会社昭和コーポレーション,VOL.13-2,p33,[online],株式会社昭和コーポレーション,[令和4年9月20日検索],インターネット<URL:https://showa-cp.icata.net/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&volumeID=SCP00001&catalogId=835320000&pageGroupId=1&designID=SCPD001&catalogCategoryId=&designConfirmFlg=&pagePosition=R>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来型のパイプ用絶縁ジャケットは、配管作業に先立って、施工現場に搬入されて設置されるわけであるが、硬質発泡ポリウレタン材料が露出しているために、生産時の切断による粉付着や、運搬中や作業中に削れてしまったため発生する粉塵により、室内空間を汚染してしまう。そうすると、粉塵等の発生が厳しく制限されている食品や医薬品を扱う施設、研究施設や医療施設において、従来型のパイプ用絶縁ジャケットが使用できない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、粉塵の発生を抑制することが可能な、断熱配管支持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)配管を被覆するとともに該配管を支持する円環形状の断熱配管支持部材であって、前記断熱配管支持部材は半円に2分割された硬質ウレタンフォームから成る硬質断熱材を有し、前記硬質断熱材の外周面を覆う弾性体と、前記硬質断熱材の内周面を覆うウレタンシートと、半円に2分割された前記硬質断熱材の端面を覆う接着シートと、前記硬質断熱材の正面側及び裏面側を覆う防塵材と、を少なくとも備えて前記硬質断熱材が外部に露出されていないことを特徴とする断熱配管支持部材である。
【0008】
(2)前記防塵材は、粘着剤を有するとともに、該防塵材の一方側の粘着剤が前記硬質断熱材に貼付され、他方側の粘着剤の外表面には剥離紙が貼付されて養生されている上記(1)に記載の断熱配管支持部材である。
【0009】
(3)前記防塵材は、断熱発泡ゴムと該断熱発泡ゴムの両側面に粘着剤を有し、前記防塵材の一方側の粘着剤が前記硬質断熱材に貼付され、他方側の粘着剤の外表面には剥離紙が貼付されて養生されている上記(1)に記載の断熱配管支持部材である。
【0010】
(4)前記断熱配管支持部材は支持台座の上部に載置され、前記支持台座は、前記断熱配管支持部材の底部との間に所定の離間距離を有して離間するように構成される上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の断熱配管支持部材である。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)に係る発明によれば、配管を被覆するとともに該配管を支持する円環形状の断熱配管支持部材において、半円に2分割された硬質ウレタンフォームから成る硬質断熱材に対し、外周面を覆う弾性体と、内周面を覆うウレタンシートと、端面を覆う接着シートと、硬質断熱材の正面側及び裏面側を覆う防塵材とを備えて、当該硬質断熱材が外部に露出しないように構成している。したがって、長尺の硬質ウレタンフォームを必要なサイズに切断して製品化する際に発生する粉付着由来の粉塵の影響を受けることがない。また、一般的に硬質断熱材は、配管支持に耐えうる強度に加えて、熱伝導率を考慮しなければならない観点から、低密度の材質とならざるを得ないが、上記構成のように、硬質断熱材が外部に露出しないように構成することで、運搬中や設置作業中において、硬質断熱材の表面が削れて粉塵が発生することを確実に防ぐことができる。これにより、粉塵等の発生が厳しく制限されている食品や医薬品を扱う施設、研究施設や医療施設においても、本実施形態の断熱配管支持部材2を使用することができる。
【0012】
加えて、上記(2)に係る発明によれば、防塵材の粘着剤の外表面に剥離紙を貼付して養生することにより、断熱配管支持部材の運搬中や設置作業中に、粘着剤が他所に付着してしまう事態を防止することができる。
【0013】
加えて、上記(3)に係る発明によれば、防塵材が断熱発泡ゴムを有しているので、配管断熱材と断熱配管支持部材との接続部分において、断熱効果をより向上させることが可能となる。
【0014】
加えて、上記(4)に係る発明によれば、支持台座と断熱配管支持部材の底部との間に離間するクリアランスを設けたので、従来、断熱配管支持部材の底部にかかっていた荷重を分散させて断熱配管支持部材にかかる荷重を和らげることができる。これにより、断熱配管支持部材が破損して、硬質断熱材の粉塵が周辺空間を汚染することを防止することができる。また、上記クリアランスがあることにより、一般的に結露事故が頻発している断熱配管支持部材に接続する配管断熱材との接点を外周面においてテープ巻きによって容易に仕上げることができる。より詳細に説明すると、従来の工法(例えば、非特許文献1等を参照)では断熱配管支持部材の台部分が四角形となっており、異なる形状である丸形の配管断熱材と接合する技術・経験が必要となり、一層作業が困難となっていた。一方、本実施形態の断熱配管支持部材は配管断熱材と同一形状・同一寸法であり、外周360°にわたって空気の漏洩がない接続作業が簡単に行える。これにより、熟練した作業者が行っていた作業を簡略化して、作業者の経験や能力に頼ることなく仕上げられる。したがって、工事経験の少ない女性・若年層の人でも作業ができるため、雇用創出に繋がる。また、断熱配管支持部材と配管断熱材が同型の丸型の組み合わせとなっているため、丸型と四角形の組み合わせである従来工法(例えば、非特許文献1等を参照)と比較して、接合精度がよく、接合強度も優れている。これにより、地震等の大きな荷重が負荷されても外れ難い構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態であって、断熱配管支持部材の正面図である。
【
図2】本発明の別実施形態であって、(a)は防塵材の正面図、(b)は防塵材の断面図である。
【
図3】本発明の別実施形態において、防塵材が設置された断熱配管支持部材の側面図である。
【
図4】本発明の別実施形態において、防塵材と当該防塵材が配管断熱材と接着した断熱配管支持部材の側面図である。
【
図5】断熱配管支持金具の実施形態であって、(a)はU型固定部材としてUボルトを使用し、支持台座が逆台形に形成された実施例、(b)はU型固定部材としてUバンドを使用し、支持台座が逆三角形に形成された実施例である。
【
図6】一実施例における断熱配管支持金具の側面図である。
【
図7】一実施例における断熱配管支持金具への配管の設置態様を示す正面図である。
【
図8】一実施例における(a)は支持台座の正面図、(b)は上面図である。
【
図9】実施形態において、断熱配管支持部材に荷重が負荷された場合の支持台座の変形態様を説明する図であって、(a)は
図5(a)の支持台座の変形態様が、(b)は
図5(b)の支持台座の変形態様を示している。
【
図10】実施形態における支持台座の載荷試験結果を示す図であって、(a)は載荷試験の態様を示す正面図、(b)は荷重と変位量の関係を示すグラフである。
【
図11】断熱配管支持金具の別実施形態として支持台座に板バネを形成した一実施例であって、(a)は板バネを形成した支持台座の正面図、(b)は板バネを形成した支持台座の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の断熱配管支持部材について、図面を参照しながら各実施形態を説明する。
【0017】
図1には、本実施形態の断熱配管支持部材2の正面図が示されている。図示されるように、断熱配管支持部材2は、2つに分割された硬質ウレタンフォームからなる硬質断熱材21から構成され、その外周には弾性体であるゴム片23が接着させて巻かれている。
【0018】
また、硬質断熱材21の内周面には配管9の緩衝材としてウレタンシート22が接着されている。加えて、2つに分割された硬質断熱材21の端部には、配管9が載置された後に接着させるための接着シート24が貼り付けられている。
【0019】
さらに、本実施形態では、
図1の硬質断熱材21の正面側と裏面側に、硬質断熱材21が削れて粉塵が発生することを防止する防塵材25が接着されている。したがって、長尺の硬質ウレタンフォームを必要なサイズに切断して製品化する際に発生する粉付着由来の粉塵の影響を受けることがない。また、一般的に硬質断熱材は、配管支持に耐えうる強度に加えて、熱伝導率を考慮しなければならない観点から、低密度の材質とならざるを得ないが、上記構成のように、硬質断熱材が外部に露出しないように構成することで、運搬中や設置作業中において、硬質断熱材21の表面が削れ、粉塵が発生することを確実に防いでいる。したがって、粉塵等の発生が厳しく制限されている食品や医薬品を扱う施設、研究施設や医療施設においても、本実施形態の断熱配管支持部材2を使用することができる。
【0020】
より具体的には、上記防塵材25を粘着剤とすることができ、当該粘着剤を硬質断熱材21の正面側と裏面側に塗布(又は貼付)する。粘着剤の種類としては、接着強度の高いゴム系や、熱や紫外線劣化に強いアクリル系、耐熱/耐寒性に優れるシリコーン系のものを好適に使用可能である。なお、防塵材25に塗布(又は貼付)された粘着剤の表面には剥離紙を貼付するなどして養生することにより、断熱配管支持部材2の運搬中や設置作業中に、粘着剤が他所に付着してしまう事態を防止することができる。
【0021】
また、別の実施形態として、
図2には防塵材25の正面図(a)と断面図(b)が示されている。すなわち、別実施形態の防塵材25は、
図2(b)に示されるように、中間層にエチレンプロピレンゴムから成る断熱発泡ゴム251を有し、その両面に前述したような粘着剤252が塗布(又は貼付)されている。そして、
図3には上記別実施形態の断熱配管支持部材2の側面図が示されているが、防塵材25の一方側の粘着剤252が硬質断熱材21の正面側と裏面側に貼付されている。なお、防塵材25の他方側の粘着剤252表面には、剥離紙を貼付するなどして養生することにより、断熱配管支持部材2の運搬中や設置作業中に、粘着剤が他所に付着してしまう事態を防止することができる。
【0022】
以上、上記した実施形態及び別実施形態の断熱配管支持部材2によれば、断熱配管支持部材2の生産時の切断による粉付着や、運搬中や設置作業中などにおいて、硬質断熱材21が削れて粉塵が発生することを、防塵材25によって確実に防止することができ、さらに、剥離紙を剥がすことによって、
図4に示されるように、配管9を被覆する配管断熱材8を設置する際に、断熱配管支持部材2と粘着剤を介して容易に接着することも可能となる。特に、別実施形態においては、防塵材25が断熱発泡ゴム251を有しているので、配管断熱材8と断熱配管支持部材2との接続部分において、断熱効果をより向上させることが可能となる。
【0023】
続いて、本実施形態の断熱配管支持金具1ついて、図面を参照しながら各実施形態を説明する。
【0024】
図5には、本実施形態における断熱配管支持金具1が示され、
図5(a)には、U型固定部材3としてUボルトを使用し、断熱配管支持部材2の下部に位置する支持台座4が逆台形に形成された実施例が図示されている。また
図5(b)には、U型固定部材3としてUバンドを使用し、断熱配管支持部材2の下部に位置する支持台座4が逆三角形に形成された実施例が図示されている。
【0025】
詳細に説明すると、前述したように、不図示の配管を被覆するとともに、当該配管を支持する円環形状の断熱配管支持部材2を有しており、さらに断熱配管支持部材2には、組付け後に配管が載置される貫通孔26が形成され、架台5に載置される支持台座4の上部に、図示されるように断熱配管支持部材2が載置される。そして、U型固定部材3であるUボルトやUバンドによって、断熱配管支持部材2及び支持台座4がナットから成る固着部材10を締め付けることによって、架台5に固定される。
【0026】
また、
図6には、本実施形態における断熱配管支持金具1の側面図と、併せて、当該断熱配管支持金具1の前後で接続される、配管9を被覆する配管断熱材8の側面図が図示されている。図示されるように、本実施形態の断熱配管支持部材2の配管縦断方向における幅寸法W1は、支持台座4の配管縦断方向における幅寸法W2よりも大きく形成されており、さらに、断熱配管支持部材2と配管断熱材8の断面形状は略同一形状としている。
【0027】
このように構成することにより、断熱配管支持部材2の前後から配管断熱材8を継ぎ目6で接着した後、その継ぎ目6に対して密閉するための仕上げの接着テープ7を隙間なく巻きつけることが可能となる。これにより、従来法よりも継ぎ目6における断熱性能を向上させることが可能となり、継ぎ目6における結露の発生も効果的に抑制することが可能となる。また、断熱配管支持部材2と配管断熱材8とが同一断面形状となることから、接着テープ7の施工性も良く、仕上がりの美観性も向上させることができる。
【0028】
次に、
図7には、本実施形態の断熱配管支持金具1における、配管9の設置態様が示されている。まず、断熱配管支持部材2の2つに分割された硬質ウレタンフォーム等からなる硬質断熱材21を図示する態様で外し、配管9を貫通孔26に配置する。なお、本実施形態の断熱配管支持部材2は、図示されるように断熱配管支持部材2の外周に弾性体であるゴム片23が巻かれており、硬質断熱材21の継ぎ目を塞いで断熱性能を向上させるとともに、支持台座4との間で緩衝材の役割を果たし、振動や衝撃の吸収効果を得ることができる。また、硬質断熱材21の継ぎ目に相じゃくり加工を施して、さらに断熱性能を向上させるようにしてもよい。また、支持台座4のレベル調整が必要な場合は、図示されるように架台5と支持台座4との間に、所定の厚みを有するスペーサ51を設置するとよい。
【0029】
図8(a)には、
図5(a)に示された実施例の支持台座4の正面図が示され、さらに
図8(b)には支持台座4の上面図が示されている。図示されるように、支持台座4は断熱配管支持部材2の下方位置において、正面視で逆台形に形成されるとともに、左右対象に相対する傾斜支持面42が形成されている。そして、当該傾斜支持面42において、破線で示される断熱配管支持部材2の外周面が支持されるように構成されている。なお、本実施形態の支持台座4は金属製となっているが、金属以外の素材によって形成してもよい。
【0030】
また、図示されるように、逆台形の下側底部43は、不図示の架台5に接して載置されるとともに、断熱配管支持部材2の底部との間に所定の離間距離(図示h)を有して離間するように構成されている。なお、図示される実施形態では、hが概ね1cmであり、図示されるような角度、形状で支持台座4が形成されている。しかし、必ずしもこのような寸法、角度、形状に限定されるものではなく、断熱配管支持部材2の大きさに応じて、任意の角度や寸法とすることができる。また、逆台形や逆三角形の下側底部43と断熱配管支持部材2の底部とのクリアランス(図示h)は、5~75mmの範囲で設定することができ、好ましくは5~35mm、より好ましくは10~25mmの範囲で設定することで本発明の効果を得ることができる。
【0031】
続いて、
図9には、地震やその他の要因によって、断熱配管支持部材2又は配管9に大きな荷重が負荷された場合の支持台座4の変形態様が示されている。
図9(a)には
図5(a)の支持台座4を使用した際の変形態様が、
図9(b)には
図5(b)の支持台座4を使用した際の変形態様がそれぞれ示されている。すなわち、本実施形態の支持台座4の傾斜支持面42の剛性は、断熱配管支持部材2の硬質断熱材21の剛性よりも低くなるように構成されている。
【0032】
したがって、断熱配管支持部材2又は配管9に地震等の振動や揺れに起因する大きな荷重が負荷されると、逆台形又は逆三角形の下側底部43と断熱配管支持部材2の底部との間に形成されたクリアランスの存在によって断熱配管支持部材2が下方へ移動し、その際、傾斜支持面42が図示されるように変形する。このような構成とすることで、断熱性能を維持する上で重要な断熱配管支持部材2が破損することを効果的に防ぐことができ、断熱配管支持部材が破損して、硬質断熱材の粉塵が周辺空間を汚染することを防止することができる。また、補修工事を行う際、断熱配管支持部材2やその前後に接続されている配管断熱材8を交換したり、再び接続する手間を省いて、支持台座4の交換のみで対応することが可能となる。
【0033】
また、
図8(b)に示されるように、支持台座4の両側に形成されたU型固定部材3が挿通される挿通孔41が、配管横断方向に長孔で形成されている。したがって、断熱配管支持部材2又は配管9に大きな荷重が負荷されて支持台座4が変形する際、
図9に示されるように、支持台座4の両端部が横方向に移動することが可能となる。このような構成により、支持台座4がより変形しやすくなり、断熱配管支持部材2に加わる負荷をさらに抑制することが可能となる。
【0034】
図10(a)には、断熱配管支持金具1における載荷試験の様子を示した正面図が図示されている。支持台座4の両側には円形の挿通孔41を形成して試験機にボルト固定し、半円形状の断熱配管支持部材2に鋼製のダミーの配管9を載置して載荷試験を行ったものである。
【0035】
図10(b)には、上記載荷試験の結果として、荷重と変位量の関係がグラフで示されている。この結果グラフは、支持台座4の厚みを3.2mmとし、
図8(a)に示される断熱配管支持部材2の底部と逆三角形の下側底部43との離間距離(図示h)を16mm程度としたものであるが、グラフに示されるように、破線で囲われた範囲において支持台座4が変形し、初期から急激に加わる断熱配管支持部材2への大きな荷重を、支持台座4によってその一部が吸収される様子がわかる。なお、支持台座4の厚みを4.5mmとして同様に載荷試験を行ったが、同様の結果を得ている。このような結果から、断熱配管支持金具1が持つ格別な効果を確認することができる。
【0036】
(その他の実施形態)
以上、本発明の断熱配管支持部材の各実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上記したような構成に限定されるものではなく、以下のような変更が可能となっている。
【0037】
例えば、
図11には、別実施形態の断熱配管支持金具1が記載されている。すなわち、
図11(a)には、支持台座4に板バネ421を形成した正面図が、
図11(b)にはその上面図が示されており、支持台座4の傾斜支持面42に、支持台座4の中央側を互いに自由端とする板バネ421を設けることも可能である。そして、断熱配管支持部材2を板バネ421の上面で支持させるように構成することで、断熱配管支持部材2から加わる衝撃や荷重を板バネ421でさらに吸収することが可能となり、断熱配管支持部材2や配管9に対する負荷を軽減し、断熱配管支持部材2や配管9の破損をより効果的に未然に防ぐことが可能となる。なお、板バネ421は、支持台座4に溶接してよいし、支持台座4の傾斜支持面42をコ字状に切り込みを入れ、自由端側を上方に跳ね上げることによって形成してもよい。このように形成することで手間を省くことができる。
【0038】
以上、本発明の実施例及び別実施例について図面等に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施例に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 断熱配管支持金具
2 断熱配管支持部材
3 U型固定部材
4 支持台座
5 架台
6 継ぎ目
7 接着テープ
8 配管断熱材
9 配管
10 固着部材
21 硬質断熱材
22 ウレタンシート
23 ゴム片
24 接着シート
25 防塵材
26 貫通孔
41 挿通孔
42 傾斜支持面
43 下側底部
51 スペーサ
251 断熱発泡ゴム
252 粘着剤
421 板バネ