(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046720
(43)【公開日】2024-04-04
(54)【発明の名称】架線集材システム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/40 20060101AFI20240328BHJP
A01G 23/08 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B66C13/40 F
A01G23/08 501E
B66C13/40 E
B66C13/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152038
(22)【出願日】2022-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】508150337
【氏名又は名称】イワフジ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】齋 典男
(72)【発明者】
【氏名】大沢 和志
(57)【要約】
【課題】設置される地形条件等に関わらず、遠隔操作に必要な通信信号が遮断されることなく安定した操作が可能となる架線集材システムを提供する。
【解決手段】スカイラインSKLに沿って移動可能に取り付けられる搬器2、搬器をスカイラインに沿って移動させるエンドレスラインELL、搬器からリフティングラインLFLにより昇降自在に吊り下げられるグラップル装置3、エンドレスラインおよびリフティングラインの繰り出しおよび引き込みを行う架線集材機1、グラップル装置および架線集材機を無線で操作する遠隔操作システムSを備える。遠隔操作システムは、無線操作装置5、グラップル装置に設けられる第1作業機側無線通信部3d、架線集材機に設けられる第2作業機側無線通信部15、無線操作装置と第1作業機側無線通信部および第2作業機側無線通信部との間で通信信号を中継する無線中継器4を備え、無線中継器は搬器に取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材伐採地から木材集材地へ伐採された木材を搬送する架線集材システムであって、
スカイラインに沿って移動可能に取り付けられる搬器と、
前記搬器を前記スカイラインに沿って移動させるエンドレスラインと、
前記搬器からリフティングラインにより昇降自在に吊り下げられるグラップル装置と、
前記エンドレスラインおよび前記リフティングラインの繰り出しおよび引き込みを行う架線集材機と、
前記グラップル装置および前記架線集材機を無線で操作するための遠隔操作システムと、を備え、
前記遠隔操作システムは、
無線操作装置と、
前記グラップル装置および前記架線集材機に設けられる作業機側無線通信部と、
前記無線操作装置と前記作業機側無線通信部との間で通信信号を中継する無線中継器と、を備え、
前記無線中継器は、前記搬器または前記グラップル装置に取り付けられていることを特徴とする、
架線集材システム。
【請求項2】
前記無線中継器は、
前記リフティングラインが掛け渡されるリフティングライン用滑車と、
前記リフティングライン用滑車の回転により発電を行う中継器用発電機と、
前記中継器用発電機によって発電された電力を充電する中継器用蓄電器と、
前記通信信号を中継送信する中継無線通信部と、
前記中継無線通信部の制御を行う制御部と、を有し、
前記制御部および前記中継無線通信部は、前記中継器用発電機によって発電された電力により作動することを特徴とする、
請求項1に記載の架線集材システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記架線集材機の駆動による前記リフティングラインの繰り出しまたは引き込みに伴って前記リフティングライン用滑車が回転したことをトリガにして中継送信を開始するとともに、前記リフティングライン用滑車が回転停止してから所定時間経過後に中継送信を停止することを特徴とする、
請求項2に記載の架線集材システム。
【請求項4】
前記無線中継器は、
前記リフティングライン用滑車、前記中継器用発電機、前記中継器用蓄電器、前記中継無線通信部、および前記制御部を含むユニットとして構成され、
前記無線中継器は、前記搬器の搬器本体部に対し着脱自在に取り付けられることを特徴とする、
請求項2に記載の架線集材システム。
【請求項5】
前記無線中継器は、
前記リフティングライン用滑車の下方位置に設けられた中継器ボックスを有し、前記中継器ボックスには、前記中継器用蓄電器、前記中継無線通信部、前記制御部、および、前記中継無線通信部に接続されたアンテナが収納され、
前記中継器ボックスの外周面近傍には、外部物体の衝突による前記中継ボックスの損傷を防ぐための保護部材が配置されていることを特徴とする、
請求項4に記載の架線集材システム。
【請求項6】
前記無線操作装置は、複数台設けられており、
前記複数台の無線操作装置のうち、前記グラップル装置および前記架線集材機を無線で操作する前記無線操作装置を、集材作業の工程中に切り替え可能である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の架線集材システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラップル装置を備えた架線集材システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材の伐採を行う木材伐採地から木材の集材を行う木材集材地へ伐採された木材を搬送する架線集材システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の架線集材システムは、エンドレスタイラー式として構成されている。具体的には、特許文献1の架線集材システムは、先柱側と元柱側の間に架け渡された略一直線状のスカイラインと、スカイラインに沿って移動可能に取り付けられる搬器と、搬器からリフティングラインによって昇降自在に吊り下げられるグラップル装置と、架線集材機とを備えている。グラップル装置には、一対のリフティングライン用の滑車が取り付けられている。リフティングライン用の滑車には、リフティングラインが掛け渡されている。架線集材機には、リフティングラインの繰り出しと引き込みとを行うウインチと、エンドレスライン用のウインチと、ホールバックライン用のウインチが設けられている。エンドレスラインは、グラップル装置をスカイラインに沿って移動させるために設けられている。また、ホールバックラインは、グラップル装置をスカイラインの架け渡し方向に交差する横方向に移動させるために設けられている。
【0004】
グラップル装置は、開閉自在な一対のグラップルアーム、グラップルアームを開閉させる油圧シリンダ、油圧シリンダを駆動させるパワーユニット、ラジコン受信機等を備えている。ラジコン受信機がラジコン送信機からの通信信号を受信して、その通信信号に基づいて上記パワーユニット等が作動される。ラジコン送信機は、グラップル装置から離れた位置にいる作業者が操作する。作業者は、安全な場所からグラップル装置を遠隔操作することができる。
【0005】
また、グラップル装置に加えて架線集材機にもラジコン受信機を設けた架線集材システムも知られている。この架線集材システムによれば、作業者は、架線集材機またはグラップル装置から離れた位置において、架線集材機およびグラップル装置の遠隔操作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、架線集材システムは、山と谷の起伏が大きい山地に構築されることが多い。このため例えば、先柱側と元柱側の間に架け渡されるスカイラインが山の尾根を跨ぐように配置される地形条件となる場合がある。この場合、先柱側(荷掛場)と元柱側(架線集材機が設置される荷下ろし場)との間が見通せない状態となる。
【0008】
上記従来の架線集材システムでは、グラップル装置と架線集材機は、それぞれラジコン送信機と直接通信を行うように構成されている。このため、例えば作業者が先柱に近い場所(荷掛場)からラジコン送信機を用いて作業する場合、グラップル装置との間では通信可能であっても、架線集材機(荷下ろし場)との間は山の尾根で阻まれて通信信号が遮断され、遠隔操作が不安定になる場合がある。
【0009】
また、作業者が架線集材機(荷下ろし場)に近い場所からラジコン送信機を用いて作業する場合、架線集材機との間では通信可能であっても、グラップル装置(荷掛場)との間では、山の尾根で阻まれて通信信号が遮断され、遠隔操作が不安定になる場合がある。
【0010】
本発明の目的は、架線集材システムが設置される地形条件等に関わらず、遠隔操作に必要な通信信号が遮断されることなく安定した操作が可能となる架線集材システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために本明細書に開示する発明は、以下のように構成されている。すなわち、第1の発明は、木材伐採地から木材集材地へ伐採された木材を搬送する架線集材システムであって、スカイラインに沿って移動可能に取り付けられる搬器と、前記搬器を前記スカイラインに沿って移動させるエンドレスラインと、前記搬器からリフティングラインにより昇降自在に吊り下げられるグラップル装置と、前記エンドレスラインおよび前記リフティングラインの繰り出しおよび引き込みを行う架線集材機と、前記グラップル装置および前記架線集材機を無線で操作するための遠隔操作システムと、を備え、前記遠隔操作システムは、無線操作装置と、前記グラップル装置および前記架線集材機に設けられる作業機側無線通信部と、前記無線操作装置と前記作業機側無線通信部との間で通信信号を中継する無線中継器と、を備え、前記無線中継器は、前記搬器または前記グラップル装置に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0012】
第1の発明によれば、遠隔操作システムは、無線操作装置と、グラップル装置および架線集材機に設けられる作業機側無線通信部と、無線操作装置と作業機側無線通信部との間で通信信号を中継する無線中継器と、を備え、無線中継器は、搬器またはグラップル装置に取り付けられている。
【0013】
無線中継器は、搬器またはグラップル装置に取り付けられるため、無線中継器の位置は、グラップル装置と架線集材機との間に位置している。このため、無線操作装置から無線中継器を介してグラップル装置や架線集材機に通信する場合のそれぞれの通信距離は、無線操作装置からグラップル装置や架線集材機に対して直接通信する場合の通信距離よりも短くすることができ、通信信号が遮断されにくくなる。
【0014】
また、搬器およびグラップル装置は、木材伐採地と木材集材地との間をスカイラインに沿って移動するため、無線中継器の周囲には障害物が少ない。また、スカイラインが山の尾根を跨ぐように配置される地形条件であっても、無線中継器は山の尾根を跨ぐ高い位置に配置されることとなる。このため、無線操作装置から無線中継器を介してグラップル装置や架線集材機に通信する場合の通信信号が、障害物や山の尾根によって遮断されにくくなる。
【0015】
このため、架線集材システムが設置される地形条件等に関わらず、遠隔操作に必要な通信信号が遮断されることなく安定した操作が可能となる。
【0016】
第2の発明では、第1の発明において、前記無線中継器は、前記リフティングラインが掛け渡されるリフティングライン用滑車と、前記リフティングライン用滑車の回転により発電を行う中継器用発電機と、前記中継器用発電機によって発電された電力を充電する中継器用蓄電器と、前記通信信号を中継送信する中継無線通信部と、前記中継無線通信部の制御を行う制御部と、を有し、前記制御部および前記中継無線通信部は、前記中継器用発電機によって発電された電力により作動する、ことを特徴とする。
【0017】
第2の発明によれば、架線集材機がリフティングラインを繰り出しまたは引き込むことに伴って、無線中継器のリフティングライン用滑車が回転する。これにより、中継器用発電機の発電が行われて中継器用蓄電器が充電される。
【0018】
中継器用蓄電器に充電された電力は、中継無線通信部および制御部の駆動電力となる。これにより、無線中継器に対して電力ケーブルで直接電力を供給したり、中継器用蓄電器に対して別途充電したりする必要がない。
【0019】
グラップル装置を使用した集材作業中に中継器用蓄電器を充電できるため、集材作業中において、中継無線通信部および制御部に安定して電力が供給される。これにより、集材作業中に遠隔操作に必要な電力が不足することがなく、安定した操作が可能となる。
【0020】
第3の発明では、第2の発明において、前記制御部は、前記架線集材機の駆動による前記リフティングラインの繰り出しまたは引き込みに伴って前記リフティングライン用滑車が回転したことをトリガにして中継送信を開始するとともに、前記リフティングライン用滑車が回転停止してから所定時間経過後に中継送信を停止することを特徴とする。
【0021】
第3の発明によれば、リフティングライン用滑車が回転したことをトリガにして中継送信を開始し、リフティングライン用滑車が回転停止してから所定時間経過後に中継送信を停止する。
【0022】
このため、中継器用蓄電器に対する電力消費量を抑制することができ、集材作業中に遠隔操作に必要な電力が不足することがなく、安定した操作が可能となる。
【0023】
第4の発明では、第2の発明において、前記無線中継器は、前記リフティングライン用滑車、前記中継器用発電機、前記中継器用蓄電器、前記中継無線通信部、および、前記制御部を含むユニットとして構成され、前記無線中継器は、前記搬器の搬器本体部に対し着脱自在に取り付けられる、ことを特徴とする。
【0024】
第4の発明によれば、無線中継器は、搬器の搬器本体部に対し着脱自在に取り付けられる。このため、必要に応じて無線中継器を搬器から離れた地上に配置して、集材作業を行うことができる。また、無線中継器のメンテナンスや交換作業を容易に行うことができる。
【0025】
第5の発明では、第4の発明において、前記無線中継器は、前記リフティングライン用滑車の下方位置に設けられた中継器ボックスを有し、前記中継器ボックスには、前記中継器用蓄電器、前記中継無線通信部、前記制御部、および、前記中継無線通信部に接続されたアンテナが収納され、前記中継器ボックスの外周面近傍には、外部物体の衝突による前記中継ボックスの損傷を防ぐための保護部材が配置されている、ことを特徴とする。
【0026】
第5の発明によれば、中継無線通信部やアンテナは、リフティングライン用滑車よりも下方位置に設けられる。このため、無線中継器よりも下方に位置する無線操作装置、グラップル装置、架線集材機との無線通信の際に、無線中継器の他の部品による通信障害を抑制することができる。
【0027】
また、中継器ボックスの外周面近傍に、外部物体の衝突による中継ボックスの損傷を防ぐための保護部材を配置する。このため、例えば、木材をグラップル装置で把持した状態において、当該木材が無線中継器に衝突することによる中継無線通信部やアンテナの故障を抑制することができる。
【0028】
第6の発明では、第1から第5のいずれか一つの発明において、前記無線操作装置は、複数台設けられており、前記複数台の無線操作装置のうち、前記グラップル装置および前記架線集材機を無線で操作する前記無線操作装置を、集材作業の工程中に切り替え可能である。
【0029】
第6の発明によれば、グラップル装置および架線集材機を無線で操作する無線操作装置を、集材作業の工程中に切り替えることができる。
【0030】
このため、例えば木材伐採地と木材集材地との間の集材距離が長距離である場合や、グラップル装置をスカイラインに対して交差する横方向に大きく移動させて集材する場合、あるいは木材伐採地(グラップル装置側)と木材集材地(架線集材機側)において、確実な有視界操作が必要な場合には、集材作業の工程に応じて、グラップル装置および架線集材機を無線で操作する無線操作装置を切り替えることができる。これにより、より安全で確実な集材作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る架線集材システムによれば、架線集材システムが設置される地形条件等に関わらず、遠隔操作に必要な通信信号が遮断されることなく安定した操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態1に係る架線集材システムの概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態1のグラップル装置の側面図である。
【
図3】実施形態1のグラップル装置のグラップルアーム部を駆動させるための機器構成図である。
【
図4】実施形態1の搬器および搬器に取り付けられる無線中継器を示す側面図である。
【
図5】実施形態1の無線中継器を示す背面図である。
【
図6】実施形態1の無線中継器を示す底面図である。
【
図7】実施形態1の無線中継器の機器構成図である。
【
図8】実施形態1の無線中継器の動作を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2に係るグラップル装置および無線中継器の機器構成図である。
【
図10】実施形態3に係る架線集材システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る架線集材システム100について詳しく説明する。
【0034】
図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。また、矢印Fはグラップル装置3の前方を示し、矢印Bは後方を示す。矢印Lはグラップル装置3の左方を示し、矢印Rは右方を示す。矢印Uは上方を示し、矢印Dは下方を示す。
【0035】
図1は、本発明の実施形態1に係る架線集材システム100の概略構成を示す図である。本実施形態の架線集材システム100は、エンドレスタイラー式として構成されている。
図1に示すように、架線集材システム100は、スカイラインSKLに沿って移動可能に取り付けられる搬器2と、搬器2からリフティングラインLFLにより昇降自在に吊り下げられるグラップル装置3と、架線集材機1と、を備えている。また、架線集材システム100は、グラップル装置3および架線集材機1を無線で操作するための遠隔操作システムSを備えている。
【0036】
スカイラインSKLは、先柱側と元柱側の間に架け渡されている。具体的には、スカイラインSKLは、木材集材地P1に設けられた元柱位置P3と、木材伐採地P2よりも遠い位置に設けられた先柱位置P4との間に架け渡されている。スカイラインSKLは、平面視した場合に略一直線状となるように延びており、例えば、スカイラインSKLの一端が元柱位置P3の樹木等に連結され、スカイラインSKLの他端が先柱位置P4の樹木等に連結されている。
【0037】
スカイラインSKLには、搬器2が一対のスカイライン用滑車22,22を介して移動可能に取り付けられている。搬器2には、無限軌道を構成するエンドレスラインELLの両端部が連結されている。エンドレスラインELLは、複数のエンドレスライン用滑車E、および架線集材機1のエンドレスライン用ウインチ11のウインチドラムに掛け渡されている。エンドレスライン用滑車Eは、木材集材地P1の近傍や、先柱位置P4の近傍、架線集材機1の近傍等に設置されている。
【0038】
架線集材機1は、エンドレスラインELL、リフティングラインLFL、および、ホールバックラインHBLについて、繰り出しと引き込みを行う。架線集材機1は、エンドレスライン用ウインチ11と、リフティングライン用ウインチ12と、ホールバックライン用ウインチ13と、エンジン部14とを備えている。各ウインチは、図示省略の油圧モータにより駆動される。油圧モータは、エンジン部14で駆動される図示省略の油圧ポンプからの油圧によって駆動される。架線集材機1に備えられたエンドレスライン用ウインチ11によってエンドレスラインELLを動かすことにより、搬器2をスカイラインSKLに沿って移動させることができる。具体的には、エンドレスラインELLをE1方向へ引き込むようにエンドレスライン用ウインチ11を駆動することにより、搬器2がスカイラインSKLに沿ってS1方向に移動する。また、エンドレスラインELLをE2方向へ繰り出すようにエンドレスライン用ウインチ11を駆動することにより、搬器2がスカイラインSKLに沿ってS2方向に移動する。
【0039】
搬器2は、搬器本体部21を有している。搬器本体部21の下部には、リフティングライン用滑車23と無線中継器4が取り付けられている。無線中継器4は、リフティングラインLFLが掛け渡されるリフティングライン用滑車41を有している。リフティングライン用滑車41とリフティングライン用滑車23には、架線集材機1から引き出されたリフティングラインLFLの中間部分が掛け渡されている。リフティングライン用滑車41とリフティングライン用滑車23との間に位置するリフティングラインLFLの中間部分には、グラップル装置3が設けられている。グラップル装置3は、一対のリフティングライン用滑車322,322を介してリフティングラインLFLに吊り下げられている。
【0040】
リフティングラインLFLの一端は、例えば木材伐採地P2の樹木等に連結されている。リフティングラインLFLの他端は、架線集材機1のリフティングライン用ウインチ12のウインチドラムに巻回されている。リフティングラインLFLは、上述したリフティングライン用滑車41、リフティングライン用滑車23、一対のリフティングライン用滑車322,322、木材集材地P1の近傍に設けられたリフティングライン用滑車L等に掛け渡されている。
【0041】
架線集材機1に備えられたリフティングライン用ウインチ12がリフティングラインLFLの引き込みと繰り出しとを行うことにより、グラップル装置3を昇降させることが可能となっている。具体的には、リフティングラインLFLをL1方向に繰り出すようにリフティングライン用ウインチ12を駆動することにより、リフティングライン用滑車41とリフティングライン用滑車23との間に位置するリフティングラインLFLの中間部分の長さが長くなってグラップル装置3が下降する。逆に、リフティングラインLFLを引き込むようにリフティングライン用ウインチ12を駆動することにより、リフティングラインLFLの上述の中間部分の長さが短くなってグラップル装置3が上昇する。
【0042】
グラップル装置3には、搬器2の移動方向(前後方向)に対して交差する横方向(左右方向)に移動させるためのホールバックラインHBLが取り付けられている。具体的には、グラップル装置3の側面には、架線集材機1から引き出されたホールバックラインHBLの一端部が連結されている。ホールバックラインHBLの他端は、ホールバックライン用ウインチ13のウインチドラムに巻回されている。ホールバックラインHBLは、スカイラインSKLから離れた位置に設けられたホールバックライン用第1滑車Ha、架線集材機1の近傍に設けられたホールバックライン用滑車H等に掛け渡されている。
【0043】
遠隔操作システムSは、無線操作装置5、第1作業機側無線通信部3d(作業機側無線通信部)(
図3参照)、第2作業機側無線通信部15(作業機側無線通信部)、および無線中継器4を備えている。無線操作装置5は、グラップル装置3および架線集材機1を無線で操作するために作業者が手元で操作する装置である。無線操作装置5の操作盤には、架線集材機1のエンドレスライン用ウインチ11、架線集材機1のリフティングライン用ウインチ12、およびホールバックライン用ウインチ13を作業者が遠隔操作するためのレバーや、各種スイッチ、非常停止ボタン等が配置されている。第1作業機側無線通信部3dは、グラップル装置3に設けられている。第2作業機側無線通信部15は、架線集材機1に設けられている。無線中継器4は、無線操作装置5と第1作業機側無線通信部3dおよび第2作業機側無線通信部15との間で通信信号を中継するように構成されている。遠隔操作システムSについては後に詳細に説明する。
【0044】
図2は、実施形態1のグラップル装置3の側面図である。
図2に示すように、グラップル装置3は、グラップル本体部31と揺動ハンガー機構部32とを備えている。揺動ハンガー機構部32は、グラップル本体部31の上方に配置されている。グラップル本体部31は、開閉自在なグラップルアーム部312と機器収容部311とを有する。グラップルアーム部312は、機器収容部311の下端に取り付けられる揺動ジョイント部312aと、揺動ジョイント部312aの下端に設けられるアームベース312bと、アームベース312bに取り付けられる一対のアーム部材312c,312cとを有する。各アーム部材312cの基端部は、アームベース312bに対して上下方向に回動自在に連結されている。一対のアーム部材312c,312cが連動して上下方向に回動することにより、一対のアーム部材312c,312cが開閉される。一対のアーム部材312c,312cを閉じることによって木材を把持し、その状態で木材伐採地P2から木材集材地P1へ伐採された木材を搬送することが可能である。また、一対のアーム部材312c,312cを開くことによって把持した木材を離して、木材集材地P1へ降ろすことが可能である。
【0045】
揺動ハンガー機構部32は、スカイラインSKLに沿って移動される搬器2から、リフティングラインLFLによって昇降自在に吊り下げられる。揺動ハンガー機構部32は、グラップル装置3を昇降させるためのリフティングラインLFLが掛け渡されるリフティングライン用滑車322を有している。リフティングライン用滑車322は、グラップル本体部31が搬器2の鉛直下方の位置にある鉛直吊下状態のときに搬器2の移動方向(前後方向)に間隔をおいて並ぶように、一対設けられている。
【0046】
揺動ハンガー機構部32とグラップル本体部31とは、グラップル装置3がホールバックラインHBLによって搬器2の鉛直下方の位置から横方向(左右方向)に移動する状態において、リフティングラインLFLの傾斜に追従して揺動ハンガー機構部32が傾斜するように、揺動自在に連結されている。具体的には、揺動ハンガー機構部32とグラップル本体部31の機器収容部311とは、上記鉛直吊下状態において、前後方向に延びる連結軸部33によって揺動自在に連結されている。揺動ハンガー機構部32は、連結軸部33に沿って延びるハンガー本体321と、ハンガー本体321の長手方向両端部から下方に延びて連結軸部33の両端部を支持する一対の支持部材323,323とを有している。リフティングライン用滑車322は、ハンガー本体321の長手方向両端部のそれぞれに取り付けられている。
【0047】
連結軸部33には、ホールバックライン取付部34が取り付けられている。ホールバックライン取付部34は、グラップル装置3を左右方向から見て、連結軸部33上であって、かつ一対のリフティングライン用滑車322,322の間に配置されている。さらに詳細には、ホールバックライン取付部34は、グラップル装置3を左右方向から見て、一対のリフティングライン用滑車322,322の間の中央部に配置されている。ホールバックライン取付部34のリング部材343には、グラップル本体部31を左右方向に移動させるためのホールバックラインHBLの一端部が取り付けられる。
【0048】
図3は、実施形態1のグラップル装置3のグラップルアーム部312を駆動させるための機器構成図である。
図3において、各機器間の実線の矢印は、電力供給の流れを示し、破線の矢印は制御信号の流れを示す。グラップル装置3の揺動ハンガー機構部32は、リフティングライン用滑車322のシーブ322aの回転により発電を行うグラップル用発電機3aと、図示省略の増速機構とを有している。グラップル本体部31は、パワーユニットPUと、発電リレー3bと、グラップル用蓄電器3cと、第1作業機側無線通信部3dと、グラップルアーム部312を開閉駆動させる油圧シリンダ3iと、機器収容部311に対してグラップルアーム部312を旋回させるためのローテータ3hとを有している。
【0049】
発電リレー3b、パワーユニットPU、グラップル用蓄電器3c、第1作業機側無線通信部3d、およびローテータ3hは、機器収容部311に収容されている。発電リレー3bと揺動ハンガー機構部32に設けられたグラップル用発電機3aとは、電力ケーブル3jによって接続されている。電力ケーブル3jは、揺動ハンガー機構部32のハンガー本体321と機器収容部311との間において外部に露出している。発電リレー3bは、グラップル用蓄電器3c(例えばリチウムイオンバッテリ)に電気的に接続されている。つまり、グラップル用発電機3aは、発電リレー3bを介してグラップル用蓄電器3cに電気的に接続されている。これにより、グラップル用発電機3aによって発電された電力がグラップル用蓄電器3cに蓄電されるように構成されている。
【0050】
本実施形態では、リフティングライン用滑車322のシーブ322aの回転エネルギーをグラップル用発電機3aによって電気的エネルギーに変換する回生発電が行われる。具体的には、グラップル装置3がリフティングラインLFLに沿って移動すると、一対のリフティングライン用滑車322,322のシーブ322a,322aが回転し、この回転が図示省略の増速機構によって増速される。そして、増速機構によって増速された回転がグラップル用発電機3aに伝達されることによって、グラップル用発電機3aによる発電が行われる。
【0051】
パワーユニットPUは、グラップルアーム部312を駆動するために設けられている。パワーユニットPUは、グラップル用発電機3aで発電された電力により作動する電動モータ3eと、電動モータ3eで駆動される油圧ポンプ3fと、バルブ3gとを有している。油圧ポンプ3fからの作動油は、バルブ3g、ローテータ3h、油圧ホース3k(
図2参照)を通じて油圧シリンダ3iに供給される。
【0052】
グラップル用蓄電器3cは、パワーユニットPUの電動モータ3eおよび第1作業機側無線通信部3dと電気的に接続されている。グラップル用蓄電器3cの電力は、電動モータ3eおよび第1作業機側無線通信部3dにそれぞれ供給される。
【0053】
図4は、実施形態1の搬器2および搬器2に取り付けられる無線中継器4を示す側面図である。
図5は、実施形態1の無線中継器4を示す背面図である。
図6は、実施形態1の無線中継器4を示す底面図である。
図4に示すように、搬器2は、前後方向(搬器2の移動方向)に延びる搬器本体部21を有している。搬器本体部21の前端面と後端面には、エンドレスラインELLの端部が取り付けられている。搬器本体部21の前端部の上面と後端部の上面のそれぞれには、スカイライン用滑車22が取り付けられている。搬器本体部21の後端部の下面には、リフティングライン用滑車23が取り付けられている。搬器本体部21の後端部の下面には、取付孔部24が設けられている。無線中継器4は、取付孔部24に対して、着脱自在に取り付けられる。
【0054】
図5および
図6に示すように、無線中継器4は、滑車フレーム41aおよびシーブ41bを有するリフティングライン用滑車41と、リフティングライン用滑車41の上端部に設けられるシャックル部42と、リフティングライン用滑車41の側面に設けられる発電機収容ケース44と、リフティングライン用滑車41の下方位置に設けられる中継器ボックス43と、中継器ボックス43の外周面近傍に設けられる保護フレーム45および下保護部材46と、を備えている。
【0055】
シャックル部42は、U字部分が開閉自在となっている。そのシャックル部42のU字部分を搬器2の取付孔部24に通すことにより、無線中継器4が搬器2に対して着脱自在に取り付けられる。
【0056】
保護フレーム45および下保護部材46は、外部物体の衝突による中継器ボックス43の損傷を防ぐために設けられている。保護フレーム45は、リフティングライン用滑車41のシーブ41bの環状の外周面に沿う面上に配置され、中継器ボックス43の周囲をU字状に囲むように配置されている。保護フレーム45の上端部は、リフティングライン用滑車41の滑車フレーム41aに取り付けられている。また、下保護部材46は、一対設けられている。各下保護部材46は、中央部の直線部分と両端部の湾曲部分とを有する棒状部材であり、直線部分がリフティングライン用滑車41の回転軸心方向に沿って延びるように、保護フレーム45の下端部に取り付けられている。下保護部材46の両端部は、斜め上方に向かって湾曲している。
【0057】
図7は、実施形態1の無線中継器4の機器構成図である。
図7において、各機器間の実線の矢印は、電力供給の流れを示し、破線の矢印は制御信号の流れを示す。
図5および
図7に示すように、無線中継器4は、中継器用発電機4aと、整流部4bと、電圧変換部4cと、充電部4dと、中継器用蓄電器4eと、中継無線通信部4gと、制御部4fと、アンテナ4hとを有し、これらをリフティングライン用滑車41とともに含むユニットとして構成されている。
【0058】
発電機収容ケース44の内部には、中継器用発電機4aと図示省略の増速機構が収容されている。本実施形態ではリフティングライン用滑車41のシーブ41bの回転エネルギーを中継器用発電機4aによって電気的エネルギーに変換する回生発電が行われる。具体的には、グラップル装置3がリフティングラインLFLに沿って移動すると、リフティングライン用滑車41のシーブ41bが回転し、この回転が図示省略の増速機構によって増速される。そして、増速機構によって増速された回転が中継器用発電機4aに伝達されることによって、中継器用発電機4aによる発電が行われる。
【0059】
中継器ボックス43は、通信信号を透過させやすい樹脂等の材質で形成されている。中継器ボックス43には、整流部4b、電圧変換部4c、充電部4d、中継器用蓄電器4e、中継無線通信部4g、制御部4f、および、アンテナ4hが収納されている。整流部4bは、中継器用発電機4aと電気的に接続されている。整流部4bは、中継器用発電機4aの発電によって生じた交流電力を直流電力に変換する。電圧変換部4cは、整流部4bと電気的に接続されている。電圧変換部4cは、整流部4bからの直流電力の電圧を電力供給対象の機器に適した電圧に変換する。充電部4dは、電圧変換部4c、制御部4fおよび中継器用蓄電器4eと電気的に接続されている。
【0060】
充電部4dは、電圧変換部4cからの電力を中継器用蓄電器4eに充電する。また、充電部4dは、中継器用蓄電器4eに充電された電力を制御部4fおよび中継無線通信部4gに供給する。また、充電部4dは、電圧変換部4cからの電力を直接、制御部4fおよび中継無線通信部4gに供給することもできる。中継器用蓄電器4eは、例えばリチウムイオンバッテリから成り、制御部4fおよび中継無線通信部4gの作動用の電源となる。つまり、制御部4fおよび中継無線通信部4gは、中継器用発電機4aによって発電された電力により作動する。
【0061】
中継無線通信部4gは、
図1、
図3および
図7に示すように、アンテナ4hと接続されており、アンテナ4hを介して、作業者が操作する無線操作装置5、グラップル装置3の第1作業機側無線通信部3d、および架線集材機1の第2作業機側無線通信部15と通信を行う。中継無線通信部4gは、無線操作装置5から、グラップル装置3の通信信号を受信する。具体的には、中継無線通信部4gは、グラップルアーム部312の開閉や旋回を行うための通信信号として、電動モータ3eの駆動やバルブ3gの切換に関する通信信号を受信する。中継無線通信部4gは、受信したグラップル装置3の通信信号を、そのままグラップル装置3の第1作業機側無線通信部3dに向けて送信する。また、中継無線通信部4gは、無線操作装置5から、架線集材機1の通信信号を受信する。具体的には、スカイラインSKLに沿う搬器2の移動、グラップル装置3の昇降、および、搬器2の移動方向(前後方向)に対して交差する横方向(左右方向)へのグラップル装置3の移動を行うための通信信号として、エンドレスライン用ウインチ11、リフティングライン用ウインチ12およびホールバックライン用ウインチ13の駆動に関する通信信号を受信する。中継無線通信部4gは、受信した架線集材機1の通信信号を、そのまま架線集材機1の第2作業機側無線通信部15に向けて送信する。つまり、中継無線通信部4gは、グラップル装置3および架線集材機1と無線操作装置5との間で通信信号を中継送信している。
【0062】
制御部4fは、中継無線通信部4gの制御を行う。具体的には、制御部4fは、架線集材機1の駆動によるリフティングラインLFLの繰り出しまたは引き込みに伴ってリフティングライン用滑車41のシーブ41bが回転したことをトリガにして中継送信を開始する。また、制御部4fは、リフティングライン用滑車41のシーブ41bが回転停止してから所定時間経過後に中継送信を停止する。
【0063】
図8は、実施形態1の無線中継器4の動作を示すフローチャートである。
図8に基づいて、無線中継器4の動作の説明を行う。まず、ステップS01では、中継器用発電機4aで発電が行われたか否かでその後の動作が異なる。中継器用発電機4aで発電が行われるのは、リフティングライン用滑車41のシーブ41bが回転されたときである。リフティングライン用滑車41のシーブ41bが回転される条件は、架線集材機1のリフティングライン用ウインチ12が駆動されて、グラップル装置3が上昇中または下降中となる場合、あるいはホールバックライン用ウインチ13によるホールバックラインHBLの引き込みと繰り出しに同調してリフティングライン用ウインチ12が駆動されてリフティングラインLFLの繰り出しまたは引き込みが行われる場合である。集材作業中は、頻繁にグラップル装置3の昇降や横方向(左右方向)への移動が行われるので、集材作業中に中継器用発電機4aの発電が行われることになる。中継器用発電機4aの発電が行われた場合は、ステップS02に進む。中継器用発電機4aの発電が行われていない場合は、ステップS09に進む。
【0064】
ステップS02において、充電部4dは、中継器用蓄電器4eの電圧(バッテリ残量)が所定の高閾値以下であるかどうか判定する。中継器用蓄電器4eの電圧が高閾値以下の場合は、ステップS03に進む。中継器用蓄電器4eの電圧が高閾値より大きい場合は、ステップS05に進む。
【0065】
ステップS03において、充電部4dは、中継器用蓄電器4eの充電を行う。その後、ステップS04に進む。ステップS04において、充電部4dは、中継器用蓄電器4eの電圧(バッテリ残量)が所定の低閾値以上であるかどうか判定する。中継器用蓄電器4eの電圧が低閾値以上の場合は、ステップS05に進む。中継器用蓄電器4eの電圧が低閾値未満の場合は、ステップS03に戻る。ステップS04の判断は、中継器用蓄電器4eの電力で作動させる機器に対し、最低動作電圧を満たす電力を供給するために行われる。
【0066】
ステップS05において、制御部4fおよび中継無線通信部4gが休止状態であるかどうかが判定される。制御部4fおよび中継無線通信部4gが休止状態の場合は、ステップS06に進む。制御部4fおよび中継無線通信部4gが休止状態でない場合は、ステップS07に進む。ステップS06では、制御部4fおよび中継無線通信部4gの作動が開始され、ステップS07に進む。
【0067】
ステップS07において、制御部4fは、中継無線通信部4gから入力される信号に基づき、無線操作装置5からの無線通信信号を受信したかどうかを判定する。制御部4fが無線操作装置5からの無線通信信号を受信した場合はステップS08に進む。制御部4fが無線操作装置5からの無線通信信号を受信しなかった場合はステップS01に戻る。
【0068】
ステップS08において、制御部4fは、無線操作装置5からの無線通信信号の中継送信を行う。すなわち、制御部4fは、中継無線通信部4gを利用して、受信したグラップル装置3の通信信号を、そのままグラップル装置3の第1作業機側無線通信部3dに向けて送信する。また、制御部4fは、中継無線通信部4gを利用して、受信した架線集材機1の通信信号を、そのまま架線集材機1の第2作業機側無線通信部15に向けて送信する。
【0069】
ステップS09において、制御部4fが稼働状態であるかどうかが判定される。制御部4fが稼働状態の場合は、ステップS10に進む。制御部4fが稼働状態でない場合は、ステップS01に戻る。
【0070】
ステップS10において、制御部4fが稼働状態になってから所定時間が経過したかどうかが判定される。制御部4fが稼働状態になってから所定時間が経過していない場合は、ステップS01に戻る。なお、集材作業中においては、グラップル装置3の昇降や横移動を停止してから時間をおいて再度グラップル装置3の昇降や横移動を行う場合がある。この場合、グラップル装置3の移動停止中は、中継器用蓄電器4eは充電されない。しかしながら、集材作業中はグラップル装置3が移動停止していても無線操作装置5からの通信信号は送信される状況である。そこで、中継器用蓄電器4eが充電されなくとも、所定時間経過までは、制御部4fおよび中継無線通信部4gは稼働状態とされる。
【0071】
一方で、制御部4fが稼働状態になってから所定時間が経過した場合は、ステップS11に進み、ステップS11において、制御部4fおよび中継無線通信部4gの作動を停止させる。制御部4fが稼働状態になってから所定時間が経過した場合は、集材作業が終了したとみなすことができる。集材作業の終了後も制御部4fおよび中継無線通信部4gの作動を続けると、中継器用蓄電器4eの電力を消費し、次の作業を行う際に、蓄電量が不十分になってしまうおそれがある。そこで、制御部4fが稼働状態になってから所定時間が経過した場合は、制御部4fおよび中継無線通信部4gの作動を停止させることにより、中継器用蓄電器4eの電力消費を抑制している。
【0072】
本実施形態では、上述のとおり、無線中継器4は、無線操作装置5と、グラップル装置3の第1作業機側無線通信部3dおよび架線集材機1の第2作業機側無線通信部15との間で通信信号を中継するように構成されている。本実施形態では、
図1に示すように、スカイラインSKLが山の尾根P5を跨ぐように配置されている。無線中継器4は、カイラインSKLに沿って移動可能な搬器2に取り付けられている。そのため、無線中継器4は、山の尾根P5を跨ぐ高い位置に配置されることとなる。これにより、無線操作装置5から無線中継器4を介してグラップル装置3や架線集材機1に通信する場合の通信信号が、障害物や山の尾根P5によって遮断されにくくなっている。
【0073】
[実施形態2]
図9は、実施形態2に係るグラップル装置3´および無線中継器4´の機器構成図である。
図9において、上記実施形態1に係るグラップル装置3および無線中継器4と同じ働きをする構成要素には、上記実施形態1と同じ符号を付してその説明を省略する。
図9に示すように、実施形態2では、無線中継器4´がグラップル装置3´に取り付けられる例が示されている。無線中継器4´の中継無線通信部4g´は、無線操作装置5から受信した架線集材機1の通信信号を、そのまま架線集材機1の第2作業機側無線通信部15に向けて送信する。一方、無線操作装置5から送信されたグラップル装置3´の通信信号については、グラップル装置3´の第1作業機側無線通信部3d´が直接受信するように構成されている。グラップル装置3´のグラップル用蓄電器3c´は、グラップル用発電機3aによって発電された電力によって充電される。グラップル用蓄電器3c´は、第1作業機側無線通信部3d´およびパワーユニットPUの電動モータ3eだけでなく、無線中継器4´の中継無線通信部4g´および制御部4fにも作動用の電力を供給するように構成されている。
【0074】
[実施形態3]
図10は、実施形態3に係る架線集材システム100Bの概略構成を示す図である。
実施形態1、2の架線集材システム100で説明した遠隔操作システムSでは、無線操作装置5は1台としたが、これに限定されず、複数台設けてもよい。実施形態3に係る架線集材システム100Bでは、
図10に示すように、遠隔操作システムSBは2台の無線操作装置51、52を備えている。
【0075】
無線操作装置51、52のうち、例えば無線操作装置51は、架線集材機1付近(元柱側、荷下ろし側)で作業を行う作業者OP1によって操作され、無線操作装置52は、グラップル装置3付近(先柱側、荷掛側)で作業を行う作業者OP2によって操作される。そして、無線操作装置51、52のうち、どちらでグラップル装置3および架線集材機1を操作するかは、集材作業の工程中に切り替え可能である。
【0076】
このため、例えば、架線集材機1付近(元柱側)に位置しているグラップル装置3を先柱側まで移動させて集材作業を行う場合、架線集材機1付近(荷下ろし側)からスカイラインSKLの中間位置(受渡位置)までのグラップル装置3の空移動は、元柱側の作業者OP1が無線操作装置51を用いて操作を行う。グラップル装置3が受渡位置に到達した時点で、元柱側の作業者OP1が無線操作装置51を用いて行う無線操作から、先柱側の作業者OP2が無線操作装置52を用いて行う無線操作に切り替える。
【0077】
先柱側の作業者OP2は、無線操作装置52を用いて受渡位置から先柱側の荷掛位置までグラップル装置3を移動させて木材を把持させ、木材を把持したグラップル装置3を再び受渡位置まで移動させる。木材を把持したグラップル装置3が受渡位置に到達した時点で、先柱側の作業者OP2が無線操作装置52を用いて行う無線操作から、元柱側の作業者OP1が無線操作装置51を用いて行う無線操作に切り替える。
【0078】
そして、元柱側の作業者OP1は、無線操作装置51を用いて受渡位置から元柱側の荷下ろし位置までグラップル装置3を移動させて木材を荷下ろしする操作を行う。
【0079】
なお、先柱側の作業者OP2は、ホールバックラインHBLによってグラップル装置3をスカイラインSKLに対して交差する横方向(左右方向)に大きく移動させて集材する場合には、その集材位置付近に位置していてもよい。
【0080】
実施形態3に係る架線集材システム100Bによれば、グラップル装置3および架線集材機1を無線で操作する無線操作装置51、52を、集材作業の工程中に切り替えることができる。このため、例えば木材伐採地P2と木材集材地P1との間の集材距離が長距離である場合や、グラップル装置3をスカイラインSKLに対して交差する横方向に大きく移動させて集材する場合、あるいは木材伐採地P2(グラップル装置3側)と木材集材地P1(架線集材機1側)において、確実な有視界操作が必要な場合には、集材作業の工程に応じて、グラップル装置3および架線集材機1を無線で操作する無線操作装置51、52を切り替えることができる。これにより、より安全で確実な集材作業を行うことができる。
【0081】
以上のとおり、上記実施形態に係る架線集材システム100は、スカイラインSKLに沿って移動可能に取り付けられる搬器2と、搬器2をスカイラインSKLに沿って移動させるエンドレスラインELLと、搬器2からリフティングラインLFLにより昇降自在に吊り下げられるグラップル装置3と、エンドレスラインELLおよびリフティングラインLFLの繰り出しおよび引き込みを行う架線集材機1と、グラップル装置3および架線集材機1を無線で操作するための遠隔操作システムSとを備えている。遠隔操作システムSは、無線操作装置5と、グラップル装置3に設けられる第1作業機側無線通信部3dと、架線集材機1に設けられる第2作業機側無線通信部15と、無線操作装置5と第1作業機側無線通信部3dおよび第2作業機側無線通信部15との間で通信信号を中継する無線中継器4とを備える。無線中継器4は、搬器2に取り付けられている。
【0082】
上記構成によれば、無線中継器4は、搬器2に取り付けられるため、無線中継器4の位置は、グラップル装置3と架線集材機1との間に位置している。このため、無線操作装置5から無線中継器4を介してグラップル装置3や架線集材機1に通信する場合のそれぞれの通信距離は、無線操作装置5からグラップル装置3や架線集材機1に対して直接通信する場合の通信距離よりも短くすることができ、通信信号が遮断されにくくなる。
【0083】
また、搬器2およびグラップル装置3は、木材伐採地P2と木材集材地P1との間をスカイラインSKLに沿って移動するため、無線中継器4の周囲には障害物が少ない。また、スカイラインSKLが山の尾根を跨ぐように配置される地形条件であっても、無線中継器4は山の尾根を跨ぐ高い位置に配置されることとなる。このため、無線操作装置5から無線中継器4を介してグラップル装置3や架線集材機1に通信する場合の通信信号が、障害物や山の尾根によって遮断されにくくなる。
【0084】
このため、架線集材システム100が設置される地形条件等に関わらず、遠隔操作に必要な通信信号が遮断されることなく安定した操作が可能となる。
【0085】
上記実施形態では、無線中継器4は、リフティングラインLFLが掛け渡されるリフティングライン用滑車41と、リフティングライン用滑車41のシーブ41bの回転により発電を行う中継器用発電機4aと、中継器用発電機4aによって発電された電力を充電する中継器用蓄電器4eと、通信信号を中継送信する中継無線通信部4gと、中継無線通信部4gの制御を行う制御部4fと、を有する。制御部4fおよび中継無線通信部4gは、中継器用発電機4aによって発電された電力により作動する。
【0086】
上記構成によれば、架線集材機1がリフティングラインLFLを繰り出しまたは引き込むことに伴って、無線中継器4のリフティングライン用滑車41が回転する。これにより、中継器用発電機4aの発電が行われて中継器用蓄電器4eが充電される。
【0087】
中継器用蓄電器4eに充電された電力は、中継無線通信部4gおよび制御部4fの駆動電力となる。これにより、無線中継器4に対して電力ケーブルで直接電力を供給したり、中継器用蓄電器4eに対して別途充電したりする必要がない。
【0088】
グラップル装置3を使用した集材作業中に中継器用蓄電器4eを充電できるため、集材作業中において、中継無線通信部4gおよび制御部4fに安定して電力が供給される。これにより、集材作業中に遠隔操作に必要な電力が不足することがなく、安定した操作が可能となる。
【0089】
上記実施形態では、制御部4fは、架線集材機1の駆動によるリフティングラインLFLの繰り出しまたは引き込みに伴ってリフティングライン用滑車41が回転したことをトリガにして中継送信を開始するとともに、リフティングライン用滑車41が回転停止してから所定時間経過後に中継送信を停止するように構成されている。
【0090】
上記構成によれば、中継器用蓄電器4eに対する電力消費量を抑制することができ、集材作業中に遠隔操作に必要な電力が不足することがなく、安定した操作が可能となる。
【0091】
上記実施形態では、無線中継器4は、リフティングライン用滑車41、中継器用発電機4a、中継器用蓄電器4e、中継無線通信部4g、および、制御部4fを含むユニットとして構成されている。そして、無線中継器4は、搬器2の搬器本体部21に対し着脱自在に取り付けられる。
【0092】
上記構成によれば、必要に応じて無線中継器4を搬器2から離れた地上に配置して、集材作業を行うことができる。また、無線中継器4のメンテナンスや交換作業を容易に行うことができる。
【0093】
上記実施形態では、無線中継器4は、リフティングライン用滑車41の下方位置に設けられた中継器ボックス43を有している。中継器ボックス43には、中継器用蓄電器4e、中継無線通信部4g、制御部4f、および、中継無線通信部4gに接続されたアンテナ4hが収納される。中継器ボックス43の外周面近傍には、外部物体の衝突による中継器ボックス43の損傷を防ぐための保護部材(保護フレーム45、下保護部材46)が配置されている。
【0094】
上記構成によれば、中継無線通信部4gやアンテナ4hは、リフティングライン用滑車41よりも下方位置に設けられる。このため、無線中継器4よりも下方に位置する無線操作装置5、グラップル装置3、架線集材機1との無線通信の際に、無線中継器4の他の部品による通信障害を抑制することができる。
【0095】
また、中継器ボックス43の外周面近傍に、外部物体の衝突による中継器ボックス43の損傷を防ぐための保護部材を配置する。このため、例えば、木材をグラップル装置3で把持した状態において、当該木材が無線中継器4に衝突することによる中継無線通信部4gやアンテナ4hの故障を抑制することができる。
【0096】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、上述した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0097】
例えば、上記実施形態では、無線操作装置5は、グラップル装置3、架線集材機1に対して、直接通信信号を送信するのではなく無線中継器4を介して通信信号を送信するように構成されていた。無線中継器4の中継無線通信部4gは、受信したグラップル装置3の通信信号を、そのままグラップル装置3の第1作業機側無線通信部3dに向けて送信していた。また、中継無線通信部4gは、受信した架線集材機1の通信信号を、そのまま架線集材機1の第2作業機側無線通信部15に向けて送信していた。本発明はこれに限らず、無線操作装置は、グラップル装置と架線集材機のいずれか一方に対してのみ無線中継器の中継送信により通信信号を送るとともに、グラップル装置と架線集材機のいずれか他方に対しては、無線中継器を使用せず直接通信信号を送信するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 架線集材機
2 搬器
3,3´ グラップル装置
3d,3d´ 第1作業機側無線通信部
4,4´ 無線中継器
4a 中継器用発電機
4e 中継器用蓄電器
4f 制御部
4g,4g´ 中継無線通信部
4h アンテナ
5,51,52 無線操作装置
15 第2作業機側無線通信部
21 搬器本体部
41 リフティングライン用滑車
41b シーブ
43 中継器ボックス
45 保護フレーム(保護部材)
46 下保護部材(保護部材)
100,100B 架線集材システム
S 遠隔操作システム
ELL エンドレスライン
LFL リフティングライン
SKL スカイライン