(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046726
(43)【公開日】2024-04-04
(54)【発明の名称】耐震シェルター及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240328BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04G23/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154358
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022152046
(32)【優先日】2022-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521084334
【氏名又は名称】株式会社堤サッシュ工業
(74)【代理人】
【識別番号】100149560
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】堤 利市
【テーマコード(参考)】
2E139
2E176
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB25
2E139AC02
2E139AC22
2E176AA09
2E176BB31
2E176BB34
(57)【要約】
【課題】既設の家屋の部屋内部に短期間で安価に設置することができ、大規模地震による激しい揺れに耐えられる強度を備えるとともに、内部のスペースも確保されて居住空間としても快適な耐震シェルターを提供する。
【解決手段】耐震シェルター10は、家屋H1の部屋R1の四隅に立設された角柱50A、50B、50C、50Dと、部屋R1の壁R30a、R30b、R30c、R30dに沿った壁面20A、20B、20C、20Dを備える。これらに囲まれた床面40には床部材が敷き詰められ、上部には天井が構成され、壁面20Cには出入口60となる出入口ドア62が設けられる。これらの壁面、床面、天井は、アルミニウム製部材と構造用合板からなるユニットを組み立てて構成されているため、優れた耐震性を有するとともに設置が容易であり、短期間で既設の家屋H1の内部に安全な空間を確保することができる。
【選択図】
図28
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の家屋の部屋の内部に設置される耐震シェルターであって、
前記部屋の床面に敷設される床部材と、
前記床部材の外周部に立設される複数の柱部材と、
前記複数の柱部材の間に取付けられる複数の壁面ユニットと、
前記複数の柱部材及び前記複数の壁面ユニットに支持されて前記部屋の天井下部に取付けられる複数の天井ユニットと、を備え、
前記壁面ユニット及び前記天井ユニットはアルミニウム製部材の枠組みに構造用合板を取付けてなることを特徴とする、耐震シェルター。
【請求項2】
前記床部材の前記複数の壁面ユニットに囲まれた表面にさらに敷設される第二の床部材を有する、請求項1に記載された耐震シェルター。
【請求項3】
前記床部材及び前記第二の床部材は構造用合板からなり、前記柱部材はアルミニウム製部材からなる、請求項2に記載された耐震シェルター。
【請求項4】
前記アルミニウム製部材は建築構造用アルミニウム合金材であることを特徴とする、請求項3に記載された耐震シェルター。
【請求項5】
前記壁面ユニット及び/又は前記天井ユニット及び/又は前記第二の床部材の外側に不燃材が設けられている、請求項4に記載された耐震シェルター。
【請求項6】
既設の家屋の部屋の内部に耐震シェルターを設置する方法であって、
前記部屋の床面に第一の床部材を敷設する工程と、
前記床部材の外周部に複数の柱部材を立設する工程と、
前記複数の柱部材の間に前記複数の柱部材で挟持される複数の壁面ユニットを取付ける工程と、
前記複数の壁面ユニットで囲まれた第一の床部材の表面にさらに第二の床部材を敷設する工程と、
前記部屋の天井に前記複数の柱部材及び前記複数の壁面ユニットで支持される天井ユニットを取付ける工程と、
を備え、
前記柱部材はアルミニウム製部材からなり、
前記壁面ユニット及び前記天井ユニットは、アルミニウム製部材からなる枠組みに構造用合板を固定してなることを特徴とする、耐震シェルターの設置方法。
【請求項7】
前記第一の床部材及び前記第二の床部材は構造用合板からなり、前記アルミニウム製部材は建築構造用アルミニウム合金材である、請求項6に記載された耐震シェルターの設置方法。
【請求項8】
前記壁面ユニット及び/又は前記天井ユニット及び/又は前記第二の床部材の外側に不燃材を取付けることを特徴とする、請求項7に記載された耐震シェルターの設置方法。
【請求項9】
前記既設の家屋は木造住宅である、請求項8に記載された耐震シェルターの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の木造住宅等の家屋内に設置する室内設置型の耐震シェルター及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本及び世界の各地で大規模な地震災害が発生する中で、人的被害を防ぐことが急務となっている。特に、家屋等の建物の耐震強度不足により建物が倒壊した場合に、居住者が倒壊家屋の下敷きになるという重大な事故の発生が懸念されている。そのために、建物の耐震強度を把握して、耐震強度不足の場合は建物を補強することが必要になる。しかし、古い家屋等の場合には、耐震強度が不足していると判定されても、耐震強度を高めるためには家屋全体をリフォームしなければならず多大な費用が必要となるため、実施に踏み切るのが容易でない場合も多い。
【0003】
これに対して、家屋全体の耐震強度を高めるのではなく、家屋内に地震による倒壊等に耐えられるシェルターを設置する技術が開発されている。このような耐震シェルターは建物全体の高強度化に比較して費用も安価に抑えられることから、大規模地震災害への対策として注目されている。耐震シェルターを寝室や居間等に設置して内部に寝台等を収容することにより、地震が発生した際には、耐震シェルター内に逃げ込むことができる。また、夜中等にはシェルター内の寝台で就寝しているため、家屋の倒壊による重大な人的被害を避けることが可能になる。
【0004】
このような耐震シェルターとして、部屋の床に配置される複数の床枠部材からなる床枠部と、その上部に配置される複数の上枠部材からなる上面部と、床枠部材と上枠部材とこれらを接続する複数の支柱部材とからなる側面部と、それらに囲まれた内部領域とを有する耐地震用ユニットが知られている(例えば、特許文献1)。この耐地震用ユニットは、さらに上面部が上枠部材を接続する複数の梁を備え、側面部は、それぞれ上枠部材の一つと支柱部材の一つを接続する上端部分と、支柱部材の別の一つと床枠部材の一つとを接続する下端部分とを有する複数の筋交いを備えている。このような耐地震用ユニットは、金属材料、特に堅牢な鉄骨部材を主として組み立てられており、地震発生時に家屋が倒壊しても耐地震用ユニット自体は壊れずに人命を保護することを目的としている。
【0005】
しかし、この一時避難方式耐震シェルターには種々の問題がある。第一に、大規模地震が発生した時に耐震シェルター内にたまたまいれば良いが、そうでない場合は住人がシェルターまで移動しなければならない点である。地震の発生に対しては緊急地震速報があるが、現在の技術では速報があってから地震が発生するまでわずか数十秒の猶予しかない。このような短時間で、特にお年寄りや身体の不自由な人が屋内耐震シェルターまで移動するのは極めて困難である。また、耐震シェルターの構造は鉄骨が主体で堅牢に施されているため、内部が無機質な印象となり、スペースも限られる。このため、長時間にわたって滞在する居住空間としては、精神的、物理的に不向きである。そこで、構造材料として室内に適した木材を用いて、屋内に設置する方式の木造シェルターが開発されるようになってきた(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-156174号公報
【特許文献2】特許第5208141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような木材から構成された耐震シェルターは、大規模地震による激しい揺れに耐えられる強度を確保するために断面積が大きい木材を使用することから、内部のスペースが狭くなってしまう。また、木造構造により強度を向上させるためには、設置場所の既存の床面や壁面を除去して作り直す工事が必要になることから、設置に長期間を要し、設置コストも高価になる。さらに、このような木造型の耐震シェルターが実際に大規模地震の揺れにどの程度耐えられるかも確認されていない。このように、従来の木造式の耐震シェルターには、種々の問題点があった。
【0008】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、既設の家屋の部屋内部に設置する耐震シェルターであって、大規模地震による激しい揺れに耐えられる強度を備えるとともに、内部スペースも確保されて居住空間として快適であり、かつ短期間で安価に設置できる耐震シェルターを提供することを目的とする。また、本発明は、そのような耐震シェルターを家屋内に設置するための設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る耐震シェルターは、
既設の家屋の部屋の内部に設置される耐震シェルターであって、
前記部屋の床面に敷設される床部材と、
前記床部材の外周部に立設される複数の柱部材と、
前記複数の柱部材の間に取付けられる複数の壁面ユニットと、
前記複数の柱部材及び前記複数の壁面ユニットに支持されて前記部屋の天井下部に取付けられる複数の天井ユニットと、を備え、
前記壁面ユニット及び前記天井ユニットはアルミニウム製部材の枠組みに構造用合板を取付けてなることを特徴とする。
【0010】
前記耐震シェルターは、前記床部材の前記複数の壁面ユニットに囲まれた表面にさらに敷設される第二の床部材を有することが好ましい。
【0011】
前記耐震シェルターにおいて、前記床部材及び前記第二の床部材は構造用合板からなり、前記柱部材はアルミニウム製部材からなることが好ましい。
【0012】
前記耐震シェルターにおいて、前記アルミニウム製部材は建築構造用アルミニウム合金材であることが好ましい。
【0013】
前記耐震シェルターは、前記壁面ユニット及び/又は前記天井ユニット及び/又は前記第二の床部材の外側に不燃材が設けられていることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る耐震シェルターの設置方法は、
既設の家屋の部屋の内部に耐震シェルターを設置する方法であって、
前記部屋の床面に第一の床部材を敷設する工程と、
前記床部材の外周部に複数の柱部材を立設する工程と、
前記複数の柱部材の間に前記複数の柱部材で挟持される複数の壁面ユニットを取付ける工程と、
前記複数の壁面ユニットで囲まれた第一の床部材の表面にさらに第二の床部材を敷設する工程と、
前記部屋の天井に前記複数の柱部材及び前記複数の壁面ユニットで支持される天井ユニットを取付ける工程と、
を備え、
前記柱部材はアルミニウム製部材からなり、
前記壁面ユニット及び前記天井ユニットは、アルミニウム製部材からなる枠組みに構造用合板を固定してなることを特徴とする。
【0015】
前記耐震シェルターの設置方法において、前記第一の床部材及び前記第二の床部材は構造用合板からなり、前記アルミニウム製部材は建築構造用アルミニウム合金材であることが好ましい。
【0016】
前記耐震シェルターの設置方法において、前記壁面ユニット及び/又は前記天井ユニット及び/又は前記第二の床部材の外側に不燃材を取付けることが好ましい。
【0017】
前記耐震シェルターの設置方法において、前記既設の家屋は木造住宅であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る耐震シェルターは、アルミニウム製部材に構造用合板を組み合わせてなる壁面ユニット及び天井ユニットで構成された強固な構造を備え、既設の家屋内に安全な空間を確保することができる。これによって、大規模地震による激しい揺れに耐えられる優れた耐震性能を有するとともに、設置が容易で、かつ快適な居住性を有する耐震シェルターとなる。また、本発明に係る耐震シェルターの設置方法によれば、種々の構造や材料からなる既設の家屋内に、優れた耐震耐荷重性能を有する耐震シェルターを、安価にかつ短期間で設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る耐震シェルターを既設の家屋の部屋の中に設置した状態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る耐震シェルターの壁面を構成する3種類の壁面ユニット枠を示す正面図である。
【
図3】本実施形態に係る耐震シェルターの平面図である。
【
図4】本発明の実施例に係る耐震シェルターの構造を示す平面図である。
【
図5】耐震シェルターの天井ユニット枠の構造を示す平面図である。
【
図6】天井に補強パイプを設置した状態を示す平面図である。
【
図7】耐震シェルターの内部から見た背面側の壁面を示す立面図である。
【
図8】内部から見た右側面の壁面を示す立面図である。
【
図9】内部から見た正面側(出入口側)の壁面を示す立面図である。
【
図10】内部から見た左側面の壁面を示す立面図である。
【
図11】耐震シェルターの天井から床面までの縦断面の一部を示す部分縦断面図である。
【
図12】耐震シェルターの出入口部分における天井から床面までの縦断面を示す部分縦断面図である。
【
図13】背面側の天井から床面までの縦断面を示す縦断面図である。
【
図14】出入口部分の天井から床面までの縦断面を示す縦断面図である。
【
図15】出入口面と平行な縦断面を示す縦断面図である。
【
図16】耐震シェルターの角柱と壁面ユニットとの取付け構造を示す部分横断面図である。
【
図17】耐震シェルターの出入口ドア部分の断面構造を示す部分縦断面図である。
【
図18】出入口ドア部分の横断面を示す部分横断面図である。
【
図19】耐震シェルターの天井梁の取付け構造を示す平面図及び正面図である。
【
図21】天井梁の中間部分における取付け構造を示す平面図及び側面図である。
【
図22】天井梁の中間部分における取付け構造を示す平面図及び正面図である。
【
図23】天井梁の四隅における取付け構造を示す平面図及び正面図である。
【
図24】床部材の四隅に設置される角柱を床面に固定するための構造の詳細を示す平面図である。
【
図25】角柱を床面に固定するための構造の詳細を示す部分立面図である。
【
図26】本発明の実施例に係る耐震シェルターの設置方法を示すフローチャートである。
【
図27】耐震シェルターが設置される部屋の床面及び床下の構造を示す平面図である。
【
図28】既設の家屋及び部屋の壁面とその内部に設置された耐震シェルターの角柱及び壁面を示す平面図である。
【
図29】既設の家屋及び部屋の天井部分と床面及び床下部分の構造とその内部に設置された耐震シェルターとを示す立面図である。
【
図30】既設の部屋の各部に対する耐震シェルターの位置関係を示す部分縦断面図及び部分横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態に係る耐震シェルター(以下、「本実施形態に係る耐震シェルター」ともいう。)は、既設の家屋の部屋の内部に設置される室内設置型の耐震シェルターであって、大規模地震の発生時に家屋の倒壊や火災から身を守るとともに、被災後の居住スペースとしても使用できることを目的として設計されている。
【0021】
そのために本実施形態に係る耐震シェルターは、既設の部屋の床面に敷設される床部材と、床部材の外周部に立設される複数の柱部材と、複数の柱部材の間に取付けられる複数の壁面ユニットと、複数の柱部材及び複数の壁面ユニットに支持されて部屋の天井下部に取付けられる複数の天井ユニットとを備えている。これらの構造部材は、高強度と軽量性を兼ね備えたアルミニウム製部材と、剛性及び靭性を兼ね備えた構造用合板とを主体として構成されている。
【0022】
すなわち、床面に敷設される床部材には構造用合板が用いられ、柱部材にはアルミニウム製部材、例えば断面が略正方形のアルミニウム製角柱が用いられる。壁面ユニット及び天井ユニットは、アルミニウム製部材を組み立ててなるユニット枠に構造用合板を嵌め合わせて構成される。これらのアルミニウム製部材は、衝撃や応力に耐える強度を備えるのに必要な厚さと断面積を有しており、かつアルミ素材であるから重量は最低限に抑えられる。このように、本実施形態に係る耐震シェルターは、床面、柱部材、壁面、天井が強度と靭性に優れたアルミニウム製部材及び構造用合板で構成されているため、大規模地震の激しい揺れにも耐え得る強固な構造となり、家屋内に安全空間を確保できる。
【0023】
また、床部材、壁面ユニット、天井ユニットに構造用合板が用いられているため、耐震シェルターの内面が木材の面となり、安全を確保しつつ快適な居住空間が形成される。さらに、床部材の下面や、壁面ユニット及び天井ユニットの外面に、ケイ酸カルシウム板(以下、「ケイカル板」ともいう)等の不燃材を組み合わせることによって、これらの構造部材に防火性を付与することができる。さらに、居住性と防火性とをより向上させるため、床面、壁面、天井の内面に防炎クロス及び防炎カーペットを敷設することもできる。
【0024】
また、短納期化と低コスト化とを図るためには、予めアルミニウム製部材と構造用合板とを組み合わせて上記のユニット等を作製しておき、これらの製品を既設の部屋に搬入して、内部で組み立てる工法が採用される。このような工法においては、部屋の内部での作業のみで設置を完了できることが好ましい。部屋の内部からの作業のみで上記のユニット等を互いに組み付けるには、六角ボルトや六角穴付ボルト等の各種の固定具が使用される。
【0025】
より具体的には、壁面ユニットは、アルミニウム製部材としてのアルミニウム製構造用形材で形成された壁面ユニット枠に、構造用合板が取り付けられた構造を有する。天井ユニットも、アルミニウム製構造用形材からなる天井ユニット枠と構造用合板とを組み合わせて構成される。壁面ユニットは、同じくアルミニウム製構造用形材からなる複数本の角柱の間に挟持されて、固定される。一般的な既設家屋の部屋の平面形状は長方形又は正方形であるから、四方の壁面が1枚又は複数枚の壁面ユニットで構成され、角柱を介して互いに約90度の角度で連結された構造となる。
【0026】
角柱、壁面ユニット及び天井ユニットを構成するアルミニウム製構造用形材としては、建築構造用アルミニウム合金材を用いることが好ましく、例えば構造材材質A6N01SS-T5を用いることができる。また、壁面ユニット、天井ユニット、床部材に用いる構造用合板は、建築物の構造に重要な部分に使用する構造用合板として、日本農林規格(JAS)の認可を受けたものを用いることができる。本発明の実施の形態に係る耐震シェルターにおいては、環境保護及び低コスト化に寄与する観点から、壁面ユニット、天井ユニット及び床部材に構造用合板を用いている。
【0027】
本実施形態に係る耐震シェルターの設置工程において、柱部材の角柱と天井を支持する梁材との組付けは、例えば、L型金具を六角ボルトや六角穴付ボルトで角柱と梁材の双方に固定することによって行われる。これらのL型金具、六角ボルト、六角穴付ボルトや木ネジ等の部品は、ステンレス鋼を始めとする通常の金属材料製からなるものが用いられる。L型金具には、アルミニウム製構造用形材からなるものを用いることもできる。
【0028】
本発明の実施の形態に係る耐震シェルターの具体的な構造について、図面を参照しながらさらに説明する。まず、本実施形態に係る耐震シェルターの概略の構成について
図1から
図3までを参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係る耐震シェルターを既設の家屋の部屋の中に設置した状態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る耐震シェルターの壁面を構成する3種類の壁面ユニット枠を示す正面図である。
図3は、本実施形態に係る耐震シェルターの平面図である。
【0030】
図1に示されるように、本実施形態に係る耐震シェルター10は、既設の家屋H1のうち一つの部屋R1の内部に設置される。一般の木造住宅にも設置を可能とするため、建築構造用アルミニウム合金材で主フレームを構成し、組み立て可能な耐震シェルターとする。ここで、
図1に示される部屋R1は六畳間の和室であり、その中に略正方形の平面形状を有する四畳半用の耐震シェルター10を設置した場合を例示している。
【0031】
耐震シェルター10は、4面のうち1の壁面に出入口60を有する。耐震シェルター10は、出入口60が部屋R1の開口部R1aの側に向くように、部屋R1の内部に設置される。部屋R1の長手方向長さをL1として、耐震シェルター10の長さをL10とすると、出入口60と開口部R1aの間には間隔L2が生ずる。このように間隔L2が空いていれば、出入口60に取付けられる、後述する外側に開く出入口ドアが、開閉を妨げられることはない。
【0032】
壁面ユニット枠及び天井ユニット枠を構成するアルミニウム製構造用形材には、建築構造用アルミニウム合金材が用いられる。本実施形態においては、建築構造用アルミニウム合金材として、構造材材質A6N01SS-T5を用いている。なお、高強度が要求されず、建築構造用アルミニウム合金材を用いる必要がない箇所には、アルミニウム製部材として、例えばアルミニウム型材A6063-T5等を用いることもできる。
【0033】
壁面ユニットの枠部分を構成する壁面ユニット枠について、
図2を参照して説明する。
図2に示されるように、壁面ユニットの枠部分としては、3種類の壁面ユニット枠21a、21b、21cが用いられる。上述したように、壁面ユニット枠21a、21b、21cは、高強度の建築構造用アルミニウム合金材(構造材材質A6N01SS-T5)で構成されている。
【0034】
壁面ユニット枠21a、21b、21cの高さ方向の外形寸法(外寸)及び内側寸法(内寸)はそれぞれt1、t2、t3、t4、t5、t6、t7であり、幅方向の外寸及び内寸はそれぞれw1、w2、w3c、w4、w5、w6である。これらの3種類の壁面ユニット枠21a、21b、21cは、2種類以上が組み合わされて耐震シェルター10の4つの壁面に設置される。設置面の高さ及び幅に応じて、3種類の壁面ユニット枠21a、21b、21cの組合せが選択される。
【0035】
次に、耐震シェルター10の概略構造について、
図3の平面図を参照して説明する。
図3に示されるように、耐震シェルター10の4つの壁面20A、20B、20C、20Dは、
図2に示される壁面ユニット枠21a、21b、21cに構造用合板が組み合わされた壁面ユニットによって囲まれている。さらに、耐震シェルター10の四隅には、柱部材として、4本の角柱50A、50B、50C、50Dが立設されている。
【0036】
後ほど詳述するように、耐震シェルター10の設置の手順としては、まず角柱50A、50B、50C、50Dが床面に固定され、4本の角柱の間にそれぞれ壁面ユニットが固定されて、壁面20A、20B、20C、20Dが構成される。これらの壁面20A、20B、20C、20D、及び角柱50A、50B、50C、50Dに囲まれた内側の床面に床部材が敷設されて、耐震シェルター10の床面40が構成されている。また、壁面20Cには出入口60となる開口部61が設けられており、出入口ドア62が取り付けられている。
【0037】
このような構造の耐震シェルター10は、木造家屋H1の部屋R1の内部に優れた耐震強度を備えた安全空間を形成する。さらに、耐震シェルター10の構成部材である壁面ユニット、床部材、角柱は、いずれも最小限の厚さ及び断面積で製作されているため、部屋の内部の空間はほとんど狭くならない。これによって、耐震シェルター10の内部を快適な居住空間とすることができる。
【実施例0038】
次に、本発明に係る耐震シェルター及びその設置方法のより詳細な実施例について、図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例は本発明をさらに具体的な例を挙げて説明するためのものであり、本発明の内容を限定するものではない。
【0039】
まず、本発明の実施例に係る耐震シェルター(以下、「本実施例に係る耐震シェルター」ともいう。)の基本構造と構成部材について、
図4から
図10までを参照して説明する。
【0040】
図4は、本発明の実施例に係る耐震シェルターの構造を示す平面図である。
図5は、耐震シェルターの天井ユニット枠の構造を示す平面図である。
図6は、天井に緩衝材としての補強パイプを設置した状態を示す平面図(屋根伏図)である。
図7は、耐震シェルターの内部から見た背面側の壁面を示す立面図である。
図8は、内部から見た右側面の壁面を示す立面図である。
図9は、内部から見た正面側(出入口側)の壁面を示す立面図である。
図10は、内部から見た左側面の壁面を示す立面図である。
【0041】
図4の平面図に示されるように、本実施例に係る耐震シェルター10は、四隅に立設された4本の角柱50A、50B、50C、50Dと、四方を囲む壁面20A、20B、20C、20Dによって外周部が構成され、外周部に囲まれた床面には、サイズの異なる四種類の第二の床部材43a、43b、43c、43dが敷き詰められている。また、壁面20Cには、耐震シェルター10の出入口60が設けられている。
【0042】
先に
図1で説明したように、耐震シェルター10は、既設の家屋H1内の部屋R1の内部に設置される。すなわち、角柱50A、50B、50C、50D及び壁面20A、20B、20C、20Dは、部屋R1の既存の壁面の内側に構築される。また、第二の床部材43a、43b、43c、43dは、部屋の既存の床面に敷設される、後述する第一の床部材の上に、さらに敷設される。
【0043】
図5に示されるように、本実施例に係る耐震シェルター10の天井ユニット31を構成する天井ユニット枠は、四種類のアルミニウム製構造用形材からなる天井ユニット枠部材31a、31b、31c、31dを組み合わせて構成されている。アルミニウム製構造用形材としては、建築構造用アルミニウム合金材が用いられる。本実施例に係る天井ユニット枠部材31a、31b、31c、31dには、建築構造用アルミニウム合金材として、構造材材質A6N01SS-T5が用いられている。
【0044】
天井ユニット31の各部分には、硬質ゴム板33が取り付けられる。これらの硬質ゴム板33を介して天井ユニット枠部材31a、31b、31c、31dに構造用合板を固定することによって、厚く剛性を有し軽量な天井ユニット31が構成される。天井ユニット31に固定された構造用合板の上面には、不燃材としてケイ酸カルシウム板(ケイカル板)が貼り合わせられる。これによって、強度と防火性を兼ね備えた天井ユニット31が形成される。
図5に示されるように、本実施例に係る耐震シェルター10の天井は、6枚の天井ユニット31を繋ぎ合わせて構成されている。
【0045】
これら6枚の天井ユニット31の上には、
図6の屋根伏図に示されるように、緩衝材として略長方形の断面を有する補強パイプ32が取り付けられる。補強パイプ32は厚さ3mmのステンレス鋼からなる、断面寸法60mm×30mm、長さ約2.6mの長尺パイプであり、天井ユニット31の長手方向と直交する方向に7本取付けられる。7本の補強パイプ32は、大地震により家屋の屋根が崩落した場合に、耐震シェルター10の天井に掛かる衝撃を受け止め緩和して、天井を保護する目的で取り付けられる。このため、補強パイプ32には、衝撃で潰れないステンレス鋼等の鋼鉄製のパイプが使用される。
【0046】
次に、耐震シェルター10の内部から見た各壁面の構成について、
図7から
図10までを参照して説明する。
図7に示されるのは、耐震シェルター10の壁面20Aを内部からみた構成である。耐震シェルター10の天井30は、上記の天井ユニット枠部材に構造用合板及びケイカル板を組み合わせた天井ユニットで構成されている。壁面20Aは、角柱50Aと角柱50Dの間に、三枚の壁面ユニットが固定されてなる。三枚の壁面ユニットとしては、2枚の壁面ユニット20aと、1枚の壁面ユニット20bが使用される。
【0047】
壁面ユニット20aは、
図2で説明した壁面ユニット枠21aに、構造用合板及びケイカル板を固定して、さらに内面に防炎クロスを貼ったものである。壁面ユニット20bは、
図2に示される壁面ユニット枠21bに構造用合板及びケイカル板を固定して、内面に防炎クロスを貼ったものである。耐震シェルター10の床面40は、床部材が二重に敷設されてなり、これらの床部材は、構造用合板、ケイカル板、及び防炎カーペットを貼り合わせて作られている。
【0048】
図8は、耐震シェルター10の壁面20Bを内部からみた立面図である。壁面20Bには、角柱50Aと角柱50Bの間に固定される三枚の壁面ユニットとして、1枚の壁面ユニット20aと2枚の壁面ユニット20bが使用されている。このうち、壁面ユニット20aの上部には、排気口12Aが設けられている。排気口12Aは空気圧で開閉するベントを備え、耐震シェルター10内に生ずる気流に応じて内部の空気を排出する。排気口12Aは、
図10で後述する給気口12Bと一体となって、耐震シェルター10内の自然換気を行う。
【0049】
図9は、耐震シェルター10の壁面20Cを内部からみた立面図である。壁面20Cには、角柱50Bと角柱50Cの間に固定される三枚の壁面ユニットとして、2枚の壁面ユニット20bと、1枚の壁面ユニット20cが使用されている。壁面ユニット20cは出入口ドア62を構成し、出入口ドア62も他の壁面ユニットと同様に、壁面ユニット枠21cに構造用合板及びケイカル板を固定し、内面に防炎クロスを貼って作られている。出入口ドア62はドア蝶番によって一対のドア支柱に支持されており、出入口ドア62を開閉しロックするための、一対の出入口ドア取手63A、63Bが取り付けられている。
【0050】
図10は、耐震シェルター10の壁面20Dを内部からみた立面図である。壁面20Dは、角柱50Cと角柱50Dの間に、2枚の壁面ユニット20aと1枚の壁面ユニット20bが固定されてなる。2枚の壁面ユニット20aのうち1枚の下部には、給気口12Bが設けられている。給気口12Bも、上述した排気口12Aと同様に空気圧で開閉するベントを備え、壁面20Bの排気口12Aに対向して斜向かいに位置している。したがって、給気口12Bから取り入れられた空気は、耐震シェルター10の内部を隈なく循環して、排気口12Aから排出される。このようにして、耐震シェルター10の内部が自然換気される。さらに、給気口12Bには温度を感知して作動するダンパーが設けられており、外部温度が70℃以上になった時は、自動的に給気口12Bを閉鎖する。これによって、外部で火災が発生した場合に、耐震シェルター10内に炎や有毒ガスが侵入する事態を確実に防止することができる。
【0051】
次に、耐震シェルター10を構成する各部分の断面構造について、
図11から
図15までを参照して説明する。
図11は、耐震シェルターの天井から床面までの縦断面の一部を示す部分縦断面図である。
図12は、耐震シェルターの出入口部分における天井から床面までの縦断面を示す部分縦断面図である。
図13は、背面側の天井から床面までの縦断面を示す縦断面図である。
図14は、出入口部分の天井から床面までの縦断面を示す縦断面図である。
図15は、出入口面と平行な縦断面を示す縦断面図である。
【0052】
図11に示されるように、壁面の一端には角柱50Cが立設され、角柱50Cは床面に対して4本の六角フランジタッピングねじ52で固定される。床面には床部材が二重に敷設されており、まず、既設の部屋の床面に、構造用合板からなる第一の床部材41が敷設される。第一の床部材41の上に、構造用合板45とケイカル板46からなる第二の床部材43が敷設される。第二の床部材43の構造用合板45は、第一の床部材41に床部材接合ネジ44で締め付け固定されている。さらに、第二の床部材43の上には、防炎カーペット47が貼り合わされている。壁面ユニット、天井ユニット、角柱の相互間の接合には、それぞれ複数本の六角穴付ボルト53が用いられる。なお、
図11の天井部分には、上述した補強パイプ32の断面が表れている。
【0053】
図12に示されるように、出入口部分の床面も上記と同様の構造を有している。構造用合板からなる第一の床部材41が敷設され、第一の床部材41の上に構造用合板45とケイカル板46からなる第二の床部材43が敷設される。第二の床部材43の構造用合板45は、第一の床部材41に床部材接合ネジ44で締め付け固定されている。第二の床部材43の上には、防炎カーペット47が貼り合わされる。なお、本実施例では床面に板材を貼る場合について説明しているが、床面に畳を敷いて耐震シェルター10を和室風にすることもできる。畳を敷く場合には、畳の厚さが30mm程度であることが好ましい。
【0054】
図13に示されるように、耐震シェルター10の背面側の壁面の一端には、角柱50Dが立設されている。角柱50Dも、床面に対して4本の六角フランジタッピングねじ52で固定される。
図14に示されるように、出入口部分においても、構造用合板からなる第一の床部材の上に、構造用合板45とケイカル板46からなる第二の床部材43が敷設される。第二の床部材43の構造用合板45は、第一の床部材41に床部材接合ネジ44で締め付け固定されている。第二の床部材43の上には、防炎カーペット47が貼り合わされる。
【0055】
さらに、
図15に示されるように、耐震シェルター10の天井ユニット31は、上述した天井ユニット枠に、構造用合板35とケイカル板36が組み込まれて構成されている。天井ユニット31の下面は、硬質ゴム板33を挟んで梁材55に密着している。梁材55は中空部55aを有し、高強度を持ちながら軽量性も備えている。
【0056】
次に、耐震シェルター10を構成する各部材の取付け構造と支持構造について、
図16から
図25までを参照して説明する。
図16は、耐震シェルターの角柱と壁面ユニットとの取付け構造を示す部分横断面図である。
図17は、耐震シェルターの出入口ドア部分の断面構造を示す部分縦断面図である。
図18は、出入口ドア部分の横断面を示す部分横断面図である。
図19は耐震シェルターの天井梁の取付け構造を示す平面図及び正面図、
図20は側面図である。
【0057】
図21は、天井梁の中間部分における取付け構造を示す平面図及び側面図である。
図22は、天井梁の中間部分における取付け構造を示す平面図及び正面図である。
図23は、天井梁の四隅における取付け構造を示す平面図及び正面図である。
図24は、床部材の四隅に設置される角柱を床面に固定するための構造の詳細を示す平面図である。
図25は、角柱を床面に固定するための構造の詳細を示す部分立面図である。
【0058】
耐震シェルター10の壁面を構成する壁面ユニット20a、20b、20cは、角柱50A、50B、50C、50Dに固定されるとともに、隣り合う壁面の間でも固定される。すなわち、
図16に示されるように、隣り合う壁面20Bと壁面20Cを構成する壁面ユニットは、角柱50Bに対して、六角穴付ボルト53及び六角ボルト54で締め付け固定される。そして、壁面20Bと壁面20C同士も、L型金具(大)56Aを介して、六角穴付ボルト53で締め付け固定される。このように強固な取付け構造を採用することによって、地震発生時の、特に横方向(水平方向)の強い揺れに対する耐震性が向上する。
【0059】
図17の部分縦断面図に示されるように、出入口ドア62は、ドア用合板65にドア用ケイカル板66を貼り合わせた構造を有する。出入口ドア62の上方には、ドア上部梁材73が壁面20Cにネジ止め固定されている。また、
図18の部分横断面図に示されるように、出入口ドア62の両脇には一対のドア支柱71が立設されている。出入口ドア62を壁面20Cに固定せず、ドア支柱71とともに壁面20Cの外部に設置したのは、地震によって壁面20Cが歪んだ場合に、出入口ドア62が開閉不能になるのを防ぐためである。
【0060】
したがって、ドア支柱71及びドア上部梁材73はアルミニウム製の角パイプ部材であるが、高強度は要求されず、逆に地震の衝撃で出入口ドア62から外れてしまう方が好ましいことから、アルミニウム型材A6063-T5からなる角パイプが用いられている。出入口ドア62は、一方のドア支柱71にドア蝶番72によって回動自在に取り付けられている。出入口ドア62は、上下一対のドア取手63A、及び図示されないドア取手63Bを備えている。
【0061】
出入口ドア62の内側においては、ドア取手63Aの把持する部分の反対側は取手先端部64となっている。また、壁面20Cの内側には、取手先端係合部74が設けられている。さらに、壁面20Cの外側には、出入口ドア62の外周部に沿って耐熱性弾性材からなるシール部76が敷設されている。耐熱性弾性材としては、例えば、ネオプレンゴムを用いることができる。耐震シェルター10の内部からドア取手63Aを把持して出入口ドア62を閉め、ドア取手63Aを回動させて取手先端部64を取手先端係合部74に嵌め込むことにより、出入口ドア62が内側から施錠される。
【0062】
同時に、出入口ドア62の外周部が、壁面20Cの外側に敷設されたシール部76に密着して、耐震シェルター10の内部が密閉空間となる。これによって、大きな地震により家屋内で火災が発生した場合でも、耐震シェルター10は、壁面20C、出入口ドア62等の外周全てがケイカル板25、66等で覆われているため、延焼を免れられる。また、耐熱性弾性ゴムからなるシール部76を有することにより、火災に伴って発生する有毒ガスが耐震シェルター10の内部へ侵入するのを防ぐことができる。
【0063】
図19及び
図20は、耐震シェルターの天井梁の取付け構造を示す部分断面図であり、
図19は平面図及び正面図、
図20は側面図である。
図19に示されるように、耐震シェルター10の壁面を構成する梁材55に、天井梁を構成する梁材55が取り付けられる。具体的には、
図19に示されるように、梁材55の先端部の両側に一対のL型金具(大)56Aが複数本の六角穴付ボルト53で固定され、一対のL型金具(大)56Aは、それぞれ複数本の六角穴付ボルト53で壁面20に固定される。
【0064】
また、
図20の側面図に示されるように、耐震シェルター10の壁面20を構成する梁材55は、耐震シェルター10の天井30を構成する天井ユニット31に対して、六角穴付ボルト53で固定される。前述したように、天井ユニット枠に構造用合板35とケイカル板36が取り付けられて、天井ユニット31が形成されている。さらに、梁材55の下面にもL型金具(大)56Aが六角穴付ボルト53で固定されており、このL型金具(大)56Aは壁面20に六角穴付ボルト53で固定されている。このように、複数の方向から梁材55が締め付け固定されることによって、地震による大きな揺れに対しても撓むことのない、極めて強固な枠組みが構成されている。
【0065】
図21は、天井梁の中間部分における取付け構造を示す平面図及び側面図である。
図22は、天井梁の中間部分における取付け構造を示す平面図及び立面図である。
図21及び
図22に示されるように、耐震シェルター10の天井梁(梁材55)の中間部分においては、四方から4個のL型金具(中)56B及びL型金具(小)56Cが、複数本の六角穴付ボルト53で締め付け固定されている。また、
図22の立面図に示されるように、梁材55の中間部分においては、天井ユニット31と接する部分に硬質ゴム板33が挟み込まれている。
【0066】
図23は、天井梁と角柱との取付け構造の断面を示す平面図及び立面図である。
図23に示されるように、耐震シェルター10の隣り合う壁面20を構成する梁材55同士が接合される。具体的には、隣り合う壁面20の梁材55の先端が、角柱50内の中空部側から複数本の六角穴付ボルト53及び六角ボルト54で角柱50に固定されている。そして、L型金具(大)56Aが隣り合う壁面20の梁材55の双方に複数本の六角穴付ボルト53で締め付け固定されることによって、隣り合う壁面20が強固に接合される。
【0067】
図24は床部材の四隅に設置される角柱を床面に固定するための構造を示す平面図、
図25は立面図である。
図24の全体平面図に示されるように、耐震シェルター10の四隅には角柱50A、50B、50C、50Dが立設されるが、具体的な手順を説明する。角柱50Cを例に取ると、
図24の拡大図及び
図25に示されるように、まず床面に角柱受け51が4本の六角フランジタッピングねじで締め付け固定される。この角柱受け51に、角柱50Cが上から嵌め込まれ、角柱受け51の両側面から皿ビス58aと丸頭ビス58bで固定される。このようにして、角柱50Cが床面に強固に固定され、立設される。
【0068】
次に、本実施例に係る耐震シェルター10の設置方法について、
図26を参照して説明する。
図26は、本発明の実施例に係る耐震シェルター10の設置の手順を示すフローチャートである。
【0069】
既設の建物H1の部屋R1に耐震シェルター10を設置する手順としては、耐震シェルター10の設置開始時には(ステップS10)、まず部屋R1の床下構造(
図27で説明する構造)を調査する。調査の結果によっては、床下構造の一部の改修工事が必要になる場合もある。床下の強度に問題がなければ、部屋R1内に床部材40を搬入し、床面に第一の床部材(構造用合板)41を敷設する(ステップS11)。次に、部屋R1内に4本の角柱50を搬入し、床部材40の四隅に角柱受け51を各4本の六角フランジタッピングねじ52で固定し、角柱受け51に角柱50を固定して立設する(ステップS12)。
【0070】
続いて、4枚の壁面ユニット20を搬入し、部屋R1の壁面に沿って各一対の角柱50の間に、1枚又は複数枚の壁面ユニット20を嵌め込んで固定する(ステップS13)。さらに、部屋R1内に第二の床部材43を搬入し、最初に敷設した第一の床部材41の、4枚の壁面ユニット20で囲まれた表面上に、第二の床部材41を敷設する(ステップS14)。
【0071】
続いて、部屋R1内に天井ユニット31を6枚搬入し、4面の壁面20及び4本の角柱50の上に、6枚の天井ユニット31を載置する(ステップS15)。そして、4面の壁面20及び4本の角柱50の上で6枚の天井ユニット31を組み合わせて固定する(ステップS16)。さらに、開口部を有する壁面20Cに、出入口ドア62を、開口部の左右に備えられている一対のドア支柱71にドア蝶番72で取り付ける(ステップS17)。以上の手順によって耐震シェルター10の設置が完了する(ステップS20)。
【0072】
このように、本実施例に係る耐震シェルター10は、その設置工程において、壁面ユニット20、天井ユニット31、第一の床部材41、第二の床部材43及び角柱50は、溶接によって接合されるのではなく、ボルト等のネジ部材で互いに固定される。これによって、溶接機を搬入する手間も溶接の技術も必要がなく、工事業者ではない一般人でも組み立てが可能となる。また、設置工程の自由度が増加するという効果も得られる。
【0073】
これらの壁面ユニット20を構成する壁面ユニット枠21a、21b、21c、天井ユニット31を構成する天井ユニット枠32、及び角柱50A、50B、50C、50Dは、いずれもアルミニウム合金からなるので、重量が軽く、搬入、据え付け、組み立て、ネジ部材による固定等の作業を、人手によって行うことができる。そのため、クレーンやジャッキ等の重機を必要としないので、容易に、かつ短期間で設置工事を行うことができる。
【0074】
また、壁面ユニット20、天井ユニット31、第一の床部材41、第二の床部材43は、予め工場において組み立てられた製品として搬入されるので、現場における工事期間の短縮を図ることができる。さらに、壁面ユニット20、天井ユニット31、第一の床部材41、第二の床部材43、及び角柱50A、50B、50C、50Dの材質及び寸法等をそれぞれ規格化しておくことによって、量産が可能になり、コストダウンを図ることができる。
【0075】
このようにして設置された耐震シェルター10は、木造家屋等の既設の家屋H1の部屋R1の内部に優れた耐震強度を備えた安全空間を構成する。さらに、耐震シェルター10の主要な構成部材である壁面ユニット20、天井ユニット31、第一の床部材41、第二の床部材43、及び角柱50は、いずれも最小限の厚さに構成されているため、部屋R1の内部の空間はほとんど狭くならない。これによって、耐震シェルター10の内部を快適な居住空間とすることができる。
【0076】
建築構造用アルミニウム合金製の壁面ユニット枠21a、21b、21cと構造用合板25からなる壁面ユニット20a、20b、20cは高強度を有し、耐震シェルター10の側面はかかる4枚の壁面ユニット20で囲まれている。また、建築構造用アルミニウム合金製の天井ユニット枠に構造用合板35が嵌め込まれた天井ユニット31と、構造用合板45からなる第一の床部材41及び第二の床部材43とが、4枚の壁面ユニット20に連結されている。そして、4枚の壁面ユニット20は4本の角柱の間に挟持されている。この結果、家屋H1自体が補強されるため、家屋H1全体の耐震強度も向上する。
【0077】
次に、既設の家屋H1内における部屋R1の各部の構造と、内部に設置される耐震シェルター10の構造との関係について、
図27から
図30までを参照して説明する。
図27は、耐震シェルターが設置される部屋の床面及び床下の構造を示す平面図である。
図28は、既設の家屋及び部屋の壁面とその内部に設置された耐震シェルターの角柱及び壁面を示す平面図である。
図29は、既設の家屋及び部屋の天井部分と床面及び床下部分の構造とその内部に設置された耐震シェルターとを示す立面図である。
図30は、既設の部屋の各部に対する耐震シェルターの位置関係を示す部分縦断面図及び部分横断面図である。
【0078】
図27の平面図に示されるように、既設の家屋H1内の部屋R1は押入れR20を有し、部屋R1の出入口側は廊下H10に面している。
図1の場合と異なり、
図27の部屋R1は四畳半で、耐震シェルターと同じく略正方形の平面形状を有する。そして部屋R1の床面は、束石R11、大引R12、火打土台R13、根太R14、根太掛けR15、等の部材からなる床下構造で支えられている。束石R11は部屋R1の基盤に固定され、束石R11の上に大引R12、火打土台R13、根太R14、根太掛けR15が組み立てられ、一体となって部屋R1の床面を支持している。なお、
図27は和室の場合を示しているが、勿論、本実施例に係る耐震シェルターは洋室に設置することもできる。
【0079】
部屋R1の床上を表す
図28の平面図に示されるように、このような構造を有する床面の上に耐震シェルター10が構築される。耐震シェルター10の壁面20A、20B、20C、20Dは、既設の部屋R1の壁面R30a、R30b、R30c、R30dの内側に隙間を空けて設置される。なお、耐震シェルター10の出入口60に出入口ドア62が取り付けられるのに伴い、既設の部屋R1の木製引戸R31は撤去される。
【0080】
さらに
図29の立面図に示されるように、家屋H1及び部屋R1の天井部分は、家屋H1の屋根部分から吊下げられる吊木R19と、吊木R19の下端に固定される野縁R18、天井板R17等で構成されている。また、部屋R1は、床下構造部材として、前述した束石R11、大引R12、火打土台R13、根太R14、根太掛けR15に加えて、床束R3、根がらみR4、取替根太R5を備えている。床部材として構造用合板45及びケイカル板46を有する耐震シェルター10は、複数箇所で構造用合板45が木ビス57で取替根太R5に取付けられることによって、部屋R1の床面に固定される。
【0081】
図30の部分縦断面図及び部分横断面図は、既設の部屋R1の構成の一部と、そこに設置された耐震シェルター10の構造とを比較して示したものである。既存の天井板の下端R17aと出入口ドアの上端62aとの位置関係、部屋の壁面R30cと出入口60に取付けられる出入口ドア62との位置関係が示されている。
【0082】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例において示した各構成部材以外にも、形状や寸法の異なる種々の構成部材を用いることができる。例えば、壁面ユニット、天井ユニット、床部材、及び壁面ユニット枠、天井ユニット枠の形状、寸法、構造についても、上述したものに限定されず、種々の変更が可能である。その他の耐震シェルターの各部の構成、構造、形状、寸法、個数、配置、材質等についても、本発明の主旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【0083】
すなわち、上述した各実施の形態及び実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。