(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046741
(43)【公開日】2024-04-04
(54)【発明の名称】高結晶性のチタン酸バリウム膜、その調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
C23C 14/08 20060101AFI20240328BHJP
C23C 14/35 20060101ALI20240328BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C23C14/08 E
C23C14/35
H01L21/316 X
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138869
(22)【出願日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】202211164144.1
(32)【優先日】2022-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523329219
【氏名又は名称】洛瑪瑞芯片技術常州有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523329220
【氏名又は名称】ロマレ テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【弁理士】
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】▲ユ▼鳳至
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ ポウル ミハイ
(72)【発明者】
【氏名】鄒斌
(72)【発明者】
【氏名】孫旭東
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ゼマン
(72)【発明者】
【氏名】カピルデブ ドルイ
【テーマコード(参考)】
4K029
5F058
【Fターム(参考)】
4K029AA04
4K029AA06
4K029AA07
4K029BA02
4K029BA04
4K029BA05
4K029BA08
4K029BA12
4K029BA13
4K029BA15
4K029BA16
4K029BA17
4K029BA43
4K029BA58
4K029BB09
4K029BD01
4K029CA06
4K029DC39
5F058BB05
5F058BC03
5F058BF37
5F058BH16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】材料及び電子素子の技術分野に関し、高結晶性のチタン酸バリウム(BTO)膜、その調製方法及び応用を提供する。
【解決手段】当該膜は、基材とBTO層と頂部電極層とを備え、BTO層は、基材に置かれ、頂部電極層は基材に対してBTO層の背向に置かれ;基材は、シリコン板、サファイア、(001)又は(110)結晶方位を有する酸化マグネシウム又は(0001)結晶方位を有する炭化ケイ素であり;BTO層は、(001)又は(111)結晶方位を有し、原子層堆積により450℃以下の低温で結晶成長を行い;BTO層は真空下でプラズマ焼鈍を行い;BTO層中のBa/Ti比は0.9~1.5であり;頂部電極層は、Pt白金、Taタンタル、TaN、TiN、Au又はAg銀から形成された導電層である。本発明は、既存の結晶性BTO膜の方法が生産ラインの後端における統合プロセスに適しないという問題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とチタン酸バリウム層と頂部電極層とを備え、
前記チタン酸バリウム層は、前記基材に置かれ、前記頂部電極層は前記基材に対して前記チタン酸バリウム層の背向に置かれ;
前記基材は、シリコン板、サファイア、(001)又は(110)結晶方位を有する酸化マグネシウム又は(0001)結晶方位を有する炭化ケイ素であり;
前記チタン酸バリウム層は、(001)又は(111)結晶方位を有し、原子層堆積により450℃以下の低温で結晶成長を行い;
前記チタン酸バリウム層は真空下でプラズマ焼鈍を行い;前記チタン酸バリウム層中のBa/Ti比は0.9~1.5であり;
前記頂部電極層は、Pt白金、Taタンタル、TaN、TiN、Au又はAg銀から形成された導電層である、
ことを特徴とする高結晶性のチタン酸バリウム膜。
【請求項2】
前記基材と前記チタン酸バリウム層との間には底部電極層が設けられ;
前記底部電極層は、(001)及び(111)結晶方位又は混晶方位を有するPt層、Au層、Ag層、導電性酸化物層、金属窒化物層又は金属合金層である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高結晶性のチタン酸バリウム膜。
【請求項3】
前記チタン酸バリウム層と前記頂部電極層の間には金属窒化物層又は金属合金層が設けられ;
前記金属窒化物層は、Mn3AN及び/又はCu3PdNであり、ここで、AはNi、Sn、Ga、Cu又はPtを含み;
前記金属合金層は、Cu3Pd、Pt3Ni、Pt3Fe又はPt3Alである
ことを特徴とする請求項1に記載の高結晶性のチタン酸バリウム膜。
【請求項4】
請求項1~3何れか一項に記載のチタン酸バリウム膜を調製するために用いられる高結晶性のチタン酸バリウム膜の調製方法であって、
S1:シリコン板、サファイア、(001)又は(110)結晶方位を有する酸化マグネシウム又は(0001)結晶方位を有する炭化ケイ素が基材として用いられることと;
S2:原子層堆積システムに基づいて、プラズマチャンバーの高真空環境においてプラズマで結晶成長方向に低温焼鈍処理を行い、(001)又は(111)結晶方位を有するチタン酸バリウム層を形成し、ここでチタン酸バリウム層中のBa/Ti比が0.9~1.5であることと;
S3:前記チタン酸バリウム層に頂部電極層を真空マグネトロンでスパッタすることを含む、
ことを特徴とする高結晶性のチタン酸バリウム膜の調製方法。
【請求項5】
S2の前には、前記基材に底部電極層を超高真空マグネトロンでスパッタし、前記底部電極層が(001)及び(111)結晶方位又は混晶方位を有するPt層、Au層、Ag層、導電性酸化物層、金属窒化物層又は金属合金層である工程を更に含む
ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
S2におけるプラズマチャンバーのバックグラウンド真空度は10-7Torr未満であり、ガス源は不活性ガスと酸素の混合ガスであり、不活性ガスと酸素の比率は1:19~4:1である、
ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項7】
S2におけるラズマ焼鈍は、温度が300~450℃に設定され、出力が200~400Wに設定され、焼鈍時間が1~6Hに設定される、
ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項8】
S3において頂部電極層をスパッタする工程の前には、前記チタン酸バリウム層に金属窒化物層又は金属合金層を真空マグネトロンでスパッタし;
前記金属窒化物層又は金属合金層の厚さが10~50nmである工程を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項9】
前記底部電極層は、厚さが10~50nmであり、粗さが1nm未満であり;
前記チタン酸バリウム層の厚さは1~10nmである、
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項10】
強誘電体素子、強誘電体トンネル接合、エネルギー貯蔵素子、磁気トンネル接合、メモリ素子又は超コンデンサにおける、請求項4~9何れか一項に記載の調製方法により得られるチタン酸バリウム膜の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料及び電子素子の技術分野に関し、特に高結晶性のチタン酸バリウム膜、その調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不揮発性のメモリ素子は既に広く研究された。埋め込みができるCMOS回路を持つ低電力消費のメモリ素子は、産業的・学術的価値が高い。
【0003】
不揮発性のメモリ素子は、フラッシュメモリや磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)や抵抗型Rや強誘電体RAM(FeRAM)や相変化RAM(PCRAM)等を含む。それらはすべて長所と短所を有するが、最も有望な不揮発性のメモリ技術と低電力消費の作動は強誘電体層に頼る。そのような電子素子においては、2進法の「0」と「1」が強誘電体層における2つの異なる安定した分極によって表される。埋め込み環境でこのような電子素子を使う場合の主な制限は、高温焼鈍(>600℃)に頼って高品質の強誘電体層を得ることである。
【0004】
チタン酸バリウム(BaTiO3、BTO)は、よく知られている強誘電体材料として、それの大きな誘電率、適度なの保磁力場及び室温よりも高い強誘電体相変化温度により、多くの電子素子の応用で広く研究されている。従って、BTOは、とても重要且つ好適な材料として、DRAMからFeRAM及びFE-FETまでの様々なメモリ素子の誘電体層として使用いられる。
【0005】
結晶性BTO膜は、非晶質膜よりも優れた特性を持っている。結晶性BTO膜を得る方法の一つは、エピタキシャル成長法(MBE)/パルスレーザー蒸着(PLD)/マグネトロンスパッタリングの様な物理蒸着法を介して600~700℃以上の高温で結晶成長を行う。成長後高温で熱アニーリングを行うのも有効的な方法であるが、生産ラインの後端(BEOL)における統合プロセスに適しない。
【0006】
近年、原子層堆積(ALD)法は、それの低い成長温度、高い均一性、精密な化学計測管理、均一な階段及び3D被覆率により登場して高いアスペクト比の応用に適する。通常、ALD堆積により成長したBTO膜は、依然として非晶質膜である。そのため、生産ラインの後端(BEOL)における統合プロセスに適するように低温で高結晶性のBTO膜を得る方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記技術的欠陥を克服するために、高結晶性のチタン酸バリウム膜、その調製方法及び応用を提供することで既存の結晶性BTO膜の方法が生産ラインの後端(BEOL)における統合プロセスに適しないという問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基材とチタン酸バリウム層と頂部電極層とを備え、
前記チタン酸バリウム層は、前記基材に置かれ、前記頂部電極層は前記基材に対して前記チタン酸バリウム層の背向に置かれ;
前記基材は、シリコン板、サファイア、(001)又は(110)結晶方位を有する酸化マグネシウム又は(0001)結晶方位を有する炭化ケイ素であり;
前記チタン酸バリウム層は、(001)又は(111)結晶方位を有し、原子層堆積により450℃以下の低温で結晶成長を行い;
前記チタン酸バリウム層は真空下でプラズマ焼鈍を行い;前記チタン酸バリウム層中のBa/Ti比は0.9~1.5であり;
前記頂部電極層は、Pt白金、Taタンタル、TaN、TiN、Au又はAg銀から形成された導電層である
高結晶性のチタン酸バリウム膜と本発明は公開する。
【0009】
好ましくは、前記基材と前記チタン酸バリウム層との間には底部電極層が設けられ;
前記底部電極層は、(001)及び(111)結晶方位又は混晶方位を有するPt層、Au層、Ag層、導電性酸化物層、金属窒化物層又は金属合金層である。
好ましくは、前記チタン酸バリウム層と前記頂部電極層の間には金属窒化物層又は金属合金層が設けられ;
前記金属窒化物層は、Mn3AN及び/又はCu3PdNであり、ここで、AはNi、Sn、Ga、Cu又はPtを含み;
前記金属合金層は、Cu3Pd、Pt3Ni、Pt3Fe又はPt3Alである。
【0010】
前記何れか一項に記載のチタン酸バリウム膜を調製するために用いられる高結晶性のチタン酸バリウム膜の調製方法を、本発明は、また提供する:
S1:シリコン板、サファイア、(001)又は(110)結晶方位を有する酸化マグネシウム又は(0001)結晶方位を有する炭化ケイ素が基材として用いられることと;
S2:原子層堆積システムに基づいて、プラズマチャンバーの高真空環境においてプラズマで結晶成長方向に低温焼鈍処理を行い、(001)又は(111)結晶方位を有するチタン酸バリウム層を形成し、ここでチタン酸バリウム層中のBa/Ti比が0.9~1.5であることと;
S3:前記チタン酸バリウム層に頂部電極層を真空マグネトロンでスパッタすることを含む。
【0011】
好ましくは、S2の前には、前記基材に底部電極層を超高真空マグネトロンでスパッタし、前記底部電極層が(001)及び(111)結晶方位又は混晶方位を有するPt層、Au層、Ag層、導電性酸化物層、金属窒化物層又は金属合金層である工程を更に含む。
【0012】
好ましくは、S2におけるプラズマチャンバーのバックグラウンド真空度は10-7Torr未満であり、ガス源は不活性ガスと酸素の混合ガスであり、不活性ガスと酸素の比率は1:19~4:1である。
【0013】
好ましくは、S2におけるラズマ焼鈍は、温度が300~450℃に設定され、出力が200~400Wに設定され、焼鈍時間が1~6Hに設定される。
【0014】
好ましくは、前記底部電極層は、厚さが10~50nmであり、粗さが1nm未満であり;
前記チタン酸バリウム層の厚さは1~10nmである。
【0015】
好ましくは、S3において頂部電極層をスパッタする工程の前には、前記チタン酸バリウム層に金属窒化物層又は金属合金層を真空マグネトロンでスパッタし;
前記金属窒化物層又は金属合金層の厚さが10~50nmである工程を含む。
【0016】
強誘電体素子、強誘電体トンネル接合、エネルギー貯蔵素子、磁気トンネル接合、メモリ素子又は超コンデンサにおける、前項0006~0011の何れか一項に記載の調製方法により得られるチタン酸バリウム膜の応用を、本発明は、また、提供する。
【発明の効果】
【0017】
上記の技術的解決策を採用した後には、既存の技術に比べて次のような有益な効果がある。
本発明によって提供される高結晶性のチタン酸バリウム膜の調製方法及び応用は、基材と、任意の底部電極層と、チタン酸バリウム層と、任意の金属窒化物層又は金属合金層と、頂部電極層とを含む。チタン酸バリウム結晶膜は、原子層堆積により、低温で直接的なプラズマ焼鈍を通して結晶化し、低温での高結晶性のチタン酸バリウム層を形成する。調製プロセスは、全て高真空下で行われ、既存の結晶性BTO膜の方法が生産ラインの後端(BEOL)における統合プロセスに適しないという問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明による高結晶性のチタン酸バリウム膜、その調製方法及び応用の実施例1の構造概略図である。
【
図2】
図2は、本発明による高結晶性のチタン酸バリウム膜、その調製方法及び応用の実施例2のフロー図である。
【
図3】
図3は、本発明による高結晶性のチタン酸バリウム膜、その調製方法及び応用の実施例2におけるプラズマチャンバーの構造概略図である。
【
図4】
図4は、本発明による高結晶性のチタン酸バリウム膜、その調製方法及び応用の実施例2の調製方法により得られた、
図1(c)の結構を有するチタン酸バリウム膜のXRD図である。
【
図5】
図5は、本発明による高結晶性のチタン酸バリウム膜、その調製方法及び応用の実施例2の調製方法により得られたチタン酸バリウム膜のXPS図である。
【
図6】
図6は、本発明による高結晶性のチタン酸バリウム膜、その調製方法及び応用の実施例2の調製方法により得られた、厚さの異なるチタン酸バリウム膜のTEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の利点は、次に図面及び実施例と相まって更に説明される。
本明細書は、例示的な実施例を詳細に説明し、その例を図面に示す。下記記述が図面に言及している場合、様々な図面における同じ番号は、特に明記しない限り、同じ又は類似の要素を指す。下記例示的な例で説明された実施形態は、本開示と一致するすべての実施形態を表すわけではない。それらは、請求項に記載されているように、本開示の若干態様と一致する装置及び方法の単なる例である。
【0020】
本開示で用いられる用語は、特定の実施例に対する説明のみを目的としており、本開示を限定することを意図するものではない。本開示及び請求項で用いられる単数形「前記」及び「当該」は、文脈が明確に別のことを示さない限り、複数形も含めることを意図している。本明細書で用いられた「及び/又は」という用語は、1つ又は複数の関連する所与項目の何れか、又は可能な全部の組み合わせを含めることを理解されるべきである。
本開示は第一、第二、第三などの用語で様々な情報を記述する可能性があるが、これらの情報がこれらの用語を限定しないことを理解されるべきである。これらの用語は、同じ種類の情報を互いに区別するためにのみ用いられる。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第一情報は、第二情報とも呼ばれ、同様に第二情報は第一情報と呼ばれる可能性がある。文脈に応じて、本明細書で用いられた「場合」という単語は、「時」又は「際」又は「に応じて」と解釈することができる。
【0021】
本発明の説明においては、「縦向」、「横向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」、「内側」、「外側」などの用語で示された方向又は位置が、図面の示例に基づくことを理解されるべきである。これらの用語は、本発明を説明し、記述を簡略化するためにのみ、指定装置又は要素が特定の方向を有し、特定の方向で構成し、作動することを示されないか、暗示しないため、本発明の限定として解釈されるべきではない。
【0022】
本発明の説明においては、他に限定されない限り、「取り付け」、「接続」及び「連なる」という用語は、広義に解釈されるべきであることを注意する必要がある。例えば、それは、機械的接続又は電気的接続であり、又は2つの要素間の内部接続であり、又は直接接続であり、又は中間媒体を介して間接接続である可能性がある。当業者にとって、上記の用語の特定意味は、具体的な状況に応じて理解されることができる。
【0023】
下記内容は、本発明を記述し易くなるように、要素を表すための「モジュール」、「部材」、又は「ユニット」などの接尾語を用い、それ自体に特定の意味がない。従って、「モジュール」と「部材」は混用される可能性がある。
【0024】
実施例1
本実施例は、高結晶性のチタン酸バリウム膜を開示するが、
図1に示されたように、
図1(a)において金属窒化物層又は金属合金層を設けず、当該チタン酸バリウム膜は、底層(基材)と底部電極層とチタン酸バリウム層(チタン酸バリウム結晶膜、BTO)と頂部電極層とを備える。
図1(b)において底部電極層にも金属窒化物層又は金属合金層にも設けず、当該チタン酸バリウム膜は、底層とチタン酸バリウム層(チタン酸バリウム結晶膜、BTO)と頂部電極層とを備える。
図1(c)において、当該チタン酸バリウム膜は、底層と底部電極層とチタン酸バリウム層(チタン酸バリウム結晶膜、BTO)と金属窒化物層又は金属合金層と頂部電極層とを備える。
図1(c)において、底部電極層を設けていないが、金属窒化物層及び/又は金属合金層を設けられており、当該チタン酸バリウム膜は、底層とチタン酸バリウム層(チタン酸バリウム結晶膜、BTO)と金属窒化物層及び/又は金属合金層と頂部電極層とを備える。
【0025】
具体的には、
図1(b)に基づいて、前記チタン酸バリウム層は基材(即ち底層)に置かれ、前記頂部電極層は基材に対してチタン酸バリウム層の背向に置かれる。前記基材は、シリコン板、サファイア、(001)又は(110)結晶方位を有する酸化マグネシウム又は(0001)結晶方位を有する炭化ケイ素である。チタン酸バリウム層は、(001)又は(111)結晶方位を有し、原子層堆積により低温(<450℃)で結晶成長を行う。チタン酸バリウム層中のBa/Ti比は0.9~1.5である。頂部電極層は、Pt白金、Taタンタル、TaN窒化タンタル、TiN窒化チタン、Au金、Ag銀又は他の高導電性の導電層を含む。
【0026】
補足説明としては、前記チタン酸バリウム層は、原子層堆積により低温(<450℃)で結晶成長を行い、BTO結晶成長後に真空チャンバー内で直接的なプラズマ焼鈍を通して結晶化する。調製プロセスは、全て高真空下で行われる。基板及び頂部電極を除いて、次の他の材料(後述の底部電極層又は金属窒化物や金属合金等)は、同様の格子定数を有し、層中のBa/Ti比の具体的な値は、X線光電子分光法(XPS)によって測定できる。
【0027】
本実施例で、チタン酸バリウム(BTO)は、原子層堆積(ALD)により付着し、低温で直接的なプラズマ焼鈍を通して結晶化する。この方法により450℃で得られた高結晶性の強誘電体BTO層は、超コンデンサやメモリ素子や電界効果トランジスタやMEMS等の分野で広く用いられる。この方法は、プロセス温度が比較的低いため、CMOSプロセスと適合する。
【0028】
具体的には、
図1(a)又は(c)に示されたように、前記基材と前記チタン酸バリウム層との間には底部電極層が設けられる。前記底部電極層は、(001)及び(111)結晶方位又は混晶方位を有するPt層、Au層、Ag層、導電性酸化物層、金属窒化物層又は金属合金層である。
【0029】
具体的には、
図1(c)又は(d)に示されたように、前記チタン酸バリウム層と前記頂部電極層の間には金属窒化物層又は金属合金層が設けられる。前記金属窒化物層は、Mn
3AN及び/又はCu
3PdNであり、ここで、AはNi、Sn、Ga、Cu又はPtを含む。前記金属合金層は、Cu
3Pd、Pt
3Ni、Pt
3Fe又はPt
3Alである。層の最上部には、チタン酸バリウム層と上部電極層との間に金属窒化物層及び/又は金属合金層が設けられ、且つ1つの金属電極積み重ね層又は1つの金属電極(即ち、前記頂部電極)しか設けられない。次に、完全な構造は、トンネル接合素子又はコンデンサ素子を形成し、超コンデンサやメモリ素子や電界効果トランジスタやトンネル接合や磁気電気結合デ素子や切り替え可能な太陽光発電や強誘電体部品等の分野で適用される。
【0030】
実施例2
図2に示されたように、本発明により前記実施例1において提供されたチタン酸バリウム膜を調製するために用いられる高結晶性のチタン酸バリウム膜の調製方法は、次のステップ(S1、S2及びS3)を含む。
【0031】
S1:シリコン板、サファイア、(001)又は(110)結晶方位を有する酸化マグネシウム又は(0001)結晶方位を有する炭化ケイ素が基材(又は底層)として用いられる。
S2:原子層堆積システムに基づいて、プラズマチャンバーの高真空環境においてプラズマで結晶成長方向に低温焼鈍処理を行い、(001)又は(111)結晶方位を有するチタン酸バリウム層を形成し、ここでチタン酸バリウム層中のBa/Ti比が0.9~1.5である。
【0032】
上記工程において、(001)又は(111)結晶方位を有するBTO膜は、プラズマ増強ALDシステムを通してプラズマチャンバー(
図3をご参照ください、即ち焼鈍処理室)に成膜し、ここで0.9≦x≦1.5(xはBTO膜中のBa/Ti比を表す)がある。普通のBTOの場合、比率xは1に等しくなる。
図5に示された光電子分光法(XPS)図は、3種のBTO膜の様々なBa/Ti比を示す。上記S2のBTO結晶成長工程においては、Ba-O及びTi-Oの循環比を調整して比率を変える。BTO層は、結晶成長後、真空を破壊することなく正常な方向に直接的にプラズマ焼鈍処理を行うことにより、低温で高結晶性のチタン酸バリウム層を得る。
【0033】
具体的には、S2におけるプラズマチャンバーのバックグラウンド真空度は10-7Torr未満であり、プラズマチャンバー内のガス源は、プラズマガス及び搬送ガスという2つの部分に分けられ、プラズマ源は、不活性ガスと酸素の混合物、好ましくはアルゴンである。搬送ガスはアルゴン(Ar)である。従って、ガス源はアルゴンと酸素の混合ガスであり得、アルゴンと酸素の比率は1:19~4:1である。
【0034】
解釈としては、結晶面積の割合が焼鈍出力の増加とともに大きくなる。出力がArイオンにエネルギーを供給し、局所的な焼鈍温度に寄与することは明らかである。し但し、一方では、高出力すぎるとBTO膜が損傷する可能性がある。所定の焼鈍温度、焼鈍時間、Ba/Ti比及びBTO厚さに対して、出力には制限が必要であり、焼鈍温度も重要な要素とする。従って、S2におけるラズマ焼鈍は、温度が300~450℃に設定され、出力が200~400Wに設定され、焼鈍時間が1~6Hに設定される。注意すべきであるのは、焼鈍出力は焼鈍温度に反比例する。様々な型番の設備は様々な出力範囲を有し得るが、本発明中の出力範囲は、本実施例をよりよく実行するためだけのものである。BTO層の結晶化度は、焼鈍時間の延長とともに高まる。
【0035】
上記S2において堆積によりチタン酸バリウム層を得る工程の前には、ステップA、即ち前記基材に底部電極層を超高真空マグネトロンでスパッタし、前記底部電極層が(001)及び(111)結晶方位又は混晶方位を有するPt層、Au層、Ag層、導電性酸化物層、金属窒化物層又は金属合金層である工程を含む可能性がある。底部電極層を超高真空マグネトロンでスパッタする前記工程の前には、アセトン、イソプロパノール及び脱イオン水を用いて超音波浴中で基材を洗浄する工程も含む可能性があるか、それの前には、HF強酸又は反応性イオンでエッチングを行う前に基材を洗浄する。つまり、スパッタリングにより底部電極層を形成する前に基材を洗浄することによりは、基材上のほこりによって起きられた底部電極層における気泡や凹凸を減少し、その後の半導体部品への適用に影響を与えるという問題を解決するようになる。
【0036】
本実施例において、底部電極層は、厚さが10~50nmであり、粗さが1nm未満である。前記チタン酸バリウム層の厚さは1~10nmである。説明としては、BTOの厚さが焼鈍によって形成された結晶面積に一定の影響を及ぼす。
図6に示されたように、
図6はBTOの焼鈍後に形成された厚さの異なるBTO膜のTEM(透過型電子顕微鏡)結果を示し、ここで
図6(a)におけるBTOの厚さは3.2nmであり、
図6(b)におけるBTOの厚さは8~9nmである。それから見ると、結晶化したBTO層は上記調製方法により得られる。
【0037】
S3:前記チタン酸バリウム層に頂部電極層を真空マグネトロンでスパッタする。
具体的に、上記S3において頂部電極層を真空マグネトロンでスパッタする工程の前には、ステップB、即ち前記チタン酸バリウム層に金属窒化物層又は金属合金層を真空マグネトロンでスパッタし、前記金属窒化物層又は金属合金層の厚さが10~50nmである工程を含む可能性がある。
【0038】
本実施例では、スパッタリングシステムのバックグラウンド真空度が10-7Torr未満である。
【0039】
更なる説明としては、X線回折計において素子サンプルのX線回折(XRD)θ-2θ走査を測定する。XRDの結果は、
図4に示されており、ここで使われたサンプル(薄膜)は、
図1(c)に示すような構造を有する。強いピークは具体的に(002)及び(004)に示され、他のピークはない。これによりは、高結晶性のチタン酸バリウム層の形成を確定し、X線光電子分光法でBTO膜中の組成を測定する。
【0040】
実施例3
本発明は、強誘電体素子、強誘電体トンネル接合、エネルギー貯蔵素子、磁気トンネル接合、メモリ素子又は超コンデンサにおける、上記調製方法により得られたチタン酸バリウム膜の応用を提供する。具体的には、チタン酸バリウム膜を含む素子は、強誘電体素子、強誘電体トンネル接合、エネルギー貯蔵素子、磁気トンネル接合、メモリ素子又は超コンデンサの一部として用いられる可能性がある。これにより、チタン酸バリウム膜から形成すされた素子は、超コンデンサやメモリ素子や電界効果トランジスタやトンネル接合や磁気電気結合デ素子や切り替え可能な太陽光発電や強誘電体部品等の分野で広く適用される。
【0041】
本発明の実施例が好ましい実用性を有し、いかなる形態においても本発明を限定するものではなく、当業者が上記に開示された技術的内容を介して当該実施例を同等の有効な実施例に修正する可能性があることを注意すべきであるが、本発明の技術的解決策の内容から逸脱することなく、本発明の技術的本質に従って上記実施例に対して行われた修正又は同等の変更及び修飾は、依然として本発明の技術的解決策の範囲内にある。