(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046743
(43)【公開日】2024-04-04
(54)【発明の名称】隣接する印刷ヘッドのマニホールド内に反対の方向のインク流を生成するように隣接する印刷ヘッドを配向することによって、画像品質を改善するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023145210
(22)【出願日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】17/934,723
(32)【優先日】2022-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン エイ.ステューリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ピー.マイヤーズ
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA28
2C056FA13
2C056HA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カラーインクジェットプリンタ内の印刷ヘッドモジュールは、隣接する印刷ヘッド間の縫目領域に噴射されるインク滴間の温度差を低減する。
【解決手段】カラーインクジェットプリンタは、インクジェットプリンタを通してプロセス方向において媒体を通過させる媒体搬送部と、媒体搬送部に対して取り付けられた少なくとも2つの印刷ヘッドであって、各印刷ヘッドが、印刷ヘッド内のマニホールドにインクを供給するように構成されたインク入口を有し、マニホールドが、印刷ヘッド内のノズルの少なくとも1つのアレイにインクを供給するように構成されており、インクは、マニホールドを通って流れ方向において流れ、少なくとも2つの印刷ヘッドは、隣接する印刷ヘッド内のインク入口を通って入るインクが、隣接する印刷ヘッドのマニホールド内の反対の流れ方向において流れるように配向されている、少なくとも2つの印刷ヘッドと、を含む。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
前記インクジェットプリンタを通してプロセス方向において媒体を通過させる媒体搬送部と、
前記媒体搬送部に対して取り付けられた少なくとも2つの印刷ヘッドであって、各印刷ヘッドが、前記印刷ヘッド内のマニホールドにインクを供給するように構成されたインク入口を有し、前記マニホールドが、前記印刷ヘッド内のノズルの少なくとも1つのアレイにインクを供給するように構成されており、前記インクは、前記マニホールドを通って流れ方向において流れ、前記少なくとも2つの印刷ヘッドは、隣接する印刷ヘッド内の前記インク入口を通って入るインクが、前記隣接する印刷ヘッドの前記マニホールド内の反対の流れ方向において流れるように配向されている、少なくとも2つの印刷ヘッドと、
を備える、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記少なくとも2つの印刷ヘッドにおける1つおきの印刷ヘッドは、隣接する印刷ヘッド内の前記インク入口を通って入るインクが、前記隣接する印刷ヘッドの前記マニホールド内の反対の流れ方向において流れるように配向されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記少なくとも2つの印刷ヘッドに動作可能に接続されたコントローラであって、前記コントローラが、インク画像コンテンツデータを使用して前記少なくとも2つの印刷ヘッドを動作させて、前記少なくとも2つの印刷ヘッドから噴射されたインク滴でインク画像を形成するように構成されている、コントローラ
を更に備える、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記コントローラが、
前記隣接する印刷ヘッド内のインクジェット位置の差を考慮するために、画像経路制御及び画像ベースの制御のうちの少なくとも1つを修正するように更に構成されている、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記コントローラが、前記媒体搬送部によって運ばれる媒体上の正しい位置において画素が印刷されることを確実にするために、隣接する印刷ヘッドの前記マニホールド内の前記流れ方向とは前記反対の方向である、前記マニホールド内の前記流れ方向を提供するように配向された印刷ヘッド内の新しいインクジェット位置を使用してインク画像コンテンツデータを処理することによって、画像経路制御を修正するように更に構成されている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記コントローラが、印刷ヘッドモジュール内のインクジェットによって噴射された前記インク滴を見当合わせするために、前記新しいインクジェット位置を使用することによって画像ベースの制御を修正するように更に構成されている、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記コントローラが、印刷中に前記新しいインクジェット位置を使用して動作不能なインクジェットの補償技法を実施することによって、画像ベースの制御を修正するように更に構成されている、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記少なくとも2つの印刷ヘッドが、第1の印刷ヘッドモジュールを形成するための3つの印刷ヘッドであり、前記3つの印刷ヘッドのうちの第1の印刷ヘッドが、クロスプロセス方向において前記3つの印刷ヘッドのうちの他の2つの印刷ヘッドの間に位置付けられ、前記第1の印刷ヘッドは、インクが前記他の2つの印刷ヘッドの前記マニホールド内を流れる方向とは反対の方向において、インクが前記第1の印刷ヘッドの前記マニホールド内を流れるように配向されている、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記第1の印刷ヘッドが、前記プロセス方向において前記他の2つの印刷ヘッドからオフセットされている、請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記第1の印刷ヘッドモジュール内の前記3つの印刷ヘッドは、前記3つの印刷ヘッドが前記クロスプロセス方向において画素の連続線を形成することができるように、前記クロスプロセス方向において位置合わせされている、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記媒体搬送部に対して取り付けられた少なくとも3つの印刷ヘッドを有する第2の印刷ヘッドモジュールであって、前記少なくとも3つの印刷ヘッドにおける各印刷ヘッドが、インク入口と、インクがインクジェットに流れるマニホールドと、を有し、前記第2の印刷ヘッドモジュールが、前記プロセス方向において前記第1の印刷ヘッドモジュールに続くように位置付けられている、第2の印刷ヘッドモジュールを
更に備える、請求項10に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記第2の印刷ヘッドモジュール内の前記少なくとも3つの印刷ヘッドが、前記プロセス方向において互いに対してずらされている、請求項11に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項13】
前記第2の印刷ヘッドモジュール内の前記少なくとも3つの印刷ヘッドは、前記少なくとも3つの印刷ヘッドが前記クロスプロセス方向において画素の連続線を形成することができるように、前記クロスプロセス方向において位置合わせされている、請求項11に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項14】
前記第2の印刷ヘッドモジュールの前記少なくとも3つの印刷ヘッドにおける1つおきの印刷ヘッドは、インクが前記第2の印刷ヘッドモジュール内の前記1つおきの印刷ヘッドのマニホールドを通る流れ方向において、前記1つおきの印刷ヘッドに隣接する各印刷ヘッドの前記マニホールド内をインクが流れる方向とは反対の方向において流れるように配向されている、請求項13に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項15】
前記第2の印刷ヘッドモジュールの前記印刷ヘッドが、前記クロスプロセス方向における隣接するインクジェット間の距離の2分の1だけ前記第1の印刷ヘッドモジュール内の前記印刷ヘッドから前記クロスプロセス方向においてオフセットされている、請求項14に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項16】
インクジェットプリンタに設置するための印刷ヘッドモジュールであって、
第1の印刷ヘッドと、
少なくとも第2の印刷ヘッドであって、各印刷ヘッドが、前記印刷ヘッド内のマニホールドにインクを供給するように構成されたインク入口を有し、前記マニホールドが、前記印刷ヘッド内のノズルの少なくとも1つのアレイにインクを供給するように構成されており、前記インクは、前記マニホールドを通って流れ方向において流れ、前記第1の印刷ヘッド及び前記少なくとも第2の印刷ヘッドは、隣接する印刷ヘッド内の前記インク入口を通って入るインクが、前記隣接する印刷ヘッドの前記マニホールド内の反対の流れ方向において流れるように配向されている、少なくとも第2の印刷ヘッドと、
を備える、印刷ヘッドモジュール。
【請求項17】
前記第1の印刷ヘッド及び前記少なくとも第2の印刷ヘッドにおける1つおきの印刷ヘッドは、隣接する印刷ヘッド内の前記インク入口を通って入るインクが、前記隣接する印刷ヘッドの前記マニホールド内の反対の流れ方向において流れるように配向されている、請求項16に記載の印刷ヘッドモジュール。
【請求項18】
前記第1の印刷ヘッド及び前記少なくとも第2の印刷ヘッドが、3つの印刷ヘッドであり、前記3つの印刷ヘッドが、前記3つの印刷ヘッドのうちの第1の印刷ヘッドを、クロスプロセス方向において前記3つの印刷ヘッドのうちの他の2つの印刷ヘッド間に位置付けるように構成されており、前記第1の印刷ヘッドは、前記第1の印刷ヘッドの前記マニホールドを通る前記インク流れ方向が前記他の2つの印刷ヘッドの前記マニホールドを通る前記インク流れ方向とは反対であるように配向されている、請求項17に記載の印刷ヘッドモジュール。
【請求項19】
前記第1の印刷ヘッドが、プロセス方向において前記他の2つの印刷ヘッドからオフセットされている、請求項18に記載の印刷ヘッドモジュール。
【請求項20】
前記3つの印刷ヘッドは、前記3つの印刷ヘッドが前記クロスプロセス方向において画素の連続線を形成することができるように、前記クロスプロセス方向において位置合わせされている、請求項19に記載の印刷ヘッドモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には媒体上にインク画像を生成するデバイスに関し、特にこのようなデバイスにおける印刷ヘッド内のインクの加熱に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタとしても知られるインクジェット画像化デバイスは、印刷ヘッドから液体インクを噴射して、画像を画像受容表面上に形成する。印刷ヘッドは、印刷ヘッドのフェースプレートにアレイ状に配置されたノズルを有する複数のインクジェットを含む。本明細書で使用するとき、「ノズルのアレイ」という用語は、印刷ヘッドのフェースプレートにおけるノズルのパターンを意味する。各印刷ヘッドは、マニホールドの一端でインク供給源に結合されたマニホールドを含む。インクがインク供給源に結合された端部からマニホールドの反対側の端部に流れ、そこでインクが印刷ヘッドを通って移動してインクジェットに供給されるときに、加熱器がマニホールドの長さにわたって延在してインクを加熱する。各インクジェットは、印刷ヘッドコントローラに結合された熱又は圧電アクチュエータを有する。印刷ヘッドコントローラは、印刷される画像に関するデジタルデータコンテンツに対応する発射信号を生成する。印刷ヘッド内のアクチュエータは、インクジェットのインクチャンバ内に膨張することによって発射信号に応答して、画像受容表面上にインク滴を噴射し、発射信号を生成するために使用されたデジタル画像コンテンツに対応するインク画像を形成する。画像受容表面は、通常、媒体材料の連続ウェブ又は一連の媒体シートである。
【0003】
色画像を生成するために使用されるインクジェットプリンタは、典型的には、複数の印刷ヘッドアセンブリを含む。各印刷ヘッドモジュールは、典型的には、単一色のインクを噴射する1つ以上の印刷ヘッドを含む。典型的なインクジェットカラープリンタでは、4つの印刷ヘッドモジュールが、プロセス方向において位置付けられ、各印刷ヘッドモジュールが、異なる色のインクを噴射する。最も頻繁に使用される4つのインク色は、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックである。そのようなプリンタの一般的な名前は、CMYKカラープリンタである。一部のCMYKプリンタは、各色のインクを印刷する2つの印刷ヘッドモジュールを有する。同じ色のインクを印刷する印刷ヘッドモジュールは、クロスプロセス方向において隣接する印刷ジェット間の距離の2分の1だけ互いにオフセットされており、2つのモジュールにある印刷ヘッドによって噴射されるインクの色のラインの、1インチ当たりの画素数を2倍にする。本明細書で使用するとき、「プロセス方向」という用語は、プリンタ内の印刷ヘッドを通過するときの画像受容表面の移動の方向を意味し、「クロスプロセス方向」という用語は、画像受容表面の平面内でプロセス方向に対して垂直な方向を意味する。
【0004】
カラーインクジェットプリンタの画像品質は、インクの化学的性質、印刷ヘッド技術、インク滴の近傍における熱、印刷プロセス設定点、空気流、並びにインクと媒体との拡散及び乾燥の相互作用などの多くの要因に依存する。画像品質を低下させる1つの問題は、印刷ヘッド内のインクジェットを使用して連続した画像における高インク被覆領域を印刷するときの、印刷ジョブ中の印刷ヘッド内のインクの温度勾配の発生である。この問題を
図3Aを参照して説明する。その図では、印刷ヘッドモジュールの3つの印刷ヘッドが、外側印刷ヘッド、中央印刷ヘッド、及び内側印刷ヘッドとして構成されている。各印刷ヘッドのマニホールドへの入口において、比較的冷たいインクが入り、インクがマニホールドを通って移動するにつれて、インクはマニホールドの反対側の端部において適切な動作温度まで加熱される。次に、加熱されたインクは、各インクジェットの印刷ヘッドを横切ってインクチャンバに流れる。多数のインクジェットを動作させてインクを噴射する場合、印刷ヘッド内のインクの需要が増大する。したがって、より多くのインクがマニホールドを通って引き込まれ、その結果、マニホールドを出るインクは、不均一に加熱される。この冷たいインクが印刷ヘッドを通過すると、マニホールド出口におけるインクとマニホールド出口から最も遠いインクジェットにおけるインクとの間に温度差が生じる。冷たいインクは、温かいインクよりも高い粘度を有し、その粘度差により、冷たいインクのより小さい液滴が噴射され、その結果、より小さい冷たいインク滴の領域は、温かいインク滴の領域よりも明るく見える。これら2つの領域の外観の違いは、印刷ヘッドの両端では検出できないが、隣接する印刷ヘッド間の縫目領域の境界では検出可能である。例えば、外側印刷ヘッドと中央印刷ヘッドとの間の縫目領域では、外側印刷ヘッドは、縫目領域において温かいインク滴を噴射するが、中央印刷ヘッドは、縫目領域において冷たいインクを噴射する。内側印刷ヘッドと中央印刷ヘッドとの間の縫目領域では、内側印刷ヘッドは、縫目領域において冷たいインクを噴射するが、中央印刷ヘッドは、縫目領域において温かいインクを噴射する。これらの縫目領域における明るいインク滴と暗いインク滴との間の差のコントラストは、インク画像の品質を低下させるのに十分に知覚可能であり得る。この問題は、画像が変化し、それに応じてインクのスループットが変化するので、印刷部数内で解決することができるが、影響を受けたシートは、廃棄して再印刷しなければならない場合がある。インク画像印刷中に隣接する印刷ヘッド間の縫目領域におけるインク温度差を低減することが有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
カラーインクジェットプリンタは、隣接する印刷ヘッド間の縫目領域に噴射されるインク滴間の温度差を低減するように構成されている。カラーインクジェットプリンタは、インクジェットプリンタを通してプロセス方向において媒体を通過させる媒体搬送部と、媒体搬送部に対して取り付けられた少なくとも2つの印刷ヘッドであって、各印刷ヘッドが、印刷ヘッド内のマニホールドにインクを供給するように構成されたインク入口を有し、マニホールドが、印刷ヘッド内のノズルの少なくとも1つのアレイにインクを供給するように構成されており、インクは、マニホールドを通って流れ方向において流れ、少なくとも2つの印刷ヘッドは、隣接する印刷ヘッド内のインク入口を通って入るインクが、隣接する印刷ヘッドのマニホールド内の反対の流れ方向において流れるように配向されている、少なくとも2つの印刷ヘッドと、を含む。
【0006】
カラーインクジェットプリンタ内の印刷ヘッドモジュールは、隣接する印刷ヘッド間の縫目領域に噴射されるインク滴間の温度差を低減する。印刷ヘッドモジュールは、第1の印刷ヘッドと、少なくとも第2の印刷ヘッドと、を含み、各印刷ヘッドは、印刷ヘッド内のマニホールドにインクを供給するように構成されたインク入口を有し、マニホールドは、印刷ヘッド内のノズルの少なくとも1つのアレイにインクを供給するように構成されており、インクは、マニホールドを通って流れ方向において流れ、第1の印刷ヘッド及び少なくとも第2の印刷ヘッドは、隣接する印刷ヘッド内のインク入口を通って入るインクが、隣接する印刷ヘッドのマニホールド内の反対の流れ方向において流れるように配向されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
カラーインクジェットプリンタ、及び隣接する印刷ヘッド間の縫目領域に噴射されるインク滴間の温度差を低減するカラーインクジェットプリンタの印刷ヘッドモジュールの前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関連して以下の説明で説明される。
【0008】
【
図1】隣接する印刷ヘッド間の縫目領域の縁部に噴射されるインク滴間の温度差を低減するように構成されたカラーインクジェットプリンタの概略図である。
【
図2B】
図2Aの印刷ゾーン内の隣接する印刷ヘッド間の縫目領域に噴射されるインク滴間の温度差を低減する中央印刷ヘッドの端部の反転を示す。
【
図2C】印刷ヘッドが
図2Bに示す交互の配向で配置されている、印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッド間の色濃度ずれのグラフである。
【
図3A】隣接する印刷ヘッドの縫目領域に噴射されるインク滴間に温度差を生じさせる可能性がある、従来技術のインクジェットプリンタ内の印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドの配向を示す。
【
図3B】従来技術の印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッド間の色濃度ずれのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で開示されたプリンタ及びプリンタの印刷ヘッドモジュールのための環境、並びにプリンタ及び印刷ヘッドモジュールの詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号が、同様の要素を指定するために図面を通じて使用されている。本明細書で使用するとき、「プリンタ」という単語は、インク滴を媒体上に噴射してインク画像を形成する任意の装置を包含する。
【0010】
以下に説明するプリンタ及び印刷ヘッドモジュールは、印刷ヘッドモジュール内の隣接する印刷ヘッドの配向を反転させて、隣接する印刷ヘッド間の縫目領域に噴射されるインク滴間の温度差を低減する。具体的には、隣接する印刷ヘッドは、隣接する印刷ヘッドのマニホールド内のインク流が反対の方向になるように配向されている。本明細書で使用するとき、「インク流れ方向」という用語は、印刷ヘッドのマニホールドを通るクロスプロセス方向における流体流の方向を意味する。
【0011】
図1は、隣接する印刷ヘッド間の縫目領域に噴射されるインク滴間の温度差を低減するように構成された高速カラーインクジェットプリンタ10を示す。例示されるように、プリンタ10は、媒体シート供給部S
1又はS
2のうちの1つから取り出された媒体シートの表面上にインク画像を直接形成するプリンタであり、シートSは、アクチュエータ40のうちの1つ以上を動作させるコントローラ80によってプリンタ10を通って移動され、アクチュエータ40は、コンベヤ52のローラ又は少なくとも1つの駆動ローラに動作可能に接続されており、コンベヤ52は、プリンタの印刷ゾーンPZ(
図2Aに図示)を通過する媒体搬送部42の一部分を備える。プリンタの実施形態では、印刷ヘッドモジュールは、複数の印刷ヘッドを有し、各印刷ヘッドが、プリンタが印刷することができるクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅未満の幅を有する。これらのモジュールでは、印刷ヘッドは、単一の印刷ヘッドよりも広い媒体が印刷されることを可能にするずらされたアレイ状に配置されている。加えて、モジュール内、又はモジュール間の印刷ヘッドはまた、印刷ヘッドによってクロスプロセス方向に噴射された液滴の密度が、クロスプロセス方向において、印刷ヘッド内のインクジェット間の最小の間隔よりも大きくなり得るように組み合わせることができる。プリンタ10は、たった2つの媒体シート供給部を伴って描写されているが、プリンタは、各々が異なる種類又はサイズの媒体を含む、3つ以上のシート供給部で構成することができる。
【0012】
図1のプリンタ10における印刷ゾーンPZを
図2Aに示す。印刷ゾーンPZは、シートがプロセス方向において通過する最初のインクジェットから、シートがプロセス方向において通過する最後のインクジェットまでの距離と等しいプロセス方向における長さを有し、クロスプロセス方向において互いに真向かいにある、印刷ゾーンの両側の最も外側にあるインクジェット間の最大距離である幅を有する。
図2Aに示す各印刷ヘッドモジュール34A、34B、34C、及び34Dは、それぞれ、印刷ヘッドキャリアプレート316A、316B、316C、及び316Dのうちの1つに取り付けられた3つの印刷ヘッド204を有する。印刷ヘッドは、中央印刷ヘッドがプロセス方向において他の2つの印刷ヘッドからオフセットされるようにずらされているが、印刷ヘッドの端部は、モジュールの印刷ヘッドが、3つの印刷ヘッド内のインクジェットの全てが動作するときに、通過する媒体を横切ってクロスプロセス方向に延在する画素の連続線を印刷することができるように位置付けられている。1つの印刷ヘッドの右側が、隣接する印刷ヘッドの左側によって噴射されるインク滴と交互に配置されるインク滴を噴射する領域は、本文献では「縫目領域」と呼ばれる。クロスプロセス方向における中央印刷ヘッドのマニホールドを通るインクの流れの方向は、
図2Bに示され、以下でより詳細に説明されるように、クロスプロセス方向における隣接する印刷ヘッドのマニホールド内のインクの流れの反対の方向である。
【0013】
図1に示すように、印刷された画像は、インク画像がシートS上に印刷され、インク画像が光学センサ84を通過した後、画像乾燥機30の下を通過する。画像乾燥機30は、赤外線加熱器、加熱された送風機、空気戻り、又はこれらの構成要素の組み合わせを含み、インク画像を加熱し、画像をウェブに少なくとも部分的に固定することができる。赤外線加熱器は、ウェブの表面上の印刷された画像に赤外線熱を加えて、インク中の水又は溶媒を蒸発させる。加熱空気送風機は、扇風機、又は他の加圧空気源を使用して、インク上に加熱空気を方向付けて、インクからの水又は溶媒の蒸発を補う。次いで、空気が収集され、空気戻りによって排気されて、プリンタ内の他の構成要素との乾燥機空気流の干渉を低減する。
【0014】
二重経路72は、基材が印刷された後に媒体搬送部42からシートを受容し、そのシートを、印刷ヘッドを通過する移動の方向とは反対の方向にローラの回転によって移動させるように提供される。二重経路72内の位置76において、基材は、媒体搬送部42によって運ばれているジョブストリームに合流することができるように、反転することができる。コントローラ80は、シートを選択的にひっくり返すように構成されている。すなわち、コントローラ80は、シートの裏面を印刷できるようにシートを反転させるためにアクチュエータを動作させることができるか、又はシートの印刷された面を再び印刷できるように、シートを反転させることなくシートが搬送経路に戻されるように、アクチュエータを動作させることができる。枢動部材88の移動により、二重経路72へのアクセスが提供される。枢動部材88の回転は、枢動部材88に動作可能に接続されたアクチュエータ40を選択的に動作させるコントローラ80によって制御される。
図1に示すように枢動部材88が反時計回りに回転されるとき、媒体搬送部42からの基材は、二重経路72に方向転換される。枢動部材88を方向転換位置から時計回り方向に回転させることにより、二重経路72へのアクセスが閉じられるため、媒体搬送部上の基材は、容器56に移動する。別の枢動部材86が、二重経路72にある位置76と媒体搬送部42との間に位置付けられている。コントローラ80が、アクチュエータを動作させて、枢動部材86を反時計回り方向に回転させると、二重経路72からの基材は、媒体搬送部42上でジョブストリームに合流する。枢動部材86を時計回り方向に回転させることにより、媒体搬送部42への二重経路アクセスが閉じられる。
【0015】
図1に更に示すように、二重経路72に方向転換されなかった印刷済み媒体シートSは、媒体搬送部によって、これらのシートが収集されるシート容器56に運ばれる。印刷済みシートが乾燥機30及び容器56に到達する前に、これらのシートは、光学センサ84を通過する。光学センサ84は、印刷済みシート上のインク画像の画像データを生成し、この画像データは、コントローラ80によって分析される。コントローラ80は、印刷ジョブの媒体シート上のインク画像における縞を検出するように構成されている。加えて、テストパターン画像が印刷されたシートが、印刷ジョブ中に間隔を置いて挿入される。これらのテストパターン画像は、コントローラ80によって分析されて、存在する場合、テストパターンにインクを噴射するように動作された、いずれのインクジェットが実際にインクを噴射したかを判定し、インクジェットがインク滴を噴射した場合、インク滴が適切な質量でその意図された位置に降着したかどうかを判定する。噴射すると想定されたインク滴を噴射しない、又は正しい質量を有していない滴を噴射する、若しくは誤った位置に降着する任意のインクジェットは、本明細書では動作不能なインクジェットと呼ばれる。コントローラは、コントローラに動作可能に接続されたデータベース92に、動作不能なインクジェットを特定するデータを記憶することができる。テストパターンが印刷されたこれらのシートは、ランタイムミッシングインクジェット(run-time missing inkjet、RTMJ)シートと呼ばれることがあり、これらのシートは、印刷ジョブの出力から廃棄される。ユーザは、ユーザインターフェース50を動作させて、動作不能なインクジェットの数及び動作不能なインクジェットが位置する印刷ヘッドを特定するインターフェース上に表示されるレポートを取得することができる。光学センサ84は、デジタルカメラ、LED及び光検出器のアレイ、又は通過表面の画像データを生成するように構成された他のデバイスであり得る。すでに述べたように、媒体搬送部はまた、シートを反転させ、そのシートを、印刷ヘッドモジュールの前に媒体搬送部に戻すことができ、その結果、シートの反対側を印刷することができる二重経路を含む。
図1は、シート容器に収集されている印刷済みシートを示しているが、これらのシートは、媒体シートの折り畳み、丁合、綴じ、及びステープル留めなどの作業を実施する他の処理ステーション(図示せず)に方向付けることができる。
【0016】
機械又はプリンタ10の様々なサブシステム、構成要素及び機能の動作及び制御は、コントローラ又は電子サブシステム(electronic subsystem、ESS)80の助けを借りて実施される。ESS又はコントローラ80’は、印刷ヘッドモジュール34A~34D(したがって印刷ヘッド)、アクチュエータ40、及び乾燥機30の構成要素に動作可能に接続されている。ESS又はコントローラ80は、例えば、電子データ記憶装置を備えた中央処理装置(central processor unit、CPU)、及びディスプレイ又はユーザインターフェース(user interface、UI)50を有する自己完結型コンピュータである。ESS又はコントローラ80は、例えば、センサ入力及び制御回路、並びに画素配置及び制御回路を含む。加えて、CPUは、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続(図示せず)などの画像入力源と、印刷ヘッドモジュール34A~34Dとの間の画像コンテンツデータの流れを読み出し、捕捉し、準備し、かつ管理する。したがって、ESS又はコントローラ80は、印刷プロセスを含む他の全ての機械サブシステム及び機能を操作及び制御するための主要なマルチタスクプロセッサである。
【0017】
コントローラ80は、プログラム命令を実行する汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装することができる。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、以下に説明される動作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供され得るか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供され得る。回路の各々は、別個のプロセッサで実装することができるか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装することができる。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内に提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に説明される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。
【0018】
動作中、生成されるインク画像のインク画像コンテンツデータは、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかからコントローラ80に送信される。インク画像コンテンツデータは、モジュール34A~34D内の印刷ヘッドに送出されるインクジェット噴射器発射信号を生成するように処理される。インク画像コンテンツデータとともに、コントローラは、媒体の重量、媒体の寸法、印刷速度、媒体の種類、各シートの各面上に生成されるインク領域被覆率、各シートの各面上に生成される画像の位置、媒体の色、繊維状媒体の媒体繊維配向、印刷ゾーンの温度及び湿度、媒体の含水量、並びに媒体の製造業者を識別する印刷ジョブパラメータを受信する。本文献で使用するとき、「印刷ジョブパラメータ」という用語は、印刷ジョブのための非画像コンテンツデータを意味し、「インク画像コンテンツデータ」という用語は、媒体シート上に印刷されるインク画像における画素を形成する各噴射されたインク滴の色及び量を識別するデジタルデータを意味する。
【0019】
図2Bは、印刷ヘッドモジュール34Aの印刷ヘッド204を示す。中央印刷ヘッドは、マニホールド208へのインク入口212Bが、インクマニホールド208A及び208Cへのインク入口212A及び212Cとは反対の印刷ヘッド204の端部にあるように回転されている。したがって、マニホールド208Bを通るインク流は、マニホールド208A及び208Cを通るインク流の反対の方向である。その結果、中央印刷ヘッド内の温かいインクは、外側印刷ヘッドと中央印刷ヘッドとの間の縫目領域に噴射され、外側印刷ヘッドもまた、温かいインクを噴射し、中央印刷ヘッド内の冷たいインクは、内側印刷ヘッドと中央印刷ヘッドとの間の縫目領域に噴射され、内側印刷ヘッドもまた、冷たいインクを噴射する。
図2Cのグラフは、中央印刷ヘッドの再配向が、隣接する印刷ヘッド間の縫目領域における色濃度を、人間の目によって認識可能な程度に非類似ではなく類似にすることを可能にすることを示す。したがって、縫目領域216A及び216Bに噴射されたインク滴は、
図3Aの縫目領域216A及び216Bほど大きな温度差を有しない。すなわち、マニホールド208A、208B、及び208Cの全てを通るインク流は、
図3Aでは同じ方向であるので、外側印刷ヘッドからの温かいインク滴及び中央印刷ヘッドからの冷たいインク滴は、縫目領域216Aに噴射され、中央印刷ヘッドからの温かいインク滴及び内側印刷ヘッドからの冷たいインク滴は、縫目領域216Bに噴射される。
図3Bのグラフによって示すように、従来技術のプリンタ内の隣接する印刷ヘッドから噴射されるインク間の温度差は、隣接する印刷ヘッド間の縫目領域において人間が知覚できる色濃度差をもたらす。
【0020】
印刷ヘッドモジュール内の1つおきの印刷ヘッドの配向を反転させることは、インクが印刷ヘッドに入る前にインクを所定の温度に加熱するよりも簡単に達成することができる。しかしながら、上述したように印刷ヘッドの配向を反転させると、印刷ヘッドのインクジェットアレイにおけるインクジェットの物理的位置が変化する。したがって、コントローラは、これらの物理的位置の変化を考慮するために、画像経路制御及び画像ベースの制御を変更するように構成されている。画像経路制御とは、新しいインクジェット位置を使用してインク画像コンテンツデータを処理して発射信号を生成し、画素が媒体上の正しい位置に印刷されることを保証することを指す。画像ベースの制御とは、印刷ヘッドモジュール内のインクジェットによって噴射されるインク滴を見当合わせし、印刷中に動作不能なインクジェットの補償技法を実施するために、新しいインクジェット位置を使用することを指す。このようなインクジェット補償技法は、当該技術分野においてよく知られている。また、例えば、ボルトの位置及び取り付けプレートの開口サイズが変化したり、隣接する印刷ヘッド間の縫目領域においてインクジェットを位置合わせするためのモータの動作並びに印刷ヘッドのロール位置付けのためのモータの動作が変化したり、反転した印刷ヘッド上のインク入口の新しい位置の結果としてインク送出管の長さが変化したりするなど、いくつかの軽微なハードウェアの変更も必要である。
【0021】
様々な上で開示されるもの並びに他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に望ましく組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の「特許請求の範囲」によって包含されることも意図される、様々な現在予期されない代替、修正、変形、又は改善が、後に当業者によって行われ得る。
【外国語明細書】