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特開2024-4675給湯システム、および給湯器を制御するためのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004675
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】給湯システム、および給湯器を制御するためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/196 20220101AFI20240110BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20240110BHJP
   F24H 15/254 20220101ALI20240110BHJP
   F24H 15/36 20220101ALI20240110BHJP
   F24H 15/246 20220101ALI20240110BHJP
【FI】
F24H15/196 301P
F24H15/196 301D
F24H15/196 301G
F24H15/196 301B
F24H15/10
F24H15/254
F24H15/36
F24H15/196 301W
F24H15/246
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104406
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼石 智也
【テーマコード(参考)】
3L024
【Fターム(参考)】
3L024CC17
3L024DD22
3L024EE03
3L024GG42
3L024HH23
3L024HH24
(57)【要約】
【課題】ゆるやか浴制御が確実に実行される給湯システムを提供する。
【解決手段】給湯システムのコントローラが実行する処理は、ふろ自動運転のスイッチがオンであることを検知するステップ(S510)と、ふろ自動運転を開始するステップ(S520)と、浴室の外(たとえば台所)の温度と浴室の温度との差が予め設定された基準値以上であると判断した場合に(ステップS530にてYES)、ゆるやか浴自動スイッチをオンにするステップ(S540)と、自動運転における保温の目標温度を基本設定温度よりも数度低い温度に設定するステップ(S550)と、浴槽内の水位の上昇を検知するステップ(S560)と、目標温度を基本設定温度に変更し、追い焚き運転を開始するステップ(S570)と、湯温が基本設定温度に到達したことを検知するステップ(S580)と、追い焚き運転を停止するステップ(S590)とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽への入浴を検知するための入浴検知手段と、
人が着衣状態にあることが想定される場所の温度を検出するための第1温度センサと、
人が脱衣状態になることが想定される場所の温度を検出するための第2温度センサと、
浴槽に湯水を供給する給湯器と、
前記給湯器を制御するためのコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記浴槽の湯温を制御するための所定の運転が指示された場合において、前記入浴検知手段が入浴を検知していないときに、前記浴槽の湯温が、前記入浴検知手段が入浴を検知した後の前記浴槽の湯水の設定温度よりも所定温度低い温度となるように前記給湯器を制御するゆるやか浴制御手段を備え、
前記ゆるやか浴制御手段は、前記第1温度センサの検出する温度が前記第2温度センサの検出する温度より予め設定された温度以上高いことに基づいて実施される、給湯システム。
【請求項2】
前記着衣状態にあることが想定される場所は、居室であり、
前記脱衣状態になることが想定される場所は、浴室である、請求項1に記載の給湯システム。
【請求項3】
前記着衣状態にあることが想定される場所は、居室であり、
前記脱衣状態になることが想定される場所は、脱衣所である、請求項1に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記着衣状態にあることが想定される場所に設置された第1リモートコントローラと、
前記脱衣状態になることが想定される場所に設置された第2リモートコントローラとをさらに備え、
前記第1温度センサは、前記第1リモートコントローラに設けられ、
前記第2温度センサは、前記第2リモートコントローラに設けられている、請求項2または3に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記所定の運転は、前記浴槽に湯水を供給する自動湯張り運転、前記浴槽の湯温を保持する運転、または、前記浴槽の湯温を高める追い焚き運転の少なくともいずれか1つを含む、請求項1に記載の給湯システム。
【請求項6】
浴槽に湯を供給する給湯器を制御するためのプログラムであって、前記プログラムは前記給湯器のコントローラに、
第1温度センサを用いて、人が着衣状態にあることが想定される場所の温度を検出するステップと、
第2温度センサを用いて、人が脱衣状態になることが想定される場所の温度を検出するステップと、
前記給湯器を制御するステップとを実行させ、
前記給湯器を制御するステップは、前記浴槽の湯温を制御するための所定の運転が指示された場合において、前記浴槽への入浴が検知されていないときに、前記浴槽の湯温が、入浴が検知された後の前記浴槽の湯水の設定温度よりも所定温度低い温度となるように前記給湯器を制御するステップを含み、
前記給湯器を制御するステップは、前記第1温度センサの検出する温度が前記第2温度センサの検出する温度より予め設定された温度以上高いことに基づいて実施される、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は給湯器の制御に関し、より特定的には、ゆるやか浴機能を有する給湯器の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
風呂給湯装置において、所謂ゆるやか浴機能を備えるものが知られている。ゆるやか浴機能は、浴室内外の温度差が大きい場合等に生じる浴室でのヒートショック事故を防止するため、入浴前の風呂の湯温を設定温度よりも2℃程低い温度に制御し、入浴が検知された時に風呂湯温を設定温度まで上昇させるというものである。
【0003】
風呂湯温の制御に関し、たとえば、特開平5-118644号公報(特許文献1)は、「風呂入浴の最初から快適感を得ることができる風呂自動保温方法」を開示している。当該方法によれば、「浴槽への入浴者がない場合には、浴槽温度を風呂設定温度よりも一定温度だけ低い温度で保温し、浴槽への入浴者がある場合には風呂設定温度で保温する。」というものである([要約]参照)。
【0004】
また、特許第6743471号公報(特許文献2)は、「入浴者の身体的負担のより一層の軽減を図ることのできる風呂装置」を開示している([0008]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-118644号公報
【特許文献2】特許第6743471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、風呂給湯装置においてゆるやか浴機能を実現する場合、風呂給湯装置のリモートコントローラ(以下「リモコン」という場合もある)でゆるやか浴制御の設定を行なう必要があった。そのため、浴室内と浴室外との温度差が大きくヒートショックが発生する可能性が高い場合において、ゆるやか浴制御の設定が行なわれなかった時には、ゆるやか浴制御が実行されなくなる。その場合、ヒートショックの発生を防止できない恐れがある。したがって、ヒートショックの発生を防止する技術が必要とされている。
【0007】
本開示は上述の様な背景に鑑みてなされたものであって、ゆるやか浴制御が必要な状況において確実にゆるやか浴制御が実行される技術が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施の形態に従うと、給湯システムが提供される。この給湯システムは、浴槽への入浴を検知するための入浴検知手段と、人が着衣状態にあることが想定される場所の温度を検出するための第1温度センサと、人が脱衣状態になることが想定される場所の温度を検出するための第2温度センサと、浴槽に湯水を供給する給湯器と、給湯器を制御するためのコントローラとを備える。コントローラは、浴槽の湯温を制御するための所定の運転が指示された場合において、入浴検知手段が入浴を検知していないときに、浴槽の湯温が、入浴検知手段が入浴を検知した後の浴槽の湯水の設定温度よりも所定温度(たとえば、2,3℃程度)低い温度となるように給湯器を制御するゆるやか浴制御手段を備える。ゆるやか浴制御手段は、第1温度センサの検出する温度が第2温度センサの検出する温度より予め設定された温度(たとえば、5~10℃程度)以上高いことに基づいて実施される。
【0009】
ある局面に従うと、着衣状態にあることが想定される場所は、居室である。この局面では、居室は脱衣所を含む。脱衣状態になることが想定される場所は、浴室である。
【0010】
ある局面に従うと、着衣状態にあることが想定される場所は、居室である。この局面では、居室は脱衣所を含まない。脱衣状態になることが想定される場所は、脱衣所である。
【0011】
ある局面に従う給湯システムは、着衣状態にあることが想定される場所に設置された第1リモートコントローラと、脱衣状態になることが想定される場所に設置された第2リモートコントローラとをさらに備える。第1温度センサは、第1リモートコントローラに設けられている。第2温度センサは、第2リモートコントローラに設けられている。
【0012】
ある局面に従うと、所定の運転は、浴槽に湯水を供給する自動湯張り運転、浴槽の湯温を保持する運転、または、浴槽の湯温を高める追い焚き運転の少なくともいずれか1つを含む。
【0013】
他の実施の形態に従うと、浴槽に湯を供給する給湯器を制御するためのプログラムが提供される。このプログラムは給湯器のコントローラに、第1温度センサを用いて、人が着衣状態にあることが想定される場所の温度を検出するステップと、第2温度センサを用いて、人が脱衣状態になることが想定される場所の温度を検出するステップと、給湯器を制御するステップとを実行させる。給湯器を制御するステップは、浴槽の湯温を制御するための所定の運転が指示された場合において、浴槽への入浴が検知されていないときに、浴槽の湯温が、入浴が検知された後の浴槽の湯水の設定温度よりも所定温度低い温度となるように給湯器を制御するステップを含む。給湯器を制御するステップは、第1温度センサの検出する温度が第2温度センサの検出する温度より予め設定された温度以上高いことに基づいて実施される。
【0014】
ある実施の形態に従うと、ゆるやか浴制御が必要な状況において確実にゆるやか浴制御が実行される。
【0015】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】給湯システム1の概要を表わす図である。
図2】給湯システム1が使用される住居200のレイアウトの一部を例示する図である。
図3】給湯システム1が供える機能構成を表わすブロック図である。
図4】浴室リモコン110のモニタ115における画面の推移を表わす図である。
図5】ふろ自動運転が行なわれる場合に給湯システム1のコントローラ15が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0018】
図1を参照して、本実施の形態に係る給湯システム1について説明する。図1は、給湯システム1の概要を表わす図である。
【0019】
給湯システム1は、給湯器10と、リモートコントローラ100,110とを備える。給湯器10は、ガス等の燃料燃焼式、又は、ヒートポンプ式で構成される。給湯器10からの湯水は、浴槽、シャワー、カラン等へ供給される。給湯器10は、マイクロコンピュータを主要部として構成されたコントローラ15を備える。
【0020】
給湯システム1は、リモートコントローラ100,110に入力されたユーザ指令を受信する。リモートコントローラ100,110は、通信線20,30によって給湯器10に接続される。通信線20,30は、代表的には、二芯の通信ケーブルによって構成される。
【0021】
リモートコントローラ100は、例えば、台所の壁面に配設される。以下では、リモートコントローラ100を「台所リモコン100」ともいう。台所リモコン100は、給湯システム1の運転をオンまたはオフするための運転スイッチ102と、操作スイッチ103と、モニタ105とを含む。運転スイッチ102及び操作スイッチ103は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成される。モニタ105は、代表的には、液晶パネルによって構成される。操作スイッチ103の一部又は全部は、タッチパネル上に形成されるソフトスイッチによっても構成され得る。
【0022】
リモートコントローラ110は、浴室の壁面に配設される。以下では、リモートコントローラ110を「浴室リモコン110」ともいう。浴室リモコン110は、運転スイッチ112と、操作スイッチ113,114と、モニタ115とを有する。運転スイッチ112及び操作スイッチ113,114は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成される。モニタ115は、例えば、蛍光表示管によって構成される。
【0023】
運転スイッチ102,112の操作によって、給湯器10の作動及び停止が指示される。コントローラ15は、運転スイッチのオン時には、図示しないカラン又はシャワーの開栓、及び、浴槽への給湯経路の開放に応じて、温水を供給する。
【0024】
コントローラ15は、台所リモコン100のモニタ105および浴室リモコン110のモニタ115に表示される内容を制御することによって、ユーザに情報を通知できる。あるいは、運転スイッチ102,112および操作スイッチ103,113,114の少なくとも一部に設けられたLED(Light Emitting Diode)の点灯および消灯の制御によって、ユーザに情報を通知することもできる。さらには、コントローラ15は、台所リモコン100または浴室リモコン110に内蔵されるスピーカ(図示しない)によって、音声により、ユーザに情報を通知することもできる。
【0025】
コントローラ15は、サーミスタ211,221,231,241からそれぞれ送信される各信号の入力を受け付ける。
【0026】
[サーミスタの配置]
図2を参照して、サーミスタの配置について説明する。図2は、給湯システム1が使用される住居200のレイアウトの一部を例示する図である。住居200は、浴室210と、脱衣所220と、居間230と、台所240とを含む。
【0027】
浴室210には、浴槽212が設けられている。浴室リモコン110は浴槽212の近傍に設けられている。浴室リモコン110は、サーミスタ211を含む。サーミスタ211は、浴室210の温度を計測し、計測された信号は、コントローラ15に送られる。
【0028】
脱衣所220には、サーミスタ221が設けられている。サーミスタ221は、脱衣所220の温度を計測し、計測された信号は、コントローラ15に送られる。
【0029】
居間230には、サーミスタ231が設けられている。サーミスタ231は、居間230の温度を計測し、計測された信号は、コントローラ15に送られる。ある局面において、サーミスタ231は、居間230に設置されるエアコン232に内蔵されていてもよい。
【0030】
台所リモコン100には、サーミスタ241が設けられている。サーミスタ241は、台所240の温度を計測し、計測された信号は、コントローラ15に送られる。
【0031】
本実施の形態において、浴室210は、「人が脱衣状態になることが想定される場所」である。居間230および台所240は、「人が着衣状態にあることが想定される場所」である。
【0032】
脱衣所220は、「人が着衣状態にあることが想定される場所」および「人が脱衣状態になることが想定される場所」のいずれにもなり得る。たとえば、浴室210との関係では、脱衣所220は「人が着衣状態にあることが想定される場所」となる。居間230および台所240との関係では、脱衣所は「人が脱衣状態になることが想定される場所」となる。
【0033】
本実施の形態において、「人が着衣状態にあることが想定される場所」は、居室ともいう。脱衣所220は、着衣状態および脱衣状態のいずれもが想定されるので、本実施の形態における居室とは、ある局面において脱衣所220を含み、他の局面において脱衣所220を含まないことになる。
【0034】
[機能構成]
図3を参照して、給湯システム1の構成についてさらに説明する。図3は、給湯システム1が備える機能の構成を表わすブロック図である。
【0035】
給湯システム1は、記憶部310と、制御部320と、操作部330と、入浴検知部340と、第1温度検出部350と、第2温度検出部360と、出力部370とを備える。制御部320は、湯張り制御部321と、保温制御部322と、追い焚き制御部323と、ゆるやか浴制御部324とを含む。
【0036】
記憶部310と制御部320とは、コントローラ15によって実現される。記憶部310は、設定温度および基準温度を保持する。設定温度は、給湯システム1のユーザー(たとえば、入浴者)によって設定された湯温である。設定温度は、一例として、ふろ自動運転が行なわれる場合に浴槽212に供給され、その後、保温される湯水の目標温度として用いられる。基準温度は、本実施の形態に従って算出される浴室外の温度と浴室内の温度との差との比較に用いられる。この基準温度は数度程度であり、一例として、4度、5度等の値が使用される。たとえば、暖房運転が行なわれている浴室外(例、台所、居間等)と、暖房運転が行なわれていない浴室内との差が大きい冬期は、基準温度の値が大きく設定されてもよい。
【0037】
なお、本実施の形態において、ふろ自動運転は、給湯システム1による所定の運転の一例であり、具体的には、自動湯張り運転と、浴槽の湯温を保持する運転とをセットで行なう運転である。
【0038】
操作部330は、台所リモコン100または浴室リモコン110として実現される。操作部330は、タッチ操作あるいは音声による入力を受け付ける。当該入力に応じた信号は、コントローラ15に送信される。
【0039】
入浴検知部340は、水位センサ(図示しない)によって実現される。入浴検知部340は、浴槽212の水位の上昇を検知すると、入浴が始まったことを検知し、水位の下降を検知すると入浴が終了したことを検知する。
【0040】
第1温度検出部350は、たとえば、台所240に設けられたサーミスタ241、居間230に設けられたサーミスタ231、あるいは脱衣所220に設けられたサーミスタ221によって実現される。
【0041】
第2温度検出部360は、浴室210に設けられたサーミスタ211によって実現される。
【0042】
湯張り制御部321は、給湯システム1によるふろ自動運転を制御する。たとえば、操作部330(台所リモコン100または浴室リモコン110)がふろ自動運転の開始指示あるいは中止指示を受け付けると、その指示に応じて給湯器10の燃焼動作を開始しあるいは終了する。
【0043】
保温制御部322は、浴槽212に供給されたお湯の温度の検知結果に基づいて、浴槽212のお湯の温度が、予め指定された設定温度(たとえば、42℃)に維持されるように、適宜、給湯器10の燃焼動作を開始しあるいは終了する。浴槽212のお湯の温度は、配管に設けられたサーミスタ(図示しない)によって検知され得る。
【0044】
追い焚き制御部323は、操作部330が追い焚き運転の指示を受け付けたことに基づいて、給湯器10に追い焚き運転を実行させる。なお、追い焚き制御部323は、保温制御部322として機能してもよい。
【0045】
ゆるやか浴制御部324は、浴室210の温度と、浴室外(たとえば、脱衣所220、居間230、台所240)の温度との差が、予め設定された基準値(たとえば、5℃)以上であることに基づいて、浴槽212に供給される湯の温度を設定温度(記憶部310)よりも低い温度に設定して、浴槽212に湯を供給する。他の局面において、ゆるやか浴制御部324は、浴室210の温度と浴室外の温度との差が比較的大きくなり得る冬期に、ゆるやか浴制御を実行してもよい。この制御は、給湯システム1が、カレンダー情報や気温情報等を取り込むことが出来る場合には、ゆるやか浴制御部324は、これらの情報に応じてゆるやか浴制御を開始してもよい。
【0046】
出力部370は、モニタ105,115およびスピーカー(図示しない)によって実現される。出力部370は、浴室210または浴槽212の状態を出力する。たとえば、出力部370は、モニタ105,115として、浴槽212の温度、設定温度、浴室210の温度、入浴が検知されてから経過した時間、入浴者への行動を促すメッセージ等を表示し得る。また、出力部370は、スピーカーを用いて、ゆるやか浴の開始または終了を知らせる音声、あるいは、当該メッセージの音声を出力し得る。
【0047】
[表示態様]
図4を参照して、浴室リモコン110の画面の表示態様について説明する。図4は、浴室リモコン110のモニタ115における画面の推移を表わす図である。状態Aは、給湯器10の運転スイッチがオンされ、かつ、浴槽212内の湯温が自動制御されるふろ自動モードがオンされている場合において、浴室210への入室が検知されていないときの画面例を表わしている。
【0048】
浴室210に設けられた人検知センサ(図示しない)が、人の存在を検知すると、人が浴室210に入室したことが検知され、モニタ115は状態Bのような画面を表示する。
【0049】
その後、人が浴槽212に入ると水位が上昇し、水位センサ(図示しない)は、水位の上昇を検知して、入浴が行なわれていることを検知し、モニタ115は状態Cのような画面を表示する。
【0050】
その後、人が浴槽212から出ると水位が下降し、水位センサは、入浴が終了したことを検知する(状態B)。さらに、人が浴室210から退出すると、人検知がオフとなり、モニタ115は状態Aの画面に戻る。
【0051】
なお、他の局面において、モニタ115は、浴室210で一定時間待機することを促すメッセージを表示し得る。たとえば、湯温が一定温度に維持された浴槽212における入浴時間が予め設定された時間(例、10分)経過した場合において、入浴後に浴室210から退出するとき、モニタ115は、浴室210において一定時間待機して涼風を浴びた後に浴室210から退出することを促すメッセージを表示し得る。入浴者の温度が多少下がることにより、浴室210から低温の脱衣所220に移動した場合でも、急激な温度変化による体調への影響が予防され得る。
【0052】
[制御構造]
<ふろ自動運転時>
図5を参照して、給湯システム1の制御構造について説明する。図5は、ふろ自動運転が行なわれる場合に給湯システム1のコントローラ15が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【0053】
ステップS510にて、コントローラ15は、ふろ自動運転のスイッチがオンであることを検知する。たとえば、台所リモコン100または浴室リモコン110においてふろ自動運転を指示するスイッチが押下されると、コントローラ15はふろ自動運転が指示されたことを検知する。
【0054】
ステップS520にて、コントローラ15は、ふろ自動運転を開始する。
ステップS530にて、コントローラ15は、浴室210の外(たとえば台所)の温度と浴室210の温度との差が予め設定された基準値(たとえば、5℃)以上であるか否かを判断する。たとえば、コントローラ15は、浴室リモコン110に内蔵されているサーミスタ211からの出力と、サーミスタ221,231,241のうちのいずれかからの出力とに基づいて、当該温度の差が基準値以上であるか否かを判断する。コントローラ15は、浴室210の外の温度と浴室210の温度との差が当該基準値以上であると判断すると(ステップS530にてYES)、制御をステップS540に切り替える。そうでない場合には(ステップS530にてNO)、コントローラ15は、通常のふろ自動運転を行なうに留まる。
【0055】
ステップS540にて、コントローラ15は、ゆるやか浴制御を有効にする。これ以降、コントローラ15は、ゆるやか浴制御を開始する。
【0056】
ステップS550にて、コントローラ15は、自動運転における保温の目標温度を基本設定温度よりも数度低い温度に設定する。その後、人が入浴を始めると、浴槽212の水位は上昇する。水位の上昇は、浴槽212に設けられた水位センサ(図示しない)によって検知される。検知結果は、コントローラ15に送信される。
【0057】
ステップS560にて、コントローラ15は、水位センサからの出力に基づいて、浴槽212内の水位の上昇を検知する。
【0058】
ステップS570にて、コントローラ15は、入浴が開始されたと判断し、目標温度を基本設定温度に変更し、浴槽212の湯温を基本設定温度にするために、追い焚き運転を開始する。
【0059】
ステップS580にて、コントローラ15は、温度センサ(図示しない)で検知される浴槽212の湯水の温度に基づいて、湯温が基本設定温度に到達したことを検知する。
【0060】
ステップS590にて、コントローラ15は、追い焚き運転を停止し、ゆるやか浴制御を終了する。
【0061】
<追い焚き運転時>
他の局面において、本実施の形態に従う制御は、追い焚き運転時に実行されてもよい。この場合、図5に示されるステップS510,S520の処理に代えて、コントローラ15は、追い焚き運転のスイッチがオンにされたことを検知し、基本設定温度よりも予め設定された温度(2~3度)低い温度を目標温度に設定する。コントローラ15は、ゆるやか浴制御を開始(ステップS540)した後、追い焚き運転を開始する。コントローラ15は、湯温が目標温度に到達したことを検知すると、追い焚き運転を停止する。コントローラ15は、バスタブ内の水位の上昇を検知すると(ステップS560)、追い焚き運転を再開し、湯温が基本設定温度になるまで追い焚き運転を行なう。
【0062】
[実施の形態のまとめ]
以上のようにして、本実施の形態に従う給湯システム1によれば、浴室210の温度と、浴室外(たとえば、脱衣所220、居間230、台所240)の温度との差が大きい場合には、いわゆる「ゆるやか浴」が自動でオンにセットされる。したがって、いわゆるヒートショックの危険度が高い場合にゆるやか浴が確実に動作するので、ヒートショックの発生のリスクが低減される。
【0063】
なお、他の局面において、冬季のように、浴室210と浴室外との間で一定以上の温度差が生じることが予め分かっている時期については、本実施の形態に従うゆるやか浴制御が実行されるように予め設定されてもよい。たとえば、11月から2月といった期間については、当該ゆるやか浴制御が実行されるようにコントローラ15はプログラムされていてもよい。
【0064】
また、別の他の局面において、上記のように入浴前の制御に留まらず、入浴後にも温度変化による体調への影響を防止する制御が行なわれてもよい。たとえば、湯温が一定温度に維持された浴槽212における入浴時間が予め設定された時間(たとえば、15分)以上である場合において、入浴後に退出するとき、浴室リモコン110は、浴室210から温度の低い脱衣所220に直ぐに移動するのではなく、浴室210において一定時間待機した後に退出することを促してもよい。一例として、浴槽212の湯温がふろ自動運転時に設定される温度(例、42℃)の状態で、5分以上の入浴が行なわれた場合、給湯システム1は、浴室210の天井に設けられたファン(図示しない)の運転を開始し、予め定められた時間(たとえば10分程度)涼風を当該ファンから浴室210に供給する。浴室リモコン110は、浴室210で一定時間待機することを促すメッセージをモニタ115に表示し、また、当該メッセージを音声として出力してもよい。このようにすると、入浴者の温度が多少下がることにより、より低温の脱衣所220に移動した場合でも、急激な温度変化による体調への影響が予防され得る。
【0065】
さらに別の局面において、浴室210の温度が予め定められた温度(たとえば、18℃)以下である場合には、給湯システム1は、浴室210と他の場所との温度差に拘わらず、上記のようなゆるやか浴制御を開始してもよい。このようにすると、浴室210の温度が絶対的に低い場合においても、ヒートショックの発生を予防し得る。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
開示された技術的特徴は、所謂ゆるやか浴制御機能を有する給湯システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 給湯システム、10 給湯器、15 コントローラ、20,30 通信線、100 台所リモコン、102,112 運転スイッチ、103,113,114 操作スイッチ、105,115 モニタ、110 浴室リモコン、200 住居、210 浴室、211,221,231,241 サーミスタ、212 浴槽、220 脱衣所、230 居間、232 エアコン、240 台所、310 記憶部、320 制御部、321 湯張り制御部、322 保温制御部、323 追い焚き制御部、324 ゆるやか浴制御部、330 操作部、340 入浴検知部、350 第1温度検出部、360 第2温度検出部、370 出力部。
図1
図2
図3
図4
図5