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特開2024-46753回転する2つの部材間に印加されたトルクの算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046753
(43)【公開日】2024-04-04
(54)【発明の名称】回転する2つの部材間に印加されたトルクの算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 25/00 20060101AFI20240328BHJP
   G01L 3/10 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
G01L25/00 C
G01L3/10 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023156943
(22)【出願日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】FR2209661
(32)【優先日】2022-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】507018894
【氏名又は名称】エヌテエヌ ユロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン バクマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ デュレ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】試験体の部分間、エンコーダ間および/またはセンサ間で起こり得る相対的な欠陥を補正できるようにして、とりわけ精度が向上したトルク算出方法を提案する。
【解決手段】回転する2つの部材間に印加されたトルクの算出方法に関し、本方法は、一定の較正トルクで、部材間で試験体を少なくとも1回転させることと、算出システムを使用して、試験体の回転角度に応じて角度偏差の較正値を規定することとを想定する算出の較正手順を含み、印加されたトルクを後に算出することは、特定の角度で算出された角度偏差を対応する較正値で補正することで達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的な回転軸の周りを回転する2つの部材間に印加されたトルクの算出方法であって、前記方法は、
-第1の部材と回転連動する第1の部分と、第2の部材と回転連動する第2の部分とを有する試験体を使用し、前記部分は、前記部分間の角運動を可能にしながら前記部材間にトルクを伝達するように配置されている変形可能な構造によって接続されていることと、
-前記試験体に、
・対応する部分の回転移動を表す周期信号を発信できるトラックを有するエンコーダと、
・対応する前記エンコーダの角度位置を表す信号を送信するために、前記トラックの読み取り距離に配置された感知要素のパターンを含むセンサと
を各部分に対して有するトルク算出システム
を装備することと
を想定し、
前記算出システムは、各々のセンサから送信された信号を比較する装置を含み、前記装置は、前記部分間の角度偏差を算出でき、前記角度偏差は印加されたトルクの関数であり、
前記方法は、
-一定の較正トルクで、前記部材間で前記試験体を少なくとも1回転させることと、
-前記算出システムを使用して、前記試験体の回転角度に応じて前記部分間の前記角度偏差の較正値を規定することと
を想定する前記トルク算出の較正手順を含み、
印加されたトルクを後に算出することは、特定の角度で算出された角度偏差を対応する較正値で補正することで達成される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記較正トルクは、実質的にゼロであることを特徴とする、請求項1に記載のトルク算出方法。
【請求項3】
前記部材の回転方向での前記トルク算出を想定し、前記較正トルクは、前記部材が逆回転方向に回転することで生じることを特徴とする、請求項1または2に記載のトルク算出方法。
【請求項4】
試験体の1回転あたりの基準角度位置を算出することを想定し、前記較正手順は、前記基準角度位置の算出に応じて開始かつ/または終了されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のトルク算出方法。
【請求項5】
少なくとも1つのエンコーダは、1回転に信号を1回発信できる基準トラックを有することを想定し、前記トラックの読み取り距離に配置された前記センサは、発信された前記信号の検出時に前記基準角度位置を送信することを特徴とする、請求項4に記載のトルク算出方法。
【請求項6】
前記較正手順は、使用者とのインターフェイスを用いて開始されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のトルク算出方法。
【請求項7】
前記較正手順は、前記部材の回転状態を検知することによって開始されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のトルク算出方法。
【請求項8】
前記部材の回転状態は、時間、前記部材の回転方向、トルク算出の失敗またはこれらのパラメータの組み合わせに相当することを特徴とする、請求項7に記載のトルク算出方法。
【請求項9】
比較装置は、各々の前記エンコーダの角度位置を提供する計数手段と、回転角度に応じて前記角度位置どうしの差を計算できる減算手段とを有し、前記トルク算出は、計算された角度位置の差から較正値を減算することで、特定の回転角度に対して達成されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のトルク算出方法。
【請求項10】
前記トルク算出システムは、補間係数fおよびfをそれぞれのセンサから送信される信号に適用する手段を有し、前記計数手段は、補間された前記各信号のエッジ数nおよびnを測定することを特徴とする、請求項9に記載のトルク算出方法。
【請求項11】
前記較正値は、少なくとも1つの計数手段で計数されたエッジ数に応じて前記較正手順の際に計算された差を含む表に規定されていることを特徴とする、請求項10に記載のトルク算出方法。
【請求項12】
前記較正値は、計数したエッジごとに規定されるか、計数したエッジの整数に対して規定されることを特徴とする、請求項11に記載のトルク算出方法。
【請求項13】
前記表は、曲線の形で保存されることを特徴とする、請求項11または12に記載のトルク算出方法。
【請求項14】
前記保存された曲線は、フィルタリングされることを特徴とする、請求項13に記載のトルク算出方法。
【請求項15】
前記保存された曲線は、角度の区分に分割されることを特徴とする、請求項13または14に記載のトルク算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な回転軸の周りを回転する2つの部材間に印加されたトルクの算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に、車両に対するモータトルクの変速機に組み込まれた2つの部材間、例えば電動自転車の電気モータまたはクランクセットと機械式変速機との間に印加されたトルクの算出に適用される。
【0003】
そのために、第1の部材と回転連動する第1の部分と、第2の部材と回転連動する第2の部分とを有する試験体を使用することが知られており、該部分どうしは、該部分間の角運動を可能にしながら部材間にトルクを伝達するように配置されている変形可能な構造によって接続されている。
【0004】
このような試験体には、
-対応する部分の回転移動を表す周期信号を発信できるトラックを有するエンコーダと、
-対応するエンコーダの角度位置を表す信号を送信するために、トラックの読み取り距離に配置された感知要素のパターンを含むセンサと
を各部分に対して有するトルク算出システムを装備できる。
【0005】
仏国特許第2816051号、仏国特許第2821931号および仏国特許第2862382号には、このような信号を比較する装置を使用することが記載されており、この装置は、変形可能な構造のねじれによって該角度を生み出すという点で、部分間の角度偏差を算出でき、よって印加されたトルクを算出できる。
【0006】
この解決策の限界は、とりわけ部分および/またはトラックの偏心、エンコーダの不均一性またはセンサの非直線性が見られる試験体に関するトルク算出の精度にあり、これらは、印加されたトルクの関数である角度を算出するために位置信号を比較する際にエラーを引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許第2816051号
【特許文献2】仏国特許第2821931号
【特許文献3】仏国特許第2862382号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、試験体の部分間、エンコーダ間および/またはセンサ間で起こり得る相対的な欠陥を補正できるようにして、とりわけ精度が向上したトルク算出方法を提案することで、先行技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明は、立体的な回転軸の周りを回転する2つの部材間に印加されたトルクの算出方法であって、該方法は、
-第1の部材と回転連動する第1の部分と、第2の部材と回転連動する第2の部分とを有する試験体を使用し、該部分は、該部分間の角運動を可能にしながら部材間にトルクを伝達するように配置されている変形可能な構造によって接続されていることと、
-試験体に、
・対応する部分の回転移動を表す周期信号を発信できるトラックを有するエンコーダと、
・対応するエンコーダの角度位置を表す信号を送信するために、トラックの読み取り距離に配置された感知要素のパターンを含むセンサと
を各部分に対して有するトルク算出システム
を装備することと
を想定し、
該算出システムは、各々のセンサから送信された信号を比較する装置を含み、該装置は、部分間の角度偏差を算出でき、該角度偏差は印加されたトルクの関数であり、
該方法は、
-一定の較正トルクで、部材間で試験体を少なくとも1回転させることと、
-算出システムを使用して、試験体の回転角度に応じて部分間の角度偏差の較正値を規定することと
を想定するトルク算出の較正手順を含み、
印加されたトルクを後に算出することは、特定の角度で算出された角度偏差を対応する較正値で補正することで達成される
方法を提案する。
【0010】
本発明のその他の目的および利点は、立体的な回転軸の周りを回転する2つの部材間に印加されたトルクを算出する本発明による方法の様々な実施形態の以下の説明で明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に、本方法は、車両に対するモータトルクの変速機に組み込まれた2つの部材間、例えば電動自転車の電気モータまたはクランクセットと機械式変速機との間に印加されたトルクの算出を可能にする。
【0012】
そうするために、本方法では、第1の部材と回転連動する第1の部分と、第2の部材と回転連動する第2の部分とを有する試験体を使用し、該部分は、該部分間の角運動を可能にしながら部材間にトルクを伝達するように配置されている変形可能な構造によって接続されている。
【0013】
一実施形態によれば、試験体は、該試験体を一方の部材に取り付ける手段と回転連動する内輪と、該試験体をもう一方の部材に取り付ける手段を有していて内輪の周りに延在する外輪とを有することができ、該両輪は、少なくとも1つの変形可能なアームを介して接続されている。
【0014】
変形例では、試験体は、各端部がそれぞれいずれか一方の部材と連動する部分を有するトーションバーの形態であってよく、バーは、該部材間に印加されたトルクに応じてねじれ変形するように配置される。
【0015】
印加されたトルクに応じて異なる両部分の角運動を算出するために、試験体は、各々の部分に対して、
-対応する部分の回転運動を表す周期信号を発信できるトラックを有するエンコーダと、
-対応するエンコーダの角度位置を表す信号を送信するために、トラックの読み取り距離に配置された感知要素のパターンを有するセンサと
を含むシステムを備えている。
【0016】
特に、N極とS極との一連の対がそれぞれエンコーダ上で磁化されて、擬似正弦波形状の磁気信号を発信できる多極磁気トラックを形成し、該エンコーダは、対応する部分と回転状態でつながっている。
【0017】
有利には、センサは、少なくとも2つの感知要素のパターンを有し、特に仏国特許第2792403号、欧州特許第2602593号および欧州特許第2602594号に記載されているように、一列に並んだ複数の感知要素を有する。
【0018】
感知要素は、検出されるトラックの磁気信号に応じて抵抗が変化する磁気抵抗材料に基づいていてよく、例えばAMR、TMRまたはGMRの類、またはホール効果プローブなどであってよい。
【0019】
一実施形態によれば、角度位置は、磁気トラックが発する信号によって増分的に算出できる。別の実施形態によれば、角度位置は、二次磁気トラックまたはトラックの特定のコーディングを想定して、絶対的に、すなわち基準位置との関係で算出できる。
【0020】
トルク算出システムは、各々のセンサから送信された信号を比較する装置を含み、該装置は、部分間の角度偏差を算出でき、この角度偏差は印加されたトルクの関数である。
【0021】
一実施形態によれば、センサは、直角位相で増分する二乗信号を送信し、比較装置は、各々のエンコーダの角度位置を提供する計数手段と、回転角度に応じて該角度位置どうしの差を計算できる減算手段とを有する。
【0022】
特に、トルク算出システムは、補間係数fおよびfをそれぞれのセンサから送信される信号に適用する手段を有することができ、計数手段は、補間された各々の該信号のエッジ数nおよびnを測定する。
【0023】
N極とS極との対をそれぞれNpp個とNpp個含むトラックに関して、減算手段は、例えば演算DIFF=Npp.f.n-Npp.f.nを実行して角度位置間の差を計算する。
【0024】
特に、算出システムは、f/f=Npp/Nppなどの補間係数の適用手段を有する。トラックが同数の極の対を有する場合(Npp=Npp)、計算は、同じ補間係数(f=f)を用いてエッジniおよびneを単純に減算することで実現できる。
【0025】
本方法は、
-一定の較正トルク、とりわけ実質的にゼロで、部材間で試験体を少なくとも1回転させることと、
-算出システムを使用して、試験体の回転角度に応じて部分間の角度偏差の較正値を規定することと
を想定しているトルク算出の較正手順を含む。
【0026】
したがって、印加されたトルクを後に算出することは、部分間、エンコーダ間および/またはセンサ間で起こり得る相対的な欠陥から生じる誤差をなくすことができるように、所定の角度で算出された角度偏差を対応する較正値で補正することで達成できる。
【0027】
本方法は、試験体の1回転あたりの基準角度位置を算出することを想定でき、該基準角度位置の算出に応じて較正手順を開始かつ/または終了できるようにする。
【0028】
そのようにするために、少なくとも1つのエンコーダは、1回転に信号を1回発信できる基準トラックを有することができ、該トラックの読み取り距離に配置されたセンサは、発信された該信号の検出時に基準角度位置を送信する。
【0029】
有利には、トルク算出は、減算手段によって計算された角度位置の差から較正値を減算することで、特定の回転角度、とりわけ基準角度位置を用いて算出された回転角度に対して達成できる。
【0030】
一実施形態によれば、較正値は、少なくとも1つの計数手段で計数されたエッジ数に応じて較正手順の際に計算された差DIFFを含む表に規定されている。特に、表は、基準角度から始まる。
【0031】
較正値DIFFは、計算する値の数を制限するために、計数したエッジごとに規定してもよいし、計数したエッジの整数に対して規定してもよい。
【0032】
表は、とりわけ事前にフィルタリングした状態で、例えば平滑化するために移動平均によって、曲線の形で保存できる。変形例では、表をそのまま使用できる。
【0033】
曲線は、そのまま保存してもよいし、点ごとに保存してもよいし、メモリに必要なスペースを制限するために角度の区分に分割して保存してもよい。特に、1つ1つの区分が角度1°に相当する360個の区分を検討できる。あるいは有利には、エンコーダのトラックの磁極一対あたり4つの区分を検討できる。
【0034】
これらの区分の各々は、傾斜と変位という2つのパラメータで表された線分で近似できるため、対象となる区分の角度に応じて容易に補正を計算することが可能になる:補正する誤差=(傾斜×角度)-変位。
【0035】
得られた曲線はその後、特定の角度で、とりわけ基準角度位置を利用して算出された角度で、較正手順の最後に記録された値を差し引くことで、算出された角度偏差を補正する役割を果たす。
【0036】
したがって、この較正手順は実行が簡単で、とりわけ角度センサおよび/または基準トルクを必要とせず、試験体を一定速度で回転させる必要もない。動作中に行われる補正も、とりわけリアルタイムでのトルク算出に一切の遅延が生じないという点で、実現が簡単である。
【0037】
一実施形態によれば、印加されたトルクの算出は、部材の一方向の回転で実現され、較正トルクは、部材の反対の回転方向で生じる。
【0038】
この解決策は、ペダルの逆踏み中にフリーホイールによってゼロトルクでクランクセットを回転させることが容易であるという点で、自転車の変速機に関して特に有利である。このほか、印加されたトルクのリアルタイムでの算出は、この算出を利用する電動アシストモータを制御することに関してこの用途では重要である。
【0039】
較正手順は、例えば電動自転車のアシストコントローラなど、使用者とのインターフェイスを用いて開始できる。
【0040】
一実施形態によれば、較正手順は、部材の回転状態を検知することによって、直接、または使用者からのアクションを要求することで開始される。
【0041】
検知される状態は、既知の較正トルク、または実質的にゼロの較正トルクでの回転に相当するとしてよく、例えば自転車のペダルの逆踏みを検知することによる部材の回転方向に相当する。この状態は、時間(最後の較正以降または点検後)、トルク算出の失敗またはこれらのパラメータの組み合わせに相当するとしてよい。
【外国語明細書】