IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美和ロック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-認証システム 図1
  • 特開-認証システム 図2
  • 特開-認証システム 図3
  • 特開-認証システム 図4
  • 特開-認証システム 図5
  • 特開-認証システム 図6
  • 特開-認証システム 図7
  • 特開-認証システム 図8
  • 特開-認証システム 図9
  • 特開-認証システム 図10
  • 特開-認証システム 図11
  • 特開-認証システム 図12
  • 特開-認証システム 図13
  • 特開-認証システム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004679
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】認証システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20240110BHJP
   G06Q 50/163 20240101ALI20240110BHJP
   E05B 47/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
E05B49/00 J
E05B49/00 Z
E05B49/00 B
G06Q50/16 300
E05B47/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104423
(22)【出願日】2022-06-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】中村 良平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石井 真吾
【テーマコード(参考)】
2E250
5L049
【Fターム(参考)】
2E250AA01
2E250BB05
2E250BB08
2E250BB28
2E250CC11
2E250DD07
2E250EE10
2E250EE15
2E250FF06
2E250FF11
2E250FF18
2E250FF23
2E250FF36
2E250GG06
5L049CC29
(57)【要約】
【課題】サーバが時限パス(オフラインパス或いは暗号番号)を設定する際に、サービス業者を含むその利用者の希望番号を十分に反映させることにより、同一又は異なる業者間で「同じようなパスワード(同一の変数)」を設定する可能性を極力少なくすること。
【解決手段】サーバは、暗号番号を生成する際、サービス業者の識別番号としての任意の数値と前記電気錠に付与された固有IDの数値との組み合わせから成る基本番号を前提とした上で、少なくとも利用者が希望する利用条件の中に含まれる施・解錠操作が可能な期間情報の数値に基づいて、かつ所定の暗号規約を用いて暗号番号を生成し、一方、暗号番号を貰った利用者は、電気錠側の入力部に暗号番号を入力すると、前記基本番号を有する該電気錠は、前記暗号番号に対して前記サーバが利用した前記所定の暗号規約とは逆パターンの方式で復号処理する復号規約を用いて時限パスとしての前記暗号番号が正しいか否かの認証を実行する認証システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証システムを建物の現場で利用することができる利用者の通信端末と連絡をとることができる管理端末と、前記建物或いは建物の開閉体に設けられた入力部と、前記建物の開閉体に設けられ、施・解錠機構を解錠状態に制御する解錠制御部とを備える電気錠と、前記利用者の希望に基づき時限パスとしての前記暗号番号を生成し、かつ生成した該暗号番号を前記管理端末又は前記通信端末のいずれかに伝えるサーバとから成る認証システムであり、
前記サーバは、前記暗号番号を生成する際、前記利用者に含まれるサービス業者の識別番号としての数値と前記電気錠に付与された固有IDの数値との組み合わせから成る基本番号を前提とした上で、少なくとも前記利用者が希望する利用条件の中に含まれる施・解錠操作が可能な期間情報の数値に基づいて、かつ所定の暗号規約を用いて前記暗号番号を生成し、一方、前記暗号番号を貰った前記利用者は、前記電気錠側の前記入力部に前記暗号番号を入力すると、前記基本番号を有する該電気錠は、前記暗号番号に対して前記サーバが利用した前記所定の暗号規約とは逆パターンの方式で復号処理する復号規約を用いて時限パスとしての前記暗号番号が正しいか否かの認証を実行する認証システム。
【請求項2】
請求項1の認証システムに於いて、前記入力部は、前記電気錠が、少なくとも前記暗号番号を入力することができる解錠操作盤・前記暗号番号を取得するための図形画像を読み取ることができる画像リーダ・前記暗号番号を非接触状態で受け取ることができる近距離無線通信部のいずれか一つであることを特徴とする認証システム。
【請求項3】
請求項1の認証システムに於いて、前記電気錠は、前記暗号番号を取得すると、前記サーバが前記基本番号を前提とした暗号番号を生成する際に用いた所定の暗号規約とは逆パターンの方式で復号処理する復号規約を用いて暗号番号を復号して前記期間情報を取得し、少なくとも前記期間情報の数値に基づいて、電気錠を解錠してよいか否かを判断し、解錠してよいと判断した場合には、電気錠の解錠制御部から解錠信号を出力して施・解錠機構のロック状態を解くことを特徴とする認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は認証システムに関し、特に、建物の出入口の扉に装着され、サーバが生成した暗号番号を、入力部を介して取得することができる電気錠に適合する認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のテンキー式電気錠は、本願発明に最も関連する技術である。すなわち、特許文献1の請求項1には、第1図と共に、次のような記載がある。「基本番号を所定の暗号化規則に従って変化させた暗証番号を入力するためのテンキーを有する入力キー操作手段と、登録暗証番号を記憶する暗証番号記憶手段と、前記入力キー操作手段のテンキーにより入力された暗証番号を前記暗号化規則とは逆の復号化規則に従って変化させた前記基本番号と、前記暗証番号記憶手段に記憶されている登録暗証番号とを比較し、両者が一致しているとき解錠信号を発生する第1の比較手段と、前記テンキーにより入力された前記暗証番号を前記復号化規則に従って変化させた前記基本番号を基に、前記暗証番号記憶手段に記憶されている登録暗証番号を用い、予め定めた番号形成規則に従って番号を形成する番号形成手段と、前記第1の比較手段の比較の結果両者が一致しないとき、前記番号形成手段が形成した番号と、前記入力キー操作手段のテンキーで入力された前記暗証番号を前記復号化規則に従って変化させた前記基本番号とを比較し、両者が一致しているとき解錠信号を発生する第2の比較手段と、前記第1及び第2の比較手段からの解錠信号により駆動されて動作する電気錠とを備え、前記第2の比較手段による比較の結果両者が一致しているとき、前記入力キー操作手段のテンキーにより入力された暗証番号を前記復号化規則に従って変化させた前記基本番号を、新しい登録暗証番号として、それ以前の登録暗証番号に代えて前記暗証番号記憶手段に記憶するようにした、ことを特徴とするテンキー式電気錠装置」。
【0003】
しかしながら、上記構成のテンキー式電気錠装置を構成する暗証番号発生装置(第1図参照)で発行する暗証番号は、所定の情報(変数)を、発行者側が設定することから、サービス業者を含む利用者の希望番号を十分に反映するものではない。したがって、特許文献1のテンキー式電気錠装置を不特定多数のサービス業者の施設に設置した場合、同一又は異なるサービス業者間で「同じようなパスワード(同一の変数)」を設定する可能性がある。換言すると、同じシステムを利用している他社に不正にパスワードが生成される可能性があり得る。また、サーバが通信網を利用して不動産屋、ホテル業、清掃業、介護業等のサービス業者に対して、所定の情報(変数)に基づいて暗証番号を設定する場合、前記サービス業者が多くなればなるほど、電気錠に記憶させる暗証番号の容量が多くなる恐れもある。さらに、特許文献1の電気錠は、駆動部として「ソレノイド」を利用するので、施錠片をロック状態に拘束する拘束部材或いはロック部材の移動量を自由に設定することができない、構造が複雑になる等の問題点がある。
【0004】
特許文献2のホテル客室ロックシステムには、次のような記載がある。「発明の課題は、ホテルの受付と客室扉錠との間の施解錠のための電気的な配線を不要としつつ、鍵を使用することなく、かつ客室扉錠としての施解錠の安全性を確保し得るホテル客室ロックシステムを提供すること。そして、発明の解決手段は、 暗証番号をチェックイン日付及び部屋番号に基づき算出するワンチップCPUがホテルの受付に設けられる。客室扉錠には、暗証番号を入力する(S33)ためのテンキーと、日付を計測するWDタイマと、テンキーにて入力されたときの日付をWDタイマにより求めてその入力時の日付と該部屋番号とに基づき暗証番号を類推演算する(S34)ワンチップCPUと、類推演算した暗証番号又は前回設定して記録しておいた暗証番号とテンキーから入力された入力番号とを照合して(S35,S40)、両者が一致したときに客室扉錠のラッチボルトを没入移動させる(S38)解錠制御部とが設けられていること」。
【0005】
上記発明は、用途を宿泊施設に限定したものであり、主に、入力時の日付と部屋番号を変数として暗証番号を設定したものであるから、特許文献1と同様に、同一又は異なるサービス業者間で「同じようなパスワード(同一の変数)」を設定する可能性がある。
【0006】
なお、特許文献3の発明の課題は、一般的な携帯端末を利用して表示されたバーコードキーの不正利用を回避できる入場キー管理システムを提供するもので、発明の解決手段は、建物の入り口に備え付けられたバーコードリーダ102は、バーコードキー管理装置103とネットワーク接続されている。その建物に入場するときは、携帯端末101にバーコードキー管理装置から電子メールで通知されたURLのバーコードキー画像データをWebブラウジング機能で表示してバーコードリーダに読み取らせ、バーコードキー管理装置が管理するキーに該当するものがあれば、入り口を開錠する。バーコードキーが開錠に使用されると、バーコードキー管理装置はそのキーデータを即座に破棄し、新規にバーコードキーを生成し、そのバーコードキーが存在するURLを電子メールで携帯端末に送信する(符号は特許文献3のもの)。
【0007】
上記の公知発明は、バーコードキーが開錠に使用されるものの、本発明の如く、電気錠が「オフラインの状態」で暗号番号を携帯端末からもらうものではなく、バーコードキーを暗号化するアプリケーションソフトが「どこにあるのか」不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2580225号公報
【特許文献2】特許第2975341号公報
【特許文献3】特開2007-197960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主たる目的は、特許文献1及び特許文献2の問題点に鑑み、サーバが時限パス(オフラインパス或いは暗号番号)を設定する際に、利用者に含まれるサービス業者を含むその利用者の希望番号を十分に反映させることにより、同一又は異なるサービス業者間で「同じようなパスワード(同一の変数)」を設定する可能性を極力少なくすることである(時限パスの重複や不正化防止)。またオフラインパスであっても、利用者が電気錠を利用することができることである。なお、実施形態の限定如何によっては、サーバが権原を有するサービス業者や利用者の希望を容易に収集することができること、電気錠の駆動源として電動モータを用いることにより、いわゆるドアクローザ装置やドアオープン装置等と共に用いることができること、構造を簡単にすることができることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の認証システムは、認証システムを建物の現場で利用することができる利用者の通信端末と連絡をとることができる管理端末と、建物或いは建物の開閉体に設けられた入力部と、建物の開閉体に設けられ、施・解錠機構を解錠状態に制御する解錠制御部とを備える電気錠と、利用者の希望に基づき時限パスとしての暗号番号を生成し、かつ生成した該暗号番号を管理端末又は通信端末のいずれかに伝えるサーバとから成る認証システムであり、前記サーバは、前記暗号番号を生成する際、前記利用者に含まれるサービス業者の識別番号としての数値と前記電気錠に付与された固有IDの数値との組み合わせから成る基本番号を前提とした上で、少なくとも前記利用者が希望する利用条件の中に含まれる施・解錠操作が可能な期間情報の数値に基づいて、かつ所定の暗号規約を用いて前記暗号番号を生成し、一方、前記暗号番号を貰った前記利用者は、前記電気錠側の前記入力部に前記暗号番号を入力すると、前記基本番号を有する該電気錠は、前記暗号番号に対して前記サーバが利用した前記所定の暗号規約とは逆パターンの方式で復号処理する復号規約を用いて時限パスとしての前記暗号番号が正しいか否かの認証を実行することを特徴とする。
【0011】
上記構成に於いて、前記入力部は、前記電気錠が少なくとも前記暗号番号を入力することができる解錠操作盤・前記暗号番号を取得するための図形画像を読み取ることができる画像リーダ・前記暗号番号を非接触状態で受け取ることができる近距離無線通信部のいずれか一つであることを特徴とする。また、前記電気錠は、前記暗号番号を取得すると、前記サーバが前記基本番号を前提とした暗号番号を生成する際に用いた所定の暗号規約とは逆パターンの方式で復号処理する復号規約を用いて暗号番号を復号化して前記期間情報を取得し、少なくとも前記期間情報の数値に基づいて、電気錠を解錠してよいか否かを判断し、解錠してよいと判断した場合には、電気錠の解錠制御部から解錠信号を出力して施・解錠機構のロック状態を解くことを特徴とする。前記電気錠は、駆動源として電動モータ、直線運動をするスライダーを含む施・解錠機構を採用することが好ましい。
【0012】
なお、ここで、「建物の現場の利用者」とは、例えば管理端末を占有する者が電気錠の管理者(例えばサービス業者の一例である賃貸物件の大家)であり、一方、サービス業者が賃貸物件のスマート内覧のサービスを提供する者である場合には、内覧を希望し前記賃貸物件の現場(入口)で電気錠に対して一時的に時限パスとしての暗号番号を与えることができる人をいう。
【0013】
また上記構成に於いて、前記入力部が、テンキー式の解錠操作盤である実施形態の場合には、現場の利用者は、印刷物としてのメモ手段や利用者が所持している通信端末の操作表示部に表示されている暗号番号を見て入力するようにしても良い。
【0014】
また前記入力部が画像リーダである実施形態の場合には、例えば二次元コードやQRコード等の画像コード(図形化コードともいう)を、電気錠側の入力部としての画像リーダが、現場の利用者が所持している通信端末の操作表示部や印刷物に表れている画像コード或いは図形化コードを読み取り、電気錠は予め記憶部に格納した専用のアプリケーションソフトにより、貰った画像コードから前記暗号番号に戻し、それを記憶部に格納することが望ましい。ここで画像リーダは電気錠に搭載、又は電気錠側に設置されているカメラや、赤外線方式のコードリーダ等である。さらに、入力部が近距離無線通信部である実施形態の場合には、利用者の通信端末も同一機能を有する近距離無線通信部を有するようにするのが良い。
【0015】
さらに、前記施・解錠操作が可能な期間情報は、開始日時情報と有効期間情報の組み合わせ、又は開始日時情報と終了日時情報の組み合わせのいずれか一方であるようにすると良い。
【0016】
ここで前記開始日時情報と有効期間情報の組み合わせの一例を述べると、開始日時が2022/2/1の15:00と有効期間が開始日時から24時間の組み合わせであり、また前記開始日時情報と終了日時情報の組み合わせの一例を述べると、開始日時が2022/2/1の15:00と終了日時が2022/2/2の10:00の組み合わせである。これらの具体例は、いずれも時間範囲の概念に含まれる。さらに、前記電気錠は施錠片を有し、該施錠片は、例えば当業者が「反転ラッチ」、「ラッチボルト」、「デッドボルト」と称するものが含まれる。
【0017】
また前記電気錠は、錠箱のフロントから先端部が突出する反転ラッチと、該反転ラッチの移動を阻止する阻止部材と、制御部によって起動、回転方向及び停止が制御される電動モータと、この電動モータの駆動力を伝達する動力伝達手段と、この動力伝達手段に連動するカムギアと、このカムギアに形成された偏心カム溝及び該偏心カム溝に係合する係合ピンからなる動力変換機構と、前記カムギアの回転運動が直線運動となるスライダーを有し、解錠時、前記電動モータが起動すると、前記動力伝達手段及び動力変換機構を介して前記スライダーが前進して前記反転ラッチに対する阻止状態を解くことを特徴とする。さらに、前記電気錠は、錠箱のフロントから先端部が突出するラッチボルトと、制御部によって起動、回転方向及び停止が制御される電動モータと、この電動モータの駆動力を伝達する動力伝達手段と、前記ラッチボルトと係合する係合腕を有すると共に、前記動力伝達手段に連動する回転体を有し、解錠時、前記電動モータが起動すると、前記動力伝達手段及び回転体を介して前記ラッチボルトが前記錠箱内に没入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、特許文献1や特許文献2よりも、サービス業者を含むその利用者の希望情報等を十分に反映させることにより、色々な変数を組み合わせることが可能となり、同一又は異なるサービス業者間で「同じようなパスワード(同一の変数)」を設定する可能性を極力少なくすることができる。したがって、暗号番号を複雑化して解読をより一層困難にすることができる(時限パスの重複や不正化防止)。またオフラインパスであっても、利用者が電気錠を利用することができることができる。
【0019】
なお、本発明の電気錠は、駆動源として電動モータ、直線運動をするスライダーを含む施・解錠機構を採用することにより、施錠片をロック状態に拘束する拘束部材或いはロック部材の移動量を自由に設定することができると共に、いわゆるドアクローザ装置やドアオープン装置等と共に用いることができることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1乃至図11は本発明の第1実施形態を示す各説明図。図12図13図14は本発明の実施形態の変形例1乃至変形例3を示す各概略説明図。
図1】本発明の基本的な流れを示す概念構成図。
図2】サーバ3の構成を示すブロック図。
図3】サーバ3が暗号番号を生成するフローチャート。
図4図3における暗号化dの概念をブロックで示し概略説明図。
図5】電気錠の構成を示す概略説明図。
図6図5に於いて、中心線Oを基準にして錠箱をひっくり返した場合の概略説明図(施錠状態)。
図7】要部(動力伝達手段の最終歯車、カムギア、コロを有する係合ピン)の説明図。
図8】カムギアの偏心カム溝と係合する係合ピンとスライダーとの係合構造を示す概略断面説明図。
図9】反転阻止部材の前進により、反転ラッチに対するロッキングピースの阻止状態が解かれた説明図。
図10】解錠操作盤及び電気錠の構成を示すブロック図。
図11】電気錠が暗号番号を復号規約で平文へと解法するフローチャート。
図12】電気錠の変形例1の実施形態を示す概略説明図。
図13】電気錠の変形例2の実施形態を示す概略説明図。
図14】電気錠の変形例3の実施形態を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至図11は、第1実施形態の認証システムXの各説明図である。まず図1は本発明の基本的な流れを示す概念構成図である。この概念構成図を見て、例えば利用者Pを理解する場合、管理端末2を占有する者が電気錠5の管理者(例えば賃貸物件の大家)であり、一方、サービス業者SPが賃貸物件のスマート内覧のサービスを提供する者である場合には、内覧を希望しかつ前記賃貸物件の現場(入口)で電気錠5に対して一時的に時限パスとしての暗号番号を与えることができる人、付言すると、建物の現場(入口)で、所持している通信端末1を操作する人を想起すると理解し易い。
【0022】
まず図1の認証システムXに於いて、Pはオフラインパス(ここでは「暗号番号」ともいう)を使う建物の現場(入口)の利用者で、該現場の利用者Pは、例えば不動産屋、ホテルや民宿の宿泊者、清掃業者の清掃員、看護や介護施設の介護人等のサービス業者が占有する連携サーバ3aから直接又は電気錠を管理する管理端末2を介して、前記オフラインパス(暗号番号)を書き込んだメモ用紙・カード・手帳等のメモ手段、該暗号番号を一時的に記憶する記憶部、該暗号番号を画面に表示する操作表示部等を有する通信機器(ここではメモ用紙や通信機器を含めて便宜上「メモ手段」1という)を所持している。メモ手段1は、利用者Pが所持する通信端末(以下、「スマホ」ともいう)であり、特に図示しないが、周知の如く、電源、操作表示部、制御部、スマホカメラ、近距離無線通信部等の構成要素を有している。
【0023】
次にSPは、建物を管理する不動産業、宿泊施設を提供する宿屋業、建物の内部を清掃する清掃業、看護や介護施設を提供する介護業等のサービス業者で、該サービス業者SPは、PCやスマホ等と称される管理端末2や利用者の通信端末1と通信網を介して連絡を取ることができる。利用者Pとサービス業者SPとの間では、利用者Pからサービス業者SPに対して、通信網を利用して、利用者の希望内容である利用条件を伝える(ステップS1)。前記利用条件には、少なくとも利用者の訪問日時(例えば2022年04月24日午後2時)と訪問時間の範囲(例えば滞在時間として2時間以内)が含まれている。実施形態如何によっては、利用条件には、解錠回数又は施錠回数、部屋の住人が住んでいるか又は空き室状態であるか、使用可能期間(宿泊日数)、利用者の人数又は年齢等の各変数値が含まれる。
【0024】
次に符号3はサーバである。実施形態のサーバ3は、サービス業者SP側の連携サーバ3aと共通ソフト資源(例えばapi)を利用して接続するサーバ本体3bとから構成されている。前記連携サーバ3aは、実施形態ではサービス会社の一種であり、例えば各サービス業者SPの各利用者Pの利用条件を直接又は間接的に収集し(ステップS2)、一方、前記サーバ本体3bは前記連携サーバ3aから貰った前記利用条件、サービス業者SPの識別番号、後述する電気錠に付与された固有ID、その他の変数値等を利用して前述した暗号番号fを生成する。サーバ3は、暗号番号fを生成したならば連携サーバ3aに伝え(ステップS3)、連携サーバ3aは暗号番号fを管理した後に図示しない通信網を介して管理端末2に通知する(ステップS4)。そして、サービス業者SPは前記暗号番号を取得後、通信網を介し又は介さないで、利用者Pに暗号番号fを伝える(ステップS5)。
なお、前記暗号番号(オフラインパス)fの通知は、連携サーバ3aから直接メモ手段1である利用者Pのる通信端末1に通知しても良い(ステップS5なし)。
【0025】
利用者Pは、実施形態如何により、前述したメモ手段1に暗号番号を記入或いは記録する。その後、利用者は、建物4或いは建物の開閉体5に設けられた入力部6の一例としてのテンキー式の解錠操作盤6を操作して前記暗号番号fを入力する。電気錠7は前記暗号番号を取得すると、サーバ3が暗号番号を生成する際に用いた所定の暗号規約とは逆パターンの方式で復号処理する復号規約を用いて時限パスとしての前記暗号番号fが正しいか否かの認証を実行し、正しいと判定した場合には、電気錠7の解錠制御部87から解錠信号を出力して施・解錠機構のロック状態を解く(解錠)。これによって、例えばマンションの出入り口に設けられた開閉体(扉)5を開くことができる。なお、前記電気錠7に前記復号処理に必要なサービス業者SPの識別番号等の数値を事前に登録する役割は、例えばサービス業者SP、連携サーバ3a、管理端末2の管理者のいずれか一方で良く、その場合通信網を介し又は介さないで、かつ、例えば単数又は複数の登録用キーを操作して電気錠7にサービス業者SPの識別番号等の数値を事前に登録する。なお入力部6の実施形態によっては、後述の変形例2の如く、電気錠7の記憶部に、予めサービス業者SPの識別番号等の数値を専用のアプリケーションソフトを利用して記録しておくと良い。
上記構成に於いて、電気錠7は暗号番号を取得すると、サーバ3が暗号番号を生成する際に用いた所定の暗号規約とは逆パターンの方式で復号処理する復号規約を用いて利用条件情報を取得し、その利用条件と電気錠に内蔵された時計から得た現在日時情報や電気錠の記憶部に記憶された電気錠の状態情報等と照らし合わせ、電気錠を解錠してよいか否かを判断し、解錠してよいと判断した場合には、電気錠7の解錠制御部87から解錠信号を出力して施・解錠機構のロック状態を解く(解錠)。
【0026】
次に図2はサーバ3の構成を示すブロック図である。図2に於いて、13は連携サーバ3aから、例えば共通ソフト資源(例えばapi)を利用して利用者Pの利用条件(少なくとも利用者の訪問日時の数値及び訪問時間範囲の数値、その他の変数)を入力する入力手段で、この入力手段13には前記利用条件の他に、電気錠に付与された固有IDの数値も入力する。
【0027】
すなわち、少なくとも利用者Pが希望する訪問日時、訪問時間範囲、業者の識別番号、部屋が空き室状態か否か、解錠回数を何回にするか等の任意の数値(変数)と電気錠7に付与された固有IDの数値(定変数=部屋係数に相当)とを適宜に組み合わせた後、例えばキーボード13を操作して一桁或いは二桁の数字を入力する。その際、サービス業者SPに予め割り振った、またはサービス業者SPが自ら任意に設定した識別番号を組み合わせて入力しても良い。ここではサービス業者SPの識別情報としての任意の数値と電気錠7に付与された固有IDの数値との組み合わせから成る所定数桁の数字を「基本番号」とする。
【0028】
14は前記基本番号を記憶する基本番号記憶手段である。好ましくは、基本番号記憶手段14は基本番号を所定桁数の利用係数に置換する基本番号テーブルを格納する。15は所定の暗号規約、16は所定の暗号規約15を利用して暗号番号を生成する暗号番号生成手段、17は前記暗号番号生成手段16で生成した暗号番号を一時的に記憶する暗号番号記憶手段、18は前記暗号番号を連携サーバ3aに対して出力する出力手段である。なお、19は変数値に対して周期情報を付与することができる計時手段である。
【0029】
付言すると、サーバ3の暗号番号生成手段16は、暗号番号を生成する際、前述した基本番号を前提とした上で、少なくとも前記利用者Pが希望する利用条件の中に含まれる施・解錠操作が可能な期間情報の数値(例えば訪問日時の数値及び訪問時間範囲の数値)に基づきかつ所定の暗号規約15を用いて暗号番号を生成する。
【0030】
次に図3は所定の暗号規約15を用いて暗号番号を生成するフローチャートである。この暗号番号を生成段階は、例えばサービス業者の識別情報を含む利用者の利用条件に基づいて横一連に平文を生成する「平文生成a」、区分された各数値の位置を相互に入れ替えする「シャッフルb」、例えばサービス業者の識別情報を含む利用者希望番号及び電気錠の固有IDの数値を利用する「暗号キー生成c」、前記シャッフルbによって生じた数値の位置情報と前記暗号キー生成cに基づく「暗号化d」、しかる後に、暗号化dした値に対して計時手段19を利用した周期情報付与eして時限パス(オフラインパス)fを生成する各工程を備えている。なお、前記暗号キー生成cは、平文を暗号化することであるから、正確には「暗号化キーc」を作る意味合いである。また前記計時手段19による周期情報付与は、実施形態では、電気錠7と同様の内容をもち、かつ同じ周期で数値をカウントさせるものであるから、数値同期用の計時手段ともいえる。
【0031】
次に図4は、図3に於いて、時限パス(オフラインパス)fを生成する際の「暗号化d」の概念をブロックで示した概略説明図である。この概略説明図で理解することができるように、サーバ本体3bの所定の暗号規約15は、有効時間開始時刻、有効時間範囲、その他情報(解錠回数)等に基づく変数番号に基づいて演算し、かつ少なくとも4つに区別することができる平文を生成し、さらに前記平文の4つに区別の数値の位置を入れ替えるこができるシャッフル方式を用いて「24通り」の数値の組み合わせを可能にし、上ブロック(図面左側の先頭に位置するブロック)乃至下ブロック(図面右側の後尾に位置するブロック)の各ブロック(4つ)の中にそれぞれ位置している数値を、例えば矢印で示すように置換し、時限パスとしての暗号番号を生成する〈サーバの暗号化〉。なお、暗号化用アルゴリズムの選定の際、その選定基準により、例えばPC4を採用する。この「PC4」を採用すると、暗証番号の10進数12桁(40bit弱)で利用することができる。
【0032】
次に図5乃至図11を参照にして、テンキー式の電気錠7の一例を説明する。この電気錠7は、新規の電動サムターンであり、該電動サムターン7は、図1で示したテンキー式の解錠操作盤6と電気的に接続し、錠箱23のフロント24から先端部が突出する反転ラッチ26と、施錠時、この反転ラッチの反転を阻止するロッキングピース8A、8Bを含む反転阻止部材32と、制御部81によって起動、回転方向及び停止が制御される電動モータ28と、この電動モータの駆動力を伝達する歯車を含む動力伝達手段51と、この動力伝達手段に連動するカムギア60と、このカムギアに形成された偏心カム溝58及び該偏心カム溝に係合する係合ピン68からなる動力変換機構により、前記カムギアの回転運動がスライダー71の直線運動となり、解錠時、制御部81を構成する解錠制御部87の解錠信号によって前記電動モータ28が起動すると、前記動力伝達手段51及び動力変換機構を介して前記スライダー71が前記反転ラッチ側に前進して前記反転ラッチ26に対するロッキングピース8A、8Bの阻止状態を解く。なお、前記偏心カム溝58は、一側面に凹所状又は切欠状に形成しても良い。
【0033】
まず、図5及び図6を参照して具体的な構成を説明する。なお、例えば図10で示すテンキー式の解錠操作盤6は、その筐体に「0~9」のキーからなるテンキー6a、クリアキー6b等の操作部を有すること、表示部を有すること、電源67を有すること、表示ランプを有すること等々は当業者にとって周知技術なので、細部的説明は割愛する。なお、符号Kはサーバ3が発行した暗号番号を登録するための登録用キーである。
【0034】
(1)環境部材
図5及び図6に於いて、21は戸枠、5は水平方向に回転する開閉体としての扉、23は扉5の自由端部に固定された錠箱、24はフロント、25は受座、26は施錠片としての反転ラッチである。換言すると、Xは図示しないサムターン摘みを備える電動サムターン(電動ラッチ錠も含む)で、この電動サムターンXは、錠箱23に主な構成部材が設けられた錠本体を有し、この錠本体の反転ラッチ26は、その先端部はフロント24から突出し、受座25の係合孔に係入している。周知のように、扉5は、その基端部が戸枠21の縦枠に蝶番を介して軸支され、水平方向に回転する。また概略的に示した錠箱23は、普通一般に、ケース身と、ケース蓋から構成されている。実施形態の錠箱23は横長状の箱体である。なお、図5及び図6では、図面が複雑になるので、サムターン摘み、該サムターン摘みに連係する一対の作動アーム、操作部材用の作動片、緊急時に使用するシリンダ錠などを省略しているが、これらの部材は、錠箱23に適宜に設けることができる。ここでは錠箱23の細部的事項やその余の部材の説明や符号は割愛し、電動サムターンXの主な構成部材について説明する。
【0035】
(2)ラッチ枠27
符号27は、錠箱23内の前方の中央部に固設された縦断面コ字状のラッチ枠で、このラッチ枠27の上下に位置する水平対向壁には、上下一組のロッキングピース8A、8Bの係合先端部8a、8aを受け入れる切欠状の開口が形成されている。また、水平対向壁に直交する垂直壁の内面にはバネ端支持部が突出形成され、該バネ端支持部と反転ラッチ26の後端部の間には、該反転ラッチ26をフロント24から突出する方向に常時付勢するラッチバネが設けられている。
【0036】
(3)反転ラッチ26
反転ラッチ26は、その後端部がラッチ枠27内に収まるようにフロント板24のラッチ用開口に配設されている。扉の閉扉時、反転ラッチ26の先端部は、フロント24から突出して受座25の係合孔に係入している。当業者は、この状態を仮施錠と称しているが、ここでは便宜上、「施錠状態或いはロック状態」という。
【0037】
反転ラッチ6は、平面形状がほぼ菱形に形成され、ラッチングの係止面、受け具を構成する受座5の係合孔に対する傾斜面、ストッパー用突起、上下の係合受け部等を有している。普通一般に、反転ラッチ26は、扉5の開閉時、受け具の係合部に摺接すると、反転ラッチ26の後端部(内端部)に嵌め込まれた平面門形形状のラッチ受け及びラッチバネ(圧縮コイルばね)を介して反転かつ進退動する。
【0038】
(4)反転阻止部材32
反転阻止部材32は、施錠時、反転ラッチ26の反転を阻止する機構を構成する部材で、少なくとも一つのロッキングピース(8A、8Bのいずれか一方)と、このロッキングピースを回転自在に軸支する固定軸29と、この固定軸に中央部が設けられ、一端部が錠箱に内壁面に圧接し、一方、他端部が前記ロッキングピース(8A、8Bのいずれか一方)のバネ支持部に支持された戻しバネ30とから成る。
【0039】
実施形態の反転阻止部材32は、上下一組のロッキングピース8A、8Bを有し、該上下一組のロッキングピース8A、8Bは、上下方向のアーム部の先端部の長孔に係合する一つの可動連結軸55を介して鋏揺動自在に連結されている。上下一組のロッキングピース8A、8Bの構成は公知事項なので、ここでは簡単に説明する。符号8aは略中央部の軸支部分から反転ラッチ26の係合受け部側へ略水平方向へと延びる係合先端部、符号8bは軸支部分から前記係合先端部とは逆方向に延びる係合後端部、符号8cは軸支部分から略垂直方向に延びアーム部である。実施形態では、錠本体の解錠時、スライター71の先端部に形成した突起状の押圧部73が、前記ロッキングピース8A、8Bのアーム部8cの先端部を直接又は間接的(可動連結軸55を介して)に押し付ける。そうすると、可動連結軸55は前方(反転ラッチ側、図面左側)へ所要量進むことから、上下一組のロッキングピース8A、8Bは、上下の固定軸29、29を支点に、上下の係合先端部8a、8aが反転ラッチ26の上下の係合受け部から離れる方向へと回転する(鋏み揺動)。
【0040】
(5)取付けベース部材、主な部材
図5を基準にすると、横長状の錠箱23の内部空間の後部側には、複数個の支軸、軸孔、貫通小孔、矩形開口等を有する扁平枠状或いは扁平箱状の取付けベース部材39が固定的に設けられている。しかして、前記取付けベース部材39の中央部寄りの部位には、水平支持板40が設けられ、該水平支持板40の上面には、錠本体の施錠状態を検出する第1スイッチ(検知器)61と、錠本体の解錠状態を検出する第2スイッチ(検知器)62と、電動モータ28に制動するための第3スイッチ(検知器)63が併設的に配設されている。
【0041】
前記第1乃至第3のスイッチ61、62、63の上方には、図面左側に位置する施・解錠検知レバー64と、図面右側に位置し、前記施・解錠検知レバーに連動するブレーキ検知レバー65が設けられている。実施形態では、前記第1乃至第3のスイッチは、取付けベース部材39に設けられた制御部81に対して信号線を介して錠本体の状態信号及び電動モータに対する制動信号をメカ的に入力する信号入力部を構成する。
【0042】
また実施形態では、前記取付けベース部材39にバッテリーとしての二次電池(内臓電源)67が設けられている。さらに、前記二次電池67により駆動する電動モータ(駆動部)28が横設されている。電動モータ28は、前記制御部81によって、その起動、回転方向及び停止が制御される。なお、電動モータ28に供給する電源67は、外部電源(商用電源)であっても良い。電源67が外部電源の場合には、交流電源を整流して電動モータ28に供給する。なお、本発明の特定要件に関する制御部81と錠本体の施・解錠機構80については後述する(図11)。
【0043】
(6)動力伝達手段51
次に、図5図6等を参照にして動力伝達手段51を説明する。動力伝達手段51は、電動モータ28のウオーム(出力軸)に噛合する伝動歯車52を含み、前記伝動歯車52は、前記ウオームに噛合する大径歯車52aと、この大径歯車の一側面に突出形成され、かつ大径のカムギア60の外周部に形成された係合歯に噛合する小径歯車(最終歯車)52bとを有している。実施形態の動力伝達手段51は、例えば扁平枠状の取付けベース部材39と、これに対向する扁平枠状支持板に横設した歯車軸56に取り付けられている。
【0044】
(7)カムギア60
大径のカムギア60は、動力伝達手段51の伝動歯車52と共働する従動歯車である。すなわち、カムギア60は動力伝達手段51に連動して左右に回転することができる。
【0045】
(8)動力変換機構
次に、図7及び図8を参照にしてカムギア60を含む動力変換機構を説明する。動力変換機構は、例えばカムギア60の一側面に形成された環状或いは環状的な偏心カム溝62及び該偏心カム溝に係合すると共に、スライダー71の係合部(例えば係合小孔)に連結された係合ピンから構成されている。
【0046】
しかして、カムギア60の偏心カム溝58は、該カムギア60の中心軸筒部60aの外周面の一部からアンモナイトの外観形状のように周方向に次第に膨らんだ弧状突起部分59に沿って形成されており、解錠時、カムギア60が錠箱23内の略中心部に位置するように、例えば錠箱23内の取付けベース部材39及び扁平枠状支持板に横設した中心軸57を基準にして一方向に回転すると、係合ピン68は前記弧状突起部分59の弧状面に沿って前記中心軸筒部55aから次第に離れて行く。
実施形態では、前記係合ピン68の一端部には偏心カム溝58を滑動する短筒状のコロ66が設けられ、その他端部は、スライダー71の後端部側に適宜に連結されている。
【0047】
(9)スライダー71
スライダー71は、図8で示すように、少なくとも幅広い板状部分72と、この幅広い板状部分の先端部の略中央部に突出形成された押圧部73と、前記幅広い板状部分に形成された係合ピン68用の付番の係合小孔とを有し、解錠時、図9で示すように、前記押圧部73が前述したロッキングピース8A、8Bの軸支部分から略垂直方向に延びるアーム部8cの先端部の後面或いは可動連結軸55を押し付け、これにより、前記ロッキングピースの軸支部分から水平方向に延びる先端係合部8aが、反転ラッチ27の係合受け部から離れる。付言すると、電動ラッチ錠Xは、解錠時、電動モータ28が起動すると、動力伝達手段51及び動力変換機構を介してスライダー71が反転ラッチ26側に所要量前進して前記反転ラッチ26に対するロッキングピース8A、8Bの阻止状態(ロック状態)を解く。なお、スライダー71の後端部には、図示しない操作部材(サムターン、ハンドル等)の作動片又は作動軸が余裕をもって入り込む。
【0048】
次に、図10を参照にして、本発明の特定要件に関する制御部81と錠本体の施・解錠機構80について説明する。前述したように、電気錠7は暗号番号を取得すると、サーバ3が暗号番号を生成する際に用いた所定の暗号規約15とは逆パターンの方式で復号処理する復号規約86を用いて時限パスとしての前記暗号番号が正しいか否かの認証を実行し、正しいと判定した場合には、電気錠7の解錠制御部87から解錠信号を出力して施・解錠機構80のロック状態を解くことができる。
【0049】
図10は、テンキー式の解除操作盤6と、該解除操作盤6電気的に接続する電気錠7の構成を示すブロック図である。解除操作盤6は、前述したように、その筐体に「0~9」のキーからなるテンキー6a、クリアキー6b、登録用キーK等を有する。図10では、便宜上、二つのブロックを描き、上方のブロックに制御部81の具体的構成を入れ、下方のブロックに錠本体の施・解錠機構80の構成を簡単に入れている。
【0050】
さて、81は制御部、82は電気錠7に記憶させた基本番号記憶手段(望ましくはサービス業者の識別番号を記憶する手段)、一方、83は入力暗号番号記憶手段(利用者等が現場でテンキーを操作して暗号番号を入力した場合に於いて、前記暗号番号を第2記憶部に記憶することで、図10では便宜上「入力暗号記憶手段83」と記載している)、84は周期情報付与用の計時手段、85は暗号番号解法手段(例えば平文か否かを比較・判断する手段)、86は復号規約、87は制御部81を構成する解錠制御部である。
【0051】
前述したように、まず、利用者Pが認証システムXを利用する前に、予めサービス業者SP又は連携サーバ3aのいずれか一方が、復号処理に必要なサービス業者SPの識別番号等の数値等を入力する。電気錠の制御部は、望ましくはサービス業者SPの識別情報としての任意の数値と電気錠7に付与された固有IDの数値との組み合わせから成る所定数桁の数字を「基本番号」として基本番号記憶手段82に記録される。また、直接「基本番号」を入力しても良い。
【0052】
さて、利用者Pがホテル、マンション、各種施設の建物等の現場で認証システムXを利用する場合には、例えば入力部の一例としての解除操作盤6の解錠用キーを利用してから「オフラインパス(暗号番号)f」を入力する。そうすると、前記利用者Pの時限パスとしての暗号番号fは、入力暗号番号記憶手段(入力暗号記憶手段)83に記録される。前記入力暗号番号記憶手段83に暗号番号fが記録されると、計時手段84がスタートすると共に、暗号番号解法手段(比較・判定手段)85が復号規約86に基づいて入力暗号番号記憶手段83に記録されている入力暗号番号を、後述の図11で示すように「復号化」して行く。暗号番号解法手段85は、少なくとも最終処理に於いて、オフラインパス(暗号番号)fを復号することで、サーバにおける暗号番号生成の際、変数番号として使用した有効時間開始時刻、有効時間範囲、その他情報(解錠回数)等、電気錠の利用条件となる情報を取得し、電気錠が備える計時手段が示す現在時刻や、現在の電気錠モードや施解錠等の状態情報と比較することで、結果、電気錠を制御する利用条件情報として正当であるかを判断する機能を有する。そこで、暗号番号解法手段85が、今仮に、電気錠を制御する利用条件情報として正当であると判定したならば、解錠制御部87は、施・解錠機構80に対して解錠信号を出力する。
【0053】
施・解錠機構80は、前述したように駆動部(電動モータ)28、該駆動部の駆動力を伝える動力伝達手段51、係合ピン68と共に動力変換機構を構成するカムギア60、直線運動をするスライダー71、ロッキングピース8A、8Bを含む阻止部材32、反転ラッチ26、電源67等を有する。
【0054】
次に、図11を参照にして暗号番号に対する平文への「復号(化)」について説明する。なお、ここでは暗号番号を平文へと解読することから、復号化ではなく「復号」の用語を用いることにする。
【0055】
図1で説明したように、実施形態の認証システムXは、暗号番号fを貰った利用者Pが、サーバ3と電気錠7とが通信網で接続していない場合であっても、前記電気錠7の解錠操作盤6にサーバ3が発行した暗号番号fを入力すると、電気錠7の解錠制御部87は、前記暗号番号fに対して前記サーバ3が利用した前記所定の暗号規約15とは逆パターンの方式で復号処理する復号規約86を用いて時限パスとしての前記暗号番号fが正しいか否かの認証を実行する。図3で〈暗号化〉について説明したので、ここで、図3で用いた符号をそのまま用いて〈復号〉を説明する。
【0056】
図11に於いて、符号fはサーバ3が発行した時限パス或いは暗号番号(オフラインパス)、86は電気錠7の復号規約、e1はサーバ3が付与した周期情報を取るための周期情報分離、d1は復号、c1は前記復号の際に使用される暗号キー生成(この実施形態では復号する時も暗号化した時と同じキーを用いるが、セキュリティーを高めるために特別な復号キーなるものを使用しても良い。)、b1は4つのブロックにある数値を元の位置へと戻すデシャッフル、84はサーバ3の計時手段19と同様に数値を同期させる計時手段(何日、何時、何分、何秒という現在時刻をカウント)、a1は前記計時手段84に基づいて有効日時を判定する有効日時判定(平文へと戻して解読)である。
【0057】
最後に、暗号番号解法手段85が前記有効日時判定a1に基づき、電気錠を制御する利用条件情報として正当であるかを判定する〈電気錠の復号判定〉。判定の結果、復号した暗号番号fが正しい時(利用条件情報と電気錠が備える計時手段が示す現在時刻や、現在の電気錠モードや施解錠等の状態情報とを比較して、電気錠制御可能であると判断した場合)は、制御部81は駆動部28に対して制御信号を指令する。その結果、施錠片としての反転ラッチ26は、阻止部材32から解放される。
【0058】
図12を参照にして、テンキー式の解錠操作盤6に接続する電気錠の他の実施形態を説明する。この電気錠7Aが第1実施形態の電気錠7と主に異なる点は、施錠片が「反転ラッチ26」ではなく、「ラッチボルト26A」にしたことである。電気錠7Aの錠箱23A内に制御部81A、該制御部によって制御される駆動部(電動モータ)28A、該駆動部の駆動力を伝える動力伝達手段51A、該動力伝達手段と共働すると共に、ラッチボルト26Aをラッチバネのばね力に抗して錠箱内に戻す係合腕71aを有する回転体71A、電源67等が設けられている。なお、符号は図示しないサムターン摘みに接続する角軸、76は前記回転体71Aの外周部に形成した係合歯と係合する被係合歯、77は回転体71Aのボス部に設けられた突片と係合する付勢手段、78は弾性ストッパー、79はラッチボルト26Aの先端係合部に連続する水平杆に設けられたラッチバネ、80Aは施・解錠機構である。
【0059】
上記のように反転ラッチ26を備える電気錠7を、ラッチボルト26Aを備える電気錠7Aにしても、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
以上の通りであることから、本実施形態の電気錠は、反転ラッチ26に対するロック状態を解くものと、ラッチボルト26Aを錠箱内に没入させるもの「二種類」がある。
なお、本発明の基本的構成は、建物を管理する不動産屋、宿泊施設を提供する宿屋、建物の内部を清掃する清掃業者、看護や介護施設を提供する介護業者のいずれかのサービス業者に対して適用可能である。
【0060】
〈付記〉本発明はビジネス特許の一例であり、サーバ3が時限パス(オフラインパス或いは暗号番号)fを生成し、生成した時限パスfを、通信網経由で管理端末2を介して又は介さないで、時限パスfを利用者Pの通信端末に通知する。利用者Pは時限パスfを貰ったならば、建物の現場で、時限パスfを電気錠側の入力部6に入力する。
サーバ3と電気錠7、7Aが前記通信網に接続していない状態(オフライン)で、好ましくは、4桁程度の一般的な暗証番号ではなく、6桁乃至12桁の数字を「暗証番号」として前記時限パスfを入力部6に入力する。
【0061】
次に、図13は、変形例2である。この変形例2は、入力部6Aが画像リーダである実施形態である。例えば二次元コードやQRコード等の画像コード(図形化コード)を電気錠5側の入力部6Aが現場の利用者が所持している通信端末1の操作表示部に表れている画像コードを、画像リーダで読み取り、電気錠は予め記憶部に格納した専用のアプリケーションソフトにより、貰った画像コードから前記暗号番号に戻し、それを記憶部に格納することが望ましい。ここで画像リーダは電気錠に搭載、又は電気錠側に設置されているカメラや、赤外線方式のコードリーダ等である。
【0062】
最後に図14は、変形例3である。この変形例3は、入力部6Bが近距離無線通信部である実施形態の場合である。この場合、利用者Pの通信端末1も同一機能を有する近距離無線通信部を有するようにするのが良い。例えばNFC(Near Field Communication)やBLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy)通信規格を利用すると良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、建物を管理する不動産屋、宿泊施設を提供する宿屋、建物の内部を清掃する清掃業者、看護や介護施設を提供する介護業者のいずれかのサービス業者の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
X…認証システム、
P…利用者、
SP…サービス業者、
f…時限パス(オフラインパス或いは暗号番号)、
1…メモ手段(例えば通信端末)、2…管理端末、
3…サーバ、3a…連携サーバ、3b…サーバ本体、
6、6A、6B…入力部(テンキー式の解錠操作盤等)、
7、7A…電気錠、
81、81A…制御部、
13…入力手段、
14…基本番号記憶手段、
15…所定の暗号規約、
16…暗号番号生成手段、
17…暗号番号記憶手段、
18…暗号番号出力手段、
19、84…計時手段、
26…施錠片(反転ラッチ、ラッチボルト)、
28、28A…駆動部(電動モータ)、
51…動力伝達手段、52…阻止部材、
60…カムギア、68…係合ピン、
71…スライダー、71A…回転体、
86…復号規約、
80…施・解錠機構、
81…制御部、
82…基本番号記憶手段、
83…入力暗号番号記憶手段(入力暗号記憶手段)、
85…暗号番号解法手段、
87…解錠制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14