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  • 特開-印判 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046790
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】印判
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/52 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
B41K1/52 A
B41K1/52 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152078
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内田 成俊
(72)【発明者】
【氏名】西沢 克尚
(72)【発明者】
【氏名】住 俊和
(72)【発明者】
【氏名】古谷 怜未
(57)【要約】
【課題】
本発明は、吸蔵体の表面不良が発生した場合でも、直液式インキカートリッジのインキ供給孔の気密性を確保することでインキ漏れを確実に防止することができる印判を提供することを目的とする。
【解決するための手段】
印字体と、該印字体に接触して設けられる吸蔵体と、該吸蔵体にインキを供給する直液式のインキカートリッジと、該インキカートリッジに備えた、前記吸蔵体にインキを供給する為のインキ供給孔と、を有する印判であって、前記インキ供給孔と吸蔵体の間に多孔質体を設け、該多孔質体は、前記インキ供給孔の気密性を前記多孔質体に浸透したインキにより確保することを特徴とする印判である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字体と、
該印字体に接触して設けられる吸蔵体と、
該吸蔵体にインキを供給する直液式のインキカートリッジと、
該インキカートリッジに備えた、前記吸蔵体にインキを供給する為のインキ供給孔と、
を有する印判であって、
前記インキ供給孔と吸蔵体の間に多孔質体を設け、該多孔質体は、前記インキ供給孔の気密性を前記多孔質体に浸透したインキにより確保することを特徴とする印判。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸蔵体の表面不良が発生した場合でも、直液式インキカートリッジのインキ供給孔の気密性を確保することでインキ漏れを確実に防止することができる印判に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直液式インキカートリッジのインキ供給孔から吸蔵体にインキを供給する機構を備えた直液式の印判は本出願人により開示されている(先行文献1)。この種の印判では、吸蔵体にインキが十分に含侵された状態(飽和状態)では、吸蔵体に供給されたインキによりインキカートリッジのインキ供給孔が閉塞されることで、気密性が確保されている為、インキと空気の置換が生じず、印判本体からインキが漏れることはない。
【0003】
一方、印判に使用する吸蔵体は、加熱加圧ニーダー、加熱ロール等の機械にて、デンプン、食塩、硝酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の溶解物質と熱可塑性樹脂又は熱可塑性エストラマーを混練し、シート状にして冷却後、水又は希酸水にて前記溶解物質を溶出することにより製造されている。混練の際、溶解物質が熱可塑性樹脂又は熱可塑性エストラマー中で互いに連結して大きな塊状になることがあり、この場合、溶解物質の溶出後において吸蔵体表面に大きな凹部が形成される。図4に示すように、前記凹部が、吸蔵体のインキ供給孔との接触面に形成されている場合、インキ供給孔の気密性が確保されず、前記凹部を介して空気がインキカートリッジ内に流入することでインキ漏れが発生する虞があった。また、このような吸蔵体の表面不良は、溶解物質の溶出後、吸蔵体を所定厚さに調整する為に行う吸蔵体表面の切削工程においても発生することがある。上記した混練工程、切削工程で発生する不具合は、人為的に制御することにより不良品を無くすことは困難であり、また、表面不良による前記凹部のサイズは小さい為、外観目視による検査でも判別が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3236374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであって、吸蔵体の表面不良が発生した場合でも、直液式インキカートリッジのインキ供給孔の気密性を確保することでインキ漏れを確実に防止することができる印判を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために完成された本発明は、印字体と、該印字体に接触して設けられる吸蔵体と、該吸蔵体にインキを供給する直液式のインキカートリッジと、該インキカートリッジに備えた、前記吸蔵体にインキを供給する為のインキ供給孔と、を有する印判であって、前記インキ供給孔と吸蔵体の間に多孔質体を設け、該多孔質体は、前記インキ供給孔の気密性を前記多孔質体に浸透したインキにより確保することを特徴とする印判である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、印字体と、該印字体に接触して設けられる吸蔵体と、該吸蔵体にインキを供給する直液式のインキカートリッジと、該インキカートリッジに備えた、前記吸蔵体にインキを供給する為のインキ供給孔と、を有する印判であって、前記インキ供給孔と吸蔵体の間に多孔質体を設け、該多孔質体は、前記インキ供給孔の気密性を前記多孔質体に浸透したインキにより確保することを特徴とする印判である為、吸蔵体の表面不良が発生した場合でも、直液式インキカートリッジのインキ供給孔の気密性を確保することでインキ漏れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態を示す正面図である。
図2】本発明の実施の形態を示す斜視である。
図3】本発明の実施の形態の断面図である。
図4】吸蔵体に表面不良が発生した従来の直液式印判の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明に係る印判を示す正面図、図2は平面図、図3は断面図、図4は吸蔵体に表面不良が発生した従来の直液式印判の断面図である。尚、本発明において「下」とは、捺印時に印字体が移動する方向を指し、「上」とは、その反対側を指す。
【0010】
図において、1は本体であり、下部に印字体2aと、印字体2aの上面に接触して吸蔵体2bを有している。この本体1は、カバー部材3内を自在に昇降動するように構成されている。3aはウィング式に開閉する一対の扉、4は前記本体1を覆うホルダであり、また、前記本体1には筒状の直液式のインキカートリッジ5が着脱自在にセットされている。インキカートリッジ5は下端部にインキ供給孔5bを有し、インキ供給孔5bと吸蔵体2bの間には後述する多孔質体2cが設けられている。
【0011】
図示のものでは、印字体2a等を収納する本体1の天板1aに左右一対の支柱1bが立設されており、この支柱1bがカバー部材3の水平仕切板3bの孔部3cを貫通して上方にある水平な渡し板7に連結されている。また、前記支柱1bにはコイルバネ6が装着されていて、水平仕切板3bと渡し板7との間を常に拡げるように弾発力が作用しており、この結果、本体1は常に引き上げられて印字体2aがカバー部材3内に収納された状態となっている。なお、前記渡し板7は本体1と一体的に成形する構造でもよい。
【0012】
前記ホルダ4の下面には、前記インキカートリッジ5を下向きに付勢する弾性体8(図示のものではコイルバネ)が設けられている。これにより、インキカートリッジ5の先端のインキ供給孔5bと多孔質体2cとが常に接触した状態となって、吸蔵体2bへのインキの供給を円滑に行うことができるとともに、多孔質体2cによるインキ供給孔5bの気密性確保がしやすい構造となっている。尚、前記弾性体8は本体1に設けられていてもよく、その場合、渡し板7に設けるのが適切である。
【0013】
インキカートリッジ5は、内部に液体インキを収容し、下端面に設けたインキ供給孔5bを介して吸蔵体2bへインキを供給する底筒状の部材である。図に示すようにインキ供給孔5bは複数設けられており、複数のインキ供給孔5bの内、一部が空気流通用の孔として作用する為、吸蔵体2bへのインキ供給が円滑に行われる。また、インキカートリッジ5及び渡し板7には、インキカートリッジ5を渡し板7に挿入した状態で固定する為に、後述するロック機構が設けられている。
【0014】
また、インキカートリッジ5の側面下部には4個のリブ5aが均等に突設されている。このリブ5aの個数は1個でも複数個でも任意に設定することができる。前記ロック機構は、リブ5aの一部に形成された突起(図示無し)と本体1の渡し板7にあるカートリッジ挿入用の孔部7aの内側周縁に形成した凸部(図示無し)とから構成されており、インキカートリッジ5を孔部7aに挿入した際、前記突起が、凸部を乗り越えることでロックした状態とする構造である。
【0015】
多孔質体2cは、図3に示すように、インキ供給孔5bと吸蔵体2bの間に設けられており、多孔質体2cにインキが十分に浸透した状態(飽和状態)において、多孔質体2cに浸透したインキによりインキ供給孔5bの全てを閉塞し、不用意なインキ漏れを防止する為の部材である。尚、インキ供給孔5bから多孔質体2cを介して吸蔵体2bへのインキ供給を円滑に行う為に、多孔質体2cは吸蔵体2bより毛細管力を小さく設定しておくことが好ましい。ここで、本発明において多孔質体2cとは、無数の微細な気孔を有する部材を意味し、ポーラス体(スポンジ)の他、繊維体(不織布、織物、編物)も包含するものとする。また、本実施形態において、多孔質体2cは、吸蔵体2bの全面に亘って設けられているが、インキ供給孔5bの全面と当接していれば気密性の確保が可能であるため、その範囲内において適宜サイズの変更が可能である。
【0016】
本実施形態で使用する多孔質体2cは、ポリビニルアルコールを原料とした平均気孔径が80μmの連続気孔を有するポーラス体である。本発明では、上記ポーラス体の他、インキ供給孔5bの気密性をポーラス体に浸透したインキにより確保することができるものであれば、従来公知の原材料、製法で製造されたポーラス体を適宜使用することができる。使用できる原材料として具体的には、天然ゴム、SBR、NBR、EPDM、シリコーンゴム等の合成ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。また、製法として具体的には、これら原材料をデンプン、食塩、硝酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の溶解物質と混練し加硫又は溶融したのち溶解物質を溶出して多孔質体2cとする溶出法や、原材料を発泡剤と混練し加硫又は溶融して多孔質体2cとする発泡法や、粒子化した原材料を加熱圧縮して多孔質体2cとする焼結法等を採用することができる。但し、溶出法の場合、混練中における溶解物質同士の連結により、大きな塊状となり、多孔質体2c自体に表面不良が発生する虞がある為、発泡法、焼結法がより好ましい。
【0017】
また、これらのポーラス体の平均気孔径は、50μm~700μmが好ましく、より好ましくは80μm~300μmである。これらの範囲内では、ポーラス体から吸蔵体2bへのインキの流入が円滑に行われるとともに、ポーラス体の気孔径にばらつきが発生したとしても、インキ供給孔5bの気密性の確保が維持できる。
【0018】
本発明において、多孔質体2cとして繊維体を使用することもできる。本発明において繊維体とは、天然繊維又は合成繊維を原糸とした材質を意味するものであり、不織布・織物・編物を包含するものとする。繊維体は、インキ供給孔5bの気密性を繊維体に浸透したインキにより確保することができるものであれば、従来公知の天然繊維、合成繊維を適宜使用可能であり、これらの天然繊維又は合成繊維を平織、綾織、捩り織、朱子織等した織物や編物、不織布を用いることができる。例えば、天然繊維としては綿、麻等の植物繊維や、絹、羊毛等の動物繊維綿、合成繊維としては、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ビニリデン、ポリウレタン、アラミド等が挙げられ、それぞれ単独で紡いだ単紡や、種類の異なる繊維を紡いだ混紡を適宜採用可能である。
【0019】
また、これらの繊維体のオープニングは、前述したポーラス体と同様の理由から、50μm~700μmが好ましく、より好ましくは80μm~300μmである。尚、オープニングとは、繊維と繊維との間の寸法を表しており、繊維体の気孔径のことである。
【0020】
このように本発明の印判は、インキ供給孔5bと吸蔵体2bの間に多孔質体2cを設けることで、多孔質体2cに浸透したインキによりインキ供給孔5bの全てを閉塞することができるため、吸蔵体2bの表面不良が発生した場合でも、直液式インキカートリッジ5のインキ供給孔5bの気密性を確保することで不用意なインキ漏れを確実に防止することができる。
【0021】
以上、本発明に係る印判の好ましい実施形態を説明したが、本発明の技術的思想は、ここで説明された実施形態に限定して解釈されるべきではない。当業者は、本発明の要旨又は技術思想から逸脱しない範囲で、この実施形態を適宜、変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を伴う印判及び関連する周辺技術は、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0022】
1 本体
1a 天板
1b 支柱
2a 印字体
2b 吸蔵体
2c 多孔質体
3 カバー部材
3a 扉
3b 水平仕切板
3c 孔部
4 ホルダ
5 インキカートリッジ
5a リブ
5b インキ供給孔
6 コイルバネ
7 渡し板
7a 孔部
8 弾性体
図1
図2
図3
図4