(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046792
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20240329BHJP
B23Q 3/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B23Q3/06 304F
B23Q3/00 A
B23Q3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152081
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】春名 陽介
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016AA00
3C016AA01
3C016AA02
3C016AA03
3C016CA07
3C016CD02
(57)【要約】
【課題】圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または当該圧力流体を駆動のたびに供給せずとも動作させることができるクランプ装置を提供すること。
【解決手段】クランプ装置は、出力ロッド(4)の基端側端面に回転可能な状態で配置される操作部材(7)であって、出力ロッド(4)を軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材(7)を備える。また、クランプ装置は、ハウジング(1)の基端側に形成された筒孔(5)の内部に配置され、または筒孔(5)の内部に充填され、出力ロッド(4)を軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段(9)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)から突設される筒状のプラグ部(3)と、
前記プラグ部(3)のプラグ部筒孔(3a)に当該プラグ部筒孔(3a)の軸方向に移動可能となるように挿入される出力ロッド(4)と、
前記プラグ部(3)の周壁に形成された貫通孔(13)に挿入される係合部材(14)であって、前記出力ロッド(4)が前記軸方向へ移動されることにより前記貫通孔(13)内で移動され、前記プラグ部(3)が挿入可能となるようにクランプ対象物(WP)に設けられる装着孔(24)が有する係止部(25)に当接可能となっている係合部材(14)と、
前記ハウジング(1)の基端側に形成された筒孔(5)であって、前記出力ロッド(4)が前記軸方向に移動可能となるように挿入される筒孔(5)と、
前記出力ロッド(4)の基端側端面に回転可能な状態で配置される操作部材(7)であって、前記出力ロッド(4)を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材(7)と、
前記筒孔(5)の内部に配置され、または前記筒孔(5)の内部に充填され、前記出力ロッド(4)を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段(9)と、
を備える、
クランプ装置。
【請求項2】
請求項1のクランプ装置において、
前記出力ロッド(4)の基端側端面に凹部(6)が形成されており、
前記凹部(6)に前記操作部材(7)が回転可能な状態で収容されている、
クランプ装置。
【請求項3】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記操作部材(7)は、球体、またはローラである、
クランプ装置。
【請求項4】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記筒孔(5)の基端部に取り付けられたガイド部材(27)をさらに備え、
前記ガイド部材(27)は、
前記操作部材(7)を間に挟むように形成された、前記操作部材(7)と対面する摺動面(27a)と、
前記操作部材(7)の落下を防止する、前記操作部材(7)側に凸の突起部(27b)と、を有する、
クランプ装置。
【請求項5】
請求項4のクランプ装置において、
前記ガイド部材(27)は、リング形状である、
クランプ装置。
【請求項6】
請求項2のクランプ装置において、
前記凹部(6)の底中央部に前記軸方向に延びる穴(41)が設けられており、
前記穴(41)に収容される磁石(42)をさらに備え、
前記出力ロッド(4)、および前記操作部材(7)は、磁石に引き付けられる磁性体材料で形成されている、
クランプ装置。
【請求項7】
請求項2または6のクランプ装置において、
前記凹部(6)の底面と前記操作部材(7)との間に複数のボール体(45)が回転可能な状態で装着されている、
クランプ装置。
【請求項8】
請求項7のクランプ装置において、
前記凹部(6)の底面と前記操作部材(7)との間から前記ボール体(45)が離脱することを防止する離脱防止リング(46)が、前記出力ロッド(4)の基端部に固定されており、
前記離脱防止リング(46)は、前記操作部材(7)の落下を防止する、前記操作部材(7)側に凸の突起部(46a)を有する、
クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークパレット、ワーク、金型、工具、または治具などのクランプ対象物を、基台としてのクランプパレット、テーブル、またはロボットアームなどに着脱可能に固定するのに好適なクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置として、下記の特許文献1に記載されたものがある。従来技術に係るそのクランプ装置は、次のように構成されている。
【0003】
クランプ装置は、ハウジングから突設される筒状のプラグ部、出力ロッド、係合用のボール、およびピストンなどから構成される。クランプ装置を構成するハウジングには、圧力流体が給排されるクランプ室およびアンクランプ室が設けられている。クランプ装置の駆動、すなわちピストンおよび出力ロッドの駆動には、例えば圧縮エアが用いられ、駆動のたびに、クランプ室およびアンクランプ室に圧縮エアが給排される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/177385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクランプ装置が多数設置されると、圧縮エアの供給設備として、規模が大きな設備が必要となる。また、圧縮エアを給排する配管設備は、数量が多く且つ複雑なものとなる。これらは、省エネルギーおよび環境対策の点から好ましいとは言えない側面がある。そのため、駆動源として圧縮エアは不要である、または必要であるとしても最小限であることが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または当該圧力流体を駆動のたびに供給せずとも動作させることができるクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係るクランプ装置は、例えば、
図1から
図10に示すように、次のように構成される。
【0008】
(1)本願で開示するクランプ装置は、ハウジング1と、前記ハウジング1から突設される筒状のプラグ部3と、前記プラグ部3のプラグ部筒孔3aに当該プラグ部筒孔3aの軸方向に移動可能となるように挿入される出力ロッド4と、前記プラグ部3の周壁に形成された貫通孔13に挿入される係合部材14であって、前記出力ロッド4が前記軸方向へ移動されることにより前記貫通孔13内で移動され、前記プラグ部3が挿入可能となるようにクランプ対象物WPに設けられる装着孔24が有する係止部25に当接可能となっている係合部材14と、前記ハウジング1の基端側に形成された筒孔5であって、前記出力ロッド4が前記軸方向に移動可能となるように挿入される筒孔5と、前記出力ロッド4の基端側端面に回転可能な状態で配置される操作部材7であって、前記出力ロッド4を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材7と、前記筒孔5の内部に配置され、または前記筒孔5の内部に充填され、前記出力ロッド4を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段9と、を備える。付勢手段9は、例えばバネまたは圧縮ガス(圧力ガス)である。
【0009】
本願で開示するクランプ装置は次の作用効果を奏する。当該クランプ装置は、従来のクランプ装置が備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。当該クランプ装置では、上記の操作部材が手動、または外力によって動かされる(筒孔内に押し込まれる)ことで、軸方向のうちの先端側方向へ出力ロッドは駆動される。軸方向のうちのもう一方の方向である基端側方向へは、上記の付勢手段によって出力ロッドは駆動される。したがって、当該クランプ装置は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または当該圧力流体を駆動のたびに供給せずとも動作させることができるものである。
【0010】
(2)(1)のクランプ装置において、前記出力ロッド4の基端側端面に凹部6が形成されており、前記凹部6に前記操作部材7が回転可能な状態で収容されてもよい。
【0011】
この構成によると、出力ロッドの基端側端面における操作部材の配置が容易となる。
【0012】
(3)(1)または(2)のクランプ装置において、前記操作部材7は、球体、またはローラであるとよい。
【0013】
この構成によると、軸方向のうちの先端側方向へ出力ロッドをスムーズに移動させることができる。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれかのクランプ装置において、例えば、
図4および
図5に示すように、クランプ装置は、前記筒孔5の基端部に取り付けられたガイド部材27をさらに備えてもよい。前記ガイド部材27は、前記操作部材7を間に挟むように形成された、前記操作部材7と対面する摺動面27aと、前記操作部材7の落下を防止する、前記操作部材7側に凸の突起部27bと、を有する。
【0015】
この構成によると、軸方向に対して斜めなどの方向の力が操作部材に作用した際に、当該力のうちの軸方向に対して直交する方向の分力を、上記摺動面を有するガイド部材を介してハウジングで受け止めることができる。そのため、出力ロッドに上記分力がかかることを抑制することができ、出力ロッドを先端側方向へスムーズに移動させることができる。また、上記突起部によって、重力により操作部材が落下することを防止できる。
【0016】
(5)(4)のクランプ装置において、前記ガイド部材27は、リング形状とされてもよい。
【0017】
この構成によると、操作部材がガイド部材で囲まれたようになる。そのため、ガイド部材を介してのハウジングによる操作部材の受け止めがより確実なものなる。また、操作部材の落下をより防止できる。
【0018】
(6)(2)のクランプ装置において、例えば、
図6に示すように、前記凹部6の底中央部に前記軸方向に延びる穴41が設けられており、クランプ装置は、前記穴41に収容される磁石42をさらに備えてもよい。この場合、前記出力ロッド4、および前記操作部材7は、磁石に引き付けられる磁性体材料で形成される。
【0019】
この構成によると、磁石によって、重力により操作部材が落下することを防止できる。
【0020】
(7)(2)または(6)のクランプ装置において、例えば、
図10に示すように、前記凹部6の底面と前記操作部材7との間に複数のボール体45が回転可能な状態で装着されてもよい。
【0021】
この構成によると、操作部材の回転がより滑らかなものとなる。
【0022】
(8)(7)のクランプ装置において、例えば、
図10に示すように、前記凹部6の底面と前記操作部材7との間から前記ボール体45が離脱することを防止する離脱防止リング46が、前記出力ロッド4の基端部に固定されてもよい。前記離脱防止リング46は、前記操作部材7の落下を防止する、前記操作部材7側に凸の突起部46aを有する。
【0023】
この構成によると、凹部の底面と操作部材との間からボール体が離脱することを防止できる。また、上記突起部によって、重力により操作部材が落下することを防止できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または当該圧力流体を駆動のたびに供給せずとも動作させることができるクランプ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本願で開示するクランプ装置の使用例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すクランプ装置のロック状態における側面視の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すクランプ装置のロック状態における側面視の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態を示し、クランプ装置のロック状態における側面視の断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の断面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すクランプ装置のロック状態における側面視の断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第5実施形態を示し、クランプ装置のロック状態における側面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態の説明では、基台としてのクランプパレットCPに、クランプ対象物であるワークパレットWPを固定するという、クランプ装置の使用例を例示している。
【0027】
図1に示すように、クランプ装置101が固定されたクランプパレットCPは、所定の間隔をあけて配置された2本のレール50の上を走行するように構成されている。レール50同士の間に、当該レール50と同じ方向に延びる長い板状のカム部材51が配置されている。カム部材51はカム部52を有する。
図2などに示すように、カム部52は、側面視において上方へ凸の台形形状とされている。
【0028】
図2および
図3は、本発明の第1実施形態を示す。
図2および
図3に基づいて、第1実施形態のクランプ装置101の構成を説明する。なお、
図2は、クランプ装置101のリリース状態を示す図であるとともに、
図1のX-X断面図である。
【0029】
クランプパレットCPにクランプ装置101のハウジング1が複数のボルト2によって固定される。ハウジング1から筒状のプラグ部3が上方へ一体に突設される。プラグ部3のプラグ部筒孔3aに出力ロッド4の上ロッド部分4aが上下方向(プラグ部筒孔3aの軸方向)へ移動可能に挿入される。出力ロッド4の軸方向とプラグ部筒孔3aの軸方向とは同じ方向である。
【0030】
ハウジング1の基端側に筒孔5が形成され、筒孔5内に出力ロッド4の下ロッド部分4bが上下方向へ移動可能に挿入される。筒孔5は、プラグ部筒孔3aよりも径が大きい孔である。筒孔5とプラグ部筒孔3aとは上下に連ねて形成される。筒孔5の軸方向とプラグ部筒孔3aの軸方向とは同じ方向である。
【0031】
下ロッド部分4bの基端側端面に形成された凹部6に、操作部材としてのボール7(球体、回転体)が回転可能な状態で収容される。ボール7の一部は、筒孔5の軸方向の外方へ突出している。なお、操作部材としてボール7に代えてローラ(不図示)などの回転体を用いることも可能である(他の実施形態についても同様)。
【0032】
また、凹部6は形成されなくてもよい(他の実施形態についても同様)。すなわち、下ロッド部分4bの基端側端面は、例えば全面が平らな面とされてもよい。この場合、ボール7またはローラなどの回転体は、下ロッド部分4bの基端側端面に、支持部材(不図示)を介して回転可能な状態で取り付け配置される。
【0033】
上記凹部6が形成された下ロッド部分4bの基端部は、ピストン部8(大径部)とされており、出力ロッド4の他の部分よりも径が大きい。筒孔5のうちのピストン部8よりも上側の空間に、ピストン部8を下方(基端側方向)へ押す付勢手段としてのバネ9が配置される。バネ9は圧縮コイルバネである。本実施形態のバネ9は、第1バネ9aと第2バネ9bとで構成される。第2バネ9bの径は、第1バネ9aの径よりも大きい。ピストン部8の上面(先端側面)に、第1バネ9aの下端を受け止める第1段差部8a、および第2バネ9bの下端を受け止める第2段差部8bが内側からこの順で設けられている。第1バネ9aの上には、当該第1バネ9aの上端を受け止めるリング状のバネ受け10が設けられ、第2バネ9bの上には、当該第2バネ9bの上端を受け止めるリング状のバネ受け11が設けられている。筒孔5の基端部には、筒孔5から出力ロッド4が抜けることを防止するリング状のストッパ12(止め輪)が取り付けられている。
【0034】
なお、バネ9は、2本のバネからなるものに限定されるものではない。また、バネとして、圧縮コイルバネに代えて、皿バネなどの他の種類のバネを用いることも可能である(他の実施形態についても同様)。
【0035】
プラグ部3の周壁の上寄り部に複数の貫通孔13が周方向へ所定間隔をあけて形成される。各貫通孔13に、係合部材としてのボール14(係合ボール)が挿入される。貫通孔13によって、径方向の内方の
図2に示す位置と径方向の外方の
図3に示す位置(外側位置)との間で各ボール14が移動可能に支持される。
【0036】
出力ロッド4の上ロッド部分4aの外周壁には、各ボール14に対応させて、押圧面15と退避溝16とが上下に連ねて形成される。押圧面15は、上方へ向かうにつれて広がるように形成される。押圧面15がボール14に対面する位置に移動することにより、ボール14がプラグ部3の外周面よりも径方向の外方へ突出するように外側位置へ移動される。また、退避溝16がボール14に対面する位置であって、ボール14が挿入可能となる退避位置に移動することにより、ボール14がプラグ部3の外周面よりも径方向の内方へ移動可能となる。本実施形態では、4つのボール14が各貫通孔13にそれぞれ1つずつ挿入されているが、ボール14は4つに限定されない。
【0037】
プラグ部3の周壁の下寄り部(根本部)に環状のコレット17が外嵌される。コレット17は上すぼまりのテーパ外周面17aを備え、上下方向へ延びる1つのスリット17bによって弾性的に縮径されるようになっている。コレット17は止め輪18によってプラグ部3から抜けないようにされている(上方への移動が規制されている)。ハウジング1の上面1aに、コレット17を上方(先端側方向)へ押す押圧部材19が挿入される複数の貫通孔20が周方向へ所定間隔をあけて形成される。押圧部材19は、円柱形状であり、大径部19a(フランジ部)を下端部に有する。大径部19aにおいて、押圧部材19はバネ受け10により下から支持されている。コレット17は、押圧部材19およびバネ受け10を介して、第1バネ9aによって上方へ付勢されている。そのため、止め輪18によって上方への移動が規制されているコレット17は、僅かではあるが、上下方向へ移動可能である。本実施形態では、3つの押圧部材19が各貫通孔20にそれぞれ1つずつ挿入されているが、押圧部材19は3つに限定されない。
【0038】
ワークパレットWPの下面に凹部21が開口される。凹部21にリング部材22が装着され、リング部材22は複数のボルト23によってワークパレットWPに固定される。リング部材22の内周孔によって装着孔24が構成され、装着孔24にプラグ部3が挿入可能になっている。
【0039】
リング部材22の装着孔24に係止部25が上方へ向かうにつれて広がるようにテーパ状に形成される。また、係止部25の下方に、コレット17のテーパ外周面17aに係合するテーパ内周面26が形成される。テーパ内周面26は、上すぼまりの、言い換えれば、上方へ向かうにつれて狭まるように形成された面である。
【0040】
なお、本実施形態では、装着孔24をリング部材22に形成するようにしたが、ワークパレットWPの凹部21の内周孔によって装着孔24を構成するようにしてもよい。すなわち、ワークパレットWPの凹部21の内周孔自体に、上記係止部25およびテーパ内周面26が形成されてもよい。
【0041】
上記構成のクランプ装置101は次のように動作する。
【0042】
図2に示すリリース状態では、カム部材51のカム部52によって、すなわち外力によってボール7が上方へ押され、ボール7は
図3に示すロック状態のときよりもハウジング1の筒孔5内に押し込まれている。これにより、バネ9の付勢力に抗してボール7が出力ロッド4を上方(先端側方向)へ押して上昇させた状態となっている。出力ロッド4が上昇しているので、プラグ部3のボール14が退避溝16内の退避位置に移動可能となっている。
図2に示すリリース状態のクランプ装置101の上方にワークパレットWPが搬入される。
【0043】
ワークパレットWPをクランプパレットCPにクランプするときは、まず、ワークパレットWPを下降させて、リング部材22の装着孔24にプラグ部3が挿入された状態とする。このとき、装着孔24に形成されているテーパ内周面26が、拡径状態のコレット17のテーパ外周面17aに当たり、ハウジング1の上面1a(着座面)とリング部材22の下面との間に少しの隙間が形成された状態にある。その後、クランプパレットCPをレール50の上を走行させることで、カム部材51のカム部52をボール7から離隔させる。すると、カム部52による外力が解かれ、バネ9が出力ロッド4を下方(基端側方向)へ押し、出力ロッド4は下降する。出力ロッド4が下降すると、出力ロッド4に形成されている退避溝16の一部を構成する押出し部16aがプラグ部3のボール14を径方向の外方の突出位置へ押し出す。そして、出力ロッド4に形成されている押圧面15がボール14を介してワークパレットWP(リング部材22)の係止部25を下向きに押圧していく。これにより、コレット17は縮径しワークパレットWPとともに少しばかり下降する。その結果、リング部材22の下面がハウジング1の上面1aに受け止められ、クランプ装置101は、
図2に示すリリース状態から
図3に示すロック状態へ切換えられる。
【0044】
クランプ装置101を
図3に示すロック状態から
図2に示すリリース状態へ切換えるときは、クランプパレットCPをレール50の上を走行させることで、カム部材51のカム部52にボール7を当てカム部52の上にボール7を乗り上げさせる。これにより、バネ9の付勢力に抗してボール7が出力ロッド4を上方(先端側方向)へ押して、出力ロッド4は上昇する。出力ロッド4が上昇すると、出力ロッド4に形成されている退避溝16がプラグ部3のボール14に対面する位置となり、ボール14は退避溝16内(出力ロッド4の径方向の内方)へ移動可能となる。その結果、
図2に示すように、ワークパレットWPをクランプパレットCPから円滑に取り外すことが可能となる。なお、ボール7は回転するので、カム部52にボール7が当たったとき、カム部52からの横方向の反力をボール7部で一部逃がすことができ、筒孔5の内周面と出力ロッド4のピストン部8とがこじれることを防止できる。その結果、出力ロッド4を先端側方向へスムーズに移動させることができる。
【0045】
クランプ装置101は、従来のクランプ装置が備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。クランプ装置101では、ボール14が外力によって動かされる(筒孔5内に押し込まれる)ことで、出力ロッド4は先端側方向へ駆動される。先端側方向とは逆方向の方向である基端側方向へは、バネ9によって出力ロッド4は駆動される。したがって、当該クランプ装置101は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない。なお、ボール7を人の手で押して動かしてもよい。
【0046】
図4および
図5は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態のクランプ装置は、ハウジング1の筒孔5の基端部に取り付けられるガイド部材27をさらに備え、この点が、第1実施形態のクランプ装置と相違する。なお、第2実施形態のクランプ装置を構成する各部材について、第1実施形態のクランプ装置を構成する各部材と同様の部材については、同じ符号を付している(
図6以降に示す実施形態についても同様)。
【0047】
ガイド部材27は、ボール7を間に挟むように形成されたボール7と対面する摺動面27aを有する。また、摺動面27aの下には、ボール7側に凸の突起部27bが設けられる。突起部27bは、重力によりボール7が落下することを防止するためのものである。摺動面27aと突起部27bとは上下に連ねて形成される。
【0048】
本実施形態のガイド部材27はリング形状の部材であり、摺動面27aは、出力ロッド4の軸方向に対して平行(ストレート)な面で形成された平面視において円形の1つの面である。ボール7と摺動面27aとの間には、僅かな隙間が設けられる。
【0049】
図5に示すように、本実施形態では、クランプ装置がロック状態のときボール7は、カム部材51によって下から支持されていない。しかしながら、ボール7は、上記突起部27bによって落下することはない。クランプパレットCPをレール50の上を走行させることで、カム部材51のカム部52にボール7が当たったとき、カム部52からの横方向の反力は、上記摺動面27aを有するガイド部材27を介してハウジング1で受け止められる。そのため、出力ロッド4に上記横方向の反力がかかることを抑制することができ、出力ロッド4を先端側方向へよりスムーズに移動させることができる。
【0050】
図6および
図7は、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態のクランプ装置は、出力ロッド4を下方(基端側方向)へ押して移動させる付勢手段が第1実施形態のクランプ装置と相違する。また、当該第3実施形態のクランプ装置は、ボール7の落下を防止する手段が第2実施形態のクランプ装置と相違する。
【0051】
本実施形態では、筒孔5のうちのピストン部8よりも上側の空間が圧ガス室28とされる。出力ロッド4のピストン部8は、筒孔5に封止部材29を介して保密状に挿入される。出力ロッド4の上ロッド部分4aは、プラグ部筒孔3aに封止部材30を介して保密状に挿入される。また、押圧部材19は、貫通孔20に封止部材31を介して保密状に挿入される。これらによって、筒孔5のうちのピストン部8よりも上側の空間が圧ガス室28とされる。
【0052】
上記圧ガス室28に、ロック用(クランプ用)の圧力ガスとしての圧縮空気が充填ポート32を介して充填される。圧ガス室28に充填された圧縮空気が、出力ロッド4を下方(基端側方向)へ押して移動させる付勢手段である。充填ポート32と圧ガス室28とは、ハウジング1に形成されたポート側通路33で接続される。充填ポート32には、エア充填部材34が取り付けられる。
【0053】
図7に示すように、エア充填部材34は、筒状の本体部35、ボール36、バネ37、および保持筒38などを備える。充填ポート32に本体部35が封止部材39を介して保密状に固定される。本体部35のうちのポート側通路33側の端部に、保持筒38がOリング40を介して保密状に圧入固定される。保持筒38の内部に、ボール36およびバネ37が収容される。本体部35の雌ネジ孔35a部分にエア充填管(不図示)が接続される。エア充填管内には、圧縮空気の圧が常時かけられている。圧ガス室28には、当該圧ガス室28から漏れ出た量の圧縮空気のみ、エア充填管からエア充填部材34およびポート側通路33を介して供給される。ボール36、バネ37、およびOリング40は、逆止弁を構成し、エア充填管からポート側通路33への圧縮空気の流れは許容し、その逆の流れは許容しない。ボール36は弁体であり、Oリング40は弁座である。圧ガス室28内の圧縮空気の圧力が、所定の値に達すると、バネ37によってボール36がOリング40に押し付けられ、逆止弁は閉弁する。
【0054】
上記構成によると、クランプ装置をリリース状態から
図6に示すロック状態へ切換えるとき、圧ガス室28に充填された圧縮空気が、出力ロッド4を下方(基端側方向)へ押して移動させる。圧ガス室28には、当該圧ガス室28から漏れ出た量の圧縮空気のみが供給されるので、圧縮空気の使用量は極めて少ない。よって、空気圧縮機などの圧縮空気の供給設備は必要であるものの、その設備規模は極めて小さくてすむ。
【0055】
出力ロッド4に形成された凹部6の底中央部に、出力ロッド4の軸方向に延びる有底の穴41が設けられ、この穴41の底に磁石42が収容される。磁石42の下に隙間埋め部材としてプラグ43が捩じ込まれることで磁石42は穴41に固定される。出力ロッド4、プラグ43、およびボール7は、鉄など、磁石に引き付けられる磁性体材料で形成されている。
【0056】
上記構成によると、重力によりボール7が落下することを磁石42によって防止できる。
【0057】
図8および
図9は、本発明の第4実施形態を示す。第1実施形態のクランプ装置は、ボール7が出力ロッド4を上方(先端側方向)へ押して移動させることで、リリース状態となり、バネ9が出力ロッド4を下方(基端側方向)へ押して移動させることで、ロック状態となる。これに対して、第4実施形態のクランプ装置は、ボール7が出力ロッド4を上方(先端側方向)へ押して移動させることで、ロック状態となり、バネ9が出力ロッド4を下方(基端側方向)へ押して移動させることで、リリース状態となる。
【0058】
出力ロッド4の上ロッド部分4aの外周壁には、ボール14に対応させて、退避溝16と支持面44とが上下に連ねて形成される。退避溝16がボール14に対面する位置であって、ボール14が挿入可能となる退避位置に移動することにより、ボール14がプラグ部3の外周面よりも径方向の内方へ移動可能となる。支持面44は、プラグ部筒孔3aの軸方向に対して平行(ストレート)に形成される。貫通孔13の軸方向に対して垂直となるように支持面44は形成される。支持面44がボール14に対面する位置に移動することにより、ボール14がプラグ部3の外周面よりも径方向の外方へ突出するように外側位置へ移動した状態となる。
【0059】
図8に示すリリース状態では、バネ9が出力ロッド4を下方(基端側方向)へ押し、出力ロッド4は下降した状態となっている。出力ロッド4が下降していることで、プラグ部3のボール14が退避溝16内の退避位置に移動可能となっている。
【0060】
ワークパレットWPをクランプパレットCPにクランプするときは、まず、ワークパレットWPを下降させて、リング部材22の装着孔24にプラグ部3が挿入された状態とする。その後、クランプパレットCPをレール50の上を走行させることで、カム部材51のカム部52にボール7を当てカム部52の上にボール7を乗り上げさせる。これにより、バネ9の付勢力に抗してボール7が出力ロッド4を上方(先端側方向)へ押して、出力ロッド4は上昇する。出力ロッド4が上昇すると、出力ロッド4に形成されている退避溝16の一部を構成する押出し部16aがプラグ部3のボール14を径方向の外方の突出位置へ押し出し、ボール14は係止部25に係止される。その結果、クランプ装置は、
図8に示すリリース状態から
図9に示すロック状態へ切換えられる。
【0061】
図10は、本発明の第5実施形態を示す。第5実施形態のクランプ装置は、ボール7を収容する凹部6の底面とボール7との間に複数のボール体45が回転可能な状態で装着される。第5実施形態のクランプ装置は、この点が、第1実施形態のクランプ装置と相違する。この構成によれば、ボール7の回転がより滑らかなものとなる。その結果、カム部52にボール7が当たったとき、カム部52からの横方向の反力をボール14部でより効果的に逃がすことができる。
【0062】
凹部6の底面とボール7との間から上記ボール体45が離脱することを防止する離脱防止リング46が、出力ロッド4の基端部に形成された円形の嵌め込み部47に圧入固定されている。離脱防止リング46の内周面は、下方へ向かうにつれて狭まるように形成されており、下端部にボール7側に凸の突起部46aを有する。突起部46aは、重力によりボール7が落下することを防止するためのものである。
【0063】
この構成によれば、凹部6の底面とボール7との間からボール体45が離脱することを防止できるとともに、上記突起部46aによって、重力によりボール7が落下することを防止できる。
【0064】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0065】
例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0066】
ボール7(操作部材)を人の手(手動)で押して、出力ロッド4を先端側方向へ移動させてもよい。
【0067】
上記実施形態においてカム部材51は静止している(固定されている)が、カム部材51を動かすことで、そのカム部52でボール7(操作部材)を押して動かしてもよい。また、ボール7(操作部材)を動かすための外力を発生させる手段は、カム部材51のような部材に限定されない。
【0068】
図6に示すクランプ装置において、圧ガス室28に充填される圧力ガス(付勢手段)として、圧縮空気に代えて圧縮窒素ガスなど圧縮空気以外の圧力ガスが用いられてもよい。
【0069】
クランプ装置の姿勢は、例示した上下姿勢に対して、上下逆にされたり、横向きにされたり、さらには斜め向きにされたりしてもよい。
【0070】
クランプ装置は、テーブル、またはロボットアームの先端部などに固定されてもよい。クランプ対象物は、ワーク、金型、工具、または治具などであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:ハウジング、3:プラグ部、3a:プラグ部筒孔、4:出力ロッド、5:筒孔、6:凹部、7:ボール(操作部材)、9:バネ(付勢手段)、13:貫通孔、14:ボール(係合部材)、24:装着孔、25:係止部、27:ガイド部材、27a:摺動面、27b:突起部、41:穴、42:磁石、45:ボール体、46:離脱防止リング、46a:突起部、101:クランプ装置、WP:ワークパレット(クランプ対象物)