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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046795
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】リーク検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20240329BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240329BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240329BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20240329BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240329BHJP
【FI】
G01M3/20 B
H01M8/04 H
H01M8/0438
H01M8/04664
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152085
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】山下 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】難波 健介
【テーマコード(参考)】
2G067
5H127
【Fターム(参考)】
2G067AA22
2G067BB02
2G067BB25
2G067CC13
2G067DD17
2G067EE09
5H127AA05
5H127AC02
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB45
5H127DB50
5H127DB96
5H127DC55
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガスが供給される空間を有する物体に、ガスを透過するシール部材等の透過箇所がある場合において、物体の損傷箇所からのリークを適切に検出すること。
【解決手段】リーク検査方法は、検査ガスが透過する検査対象物の透過箇所の物性情報と、内部空間のゲージ圧と、大気圧とに基づいて、単位時間当たりに透過箇所を透過する検査ガスの透過量を演算する演算工程(P4)と、測定された漏れ量と、演算された透過量との比較結果に基づいて、検査対象物の損傷によるリークがあるか否か判定する判定工程(P5)とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが供給される内部空間を有する検査対象物の損傷によるリークを検査するリーク検査方法であって、
前記内部空間に、大気と異なる所定圧の検査ガスを供給するガス供給工程と、
単位時間当たりに前記検査対象物から漏れる前記検査ガスの漏れ量を測定する測定工程と、
前記検査ガスが透過する前記検査対象物の透過箇所の物性情報と、前記検査ガスが供給された前記内部空間のゲージ圧と、大気圧とに基づいて、単位時間当たりに前記透過箇所を透過する前記検査ガスの透過量を演算する演算工程と、
測定された前記漏れ量と、演算された前記透過量との比較結果に基づいて、前記リークがあるか否か判定する判定工程と、
を含む、リーク検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリーク検査方法であって、
前記ガス供給工程の前に、前記内部空間から気体をパージするパージ工程をさらに含む、リーク検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載のリーク検査方法であって、
前記ガス供給工程では、前記内部空間に供給される前記検査ガスの圧力を段階的に増加させ、
前記演算工程では、各段階の前記漏れ量に基づいて前記大気圧を求め、求めた前記大気圧を用いて前記透過量を演算する、リーク検査方法。
【請求項4】
請求項1に記載のリーク検査方法であって、
前記物性情報は、前記内部空間に接する前記透過箇所の面積、前記透過箇所の厚さ、および、前記透過箇所における前記検査ガスの透過係数を含む、リーク検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載のリーク検査方法であって、
前記演算工程では、前記ゲージ圧と前記大気圧との加算結果と、前記透過係数と、前記面積を前記厚さで除算した結果とを乗算し、前記透過量を求める、リーク検査方法。
【請求項6】
請求項1に記載のリーク検査方法であって、
前記検査対象物は、膜電極接合体を挟持するセパレータであり、
前記内部空間は、前記膜電極接合体に前記ガスを供給するための流路であり、
前記透過箇所は、前記セパレータに接合され、前記膜電極接合体との間に配置されるシール部材である、リーク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーク検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池に関する研究開発が行われている。また、環境に与える負荷を軽減するため、内燃機関を有する自動車等の移動体の排気ガス規制が一段と進んでいる。之に伴って、移動体において、内燃機関に代替して燃料電池を搭載することが試みられている。燃料電池が搭載された移動体では、CO2、SOxおよびNOX等が排出されないため、環境に与える負荷が軽減される。
【0003】
燃料電池は、膜電極接合体とセパレータとを交互に積層して形成される。膜電極接合体とセパレータとの間には、ガスが供給される空間である流路が形成される。流路は、シール部材を介してセパレータによって囲まれる。特許文献1には、流路に検査ガスを所定圧で充填し、充填された圧力の変化量に基づいて、燃料電池においてシールが不完全な部分を検知する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-023665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ガスは、シール部材を透過する。また、セパレータにピンホール等の損傷が生じている場合、損傷箇所から検査ガスがリークする。そのため、特許文献1の場合、充填された圧力の変化量が、シール部材の透過に起因しているか、セパレータの損傷箇所からのリークに起因しているか区別できない。
【0006】
したがって、ガスが供給される空間を有する物体に、ガスを透過するシール部材等の透過箇所がある場合において、物体の損傷箇所からのリークを適切に検出することが課題として挙がった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、ガスが供給される内部空間を有する検査対象物の損傷によるリークを検査するリーク検査方法であって、前記内部空間に、大気と異なる所定圧の検査ガスを供給するガス供給工程と、単位時間当たりに前記検査対象物から漏れる前記検査ガスの漏れ量を測定する測定工程と、前記検査ガスが透過する前記検査対象物の透過箇所の物性情報と、前記検査ガスが供給された前記内部空間のゲージ圧と、大気圧とに基づいて、単位時間当たりに前記透過箇所を透過する前記検査ガスの透過量を演算する演算工程と、測定された前記漏れ量と、演算された前記透過量との比較結果に基づいて、前記リークがあるか否か判定する判定工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、測定された漏れ量が、透過箇所からの透過に起因しているか、検査対象物の損傷箇所からのリークに起因しているか区別することができる。その結果、検査対象物の損傷箇所からのリークを適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、検査システムを示す概略図である。
図2図2は、リーク検査方法の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、検査対象物の例を示す図である。
図4図4は、ガス圧と漏れ量との関係を示すグラフである。
図5図5は、燃料電池の単セルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、検査システム10を示す概略図である。検査システム10は、検査対象物12と、検査装置14とを備える。
【0012】
検査対象物12は、損傷箇所からのリークを検査する対象となる物体である。検査対象物12は、内部空間16を有する。内部空間16は、検査対象物12に囲まれている。内部空間16は、流路であってもよい。つまり、検査対象物12は、内部空間16の全体を囲む場合に限られない。図1では、ガス出入口17を除いて内部空間16が検査対象物12に囲まれている場合の例が示されている。ガス出入口17が開閉可能である場合、ガス出入口17が閉じていると、内部空間16の全体が検査対象物12に囲まれる。
【0013】
検査対象物12は、ガスを透過する透過箇所18を有する。透過箇所18は、穴ではなく、検査対象物12の全部または一部を構成する。すなわち、検査対象物12の全体が透過箇所18であってもよいし、検査対象物12の一部が透過箇所18であってもよい。図1では、検査対象物12の一部が透過箇所18である場合の例が示されている。検査対象物12の一部が透過箇所18である場合、透過箇所18以外の検査対象物12は、ガスを透過しない。或いは、透過箇所18以外の検査対象物12を透過するガス量は、無視できるほど少ない。
【0014】
検査装置14は、検査対象物12の損傷によるリークを検査する装置である。検査装置14は、管路20を有する。管路20は、検査対象物12の内部空間16に連通される。検査装置14は、管路20を介して内部空間16に検査ガスを供給し得る。検査ガスは、大気(空気)と異なるガスである限り、特に限定されない。例えば、ヘリウムガス等が検査ガスとして挙げられる。
【0015】
検査装置14は、直流法、直圧法、差流法、差圧法、加圧積分法等の検査方法を用いる。
【0016】
直流法および直圧法の場合、検査装置14は、検査対象物12の内部空間16に検査ガスを所定圧で充填する。検査ガスの充填が終了すると、直流法の場合、検査装置14は、内部空間16から流れ出る検査ガスの流量を測定する。一方、直圧法の場合、検査装置14は、内部空間16内の圧力の減少を測定する。
【0017】
差流法および差圧法の場合、検査対象物12に、管路20を介して、損傷によるリークがない物体であるマスター材(図示せず)が接続される。検査装置14は、検査対象物12の内部空間16とマスター材の内部空間(図示せず)との双方に検査ガスを所定圧で充填する。検査ガスの充填が終了すると、差流法の場合、検査装置14は、マスター材から検査対象物12に流れる検査ガスの流量を測定する。一方、差圧法の場合、検査装置14は、マスター材と検査対象物12との間の圧力差を測定する。
【0018】
加圧積分法の場合、検査対象物12がチャンバー(エンクロージャー)に投入される。検査装置14は、検査対象物12の内部空間16に検査ガスを充填した後に、チャンバー内のガスの濃度を測定する。
【0019】
図2は、リーク検査方法の手順を示すフローチャートである。リーク検査方法は、パージ工程P1、ガス供給工程P2、測定工程P3、演算工程P4、判定工程P5を含む。
【0020】
パージ工程P1は、内部空間16から気体をパージする工程である。パージ工程P1では、検査装置14は、例えば真空ポンプを用いて、内部空間16の気体を内部空間16からパージする。
【0021】
ガス供給工程P2は、検査ガスを内部空間16に供給する工程である。ガス供給工程P2では、検査装置14は、検査ガスを内部空間16に供給し、内部空間16を例えば100[kPa]の検査ガスで満たす。この場合、検査装置14は、内部空間16の圧力が100[kPa]となった場合に、内部空間16を封止して検査ガスの供給を停止してもよい。或いは、検査装置14は、100[kPa]の検査ガスを内部空間16に供給し続けてもよい。
【0022】
本実施形態でのガス供給工程P2では、検査装置14は、内部空間16に供給される検査ガスの圧力を段階的に増加させる。例えば、検査装置14は、第1段階として100[kPa]の検査ガスで内部空間16を満たし、第2段階として150[kPa]の検査ガスで内部空間16を満たし、第3段階として175[kPa]の検査ガスで内部空間16を満たす。この例では、n段階の圧力に、n段階の圧力の半分の圧力を加えた圧力が、(n+1)段階の圧力として、段階的に増加される。ただし、n段階の圧力に加える圧力は、n段階の圧力よりも小さい圧力であれば、n段階の圧力の半分でなくてもよい。
【0023】
測定工程P3は、単位時間当たりに検査対象物12から漏れる検査ガスの漏れ量を測定する工程である。漏れ量の測定には、例えば、内部空間16の圧力を検出する圧力センサが用いられる。この場合、検査装置14は、圧力センサにより検出される圧力を記憶媒体に記憶し、記憶された圧力に基づいて単位時間当たりの圧力の降下量を漏れ量に換算する。なお、漏れ量の測定に用いられるセンサは圧力センサに限定されない。例えば、流量センサが、漏れ量の測定に用いられてもよい。要するに、測定工程P3では、センサによって検出された内部空間16の状態を示す物理量の単位時間当たりの変化量が漏れ量として計測される。
【0024】
測定工程P3で測定された漏れ量には、単位時間当たりに透過箇所18を透過する検査ガスの透過量が含まれる。検査対象物12の損傷によるリークがある場合、単位時間当たりに検査対象物12の損傷箇所からリークする検査ガスのリーク量と、単位時間当たりに透過箇所18を透過する検査ガスの透過量との双方が含まれる。
【0025】
演算工程P4は、単位時間当たりに透過箇所18を透過する検査ガスの透過量を演算する工程である。この透過量の演算の詳細は後述する。
【0026】
判定工程P5は、測定工程P3で測定された漏れ量と、演算工程P4で演算された透過量とに基づいて検査対象物12の損傷によるリークがあるか否かを判定する工程である。判定工程P5では、検査装置14は、測定工程P3で測定された漏れ量と、演算工程P4で演算された透過量とを比較する。漏れ量と透過量との差が所定の閾値未満である場合、検査装置14は、検査対象物12の損傷によるリークがないと判定する。この場合、検査装置14は、検査装置14に接続された表示機器等の報知機器を作動させて、検査対象物12の損傷によるリークがないことを提示してもよい。一方、漏れ量と透過量との差が所定の閾値以上である場合、検査装置14は、検査対象物12の損傷によるリークがあると判定する。この場合、検査装置14は、検査装置14に接続された表示機器等の報知機器を作動させて、検査対象物12の損傷によるリークがあることを警告してもよい。
【0027】
以上のように、本実施形態のリーク検査方法は、検査対象物12の透過箇所18を単位時間当たりに透過する検査ガスの透過量を演算し、測定された漏れ量との比較結果に基づいて、検査対象物12の損傷によるリークの有無を判定する。これにより、測定された漏れ量が、透過箇所18からの透過に起因しているか、検査対象物12の損傷箇所からのリークに起因しているか区別することができる。その結果、検査対象物12の損傷箇所からのリークを適切に検出することができる。
【0028】
次に、演算工程P4で実施される透過量の演算に関して詳しく説明する。図3は、検査対象物12の例を示す図である。図3では、直方体の内部空間16が、ガス出入口17を除いて検査対象物12に囲まれている場合の例が示されている。また、図3では、検査対象物12の全体が透過箇所18とする。
【0029】
透過量は、透過箇所18の物性情報と、内部空間16のゲージ圧GPと、大気圧APとに基づいて算出される。内部空間16のゲージ圧GPは、ガス供給工程P2で内部空間16に満たされた検査ガスの圧力に相当する。
【0030】
透過箇所18の物性情報は、内部空間16に接する透過箇所18の面積ARと、透過箇所18の厚さTと、透過箇所18における検査ガスの透過係数TRとを含む。図3では、内部空間16に接する透過箇所18の面積ARは、検査対象物12の6つの内面の面積である。なお、6つの内面の1つは、ガス出入口17に相当する部分が除外される。
【0031】
演算工程P4では、検査装置14は、下記の(1)式にしたがって透過量を演算する。
【0032】
透過量=(GP+AP)×TR×AR/T・・・(1)
【0033】
すなわち、検査装置14は、ゲージ圧GPと大気圧APとの加算結果と、透過係数TRと、透過箇所18の面積ARを透過箇所18の厚さTで除算した結果とを乗算し、透過量を求める。これにより、単位時間当たりに透過箇所18を透過する検査ガスの透過量を適切に取得することができる。
【0034】
大気圧APは、予め設定されてもよい。また、大気圧APは、測定工程P3で測定される漏れ量に基づいて演算されてもよい。この場合、ガス供給工程P2では、検査装置14は、内部空間16に供給される検査ガスの圧力を段階的に増加させる。測定工程P3では、検査装置14は、内部空間16に供給される検査ガスの圧力が段階的に増加されたときの各段階の漏れ量を取得し、各段階の漏れ量に近似する直線を求める。その後、検査装置14は、各段階の漏れ量に近似する直線に基づいて、内部空間16に検査ガスが供給されていない場合の漏れ量を求め、その漏れ量からベルヌーイの定理を用いて大気圧APを求める。
【0035】
図4は、ガス圧と漏れ量との関係を示すグラフである。図4中の近似直線ASLは、段階1のときの漏れ量L1と、段階2のときの漏れ量L2と、段階3のときの漏れ量L3のそれぞれに近似する直線である。図4では、近似直線ASLに基づいて、内部空間16に供給される検査ガスの圧力がゼロのときの漏れ量L0が求められ、その漏れ量L0から大気圧APが求められる。
【0036】
このように、各段階の漏れ量に基づいて大気圧APを求め、上記の(1)式を用いて透過量を演算することで、リーク検査の環境が変わっても、その環境に応じた透過量を得ることができる。
【0037】
図5は、燃料電池の単セル30を示す概略図である。単セル30は、膜電極接合体32と、膜電極接合体32を挟持する一対のセパレータ34とを有する。一対のセパレータ34の各々は、シール部材36を有する。シール部材36は、膜電極接合体32に向くセパレータ34の面に接合され、膜電極接合体32との間に配置される。膜電極接合体32と一対のセパレータ34との間には、ガスを供給するための流路38が形成される。一対のセパレータ34の一方と膜電極接合体32との間に形成される流路38は、水素を含有する燃料ガスを供給するための流路である。一対のセパレータ34の他方と膜電極接合体32との間に形成される流路38は、酸素を含有する酸化剤ガスを供給するための流路である。
【0038】
本実施形態のリーク検査方法は、単セル30に適用し得る。この場合、検査対象物12は、一対のセパレータ34である。また、内部空間16は、各流路38である。また、透過箇所18は、各セパレータ34のシール部材36である。
【0039】
詳細には、透過箇所18は、各セパレータ34の第1端部に位置するシール部材36と、各セパレータ34の第1端部とは逆の第2端部に位置するシール部材36とである。各セパレータ34の第1端部および第2端部に位置するシール部材36は、膜電極接合体32の周縁部と接する。各セパレータ34の第1端部および第2端部に位置するシール部材36において流路38に接する表面F1~F4の面積の合算値が、透過箇所18の面積ARとなる。一般に、燃料電池では、複数の単セル30が積層される。この場合、透過箇所18の面積ARは、上述の合算値に、単セル30の数を乗算した値となる。
【0040】
このように、本実施形態のリーク検査方法が単セル30に適用された場合には、測定された漏れ量が、シール部材36からの透過に起因しているか、セパレータ34の損傷箇所からのリークに起因しているか区別することができる。
【0041】
以上に基づいて把握される発明を以下に記載する。
【0042】
(1)本発明は、ガスが供給される内部空間(16)を有する検査対象物(12)の損傷によるリークを検査するリーク検査方法であって、前記内部空間(16)に、大気と異なる所定圧の検査ガスを供給するガス供給工程(P2)と、単位時間当たりに前記検査対象物(12)から漏れる前記検査ガスの漏れ量を測定する測定工程(P3)と、前記検査ガスが透過する前記検査対象物(12)の透過箇所(18)の物性情報と、前記検査ガスが供給された前記内部空間(16)のゲージ圧(GP)と、大気圧(AP)とに基づいて、単位時間当たりに前記透過箇所(18)を透過する前記検査ガスの透過量を演算する演算工程(P4)と、測定された前記漏れ量と、演算された前記透過量との比較結果に基づいて、前記リークがあるか否か判定する判定工程(P5)と、を含む。
【0043】
本発明によれば、測定された漏れ量が、透過箇所からの透過に起因しているか、検査対象物の損傷箇所からのリークに起因しているか区別することができる。その結果、検査対象物の損傷箇所からのリークを適切に検出することができる。
【0044】
(2)本発明は、リーク検査方法であって、前記ガス供給工程(P2)の前に、前記内部空間(16)から気体をパージするパージ工程(P1)をさらに含んでもよい。これにより、内部空間を概ね検査ガスのみで満たすことができる。その結果、単位時間当たりに検査対象物から漏れる検査ガスの漏れ量を適切に測定することができる。
【0045】
(3)本発明は、リーク検査方法であって、前記ガス供給工程(P2)では、前記内部空間(16)に供給される前記検査ガスの圧力を段階的に増加させ、前記演算工程(P4)では、各段階の前記漏れ量に基づいて大気圧(AP)を求め、求めた前記大気圧(AP)を用いて前記透過量を演算してもよい。これにより、リーク検査の環境が変わっても、その環境に応じた透過量を演算することができる。
【0046】
(4)本発明は、リーク検査方法であって、前記物性情報は、前記内部空間(16)に接する前記透過箇所(18)の面積(AR)、前記透過箇所(18)の厚さ(T)、および、前記透過箇所(18)における前記検査ガスの透過係数(TR)を含んでもよい。これにより、単位時間当たりに透過箇所を透過する検査ガスの透過量を適切に取得することができる。
【0047】
(5)本発明は、リーク検査方法であって、前記演算工程では、前記ゲージ圧(GP)と前記大気圧(AP)との加算結果と、前記透過係数(TR)と、前記面積(AR)を前記厚さ(T)で除算した結果とを乗算し、前記透過量を求めてもよい。これにより、単位時間当たりに透過箇所を透過する検査ガスの透過量を適切に取得することができる。
【0048】
(6)本発明は、リーク検査方法であって、前記検査対象物(12)は、膜電極接合体(32)を挟持するセパレータ(34)であり、前記内部空間(16)は、前記膜電極接合体(32)に前記ガスを供給するための流路(38)であり、前記透過箇所(18)は、前記セパレータ(34)に接合され、前記膜電極接合体(32)との間に配置されるシール部材(36)であってもよい。これにより、測定された漏れ量が、シール部材からの透過に起因しているか、セパレータの損傷箇所からのリークに起因しているか区別することができる。
【0049】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0050】
10…検査システム 12…検査対象物
14…検査装置 16…内部空間
18…透過箇所 30…単セル
32…膜電極接合体 34…セパレータ
36…シール部材 38…流路
AP…大気圧 AR…面積
GP…ゲージ圧 P1…パージ工程
P2…ガス供給工程 P3…測定工程
P4…演算工程 P5…判定工程
T…厚さ TR…透過係数
図1
図2
図3
図4
図5