(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046796
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】自動弁
(51)【国際特許分類】
F16T 1/22 20060101AFI20240329BHJP
F16T 1/00 20060101ALI20240329BHJP
F16T 1/40 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F16T1/22 E
F16T1/00 D
F16T1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152086
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】神丸 直毅
(57)【要約】
【課題】弁室空間の底部に滞留する初期の流体を迅速に排出することができる自動弁の提供。
【解決手段】配管系統の作動を開始した直後の初期状態においては、スチームトラップ90の弁室15には多量のドレンが初期ドレンとして流入する。この初期状態においては、コイルバネ25の付勢力を受けてディスク弁5は矢印105方向に進出し、凹部23(
図2)及び4箇所の初期用排出路21を開放して、弁室15と流出路98とを連通させている。このため、配管系統の作動が開始された場合、初期のドレンはオリフィス51から排出されると同時に、初期用排出路21を通じて一気に多量に排出される。そして、初期ドレンが排出され後、弁室15内の圧力の上昇を受け、弁座50に取り付けられたディスク弁5は加圧され、凹部23及び4箇所の初期用排出路21を完全に閉塞して弁室15と流出路98との連通を遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入経路、及び当該流体を外部に向けて排出する流出経路を有する自動弁本体であって、前記流入経路及び前記流出経路に各々連通する弁室空間が内部に形成された自動弁本体、
前記弁室空間の取付底部に配置された弁座手段であって、前記弁室空間と前記流出経路とを連通させる弁口部が形成された弁座手段、
前記弁室空間への前記流体の流入に反応して作動し、前記弁口部を開放又は閉塞する弁口開閉手段、
前記弁座手段又は前記弁室空間の前記取付底部に形成された補助排出路であって、前記弁室空間と前記流出経路とを連通させる補助排出路、
前記補助排出路を開放又は閉塞する補助開閉手段であって、初期状態においては前記補助排出路を開放し、作動状態においては前記補助排出路を閉塞する補助開閉手段、
を備えたことを特徴とする自動弁。
【請求項2】
請求項1に係る自動弁において、
前記補助排出路は、前記弁口部の周囲に形成されている、
ことを特徴とする自動弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る自動弁において、
前記補助開閉手段は、作動状態において、前記弁室空間に流入する前記流体の流入圧に従って前記補助排出路を閉塞する、
ことを特徴とする自動弁。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に係る自動弁において、
前記補助開閉手段は、作動状態において、前記弁室空間に流入する前記流体の温度に従って前記補助排出路を閉塞する、
ことを特徴とする自動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る自動弁は、弁室内の初期ドレン等の流体を排出するための自動弁の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動弁としては、たとえば産業プラントに設置されるフロート式スチームトラップがある。産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管内で蒸気が液化しドレン(蒸気の凝縮水)が発生した場合、蒸気の移送の障害になるため、適宜、ドレンを配管外に排出する必要がある。
【0003】
このため、配管系統の随所にスチームトラップが設けられている。フロート式スチームトラップに関する技術として後記特許文献1に開示された技術がある。このフロート式スチームトラップのトラップ本体1内にはドレン貯室4が形成されており、ドレン貯室4にはボールフロート14が自由な運動状態で収納されている。そして、ドレン貯室4の下方には、小径のオリフィスが形成されたドレン排出弁16が設けられている。
【0004】
通常の作動時においてはボールフロート14がドレン排出弁16に着座し、ボールフロート14の球面によってオリフィスは閉塞され、オリフィスからの蒸気漏れは防止される。これに対して、ドレン貯室4内にドレンが一定量以上、滞留した場合、ボールフロート14はドレンの水位に従って浮上してオリフィスを開放し、ドレン排出弁16のオリフィスから通路20を通じて二次側連結口21にドレンは排出される。
【0005】
そして、ドレンの排出による水位の低下にしたがってボールフロート14は下降し、ドレン排出弁16に着座してオリフィスを閉塞する。こうして、ドレン貯室4に流入するドレンの水位に従ってボールフロート14が浮上又は下降を繰り返し、ドレン排出弁16のオリフィスを開閉して適宜、ドレンを排出する。
【0006】
なお、ドレン貯室4の上部にはエア抜き弁22が設けられている。このエア抜き弁22は、ダイヤフラム弁機構を有しており、配管系統の作動初期におけるドレン貯室4内のエアーを排出し、その後高温の蒸気の流入によって閉弁する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の特許文献1に開示された構成においては、ドレン貯室4に流入する初期ドレンを迅速に排出することができないという問題がある。すなわち、配管系統の作動を開始した直後においては、配管内に残存していたドレンが初期ドレンとして多量にフロート式スチームトラップに流れ込む。このような初期ドレンは、フロート式スチームトラップが通常動作に移行できるよう、可能な限り迅速に排出する必要がある。
【0009】
特許文献1に開示されたフロート式スチームトラップにおいては、ドレン貯室4の上部に設けられたエア抜き弁22からは初期のエアーが排出されるのみであり、ドレン貯室4の底部に滞留する初期ドレンを排出することはできない。このため、初期ドレンはドレン排出弁16に形成されたオリフィスから排出されることになるが、一般にこのオリフィスは確実な閉弁によって蒸気漏れを防止するために、小径に形成されている。このため、初期ドレンは小径のオリフィスから少しずつ排出されるのみであり、迅速に排出することができない。
【0010】
そこで本願に係る自動弁は、ドレン貯室4等の弁室空間の底部に滞留する初期のドレン(流体)を迅速に排出することができる自動弁の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る自動弁は、
流体が流入する流入経路、及び当該流体を外部に向けて排出する流出経路を有する自動弁本体であって、前記流入経路及び前記流出経路に各々連通する弁室空間が内部に形成された自動弁本体、
前記弁室空間の取付底部に配置された弁座手段であって、前記弁室空間と前記流出経路とを連通させる弁口部が形成された弁座手段、
前記弁室空間への前記流体の流入に反応して作動し、前記弁口部を開放又は閉塞する弁口開閉手段、
前記弁座手段又は前記弁室空間の前記取付底部に形成された補助排出路であって、前記弁室空間と前記流出経路とを連通させる補助排出路、
前記補助排出路を開放又は閉塞する補助開閉手段であって、初期状態においては前記補助排出路を開放し、作動状態においては前記補助排出路を閉塞する補助開閉手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る自動弁は、弁室空間と流出経路とを連通させる補助排出路が、弁座手段又は弁室空間の取付底部に形成されている。そして補助開閉手段は、初期状態においては補助排出路を開放し、作動状態においては補助排出路を閉塞する。
【0013】
したがって、初期状態における弁室空間内の流体を、弁座手段又は弁室空間の取付底部に形成されている補助排出路から排出することが可能であり、弁室空間の底部に滞留する初期の流体を迅速に排出することができる。また、補助排出路が連通する流出経路は、弁口部が連通する流出経路と同じであり、流通経路が共用されている。したがって、補助排出路のための新たな流出経路を設ける必要がなく、自動弁の構成の複雑化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願に係る自動弁の第1の実施形態であるスチームトラップ90の全体構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す弁座50近傍の拡大断面図であり、作動時の状態を示す拡大断面図である。
【
図3】
図1に示すディスク弁5及びオリフィス51等を弁室15側から見た正面図である。
【
図4】
図1に示す弁座50近傍の拡大断面図であり、初期状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る自動弁の下記の要素に対応している。
【0016】
フロート2・・・弁口開閉手段
ディスク弁5・・・補助開閉手段
蒸気又はドレン9・・・流体
弁室15・・・弁室空間
初期用排出路21・・・補助排出路
上部本体41及び下部本体42・・・自動弁本体
底部内壁43・・・取付底部
弁座50・・・弁座手段
オリフィス51・・・弁口部
スチームトラップ90・・・自動弁
流入口97・・・流入経路
流出口99・・・流出経路
【0017】
[第1の実施形態]
本願に係る自動弁の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、本願に係る自動弁をフロート式のスチームトラップに適用した例を掲げる。
【0018】
(スチームトラップ90の全体構成の説明)
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管内で蒸気が液化するとドレンが滞留し、蒸気の移送の障害になる。
【0019】
このため、配管系統の随所にはドレンを自動的に排出するためのスチームトラップが多数設けられている。
図1は本実施形態におけるスチームトラップ90の断面図である。上部本体41と下部本体42とは、ガスケット45を挟んでボルト94によって固定され、内部に気密性を保った弁室15を形成する。
【0020】
配管の主管(図示せず)には支管81が連通して設けられており、この支管81に、下部本体42に形成された流入口97が接続される。そして、流入口97 から弁室15に蒸気やドレンが矢印101方向に流入する。なお、弁室15の上部には、網状のストレーナ80が装着されており、蒸気やドレンはこのストレーナ80を透過して弁室15に流入する。ストレーナ80を透過することによって、蒸気やドレンに混入しているゴミやスケール等の異物がストレーナ80によって捕捉される。
【0021】
弁室15の底部近傍に位置する底部内壁43には、略円筒形状を有する弁座50が貫通した状態で固定されている。
図2は弁座50近傍の拡大断面図である。弁座50が設けられる底部内壁43は、本実施形態では弁室15の底面から上部本体41の内面である天井面までの全体の高さの約3分の1ないし4分の1程度の下側位置に形成されているが、この位置からさらに下側に底部内壁43を形成することもできる。また、弁室15の全体の高さの2分の1以下の下側位置に底部内壁43を形成してもよい。
【0022】
弁座50の先端部分には小径のオリフィス51が形成されている。オリフィス51の上流側端面はシート面を形成している。弁座50はガスケット59を挟んで下部本体42の底部内壁43に螺入して固定されており、弁室15の気密性を保つ。オリフィス51の内周部は、弁座50の内部に形成された弁座空間53に通じており、さらに弁座空間53は流出路98及び流出口99に接続されたドレン回収管82(
図1)に連通している。
【0023】
これによって、弁室15の底部に滞留したドレン9(
図1)を、オリフィス51からドレン回収管82に向けて矢印102方向に排出することができる。なお、蒸気やドレンの流入方向に従い、上流である流入口97側が一次側、流出口99側が二次側である。
【0024】
弁座50の周囲の底部内壁43には、
図2に示すように弁室15側に円形上の凹部23が形成されている。そして底部内壁43には、さらに凹部23と流出路98とを連通させる初期用排出路21が形成されている。この初期用排出路21は弁座50の周囲に4箇所設けられている(
図3参照)。
【0025】
本実施形態において、4箇所の初期用排出路21は、弁座中心線50Lを中心として形成される同一円上に沿って均等の間隔で配置されている。また、それぞれの初期用排出路21は、弁座中心線50Lと平行に延びるように形成されている。さらに、それぞれの初期用排出路21は凹部23よりも幅が小さく、凹部23の外側位置に形成されている。
【0026】
また、弁座50の先端部分には、弁室15内に位置するように円形状のディスク弁5が取り付けられている。ディスク弁5には中心穴が形成されており、この中心穴を弁座50の先端が貫通した状態で配置されている。ディスク弁5は、弁座50の弁座中心線50Lに沿って矢印105、106方向に平行移動が可能に保持されている。
【0027】
そして、ディスク弁5が底部内壁43のシート面である内周面43aに接した状態(
図2)がディスク弁5の矢印106方向への後退の限界位置であり、この状態でディスク弁5は凹部23及び4箇所の初期用排出路21を完全に閉じて弁室15と流出路98との連通を遮断する。また、弁座50の先端部分には、外側に張り出したストッパー58が一体的に形成されている。ディスク弁5がこのストッパー58に接した状態(
図4)がディスク弁5の矢印105方向への進出の限界位置であり、この状態でディスク弁5は凹部23及び4箇所の初期用排出路21を開放し、弁室15と流出路98とを連通させる。
【0028】
本実施形態においては、凹部23にコイルバネ25が挿入されている。コイルバネ25は、凹部23の内側(弁座中心線50Lに近い側)に沿って配置されている。そして、コイルバネ25の後端は凹部23と初期用排出路21との段部に接し、先端はディスク弁5の裏面に接している。これによって、コイルバネ25は常時、ディスク弁5を矢印105に示す進出方向に付勢している。
【0029】
弁室15には、中空の球状体として構成されたフロート2が浮動可能に配置されている。弁室15に滞留したドレン9の水位が基準レベルL1にあるとき、フロート2は
図1に示す状態に位置し、弁座50と支持片11に着座して接触しオリフィス51を閉塞して閉弁する。そして、弁室15に流入するドレン9の水位に従ってフロート2は浮上するようになっている。なお、ストレーナ80の内側にはフロート2の過度の浮き上がりを防止するためのフロートカバー70が設けられている。
【0030】
本実施形態におけるスチームトラップ90においては、上部本体41に流出路98に連通する上部排出路33が形成されている。そして、上部排出路33にはさらに上部排出口31が連通し、この上部排出口31の下方に近接して温度応動弁36が設けられている。
図1において温度応動弁36は断面ではなく側面図として表されている。この温度応動弁36は、主に蒸気移送の初期段階において、配管内や弁室15に存在する空気を上部排出口31から排出し、エアーバインディング(空気障害)を解消するためのものである。
【0031】
温度応動弁36は、周辺温度が低温の場合、内部に封入されているサーモリキッド(感温液)の作用によって収縮して上部排出口31を開放し、蒸気移送の初期段階に上部排出口31から上部排出路33を通じて空気を送り出す。送り出された空気は、上部排出路33から流出路98を通じてドレン回収管82に向けて排出される。
【0032】
そして、弁室15に蒸気が流入した場合、蒸気の高温雰囲気によって温度応動弁36は膨張して上部排出口31を閉塞する。これによって、以後、上部排出口31からの蒸気漏れが防止される。
【0033】
(スチームトラップ90の動作の説明)
続いて、スチームトラップ90の動作を説明する。配管系統の作動を開始した直後においては、配管内に残存していたドレンが初期ドレンとして多量にスチームトラップ90の弁室15に流れ込む。
【0034】
このような初期状態においては、弁室15と流出路98との間には大きな圧力差はない。このため、ディスク弁5はコイルバネ25の付勢力を受けて矢印105方向に進出しており、凹部23及び4箇所の初期用排出路21を開放し、弁室15と流出路98とを連通させている。
図4はこの初期状態を示している。
【0035】
そしてこの後、配管内の蒸気が圧送されることによって、徐々に弁室15内の圧力が高まる。この圧力を受けて弁室15に滞留していた初期のドレンは押し出されるが、このときディスク弁5は凹部23及び4箇所の初期用排出路21を開放した状態にあり、ディスク弁5の裏面と底部内壁43の内周面43aとの間には隙間5sが形成されている。このため、初期ドレンはオリフィス51から排出されると同時に、隙間5sから初期用排出路21を通過して一気に多量に流出路98に排出される。
【0036】
このため、弁室15に滞留している初期のドレンを迅速に排出することができる。流出路98に排出されたドレンは、流出口99を通して矢印102方向に流れ、ドレン回収管82に排出される。なお、弁座50は、ドレンを流出路98及び流出口99から排出するのに最も適した部位に設けられており、弁座51の周囲に初期用排出路21を形成することによって流出経路を共用することができ、確実で効率的な初期ドレンの排出が可能になる。
【0037】
初期用排出路21から多量の初期ドレンが一気に排出された後も弁室15内の圧力は上昇を続け、この圧力の上昇を受け、弁座50に取り付けられたディスク弁5は加圧され、コイルバネ25を圧縮しながら矢印106方向に移動して後退する。作動時における弁室15内の高圧を受けた場合、圧縮されるようにコイルバネ25の付勢力が予め設定されている。
【0038】
ディスク弁5は矢印106方向に移動して後退し、やがてディスク弁5は、
図2の作動時の状態(作動状態)に示すように、底部内壁43の内周面43aに接するに至る。これによって、ディスク弁5は、凹部23及び4箇所の初期用排出路21を完全に閉塞して弁室15と流出路98との連通を遮断する。以後、配管系統に接続された機器が作動状態にある間、ディスク弁5は凹部23及び4箇所の初期用排出路21を閉塞した状態を維持するため、初期用排出路21から蒸気漏れが生じることはない。
【0039】
弁室15内の初期ドレンが排出されたことによって、ドレンの水位は低下して基準レベルL1に戻り、フロート2は下降して弁座50に着座しオリフィス51を閉塞して閉弁する(
図1及び
図2)。オリフィス51の閉弁によって蒸気漏れが防止される。そして、配管系統を移送される蒸気からドレンが発生して弁室15に流入した場合、フロート2はドレンの水位の上昇にともなって矢印103方向に浮上して弁座50から離れオリフィス51を開放する。これによって、弁室15に滞留したドレン9は、配管内の高圧に基づく勢いに従い、オリフィス51から排出される。
【0040】
こうして、フロート2の上昇、下降によってオリフィ51が開閉を繰り返し、スチームトラップ90は適宜ドレンを排出する。なお、オリフィス51は常時、ドレン9に水没した状態にあるため、オリフィス51から蒸気漏れが生じることはない。
【0041】
[第2の実施形態]
次に、本願に係る自動弁の第2の実施形態を説明する。本実施形態においては、上述の第1の実施形態で示したコイルバネ25の代わりにバイメタルコイルを用いる(図示せず)。その他のスチームトラップの構成や動作は第1の実施形態と同様である。
【0042】
バイメタルは、膨張係数の異なる2枚の合金薄板を貼り合わせた感温部材であり、バイメタルコイルはこの感温部材をコイル状に形成している。具体的に言えば、バイメタルコイルは、短冊状のバイメタル平板を螺旋状に巻いたものを更に螺旋状に巻いて二重つる巻き形に形成されている。このバイメタルコイルは、低温になると半径が小さくなって長さが長くなり、高温になると半径が大きくなって長さが短くなる。これによって、バイメタルコイルは周辺温度に反応して変形し、コイルの中心軸方向に収縮又は伸張する。本実施形態においては、バイメタルコイルの後端は凹部23と初期用排出路21との段部に固着しており、先端はディスク弁5の裏面に固着している。
【0043】
本実施形態において用いるバイメタルコイルは、周辺温度が所定の基準温度よりも低い初期状態には伸張し、弁座中心線50L(
図2等参照)方向におけるバイメタルコイルの全長が長く変形するようになっている。そして、周辺温度が所定の基準温度以上になると、この温度変化に反応してバイメタルコイルは収縮し、弁座中心線50L(
図2等参照)方向におけるバイメタルコイルの全長が短く収まるように変形する。
【0044】
配管系統の作動前においては、弁室15内の温度は低いため、バイメタルコイルは伸張してディスク弁5を矢印105方向に進出させている。これによって、凹部23及び4箇所の初期用排出路21は開放された状態にあり、弁室15と流出路98とは連通している。
【0045】
そして、この初期状態から配管系統の作動が開始されると、弁室15には配管に残存していたドレンが初期ドレンとして多量に流れ込む。そして、弁室15内の圧力が徐々に高まり、この圧力を受けて弁室15に滞留する初期ドレンは、ディスク弁5の裏面と底部内壁43の内周面43aとの間に形成された隙間5s(
図4)から初期用排出路21を通じて一気に多量に排出される。このため、弁室15に滞留する初期ドレンを迅速に排出することができる。
【0046】
その後も弁室15には高温の蒸気が流入し、弁室15内の温度は上昇し基準温度に達する。この温度変化に反応してバイメタルコイルは収縮し、弁座中心線50L方向におけるバイメタルコイルの全長が短く収まるように変形する。この変形によって、ディスク弁5は底部内壁43の内周面43aに接し、ディスク弁5は凹部23及び4箇所の初期用排出路21を完全に閉塞して弁室15と流出路98との連通を遮断する。
【0047】
以後、配管系統に接続された機器が作動状態にある間、ディスク弁5は凹部23及び4箇所の初期用排出路21を閉塞した状態を維持するため、初期用排出路21から蒸気漏れが生じることはない。その後、弁室15に流入するドレンの水位の変化に応じてフロート2が浮上又は下降してオリフィ51が開閉を繰り返し、スチームトラップ90が適宜ドレンを排出する点は上述の第1の実施形態と同様である。
【0048】
このように、本実施形態においてはバイメタルコイルを用いることによって、弁室15内の温度変化に応じてディスク弁5を移動させ、初期用排出路21を開閉する。上述の第1の実施形態で示したスチームトラップ90は、弁室15内の圧力に従ってディスク弁5が初期用排出路21を開閉するが、弁室15内の圧力変化が不安定な場合、確実に初期用排出路21を開閉することができないおそれがある。
【0049】
たとえば、配管系統が作動を停止した後、弁室15内の高圧が残存している場合、ディスク弁5は凹部23及び4箇所の初期用排出路21を閉塞したままの状態で開放状態に復位することができない。この点、本実施形態においては、弁室15内の圧力とは無関係に、弁室15内の温度変化に応じて初期用排出路21を開閉するため、ディスク弁5が初期用排出路21をより確実に開閉することができる。
【0050】
なお、バイメタルコイルの後端と凹部23の段部との間、又は先端とディスク弁5の裏面との間にコイルバネ等の弾性手段を介在させ、バイメタルコイルの過度の変形を吸収してバイメタルコイルの破損を防止することもできる。
【0051】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、本願に係る自動弁をスチームトラップに適用した例を掲げたが、これに限定されるものではなく、弁室空間と流出部とを連通させる弁口部が形成された弁座手段を有するものであれば、他の自動弁に適用することができる。
【0052】
また、前述の実施形態においては、初期用排出路21が弁座51の周囲の底部内壁43に形成された例を示したが、補助排出路(初期用排出路21等)を弁座手段(弁座50等)に形成してもよい。また、前述の実施形態において例示した初期用排出路21とは異なる配置、形状、大きさ等の補助排出路を向けることができる。
【0053】
たとえば、前述の実施形態においては、補助排出路として4箇所に形成された初期用排出路21を例示したが、補助排出路は1箇所でもよく、また2箇所又は3箇所あるいは5箇所以上でもよい。さらに、前述の実施形態においては、すべての初期用排出路21が同じ形状を有している例を示したが、異なる形状の補助排出路(初期用排出路21等)を採用することもできる。
【0054】
また、前述の実施形態においては、4箇所の初期用排出路21が、弁座中心線50Lを中心として形成される同一円上に沿って均等の間隔で配置されている例を示したが、補助排出路(初期用排出路21等)を多重円上に配置することもできる。また、複数の補助排出路(初期用排出路21等)の間隔を不均等に配置することや、放射状のランダムな箇所に配置することもできる。
【0055】
さらに、前述の実施形態においては、4箇所の初期用排出路21が、弁座中心線50Lと平行に延びるように形成されている例を示したが、補助排出路(初期用排出路21等)を弁座手段の中心線(弁座中心線50L等)に対して斜めに配置されるように形成してもよい。なお、上述のそれぞれの実施形態を組み合わせた構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0056】
2:フロート 5:ディスク弁 9:ドレン 15:弁室 21:初期用排出路
41:上部本体 42:下部本体 50:弁座 51:オリフィス
90:スチームトラップ 97:流入口 99:流出口