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特開2024-46801締結補助部材及びそれを用いた締結構造
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  • 特開-締結補助部材及びそれを用いた締結構造 図1
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  • 特開-締結補助部材及びそれを用いた締結構造 図3
  • 特開-締結補助部材及びそれを用いた締結構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046801
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】締結補助部材及びそれを用いた締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20240329BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F16B43/00 C
F16B37/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152096
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】522379749
【氏名又は名称】佐藤 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝博
【テーマコード(参考)】
3J034
【Fターム(参考)】
3J034AA04
3J034BA09
3J034BD02
3J034CA01
(57)【要約】
【課題】全体の製造工数の増加を抑制して、ボルト及びワッシャを使用した被締結部材の締結におけるワッシャの圧着箇所での流体漏洩の防止を効果的で安定して行うことができる締結補助部材及びそれを用いた締結構造を提供する。
【解決手段】ボルト及びワッシャを用いて被締結部材を締結するときに使用される締結補助部材であって、軸方向に貫通する円形の貫通孔を中央に有する円板状の突縁部と、径方向に所定の厚さを有し、貫通孔の外縁から軸方向の一方に延伸する円筒状の嵌合部と、を備え、突縁部が、被締結部材を締結するときに、ワッシャと被締結部材の間に介挿されるように形成されており、嵌合部が、被締結部材が締結されるときに、ボルトの軸部とワッシャの間隙に嵌合されるように形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト及びワッシャを用いて被締結部材を締結するときに使用される締結補助部材であって、
軸方向に貫通する円形の貫通孔を中央に有する円板状の突縁部と、
径方向に所定の厚さを有し、前記貫通孔の外縁から軸方向の一方に延伸する円筒状の嵌合部と、を備え、
前記突縁部が、前記被締結部材を締結するときに、前記ワッシャと前記被締結部材の間に介挿されるように形成されており、
前記嵌合部が、前記被締結部材が締結されるときに、前記ボルトの軸部と前記ワッシャの間隙に嵌合されるように形成されていることを特徴とする締結補助部材。
【請求項2】
前記貫通孔の内面に、前記ボルトと螺合するためのネジ山が形成されている請求項1に記載の締結補助部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の締結補助部材、前記ボルト及び前記ワッシャを用いて、前記被締結部材を締結する締結構造であって、
前記ボルトの軸部が、前記ワッシャ及び前記締結補助部材を貫通しており、
前記締結補助部材の突縁部が、前記ワッシャと前記被締結部材の間に介挿されており、
前記締結補助部材の嵌合部が、前記ボルトの軸部とワッシャの間隙に嵌合されていることを特徴とする締結構造。
【請求項4】
前記ワッシャが、前記ボルトの座面に圧着している請求項3に記載の締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト及びワッシャを用いて被締結部材を締結するときに使用される締結補助部材及びそれを用いた締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルト、ナット等で母材(被締結部材)を締結するときに、ワッシャ(座金)が広く使用されている。ワッシャは、中央にボルトの軸部を貫通させる孔(以下、「ワッシャ孔」とする)を有する薄い板状の部材で、ボルト、ナット等の座面と母材との間に介挿して使用される。ワッシャは、ボルトの頭部やナット等が母材に陥没する、ボルトやナット等の座面が母材に接触することにより母材の表面に傷が付く、振動等によりボルトやナット等が緩む等を防止するために使用されるが、気密性の保持、即ちボルトやナットと母材との間に隙間が生じるのを防ぎ、気体や液体の侵入や漏れ(以下、これらの現象を「流体漏洩」とする)を防ぐためにも使用される。気密性の保持を強化したワッシャとして、シールワッシャ(防水ワッシャ)がある。
【0003】
通常、ワッシャの内径(ワッシャ孔の直径)は、貫通するボルトの外径(軸部の直径)に対応して規格により決まっており、ボルトの外径より若干大きくなっている。よって、ボルトの軸部とワッシャ孔の内面との間に隙間が生じる。シールワッシャは、ワッシャの内側にゴム等を環状に一体化して接合したワッシャで、内側の部位(以下、「シール部」とする)がボルトの軸部に密着することにより、ボルトの軸部との隙間を埋め、ボルトやナットの座面での流体漏洩の防止を強化している。
【0004】
シールワッシャは、シール部がワッシャ本体(シール部を除いた部位)の内側に一体化して接合しているので、シールワッシャを製造する工程において、シール部を形成する作業が必要である。更に、シール部がボルトの軸部に密着するように、ボルトの外径に合わせた内径を有するシール部を形成する必要があり、ボルトの外径の大きさ毎にシール部を形成する作業が必要となる。
【0005】
これに対して、例えば実開昭54-57262号公報(特許文献1)や特許第5142346号公報(特許文献2)では、ワッシャ本体とシール部とを分離させた構造が提案されている。このような構造を採用することにより、シールワッシャ製造でのシール部を形成する作業を軽減することができる。
【0006】
特許文献1では、ボルトの首部の外側にシールリングを有し、シールリングの外径と嵌合するように座金が配置された構造が提案されており、シールリングと座金とは分離している。そして、シールリングが、座金の内径端とボルトの首部で構成される空間内で弾性圧縮されることにより、締付面とボルトの首部に密着され、防水機能を行うようになっている。
【0007】
特許文献2では、塵を含むガスから塵を回収する集塵装置において、集塵装置のヒータ部のヒータボックスにカバーを固定する際に、取付けボルトとカバーの間に防水ワッシャを使用しており、防水ワッシャは、通常のワッシャの内周縁とボルトの外周面との間に防水用の充填部材を設けた構造となっている。特許文献2では、ワッシャの内周縁とボルトの外周面との間に充填部材を配置させるための手法は自由に選定できるとなっており、ワッシャと充填部材が分離した構造が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭54-57262号公報
【特許文献2】特許第5142346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ワッシャ本体とシール部を分離することにより、両者が一体化したシールワッシャを製造するよりも、全体の作業工数を削減することができるが、防水性能や安定性に問題が生じる可能性がある。
【0010】
例えば、図1は、ワッシャ10、シール部に相当するシール部材20、ボルト30及びナット40を用いて、母材50及び60を締結した場合の断面図である。ワッシャ10のワッシャ孔の外縁にシール部材20を接合し、それらをボルト30の頭部と母材50の間に介挿し、母材60にナット40を接触させ、ボルト30の軸部をシール部材20並びに母材50及び60の通し穴(ボルトを通すために貫通している穴)51及び61に貫通させ、ボルト30及びナット40を螺合することにより、母材50及び60を締結している。シール部材20の内面はボルト30の軸部と密着している。また、シール部材20の外径は、母材50の通し穴51の直径(穴径)よりも小さくなっている。
【0011】
このような締結構造において、矢印Aで示される、ボルト30の座面とワッシャ10の上面とが圧着している箇所での流体漏洩は、シール部材20の働きにより、ワッシャ10単体の場合よりも効果的に防止することができる。しかし、矢印Bで示される、ワッシャ10の下面と母材50の上面とが圧着している箇所での流体漏洩は、シール部材20が母材50に圧着していないので、効果的に防止するのが難しい。ワッシャ10とシール部材20が一体化した形状であるシールワッシャでも同様の問題が生じる。特許文献1では、シール部材20に相当するシールリングの外径がボルト穴径(通し穴)の外側に位置するように寸法を設定することにより、矢印Bで示される箇所での流体漏洩を防止しようとしているが、そのためには、内径は同じだが、ボルト穴径に応じて異なる外径を有するシールリングを種々用意する必要がある。
【0012】
また、図1に示される締結構造では、振動等により、シール部材20が母材50の通し穴51の奥行方向(図1において下向き)に沈降するおそれがある。
【0013】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、全体の製造工数の増加を抑制して、ボルト及びワッシャを使用した被締結部材の締結におけるワッシャの圧着箇所での流体漏洩の防止を効果的で安定して行うことができる締結補助部材及びそれを用いた締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ボルト及びワッシャを用いて被締結部材を締結するときに使用される締結補助部材に関し、本発明の上記目的は、軸方向に貫通する円形の貫通孔を中央に有する円板状の突縁部と、径方向に所定の厚さを有し、前記貫通孔の外縁から軸方向の一方に延伸する円筒状の嵌合部と、を備え、前記突縁部が、前記被締結部材を締結するときに、前記ワッシャと前記被締結部材の間に介挿されるように形成されており、前記嵌合部が、前記被締結部材が締結されるときに、前記ボルトの軸部と前記ワッシャの間隙に嵌合されるように形成されていることにより達成される。
【0015】
本発明の上記目的は、前記貫通孔の内面に、前記ボルトと螺合するためのネジ山が形成されていることにより、より効果的に達成される。
【0016】
また、本発明は、上述の締結補助部材、前記ボルト及び前記ワッシャを用いて、前記被締結部材を締結する締結構造に関し、本発明の上記目的は、前記ボルトの軸部が、前記ワッシャ及び前記締結補助部材を貫通しており、前記締結補助部材の突縁部が、前記ワッシャと前記被締結部材の間に介挿されており、前記締結補助部材の嵌合部が、前記ボルトの軸部とワッシャの間隙に嵌合されていることにより達成される。
【0017】
本発明の上記目的は、前記ワッシャが、前記ボルトの座面に圧着していることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の締結補助部材によれば、ワッシャと被締結部材の間に介挿されて通し穴の外縁を跨いで被締結部材に圧着する突縁部と、ボルトの軸部とワッシャの間隙に嵌合される嵌合部を備えるので、ボルトやナットの座面等がワッシャに圧着している箇所での流体漏洩の防止を効果的に行うことができる。更に、締結補助部材とワッシャは分離しているので、汎用のワッシャに対して締結補助部材を使用することができ、製造工数の増加を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の締結構造によれば、突縁部がワッシャと被締結部材の間に介挿されており、嵌合部がボルトの軸部とワッシャの間隙に嵌合されているので、気密性が向上し、流体漏洩を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ワッシャ及びシール部材を使用した従来の締結構造の例を示す断面図である。
図2】本発明に係る締結補助部材の例(第1実施形態)を示す図であり、図2(A)は正面断面図、図2(B)は平面図である。
図3】本発明に係る締結構造の例を示す断面図である。
図4】本発明に係る締結補助部材の例(第2実施形態)を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る締結補助部材は、中央に円形の貫通孔を有する円板状の突縁部と、貫通孔の外縁から軸方向に延伸する円筒状の嵌合部を備え、ボルトとワッシャを使用して被締結部材を締結するときに使用される。被締結部材を締結させた状態において、突縁部はワッシャと被締結部材の間に介挿され、嵌合部はボルトの軸部とワッシャの間隙に嵌合される。このような締結構造により、締結状態での気密性が向上し、ボルトやナットの座面等のワッシャとの圧着箇所での流体漏洩を効果的に防止することができる。また、締結補助部材とワッシャは一体化されずに分離しており、一般的に使用されているワッシャを対象として締結補助部材を製造することにより、市販のワッシャをそのまま利用できるので、シールワッシャ等と比べて、製造工数の増加を抑制することができる。
【0022】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付し、説明を省略することがある。また、以下の説明における数値や形状等は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
図2は、本発明に係る締結補助部材の例(第1実施形態)を示す図であり、図2(A)は締結補助部材70の正面断面図で、図2(B)は締結補助部材70の平面図である。図3は、締結補助部材70を使用した締結構造の例を示す図であり、ワッシャ10、ボルト30、ナット40及び締結補助部材70を用いて、母材(被締結部材)50及び60を締結した場合の断面図である。母材50及び60には、ボルト30を貫通させるための通し穴51及び61がそれぞれ穿設されている。ワッシャ10及び締結補助部材70は、ボルト30の頭部側で使用されている。なお、図2(A)及び図3における上下方向が軸方向で、左右方向が径方向であり、各部材において上方を向いている面を上面、下方を向いている面を下面とする。
【0024】
締結補助部材70は、突縁部71及び嵌合部72からなり、軸方向に貫通する円形の貫通孔73を有する。図2(B)に示されるように、平面図において、突縁部71、嵌合部72及び貫通孔73は同心円となっており、図2(A)に示されるように、嵌合部72は、突縁部71における貫通孔73の外縁から軸方向の一方(図2(A)では上方)に延伸するように形成されている。つまり、嵌合部72は突縁部71の上面に結合しており、突縁部71の内面(内径に対応する面)及び嵌合部72の内面とで、貫通孔73の内面を構成している。突縁部71及び嵌合部72の詳細については後述する。
【0025】
締結補助部材70は、流体漏洩を防止するために、母材50及び60を締結した締結状態においてワッシャ10、ボルト30及び母材50に密着するように、弾力性を有する素材で作製されている。例えば、パッキング・シール材として使用されているエチレン・プロピレンゴム、合成ゴムの弾性とプラスチックの剛性を併せ持つウレタンゴム、自己融着テープの素材として使用されるブチルゴム等の合成ゴムやその他の弾性体で作製されている。締結補助部材70の素材は、締結される母材50及び60の素材、締結補助部材70やワッシャ10の使用用途等に応じて選択される。なお、締結補助部材70をアルミニウムや胴等で作製しても良い。
【0026】
図3に示される締結構造では、ボルト30の座面(ボルト30の頭部31の下面)とワッシャ10の上面が圧着し、ボルト30の軸部32がワッシャ10のワッシャ孔並びに母材50及び60の通し穴51及び61を貫通し、軸部32の下部にナット40が螺合している。ナット40の上面は母材60の下面と圧着している。
【0027】
ボルト30の軸部32と母材50及び60の通し穴51及び61の内面との間には間隙がある。例えば、ボルト30が呼び径10mmのメートルねじ(M10)の場合、ボルト30の基準寸法の外径は10mmであるが、実際の外径は、ナット40と滑らかに螺合するために、基準寸法より若干小さい値(例えば9.8mm)になっていることが多い。一方、通し穴51及び61に関しては、M10のボルト30に対して通し穴51及び61の直径がボルト30の基準寸法の10mmの場合、穴ピッチ等の誤差の累積により組み上がらなくなる可能性があるので、通し穴51及び61の直径は基準寸法より若干大きい値(例えば11mm)となっていることが多い。これらの結果、ボルト30の軸部32と通し穴51及び61の内面との間に間隙が生じる。
【0028】
ワッシャ10は、ボルト30の軸方向に加えられる力の分散、ボルト30の滑落防止、母材50の表面への傷の防止等を主目的として使用されるが、軸部32と通し穴51及び61との間に生じる間隙により、ボルト30やナット40が緩むことを防止する目的でも使用される。しかし、ワッシャ10の内径も、規格により、ボルト30の外径より若干大きくなっている。例えば、ボルト30がM10の場合、ワッシャ10の内径は10.5mmとなっている。よって、ワッシャ10を使用することにより、ワッシャ10を使用しない場合よりボルト30やナット40の緩みは防止されるが、防止力が十分ではない可能性がある。
【0029】
締結補助部材70は、嵌合部72において軸部32とワッシャ10の間隙に嵌合しており、これにより、ボルト30やナット40の緩みの防止力を強化すると共に、ボルト30の座面とワッシャ10の上面との圧着箇所での流体漏洩を効果的に防止することができる。嵌合部72の上面はボルト30の座面と圧着している。
【0030】
締結補助部材70は、突縁部71においてワッシャ10と母材50との間に介挿されている。具体的には、突縁部71の外縁から径方向の一定の範囲までがワッシャ10の下面と母材50の上面と圧着しており、そこから貫通孔73までの範囲は通し穴51の上面に突出した形となっている。突縁部71がワッシャ10と母材50との間に介挿されることにより、ワッシャ10と母材50の間隙での流体漏洩を効果的に防止することができる。
【0031】
突縁部71及び嵌合部72について、更に説明する。
【0032】
突縁部71は、軸方向に貫通する円形の貫通孔73を中央に有する円板状の形状をしている。上述のように、突縁部71の外縁から径方向の一定の範囲がワッシャ10と母材50との間に介挿され、貫通孔73を構成する面がボルト30の軸部32に密着する。よって、突縁部71の外径は、通し穴51の直径に一定の範囲の幅を加算した大きさとし、例えばボルト30がM10の場合、突縁部71の外径は18mm程度とする。突縁部71の内径(貫通孔73の直径)はボルト30の外径に応じた大きさとし、例えばボルト30がM10の場合、突縁部71の内径は9.8~10mm程度とする。
【0033】
突縁部71の厚さ(軸方向の長さ)は、厚過ぎるとワッシャ10の効果が抑制されるので、ワッシャ10の厚さより小さくし、例えばワッシャ10がM10用のワッシャの場合、突縁部71の厚さはワッシャ10の厚さの半分程度(0.8~1mm)とする。
【0034】
嵌合部72は、径方向に所定の厚さを有し、貫通孔73の外縁において突縁部71と結合する円筒状の部位である。上述のように、嵌合部72がボルト30の軸部32とワッシャ10との間の間隙に嵌合されるので、嵌合部72の厚さは、間隙の大きさに合わせた大きさとする。例えばボルト30がM10で、ボルト30の外径が9.8mm、ワッシャ10の内径が10.5mmの場合、嵌合部72の厚さは0.35mmとする。ボルト30の規格サイズより1サイズ上の規格サイズのワッシャ10を使用し、例えばボルト30の外径が10mm、ワッシャ10の内径が12mmの場合は、嵌合部72の厚さは1mmとする。締結補助部材70が弾力性を有する素材で作製されている場合、嵌合部72が軸部32とワッシャ10の間隙に堅固に嵌合されるように、嵌合部72の厚さを間隙の大きさより若干大きくしても良い。嵌合部72の内径は、貫通孔73の直径と同じである。
【0035】
嵌合部72の高さ(軸方向の長さ)は、ワッシャ10の厚さに合わせた大きさとする。例えばワッシャ10がM10用のワッシャの場合、嵌合部72の厚さはワッシャ10の厚さと同程度(1.6~2mm)とする。締結補助部材70が弾力性を有する素材で作製されている場合、嵌合部72の上面がボルト30の座面に強く圧着するように、嵌合部72の高さをワッシャ10の厚さより若干大きくしても良い。逆に、嵌合部72が軸部32とワッシャ10の間隙に嵌合されるのであれば、嵌合部72の高さをワッシャ10の厚さより若干小さくしても良いが、嵌合部72の上面がボルト30の座面に圧着するような高さが好適である。
【0036】
このような構造の締結補助部材70を使用して母材50及び60を締結することにより、ボルト30の座面とワッシャ10の上面との圧着箇所での流体漏洩及びワッシャ10と母材50の間隙での流体漏洩を効果的に防止することができる。また、図3に示されるように、ワッシャ10の内径が母材50の通し穴51の直径より小さい場合でも、締結補助部材70の突縁部71がワッシャ10と母材50の間に介挿されるので、振動等により、締結補助部材70が通し穴51の奥行方向に沈降するおそれを抑制することができる。
【0037】
なお、図3で示される締結構造では、ワッシャ10及び締結補助部材70は、ボルト30の頭部側で使用されているが、ナット40側で使用しても良く、両側で使用しても良い。
【0038】
また、ボルト30とナット40を強く螺合したときに、突縁部71の一部が分離するような締結補助部材70を使用しても良い。例えば、締結補助部材70の素材や突縁部71の厚さを適宜選定し、突縁部71が、嵌合部72と結合している上面と結合していない上面の境界線を含む軸方向の面で分離できるようにする。これにより、ワッシャ10、締結補助部材70及び母材50を、より強く圧着することができる。
【0039】
ボルト30としては、メートルねじだけではなく、インチねじ等も使用可能であり、タッピングねじのようにナットを使用しないボルトも使用可能である。軸部に円筒部を有するボルトも使用可能である。ワッシャ10としても、平ワッシャだけではなく、スプリングワッシャ等も使用可能である。
【0040】
本発明の他の実施の形態について説明する。
【0041】
第1実施形態での締結補助部材70の貫通孔73の内面には凹凸がないが、貫通孔の内面にネジ山を形成し、貫通孔を貫通するボルトと締結補助部材が螺合するようにすることも可能である。このような締結補助部材を使用することにより、締結構造における圧着箇所からの流体漏洩の防止や構造の安定性を更に強化することができる。
【0042】
貫通孔の内面にネジ山を形成した締結補助部材の例(第2実施形態)を図4に示す。図4は締結補助部材80の正面断面図であり、締結補助部材80は突縁部81及び嵌合部82からなり、軸方向に貫通する貫通孔83を有し、貫通孔83の内面にネジ山が形成されている。ネジ山は、螺合するボルトのネジ山に合わせて形成されている。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記形態において明示的に開示されていない事項、例えば締結補助部材の重量等は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 ワッシャ
20 シール部材
30 ボルト
31 頭部
32 軸部
40 ナット
50、60 母材
51、61 通し穴
70、80 締結補助部材
71、81 突縁部
72、82 嵌合部
73、83 貫通孔
図1
図2
図3
図4