(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046803
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂材料のリサイクル方法及び該リサイクル方法で製造した繊維強化樹脂材料及び樹脂材料リサイクル用原料
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240329BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20240329BHJP
B02C 19/18 20060101ALI20240329BHJP
B02C 17/00 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B29B17/04
B02C19/18 A
B02C17/00 A
B02C17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152098
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】722011283
【氏名又は名称】特定非営利活動法人京都イノベーション・リソース
(71)【出願人】
【識別番号】503208910
【氏名又は名称】有限会社和田テクノレイ
(72)【発明者】
【氏名】和田 實
(72)【発明者】
【氏名】鴻野雄一郎
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
4F401
【Fターム(参考)】
4D063FF34
4D063GA01
4D063GA10
4D063GC17
4D063GC31
4D063GD04
4D067CG04
4D067EE17
4D067EE35
4D067GA11
4D067GA16
4F401AA24
4F401AD08
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA15
4F401FA01Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】繊維強化樹脂材料の繊維と樹脂両方を再利用することを可能とし、従来のリサイクル技術に比し、よりエネルギー消費の少ない地球環境にやさしいリサイクル方法を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂材料を-50℃以下の温度で解砕することにより、繊維物を主とした部分と樹脂を主とした部分に分離回収し、それらを再び繊維強化樹脂及び樹脂の原料として再利用することができる繊維強化樹脂材料のリサイクル方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂材料を-50℃以下の温度で解砕することにより、繊維物を主とした部分と樹脂を主とした部分に分離回収し、それらを再び繊維強化樹脂及び樹脂の原料として再利用することができる繊維強化樹脂材料のリサイクル方法
【請求項2】
請求項1に記載されたリサイクル方法により製造された繊維強化樹脂材料および樹脂材料のリサイクル原料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維強化樹脂材料のリサイクルに関するものでとりわけ複合材料中の繊維と樹脂の両方を再利用可能とし、かつ簡便で安価なリサイクル技術に関するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
繊維強化樹脂材料は樹脂材料中に強度の高い繊維材料を分散させ、軽量で強度の高い材料を提供するもので代表的なものとしてガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂が広く用いられている。これらの材料は自動車部品や航空機部品などの他、各種機械部品やスポーツ用品などで幅広く使われている。
【0003】
これら材料は地球環境保全や資源の有効活用の観点から、使用後再度リサイクルして再使用されるのが望ましい。炭素繊維複合材の場合、炭素繊維が高価であることからそのリサイクル方法が研究され、高温下で低融点の樹脂部分を燃焼させ残った炭素繊維を取り出す方法や、化学薬品で樹脂を溶融させ炭素繊維を取り出す方法などが開発されている。
【0004】
同様な手法はガラス繊維強化樹脂材料でも適用可能と考えられるが、ガラス繊維が比較的安価であるため、経済的な理由からこれまでリサイクル技術の積極的な開発はなされてこなかった。
【0005】
これらの従来のリサイクル技術は、例えば炭素繊維強化樹脂の場合、炭素繊維が高価であるためこれを取り出すことが目的であり、樹脂材料の回収は顧みられなかったが、リサイクルの観点からは樹脂を含めた複合材料全体をリサイクルすることが望ましい。
【0006】
またCO2削減につながる省エネルギーの観点から見ると、炭素繊維はその製造時かなりの高温処理が必要で多大なエネルギーを消費するが、一旦製造された炭素繊維を再利用することはこの製造時エネルギーを削減することとなりCO2削減に対する効果も大きい。
【0007】
さらに考えるとリサイクル時のエネルギー消費についても抑えることができればトータルでエネルギー消費削減の効果がより大きいこととなり、より地球環境保全に貢献できる技術となる。
【0008】
本発明は以上述べた繊維強化樹脂材料の繊維と樹脂両方を再利用することを可能とし、従来のリサイクル技術に比し、よりエネルギー消費の少ない地球環境にやさしいリサイクル方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般的に低温下や極低温下で材料が脆性的となり、材料が破壊されやすくなることは良く知られていることである。実際、樹脂材料を低温下で粉砕し微粉状になったその樹脂材料を樹脂成型品の原料として用いることが行われている。これらは樹脂のみからなる材料についてである。
【0010】
一方、炭素繊維強化樹脂の従来からのリサイクルでは、リサイクルする端材や使用済み製品を高温や化学薬品環境で反応しやすい大きさまで、常温化で破砕した後、樹脂の燃焼処理や化学薬品での樹脂の溶解を行い、その過程で反応しない炭素繊維を取り出し、取り出した炭素繊維を再利用に供している。
【0011】
発明者らは先に述べた低温~極低温での樹脂材料の脆化について着目し、複合材料の低温~極低温での挙動について調べてみた。たとえば文献(1)の172ページ
にはエポキシ樹脂/炭素繊維複合材料の極低温下での樹脂割れについての記述がある。
【0012】
すなわち繊維強化複合材料は繊維と樹脂との物理的特性差(強度、熱膨張率など)により特に低温~極低温下で内部にひずみなどが生じ、より破砕しやすくなると考えられる。
【0013】
さらに発明者らは繊維強化樹脂材料のリサイクルに際して、必ずしも不純物を含まないか殆ど含まない繊維材料を取り出すことを目指さずとも、繊維強化樹脂材料を一定程度の大きさまで解砕し、解砕されたものから多少の樹脂成分を含むが主として繊維材料からなる部分と樹脂成分を主とする成分に適当な方法により分離回収するこ
とにより、両成分を原料としてそれぞれ炭素繊維強化樹脂ならびに樹脂の原料として再利用できることに思い至った。
【0014】
以上述べた考察の元、先に述べた低温~極低温の環境下で樹脂材料が脆化し破砕しやすくなる特性を利用して、繊維強化樹脂を低温~極低温の状態で解砕し、得られた解砕物から、繊維を主とする部分と樹脂を主とする部分に分別し、両成分をそれぞれリサイクル原料として用いるようにするのが本発明の内容であり、従来の繊維成分だけを取り出すリサイクル法と異なり、繊維、樹脂両成分をリサイクル原料として取り出す地球環境並びに資源の有効利用の両方に貢献する技術である。
【0015】
ここで破砕乃至解砕をする機器は目的とする材料の寸法に応じてカッターミル、ボールミル、ターボミルなどの各種破砕乃至解砕機で低温~極低温を維持できるようにしたものであれば良い。また低温~極低温の具体的温度範囲としては-50℃以下であればよく、より効果を発揮するためには更に低温が望ましい。低温~極低温を維持する媒体としては例えば液化天然ガス(-162℃)、液化酸素(-183℃)、液化窒素(-196℃)などを用いることができる。
【0016】
さらに得られた解砕物を分離する方法としては繊維主成分部分と樹脂主成分部分の比重差を利用すればよく、乾式で行いたい場合は、例えば空気流で粒子を分離することができるサイクロンセパレーター(文献2)、湿式(液体中)での分離であれば鉱石の選別などに用いられる薄流選別法やジグ選別(文献3)などが利用できる。
【発明の効果】
【0017】
この出願に係る発明は以上説明した通り、繊維強化樹脂材料の繊維と樹脂の両方を低温~極低温を利用して簡便に分離回収し、それぞれをリサイクル原料として用いる
ことができる方法に関するもので、このことにより地球環境を保全し、資源の有効活用に貢献することができる効果がある。
【0018】
またこの発明は特に炭素繊維強化樹脂の場合、炭素繊維の新品製造時に要する大きな熱エネルギーをリサイクル使用することにより削減し、この結果地球温暖化を抑制する効果がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】日本複合材料学会誌、24,5(1998)、「再使用宇宙輸送系の極低温CFRP燃料タンクの技術課題と今後の研究構想」
【0020】
【非特許文献2】農林水産省ホームページ 「調整施設-風力選別機(粗選機)
【0021】
【非特許文献3】資源と素材、vol113、P912~915(1997) 「比重選別・重選」 中廣吉孝
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】ターボミルで解砕された炭素繊維強化ナイロン樹脂の顕微鏡観察写真
【
図5】
図3の解砕物を更に高倍率で見た顕微鏡観察写真
【符号の説明】
【0023】
1. 解砕用原料投入口
2. 解砕原料取り出し口
3. 解砕部
4. 炭素繊維を主とする部分
5. 樹脂を主とする部分
【発明を実施するための形態】
【0024】
炭素繊維を均一に分散させた炭素繊維強化ナイロン樹脂(炭素繊維含有量約60体積%、引張強度800MPaの板材(厚さ2mm、幅100mm、長さ150mm)を用意し、これを長さ方向に15mm程度の短冊状に切断した後、
図1に示す縦型カッターミルにより大きさ10mm程度の破砕物を得た。この破砕物を液体窒素中に浸漬させ十分に低温となった後、更に
図2に示すターボミルの解砕部に液体窒素を供給しながら、その部分をー90℃に保った状態で前記破砕物を解砕部に投入した。得られた解砕物を
再度液体窒素中に浸漬した後、再度ターボミルに投入した。こうして得られた解砕物の顕微鏡観察写真を
図3に示す。解砕物をレーザー粒子径測定装置により粒度分布を測定した結果を
図4に示す。粒度分布が100μm以下と600μm前後のふた山に分かれている。
図3に示した顕微鏡観察を更に高倍率(30倍)で観察した結果を
図5に示すが、繊維状のものと粉末状のものが見え、その大きさから600μmの炭素繊維を主とした部分と100μm以下の樹脂成分との混合物であることがわかる。
【0025】
上記で得られた解砕物をサイクロンセパレーターで100μm以下と以上に分離することによりそれぞれ粉末状炭素繊維と粉末状樹脂原料として再利用することができる。