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  • 特開-エアブロア装置 図1
  • 特開-エアブロア装置 図2
  • 特開-エアブロア装置 図3
  • 特開-エアブロア装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046804
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】エアブロア装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 31/00 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
E01B31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152099
(22)【出願日】2022-09-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 研究集会名 令和4年度関西・中国支部鉄道施設技術発表会(保線部門) 主催者 一般社団法人日本鉄道施設協会 関西支部 開催日 令和4年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】597110995
【氏名又は名称】株式会社レールテック
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】玉村 嘉男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 登志勝
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓佑
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057BA26
(57)【要約】
【課題】レール削正車が発生する鉄粉の回収効率を向上するエアブロア装置を提供する。
【解決手段】エアブロア装置1は、レール削正車に搭載され、軌間外側エアノズル2と、軌間内側エアノズル3と、圧縮空気供給装置4とを備える。軌間外側エアノズル2は、軌間外側で空気を噴射する。軌間内側エアノズル3は、軌間内側で空気を噴射する。圧縮空気供給装置4は、軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3に圧縮空気を供給する。軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3のレール長手方向Xに直交する水平方向から見た噴射方向は、鉛直下向きに対してレール長手方向Xに鋭角θを成す。軌間外側エアノズル2のレール長手方向から見た噴射方向21は、軌間外側から斜め下にレール底端部51の近傍に向いている。軌間内側エアノズル3のレール長手方向から見た噴射方向31は、軌間内側から斜め下にレール腹部52に向いている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール削正車に搭載されるエアブロア装置であって、
軌間外側で空気を噴射する軌間外側エアノズルと
軌間内側で空気を噴射する軌間内側エアノズルと、
前記軌間外側エアノズル及び軌間内側エアノズルに圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置とを備え、
前記軌間外側エアノズル及び軌間内側エアノズルのレール長手方向に直交する水平方向から見た噴射方向は、鉛直下向きに対してレール長手方向に鋭角を成し、
前記軌間外側エアノズルのレール長手方向から見た噴射方向は、軌間外側から斜め下にレール底端部の近傍に向いており、
前記軌間内側エアノズルのレール長手方向から見た噴射方向は、軌間内側から斜め下にレール腹部に向いていることを特徴とするエアブロア装置。
【請求項2】
スラブ軌道において、前記軌間外側エアノズルは、レール底部の下を通って軌間中央に向かう気流を発生し、
前記軌間内側エアノズルは、レール腹部に当たって向きを変えて軌間中央に向かう気流を発生することを特徴とする請求項1に記載のエアブロア装置。
【請求項3】
レール削正によって発生する鉄粉をレール締結装置周辺から軌間中央まで移動させるように前記軌間外側エアノズル及び軌間内側エアノズルが噴射する空気の強さが設定されることを特徴とする請求項2に記載のエアブロア装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール削正車に搭載されて、レール削正によって発生する鉄粉を回収するためのエアブロア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
線路の保守において、レール寿命の延伸、列車の走行安全性の確保、及び列車の走行騒音低減を目的としてレール削正が行われる。レール削正は、レール頭頂面や側面の凹凸を滑らかに削る保線作業である(非特許文献1の番号405参照)。レール削正は、レール削正車を用いて行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レール削正作業に伴い削正屑として鉄粉が発生する。レール削正車は、鉄粉を回収するため、エアブロア装置と集塵装置が搭載されている。エアブロア装置がエアーを吹き付けて軌道上の鉄粉を巻き上げ、集塵装置がその鉄粉を回収する。このようなレール削正車による回収作業は、レール削正作業と同時に実施されるが、その実施後に、レール締結装置周辺等の軌道上に鉄粉が残留する。バラスト軌道では、軌道上に残留した鉄粉は、バラスト(砕石)から成る道床内に沈み込んでいく。
【0004】
しかし、スラブ軌道では、軌道上に残留した鉄粉は、表面がコンクリートのスラブ上にあるため、列車風圧等によって飛散する可能性が高い。そこで、レール削正車で回収できなかった鉄粉は、人力によって回収される。人力による回収作業は、7名体制で軌道上を移動しながら実施される。先頭の1名が可搬式ブロアでレール締結装置周辺の鉄粉を清掃する。次の1名がマグネットで軌間中央付近の鉄粉を回収する。次の1名がバキュームクリーナーで右側のレール付近の鉄粉を回収する。次の1名がバキュームクリーナーで左側のレール付近の鉄粉を回収する。最後の3名は、作業終了後の跡確認を実施する。このように、人力による鉄粉の回収作業は、大変人手か掛かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-224608号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JIS E 1001:2001「鉄道-線路用語」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、レール削正車が発生する鉄粉の回収効率を向上するエアブロア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエアブロア装置は、レール削正車に搭載されるものであって、軌間外側で空気を噴射する軌間外側エアノズルと軌間内側で空気を噴射する軌間内側エアノズルと、前記軌間外側エアノズル及び軌間内側エアノズルに圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置とを備え、前記軌間外側エアノズル及び軌間内側エアノズルのレール長手方向に直交する水平方向から見た噴射方向は、鉛直下向きに対してレール長手方向に鋭角を成し、前記軌間外側エアノズルのレール長手方向から見た噴射方向は、軌間外側から斜め下にレール底端部の近傍に向いており、前記軌間内側エアノズルのレール長手方向から見た噴射方向は、軌間内側から斜め下にレール腹部に向いていることを特徴とする。
【0009】
このエアブロア装置において、スラブ軌道において、前記軌間外側エアノズルは、レール底部の下を通って軌間中央に向かう気流を発生し、前記軌間内側エアノズルは、レール腹部に当たって向きを変えて軌間中央に向かう気流を発生することが好ましい。
【0010】
このエアブロア装置において、レール削正によって発生する鉄粉をレール締結装置周辺から軌間中央まで移動させるように前記軌間外側エアノズル及び軌間内側エアノズルが噴射する空気の強さが設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエアブロア装置によれば、軌間外側エアノズル及び軌間内側エアノズルのレール長手方向に直交する水平方向から見た噴射方向は、鉛直下向きに対してレール長手方向に鋭角を成すので、噴射する空気によって鉄粉が不特定方向に飛散することが防がれる。軌間外側エアノズルのレール長手方向から見た噴射方向は、軌間外側から斜め下にレール底端部の近傍に向いているので、軌間外側エアノズルが噴射する空気によって、軌間外側の鉄粉がレール底部の下の隙間を通って軌間中央に移動する。軌間内側エアノズルのレール長手方向から見た噴射方向は、軌間内側から斜め下にレール腹部に向いているので、軌間内側エアノズルが噴射して、レール腹部で反射された気流によって、軌間内側の鉄粉が軌間中央に移動する。鉄粉が軌間中央に集積されるので、鉄粉の回収効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の一実施形態に係るエアブロア装置の構成図である。
図2図2は同装置におけるエアノズルの配置を示す斜視図である。
図3図3は同装置におけるエアノズルの角度を示す側面図である。
図4図4は同装置におけるエアノズルの角度を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るエアブロア装置を図1乃至図4を参照して説明する。このエアブロア装置は、レール削正車に搭載されるものである。図1に示すように、エアブロア装置1は、軌間外側エアノズル2と、軌間内側エアノズル3と、圧縮空気供給装置4とを備える。軌間外側エアノズル2は、軌間外側で空気を噴射するエアノズルである。軌間は、軌道における左右のレールの間であり、軌間外側は、軌道におけるレールの外側である。軌間内側エアノズル3は、軌間内側で空気を噴射するエアノズルである。軌間内側は、軌道における左右のレールの内側である。
【0014】
圧縮空気供給装置4は、圧縮空気を発生するコンプレッサ、及び圧縮空気を蓄えるエアタンク等を有し、軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3に圧縮空気を供給する。
【0015】
図2に示すように、軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3は、レール削正車の床下に設置され、レール5の上方に位置する。軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3は、エア配管41によって支持され、そのエア配管41を介して圧縮空気が供給される。
【0016】
図3に示すように、軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3のレール長手方向Xに直交する水平方向から見た噴射方向は、鉛直下向きに対してレール長手方向Xに鋭角θを成す。レール長手方向Xは、前後方向である。レール長手方向Xに直交する水平方向は、まくらぎ方向である。レール長手方向Xに直交する水平方向から見たとは、側面視である。本実施形態では、鋭角θは45度である。
【0017】
鉄道において、列車を検知するための軌道回路にレールが用いられる。レールは、レール締結装置によってまくらぎやスラブに締結される(非特許文献1の番号217参照)。レール締結装置周辺は、鉄粉が滞留しやすい。レール締結装置に付着した鉄粉は、軌道回路の絶縁を低下させる。このため、レール締結装置周辺に鉄粉を滞留させないことを目的として、従来のエアブロア装置は、エアノズルが鉛直下向き(真下)となるように配置され、レール締結装置を気吹き洗浄する。このため、鉛直下向きのエアノズルは、軌道上の鉄粉を不特定方向に飛散させていた。
【0018】
本実施形態のエアブロア装置1では、軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3は、真下に対して斜め前方向に空気を噴射する。噴射された空気は、軌道上の鉄粉を特定方向、すなわち、少し前に移動する。
【0019】
なお、レール削正車をゆっくり移動させる場合、空気の噴射速度と比べてレール削正車の移動速度を無視できるので、本実施形態の変形例として、真下に対して斜め後ろ方向に空気を噴射するように軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3を配置する構成も可能である。この場合、噴射された空気は、軌道上の鉄粉を少し後ろに移動する。
【0020】
図4に示すように、軌間外側エアノズル2のレール長手方向から見た噴射方向21は、軌間外側から斜め下にレール底端部51の近傍に向いている。レール長手方向から見たとは、正面視である。
【0021】
軌間内側エアノズル3のレール長手方向から見た噴射方向31は、軌間内側から斜め下にレール腹部52に向いており、さらに詳しくは、レール腹部52の下部に向いている。
【0022】
スラブ軌道において、レール5は、レール締結装置7によってスラブ6に締結される。レール締結装置7の構成として、レール底部53とスラブ6の間に軌道パッド71等が介在する。このため、軌道パッド71等とその前後の軌道パッド71等との間、すなわちレール5の大部分には、レール底部53とスラブ6の間に隙間がある。エアブロア装置1は、その隙間を空気流路として利用する。
【0023】
スラブ軌道において、軌間外側エアノズル2は、レール底部53の下を通って軌間中央に向かう気流22を発生する。
【0024】
軌間内側エアノズル3は、レール腹部52に当たって向きを変えて軌間中央に向かう気流32を発生する。
【0025】
軌間外側エアノズル2が発生する気流22と、軌間内側エアノズル3が発生する気流32は、軌間内において、どちらも軌間中央に向かうので、合流して強め合う。
【0026】
レール削正によって発生する鉄粉は、軌間外側エアノズル2が発生する気流22と、軌間内側エアノズル3が発生する気流32によって移動する。
【0027】
エアブロア装置1は、レール削正によって発生する鉄粉をレール締結装置7周辺から軌間中央まで移動させるように軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3が噴射する空気の強さが設定される。
【0028】
軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3が噴射する空気の強さは、圧縮空気供給装置4から軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3に供給される圧縮空気の圧力、及び軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3が噴射する空気の流量によって設定される。本実施形態では、圧縮空気供給装置4から供給される圧縮空気の圧力は、従来の圧力よりも高い。また、軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3が噴射する空気の流量は、従来のエアノズルよりも多い。
【0029】
軌間中央に移動した鉄粉は、レール削正車の集塵装置によって回収される。
【0030】
鉄粉の一部は、集塵装置によって回収されずに軌道上に残留するが、残留した鉄粉は、軌間中央に集積しているので、人力によって容易に回収することができる。その回収作業は、例えば、5名体制で実施される。先頭の1名がマグネットで鉄粉を集め、次の1名がバキュームクリーナーでその鉄粉を回収する。最後の3名は、従来どおり跡確認を実施する。このように、人力による鉄粉の回収作業が従来の7名から5名に省人化される。跡確認を除いた人数は、4名から2名に半減される。
【0031】
以上、本実施形態に係るエアブロア装置1によれば、軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3のレール長手方向Xに直交する水平方向から見た噴射方向は、鉛直下向きに対してレール長手方向Xに鋭角θを成すので、噴射する空気によって鉄粉が不特定方向に飛散することが防がれる。軌間外側エアノズル2のレール長手方向から見た噴射方向は、軌間外側から斜め下にレール底端部51の近傍に向いているので、軌間外側エアノズル2が噴射する空気によって、軌間外側の鉄粉がレール底部53の下の隙間を通って軌間中央に移動する。軌間内側エアノズル3のレール長手方向から見た噴射方向は、軌間内側から斜め下にレール腹部52に向いているので、軌間内側エアノズル3が噴射して、レール腹部52で反射された気流によって、軌間内側の鉄粉が軌間中央に移動する。鉄粉が軌間中央に集積されるので、鉄粉の回収効率が向上する。
【0032】
実際にレール削正車を用いて、本実施形態のエアブロア装置1と、従来のエアブロア装置の性能を比較する試験をスラブ軌道で行った。試験は、晴れ又は曇りの日に行った。
【0033】
(比較例)
比較例として、従来のエアブロア装置を用いた。圧縮空気供給装置が発生する空気の圧力は、2×10Pa(2bar)である。軌間外側エアノズル及び軌間内側エアノズルは、従来と同じものであり、真下(鉛直方向)に空気を噴射する。
【0034】
レール削正車による鉄粉の回収作業後のレール締結装置周辺の状況を観察した。従来のエアブロア装置(比較例)では、レール締結装置の平座金の周りや、タイプレートと絶縁板の縁に鉄粉が残留していた。
【実施例0035】
実施例として、本実施形態のエアブロア装置1を用いた。圧縮空気供給装置4が発生する空気の圧力を従来のものよりも3倍高い6×10Pa(6bar)とした。軌間外側エアノズル2及び軌間内側エアノズル3については、事前に数種類のエアノズルを用いて室内試験を行い、鉄粉を最もよく移動させるものを選択した。選択したエアノズルは、供給された圧縮空気で周囲の空気を吸引することにより、吐出する空気の量を増やすタイプのものである。
【0036】
レール削正車による鉄粉の回収作業後のレール締結装置周辺の状況を観察した。本実施形態のエアブロア装置1(実施例)では、鉄粉がほとんど全て除去された。
【0037】
鉄粉の回収効率を評価するため、レール削正車による鉄粉の回収量と、人力による回収作業での回収量を1000m当たりで比較した。
【0038】
比較例では、2回のデータを平均した。比較例では、レール削正車による鉄粉の回収量は100.5kgであり、人力による回収量は12.3kgであった。実施例では、5回のデータを平均した。実施例では、レール削正車による鉄粉の回収量は119.4kgであり、人力による回収量は18.0kgであった。
【0039】
従来のエアブロア装置(比較例)に対して本実施形態のエアブロア装置1(実施例)は、レール削正車による鉄粉の回収量が19%増加し、人力による回収量が46%増加した。どちらも、回収量の増加は、エアブロア装置1によって鉄粉が軌間中央に集積されたためである。レール削正車による鉄粉の回収効率と、人力による鉄粉の回収効率が、エアブロア装置1によって向上することが確認された。
【0040】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、エアブロア装置1をバラスト軌道で用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 エアブロア装置
2 軌間外側エアノズル
3 軌間内側エアノズル
4 圧縮空気供給装置
図1
図2
図3
図4