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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046805
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
F16F15/02 Q
F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152100
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼ 和久
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸朗
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AC02
3J048AD07
3J048BD04
3J048BD05
3J048BD07
3J048BE14
3J048BF01
3J048CB18
3J048CB21
3J048EA29
(57)【要約】
【課題】減衰比の調整精度を向上させることができる。
【解決手段】制振装置は、内部空間を形成するケーシングと、内部空間内に設けられ、周期的に繰り返す格子構造を含むラティス構造体と、内部空間に封入されている粉体と、を含む少なくとも1つの制振要素を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を形成するケーシングと、
前記内部空間内に設けられ、周期的に繰り返す格子構造を含むラティス構造体と、
前記内部空間内に封入されている粉体と、を含む少なくとも1つの制振要素を備える、
制振装置。
【請求項2】
前記ケーシング及び前記ラティス構造体のそれぞれは、3Dプリンタによって前記粉体を構成する粒子と同じ材質の粒子が積層造形された造形物を含む、
請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記ケーシングの表面に設けられ、制振対象物に取り付け可能に構成されている弾性体をさらに備える、
請求項1又は2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの制振要素は、
円弧形状の前記ケーシングである一方側ケーシングを有する一方側制振要素と、
円弧形状の前記ケーシングである他方側ケーシングであって、前記一方側ケーシングに対して脱着可能に構成されている他方側ケーシングを有する他方側制振要素と、を含む、
請求項1又は2の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項5】
前記内部空間を第1の内部空間と前記第1の内部空間とは別の第2の内部空間とに仕切る仕切壁をさらに備える、
請求項1又は2の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの制振要素は、複数の制振要素を含み、
前記制振装置は、前記複数の制振要素のそれぞれを脱着可能に構成されたホルダーをさらに備える、
請求項1又は2の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項7】
前記粉体は、金属の粉体及び樹脂の粉体のうちの少なくとも一方を含む、
請求項1又は2の何れか一項に記載の制振装置。
【請求項8】
内部空間を形成するケーシングと、
前記内部空間内に設けられ、周期的に繰り返す格子構造を含むラティス構造体と、
前記内部空間内に封入されている粉体と、を含む少なくとも1つの制振要素を備える制振装置の製造方法であって、
前記粉体を構成する粒子と同じ材質の粒子を3Dプリンタによって積層造形することで前記ケーシング及び前記ラティス構造体のそれぞれを積層造形するステップを備える、
制振装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物の振動を抑制するために様々な制振装置が知られている。例えば、特許文献1には、本体の内部に形成された中空セル内に動吸振器が設けられている制振構造体(制振装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-003059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制振装置は、振動の抑制効果を向上させるために減衰比が調整可能に構成されていることが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、中空セルや動吸振器の振動部に流動材を内包させているにすぎず、減衰比の調整精度が低い。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、減衰比の調整精度を向上させることができる制振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る制振装置は、内部空間を形成するケーシングと、前記内部空間内に設けられ、周期的に繰り返す格子構造を含むラティス構造体と、前記内部空間に封入されている粉体と、を含む少なくとも1つの制振要素を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の制振装置によれば、減衰比の調整精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る制振装置の構成を概略的に示す斜視図である。
図2】格子構造の一例を説明するための斜視図である。
図3】一実施形態に係る粉体の構成を概略的に示す図である。
図4】一実施形態に係る制振装置において弾性体を上板に固定する構成の一例を概略的に示す図である。
図5】一実施形態に係る制振装置の設置手段の一例を説明するための図である。
図6】幾つかの実施形態に係る制振装置の設置手段の一例を説明するための斜視図である。
図7】幾つかの実施形態に係る制振装置の構成を概略的に示す斜視図である。
図8】幾つかの実施形態に係る制振装置の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による制振装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
図1は、一実施形態に係る制振装置1の構成を概略的に示す斜視図である。図1に例示するように、制振装置1は、ケーシング4、ラティス構造体6、及び粉体8を含む制振要素2を含む。尚、図1には、制振装置1の内部構造の一部が図示されている。
【0011】
ケーシング4は、内部に内部空間3が形成されている。ケーシング4は、下板10と、下板10より上方に位置する上板12と、下板10の周縁と上板12の周縁とを接続する側板14と含む。内部空間3は、下板10、上板12、及び側板14によって囲われることで形成されている。図1に例示する形態では、制振装置1は、内部空間3を第1の内部空間5と、第1の内部空間5とは別の第2の内部空間7とに仕切る仕切壁15をさらに含んでいる。
【0012】
一実施形態では、図1に例示するように、制振要素2は、一方側制振要素2A(2)と他方側制振要素2B(2)とを含んでいる。一方側制振要素2Aは、円弧形状のケーシング4である一方側ケーシング4A(4)を有する。他方側制振要素2Bは、円弧形状のケーシング4であって、一方側ケーシング4Aとは別に設けられる他方側ケーシング4B(4)を有する。この他方側ケーシング4Bは、一方側ケーシング4Aに対して脱着可能に構成されている。図1に例示する形態では、制振装置1は、一方側ケーシング4Aに対して他方側ケーシング4Bが取り付けられることで組み立てられており、リング形状を有している。制振装置1には、上下方向D1から視たときに、一方側ケーシング4Aと他方側ケーシング4Bとによって囲われることで形成される円形状の隙間11が形成されている。尚、本開示は、隙間11の形状を円形状に限定するものではなく、隙間11は例えば矩形状や楕円形状を有していてもよい。
【0013】
図1に例示する形態では、一方側ケーシング4Aは、上下方向D1から視た場合に、下板10A(10)及び上板12A(12)のそれぞれが円弧形状を有しており、周方向において下板10Aが上板12よりも短い。そして、一方側ケーシング4Aの側板14A(14)は、下板10Aの周方向の一端から上方に延びる第1面16Aと上板12Aの周方向の一端から下方に延びる第2面18Aとを接続する下向きの段差面20Aを含んでいる。一方側ケーシング4Aの周方向の他端側の他端部も同様に構成されており、下向きの段差面20Aが形成されている。
【0014】
他方側ケーシング4Bは、上下方向D1から視た場合に、下板10B(10)及び上板12B(12)のそれぞれが円弧形状を有しており、周方向において下板10Bが上板12Bよりも長い。そして、他方側ケーシング4Bの側板14B(14)は、下板10Bの周方向の一端から上方に延びる第1面16Bと上板12Bの周方向の一端から下方に延びる第2面18Bとを接続する上向きの段差面20Bを含んでいる。上向きの段差面20Bに下向きの段差面20Aを載せた状態で、上向きの段差面20B及び下向きの段差面20Aの両方を貫通するようにボルトのような締結具(不図示)で締結することで、一方側ケーシング4Aに対して他方側ケーシング4Bが脱着可能に取り付けられる。尚、他方側ケーシング4Bの周方向の他端側の他端部も同様に構成されており、上向きの段差面20Bが形成されている。そして、上述した締結方法によって、一方側ケーシング4Aの他端部に他方側ケーシング4Bの他端部が取り付けられる。
【0015】
ラティス構造体6は、内部空間3内に設けられている。ラティス構造体6は、周期的に繰り返す格子構造31を含む。図2は、格子構造31の一例を説明するための斜視図である。
【0016】
図2に例示するように、格子構造31は、複数の格子点32及び複数の腕33の組み合わせによって構成されている。腕33は、格子点32と該格子点32に隣接する別の格子点32とを接続する。このような格子構造31は、立方体形状、円筒形状、四角錘形状などの任意の立体形状を有する。図2に例示する形態では、格子構造31は、6つの格子点32及び8つの腕33の組み合わせによって正八面体形状を有している。
【0017】
ラティス構造体6は、格子点32及び腕33によって構成される格子構造31が繰り返し現れるようになっている。ラティス構造体6は、立体形状が互いに異なる複数の格子構造31を含んでいる。
【0018】
粉体8は、内部空間3内に封入されている。一実施形態では、図1に例示するように、粉体8は、第1の内部空間5内、及び第2の内部空間7内のそれぞれに封入されている。図3は、一実施形態に係る粉体8の構成を概略的に示す図である。
【0019】
図3に例示するように、粉体8は、複数の粒子22の集合体である。粒子22の形状や粒径は特に限定されないが、一実施形態では、粒径は10μm以上45μm以下である。一実施形態では、粒子22は、鉄、ステレンス、合金鋼、及び銅などの何れかの金属の粒子22を含んでいる。つまり、制振装置1は金属の粉体8を含んでいる。尚、本開示は、金属の粉体8に限定するものではない。幾つかの実施形態では、制振装置1は金属の粉体8に代えて樹脂の粉体8を含む。幾つかの実施形態では、制振装置1は金属の粉体8とともに樹脂の粉体8を含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、内部空間3に対する空間(内部空間3のうちラティス構造体6のような構造物を除いた部分)の割合をX1とすると、X1>0.3を満たすように、内部空間3内に粉体8が封入されている。幾つかの実施形態では、粒子22の粒径は、粒子22の材質に基づいて決定される。
【0021】
一実施形態では、図1に例示するように、ケーシング4及びラティス構造体6のそれぞれは、不図示の3Dプリンタによって粉体8を構成する粒子22と同じ材質の粒子22が積層造形された造形物100を含む。3Dプリンタは、例えば3DCAD(computer-aide design)データ又は3DCG(Three-dimensional computer graphics)データに基づき3次元のオブジェクト(ケーシング4やラティス構造体6)を造形する三次元積層造形装置である。この3Dプリンタは、例えば、粉末状の材料である粉体8をレーザで局所的に溶融させた後、焼き固めて積層造形させるように構成されており、粉体8を貯蔵する材料バケットと、造形物100を形成するための造形ステージと、余剰の粉体8を貯留するための余剰分バケットと、を備えている。
【0022】
一実施形態では、図1に例示するように、制振装置1は、ケーシング4の表面4aに設けられ、振動の抑制対象である制振対象物(配管120)に取り付け可能に構成されている弾性体30をさらに備えている。図1に例示する形態では、弾性体30は、円柱形状を有しており、上板12の上面12aに固定されている。図4は、一実施形態に係る制振装置1において弾性体30を上板12に固定する構成の一例を概略的に示す図である。
【0023】
一実施形態では、図4に例示するように、制振装置1は、内部空間3内に配置される柱24をさらに含んでいる。柱24は、例えば、円柱であって、下板10と上板12とを接続している。柱24は、内部空間3内の任意の位置に配置される。幾つかの実施形態では、柱24は、仕切壁15と一体的に形成されている。図4に例示する形態では、制振装置1は、上板12を貫通し、上板12の上面12aに載せられている弾性体30と柱24とを締結するボルト26を含んでいる。
【0024】
一実施形態に係る制振装置1を制振対象物に設置する手段の一例について説明する。図5は、一実施形態に係る制振装置1の設置手段の一例を説明するための図である。一実施形態では、制振対象物は円筒形状を有する配管120である。配管120には、配管120の外周面124から配管120の径方向の外側に沿って延びるアダプタ122が設けられている。
【0025】
図5に例示する形態では、弾性体30のケーシング4の表面(上板12の上面12a)側とは反対側の面30aがアダプタ122に当接するように、制振装置1が配置されている。弾性体30は、不図示のボルトによってアダプタ122に固定されてもよい。配管120の外径d1は制振装置1の内径d2(隙間11の径)より小さく、隙間11に面する制振装置1の内周面13が配管120の外周面124と非接触であるように、配管120は制振装置1の隙間11を貫通している。
【0026】
(作用・効果)
一実施形態に係る制振装置1の作用・効果について説明する。制振装置1の性能は、重量、剛性、及び減衰比が支配的になる。しかしながら、従来からの制振装置では、重量及び剛性のうちの少なくとも1つを調整可能に構成されていることが多く、減衰比の調整が容易な構成とはなっていなかった。減衰比は、構成材料の内部減衰(材料減衰)と構造部材間の摩擦や衝突によるエネルギー散逸によって決定される。そのため、制振装置1の減衰比は弾性体30、ケーシング4、ラティス構造体6、及び粉体8の材料減衰に加え、ケーシング4、ラティス構造体6と粉体8との摩擦や衝突に抵抗などによって生じる減衰力によって決まる。
【0027】
一実施形態によれば、内部空間3内に粉体8を封入することで、粉体8に含まれる粒子22同士の摩擦・衝突減衰によって減衰比を高めることができる。さらに、内部空間3内にラティス構造体6が設けられることで、粉体8の撹拌を促進させて粒子22同士の凝集を抑制し、減衰比をさらに高めることができる。つまり、粒子22の材質や粒径、及びケーシング4の内部空間3における空間の割合などを調整することで減衰比を調整することができる。よって、減衰比の調整精度を向上させることができる。
【0028】
一実施形態によれば、制振装置1は仕切壁15を含むので、第1の内部空間5及び第2の内部空間7のそれぞれに対して容積や粉体8の封入量などを調整し、減衰比をより詳細に調整することができる。
【0029】
一実施形態によれば、ケーシング4及びラティス構造体6のそれぞれは粉体8が積層造形された造形物100であるので、3Dプリンタによって制振要素2(ケーシング4、ラティス構造体6、及び粉体8)をまとめて製造することができる。
【0030】
一実施形態によれば、他方側ケーシング4Bを一方側ケーシング4Aに取り付ける際に、一方側ケーシング4Aと他方側ケーシング4Bとで配管120を挟み込むことで、制振装置1を配管120に簡単に取り付けることができる。
【0031】
一実施形態によれば、制振装置1は弾性体30を含むので、動吸振器として制振装置1を提供することができる。尚、本開示は、制振装置1を動吸振器に限定するものではない。幾つかの実施形態では、制振装置1は弾性体30を含んでおらず、制振要素2だけを含んでいる。図6は、幾つかの実施形態に係る制振装置1の設置手段の一例を説明するための斜視図である。
【0032】
図6に例示するように、幾つかの実施形態では、制振装置1は円弧形状の一方側ケーシング4A及び他方側ケーシング4Bのそれぞれを備えている。一方側ケーシング4Aは、一端部及び他端部のそれぞれに設けられ、径方向の外側に沿って延びる第1フランジ部34を含む。他方側ケーシング4Bは、一端部及び他端部のそれぞれに設けられ、径方向の外側に沿って延びる第2フランジ部36を含む。そして、ボルトあるいはスタッドボルトに捩じ込まれるナット等のような締結具38を用いることで、第2フランジ部36は第1フランジ部34に脱着可能に固定される。配管120は、隙間11を貫通するように、一方側ケーシング4Aと他方側ケーシング4Bとによって挟持されている。
【0033】
図7は、幾つかの実施形態に係る制振装置1の構成を概略的に示す斜視図である。幾つかの実施形態では、制振装置1は複数の制振要素2を含んでいる。そして、制振装置1は、複数の制振要素2のそれぞれを脱着可能に構成されたホルダー40をさらに含む。図7に例示する形態では、ホルダー40は円板形状を有しており、上面40aから下面40bに亘って貫通する貫通孔42が形成されている。制振要素2は、ホルダー40の上面40aに脱着可能に構成されている。脱着方法は特に限定されないが、例えば、ホルダー40の上面40aに制振要素2と係合するための係合部を設けてもよいし、磁力によってホルダー40の上面40aに制振要素2を取り付けてもよい。図7に例示する構成によれば、複数の制振要素2の組み合わせによって所望の減衰比に調整された制振装置1を提供することができる。
【0034】
本開示に係る制振装置1の製造方法について説明する。図8は、幾つかの実施形態に係る制振装置1の製造方法のフローチャートである。図8に例示するように、制振装置1の製造方法は、造形ステップS1を含む。
【0035】
造形ステップS1は、粒子22を3Dプリンタによって積層造形することでケーシング4及びラティス構造体6のそれぞれを造形する。造形ステップS1では、例えば、3Dプリンタによってケーシング4及びラティス構造体6のそれぞれを造形するとともに、粉体8が内部空間3内に供給される。幾つかの実施形態では、ケーシング4の上板12を予め造形しておき、内部空間3内への粉体8の供給(例えば、人手による供給)が完了してから溶接やボルト締めなどによって上板12を上板12以外の造形物に結合させる。このような制振装置1の製造方法によれば、減衰比の調整によって振動の抑制効果を向上可能な制振要素2を含む制振装置1を3Dプリンタでまとめて製造することができる。
【0036】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0037】
[1]本開示に係る制振装置(1)は、
内部空間(3)を形成するケーシング(4)と、
前記内部空間内に設けられ、周期的に繰り返す格子構造(31)を含むラティス構造体(6)と、
前記内部空間内に封入されている粉体(8)と、を含む少なくとも1つの制振要素(2)を備える。
【0038】
上記[1]に記載の構成によれば、ケーシングの内部空間内に粉体を封入することで、粉体を構成する粒子同士の摩擦・衝突減衰によって減衰比を高めることができる。さらに、ケーシングの内部空間内にラティス構造体が設けられることで、粉体の撹拌を促進させて粒子同士の凝集を抑制し、減衰比をさらに高めることができる。つまり、粒子の材質や粒径、及びケーシングの内部空間における空間の割合などを調整することで減衰比を調整することができる。よって、減衰比の調整精度を向上させることができる。
【0039】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記ケーシング及び前記ラティス構造体のそれぞれは、3Dプリンタによって前記粉体を構成する粒子(22)と同じ材質の粒子が積層造形された造形物(100)を含む。
【0040】
上記[2]に記載の構成によれば、3Dプリンタによって制振要素をまとめて製造することができる。
【0041】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記ケーシングの表面(4a)に設けられ、制振対象物(120)に取り付け可能に構成されている弾性体(30)をさらに備える。
【0042】
上記[3]に記載の構成によれば、動吸振器として制振装置を提供することができる。
【0043】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記少なくとも1つの制振要素は、
円弧形状の前記ケーシングである一方側ケーシング(4A)を有する一方側制振要素(2A)と、
円弧形状の前記ケーシングである他方側ケーシング(4B)であって、前記一方側ケーシングに対して脱着可能に構成されている他方側ケーシングを有する他方側制振要素(2B)と、を含む。
【0044】
上記[4]に記載の構成によれば、他方側制振要素を一方側制振要素に取り付ける際に、一方側制振要素と他方側制振要素とで制振対象物を挟み込むことで、制振装置を制振対象物に取り付けることができる。
【0045】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記内部空間を第1の内部空間(5)と前記第1の内部空間とは別の第2の内部空間(7)とに仕切る仕切壁(15)をさらに備える。
【0046】
上記[5]に記載の構成によれば、第1の内部空間及び第2の内部空間のそれぞれに対して容積や粉体の封入量などを調整し、減衰比をより詳細に調整することができる。
【0047】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記少なくとも1つの制振要素は、複数の制振要素を含み、
前記制振装置は、前記複数の制振要素のそれぞれを脱着可能に構成されたホルダー(40)をさらに備える。
【0048】
上記[6]に記載の構成によれば、複数の制振要素の組み合わせによって所望の減衰比に調整された制振装置を提供することができる。
【0049】
[7]幾つかの実施形態では、上記[1]から[6]の何れか1つに記載の構成において、
前記粉体は、金属の粉体及び樹脂の粉体のうちの少なくとも一方を含む。
【0050】
上記[7]に記載の構成によれば、制振対象物に応じて、金属の粉体、または樹脂の粉体が封入されている制振装置を提供することができる。
【0051】
[8]本開示に係る制振装置の製造方法は、
内部空間を形成するケーシングと、
前記内部空間内に設けられ、周期的に繰り返す格子構造を含むラティス構造体と、
前記内部空間内に封入されている粉体と、を含む少なくとも1つの制振要素を備える制振装置の製造方法であって、
前記粉体を構成する粒子と同じ材質の粒子を3Dプリンタによって積層造形することで前記ケーシング及び前記ラティス構造体のそれぞれを積層造形するステップ(S1)を備える。
【0052】
上記[8]に記載の方法によれば、減衰比の調整精度が向上された制振装置を3Dプリンタでまとめて製造することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 制振装置
2 制振要素
2A 一方側制振要素
2B 他方側制振要素
3 内部空間
4 ケーシング
4A 一方側ケーシング
4B 他方側ケーシング
5 第1の内部空間
6 ラティス構造体
7 第2の内部空間
8 粉体
15 仕切壁
22 粒子
30 弾性体
31 格子構造
40 ホルダー
100 造形物
120 配管(制振対象物)
S1 造形ステップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8